SOLOがお届けする新着記事一覧 (11/14)
政治、経済、文化、食など、さまざまジャンルを独自の視点で切り取るライター・速水健朗さんに、“おひとりさま”ついて考察していただく本連載。東京近郊在住の独身女性50人に、今一番好きな街を調査した前編では想像以上にオーソドックスな街のラインナップとなりました。後編となる今回は、それ以外にランク入りした街についても触れながら、おひとりさまの本懐をお伝えします。三茶でも恵比寿でも豊洲でもないおひとりさまが注目する街とは?前編で取り上げていない、ランク入りした街についても触れていこう。恵比寿・中目黒・代官山界隈は、エリアごとのランキングでは、「新宿エリア」「表参道・青山」に次いでの3位。カフェやバー、レストランといった飲食店の充実度で知られる恵比寿は、断トツ人気と思いきや、今どきは、そこまで人気のスポットではなくなっているのかも。そういえば、最近は客層の高齢化が目立つ気がする。単価的にも安くはない店が多いせいもあるだろう。一方、バブル世代やその少し下のアラフォー世代にもおなじみの「表参道・青山」エリアの人気は高い。一時はブランド力が下がっていた骨董通りも復活の兆しがある。TYハーバー系列レストラン(*1)の人気は今だ高く、予約無しでは入れない状況が続く。街そのものというよりは、店のブランドで成り立っている部分も大きいのかもしれない。(*1)TYハーバー系列レストラン醸造所を併設した、天王洲地域のランドマーク的存在の「T.Y. Harbor Brewery」を本拠にしたレストラングループ。表参道にある環地中海料理店「CICADA」は、目の前に運河が広がる本店よろしく水の流れるコーナー近くの席が大人気。ただ、デート利用の多い同レストランの風景を“借景”しつつ、サラダやパンを飲食できる併設のオールデイカフェ「crisscross」の方がおひとりさまとしては使い勝手がいい。飲みに誘うなら「中目黒」よりも「赤羽」がコスパ良し?その逆に、アッパーではない街として上位に入ったのは、「赤羽」。「人生気楽にやってこーってな気分にしてくれるような、気取らない空気が大好き」というのは、この街が気に入って住んでしまったという広告代理店勤務の30歳の女性。昼間から飲めるゆるい街。昨今の「赤羽・立石」ブーム(*2)の主体も、間違いなく女性客である。「たまに知らないおじさんがおごってくれる」などという声も上がっていた。都心でナンパされるよりも、ひなびた街の情緒みたいなものに今どきのアラサー世代が惹かれるというのも、ありそうな話である。ちなみに男性がデートに誘う場合も、「中目黒行こうか」よりも「赤羽行こうぜ」の方が有効(*3)であるというのは、ほぼ間違いないだろう。(*2)昨今の「赤羽・立石」ブーム東京都北区にある赤羽と葛飾区にある立石。下町情緒あふれるこの2つの街は、5000円ほどの予算でも約3軒ははしご酒できるという好環境から最近、“飲兵衛の聖地”として注目が集まっている。昼間から呑んでいるおじさん達の横で、女性おひとりさま客が痛飲しているという風景も珍しくもなくなってきている。(*3)「六本木行こうか」よりも「赤羽行こうぜ」の方が有効昨今の赤羽をめぐる動きとして見逃せないのが、赤羽在住の漫画家・清野とおるが体験した赤羽の奇人・変人エピソードが満載の『東京都北区赤羽』をもとに、山下敦弘監督と松江哲明監督がドキュメンタリードラマ化した「山田孝之の東京都北区赤羽」(テレビ東京系、2015年)の放送。「東京ドラマアウォード2015」も受賞した同作の放送以来、サブカル層を中心に赤羽は観光地化した面も。新丸ビルやコリドー街もいいけれど…疲れに染み入る街は他にあるさて、筆者は、毎週金曜日にはどこかの繁華街にアベノミクスのフィールドワークに出かけるということを、もう2年以上続けている。しかし、その中で気になっていた勢いを感じる街で、今回のランキングに登場しなかった街も多々ある。具体的に挙げると、丸の内の「新丸ビル」や有楽町と新橋の間「コリドー街」だ。どちらも金曜はカップルやグループ客で溢れ返っているので、男性や友達から指定されて行くことはあっても、おひとりさま自ら行く場所ではなくなっているのだろうか。下町では、「人形町」や「門前仲町」も今どきは、女性が1人で入れるようなバルの多い町の代表になっているが、票は集まっていなかった。まだ、浸透しきってはいないようである。そして何よりも意外なのは、六本木・麻布十番・西麻布が上位に登場しなかったこと。特に、「麻布十番」は、バルや気軽なカフェが多く、活気のある街という印象が強く、1位もあり得るかと思っていただけに不思議ではある。初めは、保守的なヒアリング結果だなあと感じたが、それなりに眺めながらこのランキングの理由などを考えてみるのは楽しかった。最後に、この大変なヒアリングに挑戦したR女史の感想を付け加えておこう。50人の傾向を聞いて、R女史が感じたのは、全体的に漂う「疲れるのが嫌だ」という傾向だったという。「会社の人と一緒よりも、友だちや1人が気楽でいい」。「大きな繁華街よりも、家の近くや人の多くない地元の気心の知れたお店が気楽」みたいな話がよく出てきたようだ。ニューヨークでは、気どったマンハッタンよりもコンフォート(*4)なブルックリンが人気といった傾向があるというが、東京でも同じような“コンフォート志向”の「遊ぶ街」=「新宿三丁目」、「赤羽」のような変化が徐々に始まっているのかもしれない。(*4)コンフォート編集者・菅付雅信氏の『中身化する社会』(2013年、星)によると、ネットの進化、SNSの爆発的普及を背景として、ウソや誇張はすぐに検証される時代になったと指摘。その結果、一時の流行に流されず、衣食住すべてにおいて人々がより本質を追求するようになると論じた。同書に頻出する「comfortl(コンフォート)」という単語は「本質的だからこそ心地がいい」という意味合いで使われている。Text/速水健朗
2015年11月12日この度、連載を始めさせていただくことになりました、難波里奈と申します。はじめに自己紹介として私の素性をお話しすると、普段は東京日本橋で会社員、日暮れからは「東京喫茶店研究所二代目所長」という肩書きで活動中です。長年愛してやまない純喫茶へ毎日のように出掛けては、『純喫茶コレクション』というブログに綴っています。「純喫茶」の定義は一般的に「酒類とホステスを供給する特殊喫茶と違い、純粋に珈琲などを楽しむ店」とされますが、私の中ではもっとゆるやかに、「近隣の人たちに愛され、昭和の時代から今も変わらずに営業している喫茶店」と考えています。そして純喫茶は、一見外から店内の様子が分かりにくいため、入りにくい印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか?その気持ちは大変良く分かります。現在では、全国北海道から沖縄まで1500軒近くの純喫茶を訪問した私ですが、最初の頃はドアの向こうの様子が全く想像できず、散々迷ったあげく引き返すことも多々ありました。しかし、扉の向こう側にはっと息を飲むようなレトロで落ち着く空間が広がっているとしたら…?そこでは美味しい珈琲や、思わず懐かしい気持ちになる美味しい食事があるとしたら…? この連載では、実際に私が足を運んだ純喫茶を紹介していきたいと思います。ご覧下さった皆様がその店を訪れて下されば大変嬉しく思います。どうぞよろしくお願い致します。片道4時間以上!噂のパフェを食べに広島まで…(c)まきしむ今年の夏の出来事です。