もし「黒い10人の女」の主人公が愛人にすべての財産を贈与したら妻はどうなる?
松吉の遺言を文字通り貫徹した場合、松吉亡き後の妻は路頭に迷ってしまうという不都合が生じてしまいます。このような不都合を許してまで松吉の意思を尊重すべきなのでしょうか?
■民法は相続人を見捨てない~困った時の遺留分減殺請求権~
民法は、松吉の妻のような相続人を見捨てません。相続人の生活の安定及び財産の公平な分配を図るために、民法は、亡くなった人(「被相続人」といいます)の贈与や遺贈に対して制限を加えています(遺留分制度)。
そして、その制限が加えられた持分割合のことを「遺留分」といい、相続後相続人が遺留分の額をもらえないときに、亡くなった人から財産をもらいすぎた人に対して「もらいすぎた分を返せ」と請求することができます。これを法律用語で遺留分減殺請求権(民法1031条)といいます。
話が抽象的でわかりやすくなってしまいましたね。亡くなった人の財産を円形のピザにたとえて説明しましょう。
遺留分制度がなければ、松吉は円形のピザを全部愛人に包括遺贈することができます。
しかし、遺留分制度があるおかげで、松吉の妻は、遺留分減殺請求権を行使し、ピザを2等分した場合の一切れ分(2分の1)