シェアしたくなる法律相談所がお届けする新着記事一覧 (24/28)
2016年12月6日の衆議院本会議において「ストーカー行為等の規制等に関する法律」の一部を改正する法案が全会一致で可決され成立しました。今回、同法案が改正される契機となったのは2016年5月に発生した小金井市女子大生ストーカー刺傷事件です。この事件では、犯人がTwitterなどのSNS上で、被害者の女性に繰り返しメッセージを送り、その後犯行に及んだことがセンセーショナルに報道されたので、記憶に新しい方も多いと思います。生命の危険を感じた被害女性は、事件が起こる前に武蔵野警察署に相談していましたが、十分な対応が得られていなかったという警察の不手際も問題視されています。今回の法改正により、どのような規制が加わったのか、法律の専門家に以下のような質問で尋ねてみました。 Q)ストーカー規制法の改正により、SNS上の連続書き込みが規制対象になると、ネットの書き込みだけで逮捕されることもあるのでしょうか?*画像はイメージです:)YES相当に悪質な場合には逮捕もあり得ます。ストーカー規制法の規制対象となる行為は、「つきまとい等」と「ストーカー行為」に区別されます。恋愛感情やそれが受け入れられなかったことの怨みから、相手が拒否しているのに電話、 FAX、電子メールなどを利用して、執拗にメッセージを送り続けるとストーカー規制法上の「つきまとい等」に当たります。今回のストーカー規制法の改正により、電子メールだけでなく、SNSメッセージや相手のブログへの書き込みも対象となりました。ただし、相手に伝達されない掲示板への書き込みなど、ネット上の書き込みがすべてストーカー規制法の対象になるわけではありません(名誉棄損など、別の犯罪にはなり得ます)。「つきまとい等」となる電子メールやSNSメッセージの送信が、相手の「身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法」で繰り返されますと、「ストーカー行為」になります。ストーカー規制法上は、「ストーカー行為」と、「つきまとい等」の禁止命令違反は犯罪となりますから、逮捕もあり得ます。改正前の現行ストーカー規制法でも、大量の電子メール送信による「ストーカー行為」の逮捕事例があります。ストーカー行為がエスカレートした痛ましい事件が起きてしまっていますが、警察も取り組みを強化しています。ストーカー被害にあったときは警察に支援を求めましょう。 *取材協力弁護士: 渡邊寛 (和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。東京築地を拠点に、M&A等の企業法務のほか、個人一般民事事件、刑事事件も扱う。)*取材・文:塚本建未(トレーニング・フットネス関連の専門誌や、様々なジャンルのWebメディアを中心に活動するフリーランスライター。編集やイラストも手がける。塚本建未Website 「Jocks and Nerds」)【画像】イメージです*naka / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月28日*画像はイメージです:月29日から冬のコミックマーケットが開幕しますね。昨今はその注目度が増しており、東京ビッグサイトには日本からはもちろん、世界から多くの人々が集まります。様々な問題も指摘されていますが、やはり参加するのは楽しいものです。今年はあの叶姉妹も参戦を匂わせるなど有名人も注目。企業も出展しており、その規模は年々大きなものになっています。そんななか、重大な問題とされているのが権利の問題。既存のキャラクターを使用して創作された作品、いわゆる「二次創作」については著作権を侵害しているのではないかとの指摘があります。コミケの根幹を揺るがす問題だけに、気になるところ。一体現行の法律ではどのような解釈になるのでしょうか?パロス法律事務所の櫻町直樹弁護士に見解を伺いました。 ■二次創作は著作権の侵害になる?二次創作は著作権の侵害になるのでしょうか?「コミックマーケット、いわゆる「コミケ」で販売されている雑誌には、商業作品として発表されている漫画やアニメのキャラクターを利用して描かれた作品が掲載された「(漫画・アニメ系)同人誌」と呼ばれるものがあります。漫画等に出てくる(具体的な絵として表現されている)キャラクターは、「美術の著作物」(著作権法10条1項4号)にあたると考えられていますから、著作権法の保護の対象となります。ですから、例えば、漫画等のキャラクターを著作権者に無断で利用した作品を同人誌に描き、それを販売することは複製権(著作権法21条)を侵害する違法な行為になりますし、無断でキャラクターの画像をインターネット上に掲載すれば公衆送信権(著作権法23条)の侵害になります。また、キャラクターを改変することは、翻案権(著作権法27条)侵害になります(ただし元になったキャラクターが持つ「表現形式上の本質的な特徴」を感じられるかどうかという観点からみて、単にアイデアが共通しているにすぎない場合や、ありふれており創作性が認められない部分が似ているにすぎないような場合には、著作権侵害が否定されることもあります)。」(櫻町弁護士)どうやら既存のキャラクターをそのまま複製し販売することや、ネットに流す行為は、著作権の侵害になるようです。逆に、「ちょっとあの作品と似ているなあ」くらいのレベルであれば、侵害にあたらないようです。 ■自分の趣味で書くレベルなら問題なしさらに櫻町弁護士に、二次創作物の著作権侵害の現状についての意見を聞いてみました。「好きなキャラクターを自分が趣味で描くこと自体は、何ら問題ありません。しかし、それを不特定多数に公表したり、さらにはそれによって利益をあげるという形になってしまえれば、そうした行為が著作権侵害にあたることは当然と思います。現状は、そうした行為について都度著作権者が差止めや損害賠償等を求めることが時間・労力・コストがかかり、困難な場合もあることから「黙認」されているに過ぎないといえます。他人の著作物に対する尊敬の念があれば、きちんと許諾を得て利用するというのが、創作に携わる人が最低限守るべきことなのではないかと思います(例えば、キャラクターの認知度が高まるから著作権者にとってもメリットがあるという意見は著作権者が言うなら理解できますが、利用している方が言うものではないと思います)。例えば一案として、著作権者の許諾を得るということがスムーズにできるように、楽曲を管理しているJASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)のような、キャラクターの著作権について一元的に管理し、利用者からは著作権料を収受、それを著作権者に支払うという仕組みがあるとよいかもしれませんね。」(櫻町弁護士)現在の状況は「黙認状態」で、原作をそのまま複製した作品を販売し利益をあげたり、ネットで公開するなどの行為は原作者が訴えを起こせばやはり著作権侵害として損害賠償を請求することができるようです。櫻町弁護士もおっしゃられていますが、アニメなどキャラクターの著作権を一元管理する組織があってもいいかもしれませんね。 *取材協力弁護士:櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。ブログ「ネットイージス.com」)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*naonao / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月28日年末年始、新幹線で帰省する予定という人も多いとことと思います。ご存知の通り、帰省・Uターンラッシュ時には恐ろしいほどの乗客でごった返します。なかには指定席をとることができず、自由席に座らざるをえない人もいることでしょう。非常に混雑している場合は、一人でも多くの人が座ることができるようにするものです。また、そのようなとき小学生以下の子供を持つ親が座る場合は、膝に乗せて座るのがマナーとされています。では、空いているときに1人でイスに座らせるのはどうでしょうか?4歳以下の子供は自由席が無料となっているだけに、親としては法的に問題があるのではないだろうかと悩んでしまいます。法的にみてどうなのでしょうか。弁護士法人サリュ銀座事務所の竹内省吾弁護士にお話を伺いました。 Q.新幹線で4歳の子供を自由席の座席ひとり分に座らせるのは法的に問題ない?*画像はイメージです:問題なし!「法的に問題ありません。一方で、指定席では子供一人分であっても料金が発生します」(竹内弁護士)どうやら法的には無料となる4歳以下の子供を自由席に座らせることは、まったく問題ないようです。なお指定席については、子供が乗車する場合は大人の半額の運賃がかかります。この場合、当然1席占有することができます。なるべくなら、指定席に座りたいものですね。 *取材協力弁護士:竹内 省吾(弁護士法人サリュ 銀座事務所。 交通事故分野のパイオニア。民事刑事問わず無料相談 メール受付対応。おもな著作に「交通事故裁判和解例集」(第一法規)などがある。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】*nashie / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月27日今年の12月15日、Amazonがイギリスでドローンを使った配達を実施し、無事に成功させたそうです。日本でも昨年からドローンを使った医薬品の僻地への配送プランをはじめとした実験が繰り返されており、先日も、佐川急便が北九州で1.4キロ離れた場所への「ドローン宅配」を成功させています。安倍首相も2018年にはドローンを使った荷物配送を実現させると宣言しているようですが、はたして日本でもドローン配送が可能となるのか、現状の問題点等について解説したいと思います。*画像はイメージです:■現在のドローン法規制現在、ドローンに関しては、航空法と電波法による法規制がなされています。航空法による規制により、 1)人口集中地区の上空の飛行2)地上から150m以上の場所の飛行3)空港や重要施設の周辺の飛行4)人や物件から30m未満の場所の飛行5)日没後飛行6)操縦者からの目視外飛行 等の場合は許可が必要となり、無許可飛行の場合には50万円以下の罰金が科されます。逆に言えば、上記の規制外の飛行や、上記規制範囲内であっても事前許可の上での飛行は自由に行うことができるということです。なお、2016年12月21日の航空法施行規則の改正により、新たに三沢飛行場と木更津飛行場の周辺空域が飛行禁止区域となりましたので、最新の法改正には十分注意して下さい。また、電波法による規制により、技術基準適合証明・技術基準適合認定のいずれかの認証を受けていることを示すマーク(「技適マーク」)のないドローンを屋外で飛ばすと、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。通常、国内で販売されているドローン(並行輸入品を除く)であれば技適マークが付いていますが、ドローン購入の際には今一度確認をするとよいでしょう。 ■ドローン配送の問題点インターネット上でも言われているように、都市部では上記の航空法規制に引っかかるため、ドローン配送が可能になるのは山間部や僻地などの一部の地域に限られるのではないかという問題があります。事業者としても、都市部でわざわざ許可を取るコストを負担するとは考えられません。他方、航空法規制を緩和して都市部のドローン飛行可能区域を広げれば、落下物やドローン本体が人や物件に当たる可能性は高まります。かりに規制緩和がされたとしても、事業者が損害賠償請求を受けるリスクが高まりますから、やはり無理してドローン配送を実現することは考えづらいですね。政府としても、人口集中地区での実用化というよりは、人が行うよりもドローン配送や撮影のほうが安全な場合や過疎地での医薬品等の輸送を念頭に置いているようです。ドローンの活用可能性はまだまだ広がっているので、今後の法改正や事業者の参入状況が気になるといえましょう。 *著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング)【画像】イメージです*chesky / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月27日2020年の東京オリンピックに向けたインバウンドマーケティングが注目される中で、外国から訪れる観光客を、いかに「おもてなし」するのかというトピックが、メディアでも数多く取り上げられています。