以前から「素晴らしいパフェを出す」と噂に聞いていた純喫茶が閉店することを知ったのですが、それは私の暮らす東京の話ではなく、新幹線で片道4時間以上かかる広島県のことでした。しかし、私は躊躇することなく新幹線のチケットを購入し、わずか800円のパフェを1杯食べる、そのためだけに広島へ向かったのです。こうした衝動は、実は今回が初めてのことではありません。今までも「純喫茶」と「閉店」という言葉が組み合わさって聞こえてくる度に、何度もあったのでした。(c)まきしむ東京駅から広島駅まで約4時間。そこから目的の三原駅まで1時間と少々。ほぼ始発の新幹線に乗るため朝4時に起床しましたが、到着までの間、頭の中はこれから出会えるであろうまだ見ぬパフェのことで満たされ、疲れを感じることはありませんでした。目当ての純喫茶の名前は『まきしむ』。焦る気持ちを抑えて、まずは外観の様子を楽しみます。その数か月後に灯りが点らなくなってしまうことを全く想像させない、堂々とした煉瓦造りの建物です。紫色の扉を開けると、予想に反して店内では多くの人たちが寛いでいました。私のように1杯のパフェを求めて全国各地から来たのでしょうか? 恐らくそうではなく、週末はこちらで朝食をとるのが習慣、といった常連客の空気をまとっている方々のようでした。さて、こちらへ来た目的である「フルーツパフェ」。早速、注文を取りに来て下さった店員さんへお願いすると、返ってきた言葉は「売り切れ」。何とも拍子抜けしてしまいましたが、チョコレートパフェとシューパフェはまだあるということでしたので、思いきってどちらも注文。(c)まきしむ何しろ初めて訪れる店でボリュームも未知数でしたが、運ばれてきたパフェの大きさを見て思わず声が出ました。30㎝程ありそうな高さのパフェは果たして1人前なのか、と思ってしまうほど。しかし、うっとりする盛り付けです。ガラスの中のパフェは側面から見ても上部から見ても美しく、食べ進みながら眺めると、次々に姿を変える芸術品のようです。ふと周りを見渡すとほとんどのテーブルにはパフェが並んでいました。嬉しそうに食べる店内の笑顔たちを眺めては、広島まで来て良かったと思うのでした。帰り際、閉店を惜しみ東京から来た旨を伝えると「それならフルーツパフェを出したのに!」とのお言葉。どうやら人気メニューのため個数限定だったようです。しかし、チョコレートパフェとシューパフェも十分美味でしたので、その心遣いを嬉しく頂戴しました。閉店により、マスターのパフェ作りの腕前がもう披露されないことを心から残念に思いましたが、今までに何百、何千と作られたパフェたちは、訪れた人たちの思い出としてずっと鮮やかに残ることでしょう。このように、思い出に残る瞬間として存在する純喫茶での時間。いつかどちらかの純喫茶で皆さまとばったりお会い出来たら、と思います。珈琲を飲むために、ぼんやりするために、誰かを待つために、マスターとおしゃべりをするために・・・。次回以降の連載でも、1人で楽しい時間を過ごせる純喫茶を紹介させていただきますので、よろしくお願いします。Text/難波里奈
2015年11月11日ママがあやすと嫌がられる!?家事・育児を夫がこなす二ノ宮家『ヒモザイル』(東村アキコ)が炎上して休載になってしまいましたね。今は外資やIT系などでかなり稼ぐ女性も多いですから、男性が家事を担当して主夫になる選択は大いにアリだと思います。でも、そうした男性たちを「ヒモ」扱いして呼ぶことに批判が相次いだようです。(c)『おにぎり通信~ダメママ日記~』(二ノ宮和子/集英社 愛蔵版コミックス)既刊2巻一方で、その主夫を面白おかしく描いた作品があります。『のだめカンタービレ』の作者・二ノ宮知子さんによる『おにぎり通信~ダメママ日記~』です。子育て漫画は世にいろいろありますが、この作品は「自分がいかに子育てに参加していないか」を描いていて新鮮です。家事・育児は夫であるPOMちゃんがすべてこなしているようです。POMちゃんは早朝に起きて朝食を作り、経理などの事務仕事をこなし、保育園への送り迎え、掃除洗濯、子どもの入浴をやっています。二ノ宮さんは漫画をひたすら描いて、あとはご飯を食べて寝るだけ。二ノ宮さんが子どもをあやそうとすると、エビ反りになって「パパがいい~!」と叫ぶそうな。子どものママ好きって、DNAじゃなくて、かまってる時間なのですね……。というようなダメ母ぶりを、めいっぱい自虐的に描いています。もしかしたら、夫の子育ての非協力的なことに悩んでいる人は、読むと腹立たしい気持ちになるかもしれません(羨ましくて)。まあ、SOLOはおひとりさま向け媒体なので、そういう心配はないものとしてご紹介しております。でもぶっちゃけ私、この作品を読むまで「二ノ宮さんはダメ男と結婚したのか」と思いこんでました。本当にすみません。結婚当時、POMちゃんは定職に就いていなかったみたいだし、仕事に追われている二ノ宮さんを置いて飲みに行ったりしてたみたいだし……。人生とは“選んだものでどう幸せになるか”(c)Heidiところが、いざ子育てが始まったら、たいへん頼りになる人だったわけです。もし二ノ宮さんが「とにかく年収の高い男性と結婚したい」と思っていたら、POMさんは選ばなかったでしょうし、そのかわり家事育児を任せっきりにもできなかったでしょう。人生って、何を取るか、選んだものでどう幸せになるかってことなんだなと思います。と同時に、夫に経済力を求めなくても済んだのは、二ノ宮さんに経済力があったから。やっぱり稼ぐ力をつけるってことは、人生の選択肢の幅を広げるってことなんですよね。実録エッセイ漫画とは言っても、あったこと全部は描いていないだろうし、脚色もあると思います。でも、朝が弱ければ夫にやってもらい、夫が手に余れば手伝うしという、なんかとてもいいコンビで、ほのぼのしてしまいます。いや、漫画の中は大騒ぎしてて大変そうだし、実際は絶対こんなにおもしろくないんだと思うけど。冒頭で東村アキコさんを例に出したのは、2人ともエッセイ漫画がおもしろい作家さんだからです。東村さんも『ママはテンパリスト』という爆笑子育てエッセイを描いていて、つい思い出しました。東村さんは「面倒くさいから母乳派」で、二ノ宮さんは結果的にですがミルク派と、子育ての環境や方針がまるで違うのが興味深いです。共通しているのは、「なんだか大変そうだけど楽しそう」というところ。どんな環境にあっても、楽しく愉快に生きたいものです。Text/和久井香菜子
2015年11月10日結婚したり、家族が増えてはじめて意識する「マイホーム」。ところが今、おひとりさまが自分のために家を購入する“モチイエ女子”が増加しているとのこと。そんな“住”に興味をもつ女性たちに向けたwebサイト「モチイエ女子web」が、作詞家・コラムニストでラジオパーソナリティーも務めるジェーン・スーさんと、フリーライターの雨宮まみさんをゲストに迎えて、女性とおうちについて本音を語るトークイベントをおこないました。ジェーン・スーさん(左)と雨宮まみさん(右)ご自身のライフスタイルから将来の住まい構想まで、軽快なトークで終始会場を楽しませてくれたイベントの様子をお伝えします。前回の後半から三井不動産レジデンシャルの守屋明日香さんも加わり、モチイエ女子になるための秘訣についてお聞きしています。モチイエ女子になるために必要な知識とポイント―おふたりはモチイエについてどんなことが気になりますか?ジェーン・スーさん(以下、スー):私、聞きたいことメモしてきたんです。夢がない質問ばかりなんですが(笑)。まず、資産価値が下がらないマンションってどういう定義なんですか?