シェアしたくなる法律相談所がお届けする新着記事一覧 (21/28)
満員の通勤電車に乗っているとき、イライラや疲労感を感じながらも、男性ならば頭の片隅に「痴漢冤罪に巻き込まれたら……」といったことを考えている方が多いかと思います。もし痴漢冤罪にあったらどのような対応をとるのが良いのでしょうか。今回は、痴漢冤罪事件に巻き込まれた場合の対処法について説明したいと思います。*画像はイメージです:■痴漢冤罪にあったら「とりあえず逃げる」は正しいか?ネット上では、痴漢冤罪にあったら、相手に自分の名刺を渡して走って逃げるべきだといった記事を目にします。確かに、走って逃げればその場で逮捕されることはないでしょう。しかし、その場では逮捕されることはなくても、後日、逮捕状に基づき通常逮捕される可能性が高いので、走って逃げてもその場にとどまっていても逮捕される、という結論に違いはないと考えます。さらに、裁判になった場合、何か後ろめたいことがあったから逃げたのではないかという悪印象を裁判官に抱かれる危険性もあります。また、走って逃げたということから罪証隠滅の危険性があるということで、保釈請求が却下される可能性も高まります。そのため、痴漢冤罪にあった場合、走って逃げるという方法はとるべきではないと考えます。 ■痴漢冤罪にあったらどうすべきか?痴漢冤罪にあったら、その場にとどまったうえで、弁護士が到着するまでは何も話さないと黙秘し続けるべきです。そして、弁護士が到着したら、弁護士から黙秘権などの権利の説明を受けたうえで、身の潔白を主張してください。なお、各弁護士会では「当番弁護士」という無料で弁護士の派遣を受けられる制度があるので、駅員等に頼んで弁護士会に電話してもらい、当番弁護士を派遣するよう依頼するのがよいでしょう。 *著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)【画像】イメージです*John Ramkhamhaeng / Shutterstock
2017年02月23日これからの時期は、入学や就職、異動などで引越しが増える時期で、引越しの準備をしている方も多いと思います。まもなく始まる新生活に漠然と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。杞憂に終わればいいですが、引越しの際はトラブルが起こりやすいです。引越しの業者や不動産会社、オーナーなど、トラブルにならないに越したことはありません。そこで今回は、トラブルを起こさないために気を付けておきたい6つのポイントをご紹介したいと思います。細かいことかもしれませんが、後々大きなトラブルとなってしまう前に心がけておきたいですね。*画像はイメージです:■入居後の室内確認内覧や引越し時に部屋の現状を確認している方は多いと思いますが、引越しが完了した後も、生活していて、入居前からの部屋の傷・損傷等を発見したら、すぐに管理会社や大家に知らせ、自分でも日付入りの写真をとっておくようにしましょう。退去時の原状回復をめぐるトラブル防止に役立ちます。 ■室内の使用方法賃貸であれば、特に壁紙へのピン止めには気を付けましょう。ピン止め専用の場所でない限り、ピン止めした痕が残り、退去時にクロスの張替費用を請求される可能性があります。カレンダーや生活用品をかけるのに必要な範囲であれば、通常の使用に伴う通常損耗として、原状回復は貸主負担となるのが原則ですが、入居時の特約で借主負担となっているケースがあります。どうしても必要な場合以外は、ピン止めは慎重にした方が無難です。 ■壁紙クロスの汚れ意外とやりがちなのが、炊飯器や冷蔵庫、オーブンレンジ、ホームベーカリーの後ろの壁紙の着色です。距離が近すぎると着色の可能性が高くなります。壁紙との間に一枚紙を挟むなどするか、十分な距離を空けるようにしましょう。着色汚れがあっても、基本的には通常の生活使用に伴う損耗ですので、貸主負担ですが、こちらも特約で借主に張替費用が請求される場合がありますので、汚さないように注意するに越したことはありません。 ■前住人の郵便物開封転居届を出していない前の住人宛の郵便物が届いた経験はありませんか?なんとなく気持ち悪いですが、理由なく開封すると、プライバシー侵害となるおそれがありますので注意しましょう。 ■共有部分の使用方法マンションであれば、共有部分の使用方法が細かく決まっています。また、デザイナーズマンションでは、ベランダの使用方法にも制限があります。ゴミ出しのルールも含めて、マンションの管理規則違反を繰り返していると、内容によっては、賃貸借契約の債務不履行として賃貸借契約解除をされることもありますので、使用ルールは遵守しましょう。 ■同居人の追加学生さんであれば、1人暮らし用のマンションに彼氏や彼女を連れ込むこともあると思います。たまに泊まらせる程度であれば、問題ありませんが、同棲・同居まで達していると注意が必要です。契約時に、同居禁止・1人暮らし専用となっていることがあり、無断で同居人を追加すると契約違反となるおそれがあります。 *この記事は2015年4月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)【画像】イメージです*Mills / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月23日飲酒運転は立派な犯罪であることは皆さんもご存知だと思います。お酒を飲んだ場合には、車には乗れませんので、電車やバスといった公共機関を使用して移動をすることになりますが、ほんのちょっとしかお酒を飲んでいない場合には「運転しても問題なく移動できるのになぁ……」と思うこともあるのではないでしょうか。そこで今回は、アルコール度数が弱いお酒を飲んだ場合や一口しかお酒を飲んでいない場合は、道路交通法に触れるのかどうかという点について解説してみたいと思います。*画像はイメージです:■道交法違反となる可能性がある結論からいうと、もちろんアルコール1%の飲料であっても酒酔い運転を禁止した道交法に違反する可能性があり、注意が必要です。酒酔い運転については、法律の規定の仕方がわかりにくい(条文が読みにくい)こともあって、知っているようでよくわからない、という方も多いかもしれません。まず、基本となる条文をご紹介します。 ■道交法に書かれている内容道交法第65条「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」ここでは、特に酒気帯びの基準は具体的に規定されていません。次に、道交法第117条の2では、酒気帯び運転を禁止した道交法65条違反の罰則を定めています。すなわち、「第65条(酒気帯び運転等の禁止)の規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔つた状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう)にあつた者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。」また、道交法117条の2の2では「第65条(酒気帯び運転等の禁止)の規定に違反して車両等を運転した者で、・・・身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあつた者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と定めています。以上の道交法65条、117条の2、117条の2の2の規定を合わせて読むと、酒酔い運転:アルコールの影響により正常な運転ができないおそれのある状態酒気帯び運転:呼気1リットル中のアルコール濃度0.15mg(政令で定める基準)以上の状態となります。 ■道交法違反となる理由道交法の酒酔い運転の要件の規定の仕方からわかるとおり、「どれくらいの量のお酒を飲んだか」は基準ではなく、検出されたアルコール濃度の程度や正常に運転できる状態かどうかが基準とされています。したがって、たとえアルコール1%の飲料であっても、体調等により正常な運転ができないおそれがある状態に陥った場合、酒酔い運転と認定される可能性があります。また、そこまで酔っていなくとも呼気1リットル中のアルコール濃度0.15mg以上が検出されれば、酒気帯び運転と認定される可能性があります。飲酒運転による悲惨な事故が相次いだ影響で、現在は、飲酒運転に対する厳罰化が進んでいます。アルコール度数が低いからといって、決して油断せず、飲酒運転は絶対に控えましょう。また、飲酒した翌日でもアルコールが抜けきっていない場合もあるので、こちらも注意が必要です。 *この記事は2015年5月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)【画像】イメージです* Lesterman / Shutterstock
2017年02月22日「癒やしブーム」は過ぎ去ったようですが、いまだにスーパー銭湯などのお風呂屋さんは一定の人気を持っているようです。やはり大きな湯船でくつろぐことは、日々の生活で蓄積された身体の疲れをとってくれます。そんな銭湯で困ってしまうのが、子どもの扱い。小学校高学年の男子が女湯に入ってきたりすると、やはり嫌なものです。小学生とはいえ男子が明らかに性的な目で女性をみているのは不愉快以外のなにものでもなく、「やめろ」と怒鳴りたくなります。逆もまた、気分のいいものではないでしょう。しかし店側が認めているから入ってくるわけで、注意もされないのが現状。かなり納得のいかないものを感じます。法律的に規定はどのようになっているのでしょうか?和田金法律事務所の渡邊寛弁護士に見解を伺いました。 Q.小学校高学年が異性用の風呂に入ることをやめさせることはできないのですか?*画像はイメージです:都道府県の条例で定める年齢を超えていればやめさせることはできます。「銭湯に適用される公衆浴場法3条は、営業者が取るべき公衆浴場の衛生及び風紀に関する措置の基準を都道府県の条例で定めることとしています。そのため、何歳まで混浴が許されるかは各都道府県によって異なります。もっとも、厚生労働省の通知である“公衆浴場における衛生等管理要領”では、“おおむね10歳以上の男女を混浴させないこと”としています。都道府県条例の年齢制限もこの基準に沿って10歳以上は混浴不可(9歳までOK)とするものが多いので、多くの都道府県では小学校高学年男子は女湯に入れないことになります。逆に小学校高学年女子が男湯に入ることもできません。制限年齢が1番低い都道府県は京都府で、混浴は6歳までです。他方、制限年齢が高い都道府県は北海道、岩手県、山形県、栃木県、岐阜県、香川県で、条例上は11歳まで混浴OKですので、小学校高学年でも男女湯どちらも入れることになります(北海道では、条例の制限年齢にかかわらず、浴場組合が混浴を9歳までとする基準を採用しているようです)。混浴の制限年齢は地域によって異なりますし、見た目と年齢が離れていることもあります。制限年齢以上の男女を混浴させてならないのは浴場営業者ですので、大きな子どもの混浴に疑問を感じたときは、その銭湯の方に相談するのがよいでしょう」(渡邊弁護士) 入浴に関する年齢制限は各都道府県ごとの条例によって決められるため、バラつきがあるようです。できれば統一してほしいような気もしますが、これが現状のようです。あまりにも不愉快な場合は、銭湯運営会社に相談してみましょう。 *取材協力弁護士: 渡邊寛 (和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。東京築地を拠点に、M&A等の企業法務のほか、個人一般民事事件、刑事事件も扱う。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*IYO / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月22日離婚時に揉める大きな原因のうちのひとつに「養育費」があります。養育費を払う、払わない、いくら払うのか、いつまで払うのかなどはもちろん、離婚後にそれぞれの生活環境が変わってしまった時など、離婚時だけでなく、離婚後も揉めるケースがあります。今回は、元妻に対して養育費の支払いを約束して離婚したが、その後、元妻がお金持ちの男性と再婚したような場合、養育費の金額を減額したり、支払い自体をストップすることはできるのかといった点について解説したいと思います。*画像はイメージです:■減額をしたい場合、まずは協議をすること一度決まった養育費を減額したい場合、まずは元妻との間で協議することになります。協議が整わない場合には、家庭裁判所に対して養育費減額の調停・審判を申し立てる必要があります。