そのような流れの中で、特に注目されている日本の観光資源は温泉などの温浴施設です。先日、経済産業省が、外国人にわかりやすくするために温泉マークのデザイン変更を検討が伝えられたところ、多くの反対意見が寄せられたため、現在のデザインで継続となったという報道がありましたが、同じように、外国人に温浴施設を利用してもらう上で、議題に上がっているのが「タトゥー入浴お断り」の温泉についてです。そこで、以下のような質問に関して、法的にどのような解釈ができるのでしょうか?和田金法律事務所の渡邊寛弁護士に見解を伺いました。*取材協力弁護士:渡邊寛(和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。個人事案は子どもいじめ事件から相続争いまで、企業事案は少額の債権回収から渉外買収案件まで、あらゆる案件に携わる。) Q.オシャレ目的でタトゥーをしている人が「タトゥー入浴お断り」の温泉に入浴することは、法的にNGなのでしょうか?*画像はイメージです:!法令上、タトゥーに関する入浴制限はない。「法令上の入浴制限はありません。公衆浴場法やこれに基づく各都道府県の条例は、伝染病患者の入浴の拒否など衛生・風紀の維持を義務付けていますが、タトゥーに関する規制はないのです。タトゥーのある方の入浴制限は、温泉施設運営者が自主的に利用を断っている状態です。警察や自治体が入浴制限を要請することもあるようですが、施設運営者に対する任意のお願いベースのルールであると捉えて問題ありません。逆に、温泉施設がタトゥーをお断りすることが法的に許されるかを考えてみたいと思います。温泉施設に限らず、営業の自由がありますので、レストランがドレスコードを設定したりするように、誰を顧客とするのかは基本的にお店の自由です。ただし、顧客の選別が不合理な差別になると不法行為となり損害賠償責任を負うことになります。不法行為になるかどうかは、社会的に許容しうる限度を超えるかないし公序良俗に反するかが個別具体的に判断されます。裁判で店舗側の損害賠償責任が認められた事例として、公衆浴場の外国人入浴拒否、インターネットカフェの障害者入店拒否、賃貸マンションの外国人入居拒否などがあります。タトゥーの入浴制限に関する裁判例はまだないようですが、温泉施設は日常生活において必要性の高い銭湯とは性格が異なることや、オシャレ目的かどうか(威圧的か否か)は線引きが困難なことなどから考えると、今のところは、温泉施設が一律にタトゥーのある方の入浴を拒否することが裁判において“公序良俗に反する”と判断される可能性は低い(したがって、温泉施設はオシャレ目的のタトゥーでも入浴をお断りすることができる)ように思います。」(渡邊弁護士)*取材協力弁護士: 渡邊 寛 (和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。東京築地を拠点に、M&A等の企業法務のほか、個人一般民事事件、刑事事件も扱う。)*取材・文:塚本建未(トレーニング・フットネス関連の専門誌や、様々なジャンルのWebメディアを中心に活動するフリーランスライター。編集やイラストも手がける。塚本建未Website 「Jocks and Nerds」)【画像】*IYO / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月26日帰省ラッシュで混雑が予想される高速道路。通常よりも速いスピードで走るわけですから、重大事故の危険性も高まることはいうまでもありません。通常、自動車を利用して遠くに出かける場合は、高速道路の利用の有無にかかわらず、エンジンやタイヤの状態を事前にチェックしておくもの。しかし、忙しさにかまけて「大丈夫だろう」とばかりに整備を怠ったうえ、ガソリンを満タンにせず「どこかで入れればいいや」と出発してしまうと、高速道路上で故障やガス欠などで立ち往生してしまうことがあります。そのよう場合、道路交通法違反になるケースがあるようです。本当でしょうか?Q.高速道路で故障やガス欠となった場合、道交法違反になるケースがあるって本当?*画像はイメージです:本当です。高速自動車国道等運転者遵守事項(道路交通法第75条の10)違反に問われることがあります。道路交通法第75条の10は、自動車の運転者の遵守事項として、下記のように規定しています。「自動車の運転者は、高速自動車国道等において自動車を運転しようとするときは、あらかじめ、燃料、冷却水若しくは原動機のオイルの量又は貨物の積載の状態を点検し、必要がある場合においては、高速自動車国道等において燃料、冷却水若しくは原動機のオイルの量の不足のため当該自動車を運転することができなくなること又は積載している物を転落させ、若しくは飛散させることを防止するための措置を講じなければならない」そして、これに違反した場合には、3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処するとも定められています(道路交通法第119条第1項12号の3。ただし過失の場合は同条2項により10万円以下の罰金)。したがって、高速道路での整備不良による故障やガス欠は、ケース・バイ・ケースですが道路交通法違反として処罰を受けてしまうことがあります。それ以前に、高速道路での不意な停車は重大事故に繋がるとても危険な行為です。そのようなことがないように心がけたいものです。自動車で遠くに出かけるときは、必ず事前に整備を行うようにしましょう。 *記事監修弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:佐藤俊治(複数メディアで執筆中のフリーライター。真面目な話題からくだけた話題まで手広く記事を執筆中。趣味は将棋、好物はカツカレーとパインアメ)【画像】*Fuchsia / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月25日photo by 編集部元銀行員という異色のキャリアを持つ天野弁護士。現在受けている依頼の中でも一番多いという「男女問題」について、どのような解決方法を実践されているのか、お話を伺いました。天野 仁(あまの ひとし)弁護士東京都・新宿区四谷にある「東京ステラ法律事務所」の天野仁氏は、17年間、銀行員としてキャリアを積んだ異色の経歴を持つ弁護士。本人になりかわれるくらいに相手を知って弁護に臨みたいというスタンスで、その誠実さには定評がある。■裁判官は世論には影響されにくい!?日本は「判例主義」が大前提に___男女問題について、最近の傾向を教えてください。男女間のトラブルというのは、いつの時代もありますので、特に傾向があるとは思いません。社会が変わっているからといって、判決に違いがでるかというと、家庭裁判所はそんなに変わっていないのではないかと思います。親権に関していうと、母性優先の原則というものがあります。従って、離婚裁判で、男親は親権を取りにくいといった状況は、今も変わりありません。女性が弱い立場であることが多いという理由もあって、男女問題では、親権に限らず、基本的に女性寄りの判断が下されることが多いように思います。離婚問題や男女問題などは、“ある人はこれが許せるけど、ある人はこれが許せない”という状況が起こりがちです。例えば、離婚できるのは、民法第770条第1項第5号で「婚姻を継続し難い重大な事由(離婚原因)があるとき」と規定されています。従って、当事者間で問題とされていることが、離婚原因に当たるかどうかを裁判所が最終的に判断を下すわけです。判断の根拠は、常識や倫理観などに依ります。その背景は、世間では何を普通と考えているかということを、裁判官が、どう読むかということも含まれます。しかし、“裁判官は世論にはなかなか流されない”というのが、私個人の印象です。___最近では「不倫」に対して厳しい世論が多い印象ですが裁判への影響はないですか?確かにネットなどでは特に不倫に対して厳しい意見が出されることが多いですが、日本は判例主義ですので、それまで起こった同様の事例を考慮するという縦軸においても公平を図るという考えが根強いのです。そうすると、今までの判断を変えるようなドラスティックな判決というのは、なかなか生まれないのです。従って、慰謝料などの相場も、だいたい決まっています。不倫に関していうと、例えば、夫が不倫して、妻が慰謝料請求するというケースでは、離婚をする方向であれば約200万円、離婚しない方向であれば約100万円あたりで、多くても300万円です。この相場は、妻にしてみれば安すぎると感じることが多いでしょうし、夫からすれば高いと感じるかもしれません。■不倫問題は「SNSのやりとり」など具体的な証拠集めが焦点に___不倫問題を解決するために、相談者が準備すべきことや、必要な期間などの対処法を教えてください。不倫の慰謝料を請求したい場合で考えてみましょう。不倫の場合、まず証拠が重要となります。証拠として最近多いのはLINEをはじめとしたSNSのやりとりです。LINEのメッセージ画面などをスクリーンショットなどで写真を撮って証拠にするというようなことは多いですね。メッセージのやり取り以外にも、携帯やスマホに残された写真、動画が残っていることも多いです。あとは、探偵事務所を雇って、調査報告書を持ってくる人もいます。慰謝料の金額にも関係してくるので、不倫が行われていた期間・回数も証明できる証拠だと良いですね。一度きりの関係なのか、長年関係が続いていたのかで、不倫されてきた側の精神的な損害は変わってきます。とはいえ、なかなか、昔の証拠を今から集めるというのは難しいことですので、ある程度の証拠が確認できているのであれば、話し合いや裁判の準備はできていると判断して問題ないです。 ■「訴訟告知」制度を使って不倫裁判を和解の流れに___不倫問題を解決するために工夫されていることは何でしょう?不倫の場合は法律的には、損害賠償請求事件になります。ですから、まずは任意で相手と交渉してみて、ダメだったら裁判を起こすという流れになってきます。裁判になれば淡々と手続きに従って対応していくことになりますが、任意の交渉段階では、弁護士次第なところがありますので、弁護士選びは非常に重要になります。 私は過去に、不倫をした女性が、不倫相手の男性の妻に関係を知られた結果、「夫と二度と会わない、約束を破ったら200万円を支払う」といった念書を書いたにもかかわらず、また会ってしまったというケースを弁護したことがあります。民法420条1項に「賠償額の予定」という規定があり、念書などで損害賠償額の予定を約束した場合は、裁判所は賠償額を増減することはできないと定められています。従って、この事件は、“念書がある”というかなり不利な状況でしたが、私は交渉で粘った結果、慰謝料を1/10の20万円にまで減額できました。___裁判までいったケースではどんな解決法を取られましたか?裁判になった例として、不倫をした男性の妻から不倫相手の女性だけが訴えられたケースで説明します。この場合、不倫をした男性側にも「訴訟告知」をしますね。不倫というのは、共同不法行為ですので、責任割合によって相手に求償することが可能だからです。民事訴訟法では、訴訟告知を行っておけば、裁判の判断内容が次の求償裁判の際の前提になるためです。不倫した男性の妻としても、離婚はしない考えの場合が多いものです。その理由として、今後も夫の収入をあてにして生活していこうと考えているからです。ですから、自分の夫を被告にはしたくないという人も少なくありません。そうすると、結局次の求償のことを考えれば、全額ではなくて、例えば、半分の額で和解しませんか、という流れになることが多くなりますね。不倫は不法行為ですので、決して褒められたものではありませんが、弁護士は不倫をされた側だけでなく、不倫した側も助けることができます。上記の例でも、訴えられたり、念書を書いたりする前に、早めに弁護士に相談に来てくれれば、リスクを最小限に抑えることができたと思いますね。 *取材協力弁護士:天野 仁(あまの ひとし)弁護士1967年生まれ、神奈川県出身。神奈川県立川和高等学校卒業。早稲田大学法学部卒業。早稲田大学大学院法務研究科修了。みずほ銀行に17年間勤務し、その間、法人・個人営業、外為・デリバティブ業務、インターネットバンキング開発などを担当。主な取扱分野は、離婚・男女問題、相続、破産、交通事故、金融商品被害、労働事件、企業法務、刑事事件など。これまでの経験を活かしつつ、親切・丁寧な対応を心がけて弁護活動に取り組んでいる。また、「東京ステラ法律事務所」では、現在5人の優秀なスタッフを要し、一般民事・家事事件・刑事事件等の個人の法律問題から、取引紛争・事業再生・倒産事件・知的財産権・労働法務等の専門性のある企業法務に至るまで、クライアントに最良のリーガルサービスを提供できることを旨とし、日夜邁進している。*取材・文:塚本建未(トレーニング・フットネス関連の専門誌や、様々なジャンルのWebメディアを中心に活動するフリーランスライター。編集やイラストも手がける。塚本建未Website 「Jocks and Nerds」)【画像】*編集部*天野弁護士のインタビュー記事銀行員から転身…異色のキャリアを持つ弁護士が「交渉・折衝力」を大切にする理由とは