守屋明日香さん(以下、守屋):定義としては、引っ越しなどで手放すときに価格が下がりすぎないことと言われています。資産価値は「都心に近くて便利」などといった条件でも上がるのですが、ちゃんと修繕していかないと、下がっていってしまいます。住人で“管理組合”というコミュニティーを作って、ちゃんとした管理ができているところが資産価値の下がりにくいマンションだと思います。雨宮まみさん(以下、雨宮):管理組合がしっかりしているかどうか、なんですね。スー:あと、私の周りの友だちがみんな念仏のように唱えている「修繕積立金」。これっていくらなんですか?守屋:新築からだいたい15年ほどで1回目の大規模修繕があるのですが、事業主の修繕計画がちゃんと立てられていないと、一次徴収で30万円とか請求されることもあるそうです。ちゃんとしたところなら計画に沿ってお金も運用されているので、そのようなことはありません。購入の際はそのあたりもしっかりチェックしておいたほうがいいと思います。スー:でも、修繕計画なんてどうやって調べるの?守屋:マンションギャラリーなどに来ていただくと資料が揃っていますので、聞いていただければ資料をご覧いただけます。スー:あとね、家を買うとき、どういう人が中古向きで、どういう人が新築に向いているとかってあるんですか?守屋:住みたいエリアが決まっているのに新築物件が出てこない場合は、中古を選ばれたほうがいいのかなと。ただ、家を買うときは物件価格のほかに諸費用が必要なのですが、新築だったら物件価格の5%くらい、中古だと10%くらいになるんです。スー:倍じゃないですか!守屋:手持ちのお金が少ない場合は新築のほうが比較的買いやすいと思います。銀行の住宅ローンは新築・中古問わず、頭金なしの物件価格100%で組むこともできるのですが、新築を購入する場合は諸費用も組み込むことができるので、中古よりも踏み出しやすいという感じはありますね。スー:その辺のことって分からないですよね。賃貸の家を探すつもりでネットをみていて、たわむれに「買う」ってやってみるんですけど、「ローンを何年で組めますか?」という質問の時点でもうギブアップ。初期費用がいくら必要だとか試算してくれるはずなのに、そもそもが分からないからなにも分からない。雨宮:基準みたいのが分からないから、頑張ればどのくらいまで買えるのかとかも分からないんですよね。守屋:そうですね。一番分かりやすいのは、今お支払いになっている家賃ですね。家賃と同じくらいのローン返済額から借入額を算出していただいて、そこに自己資金を足していただくと、だいたいの購入予算が見えてくるかと思います。100万円借り入れた場合、今のいちばん安い店頭金利だと月々の返済額が2,700円くらいになるので、3000万円の借り入れならひと月の返済額は81,000円くらいになりますよね。返済できる金額で予算を立てることから始めてみるのがいいと思います。スー:リセールバリューってあるじゃないですか。車でいうと、黒い車を買ったほうが中古で高い値がつくとか。家の場合はどうなんですか?雨宮:スーさん転売目的!絶対に損したくないっていう(笑)。スー:いやいや(笑)。ただ、自分が住みつぶすくらいの勢いじゃないと購入しちゃダメなのかな? って思ったの。85歳ひとり暮らし、もうダメだ! ってなったときに、ホームに入るには貯金が足りないから、今住んでいるマンションを売ったお金で入ろうと思ったのに、とてもじゃないけど値がつかないってことになるかもしれないじゃん。だから、リセールバリューとかも考えておいたほうがいいのかなって。守屋:基本的には、今の生活環境をよくするために選んでいただきたいですね。ただ、女性のライフステージは、たとえば暮らす人数が変わるとか、生活形態が変わるかもしれないので、いざとなったとき本当に売れるのかっていうのは大切です。マンションギャラリーに行っていただくと、賃貸で出すとどのくらいになるか試算してくれるので、その診療査定とローンの金額を比べていただいて、ちゃんと利益が出るようなら安心してお勧めできます。スー:売り出しやすさだけを考えたらすごくつまらない家に住むことになるじゃないですか。私、だれも買わないような変な家がいいんだけどなぁ、住むとしたら。雨宮:そういう家って、結構安くなるんですよね。―守屋さんのお話を聞いて、いかがでしたか? 知らない言葉がたくさん出てきましたね。スー:繰り上げ返済、リセールバリュー、あと……。雨宮:修繕積立金。スー:さすが!―それくらい知識がないと一歩を踏み出しちゃいけない気がしちゃいますよね。スー:だって、びっくりしますよ。「マンション2,800万円」って書いてあるからって、2,800万円持ってわーいって行っても買えないんですから。ほかにもかかるお金があるからね。生活形態が変わることも考慮したほうがいいし、難しいなぁ。雨宮:ただ、無目的に何となくやる貯金って、意外と貯まらないじゃないですか。でも、繰り上げ返済っていう目標ができると、やっぱり全然なんか違うんだと思う。スー:すごく楽しいんですって、繰り上げ返済。雨宮:払わなきゃいけないノルマをクリアしていく感覚が気持ちいいんでしょうね。スー:その分、どんどん自分の物になっていくんですもんね。おひとり女子の楽しい老後計画モチイエ女子project―これからの住まい方について教えてください。どんな風に生きて、過ごして、暮らしていきたいと思いますか?スー:「平和に」、ですかね(笑)でも、40過ぎると途端に老後のことを考え始めるんですよ。医療費入れた生活費を年間300万でおさえたとしても、65歳から20年生きちゃったら、6000万いるんですよ。雨宮:6,000万円! 絶対ムリだよ。スー:絶対ムリでしょ。そこで、チェンマイですよ。雨宮:でたーーー(笑)。スー:昔は公団を全部買い取って、そこで大人の女子高やるんだって言っていたんですけど、それも厳しい。それなら、貨幣価値を変えるしかない。みんなでチェンマイにいくか、もしくはもう一回、北海道を開拓しようと。地震の少ないところを調べて、そこに女だけで開拓しに行くの。もちろん、旦那や彼氏がいてもいいんですけど、主導権はこちらで握らせていただいて、申し訳ないですけど、男性たちは同行するだけ。雨宮:除雪系の免許とか取っておいたほうがいいですね。スー:そうですね、あと北海道出身の人とかも要りますね。はじめて女が“かわいい”とか“若い”とかではなく、「今までの仕事で何やってきた?」 っていうので判断されるような。そこに入植するには、何かしら手に職がないといけないからね。雨宮:ちょっと鹿とか撃てたほうがいいし。スー:10分でみそ汁何人分作れますとか、一食250円でいけますとか、そういうのね。雨宮:映画の現場とかにいた人なら動けますね。―「これからの暮らし方」ってもっと楽しいことを想像して聞いていたんですが、全然違う答えが出てきてびっくりしちゃいました(笑)スー:そういうぼんやりした話は、30代で終わったの。40歳を過ぎるといきなり老後の背中が見えてくるので、リアリティのある話になるんですよ。だって、6,000万円なんて貯められるわけないじゃん。雨宮:貯められないですね。Francfrancで夢見てた生活は、30代で終わり。スー:Francfrancなんて、「腐って乱れる」のほうですよ! 何かあっても誰も見つけてくれないんですよ、私たち。腐乱腐乱ですよ、最期。だから、これからどうするかっていうと、ダウンサイズしても「楽しい!」っていう状況をどう作っていくかなんですよ。土地とか建物とかっていうのは、お金と直結するんですよね。でも、友だちっていうのはお金と直結しない唯一の財産。