天体の動きと歴史上の出来事はシンクロする?マギー・ハイド×鏡リュウジが「ユング心理学」を紐解く
そうなのですが、ユングにとって、これは彼個人の問題であると同時に人類史の問題でもあったようです。
マギーさんはこんなふうに続けます。
「近代に入ってから、人類の精神は主観と客観を分離し、客観的で合理的な意識を手に入れました。この状況は、占いの“主体と客体が溶け合うような神話的な世界観”と対立しています。
ユングにとってそのような歴史的な変化は、占星術で予測可能なほど、星の動きとシンクロしているとされていました。春分点がゆっくりと黄道の星座たちを逆向きに通過していくのに応じて、時代精神は変化していくというのです。春分点が一つの星座を通過するのに、およそ2000年強かかるため、この2000年単位が“一つの時代精神”となります」
ユングは特に「魚座」を重視していたそうです。なぜなら、天球(観測者を中心とし、天体がそこに貼りついているかのように見える仮想的な球面のこと)上における春分点が、魚座に入った頃にキリストが生まれたから。
「魚は初期キリスト教にとって重要なシンボルでした。魚座は2匹の魚からなる星座で、1匹目は上方に、2匹目は水平に泳いでいます。春分点が上向きの魚を通過したとき、人々の意識は“上向き=神の方向”を向いていましたが、2匹目の魚に春分点が入った頃から近代へと行こうし、人々の心は水平方向、要するに物質主義的になったというのです」