協議が整わないからといって、家庭裁判所の調停や審判を経ずに、一方的に養育費の金額を減額したり、支払いをストップすることはできません。 ■どのような時に養育費の減額が可能になるのか養育費の減額が認められるのは、離婚後に事情変更が認められる場合です(民法880条)。事情変更として認められるのは、子どもが大きな病気をしたり、進学したりすることで、特別の費用が必要になった場合や、義務者の収入が失業等で減少した場合、権利者の収入が増加した場合などとされています(冨永忠祐編・『離婚事件処理マニュアル』より)。もっとも、どんなに重大な事情の変更があっても、養育費を全く支払わなくてもよいということにはならないでしょう。元妻がどんなにお金持ちの男性と結婚したからといって、自分の子どもであることには変わりはないので、全く養育費を支払わなくても良いことにはならないということです。 以上のとおり、一度決められた養育費の金額を減額したい場合、まずは元配偶者との間で協議し、協議が整わない場合には、必ず、家庭裁判所に対して、調停・審判を申し立てる必要があります。今回のケースでも、元妻が金持ちの男性と再婚したからといって一方的に養育費を減額することはできず、まずは元妻と協議し、協議が整わない場合には、元妻に対して、養育費減額の調停や審判を申し立てる必要があるということになります。 *著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)【画像】イメージです*cba / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月21日最近、梅毒が急増しているといわれています。原因は諸説ありますが、風俗産業の低価格化や性病への意識の低さなどが指摘されているようです。梅毒はおもに性行為によって感染する病気で、有名な武将も梅毒で命を落としたといわれています。現在はペニシリンの開発で死することはほとんどないようですが、恐ろしいものであることには変わりありません。仮に感染経路が「風俗産業」と確実に特定できるのならば、「梅毒を移された」と提訴したくなります。現実的にそのような法的措置に出る人は少ないとは思いますが、1つの選択肢として可能性を探ってみましょう。和田金法律事務所の渡邊寛弁護士に可能であるかどうかを伺いました。 Q.梅毒を風俗店で移されたと特定できる場合、店を訴えることができる?*画像はイメージです:現実的には難しい「理屈としては、店舗が損害賠償責任を負うこともあり得ます。もっとも店舗に対して不法行為に基づく損害賠償請求が認められるには、請求する側が、①店舗やサービスを行った従業員の故意・過失、②損害の発生、③行為と損害との因果関係を立証しなければなりません。②の損害の発生の立証は容易でしょうが、①故意・過失や③因果関係の立証は難しいことが多いでしょう。客の主観的には、特定の風俗店での感染が確実であっても、因果関係が認められるには、風俗店従業員も梅毒に感染していたことや他の感染経路の合理的可能性がないことを立証しなければならず、相当難しいものと思われます。さらに、①故意・過失があったというには、従業員が自身の梅毒罹患を知っていたとか、店舗が必要な性病検査を怠っていたとかを主張立証することになりますが、これも簡単ではありません」(渡邊弁護士) やはり現実的には「ムリ」という結論のようです。自己防衛するしかありませんね。 *取材協力弁護士: 渡邊寛 (和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。東京築地を拠点に、M&A等の企業法務のほか、個人一般民事事件、刑事事件も扱う。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*TLpixs / Shutterstock
2017年02月20日皆さんは裁判を経験したことがありますか?21世紀に入ってからの日本での訴訟件数は2003年の約612万件をピークに年々減少しており、2015年の訴訟件数は約350万件となっているようです(裁判所データブック2016より)。年々訴訟の件数は減少しているといっても、いつ被害者になって(もしくは加害者になって)、裁判沙汰に巻き込まれるかも分かりませんから、どういった弁護士が良いのか知っておきたいところではないでしょうか?そこで、今回はシェアしたくなる法律相談所にて執筆されている弁護士の方々から、「良い弁護士」とはどういった弁護士なのか、コメントをいただきました。*画像はイメージです:■河野晃弁護士非常に難しい質問ですね(笑)「良い弁護士」というのは、多様な評価を含む表現ですので、「自分が頼むとしたらどういう弁護士か」という視点で答えたいと思います。仮に僕が、法的知識が無い状態で法的トラブルの当事者になり、弁護士に依頼しようとする場合、まずは何よりも「きちんと話ができる弁護士」、「話が分かりやすい弁護士」、「何でも話せる弁護士」……、そういう部分を重視します。一度、弁護士に案件を依頼すると、多くの場合、数か月から場合によっては1年以上の付き合いになります。事件に関する事情聴取や進め方に関する打ち合わせなど、何度も何度も話をする機会があります。もし、依頼した弁護士が話しにくい人で、言いたいことも言えない、話を聞いても何を言っているか分からない、分からないことを気軽に聞けない……。こういうことが続き、うまくコミュニケーションが取れないと、重要な事実を伝えきれなかったり、お互いが勘違いしたまま話が進み、結果として良くない結果となってしまいます。また、弁護士と依頼者との間でトラブルに発展することにも繋がります。「ほんとにそんな人いるの?」と思われるかもしれませんが、弁護士も人間ですので、色んな人がいます。また、ある人にとっては合う人でも、別の人からすれば合わないということも有り得ます。あくまでも、「自分にとって」という意味で、コミュニケーションの取りやすさは、良い弁護士選びの第一歩だと思います。 ■星野宏明弁護士いろいろな基準がありますが、実際に選ぶ際には、処理方針や人柄が自分と合うかどうか、という点が一番のポイントと思います。弁護士業務の中にも専門性が高い分野もありますが、たとえば離婚や交通事故など一般の方が依頼することになるような事件は、普通はどの弁護士でも扱うことができます。よほど特殊な事件でない限り、HPに書かれた宣伝文句よりも、まずは一度相談で面会して、処理方針や人柄が自分とマッチするかどうかに気をつけたほうがよいでしょう。訴訟などは解決まで数か月から年単位で時間がかかり、その間、弁護士と協同して解決に向けて動くことになります。よく話を聞いてくれる方がいいのか、逆にてきぱきと方針を明確に示して決めてくれるほうがよいのかなど、弁護士によって事務処理の傾向は異なります。近年はインターネット経由の問い合わせをする方も増えていますが、実際に面会したときに感じた自分の感覚も大事にするのは重要です。 ■小野智彦弁護士まずは、相談者の話の腰を折らずに、最後まで話を聞いてくれること、フットワークが軽いことが、相談者にとって良い弁護士の共通点だと思います。そして、一方的に相談者の話を鵜呑みにしないで、最悪のケースも示し、安請け合いをしないことも重要です。何よりも、相談者を勝たせるという側面よりも、どうやったらこの紛争が治るかということに重点を置いて話をしてくれるか、ということも重要なポイントです。過去の事例(特に自分で扱った事例)ではどうなったとか、相手方としてはどんな反論が予想されるのか、など色んな角度から検討し、落とし所を見つけ、相談者の目標値を設定してくれるような方が信頼できるかと思います。相談者の不安を少しでも消し去るよう、終始笑顔でいてくれたり、会話の中に冗談を交えてくれるような方だとなおよろしいかと思います。最終的には、弁護士との相性が何よりも一番です。話をしやすそうな方、ご自身と考え方や感覚のあった方を選べば、問題ないかと思います。 3名の弁護士にコメントをいただきましたが、やはり「自分に合うかどうか」が大切なようですね。読者の皆さんが相談される際には、この点を意識してみてはいかがでしょうか? 【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)3人の弁護士に聞いた!「良い弁護士」ってどんな人?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。3人の弁護士に聞いた!「良い弁護士」ってどんな人?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。
2017年02月20日皆さんはスマートフォンで写真を撮りますか?最近はカメラブームが到来しており、一眼カメラを持つ方も多くいるのではないでしょか。とはいえ、スマートフォンのカメラの性能もどんどん良くなっており、高い利便性からスマートフォンだけで写真を撮影する方も少なくないと思います。そんな便利になったスマートフォンですが、実は盗撮に用いられることもあり、無音カメラアプリではシャッター音を出さずに撮影できることもあり、悪用されるケースが増えてきているようです。こういったアプリでは、「赤ちゃんの寝顔を撮影するとき」「静かな授業の教室で黒板を撮影するとき」といった使用シーン例も挙げられていますが、この無音カメラは法的に取り締まることはできないのでしょうか?*画像はイメージです:■無音カメラは規制できるのか無音カメラの問題は、ひとえに盗撮に使われやすい、ということに尽きます。よくあるのは、駅のエレベーター等で、若い女性のスカートの中を隠し撮りをしたということで、各地方自治体の迷惑防止条例違反で検挙される例があります。無音アプリなどで、このようなことをする輩が多くいます。では、盗撮目的で無音アプリを入れる行為を法律で規制することができるでしょうか?刑法上は、予備罪というものがありますが、基本的には法律に予備罪を処罰する規定がある場合にだけ、予備罪の適用があることになっています。そうでないと、悪しき意思を持っただけで処罰されかねませんし、子供の寝顔をとるためにシャッター音を消すアプリを入れたにすぎない場合にも処罰されかねないからです。迷惑防止条例には、予備罪の処罰規定がありませんし、犯罪意思を持って行われたかどうかの線引きがとても難しいですので、刑事法で規制するのは難しいでしょう。Googleグラスなどでもウィンクしただけで写真撮影できてしまうことで、被写体の肖像権侵害が発生する問題が指摘されていたりしますが、無音アプリでも同じ問題が生じます。しかし、これも事後的に肖像権侵害による損害賠償請求等の法的措置を執ることはできても、事前に法律で規制をするのは難しいでしょう。こういう問題は、電子カメラの業界内で、無音にできない仕様にするなどの自主規制をし、電子カメラは無音にできないという国民意識を安定させた上で、立法化に踏み切る等の順序を経ていかないと解決するのは難しいのではないかと思います。 *この記事は2014年4月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所代表。手品、フルート演奏、手相鑑定、カメラ等と多趣味。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする)【画像】イメージです*tomos / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月19日2月も気が付けば半分が過ぎ、3月を迎えようとしています。3月になると、学生は新生活に望むため、一方社会人は異動のために、引越しが増える時期となり、引越し業者も最繁忙期を迎えます。引越しの時期になると色々やるべきことが増えて、意外と(?)忘れがちになることとして、転出届や転入届といった届出を提出することではないでしょうか。面倒くさがって届出ないという方も、もしかしたらいるのかもしれませんが、今回はこういった届出を怠った場合についてや、届出にはどういった法的な定めがあるのかなどについて解説していきたいと思います。*画像はイメージです:■「転居届」「転出届」「転入届」とは?住民基本台帳法という法律によれば、引越しの際に必要な届出として「転居届」「転出届」「転入届」の3つが定められています。このうち、「転居届」とは前と同じ市区町村の中で引越しをして住所が変わった場合に、行わなければならない届出を指します。これに対し、「転出届」「転入届」とは、それまで居住していたところとは異なる市区町村に引越しをする場合に必要な届出です。引っ越す前の市町村に転出予定日などを届け出るのが転出届、引越した市区町村に引越した日や前の住所などを届け出るのが転入届となります。