だから、コミューンをつくるっていうことが大事かなって。近所に友だちが住んでいると楽しいじゃないですか。―雨宮さんはいかがでしょうか?雨宮:これからの暮らしかたでいうと、神戸に移住を考えたときにすごく考えたのは人間関係。関西方面にも友達がいないわけではないんですけど、やっぱり東京の友だちとはなかなか会えなくなるので。予算が潤沢にあれば毎週東京と神戸を往復できますけど、やっぱり厳しい。家が両方にあればいちばんですけど、それはねぇ。でも40歳が射程範囲に入ってくると、急に考えますよね。なんかハッて我に返るんですよ。それまでは「お金持ちと結婚するかもしれないし~」みたいなふわっとしたことを、何割かは思っていたんですけどね。―心のどこかにありますよね。スー:ない。ないよ! その考えやめたほうがいいよ、はやめに。その分早くマンション買った方がお金持ちになれる。旦那はリセールできないんだから。雨宮:お金はもうどこからも降って湧いてこないっていうのが、はっきり心身に刻み込まれるんですよ。スー:あとね、「死ぬなー」っていうのも、ちょっと分かるんですよ。30代が終わるまでは、頭のどこかで死なないと思っていたんです。でも、あ、これ死ぬな―みたいな、初めて“死”がリアリティを持ってくる。雨宮:人生80歳って考えたらまだ半分なんだけど、なんとなくもう、一年で言うと9月くらいまで終わったなっていう、そんな感じになるんですよね。スー:しかも、今は90歳を過ぎている女の人も多いじゃないですか。そうなったとき、家族がいないとひとりじゃない。そうしたら、やっぱりさっきの通り貨幣価値を変えるしかないな、と(笑)。もしくは取り壊し予定のアパートを立て替えて、独居女老人の館作ったら最高ですよ。庭でBBQやってーとか。企業さんと協力して、そういった新しい住まいを造っていけたら楽しいじゃない。雨宮:老後の話をしていると暗い話題に捉えられがちですけど、そうじゃないんです。ちゃんと働いて一生懸命生きてきたわけじゃないですか。それなのに、その先の人生が楽しくないってイヤなんですよ。仕事もほどほどに頑張って、老後はそれなりに楽しく生きたいなって思うから、それを実現するにはどうしたらいいかっていうのを考え始めると、そういう案が出てくるんですよね。スー:そう、そうなんです。決して暗い話ではなくて。たぶん同世代のかたは分かっていただけると思うんですけど。お若いかたは「そんな話になるんだぁ」って思うかもしれませんが、これ、全然楽しい話です(笑)雨宮:夢がないって思われるかもしれないけど、そうじゃない。夢をどうしたら現実に着地できるかというのを考え始めたときの案なんですよね。チェンマイとか(笑)。スー:俺たちのチェンマイです。どこの情勢が安泰かにもよるんですけど。雨宮:政治的に大丈夫なところ。スー:一緒に来る?―行きたいです!スー:チェンマイ! みんなで行こうか、チェンマイツアー。行きましょう!―ひとりで考えると不安で暗くなっちゃうけれど、やっぱり前向きに考えていくことがすごく大切ですね。スー:でも、できることなら結婚したほうが人生勉強にはなるんだと思いますけどね。そこで失敗しても温かく迎え入れるけど、最初から”結婚しない”って決める必要はないのかもしれません。―そうなんですか?でも、生きていく上でスーさんがいれば安心できそうです。スー:さぁ、そろそろツボを売る時間がやってまいりました(笑)。でも、私、こんなこと言っておきながらサラっと結婚したりしますからね。―え?スー:やってやるから、いつか(笑)。そう言っておかないと、勝手に「独身女性の期待を一身に背負った代表者」とか言われちゃうんです。雨宮:それ困りますよね、決めているわけじゃないのに。「アイツ独身じゃなくなったから、この仕事はもうなかったことに」とか言われても困るし。スー:ライフステージ、暮らし方が変わるって誰にでも言えることだと思うし、結婚していても旦那が先に死んじゃうとかあるわけじゃないですか。だからそこは柔軟に、「私はこう」とか、「こうじゃなきゃダメ」とかは決めないほうがいいですね。雨宮:住む人数がひとりくらい増えても平気な部屋がいいなっていうのは、家を買おうと思っていたときに考えました。スー:増えても平気か、もしくは、賃貸で貸せるワンルームがモチイエ女子にはいいですね。Text/千葉こころイベント主催のモチイエ女子webはこちら!住まいに興味がある方はぜひのぞいてみてくださいね。
2015年11月09日ブロガー・イケダハヤト氏との出会いをきっかけに高知へ移住したフリーライターの小野好美さん。生まれ育った東京から、“消耗しない土地”高知に至るまでの軌跡を全4回にわたり、おひとりさま目線でお伝えしていきます。第2回となる今回は、イケハヤ氏も舌を巻くハイパー高知女子との出会いによって小野さんの運命がさらに加速していきます…!ホームレス状態突入まで残り10日…居場所探し&逃避ツアーへ(c)小野好美新しい部屋のあてもなく、住んでいる下北沢の部屋を解約するという暴挙に出た私は、いよいよ契約終了が10日後に迫った2014年7月のある日、四国に向かいました。完全なる背水の陣。いま思うと本当にどうかしていますが、世界的ベストセラー作家となった片づけコンサルタントの“こんまり”こと近藤麻理恵さんも著書『人生がときめく片づけの魔法』のなかで繰り返し、〈まずは「捨てる」を終わらせる〉〈「捨てる」作業が終わるまでは、収納について考えてはいけない〉とメッセージしています。これを「新しい居場所で人生をときめかせたいなら、今の生活、そして部屋を片づけるのが先決。手放せば、入ってくるさ、そのスペースにいいものがッ」とムリヤリ拡大解釈。取り急ぎ飛行機に乗ったのでした。もはや東京にときめきを感じなかった私は、高知に加え、移住候補地としてボンヤリと良いイメージがあった福岡に狙いを定め、同じく「最近、自然が足りてない派」の友人とまずは四国へ。ちゃっかり道後温泉などの観光を楽しんだ後は、いよいよ高知へ向かいます。そこでは、同行の友人の友人宅に2日間泊めてもらうことになっていました。その「友人の友人」こそが今回の旅の、そして私の居場所探しのキーパーソンとなる、“かなちゃん”その人でした。20代にして3件の不動産管理&1店舗の経営をする女性“かなちゃん”(c)小野好美かなちゃんは高知の自然をこよなく愛する、小柄でかわいらしい女性。なのですが、その見た目からは想像できない経歴にまずは舌を巻くことになります。聞けば彼女は不動産を3棟管理。さらに別の1軒を店舗として経営。この不動産投資家のような華麗なキャリアを現行で築いているというではありませんか。なんでも、まだ二十歳そこそこの時に「ここに住みたい!」と感じる空き家と出会ったかなちゃんは、近所に聞き込みをしてオーナーを突き止め、遠方に住んでいるオーナーと電話交渉。その結果、空き家に住む権利を手に入れることにめでたく成功したのです。さらには隣続きの3軒すべての管理まで任されるというサプライズ付き。会ったこともない人から電話だけで空き家を手に入れ、別の物件の管理をも任されてしまう…彼女の魅力とか才能、キャラクターが炸裂しているとしか言いようがありません。そんな訳でかなちゃんは1軒は店舗として人に貸し(当時はスペイン人がそこでスペイン料理屋をしていました)もう1軒は下宿として賃貸に。築20年は下らない母屋は、友人たちと思い切りリノベーションしてモロッコ風のハイセンスな家に生まれ変わらせ、かなちゃんと愛猫の住まいに。ロミロミなどのマッサージを生業とする彼女は、この3棟とは別にさらに店舗を1軒借り、緑あふれるサロンに改装。