「カンパニー全員で過ごしてきた時間を信じ、手を取り合い、とにかく楽しんでやっていきたいと思っています」と言う安西は、自意識と現実のはざまで葛藤する古賀を熱演。その姿は小説家という枠を超え、いつの時代にも見られる“何かをしたいのに、何をしたらいいのか分からない”若者像そのものを表わしているかのようだ。批評家として他の3人とは少し異なる立ち位置の泉役・鈴木勝大も、「観劇にいらしてくださる皆様には、舞台上の4人と過去の自分が結び付くような素敵な瞬間がきっとあると思います」とコメント。物事を斜めに見ているかのようで、言葉や表情の端々に誠実さがにじむ泉像を作り出している。
一方、女性賛美が過ぎて、仲間から“エロ・グロ・ナンセンスな小説を書いている”と揶揄される加藤を演じる川原。「部屋に置いてあるものから細かい動作、4人の中で繰り広げられる会話まで、ひとつひとつを楽しんでいただけたら」との言葉通り、端正なたたずまいと丁寧な役づくりで“芸術家の業(ごう)”に説得力が出た。その“作家としてのいずまい”は、加治も同様。豪放磊落ながら、なにげない言葉に作家らしい知性がにじむ諸岡を、自然体で演じている。