転居届と転入届は、それぞれ転居した日、転入した日から14日以内に行わなければならないと定められています。 ■届出を怠った場合の罰則先の3つの届出を正当な理由もないのに怠った場合には、5万円以下の過料を支払わねばならなくなる可能性があります。なお、過料とは法律上の義務に違反した場合に課される金銭罰であり、刑罰ではありません。支払いを命じられたとしても、前科や前歴となるわけではありません。正当な理由というのは、例えば病気や事故で怪我をしたために14日以内に届出できなかった、というケースが考えられます。 ■過料以外に考えられる不利益先の届出をしなかった場合に生じる他の不利益として考えられるのは、まず、選挙権を行使できない場合がありうるという点です。市区町村の選挙人名簿に登録されるのは、転入届を出してから3ヶ月後になります。14日以内に届出をしなかったばかりに選挙人名簿に登録されず投票できないという事態が起こる可能性があります。また、住民税も当然住所が置かれている市町村で課されることとなるため、届出を出していなかったばかりに高い税金を支払わねばならないといった事態になることもありえます。離婚等の事情により子供を一人で育てているケースでは、その市区町村から児童扶養手当を受け取ることができないといった不利益が生じる場合もありえます。たかが届出1つと考えている方もいるかもしれませんが、怠ることによって被る不利益も少なくありません。引越しをする場合には早めに届出をするよう心がけましょう。 *この記事は2015年2月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)【画像】イメージです*xiangtao / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月18日*画像はイメージです:新規開設したキュレーションサイトや、個人ブログ、クラウドソーシングでクライアントに提出する原稿――数をこなして、てっとり早くアクセスや賃金を稼ぐのに用いられているのが、他人の書いたWEB記事の無断コピペ流用です。ネットの記事はもちろん、ライターが撮影した写真までマルパクするのに、ほんの10秒もかかりません。デジタルの世界ではこのコピペが簡単なので、ふだん企業が開設している商業サイトに記事を提供しているプロライターが、ある日、自分の記事が丸ごとコピーされているのを知って仰天することが多々あります。提携先に転載されることはあっても、記名と出典元は明らかにされていますが、出典元はなく、記名も替えられていた時はどうすればいいでしょうか?著作権問題に詳しい、パロス法律事務所の櫻町直樹弁護士に対応方法をお訊きしました。 ■明確な著作権の侵害!記事の差し止めを請求「無断でブログに記事を転載(盗用)してネットユーザーに閲覧させることは、記事という「言語の著作物」(著作権法10条1項1号)の著作権(より具体的には送信可能化権・公衆送信権。著作権法23条1項)を侵害する行為ですから、元の記事の著作権を有する者が差止め(削除)請求することができます」(櫻町弁護士)元の記事が商業サイトの中で掲載されており、記事執筆者が著作権をサイト運営者に譲渡している場合は、サイト運営者が著作権者として差し止め請求の主体となるそうです。プロライターが記事執筆の対価を得ている場合、こうした契約になっている場合がほとんどでしょう。では個人の記事がマルっとコピペされていた場合はというと、個人が著作権者となります。こういった場合、請求先はどこになるのでしょうか?「請求先は、個人ブログなら盗用したブログ主個人と、ブログサービスを提供している会社の双方が考えられます。連絡先が記載されていない個人ブログもありますので、そのような場合にはブログサービスを提供している会社に請求することになるでしょう。」(櫻町弁護士) ■相手が個人なら個人とブログサービス提供会社へ通告!ブログサービスを提供している会社への通告には、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会が策定、公表している『著作物等の送信を防止する措置の申出について』を用いると手続きがスムーズになる場合があるということなので、活用をお薦めします(会社によって書式への記載例を掲載している場合もあります)。「その際、自分が著作権者であることを示すための資料として、元の記事が掲載されている画面のキャプチャ(URLや掲載日なども分かる形)を印刷したものと、著作権侵害がされていることを示すための資料として、盗用された記事が掲載されている画面のキャプチャ(こちらもURL等が分かる形)を印刷したものも、あわせて送付するのがよいでしょう」(櫻町弁護士) ■著作権侵害の罰則は意外に重いところで、この丸ごと盗用ですが、どんな罪に問われるのでしょうか?「著作権の侵害には罰則が規定されており、今回のケースのような著作権侵害の場合は“10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科”(著作権法119条1項)と、かなり重い刑罰が科せられる可能性があります。また、実際に逮捕されている例もあり、軽い気持ちで著作物を盗用すると、想像以上に重い罪になる可能性があると考えたほうがいいでしょう」(櫻町弁護士)コピペの作業自体があまりにも簡単なので、刑も軽いと思ったら大間違いなのです。 ■慰謝料を請求することはできるか?最近ではInstagramやブログなどからプロ・アマを問わず写真を盗用しているケースも増えており、中には商業サイトがこれを大々的に行っていて、問題視されています。これに関しても記事盗用と同じくただちに掲載差し止めを求めると共に、有料フォトサービスなどに登録している場合は、そのサイトに交渉を任せたほうがいいでしょう。なお、著作物盗用は実に不快なので「慰謝料」をふんだくりたくもなりますが、損害が財産的損害にとどまる場合、一般に、慰謝料が認められる可能性は低く、著作権侵害の場合も、認められにくいのが現状です。「ただし、『著作者人格権』(公表権、氏名表示権、同一性保持権)については、相続・譲渡できない一身専属的な権利であり、著作者の人格的な利益を保護するためのものという性質から、それが侵害された場合には精神的苦痛が生じたということが言いやすく、慰謝料が認められることが多いといえます」(櫻町弁護士)著作者の名前をまったく別の人間の名前にしていたりすれば、この「著作者人格権」を侵していることになり、これに対して慰謝料を請求することも可能と言うことです。個別のケースにもよりますので、弁護士に相談のうえ、自作の著作権を守りましょう。 *取材協力弁護士:櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。ブログ「ネットイージス.com」)*取材・文:梅田勝司(千葉県出身。10年以上に渡った業界新聞、男性誌の編集を経て独立。以後、フリーのライター・編集者として活躍中。コンテンツ全般、IT系、社会情勢など、興味の赴く対象ならなんでも本の作成、ライティングを行う。)【画像】イメージです*Sielan/ Shutterstock
2017年02月17日2月も半分が過ぎ、3月の足音が聞こえてきました。3月といえば卒業や異動のシーズンで、引っ越しが多くなる時期。不動産会社や引越センターにとってはかきいれ時といえます。そんななか、どさくさに紛れて大家が賃料を値上げしてくることがあります。神奈川県内に在住のSさんは、家賃8万円のマンションを借りて生活していましたが、今月に入り突然「10万円」への賃料アップを要求されたそう。8万円と10万円差は決して小さくないため、なんとか拒否したいもの。そもそもそんなことが法的に許されるのか?やはり払うか、退去するかの二択になるのでしょうか?諏訪坂法律事務所の多田幸生弁護士にご意見を伺いました。Q.大家さんが賃上げを要求してきた……飲めないなら退去するしかない?*画像はイメージです:必ずしも値上げに応じる必要はありませんが、慎重に対応してください「まず、賃貸借契約書に、家賃の変更方法についての取り決めがないことを確認しましょう。以下は、取り決めがなかった場合について、話を進めます(取り決めがある場合は、それに従ってください)。家賃はあなたと大家さんの合意により決めるべきものですから、あなたは値上げに合意せず、断ることもできます。ただし、“慎重な対応が必要である”ことにご注意ください。例えば、大家さんの一方的な値上げが不満だからといって、賃料の支払をストップしては絶対にいけません。大家さんから、家賃の不払いを理由に賃貸借契約を解除されてしまい、あなたは退去しなければならなくなってしまいます。大家さんの一方的な賃上げが不満な場合は、従前からの金額の支払を続けましょう。先ほどの例なら、月額8万円です。毎月8万円を支払っておけば、家賃の不払いを理由に賃貸借契約を解除されることはありません(仮に大家さんが「解除した」と言ってきても、法的には無意味です)。次に、大家さんには、あなたの合意なしに、賃上げする手段がある、ということも覚えておきましょう。ここでは細かく述べませんが、たとえば近隣の家賃相場が値上がりしたり、物価の上昇があったりして、従前からの家賃が近隣の相場と比べて安くなっているような場合、大家さんは、裁判手続(賃料増額請求訴訟等)により、近隣の相場並みまで賃上げをすることができる可能性があります。怖いのは、もし、裁判手続により賃上げが認められてしまった場合、あなたは、大家さんに対し、思いもよらぬ多額の支払い義務を負ってしまう可能性があるという点です。たとえば、裁判手続に2年かかり、2年後に、大家さんの主張どおり、月額10万円への賃上げが認められたとしましょう。賃上げが過去にさかのぼって認められた場合、あなたは毎月2万円×2年間=48万円分の賃料支払いの不足があることになります。しかも、不足額48万円には支払期からの遅延損害金が付きます。その割合は、なんと年10%です(借地借家法第32条2項)。あなたがこれをただちに支払えるならよいのですが、もし支払えない場合、賃貸借契約を解除され、結局、退去しなければならなくなってしまう可能性があります。判断するうえで大事なのは、“今の家賃が、相場から見て妥当な金額かどうか”です。もし、相場よりも安くなっているという場合には、安易に値上げを拒否していると、あとで痛い目にあう可能性があります。ご自分で判断されず、専門家に相談するなどして、慎重に対応されることをお勧めします」(多田弁護士) 仮に賃料値上げをアナウンスされた場合は、自分で判断するのではなく、弁護士や不動産の知識を持つ第三者、国民生活センターなどに問い合わせてみましょう。 *取材協力弁護士:多田幸生(諏訪坂法律事務所所属。会社法務・企業法務の豊富な経験があり、大手証券会社の法務職としての経歴を活かし、「守りの法務」だけでなく「攻めの法務」を提供。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*miya227 / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月17日日本の国民病というべき病気、癌。以前は不治の病とされていましたが、現在は早期発見早期治療を行えば治すことも可能になりました。それだけに、変調を感じたらすぐに病院にいくことが重要。また、複数の医師から意見を聞くセカンド・オピニオンも早期発見にとっては大事な要素といえます。しかし、わかっていてはいても1回目の病院で「異常なし」といわれれば安心してしまい、別の病院にいくことをやめてしまうもの。安心しきってしばらく過ごしたものの、違和感や痛みがひどくなり2回目の病院検査を受けてみたら、医師から「かなり重篤な癌です。もう少し発見が早ければ」と告げられた。この場合初回の検査を担当し、「異常なし」の結論をだした医師を提訴したくなります。はたしてそのようなことは可能なのでしょうか?医療問題に詳しい三宅坂総合法律事務所の伊東亜矢子弁護士に意見を伺いました。 Q.2回目の検査で重篤な癌が判明した場合、1回目で「異常なし」の判断をした医師を訴えることができる?*画像はイメージです:提訴に踏み切るには十分な事前調査が必要です。「単純な見落としなのか、結果論からすれば初回検査時から癌があったと言わざるを得ないが、初回検査時の発見は難しい状況だったのか、などが問題となります。実務上は、いきなり提訴の前に、まずカルテを取り寄せるとともに、患者側で医療事件を扱っている弁護士に相談し、病院側の考えを聞くところから始めるのが通例です。