でフィナーレだ。
豪華なゲスト陣について、「中学生の頃から知っている小曽根真や仲間たちが手伝ってくれるのがありがたい」と顔をほころばせる北村。中でも異彩を放つのは、クラシック・クラリネットの権威である村井との共演だろう。「僕はクラリネットを正式に教わったことがなかったのでね。本来の音と吹き方を知りたいと思って、村井先生に『教えてください』と、半ば無理矢理お願いしたんです」と北村は言う。「指導は厳しかったですが(笑)、基礎を学んだおかげでクラリネットの世界が広がった。なにごとも基本は大事だと実感しました」と、北村は充実の表情だ。
戦後すぐの慶応大学時代には、クラリネットを買うことができず、「竹ぼうきの柄をクラリネットに見立てて指使いの練習をしていた」という北村。
「“いま出来ることはやらなければ”の一心でね。本物を買えるまでに1年かかりましたが、おかげで指使いは上達して、楽器を買った後は吹き方だけを習得すればよかった。僕には合っている練習法でしたね」と笑う。「ほうきの柄でも、自分の耳にはクラリネットの音色と聴衆の歓声が聞こえていた」という北村は、後年、世界中のステージでその光景を現実のものとする。