2016年12月25日年末年始は、とにかく高速道路が渋滞します。渋滞の距離が30キロは序の口、ひどい場合になると70キロになることも少なくありません。今年のクリスマスは12月23日から3連休ですので車で出かける人も多くなるでしょうし、年始は1月4日が平日で仕事始めのケースが多いため1月3日にUターンが集中し、かなりの混雑が予想されています。高速道路はその名の通りかなり速いスピードで走る道路ですから、停滞する渋滞の入り口はかなり危険なもの。一般的にそのようなとき最後尾の車はハザードランプをつけて後ろの車に危険を促すのがマナーとされています。しかし、なかにはハザードランプを出さない人もいます。これは道路交通法違反に問われないのでしょうか?Q.「渋滞の最後尾の車がハザードランプを出さない」という行為は違反に問われないの?*画像はイメージです:違反ではありません。あくまでも注意を促す自主的な行動です「渋滞の入り口でハザードランプを出さなければならない」という規定はありません。したがって仮に出さなかったとしても道路交通法に抵触せず、違反にはなりません。ハザードランプについては、出していても事故になることがあり、その効果については意見が別れるところ。様々な見解がありますが、安全面から考えるとハザードを出すことによって防げる事故もありますので、マナー的には出したほうがいいといっていいのではないでしょうか。 *記事監修弁護士:竹内 省吾(弁護士法人サリュ 銀座事務所。 交通事故分野のパイオニア。民事刑事問わず無料相談 メール受付対応。おもな著作に「交通事故裁判和解例集」(第一法規)などがある。)*取材・文:佐藤俊治(複数メディアで執筆中のフリーライター。真面目な話題からくだけた話題まで手広く記事を執筆中。趣味は将棋、好物はカツカレーとパインアメ)【画像】イメージです* おちやっちゃん / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月24日*画像はイメージです:月14日、俳優の香川照之さんが離婚していたことが発覚しました。約2年間、代理人を立てて話し合いを続け、21年に渡る結婚生活を終えられたそうです。2年も話し合いを続けたとのことで離婚が難航したような印象がありますが、そもそも法的には離婚とはどのように進められるものなのでしょうか?三宅坂法律事務所の伊東亜矢子弁護士にお聞きしました。*取材協力弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。) ■約9割は当事者同士の話し合いによる協議離婚まず、離婚には以下の4種類があります。(1)協議離婚(2)調停離婚(3)審判離婚(4)裁判離婚「協議離婚は当事者双方の話し合いによって成立させるものです。厚生労働省の平成20年統計によると、離婚全体の87.8%が協議離婚です。」(伊東弁護士)約9割の離婚は夫婦の話し合いだけで成立しているということです。しかし、一方に離婚の意志がない場合や条件の折り合いがつかない場合など、当事者同士の話し合いでは解決が難しい場合もあります。「その場合、家庭裁判所に調停を申し立て、調停委員の意見を得ながら話し合いを行います。合意が成立すれば調停離婚となります。調停離婚の割合は9.7%となっています。調停では合意できない場合、裁判所が調停にかわる審判をするか(審判離婚)、離婚を求める当事者が裁判を提起することとなります。これが裁判離婚です(なお、前述の厚生労働省の統計では、協議離婚以外のものを併せて『裁判離婚』としています)。裁判の中で解決ができれば和解離婚となり、解決が難しい場合は裁判所が判決を下すこととなります。」(伊東弁護士)審判離婚の件数はごくわずか、裁判による離婚の割合は和解、判決合わせて2.4%だそうです。離婚のほとんどは協議離婚と調停離婚で成立していることがわかります。 ■もめそうな場合は弁護士によるサポートを香川照之さんは代理人を通して話し合いを続けたそうですが、弁護士に依頼したほうがいいのはどのような状況にある時なのでしょう?「一方当事者が離婚したくないと述べている場合や、条件面で争いがあるような場合は裁判所の手続きを利用した解決をはかる必要があります。調停、裁判は時間がかかり、特に裁判になると解決まで年の単位を覚悟する必要があります。弁護士に委任をする場合はその費用も要することとはなりますが、慰謝料、財産分与や親権などの条件については弁護士が関与した上で主張をしっかりと伝え、納得のいく解決を求めることが望ましいと思われます。」(伊東弁護士)離婚はしたものの慰謝料や養育費などの不払いトラブルに見舞われるケースも少なくありません。後々のトラブルを避け、すっきり離婚するためには、専門家によるサポートを検討するべきでしょう。 *取材協力弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。)*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。【画像】*TAROKICHI / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月24日今年も残り1週間程度。もう少し頑張れば、楽しい年末年始休みが待っています。自動車で遠路はるばる実家に帰る人も、多いことでしょう。一方でこの時期は高速道路での交通事故も多発します。普段一般道中心で、滅多に高速道路を運転しない人も多くハンドルを握るだけに、事故が起こりやすいのです。特に多いのが、渋滞に気が付かず追突してしまうケース。おもに前方不注意が事故理由で、過失割合は追突した車が100%であることが一般的です。しかし場合によっては100%にならないこともあるようです。一体どのようなケースなのでしょうか。弁護士法人サリュ銀座事務所の竹内省吾弁護士にお話を伺いました。 Q.高速道路の渋滞で、追突した側の過失割合が100%にならないケースはありますか?*画像はイメージです:追突された側の停車理由によっては100%にならないこともあります。「まず、高速道路上では、駐停車は原則として禁止されています(道交法75条の8)。ですから、駐停車した車両、あるいはブレーキをかけた車両が追突された場合、『やむを得ない事情』がなければ、追突された側も過失責任が発生することとなります。例えば、整備不良や事故に巻き込まれたりして停車した場合に、適切な停車措置(路側帯への移動や停止表示器材の設置等)をとれたのにこれをせずに追突されたような場合には、過失が問われることとなるでしょう。また、停車の原因について、自己に過失があるのか否かによっても過失割合は変わってきます。自己に過失のある停車、例えば、整備不良や自己の過失による事故による停車の場合の方が、当然に、追突された場合の過失割合は大きくなります。一方で、渋滞等で停車せざるを得ず、前の車両に伴い適切にブレーキをかけ減速、停車中に追突をされたような、専ら追突車両の運転手の前方不注視が原因となるような事故では、当然ですが追突された側は過失責任を負わず、追突車両側の過失割合が100%となります」(竹内弁護士)追突される側がなぜその位置に停車したのかということが、過失割合を判断するうえで重要になるのですね。 *取材協力弁護士:竹内 省吾(弁護士法人サリュ 銀座事務所。 交通事故分野のパイオニア。民事刑事問わず無料相談 メール受付対応。おもな著作に「交通事故裁判和解例集」(第一法規)などがある。)*取材・文:佐藤俊治(複数メディアで執筆中のフリーライター。真面目な話題からくだけた話題まで手広く記事を執筆中。趣味は将棋、好物はカツカレーとパインアメ)【画像】イメージです* nanD_Phanuwat / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月23日12月に入り、イルミネーションが輝き、クリスマスが近づいてきたことを感じさせてくれます。今年の12月25日は3連休の最終日ということもあり、クリスマス絡みのイベント予定を入れているカップルやご家族も多いのではないでしょうか。クリスマス当日にはトナカイを先頭に、ソリに乗ったサンタクロースが街中の子ども達にプレゼントを配ってまわります。雪の降るに夜に鈴の音を響かせながら…とロマンチックなお話ですが、弁護士としては見過ごす訳にはいきません。なぜなら、サンタクロースの行為は様々な違法行為をしている気がするからです。そこで今回は、夢も希望もありませんが、一般的に言われている「サンタクロース」の5つの行動パターンとそれによって引き起こされる2つの事象について、犯しているかもしれない犯罪行為とは何か?また、それはどのような罪に該当するのかを紹介します。*画像はイメージです:①ソリで空を飛ぶ航空法により原則として飛行計画の承認が必要です。航空法97条は、航空交通管制圏、航空交通情報圏の空港等から出発し、または航空管制圏等を飛行しようとするときは、国土交通大臣から飛行計画の承認を受けなければならないことを定めています。自家用・事業用は問いません。なお、そもそもトナカイは航空法の規制対象である「航空機」に当たらないのではないかという疑問もあります。航空法では、「航空機」を、人が乗って航空の用に供することができる飛行機、……飛行船その他政令で定める航空の用に供することができる機器、としていますので、航空機に含まれる可能性はあるでしょう。 ②煙突からの侵入定番の侵入方法ですが、皆様の予想どおり、無断で入る場合は住居侵入罪となるおそれがあります。しかし、世間や少なくともその地域で、サンタクロース(あるいはサンタクロース役の人)が煙突から入ってプレゼントを置いていくことが一般的な慣習となっていたり、むしろ歓迎され、その家の管理者(通常は居住者である親)の黙示の承諾や招待があれば、住居侵入罪とはなりません。 ③外国から勝手に飛んできて入国入管法違反です。場合によっては、領空侵犯とされて自衛隊機がスクランブル発進することもあるかもしれません。サンタクロースは見つかり次第、入管法違反の刑事手続と、行政手続である強制退去措置を採られる憂き目に遭います。 ④トナカイで道路を走行自転車と同じようにルールを守れば、通行することは可能です。馬や牛、トナカイ、像といった動物に乗って通行する場合、トナカイ等の動物は道交法上の軽車両となり、自転車と同じ扱いとなります。トナカイによって引かれるそり(リヤカー)も自転車と同じ軽車両扱いです。自転車と同じということは、基本的に通行させることは適法です。ただし、各都道府県によって規制内容が若干異なりますが、例えば、京都府道路交通規則では、「牛、馬、めん羊等の家畜を道路に放し、または交通の妨害となるような方法でつないでおくこと」などは禁止されています。ちなみにトナカイから下りて引いている場合は歩行者として扱われます。 ⑤勝手にプレゼントを置いていく行為欲しいプレゼントならいいですが、欲しくもないものを置いていかれ、しかも、後日代金を請求されるような場合は、特定商取引法での送り付け商法(ネガティブオプション)に該当する可能性があります。この場合は、承諾しない限り、売買契約は成立せず、送付されてから2週間経過してもサンタが引き取りに来ない場合は、処分できます。サンタが無償でプレゼントを置いていく分には問題ありません。 ⑥朝起きたら欲しかったプレゼントと違っていたもちろん文句はいえません。心遣いに感謝しましょう。 ⑦小学生くらいになってサンタは演出だったと親に告白されたサンタの夢は壊されましたが、大人になってもっと大きな夢を自分で追いかけましょう。慰謝料等は請求できません。 *この記事は2014年5月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)【画像】イメージです*vvvita / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月23日2016年12月19日に、最高裁の判例変更がなされました。内容は、「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる」というものです。