提訴となると、『初診時に既に癌を発症していたので**の検査をやればわかったはず』『**の検査結果は“癌”と評価すべき』等、医学的知見を立証する必要があるので、医学文献や第三者医師に意見をもらうなど、その点の準備も必要になってきます。医療訴訟は専門的な知見の立証などが必要になり、単純なミスに見えても『医療機関側が専門的な見解では**』と反論するかもしれず、その場合の再反論の手立てなども考えておく必要があり、事前の調査が大事と思います。また、仮に裁判で“ミス”を立証することはなかなか難しいかもしれないという場合でも医療ADRなどで話合いの場を持つことはあり得るところです。医療訴訟での原告(患者)側勝訴率は高いとは言えず、提訴に踏み切るには慎重な検討を要するところです」(伊東弁護士) 簡単に「納得がいかないから提訴」という訳にはいかず、弁護士や第三者医師などの意見を十分に聞いたうえで慎重に検討する必要があるようです。できれば検査段階で複数の病院に通い、多くの医師に意見を聞いておきたいところですね。 *取材協力弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月17日深夜になると電車・バスとも営業が終わり、頼みとなるのはタクシーだけ。飲酒した場合、自動車・バイク・自転車に乗ることはできませんから、代行運転を除けば唯一の移動手段になります。大都市では駅にいけば必ずタクシーがいるものですが、そうでない地域の場合探すことに苦労するもの。電話して呼ぶこともできますが、その場合高くつくため経済的ではないだけに、大きな道路にでて通るのをひたすら待つ人もいることでしょう。やっと客が乗っていないタクシーが来て、手を挙げたのに無視された。あるいは、止まったにもかかわらず、運転手に「お客さん、近距離は勘弁してよ」といわれ乗車拒否された。バブル時代にはこのようなことも多く、万札をちらつかせないとタクシーが止まらなかったという逸話もあります。しかし、本来このような客の乗車を拒否する行為は法律違反なのではないのでしょうか? Q.タクシーの乗車拒否は法律違反になる?*画像はイメージです:なります。ただし、正当に拒否できる場合もあります。道路運送法を第十三条に以下のような規定があります。「第十三条 一般旅客自動車運送事業者(一般貸切旅客自動車運送事業者を除く。次条において同じ)は、次の場合を除いては、運送の引受けを拒絶してはならない。一 当該運送の申込みが第十一条第一項の規定により認可を受けた運送約款(標準運送約款と同一の運送約款を定めているときは、当該運送約款)によらないものであるとき。二 当該運送に適する設備がないとき。三 当該運送に関し申込者から特別の負担を求められたとき。四 当該運送が法令の規定又は公の秩序若しくは善良の風俗に反するものであるとき。五 天災その他やむを得ない事由による運送上の支障があるとき。六 前各号に掲げる場合のほか、国土交通省令で定める正当な事由があるとき。」したがって、上記6ケースにあてはまらない場合に客の乗車を拒否することは、道路運送法違反。同98条6項により、100万円以下の罰金が課せられます。では、この6つのケースに該当する行為とは具体的にどのようなものなのでしょうか?主な事例は以下のとおりです。 1.安全のために乗務員から指示されたことに従わない2.定員オーバー3.積雪にもかかわらずチェーンがない4.乗車時に暴力や威嚇行為があった5.道路の損壊、洪水などにより走行が困難6.泥酔または不潔な格好をし、他の乗客に迷惑をかける可能性がある 上記は代表的な事例で、これ以外にもタクシー乗務員が正当に乗車拒否を行えるケースがあります。正当な理由があれば乗車拒否も許されるということを覚えておいてください。 *記事監修弁護士:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月16日1月、俳優の松方弘樹さんが入院先の病院で息を引き取りました。公私共に破天荒な生き方は、まさに「昭和のスター」という名にふさわしく、惜しむ声が多数あがっています。そんな松方さんは離婚した2人の妻との間にできた子どもと、それ以外の女性が産んだ子ども計6人存在しているそう。2度目の妻・仁科亜季子さんと別れたあとは、内縁の妻と暮らしてきたと報じられています。死後、遺産の分配がどうなるのか注目されているようです。一般人ではなかなかこのようなケースはありませんが、「内縁の妻」として故人をサポートしてきたのなら、遺産を手にする権利はあるようにも思えます。この場合内縁の妻が分配を受けることができるのか。遺産相続に詳しい高島総合法律事務所の理崎智英弁護士に見解を伺いました。 Q.「内縁の妻」は遺産の分配を受けることができる?*画像はイメージです:分配はできません。ただし生前贈与や遺贈は可能です「結論からいうと、内縁の妻には遺産を相続する権利が一切ないので、遺産を分配する必要はありません。すなわち、相続人の資格は、法律上決まっていて、配偶者や子ども、親、兄弟姉妹等一定の親族は相続人になることができるのですが、内縁の妻は親族にはあたらないので、相続人にはなることができないということになります。もっとも、被相続人が、生前に内縁の妻に対して財産を贈与したり(生前贈与)、遺言を書いて内縁の妻に財産を贈与すること(遺贈)は可能です。そのため、被相続人としては、内縁の妻に対して何らかの財産を残してあげたいと考えているのならば、生前贈与をするか遺贈すればよいということになります」(理崎弁護士)現在の法律では「内縁の妻」には遺産を相続する権利が与えられていないそうです。ただし、故人が生前に遺言で財産を贈与する意志を示していれば、遺贈という形で財産を贈ることはできるのですね。 *取材協力弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*ふじよ / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月16日*画像はイメージです:福岡県の小倉北警察署に勤務する警察官が、結婚していることを隠して、交際をしていた女性との披露宴を開こうとして、減給の懲戒処分を受けたことが明らかになりました。披露宴当日になっても、新郎である警察官側の出席者側が1人も現れず、新婦側の親族が問いただしたところ、嘘が発覚したということです。それでは、新婦側は、男性に対して法的にどのような請求ができるのでしょうか。また、今回は、披露宴だけで婚姻届は提出していなかったようですが、仮に、婚姻届まで提出していた場合の法的問題点について説明したいと思います。 ■新婦の男性に対する法的な請求について男性とは披露宴まであげていますので、新婦と男性との間には、婚約(婚姻予約)が成立しています。そして、婚約を不当に破棄した場合、破棄した当事者は、相手に対して、損害賠償義務を負います(民法709条)。婚約を破棄された当事者が請求できる損害としては、慰謝料、披露宴の費用、婚約指輪代、新居の準備費用などが挙げられます。慰謝料の相場としては、100万円から200万円です。 ■婚姻届まで提出していた場合の法的問題点についてまず、民事上、配偶者のいる人は、重ねて婚姻することはできないと定められています(民法732条)。そのため、婚姻届を提出して女性との間に婚姻が成立した場合には、そのような婚姻は不適法なものであり、取り消すことが可能です(民法744条1項)。この場合、当事者に限らず、男性の本来の配偶者も、取消しを請求することができます(民法744条2項)。次に、刑事上は、重婚罪が成立します(刑法184条前段)。法定刑は、2年以下の懲役です。もっとも、すでに結婚している人が婚姻届を提出した場合、戸籍事務担当者は、当然、その人の戸籍を確認するので、その人が結婚しているかどうかは一目瞭然であり、そのような婚姻届は受理されません。そのため、現在の戸籍実務上、重婚状態が生じるのは、戸籍事務担当者が戸籍の記載を見落としたなどのかなり例外的な場合に限られるでしょう。 *著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)【画像】イメージです*KAORU / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月15日少し前ですが、ある参議院議員が田園都市線の遅延に関し「遅延度に応じて料金を割り引く制度の導入を提案する」とTwitterで発言し、話題になりました。定刻運行のためにリスクのある無理な運行をするより安全性を重視すべきとの声が多かったものの、電車遅延によって大切な用事に遅れてしまうのは困り物です。議員の言うように鉄道会社、あるいは遅延の原因を作った乗客などに責任を問うことはできるのか、桜丘法律事務所の大窪和久弁護士にお聞きしました。*画像はイメージです:■遅延が発生した際に乗客は鉄道会社に損害賠償できるのか議員は「料金を割り引く制度の導入を提案する」と鉄道会社の責任を問う姿勢でしたが、国交省の「遅延対策ワ―キンググループ最終取りまとめ」では、遅延の発生原因の94%が混雑やドア挟みなど乗客などによるものとなっています。遅延の原因が乗客同士のけんかや酔っ払いの線路内立ち入りなどの場合、乗客は鉄道会社や遅延の原因となった人物や対して、損害賠償請求ができますか?「まず、乗客が鉄道会社に対して損害賠償できるかどうかが問題となります。乗客が電車を利用する場合、乗客と鉄道会社の間に旅客運送契約が成立することになり、この契約に基づいて電車により乗客が目的地に移動することとなります。ただ鉄道会社はこの旅客運送契約に関して営業規則を定めており、規則上鉄道会社は運航不能や2時間以上の遅延の場合などには料金の払い戻しはするものの、それ以上の損害等について責任を負わないことになっています。したがって、乗客が鉄道会社に対して損害賠償することはできません」(大窪弁護士)なんと、電車に乗る時点で鉄道会社と乗客との間でこの旅客運送契約は成立しているそうです。知らずに電車を利用している方も多いのではないでしょうか?「過去にこの営業規約の有効性について裁判で争われたことがありますが、裁判所は、営業規則で免責規定を設けることには相応の合理性を認めることができることから、鉄道会社は旅客運送契約上、本件列車遅延による精神的損害について損害賠償責任を負わないとして乗客側の請求を認めませんでした(平成18年9月29日東京地裁判決)」(大窪弁護士) ■遅延の原因を作った人物に対してはどうなる?では、遅延の原因を作った人物に対しての損害賠償請求はどうでしょう?「上記裁判例の理屈からすると、運送契約上、そもそも乗客には遅延することなく運送してもらう権利自体がありません。先例となる裁判例等がないため考え方はわかれるかもしれませんが、遅延の原因を作った乗客に対する請求についても難しい点があるのではないかと思います」(大窪弁護士)契約上、遅延することなく運送してもらう権利自体がないというのはちょっと衝撃的です。現代では電車は遅れずに到着するのが当たり前と思われていますが、それはそういう契約だからではなかったのですね……。 ■鉄道会社による損害賠償では、鉄道会社から遅延などの原因を作った人物に対して損害賠償が請求されることはあるのでしょうか?電車を止めると高額の請求をされるという噂もありますが……。「マスコミでも話題になりましたが、線路内に立ち入って事故が起こった結果、列車の遅れが生じたとして、事故を起こした故人の遺族に対して鉄道会社が損害賠償を起こしたことがあります。この時に鉄道会社は、振替輸送代や乗客対応にかかる人件費として合計約720万円の請求を遺族に対して行っています。この件で裁判所は故人に責任能力がないこと、および遺族に監督義務がないこと等を理由として鉄道会社の請求を認めませんでした(平成28年3月1日最高裁判決)。しかし、そのような事情が無ければ列車の遅れが生じたことによる損害について故人が責任を負った可能性があります。また、線路の立ち入りということでなく乗客が列車に遅延を生じさせたという場合でも、不法行為としてそれに対する実損を鉄道会社から請求される可能性は十分あります」(大窪弁護士)遅延を生じさせる原因を作れば損害賠償請求される可能性はあるようです。遅延の原因を作らぬよう、マナーを守って利用したいものです。 *記事監修弁護士:大窪和久(桜丘法律事務所所属。2003年に弁護士登録を行い、桜丘法律事務所で研鑽をした後、11年間、いわゆる弁護士過疎地域とよばれる場所で仕事を継続。地方では特に離婚、婚約破棄、不倫等の案件を多く取り扱ってきた。これまでの経験を活かし、スムーズで有利な解決を目指す。)*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)【画像】イメージです*柳生 鉄心斎 / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月15日約3分に1組が離婚するまでになった日本。