平幹二朗、浅利陽介が演劇界の裏をみせる『クレシダ』
と演出意図を伝え、ひとつの台詞、ひとつの動きに対し、納得できるまで粘る。82歳の大ベテラン・平にも臆する様子はなく、もちろん平も真摯に応える。森の作品への愛情、そして役者への信頼を感じる稽古場だと感じた。そうやって大切に作られたラストシーンは、ぜひ劇場で確認してほしい。ちなみに、スティーブン(浅利)からハニー(橋本)への恋心に対するひとつの答えが見えるシーンはとてもかわいかった。スティーブンの素直な台詞も、大人になりかけのハニーの表情も魅力的。
続いて一幕に戻り、グローブ座の楽屋シーンへ。少年俳優たち(橋本、碓井将大、藤木修)が当時のドレスを纏って登場。
彼らのクラシカルなドレス姿は麗しいが、そのドレスを雑にポイポイ脱ぎ捨てたり、取っ組み合いの喧嘩をしたりと、少年らしい騒がしさが舞台を楽しく盛り上げる。そこにやってくる「幼すぎる喋り方をする14歳の少年」を違和感なく演じてみせた29歳・浅利もさすが。そんな中でもやはり平の存在感は圧倒的。空間が一瞬で平のものになる瞬間は、観ていて気持ちがいい。長年役者を続けてきた平が演じるかつての名優の台詞は、一言一言が強く響く。
舞台『クレシダ』は、9月4日(日)から25日(日)まで東京・シアタートラムにて。その後、水戸、大阪を巡演。
取材・文:中川實穗