そこで働いているのです。休みの日は居心地のいい母屋で料理をしたり、ピアノを弾いたり、ヨガをしたり、飲み会を開いたり、外のスペースでハーブを育てたり。そして海や川で泳ぎ、キャンプをして…かなちゃんの暮らしはとにかく豊かです。部屋や店舗を人に貸しているというと、不労所得、家賃収入というイメージが湧きますが、彼女はあくまで自分の理想とする住まいを実現化した結果、オーナーの信用を得て他の物件も任されているだけ。お金への執着はまったくありません。「貯金は1万円くらいかな~でも欲しいものってなんかまわりまわって手に入ったりするよね」と笑っています。「え、そんな生き方があるの…?しかも30歳そこそこの女の子がそんな風にしているんだ。いいんだ、別に貯金なくっても…お金のことで不安に陥っていたなんて、なんて視野が狭かったんだろう!」私がそう思ったのは言うまでもありません。行政をも上回る?高知女子の“草の根”アテンド力は半端じゃない(c)小野好美そんなかなちゃんの生き方にクラクラする間もなく、彼女はサクサクと、人工物がほとんどない美しいビーチ、“仁淀(によど)ブルー”の呼び声高い清流・仁淀川へと連れて行ってくれます。とれとれで味の濃い魚貝と野菜、米をこれでもか、と使って調理してくれる多国籍料理のレストラン(しかも値段がびっくりするほど安い)で夕食をとりながら、私は思いました。スーパーに行けば全国の、さらには海外の食材が並んでいる東京。だけど遠くからやってきた食材たちは、あかあかと照らされた陳列棚で皆一様に疲れて見える。今の私に必要なのは、遠路はるばる運ばれてきた色とりどりの食材じゃなくて、生きていて滋味に満ちた、地の食材なんだ。高知の力強い日差し、透き通る海、そこで培われた食材。そして明るくてパワフルで、でも肩の力が抜けている地元の人たち。そのエネルギーは、都市生活に蔓延している、豊かでイケている暮らしのイメージと、実際の自分との乖離に疲弊してしぼんでいた私の細胞を、惜しみなく潤わせ、膨らませてくれたのです。それまでは、イケハヤさんのブログにより「移住支援が充実している」「家賃が手頃」といったハード面での魅力を感じていた高知。そこへ来てさらに地元民・かなちゃんのアテンドによって、高知の魅力は、私のなかで動かしがたいものになっていきました。もうダメだ、陥落だ。これで高知に恋に落ちないほうがどうかしているよ。ちなみにかなちゃんの周りには、そんな彼女の高知アテンダントに魅せられて他県から移住してきた友人が何人かいるのだとか。行政の移住促進事業とは別に、すごい確率で移住促進に成功している個人がいるなんて…。後で分かったことですが、高知はもてなしを大切にする県民性もあり、こうした“個人移住促進課”の人は他にもそこここにいるのです。完全に高知に心と胃袋を掴まれた私にかなちゃんがダメ押しで言いました。「よしみちゃん、本当に高知に移住したいんだったら、1か月くらいウチにおってもええで」その言葉を胸に、私と友人は九州に渡り福岡県の糸島などを観光(糸島も素晴しかった!)。一週間の観光&移住候補地視察ツアーは幕を閉じました。部屋の解約日まで、あと5日。カウントダウンは迫っていました。***ちなみに、高知旅行の最終日にはイケダハヤトさん一家とお茶をしました。東京のイベントで一度移住のお話を聞いていましたが、さらに詳しく伺いたかったのでアポイントを取ったのです。しかし私の移住がどうとかの前に、同席したかなちゃんの生き方の格好良さにイケハヤ夫妻もガツンとやられたようで、このような記事が生まれていました。・「東京から高知に移住して2ヶ月が経ちました!妻に話を聞いてみたよ」-まだ東京で消耗してるの?・「仁淀川で獲れたて!天然の「手長海老」を生きたまま揚げてみた #移住日記 vol.41」-まだ東京で消耗してるの?(続く)Text/ 小野好美
2015年11月09日(c)Merje Shawネットの掲示板などでは時折「お前は俺か」という言葉を目にしますが、SOLO読者のみなさまはこの言葉、使うことありますか?ちなみに、私はけっこう(心のなかで)使います。自分の考え、自分の経験、自分のかんじたこと、悲しいけれどそれらはどれもそんなに特別なことじゃありません。大半は、すでに誰かが考えたものだったり、すでに誰かが経験済みのことだったり、すでに誰かがかんじていたことだったりします。インターネットの大海か、会社帰りの居酒屋か、はたまた古今東西の小説の主人公かはわかりませんが、「この人は私と同じだ」ーー「お前は俺か」と思ってしまうような人を、おそらくみなさんも行く先々で見つけていることでしょう。「お前は俺か」を小説の登場人物に見つける日々の100(集英社文庫) 松浦 弥太郎(著)今回は、そんな「お前は俺か」を、小説の登場人物のなかに見つけると、ちょっといいことがあるかもしれないという話です。先日、「暮しの手帖」前編集長の松浦弥太郎さんの『日々の100』という本を読んでいたのですが、こちらの本では、アンティークの定規とか、水彩絵の具セットとか、オリーブオイルとか、松浦弥太郎さんが日常生活で使っているモノが、100個紹介されているんです。そして、そういったこだわりの雑貨や調味料のなかに、松浦弥太郎さんが愛読する「小説」が混じっているんですね。『日々の100』のなかに登場していた小説はジャック・ケルアックの『路上』とヘンリー・ミラーの『北回帰線』だったのですが、松浦弥太郎さんはこの2冊を17歳から愛読していたそうです。自由であること、自分らしくあること、独りであること、創造すること、夢を持つこと、誇りを持つこと、そんなことを教えてくれたのがこれらの小説だったのだといいますが、ちょっとお値段が張りそうな雑貨たちのなかにさり気なく登場する2冊の文庫本を、私はなんだか「いいなあ」と思ってしまったのでした。旅先のフリーマーケットで見つけた洗濯ばさみとか、取引先でいただいて以来贔屓にしているお菓子とか、モノには物語がある。そして、本には思想がある。面白かったとか、感動したとか、勉強になったとか、そういう本だってもちろんあっていいのだけど、自分はこの物語と、この思想と共に生きてるんだ!という強固な1冊2冊があると、おひとりさま女性である我々も、もっと逞しく日々を乗り越えていけるのではないでしょうか。そして、そんなふうに思える小説の登場人物はきっと、「お前は俺か」とつぶやいてしまうレベルで共感してしまうヤツらだと思うんですよね。で、じゃあそういうあんたの「お前は俺か小説」は何かといいますと、私の場合はフランツ・カフカの『断食芸人』です。一転して「暗っ!」というかんじになってしまったと思うのですが、心の底から共感できて、自分はこの本の思想と共に生きていくんだと決めている1冊ですから、嘘はつけません。『断食芸人』の主人公はタイトルのとおり、食事を取らないことを見世物にしている芸人なのですが、この人物がなぜ断食芸人になったのかという理由が、物語の最後の最後で語られるんです。いわく、自分は断食なしではいられないのだ、ほかのことはできないのだ、なぜできないのかというと、うまいと思う食べものを見つけることができなかったからだというんですね。もしうまいと思うものを見つけられていたら、きっとほかの人と同じように、腹いっぱいになるまで食べものを口に運んでいただろうと。この最後の最後の部分が、私にとっては涙ちょちょ切れる共感の嵐なわけですが、おそらくみなさんは「はっ?」と思いながらポカーンとしていることでしょう。いいんです、それが「お前は俺か小説」なのですから。物語は自分よりも雄弁に、自分のことを語ってくれる『断食芸人』について語りだすと私の孤独と世の中へのルサンチマンが溢れでて収拾がつかなくなるので話をまとめますと、自分が心の底から共感できる小説の登場人物や、自分の生きる上での思想がまとめられているかのような本があると、他人に自分のことを伝えやすくなります。私自身の口から孤独や世の中への絶望を語るより、そこはプロ、というか文学史に名を残した巨匠の力を借りたほうが、おそらくより多くのことを相手に伝えられるでしょう。そして何より、「私の考えていることは、この本のなかに書いてあるよ」と、そんなふうにある1冊を知人に紹介してもらえたら、たとえその人と合わなくても、表面上はうまく友達になれなくても、なんだか互いに通じ合えたような気になりませんか。こだわりの「モノ」を並べるように、私は自分の思想を本棚に並べたい。30歳付近の大人になったらそんな目線で、まるで自分のことが書いてあるかのような「お前は俺か小説」を見つけて、ぜひみなさんもいろんな人に紹介してあげて欲しいなと思うのです。Text/ チェコ好き
