斬新な演出で旋風を巻き起こす演出家ショーン・ホームズの『桜の園』
舞台となっているのは、20世紀初頭の南ロシア。原田美枝子扮する女主人ラネーフスカヤが5年ぶりにパリから戻ってくると、“桜の園”が借金返済のために競売にかけられようとしている。一族は没落し、かつて農奴の息子だった男が実業家に。社会が変化し、皆、既存の価値観と決別して生きていかなければならないのだ。物語のそんな時代を、「まさしく我々も似た地点にいる」とショーンは言う。「例えば気候変動の問題ひとつ取っても、どうしていいかわからないけれども変化しなければならないことはわかっている。ですから、ここに出てくる登場人物たちがより近く感じられるようなものにしたいと思っています」。加えてショーンは語る。
「そうした変化の時代に、今世界がどこに向かっているかということに気づくのが、チェーホフのような劇作家である場合が多いのが興味深いと思うんです。演劇は人々を挑発し活性化するエンターテインメント。変化する時代にとって非常に重要なものなんです」。演出には、「亡霊的なものが取り憑いているイメージ」を考えているという。人間というものが漂うように迫ってくるのかもしれない。人間がどう生きてきて、これからどう生きていくのか。