親同士が別れるのは勝手ですが、問題は夫婦に未成年の子どもがいる場合。子どもは、親が離婚する以上、どちらか一方の親についていかなければなりません(例外もあります)。それは必ずしも子どもの意思だけで決められる問題ではなく、別れる両方の親にとっても子どもはかけがえの無い存在で、親権を巡る離婚裁判は結構な多さです。離婚に関する紛争は全国の家庭裁判所で争われます。そこでは、まず調停を目指して双方の言い分をじっくりヒアリングされます。では、たとえば親権を争う対象の子どもが、まだしゃべれない赤ちゃんの時、赤ちゃんは自分の意思を言葉で示せません。その場合、親権を双方が主張していた場合、家庭裁判所はどう判断するのでしょうか?離婚とそれに伴う親権の問題に詳しい、三宅総合法律事務所の伊東亜矢子弁護士に実情をお聞きしました。*画像はイメージです:■子どもが赤ちゃんの場合は?「実務上、母親側に親権が認められることが多いですね」(伊東弁護士) ただし、母親が育児放棄気味で、部屋はいつも汚れ放題、精神的に安定していないなど養育に不安があれば話は別。部屋の写真や会話の録音など客観証拠を集めて父親側が親権を獲得することも可能です。 ■子どもが5歳前後の場合は?では、子どもが幼稚園や保育園に入った5歳前後ではどうでしょうか?実は、男が突然、嫁から離婚を切り出されやすいのがこの頃です。年齢では20代後半から30代前半。特に女性は30代前半が統計上で最多です(平成27年「人口動態統計調査」による)。この頃、男は働き盛りで会社も猛烈に働かせます。子どもの教育費やローンなどをできるだけ蓄えないとならない時期でもあり、忙しすぎて家族とコミュニケーションできなくなることが仇となって、離婚一直線になってしまうのです。筆者はこのパターンで、離婚を突きつけられました。自分としても喧嘩ばかりで子どもにこれ以上、荒れた夫婦関係を見せ続けるわけにはいかないと思っていましたので、離婚に同意しました。心残りは親権です。すると、相手は子どもに「どっちについていく?」と、わざわざ聞きました。子どもは母親に事前に仕込まれていたらしく、「……ママのほう」と答えました。やれやれです。離婚を言い出すのは妻の側が圧倒的に多いのですが、それは慰謝料や養育費、手続きについて研究する時間が男よりもあるためです。イクメンがもてはやされる時代ではありますが、長時間働くのは、日本ではまだまだ男性の役割です。離婚したくてもなかなか調べられませんし、子どもの親権について根回しするのも時間不足です。 ■子どもを虐待していた場合は例外しかし、ここでひとつ注意してください。もしも母親が子どもに暴力で(もしくは暴力的に)「ママと言え!」などと恫喝していた場合は、親権はすんなり母の側に移りません。逆の場合も同様です。 「暴力を用いていたような場合は虐待に当たりますので、離婚後に発覚した場合でも“親権者変更の調停”を申し立てるなどして変更を求めて行くことが考えられます」(伊東弁護士) もしも離婚前にお子さんと二人きりで話せる時間があれば、無理矢理言わされていないか、暴力を振るわれていないかなどを確認しておくべきでしょう。 ■離婚後に虐待が発覚した場合はどうすればいい?家庭裁判所には家庭問題で子どもの幸せを第一に考え、親の言い分の裏付けを取る「家裁調査官」もいます。家庭裁判所では相談にも親身に乗ってくれますので、大いに頼るべきです。万一、離婚成立後でも子どもからそんな裏話を打ち明けられたら、話をスマホで録音して、それを証拠に親権者変更を家庭裁判所に申し立てましょう。その際、証言があっても子ども自身の意思を尊重することが大事です。お子さんが今いる家庭から離れたいかという意思をまず確認することを忘れないでください。また、親権を相手に譲ったとしても、その親にあまり子どもへの愛情が観られず、ろくに食事を与えない、養育費を遊行費用に使ってしまう、放置して遊びに行っている、新しい恋人と虐待している様子があるなど、不安要素があれば、これも見逃せません。まして、子どもを置いて行方不明になった場合は、直ちに子どもの安全を確保したうえで、親権者変更を届け出ましょう。 「離婚後でも“親権者変更調停”を申し立てることができます。手続きは煩雑ですが、万全を期すなら弁護士を雇うとスムーズに進行できるはずです」(伊東弁護士) 必要に応じて揃える書類や資料は多いのですが、できる限り証拠を集めること。時にはお子さんにも協力を仰ぎましょう。可愛いお子さんを取り戻すために、機会があればそれを逃してはなりません。 *記事監修弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。)*取材・文:梅田勝司(千葉県出身。10年以上に渡った業界新聞、男性誌の編集を経て独立。以後、フリーのライター・編集者として活躍中。コンテンツ全般、IT系、社会情勢など、興味の赴く対象ならなんでも本の作成、ライティングを行う。)【画像】イメージです*マハロ / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月14日*画像はイメージです:■世界の裁判制度はいろいろ中国に限らず、日本と外国の国内法が全く同じ内容ということはあり得ませんから、法律の内容は世界の国の数だけ異なります。また、裁判制度も、国が違えば、大きく事情が異なります。日本で当たり前のことでも、外国では違って当然です。本稿では中国の裁判制度について触れてみます。 ■審級制度があるのは同じ日本では、地裁、高裁、最高裁の三審制が原則ですが、中国における裁判所である「法院」も、最高人民法院、高級人民法院、中級人民法院、基層人民法院の4階層あり、審級制度があります。この他、中国では軍事事項を扱う軍事法院がありますが、日本では戦前にあった軍法会議のような特別裁判所は憲法で設置が禁止されていますので、当然ありません。日本では、いったん確定した判決は強力な効力があり、確定判決を覆すための再審事由は極めて限定されており、再審が認められることは滅多にありませんが、中国では比較的再審が利用されているようです。 ■裁判官の質日本では、裁判官への任官は、司法試験に合格した上、司法修習中に起案で抜群の成績をとることが必要であり、事務書類能力や事実認定の証拠評価能力が優秀な人しかなれません。他方、中国では少し前まで、司法試験に合格しない人でも、軍人や役人などが裁判官として任官されており、法的素養がない裁判官も多くいました。コネによる判決や、地元優先の不当な判断を示す裁判官も多く、公平性についての信頼もありませんでしたので、裁判を回避して仲裁を利用することも多いです。 ■刑事事件の特徴刑事事件では、政治犯、社会秩序に対する罪、違法薬物に対する罪の法定刑が重く、死刑判決が下されることが日本よりも相当多いです。また、日本では、3年以下の懲役を言い渡す場合などにしか執行猶予を付すことができず、言渡し刑が無期懲役や死刑などの場合は、執行猶予はありませんが、中国では、死刑判決であっても執行猶予付きにすることができます。死刑執行になるかもしれない執行猶予は、大変恐ろしいです。 旅行も含めて外国滞在中は、当然、滞在国の国内刑法が適用されますから、日本の常識は通用しません。少し前には軍事施設であると知らずに写真を撮影して身柄拘束される事案が続発したこともありました。東南アジア各国でも、薬物事件や売春が死刑などの重い刑罰で禁止されていることがあります。外国では外国の国内法令が適用されますから、渡航前に禁止事項をよく確認の上、旅行中にも羽目をはずしすぎないように注意しましょう。 *著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)【画像】イメージです*Zerbor / Shutterstock
2017年02月13日*画像はイメージです:実際には提携キャンペーンではなく、また、社名やロゴの使用を許諾されていないのに、有名外食チェーン店で「2万円食べ放題」、「食べ放題無料」などの偽キャンペーンを行ったポイントサイト運営会社のニュースがインターネット上を賑わせています。このように、自社キャンペーンであるかのように消費者を誤認させる偽キャンペーンの存在に気づいた会社の法務担当者としてはどのような対策を取ればよいのか、また消費者はどういったことに普段気を付けるべきか、偽キャンペーンの法的問題点とともに解説したいと思います。 ■偽キャンペーンの存在を知ったら即座に注意喚起を今回、自社キャンペーンを騙られて話題になった2社は、偽キャンペーンの存在を知った後速やかに消費者に対する注意喚起文書を公表しました。即座に注意喚起を行うことによって、自社商品・ブランドの信用失墜を防ぎ、また、自社キャンペーンでないことを消費者に伝えることによって店舗やお客様窓口の負担を減らすことができます。また、偽キャンペーンを行った運営会社に対し、直ちにキャンペーンの中止を求める文書を送付することや、違反の程度に応じて消費者庁などの監督官庁への告発も行うとよいでしょう。悪質な会社の場合は連絡先の記載がないこともありますが、ドメイン検索(Whois検索)を行い、ドメイン管理者・所有者から連絡先を辿ったり、リンク先から運営会社連絡先を調べたりすることが可能です。今回のように、許諾なく社名やロゴを使用した偽キャンペーンは商標法ないし不正競争防止法違反が疑われますので、損害賠償請求、差止請求等の法的措置も検討することは可能ですが、実際に運営会社の責任を追及することはかなり困難です。 ■偽キャンペーンに対する法的問題点と罰則偽キャンペーンページでは、自社キャンペーンを騙られて話題になった2社のロゴと酷似したロゴが使用されていましたので、商標法違反ないし不正競争防止法違反となり得ます。ニュースサイトにアップロードされた画像をみると、今回のポイント運営会社は不正競争防止法2条1項1号違反が疑われますので、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金(法人については3億円以下の罰金)に処せられるおそれがあります(同法21条2項1号、22条1項3号)。また、今回問題になったキャンペーンは、期間限定でなかったり、当選権利獲得の地位(とでも呼べばいいでしょうか)が付与されただけであるにもかかわらず当選したかのような表示になっていたりすることから、景品表示法5条2号、3号違反が疑われますので、課徴金納付命令(同法8条)や措置命令(同法7条)が下される可能性があります。なお、ポイントサイトは、ポイント付与ないし当選権利獲得の地位付与に当たり、メールアドレス等の取得、メールアドレス等の他社への提供を行っていますので、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律や、平成29年5月30日施行の改正個人情報保護法の適用を受け、悪質な業者には罰則が科される可能性もあるでしょう。企業側としては、信用回復に不要なコストをかけないように迅速な対応が求められます。一方、ポイントサイトを利用する消費者の方は、スマートフォン上の小さな文言をきちんと確かめるのは大変かもしれませんが、「うまい話」には裏があると思い、自分が利用登録しようとしているサービスの運営会社、利用規約及び同意する事項を確認し、また、運営会社や利用登録するサービス名をいったん検索エンジンで検索するなど、よく確かめてから利用してください。 *著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング)【画像】イメージです*ささざわ / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月13日オフィスでは自分用の机とイスが用意され、自由に使用することができます。もちろんそれは企業が貸し出ししているだけなのですが、在職中はほぼ「私物」となります。デスクワークの方なら、机の引き出しにボールペンやハサミなどの文房具をはじめ、ちょっとした合間に食べるお菓子、タバコ、ティッシュなど私物をしまっている人がほとんどだと思います。ある日、会社に来てみたら「タバコがなくなっている」、「ハサミがなくなっている」、「お菓子を食べられた形跡がある」。このような経験を持つ人は、意外と多いのではないでしょうか?明らかに第三者が自分の机を開け、何かしている。大多数の人はそれでも「たいしたことではない」とやり過ごしていることでしょう。もちろん、気分のいいことではないのですが。仮に犯人をつきとめている場合、なんらかの制裁を与えたい気もします。法的措置をとることは、果たして可能なのでしょうか?