夫の愛が冷めてゆく…それは、妻に
モンスターワイフの影が見えるから…。
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「草食系男子」と表現される男性が数年前から認知されるようなっています。そんな男性陣を、若い女性たちは、
「最近の男性なんてそんなもんでしょ」
「いたって普通」
「ギラギラしてるほうが格好悪い」
という目で見ているようです。
「草食系」などとキャッチーな呼び名を付けられて、メディアにも取り上げられるようになると、「今はそれがスタンダード」という雰囲気が漂い始めます。
けれども、草食系男子が一般化しつつあることと、あなた自身が
パートナーの草食化を良しとするか否かは、まったく別の問題です。
「私の彼、草食系かも…。でも、今はそんなの普通だし、世の中の草食系男子だって結婚してるし。気持ちがやさしいし、家事もしっかりやってくれるし、きっとケンカも少ないだろうし…。
だから私も、彼と結婚して大丈夫よ」
そんなふうに考えて、
草食系の彼との結婚に踏み切る女性たち。どこにでもありそうな話です。
結婚決定は、人生を左右する重要事項。希望的推測も必要。草食系かもしれないけれど、良い点のみをすくい上げなければ結婚などできるものではありません。結婚決定には勢いも大事です。
しかし残念ながら、こうした女性たちが結婚から数年後、「セクシャル系モンスター」と化してしまうケースが少なくないという事実も知っておいてほしい。知ったうえでの結婚であれば、あとの対処法が違ってきます。
自分の性の欲求を甘く見てはいけません。
「こんなはずではなかった」の
新型セクシャル系モンスターワイフ。これが今回のテーマです。
■夫は「草食系男子」…セックスレスに悩む愛美の場合
「モダンセクシャル系モンスター 生殺し妻」代表:愛美(仮名)29歳の場合
会社帰り、書店で女性誌を購入した愛美は、それを隠すようにバッグにしまった。
セックスレス特集の雑誌。もう何冊目だろう。こうした特集の中で伝授される「対策」は、もう片っ端から試した。けれど、どれも効果がなかった。
ネットに流れてくるセックス系の記事もほぼチェックしている。
オフィス帰りの愛美は、ストライプのシャツワンピ姿。艶のあるセミロングの髪を、きれいにブローしている。上品なピンクベージュのバッグも今風。
「女を捨ててる感じの奥さんじゃ、セックスレスになっても仕方ないんじゃない?」
愛美は、そんなふうに言われてしまう“もう女を捨てている”タイプと自分自身は真逆だと思う。ずっと美容に気をつかってきたし、ファッションも男子受けよしのフェミニンにまとめている。夫・純也とのセックスレスに悩むようになってからは、下着もセクシーなものを選ぶようになった。
それなのに、
セックスレスは解消されない。愛美は屈辱感と怒りで爆発しそうだった。
■セックスレスは恋人の時から…結婚しても大丈夫?
愛美と純也は、結婚して2年半になる。
2人の出会いは合コンだった。その合コンでカップルは誕生しなかったが、全員気が合い、その後も男女6人で出かけるようになった。グループ交際。2つ年上の純也はいつもニコニコしていて、愛美にとってやさしい
お兄さんのような存在だった。
動物好きで猫カフェやうさぎカフェに通う愛美に純也が付き合ってくれるようになってから、2人で出かける機会が増えた。動物や子どもにやさしく接する純也の姿を見た愛美は、「この人、旦那さんとしてアリかも」と、彼を異性として意識し始めた。
その後、ITエンジニアとして働く純也が多忙でメンタルが弱っているところを愛美が支えたことで、急接近。愛美のほうから告白して、2人は恋人同士になった。
「子どもは2人欲しいな。いつかペットOKのマンションを買いたい」
愛美のそんな夢を、純也は笑顔で聞いてくれる。彼の温厚な性格は愛美の両親にも気に入られ、2人はスムーズに結婚までこぎつけることができた。
しかし、愛美にはひとつだけ気になることがあった。純也が
セックスを求めてこないことだ。愛美のほうでお膳立てして2、3度したきり、その後はなにもない。
