感情だけでも技術だけでも演じられないであろうその殺陣はどれも熱く、中でもクライマックスシーンでの中村の姿には目を奪われた。
一人ひとりの役柄も魅力的。中村演じる高丸はどこか情けないところもあるがまっすぐで、ひとつの信念を守り抜こうと必死な、ヒーローというには人間くさい男。秀吉との仲が深まるにつれ、少しずつ変わっていく表情も心に残る。町田演じる秀吉は、腕が立つ高丸とは逆の、口が立つ男。ホラをうまく使って天下人を目指す秀吉はユニークで、口を開くとふと空気が和らぐ。高丸に戦いを仕掛けるのは、佐藤演じる小平。ヒロイン・葵(小口ふみか)のためというその一心で生きる彼は、その痛々しいほどの想いが刀さばきからも伝わり、切ない。
主人公の高丸の逆の立ち位置の小平や葵らの過去も描かれることで、“勧善懲悪”とは違う、刀を鞘におさめる者、刀を振る者、知恵を使う者、それぞれの信じる「正義」が見えてくる。誰もが必死だからこそ、「乱世を終わらせたい」という目的は同じはずの彼らが選んだ手段、それが生んだ結末の違いに心が揺れる。ぜひ劇場で熱い芝居を体感してほしい。
「戦国御伽絵巻『ソロリ』~妖刀村正の巻~」は、11月6日(日)まで東京・シアターサンモールにて。
取材・文:中川實穗