実は今までは、「預金債権(※)」は相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されていました(最判平成16年4月20日家月56巻10号48頁)。サザエさん一家の事例をもとに、下記の3点をわかりやすく解説したいと思います。※預金債権…銀行などの金融機関に対して寄託された金銭債権のこと。 預金債権には、普通預金や定期預金などがありますが、いずれも預金債権。(郵便貯金は含まない)①預金債権に関する今までの判例だとどのような処理されていたのか②郵便貯金の判例(最判平成22年10月8日民集64巻7号1719頁)だとどのように処理されていたのか③預金債権に関する判例が変更されることによってどのように変わっていくのか【相続の事例】磯野波平さんには、サザエさん、カツオくん、ワカメちゃんという3人の子どもがいます。波平さんは、5000万円の土地・家屋を可愛がっていた末っ子のワカメちゃんに遺言で贈与することにして、1億2000万円の預金については何も遺言を残さずに亡くなりました(波平さんの配偶者であるフネさんはすでに亡くなっていたとします)。*画像はイメージです:サザエさん、カツオくん、ワカメちゃんの相続分(波平さんの遺産を相続すべき割合)は、3人で割るため、3分の1ずつです。5000万円の土地・家屋がワカメちゃんのものになったことについて、サザエさん、カツオくんは不満でした。そこで、亡くなった波平さんの「預金債権」について、波平さんの財産を最終的に誰のものにするかという話し合い(法的には遺産分割協議といいます)によって、サザエさん、カツオくんは、ワカメちゃんよりも多くの「預金債権」を払い戻すことができるでしょうか?これが、今回の最高裁で判例変更があった判決のPOINTとなってくる要素です。 ①今までの判例(最高裁が出した判断)だと、ワカメちゃんが得をしていた波平さんの財産をサザエさんたちがみんなで相続した場合、亡くなった波平さんの土地と建物、預金を最終的に誰のものにするか決めるまでの間、亡くなった波平さんの財産は、サザエさん、カツオくん、ワカメちゃんが共有することになります。今までの判例(平成16年の判例)によると、「預金債権」(銀行預金に関する権利)については、相続分に応じて当然に(つまり、相続人同士で話し合う余地がなく)分割されて単独に、持っていることになっていました。今回のケースだと、亡くなった波平さんの1億2000万円の預金債権について、サザエさんたちが相続を開始すると、サザエさん、カツオくん、ワカメちゃんたちは、A銀行に対して、それぞれ1億2000万円の3分の1である4000万円ずつを返してくださいという権利を持つことになります。※ワカメちゃんが預金債権を遺産分割協議の対象とすることに反対した場合 法的にみると、サザエさん、カツオくん、ワカメちゃんの3人が合意をした場合は、「預金債権」を遺産分割協議の対象とすることができるのに対して、ワカメちゃんが預金債権を遺産分割協議の対象とすることに反対した場合は、「預金債権」を遺産分割協議の対象とすることはできず、サザエさんとカツオくんは、それぞれの相続分より多くの預金債権を払い戻すことができなかったのです。ワカメちゃんが反対した場合、ワカメちゃんは9000万円分の財産を相続できるのに対して、サザエさんとカツオくんは4000万円ずつの財産しか相続できないことになり、末っ子のワカメちゃんだけが得をしていました。 ②「定額郵便貯金債権」だと、3人の話し合いで最終的に誰のものかが決まるところが、亡くなった波平さんが残したのが「定額郵便貯金債権」だった場合は、相続分に応じて当然に分割されるのではなく遺産分割手続で定額郵便貯金債権が誰のものか決めると、平成22年に最高裁は判断しました。つまり、波平さんが残したのが「定額郵便貯金債権」だと、ワカメちゃんだけが得をするのではなく、遺産分割協議で、サザエさん、カツオくんは、ワカメちゃんよりも多額のお金を払い戻すことができることにもなったのです。最高裁が定額郵便貯金債権についてこのような判断をした理由は、「定額郵便貯金債権」についてのルールを定めた郵便貯金法という法律が分割払戻しをしないという制限を加えていたためでした。 ③今回の判例変更によって「預金債権」も遺産分割協議の対象にそもそも、「預金債権」は現金と同様、遺産分割を柔軟に行うために役に立つものです。現に、金銭については調整要素として最高裁も分割を否定していました。実際、今回のケースのように、波平さんの遺産に5000万円の土地・家屋のように高額の財産が含まれる場合、サザエさんやカツオくんが「預金債権」を、ワカメちゃんよりも多く払い戻せるほうが望ましいでしょう。また、亡くなった波平さんの全財産である1億7000万円のうち、「預金債権」が1億2000万円を占める場合(全体の約70パーセント)、これまでは具体的相続分に応じた遺産分割審判が難しくなってしまっていました。このような扱いはふさわしくありません。今回の判例変更により、「預金債権」も、当然分割させるものとはできなくなりました。誰か(たとえばワカメちゃん)が反対しても、「預金債権」を遺産分割協議の対象とすることができるようになったのです。図表作成:編集部■鈴木弁護士から一言12月19日の判例は、今までの相続実務を一変させるものです。今回のケースのワカメちゃんのように相続財産をもらいすぎだと思われる相続人がいる場合は、ぜひご相談ください。 *著者:弁護士 鈴木謙太郎(1972年の設立以来40年以上の歴史がある、虎ノ門法律経済事務所の池袋支店で支店長を務める。注力分野は遺産相続、不動産取引、交通事故、債権回収、労働問題、債務整理、刑事事件、離婚等。「皆様の人生の一大事を共に解決するパートナーとして、真摯に業務に取り組んでまいります。」)【画像】イメージです*マハロ / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月23日MCやDJとして活動しているZeebraさんが、妻でモデルの中林美和さんにモラハラをしているのではないかとの報道が話題になっています。「モラハラ」の実際の概念は実ははっきりとはしませんが、一言でいえば、「言葉や態度で人の心を傷つける精神的暴力」と考えていただければよいのではないでしょうか。近年は、肉体的暴力(DV)の被害もさることながら、モラハラによる被害を理由に離婚を望む人も少なくありません。そこで、今回はモラハラと離婚の関係について考えていきたいと思います。*画像はイメージです:■モラハラと認定されるのはどのような行為か先ほども書いた通り、何をモラハラというかは実はあいまいです。それは、人の感じ方によるところが大きいからです。しかし、例えば、「役立たず」、「こんなこともできないのか」、「生きてる価値がない」など、相手を侮辱したりこき下ろしたりするような言葉を日常的に吐いていれば、モラハラということができるでしょう。また、「相手が話しかけているのに無視をする」、「食事を作らせておいて手を付けない」という態度も、反復継続したりすれば、精神的な暴力、すなわちモラハラと認定されることになると考えられます。 ■「モラハラ夫婦」の関係修復は可能か?夫婦の一方のモラハラが他方にとって限界を超えるものであった場合、関係を修復することはかなり難しいものです。そもそも、モラハラをしている側は、自分がしていることがモラハラだとは気づかない、あるいは気づいていても認めないことが多々ありますので、そのような場合には関係修復は不可能と考えるべきでしょう。仮に関係修復が可能だとすれば、モラハラをしていた側が心からそれを反省し、謝罪をすることが最低限必要な条件です。しかし、相手が限界を超えてしまっている場合、「謝ってもその場限りで、またすぐに元通りになる」と考え、すっかり信頼を失っていることが多いので、簡単に修復できるわけではありません。実際、その場では謝っても「元の木阿弥」になる人は非常に多いように思います。 ■モラハラされた側の対抗策は「証拠を残す」ことモラハラをされた側としては、我慢の限界を超えたら離婚を検討することになるでしょう。自分が苦しんできたことについて、慰謝料を請求したいと思うのも当然です。しかし、そのためには、モラハラ被害の証拠が手元に残っていなければなりません。モラハラをする人間は小賢しいことが多く、往々にして、証拠を残さない形で嫌がらせをします。例えば、メールやチャットで嫌がらせをすることはあまりありませんし、また、嫌がらせをする前に録音されないようにスマホを取り上げたりすることもあります。ですので、モラハラ被害というのは実は証拠が残りにくいのです。もちろん、メールやチャットで嫌がらせの言動があれば、そのデータは消えないように保存しておかねばなりません。また、できるだけ近い時期にされたことをメモとして残しておく(日付も入れておく)、恥ずかしいかもしれませんが、友人にメールなどの形が残るもので相談しておくことは次善の策と言えます。モラハラというと何か軽い感じがしますが、実際にはDVと同じくらいに人を苦しめるものです。泣き寝入りすることがないよう、できるだけ証拠を残しておくことをお勧めします。 *著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)【画像】*torwaiphoto / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月23日*画像はイメージです:満員の電車に乗車する際、両手でつり革を持つなどして痴漢に間違われないように注意している男性は多いでしょう。窮屈な車内では意図せず他人と接触してしまい痴漢と取り違えられることがありますし、示談金目当てに痴漢だとでっち上げられる可能性もなくはありません。発生件数に根拠のあるデータは見つかりませんでしたが、この痴漢でっち上げこそ、世の男性たちが最も恐れ、憎んでいるものではないでしょうか?痴漢でっち上げがどんな犯罪に当たるのか、三宅坂総合法律事務所の伊東亜矢子弁護士にお話を伺ってみました。*取材協力弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。) ■痴漢のでっち上げはどんな罪に?痴漢をでっち上げであったことが判明した場合、これを行った人物はどのような罪に問われますか?また、でっち上げではなく、勘違いによる取り違えだった場合は罪に問われますか?「意図的なでっち上げの場合、虚偽告訴罪(刑法172条;人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、3月以上10年以下の懲役に処する)に問われる可能性があります。勘違いによる取り違えの場合、上記の罪には問われませんが、民事上の損害賠償責任を負う可能性はあります。」(伊東弁護士)では、痴漢の現場を実際には見ていないのに見たと証言した人は罪に問われますか?またそれは故意の嘘であったか見間違いであったかで違いはありますか?「故意の嘘である場合、虚偽告訴罪に当たり得るほか、裁判で嘘の証言をした場合は偽証罪(刑法169条;法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、3月以上10年以下の懲役に処する)に問われる可能性があります。見間違いであった場合には上記の罪には問われませんが、前述の場合と同様、民事上の損害賠償責任を負う可能性はあります。」(伊東弁護士)でっち上げ行為はもちろん犯罪であり、刑罰の対象となります。勘違いや見間違いはその限りではありませんが、被害者は精神的苦痛などを理由に民事で損害賠償を請求することができるようです。 ■痴漢でっち上げに対して弁護士は何をする?痴漢でっち上げの被害にあった場合、弁護士に依頼するとどのような手続きをしてくれるのでしょうか?「刑事事件になっていれば、無罪を獲得すべく、相談者自身からよく話を聞き、捜査機関側の証拠もじっくり調査して、その人が『痴漢行為をしていないこと』をなるべく客観的に立証する術を考えます。もっとも、相談者が逮捕・勾留された状態で相談を受け、無罪を争う方針で進める場合、身柄拘束期間が長期化してしまうリスクがありますので、相談者とよく相談しながら進めます。また、故意や過失で告訴をしたり、『目撃した』と述べたりした人に対して、損害賠償請求を行うこともあります。」(伊東弁護士)混雑する電車内で「痴漢だ!」と犯人扱いされた時、痴漢を行っていないことを証明するにはいわゆる悪魔の証明のような難しさがあります。精神的にも大変な苦痛ですし、パニックになって不適切な言動をとってしまうこともあるでしょう。こんな時こそ、冷静に状況を分析し、無実であることを一緒に証明してくれる弁護士が必要だと思われます。 *取材協力弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。)*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。【画像】イメージです*Matej Kastelic