諏訪坂法律事務所の多田幸生弁護士にご意見を伺いました。 Q.オフィスでの机の中からタバコやお菓子を勝手に持ち出される…訴えることはできる?*画像はイメージです:難しい。「“訴えるのは難しそうだ”という結論は、弁護士に聞かなくてもなんとなくお分かりいただけると思います。ですが、せっかくですので、ここでは少し真面目に考えてみましょう(仮に、タバコやお菓子の金額は500円とします)。考えることは2つあります。刑事上の問題と、民事上の問題です」(多田弁護士) ■刑事上の問題は?「まず刑事上の問題を考えてみましょう。タバコやお菓子は500円する立派な“財物”ですから、刑法上は“窃盗罪”(刑法235条)に当たる可能性があります。ですが、現実問題としては、警察に捜査してもらおうと思ったら、あなたは警察に「告訴状」を出さなければなりません。告訴状の作成を弁護士に依頼することもできますが、間違いなく500円以上かかります。なので、自分で作ることになるでしょう。こうして自分で作った“告訴状”を警察署に持っていったとしても、被害が500円では、警察が動いてくれることはないでしょう。同僚の窃盗行為に、刑罰を科すほどの違法性がないからです(“可罰的違法性がない”といいます)。刑事上はここで終了です。どうやら、会社の同僚に刑事罰が科されることはなさそうだというのが結論です」(多田弁護士) ■民事上の問題は?「次に民事上の問題を考えてみましょう。タバコやお菓子はあなたの所有物ですから、それを勝手に取っていく行為は、民事上は“不法行為”(民法709条)に当たる可能性があります。この場合、あなたは同僚に500円の損害賠償を請求することができます。では、同僚がすんなり支払ってくれなかったらどうなるでしょう。あなたが利用することができる裁判手続がいくつかあります。少額訴訟、民事調停、支払督促などです。いずれも費用がそれなりに(500円以上)かかります。例えば、少額訴訟を提起する場合、最低でも収入印紙代1,000円、予納郵券代3,980円等が必要になります(東京簡易裁判所の場合。事情によりさらに多額になることがあります)。裁判所に通う交通費もタダではありません(なお、訴状は、告訴状の場合と同様に、あなたが自分で作ることになるでしょう)。こういった訴訟にかかった費用は、あなたが勝訴すれば、一部、同僚に請求することができます。ですが、そもそも同僚がお菓子代500円を払ってくれないから、訴訟を提起したわけですよね?訴訟費用だって、払ってくれないのではありませんか?結局、民事上は、金銭面で割に合わず、裁判手続を取るのは難しそうだというのが結論になります」(多田弁護士) 他人の物を取る許せない行為ですが、タバコやお菓子など被害額が少ない場合は可罰的違法性がないため、警察が動いてくれるケースは殆どないようです。また、民事についても裁判手続にかかる経費のほうが高く付くため、割に合いません。不愉快に感じている場合は上司への報告や本人へのクレームなど、自己で解決の道を切り開くしかないようですね。 *取材協力弁護士:多田幸生(小野総合法律事務所所属。会社法務・企業法務の豊富な経験があり、大手証券会社の法務職としての経歴を活かし、「守りの法務」だけでなく「攻めの法務」を提供。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月12日「もしも、裁判員に選ばれたら」こんなことを考えたこと、ありますか?平成21年5月21日にスタートした裁判員裁判。裁判所のデータによると、平成28年11月までに約1万件の裁判が開かれており、選ばれた裁判員、補充裁判員の数は約8万人という数になります。もしかしたら、この記事をご覧の方で実際に裁判員になられた人がいるかもしれません。今回は裁判員裁判について、私の経験も交えて綴ってみたいと思います。*画像はイメージです:■裁判員に選ばれるには?辞退ってできるの?裁判員になるためには、まず「裁判員候補者名簿」というものに登録される必要があります。この段階で、ここに選ばれる確率は約450分の1くらいです。かなりの狭き門です。そこから、個別の事件ごとに約90人の候補者に通知が届きます。通知が届いた場合、書類に記載されている辞退の条件を満たしていれば、所定の手続きを取って認められれば呼び出された日に出頭しなくても良いということになります。実際に、裁判員選任手続に出席される方は約30名です。出席した結果、選任手続中に裁判所から辞退が認められるケースもあります。僕がこれまでに経験したケースでは、年齢が70歳以上の方、仕事の都合上どうしても自分がいなければ周りに大きな迷惑をかけてしまう方、ご両親の介護などで日中どうしても家を空けられない方などについては、比較的柔軟に辞退が認められているように思います。もちろん、程度にもよりますので裁判官からは個別に質問されるなどして、微妙なケースは辞退が許されないケースもあるかと思います。このように、辞退が認められれば、のちに行われる抽選からは外されますので、裁判員に選ばれる可能性はありません。なお、会社が裁判員休暇を認めてくれているので参加には全く支障が無いという方も結構おられます。 ■裁判に臨む裁判員の姿勢選任手続には、実は弁護人や検察官も立ち会います。ただ実際に弁護人や検察官はほとんどやることはなくて、「顔見せ」くらいの意味しかありません。ほぼ唯一、意味があるといえば、「理由なし不選任」という権利を使える点です。これは、検察官や弁護人が特に理由を述べずとも、選任手続に来ている裁判員候補者を抽選から除外できる制度です。僕の感覚的に、裁判員裁判が始まった当初はこの制度を用いて何名か(原則4名以下)の候補者を弾いていたこともありますが、最近はほとんど使っていません。最初の時期は、例えばわいせつ系の事件の際に、「被害者と同じ年くらいの女性は候補者から外した方がいいのではないか」とか、「見た感じ厳しそうな女性より、おっとりした年配の男性を残した方がいいのではないか」などと考えていたのですが、実際やってみるとあまり関係ないのではないかと思うようになりました。といいますのも、裁判員に選ばれた方というのは、本当に真剣に事件について考えてくださっていて、私情に左右されない判断をしてくださっているなぁと実感するようになったからです。その辺は、裁判所の指導や注意喚起の賜物なのかもしれませんが、やはり職業上何件もの裁判を裁いてきた裁判官よりも、この事件1件に集中して頑張ってくれている裁判員の方がある意味とても集中してというか真摯に事件と向き合ってくれているのではないかと感じるほどです。そういうところは、裁判員からの証人や被告人に対する質問などからひしひしと伝わってきます。こんなことを言うと、現役裁判官に怒られますが、もしかしたら裁判官よりずっと公平に事件を見てくれているのではないかと思うほどです。これは、僕の個人的な意見ですので、もしかしたら僕がこれまで裁判員に恵まれてきただけかもしれません。でも、周囲の弁護士からも裁判員に対する小言を聞いたことが無いので、個人的には的を射た指摘ではないかと思います。 なお、裁判員を経験した方を対象にしたアンケートでは、選ばれたときは過半数の方が「選ばれたくなかった」などとネガティブな意見を述べておられるようですが、終わった後には「良い経験になった」という方が9割を超えているという裁判所が発表しているデータもあります。もし、みなさんも裁判員に選ばれたら、是非一生懸命頑張ってみてください。きっと大変だとは思いますが、よろしくお願いします。 *著者:弁護士 河野晃 (水田法律事務所。兵庫県姫路市にて活動をしており、弁護士生活7年目を迎える。敷居が低く気軽に相談できる弁護士を目指している。)【画像】イメージです*graphicalicious / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月12日最近はゴミの分別回収が進んでいます。ルールに従わない場合、自治体の依頼を受けた人間がゴミ袋を開封したうえ個人情報をチェックし、特定できた場合注意を促したうえ、罰金を課す自治体もあるほどです。そのようなケースは条例に基づいているため基本的には適法と考えられています。しかし、なかにはゴミ出しにうるさい人間が勝手にゴミ袋を開け特定し、「ちゃんと分別しなさいよ!」と電話をかけるなどして抗議してくることがあります。明らかにプライバシーを侵害しているように思えるこの行為。法律違反ではないのですか?近隣トラブルに精通したピープルズ法律事務所の森川文人弁護士に見解をお伺いしました。 Q.「ゴミの出し方がなっていない」という理由で隣人が勝手にゴミを開け、個人を特定しクレームをつける行為は違法?*画像はイメージです:ケース・バイ・ケースです。適法な場合もあります。「例えば、その人の家の玄関前にゴミが置かれていたとか、頻繁に庭にゴミが投げ込まれているとかなど、その第三者に対する違法行為の可能性がある場合、違法行為者を特定するためにゴミを開披することは許されるのではないかと思います。それ以外の場合で、単に主観的に不当な“ゴミの出し方”に対し、第三者がゴミを開披して個人を特定することはプライバシー権の侵害となりうるとは思います。もっとも、まさに“ゴミ”であり、所有権を放棄した動産類につき第三者が扱うことの違法性を指摘するには、さらに、そこに至った状況についての詳細がわからなければ一概にはいえません」(森川弁護士) ゴミを私有地に置かれるなど、違法行為を受けている人がその人間を特定するためであれば、適法となることもあるようです。しかし、主観的な理由で開ける行為は違法となる可能性が高くなります。また、自治体の「ゴミ開封行為」については議論が分かれており、「憲法違反ではないか」という指摘もあるようです。いずれにしてもゴミ問題は近隣トラブルに発展することが多く、様々な状況が考えられるため、法的判断も「ケース・バイ・ケース」で変わってきます。勝手にゴミを開けられるなどの行為に悩んでいる場合は、近隣トラブルに詳しい弁護士に相談してアドバイスをもらうのがベストかもしれませんね。 *取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月10日離婚したいけれど相手が応じないという場合、最終的に裁判を起こすこともありえます。しかし、裁判で離婚することができるのは、5パターンあり(1)浮気・不倫(不貞行為)(2)悪意の遺棄(3)3年以上の生死不明(4)配偶者が強度の精神病にかかり,回復の見込みがないこと(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由のどれかに該当する場合に限られます。このうち(5)は表現が抽象的で分かりにくいのですが、例えば、DVであるとか、長期間の別居などが該当すると言われています。では、結婚した後に、相手の学歴詐称や年収詐称、整形が発覚した場合、それが(5)に該当し、裁判で離婚できる理由になるのでしょうか。今回はこの点について考えていくことにします。*画像はイメージです:■「整形」理由で裁判離婚はできない相手が整形手術を受けていたことを理由に裁判離婚することは、通常はできないでしょう。通常、「整形手術をしていないこと」が結婚の条件になっていることはないでしょうし、また、相手が結婚当時整形後の顔をしていたことも含めて愛情が生まれ結婚に至っているわけですから、過去に整形手術を受けていたことが「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとは考えられません。但し、当事者が整形嫌いであることを相手が知っていて、結婚前に整形前の顔を隠すために、他人の写真や修正を施した写真を相手に見せるなどして、ことさらに整形の事実を隠すようなことをしていたよ場合には、整形の程度にもよるでしょうが、裁判離婚原因になる可能性があると考えられます。 ■「学歴詐称」や「年収詐称」は裁判離婚原因になりうる学歴詐称や年収詐称は、婚姻当時の自分を偽るものです。そして、学歴も年収も、結婚の条件となることが多いものです。ですので、詐称の程度にもよりますが、裁判離婚原因になる可能性が相当程度あると考えられます。例えば、中卒であるにもかかわらず、一流大学を出ていると詐称しているケース、年収が実際には数百万程度であるにもかかわらず、数千万円の年収があると偽っているケースなどが考えられます。年収詐称のケースでは、経済的に豊かであることを装うために多額の借金を背負っている可能性もあり、そうすると、結婚後の相手の生活にも経済的に多大なる悪影響が生じる恐れがあります。学歴詐称は年収詐称と一体化する傾向がありますので、そうすると同じ問題が生じます。したがって、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当しうるといえるのです。