『トリツカレ男』開幕、危なっかしいほどピュアな狂気が世界を変える
NAPPOS PRODUCE 舞台『トリツカレ男』が、10月16日に開幕。前日に行われたゲネプロの模様をレポートする。
いしいしんじの小説(新潮文庫)を演劇集団キャラメルボックスが舞台化し、好評を博した本作。2009年にはアトリエ・ダンカンプロデュースによる音楽劇も上演された。今回は過去のキャラメルボックス版と同じく、成井豊が脚本・演出を手がける。レストランでウェイターとして働くジュゼッペは、何かを好きになると寝食を忘れて没頭することから“トリツカレ男”と呼ばれている。三段跳びに熱中した結果、世界新記録まで出すほどの彼が次に取り憑かれたのは、外国から来た少女ペチカだった──。
主人公ジュゼッペに扮するのは、『かがみの孤城』『成井豊と梅棒のマリアージュ』(ともに2020年)で成井作品に出演が続く梅棒の野田裕貴。
奥行きのある舞台奥からツラまで実際に三段跳びしながら登場し、持ち前の高い身体能力をオープニングから発揮した。ペチカへの純粋な想いが募るあまり、終盤にかけてジュゼッペが覗かせる一種の“狂気”を、野田は全身で体現する。特にスローモーションを駆使したはしごのシーンは必見。映像や装置に頼らないアナログな場面ながら、大いに息を呑むだろう。