「純くんは最高に優しい。私のことを大切に思ってくれているから、気安くセックスを求めてこないのよ。今は仕事が忙しい時期だし、結婚の準備も大変。だからそんな雰囲気にならないのかも。それに、前に何度かできたんだもの。仕事も結婚生活も落ち着いたら、
セックスだって自然とできるようになるわ」
今はエッチしていないけれど、しようと思えば、環境が整えば、できるようになるはず…。純也の淡白さについてはそう考えることにして、愛美は
結婚に踏み切った。
■セックスレス「うちの夫、もしかしてふつうじゃない?」
結婚生活は楽しかった。
純也はいつも愛美の趣味に付き合ってくれた。
派遣の事務員として働く愛美には残業も繁忙期もなかったが、純也は家事も快く分担。料理上手の純也は、愛美の好物をなんでも作ってくれる。特にイタリアンはプロの腕前。おしゃれのセンスもなかなかだ。周囲からは
「すてきな旦那さん」と言われ、愛美も満足している。
なんの不満もない結婚生活。セックスは相変わらずなかったが、2人で出かけたり、家で映画を観たり、楽しいことがいっぱいで、特に気にならなかった。
そんなある日。愛美の学生時代からの親友、ミナから婚約報告の電話があった。
愛美が結婚した頃、ミナにも婚約寸前の恋人がいたが、別れてしまった。ミナに言わせれば「すごくいい人なんだけど、
スキンシップやセックスが物足りない」というのがその理由だった。1年ほど前に出会った新しい彼とは「気も合うし
セックスの相性もバッチリ。野獣よ。野獣! あん、燃えるーー!」と、ミナは最高に幸せだと言う。
「やっぱりあの時、『いい人だから』ってだけで結婚しちゃわないでよかったよ」。そうのろけるミナの声は、うれしさで弾んでいた。
親友を祝福しながら、愛美は自分たち夫婦の現状を振り返る。純くんはやさしくて真面目で、趣味も合う。でも、純くんがミナの彼の半分でも積極的だったら、もっとうれしいんだけどな。
それに現実的な問題として、そろそろ
子どもも欲しい。となると結婚後一度もしていないというのは、さすがにまずい…。
「今夜、夫を誘ってみよう」。愛美は密かに決意した。
ところがその晩。純也は
「急にどうしたの?」と、明らかにうろたえた表情を見せた。
え? 私たち、夫婦なのに? 「急に」って、じゃあどう誘えばよかったの? 私が誘わなきゃ、純くんからは誘ってくれないじゃない。
自分からの誘いを、夫は
喜ぶどころか拒絶していると感じて、愛美は猛烈に恥ずかしくなった。同時に、純也のほうから男らしく誘ってくれれば、女の私が誘ったりしなくてすんだのにと、夫が憎らしくもある。
「ほら、私ももうすぐ30だし」
恥ずかしさをかき消そうと、愛美は夫を誘った
正当な理由を説明し始めた。
「
子づくりって、始めたらすぐ妊娠、ってわけにはいかないことも多いらしいから。もう今からでも始めたほうがいいと思うの」
純也は相変わらず、居心地が悪そうに視線を落としたままだ。
「いきなりそんなこと言われても…」
純也の腰が引けた態度に、愛美は当惑した。結婚前から「子どもは2人欲しい」って、私いつも言ってたよね? 私の年齢からして、いつ子づくりを始めたって全然驚くような状況じゃないのに。愛美の心の中に、大きな不安が渦巻き始めた。
純也がいわゆる「草食系男子」であることは、結婚前から認識していたこと。それでも結婚して打ち解け合い、まして「子づくり」という明確な目的ができれば、その時には自然にことが進むはずだと、漠然と思っていたのだ。
ところがここへ来て、愛美の
根拠のない楽観主義に暗雲が…。
純くんって、まじで性欲ないのかも。でも、赤ちゃんを授かるために、
セックスは必須。それにミナから聞いた、「心身ともにラブラブ」っていうのも、何だかうらやましい…。
心に渦巻くさまざまなモヤモヤを払拭するには、どうにか夫婦のセックスを軌道にのせるしかない。そう考えて愛美は、明快な実行計画を努めて明るく提示した。
「私の排卵日を予想するから、その時にしようよ」
純也はただ、困ったようにうつむいているだけだった。