芸能事務所としては、アイドルを売り出すにあたって、相当な初期投資をするでしょうから、彼氏がいることが発覚し、人気が落ちで商売にならない、というようなことを防ぎたいと思うことでしょう。それはそれで合理的な考え方だと思います。
一方、アイドルも人間として、誰かと恋愛をしたいという願望があるはずであり、人間としての当然のことだと思います。
その折衷的な考えとして、恋愛が発覚したことにより、事務所に損害が発生することを十分に認識しながら、あえて恋愛行為をした場合には、故意による債務不履行として、損害賠償債務を負わせてもよろしいのではないかと考える次第です」(小野弁護士)
■アイドルへの損害賠償請求、割れる判決
2015年9月、恋愛禁止違反のアイドルへに対し所属事務所側からの損害賠償請求訴訟の判決が出ました。
恋愛禁止や発覚時の損害賠償が契約書に明記されていた上での債務不履行だと判断され、アイドルには規約違反を理由に65万円の損害賠償が命じられました。一方、2016年1月にも同様のケースの訴訟がありましたが、こちらは事務所側の請求は棄却されました。
異性との交際は自分の人生をより豊かに生きるために大切な自己決定権そのものであり、「損害賠償という制裁をもってこれを禁ずるというのは、いかにアイドルという職業上の特性を考慮したとしても、いささか行き過ぎな感は否め」