2016年12月22日*画像はイメージです:師走に入って仕事の追い込みもあり、急いで移動しないといけないビジネスパーソンも多いと思います。そんな移動時にタクシー乗車を選択し、運転手に「とにかく急いで」と指示したところ、タクシーがスピード違反で捕まってしまった…。指示をした乗客は何らかの法的責任を負うのでしょうか。 Q.スピード違反の処罰対象はタクシー運転手だけ?A.急ぐ指示をした乗客も指示の仕方によっては「教唆犯」として処罰される可能性アリ。スピード違反は、道路交通法に違反する犯罪行為(速度違反)にあたります。そして、刑法上、他人に特定の犯罪を実行する決意を生じさせた場合、「教唆犯」として処罰されることがあります。ここで、他人に特定の犯罪を実行する決意を生じさせる手段は問われません。つまり、乗客がタクシーの運転手にスピード違反を唆した場合、運転手は速度違反の「正犯」として処罰され、乗客は「教唆犯」として運転手と同じ処罰を受けることになります。もっとも、単に乗客がタクシーの運転手に「急いでくれ」と指示しただけで、直ちに乗客が責任を負うことにはなりません。“最高速度を超えない範囲で急いでほしい”というつもりで、運転手にこのような指示をすることが考えられるからです。これに対し、ストレートに「スピード違反をしろ」と指示した場合や、「無謀な運転をしろ」と命令した場合など、運転手が速度違反を犯すことについて積極的な立場を取っていた場合には、「教唆犯」として乗客も処罰を受ける可能性があります。 Q.乗客はタクシー運賃を支払う義務はある?A.捕まった場所が目的地でない場合、支払い義務は発生しない。まず、乗客がタクシーに乗り込み、行き先を告げて運転手が了承した段階で、タクシー会社と乗客との間で、「旅客運送契約」という契約が成立していると考えられます。この「旅客運送契約」の内容は、「乗客が指定した場所まで運転手が乗客を安全に運び、それに対する運賃を乗客が支払う」という内容であると考えられます。そうすると、タクシーが途中で事故に遭ったり、運転手が警察に逮捕されたりした場合、タクシー会社は「乗客を指定された場所まで運ぶ」という債務の本旨に従った履行をしていないことになります。よって、今回のようにスピード違反で捕まり、乗客の指定場所まで運べなかったケースでは、乗客は運賃を支払う義務がなくなると考えられます。 なお、「旅客運送契約」には、「運転手は目的地まで合理的な経路を選択する」という内容も含まれていると考えられるため、タクシーが遠回りしたことによって運賃が増えた場合、乗客は余計に発生した分の運賃について支払う義務はないと考えられます。もっとも、タクシーの運転手の選択した経路が合理的といえるか否かは難しい問題です。道路工事等により迂回する必要がある場合や、乗客の指示により結果的に遠回りしてしまった場合は、運転手に責任はないといえますし、複数の経路がある場合に最短距離を通らなかったからといって、直ちに合理的な経路ではないとはいえないと考えられます。合理的な経路ではないといえるためには、運転手がわざと遠回りした場合や、乗客の指示に従わなかったなど、運転手の不注意が明らかな場合に限られると考えられます。 *著者:弁護士 鈴木翔太(鈴木法律事務所。東京弁護士会所属。①依頼者の立場に立って考える、②難解な法律問題をわかりやすく説明する、③迅速に対応し、随時報告をすることを基本に据えている。)【画像】イメージです*Job design Photography / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月21日12月19日、覚せい剤取締法違反(使用)の疑いで逮捕されていた歌手のASKAさんが「嫌疑不十分」で不起訴となり、釈放されました。理由としては、本人の尿として任意提出された液体が、本人の尿であると立証できなかったためと報道されています。皆さんの中には、この「嫌疑不十分」という言葉にあまり馴染みがない方も多いかと思いますので、今回はこの法的解釈について、解説していきたいと思います。*画像はイメージです:■不起訴処分の理由には「嫌疑不十分」の他にも「嫌疑なし」「起訴猶予」が存在この「嫌疑不十分」というのは、犯罪の疑いはあるものの、公判維持ができるほどの証拠が不十分という理由で、不起訴処分となる場合に使われます。報道によれば、尿が本人のものではないというASKAさんの主張を警察が覆せなかったとのことで、この点の証拠が不十分ということでの不起訴となった模様です。ちなみに不起訴処分には、「嫌疑不十分」の他、「嫌疑なし」というものと、「起訴猶予」というものがあります。「嫌疑なし」というのは、例えばアリバイが証明されたなど、犯罪の疑いが晴れた場合をいいます。また、「起訴猶予」とは、公判維持が可能であったとしても、例えば、示談が成立した、本人が反省している、身元保証人が付いたなど、敢えて前科者にする必要がない、あるいは、社会内での更生が期待できるような場合に、検察官の裁量により不起訴にする場合を言います。 ■今回の再逮捕におけるメディア報道のあり方について「逮捕=有罪」と決めつけた報道が多数見られた現状については、通常は、尿検査で「陽性」反応が出たら「有罪」推定が働きますので、その意味ではやむを得ないのではないかと思います。とはいえ、傍目から見てメディアからのバッシングが強すぎ、ASKAさんの逃げ道を残してあげたら良かったかなと思ったりしました。再犯率の高い覚せい剤事犯において、ASKAさんがこれまでどのような努力をされてきたのか、一般的にはどのような治療施設があるのか、などの再犯しないための周りの援助について、もっと報道しても良かったのかなと思います。 *著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)【画像】イメージです*twinsterphoto / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月21日年末年始、忘年会や新年会など飲酒する機会が非常に多い時期ですよね。しかしそれに伴って増加するのが酔っ払いのトラブル。12月16日には大阪市水道局の男性職員が、大阪市営地下鉄の駅員に暴行したとして現行犯逮捕されていたことが19日に報道されました。男性は職場の忘年会帰りで酒に酔っていたといいます。他にも忘年会の飲み直しなのか、電車の中でお酒を飲んでいる酔っ払いが、いきなり他の乗客に絡み始めた…。こんなトラブルに出くわした方も多いのではないでしょうか。電車内での飲酒はマナー的な観点から見ると色々と意見はありますが、法律的には適法です。しかし、電車内で酔っ払い起こしてしまった行動が、駅員や他の乗客に迷惑をかけた場合にはどうなるのでしょうか?Q.電車内で酔っ払い他人に迷惑をかけてしまった場合、違法になる?*画像はイメージです:「業務妨害罪」などに問われる可能性があります。電車内でお酒を飲む行為自体は違法ではありません。しかし、電車内で、酔いにまかせて公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動をすることは、「酒に酔つて公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律」により禁止されています(罰則もあります。)。また、例えば、駅構内や車内で大暴れをして電車を止めてしまうなど、鉄道会社の業務を妨害するような行為をしてしまった場合には、業務妨害罪に問われる可能性があります。その他に、酔っ払った勢いで駅員や他の乗客に暴力をふるってしまった場合には、暴行罪や傷害罪などの罪に問われ刑罰を受ける可能性もあります。「酔っ払っていたから…」そんな甘い言い訳は通用しないので、電車内では他の乗客には迷惑をかけないように気をつけましょう。お酒もほどほどが一番ですね。 *記事監修弁護士:多田幸生(小野総合法律事務所所属。会社法務・企業法務の豊富な経験があり、大手証券会社の法務職としての経歴を活かし、「守りの法務」だけでなく「攻めの法務」を提供。)*取材・文:伊藤あきら(AFP、クラシックカメラアンドアンティークカンパニー株式会社代表取締役。同志社大学卒業後、日本生命相互会社、HIPHOPダンサー、税理士法人を経て、現職。会社経営の傍ら、フリーライターとしても活動している。)【画像】*recepbg / Shutterstock
2016年12月20日平成21年10月に、島根県立大学の学生だった平岡さん(当時19歳)がアルバイトを終えた後に行方が分からなくなり、その11日後に、およそ25キロ離れた臥龍山の山頂付近の付近で、遺体の一部が発見されました。警察によると、事件の2日後に山口県内の高速道路で起きた事故で死亡した30代の会社員男性が、事件に関与している疑いがあるということから、殺人などの容疑で書類送検する方針であると報じられています。まだ現段階では書類送検はされていないようですが、「すでに事故で亡くなっている人を書類送検する」ということはどういった意味があるのでしょうか?また、(今回の例に限らずが)事件発生から書類送検、その後の一般的な流れについても解説したいと思います。*画像はイメージです:■「送検」には「身柄送検」と「書類送検」の2種類あり警察は、例外的な微罪事件を除き、犯罪の捜査をしたときは、事件を検察官に送致しなければならないとされています(刑事訴訟法246条)。この事件を検察官に送致することを「送検」と言います。送検には2種類有り、逮捕した場合に犯人ごと送検する場合を「身柄送検」、逮捕しないで書類のみを送検する場合を「書類送検」と言います。本件では、被疑者が既に死亡していますので、「身柄送検」はできません。また、微罪事件でもありませんので、書類のみを送検する「書類送検」を刑事訴訟法に基づいて行うということになります。 ■不起訴処分が決まっていても被害者の損害賠償請求に「書類送検」は有用!それでは、検察官は、書類送検された後にどのような処分を行うのでしょうか?刑事訴訟法には、339条1項4号に、「被告人が死亡したときには、決定で公訴を棄却しなければならない」とされており、被告人が死亡している場合には、公判を維持できないことになっています。それとの関係で、検察官は、書類送検された事件については、必ず「不起訴処分」とすることになっています。不起訴処分にするのであれば、書類送検する意味が無いのでは?と思われるかも知れませんが、捜査結果がキチンと残ることで、被害者による損害賠償請求(対保険会社、対遺族)の証拠ともなり得ますので、有用なことに間違いありません。 *著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)【参考】NHK NEWS WEB:島根 浜田の女子大学生殺害事件 死亡の男を書類送検へ【画像】イメージです*naka / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月20日高速道路などで速度を超過した車を自動で撮影するシステム、オービス。一般道では30km/h以上、高速道路では40km/h以上の速度超過があった場合、違反者を撮影します。これは「一発免停」以上の違反基準となります。動かぬ証拠を掴んだ警察は、後に違反者に対し呼び出し状を送付するなどして、警察への出頭を促します。素直に応じた場合、行政罰の反則金ではなく、刑事罰の罰金となります。これは交通裁判にかけられる、いわゆる「赤キップ」を切られる対象となり、それだけ重い違反レベルとなります。要請を受けたほうにしてみれば、わざわざ警察に出頭するのは億劫なもの。なかには罰金を払いたくないがために無視し続けるという行動に出る人もいます。そのような行為をすると一体どうなるのでしょうか?Q.オービスの呼び出し状を無視し続けるとどうなる?*画像はイメージです:逮捕されます!一般的に無視していると何度か呼び出し状が送られ、電話がかかってきたり、刑事が訪ねてきたりするようです。これは複数回行われます。それでも無視した場合、ある日突然刑事がやってきて逮捕となります。この場合立派な犯罪となりますので、前科がつきます。「たかがオービス」と考えてしまいますが、されどオービス。罪にはかわりありません。今年の6月には、オービスの呼び出し状を無視し続けたうえ、刑事の訪問などでも一切協力せず逃げ切ろうとした39歳の男性が逮捕されています。逃げ切れたと思っても、結局は逮捕されてしまいます。素直に出頭したほうが身のためではないでしょうか。 *記事監修弁護士:竹内 省吾(弁護士法人サリュ 銀座事務所。 交通事故分野のパイオニア。民事刑事問わず無料相談 メール受付対応。おもな著作に「交通事故裁判和解例集」(第一法規)などがある。)*取材・文:佐藤俊治(複数メディアで執筆中のフリーライター。真面目な話題からくだけた話題まで手広く記事を執筆中。趣味は将棋、好物はカツカレーとパインアメ)【画像】イメージです* むーさん / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月19日株式会社DeNAの医療サイト『WELQ(ウェルク)』が無断転載や誤情報を拡散した問題を口火となり、キュレーションメディアのトラブルが世間を騒がせています。その流れで、LINE株式会社が運営する『NAVERまとめ』に対して、記事を無断転載された側からの削除依頼への対応がどうなのか疑問を呈する記事「なぜ無断転載された側に手間を要求?「NAVERまとめ」の“トンデモ”削除対応、理由を聞いた」を『ねとらぼ』が配信し、話題になっています。LINE社の対応に具体的にどのような問題があったのか検討してみましょう。*画像はイメージです:■本人確認は必要不可欠記事では削除依頼をしたところ、LINE社から下記2点を求められたと報じられています。(1)権利を侵害しているNAVERまとめの画像・テキストのURLを指定すること(2)出典のURLに、「このページ内の画像をNAVERまとめに転載することを禁止します」など、転載禁止の旨を追記することまず、(1)については、削除依頼を受けた側としても、どこが問題の記載があるか分からない以上、極めて正当な要求でしょう。ただし記事によると、削除をLINE社に依頼した側としては、最初から「出典URLと無断利用されたNAVERまとめのURLも添えた」ということなので、この点を改めて要求されるのはおかしいといえます。次に、(2)については、「申告者が本人かを確認するため」にしていたようですが、本人確認の方法はこれ以外の方法でも十分可能であり、なぜNAVERまとめだけ特別扱いするような記載をしなければ行けないのかという点で、必ずしも適切とは言えないと言えると思います。もっとも、著作権者以外からの請求に応じる理由はないため、確認は必要不可欠であり、何らかの本人確認のための手間を惜しむことはできないといえます。“侵害された側が負担を負うことが不当”という素朴な感情は理解できるのですが、自分の権利を守るためには、自分からきちんと主張立証をしていくことが必要なのです。 ■削除依頼ステップが明示されていない?また記事によると、削除依頼フォームの場所が分かりづらく、「出典ページ上に確認番号を記載する」ということは明記されていないと指摘されています。個人的な感想と経験を言えば、削除依頼フォームはまとめの一番下に表示されているので、必ずしも分かりづらいとはいえないのではないかなと思っています。他方で、「出典ページ上に確認番号を記載する」という点はたしかに明記されておらず、また、どのような流れで手続きが進むのかも一般の方には分かりづらいと思います。この点を踏まえて、一般の方から見てももっと分かりやすい案内をした方が、双方にとって余計な手間が減って良いのではないでしょうか。 *著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)【参考】ねとらぼ:なぜ無断転載された側に手間を要求?「NAVERまとめ」の“トンデモ”削除対応、理由を聞いた【画像】イメージです*sabelskaya / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月19日先月29日にキュレーションメディア「WELQ」が全記事を非公開にしたことを口火に、「NAVERまとめ」でも無断転載が問題になったりと、インターネット上の記事等に関する著作権に関し、注目が集まっています。いわゆる“コピペ”をしたら著作権侵害になるだろう、といった想像はつくかと思いますが、実際、著作権というものに対して、なんとなく抵抗を感じる方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、著作権についての基本的な考え方について解説していきたいと思います。また、日常生活でやってしまいがちな著作権侵害についても触れたいと思いますので、ご覧ください。*画像はイメージです:■著作権の法的な定義とは?「著作権」という言葉は日常生活でもよく耳にすると思いますが、法律上の定義を確認しておきましょう。「著作権法」という法律に、以下の規定があります。 著作権法17条著作者は、次条第一項、第十九条第一項及び第二十条第一項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第二十一条から第二十八条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。 「第二十一条から第二十八条までに規定する権利」というのは、具体的には、複製権、上演権及び演奏権、上映権、公衆送信権、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳権・翻案権、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利です。色々とありますね。ただし、何にでも著作権が認められるという訳ではなく、著作権が認められるのは「著作物」にあたるものだけです。著作物についても著作権法に規定があり、法2条1項1号に「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定されています。ちょっと、抽象的で分かりにくいかもしれません。法律というのは社会を規律するためのルールであり、様々なケースへの適用が前提となりますから、ある程度抽象的にならざるを得ないところはあるのですが、著作権にはちゃんと「例示」があって、10条で以下のとおり規定されています。 第10条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物二 音楽の著作物三 舞踊又は無言劇の著作物四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物五 建築の著作物六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物七 映画の著作物八 写真の著作物九 プログラムの著作物2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。3 第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。この場合において、これらの用語の意義は、次の各号に定めるところによる。一 プログラム言語プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。二 規約特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。三 解法プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。 ■著作物であるかの判断となるポイントは?著作物であるかどうかを判断するポイントになるのは、「思想や感情が創作的に表現されているかどうか」ですが、中にはそれが微妙なものもあるでしょう。しかし、インターネット上に投稿されている「記事」や「画像」(写真、イラスト、CG等)については、基本的には「著作物」にあたると考えたほうが無難でしょう。そうした他人の著作物を無断で使う(自分のブログに載せる等)ことは、著作権を侵害する行為になりますから、差止め(著作権法112条)や損害賠償請求がなされる可能性があります(著作権法には罰則もあり、著作権侵害については10年以下の懲役、500万円以下の罰金(またはこれらを併科)というかなり重いものが規定されています(法119条1項))。ただし、著作権法には「公表された著作物は、引用して利用することができる。」(法32条1項)という規定がありまして、著作権を持っている人の承諾を得ていなくても、著作権法が定める「引用」にあたるときは、著作権侵害にはありません。 ■適切な「引用」はどういった要件を満たす必要がある?では、どういう利用方法ならば「引用」といえるのかですが、著作権法32条1項では、上にあげた条文に続けて「この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」と規定されています。具体的には、たとえば論文を執筆している場合に、その論文の中で他人の論文に言及し、それについて考察するために文章を掲載する、といったケースが考えられるでしょうか。そして、適法な「引用」と認められるためには、以下の条件を満たす必要があるとされています。 (1)引用する必然性があること(2)他人の著作物を引用した部分が明確に分かるよう、括弧をつける等して自分の著作物と区別されていること(3)自分の著作物が「主」、他人の著作物を引用した部分が「従」という関係にあること(4)引用した部分の出典(著作者、著作物のタイトル、サイト名、URL等)が明示されていること(著作権法48条) ちゃんと「引用」するためには、けっこう色々な点に気をつける必要がある、ということがお分かりいただけるでしょうか。例えば、「インターネット上で見つけた記事を自分のブログに転載する」場合には、上に述べた「引用」の条件を満たすよう必要がありますから、記事を全文コピペして「こんな記事がありました!」など申し訳程度のコメントを付記した程度では、「引用」とは認められないと考えたほうがよいでしょう。 ■SNSアイコンでの使用やブログへの画像アップロードも注意また、「漫画やアニメのキャラクター画像を自分のブログに載せること・SNSのアイコンとして使用すること」については、「引用する必然性がある」ということを示すのが難しく、やはり、「引用」とは認められない可能性が高いと思われます。なお、「私的使用」(他人の著作物につき、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする場合。著作権法30条)にあたるときも著作権侵害にはなりませんが、インターネット上の記事・画像は不特定多数が閲覧可能なものですから、「個人的に又は家庭内といった限定的な範囲での利用にとどまる」とは言い難く、「私的利用」にもあたらないと考えられます。インターネット上では、容易にデータのコピー、転載ができることから、ついつい「このくらいなら問題ないだろう」などと考えて他人の著作物を承諾なく載せてしまいがちですが、「引用」の条件がちゃんと満たされているか、考えてみることが必要でしょう。 *著者:弁護士 櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。ブログ「ネットイージス.com」)【画像】*Ushico / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月18日*画像はイメージです:結婚情報誌『ゼクシィ』でピンク色の婚姻届が付録になったり、和歌山市と南海電鉄のコラボデザイン婚姻届「めでたいとどけ」の提供が開始されたりと、記念になる多彩な婚姻届が増えています。楽しい結婚生活をイメージしながら署名捺印できそうですね。さて、2人で婚姻届に署名し判を押して始めた結婚生活を終わらせるには、やはり2人で離婚届に署名し押印しなければなりません。ただし、役所に提出する段階では夫婦揃っている必要はありません。夫婦のうちどちらか一方、あるいは代理人の提出も可能です。記載に不備がなければ受理され、離婚が成立します。つまり、実際に本人が署名押印したかどうかは、役所では確認されないのです。ということはもしかして、離婚届って勝手に書いて出すことができるのでは?そんな疑問を、三宅坂法律事務所の伊東亜矢子弁護士に見解を聞いてみました。*取材協力弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。) ■勝手に出された離婚届を無効にする方法同意なく勝手に署名押印して提出された離婚届で離婚が成立してしまったら、無効にすることはできますか?どのような手続きが必要でしょうか?「離婚届は、必要事項が記入されていれば受理はされてしまいます。しかし、離婚の意思もないのに勝手に名前を書かれて出されたものであれば、法律上は無効であり、家庭裁判所に調停を申し立てて離婚は無効であることの合意を求めることができます。