19世紀のパリ。社交界の夜の華として君臨する高級娼婦ヴィオレッタが、真実の愛に目覚め、しかしその愛ゆえに別離を選ぶ悲劇──。ヴェルディのオペラ《椿姫》は、幕開け早々に置かれた有名な〈乾杯の歌〉を始め、名曲が次から次に惜しげもなく登場する、「オペラ」というジャンルを代表する傑作だ。ずば抜けて人気も高い。まもなく幕を開ける新国立劇場の《椿姫》。初日を2週間後に控えた4月26日、立ち稽古が行なわれている劇場を訪ねた。
新国立劇場オペラ「椿姫」のチケット情報
この作品で一番重要なのは、何と言ってもヴィオレッタ役だ。ほぼ出ずっぱりで演じなければならないこの圧倒的な主役に起用されたのは、スロベニア出身のベルナルダ・ボブロ。
新国立劇場初登場となる。2012年にウィーン・フォルクスオーパーとも来日していたが、多くのファンが彼女の名前に注目したのは、その数か月前に英国ロイヤル・オペラで演じたヴィオレッタ役での成功だろう。彼女の当たり役なのだ。
稽古だからいくぶんセーブはしているのだろうけれど、そうとは思えない。高音の厄介な技巧が要求されるナンバーも余裕しゃくしゃく。ストレスなく美しく響く声は実に気分爽快だ。