しかし、それ自体裁判離婚原因になるものでないとしても、隠していることがばれてしまうと夫婦関係は悪化してしまいます。その結果別居となり、別居期間がある程度の長さになれば、最終的には裁判で離婚できることとなってしまいます。隠し事をしたり嘘をついたりして結婚をしても、最終的には失うものの方が多いということでしょう。 *著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)【画像】イメージです*Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月10日長年人々の足として利用されている原付バイク。男性なら、高校生くらいになるとまず原付の免許をとり、道路でスピード感溢れる走りを体感したのち、本格的な「単車」に乗り換えたという人も多いことでしょう。最近は若者のバイク離れが進んでおり、原付も苦戦。販売台数減少に各社が悩むなか、生き残りをかけて2大メーカーのヤマハ発動機とHONDAが提携を発表するなど、かなり厳しい状況に置かれているようです。全体的にみれば販売台数は減っているようですが、都市部を中心に通勤に使っている人も多く、やはり便利なもの。その特徴は渋滞もスイスイと抜けることができるなど、動きが身軽ということ。しかし、その身軽さゆえ、「それって違反じゃないの?」というような運転をする様子を見ることもあります。よく見かけるのが、エンジンを切って乗ったまま歩道を走るケース。「あれ、いいのかな?」と思ってしまいます。また、同じような事例として車両通行禁止区域でエンジンを切りそのまま坂の傾斜を利用して駆け下りることもあります。この行為は「問題なし」と考えている人もいるようですが、法的にどうなのでしょう?エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に見解をお伺いしました。 Q.車両通行禁止の道路で原付バイクのエンジンを切り坂を下りる行為は道交法違反ですか?*画像はイメージです:違反です「車両通行止め区間、つまり道路標識又は道路標示によって車両通行が禁止されている区間で原付バイクに乗ることは、たとえエンジンを切っていたとしても運転していることになり、道路交通法に違反すると考えられます。ここでいう“車両”とは、“自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバス”のことをいいます(道路交通法2条1項8号)。また、“運転”とは、“道路において、車両又は路面電車をその本来の用い方に従って用いること”をいいます(道路交通法2条1項17号)。このとき、エンジンがかかっていない場合には、原付バイクの“本来の用い方”には当たらないようにも思えます。しかし、そもそも、道路交通法では、“歩行者”に関連する別の定義がされています。つまり、エンジンを切った上で、手で押しながら通行する場合には歩行者とするとされているため(道路交通法2条3項2号)、その反対解釈としてはエンジンを切った上で“手で押していない”ような場合には、歩行者とみなされないことになると思われます。そうすると、仮にエンジンを切った場合であっても、手で押していない場合であれば、エンジンをかけずに坂道を下ることも、“運転”に当たる可能性が高いと考えられます。そして、車両通行止め区間では、基本的に歩行者以外の通行ができないため(道路交通法8条1項)、運転をした場合には、道路交通法119条1項1号の2に違反し、3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科される可能性がありますので、くれぐれも道路標識等を守って楽しく安全な原付運転生活を送りましょう」(大達弁護士) 意外と間違いやすいエンジンを切った状態での原付バイクの扱い。エンジンを切っていたとしても、乗車した状態で車両通行禁止区域を走行すれば違反にあたるそうです。どうしても通行したい場合は、バイクを降り手で押しながら歩くようにしましょう *取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*notkoo / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月09日*画像はイメージです:日本人にすっかり定着した短文投稿サイト『Twitter』。その手軽さから日常生活やスポーツの模様など、様々な画像もアップされています。そんな画像が、知らない間にほかのサイトに使われていた。Twitterに限らず、ブログなどでも自身が撮影した画像が無断で使われるケースが、稀に発生しています。また、最近はツイートをまとめサイトなどで“引用”という形で掲載されることも。この2つの事案、法律的にみてどうなのでしょうか?インターネット問題に詳しい法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士にご意見を伺いました。 ■画像を無断で転載することは?まず、画像の無断転載はどうでしょうか?「原則的に著作権法違反と言えます。個人の撮影した写真であっても基本的に撮影者に著作権があるといえることが一般的であり、それを無断で利用することは許されません。著作権者に無断で使用している時点で、コピーしているので、複製権侵害、HPで利用されている点で公衆送信権侵害などが成立しているということになります。ちなみに、私的利用は許されるとされていますが、私的利用は家庭内などでの利用を前提にしており、ネット上での利用は私的利用に含まれません。また、著作権法は親告罪とされているため、告訴がなければ起訴されないということにはなっていますが、罪としては、“10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科”となっています(著作権法119条1項)」(清水弁護士)やはり、原則的に個人撮影した画像を無断で使用することは違法となります。「あの写真良いなあ、使いたいな」と思った場合は、必ず撮影者に確認し許可を得なければなりません。昨今同じような事案で無断使用者を提訴したケースが相次いでいますから、認知している人がほとんどであるとは思いますが、もう一度「画像の無断転載は違法」ということを認識しましょう。 ■ツイートの引用はどうなの?次にツイートの引用について聞いてみました。「著作権法上、引用の要件を満たしていれば許諾不要で利用可能です。引用が許されるためには、①公表された著作物であること②公正な慣行に合致すること③目的が正当な範囲にあることが求められています。もっとも、その意味するところは必ずしも明らかではなく、裁判実務上では①引用された部分が明確であること(明瞭区別性)②引用する側が「主」で,引用される側が「従」といえる関係にあること(主従関係性)が重視されています。ツイートを直接貼り付けサイトで公開している場合、引用部分が明確になっており、埋め込みでURLリンクもあるのであれば、①を満たし主従関係も明確と言えるため。②を満たすと考えられます」(清水弁護士)清水弁護士によると、まとめサイトなどでのツイート引用は明瞭区別性があり、主従関係が明確であれば問題はないようです。画像無断転載は全面NG、ツイートは条件を満たしていれば引用可。よく覚えておきましょう。 *取材協力弁護士:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*cifotart / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月09日滋賀県長浜署の警察官が、宴席の余興としてプロレス技をかけようということになり、スカート姿の女性警官にロメロ・スペシャル(つり天井固め)をかけたことが問題になっています。経緯は不明ですが、やはり男性が女性にプロレス技をかけ、その様を大勢で楽しむという行為は異常と言わざるを得ません。警察官ということをもう少し自覚してほしいものです。このようなケースは稀であると思われますが、宴会で何らかの宴会芸を強要されることは多々あるかと思います。なかには苦痛を感じ、いっその事強要する人間を「訴えてやりたい」と考えている人も多いのではないでしょうか?宴会芸をしつこく強要する人間に対し法的請求を行うことはできるのか?弁護士法人プラム綜合法律事務所の梅澤康二弁護士に見解をお伺いしました。 Q.宴会芸の強要に法的請求を行うことはできる?*画像はイメージです:ケース・バイ・ケースですが、請求ができることもあります。「本ケースでは場合を分けて考える必要があります。まず「宴会芸」の強要が上司の個人的行為として行われた場合。同宴会が会社の行事としてではなく、単に有志懇親会で任意参加あるような場合がこれに該当します。この場合は、当該強要行為が社会通念上相当な範囲を超えた態様で行われた場合には、不法行為(民法709条)に基づき損害賠償請求を行うことは理論的には可能です。ただ、いかなる場合に“社会通念上相当な範囲を超えた”と言えるかは明確な基準はなく、あくまでケース・バイ・ケースの判断となると考えます。例えば、上司が暴行又は脅迫行為によって当該強要行為を行ったような場合(行為態様が重大)や当該強要行為が危険行為の強要でこれにより負傷したという場合(結果が重大)は、損害賠償請求は可能でしょう。そうでない場合は特段の事情がない限り基本的には難しいと思います(“特段の事情”としては、過去長期間にわたり同様の行為が反復継続されるなど著しい執拗性があり、これにより被害者が相当の精神的苦痛を被っていると評価される場合が考えられます)。なお、この場合は、上司の行為はあくまで個人的行為ですので、会社に対する請求はできません。次に“宴会芸”の強要が業務として行われた場合です。同宴会が会社の行事として行われ、参加も事実上強制である場合がこれに該当します。この場合、上司の強要が任意での実施を勧奨するものではなく、指示・命令として行われた場合は会合の性質上、業務命令と評価することが可能であり、この場合は(ⅰ)業務との関連性、(ⅱ)業務上の必要性、(ⅲ)態様の相当性という観点から、業務命令として適正な範囲を超える場合は、不法行為(所謂パワーハラスメント行為)として違法性を帯びることになります。そして、このような違法性を帯びる範囲は、上記個人的行為の場合よりも広く捉えられるのが通常と考えます(業務命令として適正か否かという観点での判断となるため)。また、当該強要行為が業務的に行われているという観点からすると、これが不法行為(パワーハラスメント)に該当する場合は、会社に対しても職場環境配慮義務違反(労働契約法4条)又は使用者責任(民法715条)に基づき、法的請求は可能です。なお、いずれのケースも特段の事情がない限り、精神的苦痛のみの訴え提起であれば最終的に認容されても慰謝料額は10万円がせいぜいではないかと思いますので、訴えるメリットはあまりないかもしれません」(梅澤弁護士) ケース・バイ・ケースですが、慰謝料など法的請求することは可能であるようです。とくに会社が指示・命令として強制している場合は、パワーハラスメントに該当する可能性が極めて高いのとのこと。ただし受け取ることのできる金額は少額のようなので、問題提起や悪事の告発などを目的する場合のみに訴えたほうがいいかもしれません。 *取材協力弁護士:梅澤康二(弁護士法人プラム綜合法律事務所。東京都出身。2008年に弁護士登録。労働事件、労使トラブル、組合対応、規定作成・整備などのほか各種セミナー、労務問題のリスク分析と検討など労務全般に対応。紛争等の対応では、訴訟・労働審判・民事調停などの法的手続きおよびクレーム、協議、交渉などの非法的手続きも手がける。M&A取引、各種契約書の作成・レビュー、企業法務全般の相談など幅広く活躍。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*プラナ / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月08日昨年8月、富山県警の巡査部長が18キロのスピード違反をしているのを見逃したとして、南砺警察署の警察官2名が書類送検されました。送検された警察官は、取調べに対し、「(スピード違反の警察官が交通関係の部署なのを知っていて)内部処分を受けるだろうと思い、可哀想になった」と話しているそうです。18キロのスピード違反ならお目こぼししてもいいのではないか……とも思うかもしれませんが、道交法上は1キロの速度超過でも違法になりますし、また、警察官2名は速度の記録用紙も破棄したようですので、処分は致し方ありません。