2015年11月05日結婚したり、家族が増えてはじめて意識する「マイホーム」。ところが今、おひとりさまが自分のために家を購入する“モチイエ女子”が増加しているとのこと。そんな“住”に興味をもつ女性たちに向けたwebサイト「モチイエ女子web」が、作詞家・コラムニストでラジオパーソナリティーも務めるジェーン・スーさんと、フリーライターの雨宮まみさんをゲストに迎えて、女性とおうちについて本音を語るトークイベントをおこないました。ジェーン・スーさん(左)と雨宮まみさん(右)ご自身のライフスタイルから将来の住まい構想まで、軽快なトークで終始会場を楽しませてくれたイベントの様子をお伝えします。マイホーム狙ってます!モチイエ女子への憧れと現実―まず、現在のお住まいについて教えてください。ジェーン・スーさん(以下、スー):賃貸でひとり暮らしです。雨宮まみさん(以下、雨宮):私も同じです。でも、スーさん意外ですね。スー:30歳くらいでマンションを買った友人が何人かいるんですけど、「今までで一番いい買い物をした」と言っていました。好きな言葉は「繰り上げ返済」って(笑)。そのへんの基礎知識もなかったので、タイミングを逃しちゃいましたね。この間ね、自分の望みを全部叶える賃貸っていくらなんだろう?と思って、全部自分の思い通り駅も選んで、平米数も選んで、ウォークインクローゼット、浴室乾燥機、トイレウォシュレット、宅配ボックスがあって、リビングが何畳で…って、ネットの賃貸サイトで検索したら、家賃が92万円だったんです!そんな高い部屋があるの!?って、ビックリしましたね。―スーさんはもう「家を買わない」という選択肢なんですか?スー:モチイエ女子には憧れますよ。私のにわか情報によるとオリンピックの後に都内の物件価格が下がるらしいので、5年後が狙い目ですね。ただ、どこにどんな家を買うか、転売できるところがいいのかとか、考えてしまいます。―雨宮さんが賃貸ひとり暮らしの理由は?雨宮:フリーランスで仕事をしているので、ローンが通りにくいという問題がありますよね。だから、ほしい気持ちはあったんですけど、あまり考えていませんでした。ただ、モチイエ女子の連載を機にマンションギャラリーの見学には行ったんです。すごいんですよ、マンションギャラリー!スペクタクルで家を推してくるんです。スー:広告バーーー!店舗でどーーーん!みたいなマンションって、実際どうなんですか?雨宮:実際の部屋で説明を受けた後、「ここに住んだらどんな暮らしができるか」みたいなことをドラマ仕立てにしたムービーを観るんです。すてきな感じだなーっていうムービーが終わったらスクリーンが上がって、後ろにある壁がパカーーーって割れて、タワーマンションの模型がどーーーん!なんか夢が膨らむとかよりも、自分が今何をしていてどこにいるのかが、分からなくなりました(笑)。スー:それはすごいですね(笑)。雨宮:買ってもいいのかなぁ?って思っちゃいましたよ。しかもそのあと、中古のマンションでいいのをみつけちゃって。そのときは本当に欲しくて、すごく心が揺れました。自宅は社会性と断絶された、素に戻れる場所ジェーン・スーさん―おふたりにとっておうちとはどのような空間ですか?スー:誰の目も気にしないで済むので、完全OFFができるところですね。だって相撲取りみたいな格好をして過ごしていても、さっき行ったカフェのコーヒーをネットであげたら“おしゃれ”になるじゃない。ある種、社会性から断絶されているというか、そこがいいですね。いちばん素に戻れるとこ。雨宮:私にとってはパラダイスです。ほとんどスーさんのおっしゃっていることと同じですけど、やっぱりそういう時間がないと疲れる。よく、「フリーランスのかたはどういうサイクルで生活しているんですか?」とか聞かれますが、人には絶対言えないですからね。面白かったドラマを一日で全話観て、そのあと徹夜で仕事して、次の日は一日寝ているとか、そんなの言えない(笑)。スー:私は仕事用に小さい長屋を借りましたよ。気がついたら一日パジャマで過ごす日が何日も続いていて、仕事に支障が出てきたんです。あと、いろんな仕事をやっているので、それを全部自宅でやっていると完全にカオスになって、休まるところがなくなっちゃって。仕事と家を切り離すことで、ようやく家のあるべき姿に戻りました。―来場者は会社勤めのかたが多いと思いますが、自宅でも会社勤めでも、家と働き方ってすごく結びついていますよね。スー:私が会社勤めのときは、どんどん部屋が汚くなっていく木曜日くらいに気分が欝々してきました。週末は休みたいのに、片づけなきゃってなるし。でも、一念発起で片づけて、キレイになった気持ちよさは最高ですよね。床やシーツにアロマオイルを垂らしてみたり、バスソルトを入れて入浴してみたり。―自分が頑張ったごほうびに部屋を飾りたいとか、そういう思いはありますか?スー:だいたい失敗しますね。おしゃれなポストカードを貼るじゃない。でも、その前に服をダーッとかけてポストカードが見えなくなる。あと、ソファーにたくさんのクッション。憧れるけどね。雨宮:あーあれね。飾りクッション!スー:昨年ソファーを買ったんですけど、いいですね! やばい。買ったら最後、ベッドかソファーの上にしかいません。でも楽しいし、居心地もいい。ソファーは理想の暮らしの象徴ですよ。雨宮:ベッドの上にいるよりは、ソファーのほうが社会性が出てくるような気がしますよね。二世帯同居は最高の贅沢。誰かと住むことと家の深い関係モチイエ女子project―次は住まいの形についてお聞かせください。ひとり暮らしか誰かと住むかについては、どのように考えていますか?スー:私は誰かと同じマンションで別の部屋に住みたい。敷地内の離れとかでもいいです。雨宮:私も大体そんな感じですね。マンションの隣同士の部屋に住んで、間に1個ドアをつけてくれたらそれでいいです。お風呂場やキッチンは完全に別で、“いい二世帯同居”みたいな。スー:二世帯住宅に夫婦で住むって最高だと思いますよ。最高の贅沢!雨宮:相手の部屋だと思ったら掃除してなくても気にならないし、「髪の毛落ちてる」ってイライラしなくて済むじゃないですか。それに、今だけは散らかしたままにさせておいてってくらい疲れているときに「ちょっと入ってこないで」ってなれる状態がいいですよね。スー:あと、同棲だとトイレ汚い女ってイヤだよなって気になるから掃除しますけど、ひとりだったらもうちょっと掃除しないでもいける!とかね。―ひとりで家を買うハードルの高さを思うと、誰かと買うほうが何となく現実的かなって思うのですが。