合意ができ、家庭裁判所が必要な事実の調査等を行ったうえで合意が正当であると認めれば、合意に従った審判がなされます。合意ができない場合は、訴訟を提起することとなります。」(伊東弁護士)一度は離婚が成立してしまいますが、取り消しが可能なのですね。 ■離婚届の記入は本人が行ったが、本人に提出の意志がなかった場合は?「届け出時点において離婚の意思がないのに提出されてしまったという場合も無効となります。もっとも、自ら署名した場合、離婚の意思がなかったと立証することは困難な可能性があります。また、一旦届け出が受理されてしまえば裁判所の手続を経てしか訂正ができないことになりますので、あらかじめ役所に離婚届の不受理申出をしておくことが考えられます。」(伊東弁護士)このような事態を防ぐため、「離婚届の不受理申出」という手続きがあります。あらかじめこれを提出しておくと、離婚届が提出されても受理されません。有効期限は無期限です。もし勝手な離婚届の提出が想定される場合は、事前にこの手続きを済ませておくのが賢明かもしれません。 ■同意なき届出は犯罪行為このように勝手に離婚届を書いて提出するという行為は、法的には許されるのでしょうか?「離婚届の偽造は私文書偽造罪(刑法159条1項)、役所に提出することは偽造私文書行使罪(刑法161条1項)、戸籍に虚偽の記載をさせることは公正証書原本不実記載等罪(刑法157条1項)に該当し、許されません。」(伊東弁護士)私文書偽造罪・・・3カ月以上5年以下の懲役偽造私文書行使罪・・・3カ月以上5年以下の懲役公正証書原本不実記載等罪・・・5年以下の懲役又は50万円以下の罰金それぞれ法定刑が上記のように定めらているれっきとした犯罪です。 ■ところで、婚姻届の場合はどうなる?「原則的にご説明した離婚届の場合と同様と考えられます。役所に対する不受理申出は、認知、縁組、離縁、婚姻又は離婚の届出において行うことができるものとされています(戸籍法27条の2・3項)。」(伊東弁護士)婚姻届も離婚届も、相手の同意のない勝手な提出は許されないことです。トラブルなく次のステップに進むためにも、双方が納得した上で共同作業として署名し提出したいものです。 *取材協力弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。)*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。【画像】*タカス / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月18日今年も早いもので12月中盤に差し掛かり、間もなく2017年を迎えますね。年末になって忘年会や会食が続いたり、年賀状の執筆など、忙しくなる一方で、気が抜ける時期でもあるかと思いますが、この時期だからこそ気を付けておきたい行為について触れてみます。*画像はイメージです:■雪下ろしで不法行為に最近も死亡事故が発生した、雪下ろし。特に屋根に乗って雪下ろしをすることは危険です。自分自身が落下するおそれがありますし、通行人に雪を落としてしまう危険もあります。少し古い統計ですが、2000年から2009年までの10年間に自然災害で亡くなったり行方不明になった方は1,134名でその内434人が雪害によるものです。雪害のなかには雪崩による死亡などもありますが、ほとんどが雪下ろし中の事故です。雪下ろしには細心の注意が必要です。誤って自分が落下した場合は自己責任ですが、他人に怪我をさせたような場合は不法行為責任を負います。 ■お賽銭やお年玉は贈与契約正月には、初詣に行く人が多いと思います。初詣は、割と新しい風習で、最初は、列車の乗客を増やすためのキャンペーンだったそうです。成田山や川崎大師などが有名ですね。お年玉も正月の風物詩です。法的に見ると、賽銭を投げ入れることやお年玉を上げることは、贈与契約です。贈与契約ですから、一旦履行すると返してくれと言えなくなります。あるいは、年末にお年玉をあげると約束しても、それを撤回するのは自由です。贈与契約は、実際に履行するまではいつでも撤回できる契約です。 ■車のスリップで事故雪国では、車の運転にも注意が必要です。夏用のタイヤだとスリップして事故を起こしてしまいます。交通事故を起こすと民事の不法行為責任以外に刑事罰(罰金、懲役など)を受けたり行政罰(減点、免許取消など)を受けたりします。チェーンをまくか冬用のスタッドレスタイヤにして、細心の注意で運転してください。 年末年始には、事故が増えます。自動車事故もそうですが、冬山での遭難やスキーやスノボの事故も増えます。事故に遭った場合は、すぐに110番通報とけが人がいれば119番通報をしてください。これらを怠ると処罰されることもあります。トラブルは冬だけのものではありません。トラブルにあわないように注意していてもあってしまいます。トラブルにあったときは、おちついて一番良い対処を考えましょう。 *この記事は2015年1月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)【画像】*YUMIK / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月18日忘年会が盛んに行われているこの時期は、飲酒運転を取り締まる検問も多く行われます。酒を飲んだ状態での運転は重大事故を引き起こしす可能性が高いにもかかわらず「大丈夫だろう」と考える人も存在しているため、事故を未然に防ぐという意味では重要な行為です。また、爆発物や薬物を自動車に隠す人間も多いことから、各国の要人などが来日した際に犯罪防止などを理由に検問が行われることがあります。ほとんどの人は言うとおりにしてやり過ごしていると思いますが、やましいことが全くないにもかかわらず、警察官からあれやこれやといわれ、車内を調べられるのは気分の良くないもの。しかし車内の検査を拒否すると、不審者として扱われてしまうことはほぼ確実のよう。なかには「逃さん!」とばかりに実力行使として自動車の外から手を伸ばし、スイッチを切ってくることもあるようです。これは違法ではないのでしょうか? Q.「窓から手を入れスイッチを切る」自動車検問は許される?*画像はイメージです:具体的に異常な挙動などが外から検知される場合、許される。検問中の車に明らかで具体的な異常を警察官が検知したと感じた場合は、警察官職務執行法2条1項で定められる職務質問をするために「停止」させる方法として必要かつ相当な行為として許されることになっています。また、運転者が泥酔していたりして運転させるには危険な場合などには、道路交通法67条4項に基づく「交通の危険の防止を防止するため必要な応急の措置」として認められることになります。ほかにも、ドアに手をかけて自動車を止める行為や、刑事ドラマのように挟み撃ちで動きを止めることも、場面次第では「必要な応急の措置」として許される場合もあるでしょう。やましいことがない場合に揉めること自体は無益だと思いますが、納得のいかない検問がないともいい切れません。そのときは「任意」を強調することや、相手の警察官の名前を聞き出す、録画・録音を取るなどすることで、後に不当であるか否かを弁護士に相談し、不当であれば監察室に抗議するなどして対応することも考えられます。やはり「動かぬ証拠」はどの世界でも大事になってくるのです。 *記事監修弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:佐藤俊治(複数メディアで執筆中のフリーライター。真面目な話題からくだけた話題まで手広く記事を執筆中。趣味は将棋、好物はカツカレーとパインアメ。)【画像】*Dachs / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月17日photo by 伊藤あきらインターネットに関するトラブルを中心に、様々な問題や悩みを抱える相談者のサポートをしている四谷コモンズ法律事務所の渡辺泰央弁護士。今回は実生活でも役に立つ、弁護士が実践している「論理的思考」について伺いました。渡辺 泰央(わたなべ やすひろ)弁護士四谷コモンズ法律事務所代表弁護士。2012年に弁護士登録を行う。ITやWebに関する法律に強く、数多くのインターネットトラブルに関する事案を取り扱っている。運営サイト「WEBに関わる法律講座」 ■弁護士に求められる論理的な思考とは?___一般的に弁護士と聞くと、非常に論理的なイメージがありますが、実際に弁護士業務をする上で論理的な思考は求められているのでしょうか。弁護士の仕事として、論理的な思考は欠かせないですね。普段の生活など、法律論以外のシーンであれば、感情論で決着がつくことも少なからずあるとは思います。ただ、弁護士というのは法律を元に仕事をしなければなりません。一旦法の議論に乗せてしまうと、論理的でなければ相手を説得する主張ができなくなってしまうので、やはり弁護士の業務に論理的な思考は求められていると考えるべきでしょう。___論理的な思考をする上で重視していることはありますか。主軸をしっかりと通してから、細かいところを詰めるようにしています。例えば仕事で相談者の方をヒアリングするときなどは、時系列を主軸と捉え、時系列を整理しながら話を聞くようにしています。相談者の方は慣れないヒアリングに緊張してしまうケースや、トラブルを思い出して感情的になってしまうことも少なからずあります。そのため、話が飛躍することや、頭の中がうまく整理できず、話がまとまらないことも多いのです。そのような場合、客観的な事実をしっかりと把握するために、こちらで時系列を整理してから詳細な内容を聞くようにしています。時系列を整理しながら話をすると、トラブルの経緯を思い出してもらう大きな手助けになることも多く、相談者も話しやすくなります。主軸を通してから考えるというのは論理的な思考をする上で、非常に大事だと思いますね。 ■ビジネスでも役に立つ、論理的思考術___論理的な思考はビジネスなどにも役に立つのでしょうか?役に立つと思います。例えば交渉の場面をイメージしてみてください。そこで、とても不利な条件を相手が提示してきたとします。それに対して、感情的に対応するというのは論理的ではありません。「なぜ相手がこのような条件を提示するのか」しっかりと考えて、深掘りをすることが論理的な思考です。提示する条件がこちらに不利であるほど、相手は論理的な理屈をつけて説明する必要があります。「上司が言っているから」とか「こちらが大企業だから」という非論理的な理由は(本音であったとしても)交渉の過程ではなかなか言いづらいものです。そうすると、たとえば「○○のリスクを排除するため」とか「××の達成を確実なものとするため」などといった理屈づけが必要になります。そして、ここに交渉の糸口があります。「○○のリスクの排除」や「××の達成」ができる別の条件をこちらが提示できれば、こちらが不利な条件を飲むべきとする相手の理屈を崩すことができます。それに加え、「相手の提示する条件を飲むとすれば、こちらに(又はお互いに)△△の不利益が生じることになって不合理」という理屈づけもできればより良いでしょう。ここまで理屈を掘り下げられると、相手の要望も踏まえつつ、こちらにとってより不利でない別の条件をお互いに探っていくことができ、議論を前に進めることができます。このように、相手の主張を基礎づける論理的理由の中に、交渉の糸口が隠されていることが多いのです。その糸口から妥協案や落とし所を探っていく、これが論理的思考に基づく交渉といえるでしょう。___論理的な思考を身につけるためにはどうしたらよいでしょうか。論理的思考を鍛えるためのひとつの方法として、ひとつの主張に対して「なぜ?」と深掘りしていくことがあります。例えば新聞の社説などを見て、「なぜそのような主張になるのか?理屈や根拠は?それらの理屈や根拠は正確なのか?」と深掘りするのです。ただ、他人の主張をあまり深堀りしても、最終的に推測の域を出ないことも多いです。また他人に対して面と向かって「なぜ?」と深掘りしてしまうと人間関係がギクシャクしてしまいかねません。そこで、論理的思考を鍛えるために私が一番良いと思う方法は、“自分の”主張に対して「なぜ?」と深掘りしていくことです。自分で掘り下げていくとわかるのですが、自分がなぜそのように考えたのかというのは、自分でも理解していないことが意外と多いのです。前提が正しいのか、どうしてそのように考えたのか、自分の考えをしっかりと掘り下げていくことで、論理的な思考力は身につけられます。自分の主張の掘り下げに慣れてくると、他人の主張に対してもより精度の高い論理的考察ができるようになってきます。まずは自分の主張をしっかりと深掘りして、訓練することから始めるのが良いと思います。 *取材協力弁護士:渡辺 泰央(わたなべ やすひろ)弁護士四谷コモンズ法律事務所代表弁護士。2012年に弁護士登録を行う。ITやWebに関する法律に強く、数多くのインターネットトラブルに関する事案を取り扱っている。運営サイト「WEBに関わる法律講座」*取材・文:伊藤あきら(AFP、クラシックカメラアンドアンティークカンパニー株式会社代表取締役。同志社大学卒業後、日本生命相互会社、HIPHOPダンサー、税理士法人を経て、現職。会社経営の傍ら、フリーライターとしても活動している。)【画像】伊藤あきら
