スラリとした美人。控えめな言葉の端々に、意志の強い武骨な真面目さも見える。表現者には大事な気質だ。
ヴァイオリンの小林美樹がユニークな構成のコンサートを開く[10月29日(金)紀尾井ホール]。題して「八季~エイト・シーズンズ」。ヴィヴァルディの《四季》と、生誕100年のピアソラの《プエノスアイレスの四季》。2つの《四季》を彼女の独奏で一気に弾く。
「四季+四季で八季。
いつか絶対にやりたいと思っていました。コロナ禍もすでに8シーズン。次のシーズンが幸せに始まりますようにという気持ちも込めて。私は昨年、音楽をやる意味を考え込んで、1か月間ヴァイオリンを弾かない時期もありました。舞台に立ち、弾き終えて拍手をいただくこと。仲間と演奏すること。当たり前だったことがじつはとても幸せなことで、そのために頑張ることが自分の原動力になっていたのだと、あらためて確認できたのはよかったです」
ピアソラ の《四季》を、ヴィヴァルディと同じヴァイオリン独奏と弦楽合奏版に編曲したのはロシアの作曲家デシャトニコフ。大胆にも曲中にヴィヴァルディを引用しているため、〝八季〟が有機的につながる。
編曲の域を超えた独創的な作品だ。