くらし情報『サーカス? 演劇? スイスの異才が描く神秘の世界』

サーカス? 演劇? スイスの異才が描く神秘の世界

「“フレーム”を使います。ショーウィンドウのように周囲から見られる枠の役割も果たすし、もしかしたら人生という枠なのかもしれない。しかもそのフレームは、もろくて壊れたりもする。枠が壊れたときに、人はどうなるのか。自由になるかもしれないし、愚行に走るかもしれません」。

数あるサーカスの要素の中で特に興味を持ったのは、道化だという。「クラウンという存在自体が、リスクをはらんでいます。夢見がちでいながら、どこか悲劇的で、いつもアクシデントに巻き込まれている。
まさに悲喜劇がそこにはあるし、シュールレアリスムのような不条理な存在ともいえる。私はクラウンのような化粧をしているわけでもないし、フィジカルなアクターと自称していますが、クラウンの持つユーモアとその裏にある悲しみを表現するのが好きなんです」。

今回のクリエーションで発見したこととしてズィメルマンが語った次の言葉が哲学的示唆に富み、興味深い。「人間は、困難な状況に置かれ、もがけばもがくほど、生命に近づく。居心地の良い暮らしや安易な状況は、人間を生命や人生から遠ざけてしまいます」。言葉に頼らないステージだが、多くを物語る。時に他者を意識し、時に自らを持て余し、置かれた状況に対処しながら一喜一憂する登場人物は、まさに人間そのものであり、揺れ動く心を描いていくのがドラマであるなら、ズィメルマンの生み出す世界はドラマの真髄といっていい。

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