今回は、スピード違反を見逃した行為の問題点などについて解説していきます。*画像はイメージです:■見逃した警察官には犯人隠避(いんぴ)・証拠隠滅罪が成立する常識的に考えて想像できるかもしれませんが、スピード違反の事実を知りながらそれを見逃す行為は犯人の発見逮捕を免れさせることになりますから、犯人隠避罪に当たります。……そうだとすると、スピード違反の運転手を見逃すことはすべて犯人隠避になるのかと思うでしょうが、そもそも測定器を持っていないときは証拠がありませんし、速度超過の疑いがある車をいちいち停車させていたら警察業務はパンクしてしまいます。警察官の裁量によって、明らかに速度超過の疑いのある車両のみを停車させることは合理的であり、違法ということはできないでしょう。今回のように、測定器に基づいて車を停車させ、速度超過の事実が明らかとなっているのにもかかわらず、これを見逃した場合には犯人隠避となるということです。なお、警察官らが測定器から出力された速度記録用紙を破棄したことは証拠隠滅罪に当たります。 ■警察官が警察官をかばったり、警察官がスピード違反をしたことによる罰の加重はあるか警察官が仲間をかばったことに対しての特別の罰則はありませんし、警察官以外の人が犯人隠避や証拠隠滅を行った場合と異なる罰則規定はありません(懲戒処分を受けることはもちろんですが。)。また、本来、取り締まる側の警察官がスピード違反をした場合に罰則や処分が加重される規定もありません。なお、今回の事件とは異なりますが、運転していた警察官のほうから積極的に見逃しを求めていたとすれば、運転していた警察官は犯人隠避・証拠隠滅の教唆(きょうさ)犯となり得ます。18キロ程度のスピード違反は誰しもやってしまうかもしれませんが、違法は違法ですので、見つかってしまったときは運が悪かったと思って見逃しを期待しないようにするほかありませんね。 *著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング)【画像】イメージです*akiyoko / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月07日Amazonや楽天など、実際に店舗には出向かなくても買い物ができるため、便利になりました。大変高い利便性から、ネットでショッピングする方も多いかと思いますが、ネット上では、実際に遭ったトラブルがまとめられていました。あくまで噂の範疇なので、実際にこういったトラブルに遭われたかどうかは定かではありませんが、まとめられていた事例について法的な観点から解説してみたいと思います。*画像はイメージです:■そもそも宅配業はどういった規定があるのか宅配業については、商法で規定があります。ちなみに、商法では、宅配業者のことを「運送人」、宅配業者に荷物の配送を依頼した人のことを「荷送人」、配送先の人のことを「荷受人」という言葉を使っています。商法では、運送人は、運送品の受取り、引渡し、保管及び運送に関して、注意を怠らなかったことを証明できなければ、運送品の滅失、毀損または延着につき、損害賠償の責任を免れることができないとされています(商法577条)。まぁ、債務不履行責任として、当然のことです。特則については、高価品について、運送を委託するにあたり、その旨を告知しないと、損害賠償請求ができないということになっています(商法578条)。 では、以下に個別で見ていくことにしましょう。 ■勝手に荷物を置いていく本来、受取人の受取りのサインをもらうというのは、ちゃんと届けましたという宅配業者側のリスクを回避するためのものであるにもかかわらず、それをしないというのは、もし荷物に何かあった時(壊れた、盗まれた等)には、無条件で責任を負うということになってきます。また、雨が振っていた場合に濡れて荷物が使い物にならなくなった、犬小屋に荷物を置いていった場合に犬が噛み砕いて壊したなどの場合にも、受取人は、宅配業者に対して損害賠償請求ができることになります。 ■中身を聞く中身を聞く権利は、宅配業者には荷受けの場合以外にはありません。荷受けの場合でも、具体的な内容までは聞く権利はなく(プライバシーの問題がありますね)、一般的なジャンルまでということになります。興味本位で中身を聞いたからといって、それが違法行為ということにはなりませんが、受取人の側では答える必要はありませんので、きっぱりと拒否してください。しつこく聞いてくるようであれば、プライバシー侵害として慰謝料の対象になることもありうるかと思います。 ■冷凍便が常温になっていた形跡がある運送業者として、通常の注意義務をもってすれば、冷凍便を常温で運送することはあり得ないことになります。したがって、受取人は常温になって溶けてしまったアイスクリームの弁償を求めることができます。 ■他人に荷物を届ける他人に荷物を届けるということも、運送業者として通常の注意義務をもってすればあり得ないことです。配達するときに、「◯◯さんですよね?」と必ず聞くのが普通ですね。他人に荷物を届けることによって、紛失したということになれば、当然損害賠償請求の対象になります。 *著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所代表。手品、フルート演奏、手相鑑定、カメラ等と多趣味。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする)【参考】*Yomerumo NEWS:【最悪】これはひどい! 宅配業界の信じられない噂×12選【画像】イメージです*Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月07日1月3日に行われた箱根駅伝で、神奈川大学の走者が東京千代田区の交差点付近を走行していたところ、交通整理にあたっていた警察官が車を止めずに通行させ、あわや事故になる事案が発生。ギリギリで走者がかわしたため大事には至らなかったものの、警察官や暴走車への批判、そして長時間に渡り道路を封鎖する駅伝やマラソンについてもその必要性を問う声があがりました。警察は今後交通整理員の増員を検討しているようですが、不信感を持っている人もいるようです。*画像はイメージです:■事故が発生した場合責任の所在は?最近は健康ブームの影響で、走ることを趣味にしている人が増えています。市民マラソンに参加し、1つでも上の順位を目指し練習にうちこんでいるランナーも多いでしょう。とくに2月には東京マラソンもあり、出場する市民ランナーの皆さんは多少不安を感じているかもしれません。快調に走っているときにいきなり車が突っ込んで事故になった。仮にこのような事態が発生してしまった場合、気になってくるのは、「責任の所在」です。今回の箱根駅伝では交通整理を担当していた警察官の不手際が不祥事発生の原因と言われていますが、警察の責任はどのようなものになるのでしょうか?また、主催者や実際に事故を起こした自動車運転手への処分も気になります。エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に見解をお伺いしました。 ■運転者の責任は免れない「行動を運転しているときには、信号機に従わなければいけないのは当然ですが、マラソン大会の際には、警察官が交通整理をしていることも多いと思います。それにもかかわらず事故が起きてしまう可能性は否定できず、最近で言えば箱根駅伝が記憶に新しいところですね。まずはそのような場合について触れますが、警察官は、信号機と異なる手信号等をすることができ、運転者に対して必要な指示等をすることができ、運転者はこれに従わなければならないとされています(道路交通法6条及び7条)。これに従わなかった場合、一般の交通事故と同様に、自動車の運転者は、道路交通法70条の“安全運転義務”に違反(前方不注意)したとして、違反点数を加算されることになりますし、警察官の交通整理に違反して突っ込んだということであれば、道路交通法違反としての懲役刑ないし罰金のみならず、自動車運転過失致傷罪、民事上の損害賠償責任を負う可能性があります。また、警察官の交通整理がなく、自動車の運転者側の信号が青であったとしても、前方注意義務が免責されるわけではありません。個別具体的な状況に応じて、前方不注意があったと言える場合には、運転者の責任は免れないことになると思います」(大達弁護士) ■警察の責任はどうなる?「警察に関しては、交通整理を職務で行っているため、職務上の義務、具体的には、“マラソン大会で交通事故が生じないように適正な交通整理をする義務”が存在し、それに反した過失があった結果として交通事故が生じたといえる場合には、その警察を所管する地方公共団体は、損害賠償責任を負う可能性があります(国家賠償法1条1項)」(大達弁護士) ■主催者の責任は?最後に主催者の責任はどうでしょうか?「次に、走路、周辺道路の交通量などから、マラソン大会をするには危険であり不適当な場合や、マラソン大会の開催について周知されず、自動車の運転者が、マラソン大会が開催されていることを知るのが困難であった場合など、マラソン大会の選手に危険が及ぶ可能性が高いことを考慮に入れず、大会が開催されていたといえる場合には、マラソン大会の主催者も民事上(不法行為)あるいは刑事上(業務上過失致傷罪)の責任を負う可能性があります。また、マラソン大会の主催者は、安全に大会を運営する義務、“いいかえれば参加者が交通事故に遭うことのないように配慮する義務”を負っているにもかかわらず、その義務を怠ったとして、マラソン大会に参加することの契約に付随する安全配慮義務の違反するものとして、民法上の債務不履行を問われ、損害賠償責任を負う可能性もあります」(大達弁護士) 大規模なマラソン大会には管理する主催者、交通整理を担当する警察に管理監督それぞれ責任があり、道路を走る自動車の運転者にはそれにしたがう義務があるようです。今後東京マラソンなど大規模な大会もありますので、主催者・警察・運転手・参加者それぞれが注意をする必要がありますね。 *取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Dachs / PIXTA(ピクスタ)
2017年02月06日音楽の著作権を管理するJASRACが、音楽教室での演奏について著作権料を求める方針を示し、批判を浴びているようです。未来の作曲家やミュージシャンを養成する機関である音楽教室にまで「カネ」を請求することについて、「日本の音楽文化を衰退させるものだ」と批判が噴出。今後音楽教室側は団体を作り、反対活動を展開していくようです。賛否両論ありますが、誰もが最初は名曲を演奏することで楽器の使い方を覚え、音楽家やミュージシャンとなるもの。その芽をつむようにも思う行動は、やはり歪に思えてしまいますね。真似といえば「替え歌」もその一種です。最近は様々な曲の替え歌を歌い、それをYouTubeなどの動画サイトに投稿している様子を目にします。これもやはり、著作権の侵害ということになるのでしょうか?法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士にご意見を伺いました。 Q.替え歌を歌ってYouTubeに公開…これは法的に問題ないの?*画像はイメージです:著作権の侵害になる可能性が高いですが、例外もあります。「歌詞にも著作権があるため、替え歌をすることは、著作権のうち翻案権侵害、著作者人格権のうち同一性保持権を侵害する可能性があります。もっとも、著作権は原則として50年で消滅するため、50年経過していれば問題になりません。また、作者不明なものについても著作権の帰属が不明なので、問題になりません。なお、YouTubeなどは著作権管理団体と契約して、その団体が管理している楽曲であれば原則として自由に使って良いことになっていますが、翻案権や著作者人格権の管理まではしていない関係で、許諾もできず、結果、問題になるということになります。したがって、個別の許諾を取る必要があります。また、販売する際も、個別の許諾を取ることが必要です」(清水弁護士) 基本的には著作権の侵害になりますが、50年経過しているものや動画サイトが契約・管理している楽曲、そして個別に作曲家などに許可をとれば公開・販売することもできるよう。ちなみに、替え歌の元祖・嘉門達夫さんは個別に作詞作曲者や管理者に許可とり、許されたものだけをCD化しているそうです。替え歌を作ることも才能ですが、「権利」にも気を配らないといけないのですね。 *取材協力弁護士:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*I000s_pixels / Shutterstock
2017年02月06日