これらの特殊な設定をごく当たり前の前提として、島民たちの日常の会話が進んでいくところがおもしろい。
倉持の手によるセリフは、いずれも非常にシンプルであり、それ故にちょっとした言い方の変化で受け取るニュアンスがガラリと変わってしまうのだが、倉持は丁寧に、まさに“色”を付けるようにセリフのニュアンスを決定づけていく。
第一幕の冒頭の町長・ネグロと町会議員・バイツの会話に始まり、業界最大手のファムスタの製造会社社長・ポルポリとその下請け会社を営むグウの会話、カンチェラの選手であるアズルとライのやりとり、そして島民から嫌われているらしい謎の女・ナラ。謎めいた前提の中でも、彼らのちょっとしたやりとりや態度、距離感、彼らの関係性、そして、そこにいない島民のキャラクターまでがハッキリと浮かび上がってくる。そして、第一幕の最後に登場するのが、本土から移送されてきた囚人と彼を見張る看守の発する“異物感”。
謎めいた設定とテンポの良い会話がどのように絡み合い、どこに着地するのか? クスリと笑わせつつ、観る者の心をざわつかせるような物語の完成を期待したい。
「イロアセル」は新国立劇場にて11月11日より上演。