古川雄大主演の舞台『シラノ・ド・ベルジュラック』、まもなく開幕へ
言葉のニュアンスを細かく丁寧に修正・変更していたのが印象的だった。ラップ監修の益田トッシュのアドバイスもありつつ、やはり谷が翻訳と演出を兼ねているからこそできるのだと思う。
その後の通し稽古で、1幕だけ見学させてもらった。仮組みされた階段舞台の上には基本的にモノがない。シンプルに俳優の存在が大きく感じられ、観客に想像の余地がある。本作の特徴でもあるが、シラノの大きな鼻を付け鼻にするわけでもなく、17世紀当時の扮装をするわけでもない。17世紀の物語ながら、ジェンダーやポリティカルコレクトネスに触れ、現代を生きる我々にも響くような要素が散りばめられていて興味深かった。
今回がおよそ10年ぶりのストレートプレイ主演という古川雄大。
数々の話題のミュージカル作品や映画・ドラマに出演し、確実に俳優としての力をつけてきている古川だが、本作を通して、また一皮も二皮も剥ける予感がある。まだ通し稽古の段階とはいえ、圧倒的なセリフ量を身体の隅々まで馴染ませていて、シラノが言葉の天才と呼ばれた由縁を見事に体現していた。人物としても、表現としても難役だとしみじみ思うが、ストイックで芝居好きな古川ならば、初日が開ける頃までにきっと“完成形”に近づけてくるだろう。