雨宮:本当ですか?私の周りは離婚のとき財産分与で揉めるっていう話があるから、結婚で家を買うっていうのは……どうなんですかね。スー:私も話は結構聞きます。結婚して家を買うとき、共同名義にする人って少ないじゃないですか。自分の名義じゃなかったらかりそめの家ですよ。だから半同棲がいちばんいい。住むところも、関係性も、半分。住むだけじゃない。モチイエ女子の賢い買いかた雨宮まみさん―モチイエ女子という響きに憧れもありますが、現実的に女子がひとりで家を買うことはどうでしょうか?スー:経済力があるなら、持てたらいいなとは思います。雨宮:私とスーさんは、結婚とか同棲とかで誰かと一緒になっても自分だけの空間が欲しいっていう発想だから、家を持っていることはマイナスにならないですよね。事務所に使ったり、貸したりもできますし、あって困るものではない。スー:私の会社勤めをしている友だちも、35歳くらいのときに突然マンションを買いました。どうするの?って思いましたけど、ちゃんとリセールバリューのある物件を買っていたので、38歳くらいで結婚したときに損することなく売っていましたよ。安くモチイエに住めて、それを売って結婚してまた新しい家を買ってとか、賢い!って思いましたね。雨宮:転職と一緒で、一回買いはじめるとまたそれ売ってこっちとか、賃貸にしてとかって、考えちゃうんですよね。スー:一番びっくりしたのは、41歳で結婚した女友達が、いままでの貯金で投資用のマンションを一括で買ったこと。そうするとオーナーになって家賃が入ってくるから、何年後には利益が出始めて…って計画して。その投資用のマンションは修繕積立金が貯まってるので、建て替えることになったらまた利益が出て…と。いつの間にこんな勉強してたんだ、と。ちっちゃく住むとか、オーナーになるとか、みんなちゃんと考えていて、住むだけじゃないモチイエ女子も増えているんですよ。来場者の中にもいるんでしょうね。でも、30代でマンション買うって本当に賢い方法みたいですよ。―雨宮さんは実際にモチイエを検討されていると伺ったのですが?雨宮:春先に神戸へ行ったとき、すごく気に入ってここに住めるんじゃないかな?って思ったんです。これ、旅先がパラダイスに見えるっていう、ダメな旅行者によくあるパターンなんですけど(笑)。それで「神戸中古マンション」みたいにざっくりとした検索をかけたら、すごくいい物件が出てきちゃったんですよ。広さ的にも場所的にも、もうすべて条件に合っているのが!だからその不動産屋さんに行って、これを買うとしたら最初にいくら必要で、全部でどのくらい払えばいいのかを計算してもらったんです。でも、ちょっとローン組めないですねっていうお返事があって。―家を買うタイミングって、どうしたら分かるのでしょうか? 人に聞かないと分からないような気がするのですが。雨宮:自分の中でリアリティが持てるタイミングってありますよね。スー:その時には、もう遅かったりするんですけどね。雨宮:もっと早く考えておけばよかった!ってね。スー:不動産に関しては、もっと早い段階で英才教育したほうがいいですよ、日本は。雨宮:それこそ、高校や大学の授業の一環として。まず、全然わからなかったですもん。初期費用がいくらかかるとか。スー:物件のお金以外に、いくらかかるのかとかね。雨宮:登記のお金とか、物件以外にかかるお金はいろいろありますもんね。モチイエ女子の実際のところジェーン・スーさん(左)と雨宮まみさん(右)―ではここで、詳しい専門家のかたにお話を伺ってみようと思います。三井不動産レジデンシャルの守屋明日香さんです。早速ですが、どのようなおひとりさまが実際に家を購入されていますか?守屋明日香さん(以下、守屋):弊社の物件を購入されたかたでお話させていただきますと、30~40代が非常に多く、職業も会社員が多い傾向にあります。先ほどお話の中で“英才教育が必要”とおっしゃられていたんですけど、実際にモチイエ女子になられた方って、同僚や友だちが家を買ったことがきっかけの人が多いんです。それまでは女性一人で家を買うということに気づきもしなかったと。―購入される目的に関してはいかがでしょうか?守屋:転売目的というよりは、自身の住んでいる環境を整えたいというところがベースにあるように見受けられます。「モチイエ女子web」に「女子イエナカ研究所」というコンテンツがあるのですが、そこのアンケートで「(連続で)何日くらい部屋にいられますか?」という質問の回答が平均10日間だったんです。モチイエ女子には本当に家の好きなかたが多いんですよ。ただ、「将来のことを考えて」という動機も増えています。老後に賃貸で家賃を払うのは大変だから、修繕費だけで生きていけるモチイエのほうがいいというお考えで買われています。スー:賃貸疲れっていうのもありますよね。ちょっと床に傷がついたら「あーこれ出るときにいくら取られるだろう」とか、壁に穴を開けられないとか、借り物だから気になります。雨宮:あと、過ごしやすくしたいけど、賃貸だから自分のものじゃないっていう思いもあって、はざまで揺れるとか。スー:とはいえ、本当に買っていいのか?みたいなね。賃貸のほうがいいっていう声もあるじゃないですか。守屋:そうですね。賃貸に比べるとかんたんに引っ越すことができないので、「好きな街にいっぱい住みたい」といった考えのかたには、賃貸のほうが合っていると思います。―おひとり女子が家を買うタイミングのようなものはありますか?守屋:今は建設コスト自体が上がっているので、物件価格はちょっと上がり気味ではあるんですけど、金利が低いので買い時ではありますね。例えば35年でローンを組んで、毎年100万円くらいずつ繰り上げ返済をすると、今の金利なら返済期間を15年短縮することができます。ちなみに、私は32歳の時に買ったので、50代で完済できることになります。スー: 30代からはじめて50代で物件が手に入るって、夢だな!雨宮:守屋さんは、やってます?繰り上げ返済。守屋:繰り上げ返済は、あの……楽しいです(笑)。Text/千葉こころイベント主催のモチイエ女子webはこちら!住まいに興味がある方はぜひのぞいてみてくださいね。【次回に続きます】
2015年11月02日お酒と料理と食べ歩きをこよなく愛する、食ブロガーのツレヅレハナコさん。彼女が紹介した「桃モッツァレラ(内田真美さんのレシピ)」や「味噌バター白菜鍋(重信初江さんのレシピ)」は、ネットで大きな話題となりました。そんなハナコさんが、夜遅く帰ってきて一杯やりたいとき、一人でもすぐに作れるとっておきのおつまみと常備菜のレシピを教えてくれる連載です。(c)ツレヅレハナコナツメグを加えると、一気に本格派の味に!フレンチで肉料理を頼むと、「付け合わせ」を選べることがあります。シンプルなグリーンサラダ、フライドポテト、ラタトゥイユ……中でも私が大好きなのは、じゃがいもだけのシンプルなクリームグラタン「ドフィノア」!もしかしたら、メインの肉料理より印象に残るときがあるかも。フランスの家庭料理のド定番で、材料はじゃがいも、牛乳、チーズ、塩のみ。日本でグラタンというと、「玉ねぎをバターで炒めてからホワイトソースをつくって生クリームも……」と、面倒くさすぎ&材料多すぎのイメージが強いですよね。でも、このフランス芋グラタンなら、「鍋に牛乳を入れて、じゃがいもをスライサーで薄切りにして加え、煮えたらチーズをのせてトースターで焼く」だけ。玉ねぎも、生クリームも必要なし……なんと簡単!ポイントは、じゃがいもを水にさらさないこと。じゃがいものでんぷんで、ソースに自然なとろみをつけるためですね。