ジャジーな名曲でつづる名作曲家&作詞家コンビの物語「ロジャース/ハート」
で報われない恋の苦しさも十二分に表現してみせた。寺西も伸びやかな歌声で、まっすぐなロジャースの心情を届ける。ふたりがブロードウェイに戻ることを決めて歌う「I Gotta Get Back To New York」などで、彼らの歌声の魅力が存分に伝わってきた。
ふたりを取り巻く人々は、上演台本・訳詞・演出を手がける玉野和紀はじめ、凰稀かなめ、壮一帆、藤岡正明、中河内雅貴らが複数の役柄を演じ分ける。藤岡のパワフルな歌声、中河内の艶やかな歌とダンス、そしてパフォーマンスはもちろん美しさも目を惹きつける凰稀・壮と、ゲネプロ終了後の取材会で「ミュージカル・モンスター」と林・寺西が称えた魅力が満載。非常に充実したステージだ。中でも、ラジオ番組でのドタバタとした展開、ハリウッドでのせわしない撮影所の模様と、コミカルさもロマンチックさもあるステージングは、キャストの歌とダンスの魅力が十二分に発揮されたシーンだったように感じる。
ロジャース&ハートのコンビの終わりと共に幕は下りるが、とても温かなものが心に残る素敵なエンディングだった。
東京公演は有楽町よみうりホールにて、10月18日(水)まで。
取材・文:金井まゆみ