連載記事:リアル・モンスターワイフ、再び
不妊治療、引き際が分からない…「専業ベビ待ち」チェック【リアル・モンスターワイフ、再び 第34回】
■妊活「いつまで、どれだけ?」引き際が見えない社会
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あきらめさせてくれない社会。「引き際」が見えなくなる社会。そんな私たちの社会において過度に「頑張り屋」な性格は、妻の精神を崩壊させるモンスターの卵となりうるのです。
典型的な「努力の人」である麻子さんは、こうして妊活モンスターに取りつかれてしまいました。
「どんなに不妊治療の副作用がつらくても、妊活がどんなに苦痛でも、ゴールまで絶対に立ち止まらずに走りきる」
「大切な仕事をあきらめてまで妊活を選んだのだから、ここで手をゆるめたり、あきらめたりするわけにはいかない。絶対に妊活を成功させなければならない」
本人は明確なゴールに向かって、前向きに全力疾走しているつもりなのです。ところが、取捨選択しきれないほどの情報や広告というノイズに混乱させられて、いつしか
迷走、暴走するようになってしまいます。そうすると…
「この治療は副作用がキツすぎて、体がもたないわ。
別の方法がないか、お医者さんに相談してみよう」
「毎日毎日、健康第一の妊活メニューばっかりで飽きちゃった。今日はガッツリお肉だらけにしちゃおうかしら。
そういえば夫も『久しぶりに焼き肉が食べたい』って言ってたっけ。夫婦で気晴らし、気晴らし!」
なんて考えは、絶対に浮かびません。ゴールに向かう足を少しでも止めたら、それは努力家の妻にとっては「逃げ」なのですから。
もちろん「子どもをあきらめる」なんていう選択肢もありませんし、「いつまで妊活を続けるか」という冷静な見通しもありません。
不妊治療で心も体も疲れはて、泣く泣く妊活を終了するも、長年続いた苦しい日々で夫婦関係は破綻状態。経済的にも危機的状況…というケースもあります。
子どもを持つ未来へのビジョン、それにともなうリスクと心的負担は、妊活を開始する前、できるだけ冷静なうちに夫と共有してください。そうすれば妻が迷走・暴走を始めそうになった時に、夫がストッパーとして機能することが可能です。
さらに、将来のビジョンを共有することにより、
「妻だけがひとりで暴走し、夫は置いてけぼり」という状況に陥るのを防ぎ、妊活による夫婦仲の悪化防止にもつながります。
「結婚はゴールではなくスタート」だと、よく言います。妊娠・出産も同じです。子どもを授かったその日から、夫婦は父親と母親という新しい役割を担って、新たなスタートをきるのです。
ところが、とにかく妊娠することしか頭にない妊活中の妻は、夫との関係など考える余裕がなくなってしまうことが多いように感じます。
「子どもが生まれてから忙しくて、夫婦仲が…」となげく妻が多いのですが、実は早くも
妊活中から、夫婦仲にヒビが入り始めているケースが少なくないのです。
「待ちに待った、待望の赤ちゃんを迎えるその日には、仲良しのパパとママでいたい」
そんな思いを頭の片隅にでも常に置いておけば、夫を完全に無視した暴走は避けることができるでしょう。