2016年12月17日刑事ドラマなどでは、緊急車両で現場に乗り付けた刑事がエンジンを切ったかどうかもわからない状態でその場を離れ現場に急行するシーンを目にします。そのたびに、「よくパトカー盗まれないな」と思ってしまいますが、そこはドラマの世界だけに何事もなく物語が進んでいきます。実際にあんなことをする人はほとんどいないと思いますが、なかにはせっかちな人がエンジンをかけっぱなしにしながら、車を離れてしまうことも稀にあるようです。しかし、そんな行動を一般人がすると交通違反になるらしいのです。本当でしょうか?Q.エンジンをかけっぱなしで車を離れると交通違反って本当?*画像はイメージです:違反です!他人が運転できるような状態で車を離れてはいけない道路交通法第71条5号の2に「自動車又は原動機付自転車を離れるときは、その車両の装置に応じ、その車両が他人に無断で運転されることがないようにするため必要な措置を講ずること」と明記されています。したがってエンジンかけっぱなしの状態で自動車を離れることは道路交通法違反となります。颯爽と登場し、「そのまま現場に急行」という行為はかっこよく思えますが、一般人の場合は法に触れています。なおこの状態で自動車を盗まれた場合、持ち主にも責任が問われます。エンジンを止めしっかり施錠することは、運転者の義務なのです。年末年始は自動車に乗る機会も増えるものですが、車を安全に止め施錠し降りるまでがドライブということを忘れないでください。 *記事監修弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)*取材・文:佐藤俊治(複数メディアで執筆中のフリーライター。真面目な話題からくだけた話題まで手広く記事を執筆中。趣味は将棋、好物はカツカレーとパインアメ)【画像】イメージです*ridia / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月17日12月11日の深夜にお笑いコンビ「NON STYLE」の井上裕介さんが当て逃げ事故を起こしたことは、皆さんの記憶にも新しいかと思います。被害にあったタクシーの運転手が車のナンバーを覚えており、警察署が井上さんを特定したということです。今回の事故では、タクシーの運転手がぶつかった車のナンバーを覚えていて特定につながりましたが、他にはどういった場合に当て逃げした車は特定されるのでしょうか、解説していきたいと思います。*画像はイメージです:■そもそも当て逃げは犯罪当て逃げにも、人に当てる場合と、物に当てる場合がありますね。いずれも事故ですので、逃げた場合には報告義務違反の罪に当たります。人に当てた場合には、故意であれば殺人罪、傷害罪になりますし、過失であれば、自動車運転過失致死傷罪になります。他方、物に当てた場合には、故意であれば器物損壊罪になります。 ■当て逃げはバレるのか?事故現場には、意外と目撃者がいるものです。逃げても目撃者からの通報により警察が動く場合がよくあります。また、駐車場などでの当て逃げの場合は、防犯カメラがついている場合がありますので、そこから割れてしまうことがありますね。さらに、逃げたとしても、自分の車を修理にだし、当て逃げを疑った修理工が警察に通報することもあります。「当て逃げは逃げるに限る!」なんていう風潮がありますが、意外と足が付くことが多く、また、仮に足がつかなかったとしても罪悪感に苛まれ、気持ち悪い思いが続きます。きちんと報告すれば、保険会社が入って示談で済むことがほとんどですので、もし当ててしまった場合には、速やかに警察に事故の報告をするのがよろしいかと思います。 *この記事は2015年9月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)【画像】イメージです*Dmitry Kalinovsky / Shutterstock
2016年12月17日12月3日、愛知県豊川市のマンションで職務質問を受けていた男性がそのまま飛び降り死亡するという事件が発生しました。警察官は同マンションに住む女性からストーカー行為の相談を受けていたため警戒にあたっていたそう。不審な男性と判断したため、職務質問し任意同行を求めたところ、飛び降りたそうです。警察は、正当な職務だったと話しています。職務質問は犯罪を防止するために警察官職務執行法によって認められた警察の権利です。「何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足る相当な理由のある者」、「既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者」に対し質問することができます。必要性は理解しているものの、受ける側としては不愉快極まりなく感じます。かなり高圧的に質問されることも多いうえ、「任意ですから断ります」と突っぱねると怪しまれ、なかなか返してくれないこともあります。面倒くさいから立ち去ることも可能なはずですが、警察官が腕を絡めて「逃がさなくする」こともあるようです。あくまでも任意であればこのような行為は違法なはずですが、実際のところどうなのでしょうか? Q.「腕に手をかけて呼び止める」は職務質問で許される?画像はイメージです:職務質問の要件が揃っていれば許される警察官職務執行法2条1項に規定されている、職務質問の要件が揃っている場合には、仮に犯罪への関与が明確とまではいえなくとも、警察官は逃走しようとした人間の腕に手をかけて呼び止めることができます。条文上、「停止させて質問することができる」とされているため、「停止」させる行為として不相当でない限りは、多少の実力行使も許されるとされています。納得できない人もいるかもしれませんが、逃げた者に対して何もできないというのでは、職務質問の実効性に欠けるため、やむを得ないと言えるでしょう。しかし、最近は警察官絡みの事件も多く、後に違法と認定された職務質問があるのも事実です。自分に後ろめたいものが一切なく、不当であると感じた場合は警官の言いなりにはならず、拒否するところは拒否すべき場面もあると思います。もっとも、職務質問を拒否することで、嫌疑をかけられるリスクは増すことになりますので、早々に終わらせたければ、むしろ素直に応じたほうが早く終わる場合が多いでしょう。なお、違法不当な職務質問に対して、スマートフォンのムービーなどで動かぬ証拠をとっておくのも有効。後に抗議をしたり、裁判で違法性を争う場合などで役立ちます。自分の身は自分の身で守るしかないのです。 *記事監修弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:佐藤俊治(複数メディアで執筆中のフリーライター。真面目な話題からくだけた話題まで手広く記事を執筆中。趣味は将棋、好物はカツカレーとパインアメ。)【画像】*Bennian/Shutterstock
2016年12月16日日本で乳幼児用のミルクと言えば、誰もが粉ミルクを思い浮かべます。しかし、海外では、液体ミルクが主流です。今年の4月、熊本地震の際にフィンランドから救援物資として液体ミルクが送られ、液体ミルクが一気に注目を浴びました。粉ミルクは70度以上のお湯で粉を溶かした後、冷ましてからでなければ赤ちゃんに与えることができません。被災地や外出時などにすぐに飲ませることができないのです。対して液体ミルクは災害時もすぐに赤ちゃんに飲ませることができます。では、なぜ、日本では今まで液体ミルクが普及していなかったのでしょうか。また、今後普及するのでしょうか。今回はこの点について解説していきます。*画像はイメージです:■食品衛生法の規格基準の問題食品衛生法上、販売用の食品や添加物の加工、使用、保存等については、厚生労働大臣が規格基準を定めることとされています。液体ミルクは、乳幼児用のミルクとして、この規格基準が設けられていませんでした。そのため、製造販売することができず、日本では普及していなかったのです。液体ミルクの規格基準が設けられていなかった理由については明らかではありませんが、生乳を衛生的に長期間保存するためには粉末状にするのが適切であると考えられていたからではないかと推察されます。しかし、液体ミルクは高温滅菌後に密封しているため、むしろ粉ミルクよりも衛生的であるというデータもあるといわれています。また、先に見たとおり、液体ミルクの方が利便性が高いことは明らかです。 ■液体ミルクの解禁と普及に向けた課題とはしかし、政府は現在、液体ミルクを解禁し、これを普及することを検討し始めました。年度内にも安全基準等に関する議論をまとめて食品業界側に安全確認試験の実施などを求め、最終的には省令を改正して規格基準を設ける方向性で調整しているといわれています。政府が液体ミルクの解禁に向けて舵を切ったのは、近年日本で大規模地震が多発し、災害時の食料確保の問題が現実化していることや、男性の育児参加を促進する目的など、様々な背景があるといわれています。政府が現実的に解禁に向けて舵を切ったといっても、液体ミルクの商品化は粉ミルクの商品化よりも高いコストがかかるともいわれています。厳しすぎる基準を設ければ、企業のコストが高くなり、結局は企業側が商品化に踏み切ることを躊躇する可能性もあり得ます。最終的に省令が改正され、液体ミルクの規格基準が設けられるまでは、しばらく時間がかかるのではないでしょうか。利便性が高い液体ミルクではありますが、食の安全も叫ばれて久しい昨今の状況を考えると、安心に赤ちゃんにも飲ませることができ、かつ、お財布にも優しい液体ミルクを普及させるためには、なお慎重な検討を要するとしても仕方ないかもしれません。 *著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)【画像】*wavebreakmedia / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月15日夜間を自動車で走るとき、ドライバーの皆さんはライトをハイビーム、ロービームどちらにしていますか?おそらくほとんどの人が、「ロービーム」と答えるのではないかと思います。しかし警察庁は平成27年に発生した夜間死亡事故のうち、96%がロービームだったことから、街灯が少ない路地などでは、ハイビームで走行するよう推奨しています。その理由は、明るく道を照らすことで歩行者を認識しやすくなるため、事故の減少につながることが期待できるから、とされています。ですが、ハイビームのまま走ることは違反であると教習所時代に習ったような気がします。道路交通法ではどのように定義されているのでしょうか? Q.夜間はハイビームのまま走り続けないといけないって本当?*画像はイメージです:ウソ。対向車と行き違うときなどは、ロービームに切り替えなければならない。たしかに、道路交通法では夜間走行においてはハイビームでの走行を原則と考えていると思われますが、他方で、対向車と行き違う場合や先行者がいる場合において、他の車両等の交通を妨げる恐れがあるときはロービームに切り替えなければならないとも規定しています。これを怠ると道路交通法違反になります。都市部などでは交通量が多く、つねに対向車と先行車が存在しているためロービームにしていることが一般的ですが、暗い道ではハイビームにしなければなりません。警察庁によると、ハイビームはロービームよりも夜間で人を発見する速さが2倍以上だそう。薄暗く、対向車や先行車がいない道路では、ハイビームで走行し事故を防ぎましょう。 *記事監修弁護士:多田幸生(小野総合法律事務所所属。会社法務・企業法務の豊富な経験があり、大手証券会社の法務職としての経歴を活かし、「守りの法務」だけでなく「攻めの法務」を提供。)*取材・文:佐藤俊治(複数メディアで執筆中のフリーライター。真面目な話題からくだけた話題まで手広く記事を執筆中。趣味は将棋、好物はカツカレーとパインアメ)【参考】警察庁HP:ハイビームの上手な活用で夜間の歩行者事故防止【画像】イメージです*Ollyy / Shutterstock
2016年12月15日