それと、なくてもできるけどぜひ加えてほしいのはナツメグ!ほんの少しで、一気に「お店の料理」っぽい仕上がりになります。ナツメグってハンバーグをつくるときに買ってみたけど、その後は戸棚で眠っていたりしませんか。日本の一般家庭のスパイス文化ってなかなか進化しないけど、なぜか「ハンバーグにはナツメグ」だけは脈々と受け継がれているような気がする。確かにナツメグはひき肉によく合うスパイスですが、このクリームグラタンや、かぼちゃプリンなどにもよく合うんですよー。私は、かぼちゃサラダとかにも、よく加えるなあ……。さらに、おろしにんにくをほんの少し加えたり、上にのせるチーズにブルーチーズを混ぜたりすると、よりお酒がすすみます。ぜひ肌寒い夜の晩酌に、温かい部屋でよく冷えた白ワインとどうぞ!「フランスの芋グラタン」(c)ツレヅレハナコ<材料>・じゃがいも・牛乳・ナツメグ(あれば)少々・とろけるチーズ・塩(c)ツレヅレハナコつくり方1.鍋に牛乳を入れる。じゃがいもの皮をむき、スライサーで牛乳の中に落とす(水でさらさない)。2.1に塩を加えて弱火にかけ、ゆっくり加熱する。じゃがいもに火が通り、ねっとりしてきたら、ナツメグを加えて混ぜ、耐熱容器に入れる。(c)ツレヅレハナコ3.とろけるチーズを表面に散らし、オーブントースターで焼き目がつくまで焼く。(c)ツレヅレハナコText/ツレヅレハナコ
2015年10月30日見た目はゴリラだけど、めちゃくちゃ純情で優しい猛男『俺物語!!』(原作:河原和音、作画:アルコ/集英社 マーガレットコミックス)既刊10巻少女マンガでは、『はいからさんが通る』『薔薇のために』『君に届け』などなど、たまに美人ではない女子が主人公になります。「私のことは外見じゃなくて中身を見てよ!」とさんざん訴えてるんです。でも、男子のことは当たり前のように外見重視です。乙女心って勝手ですね。しかし、そんなしきたりを大きく破る作品が登場しました。『俺物語!!』です。ヒーローは剛田猛男。身長推定2m、体重推定120kgの高校生とは思えない巨漢です。少女マンガは、基本的にフィギュアスケート選手の羽生結弦くんを模写したみたいな線の細い男子が活躍するものです。それが体重120kgって。青池保子さんや昔の秋里和国さんの描く男性はマッチョ系ですが、剛田猛男には遠く及びません。猛男は豪快で男気があって気は優しくて力持ち。『北斗の拳』のケンシロウから拳法と7つの傷を取り払って、もう少し不細工にした感じでしょうか。猛男には幼なじみの砂川誠というイケメンがいます。彼はクールで勉強が出来て優しくて、とんでもなく女子にモテます。猛男の好きになった女子はみな砂川を好きになってしまいます。そんなとき、痴漢から救ってあげた大和凛子に猛男は一目惚れ。「きっと大和は砂川を好きなんだろう」と思い、猛男はせっせと2人がうまくいくようにセッティングします。ところが大和は、初めて会ったときから猛男のことが好きだったのです……というすれ違い物語。とはいえ、『君に届け』みたいに、何巻も何巻も何巻もすれ違うことはなく、割とあっさり2人はカップルになります。猛男の感違いっぷりと砂川のクールな切り返しがめちゃくちゃ笑えるラブコメです。そこからは、武骨で空気の読めない、けど素直でいい人の猛男と、純粋でかわいくて、おもしろいことひとつも言えなそうなつまんない女だけどいい子の大和が、なんやかんややりながら話が進みます。クールなさわやかイケメン・砂川も、やっぱりいい男!(c)Christian Gonzalez女子からは恐れられていてモテない猛男だけど、男子からは憧れの巨漢として慕われています。しかしあまりに猛男がいい人なので、だんだんとその良さが周りの女子にもわかってきます。で、まあその頃にライバルが登場したりするんだけどね。とまあ、主要男子は猛男と砂川の2人なんだけど、私は砂川の方が好きです。クールなキャラが好きなので。少女マンガのお約束通りで本当にすみません。いえ、顔で選んでるわけじゃないですよ。砂川は毎日自宅で勉強をする努力家です。素直で善意のカタマリみたいな猛男に向かって、砂川は「勉強っていうのは人生を間違えないための智恵だから、おまえには必要ないんだろうな」と言います。勉強は目的ではなく手段だというのですから、高校生のくせになんとかっこいいんでしょう。そして猛男には「そんな努力をしなくても、お前は間違えないよ」と言っているのです。いいやつだ。ところで、猛男は巨漢で大和のことが好きで好きで大変なのに、いっさい欲情しません。大和を神聖視して最初は手も握らなかったくらい。なんででしょうか。少女マンガは「エロいっさい排除」と「作品の魅力はエロ」の大きく2パターンがあります。『俺物語!!』も、いっさい排除してなおかつ読ませる作品だと言えます。でもちょっと考えてみましょう。もし猛男が劣情にまみれて襲ってきたら……?めちゃくちゃ怖いです!いくら猛男の中身がいい人でも(いや、劣情にまみれる時点でいい人じゃないか)、女子萌えから大きく外れてアウトだったのではないでしょうか。いやー結局、一見「人は外見じゃない」「女は中身重視なの!」と言いながら、猛男には身を許さないわけで、割とやってることはシビアですな。Text/和久井香菜子
2015年10月30日映画が観たい。でも、ひとりで映画館に入る勇気がちょっぴり足りない……。そんなおひとりさまのあいだで秘かに話題となった“おひとり映画館”をご存じですか?シュールすぎる……段ボールの底にスマホの画面サイズの穴をあけて映画を再生したスマホをセットし、顔をすっぽり覆ってしまえば、真っ暗闇に包まれて自宅に居ながら映画館の気分が味わえるというもの。しかし!これでは映画が終わるまで身動きが取れない。映画を観るときのお楽しみであるポップコーンとか、ビールとか、何一つ味わえないのです。そこで。映画館並みの暗闇と臨場感を味わいつつ、飲み食いも楽しめる“おひとり映画館”を作ってみることにしました!失敗は成功へのステップメガネスタイル映画館できるだけ身近なもので暗闇をつくり出したいと考えて、さいしょに目をつけたのは牛乳パック。注ぎ口を閉じて直方体にし、一面を観音開きになるようにカットして先端に輪ゴムをつけ、メガネスタイルにしてみました。実際に装着してみると……。誰にも見られたくない姿である画面が近い。近すぎてすごく見づらい。口元が出ているから食べることはできるけれど、目がチカチカして1分と装着していられませんでした。大失敗。ザ・リベンジ!気を取り直してもう一度材料探し。すると、通販で購入したときの空箱を発見。これなら目と画面に程よい距離感を保てそう。用意するものメガネスタイルにするには少し重たすぎるので、手持ちスタイルに変更。用意するものはガムテープとカッターのみです。それでは早速、作ってみようと思います。1.画面サイズに切り抜く箱の上蓋をガムテープで閉じ、面積の狭いほうの側面の真ん中を、スマホ画面と同サイズにカッターで切り抜きます。スマホの外周を鉛筆などでなぞっておくと、セッティングするときに合わせやすいです。2.覗き穴をつくる1で切り抜いた面の向かい側を、覗きやすいサイズにカッターで切り抜きます。このとき、隙間から光が入らないように目の両サイドにあわせた幅にするのがポイント。鼻がぶつからないように、下になるほうは底まで切り取ってしまいましょう。3.スマホを固定する1で切り抜いた穴に、スマホを密着させて固定します。マスキングテープを使えば跡が残らずキレイにはがせます。4.完成!※内蓋のビラビラが気になる場合は、穴から手を入れてガムテープで止めましょう。使用感はいかに?傍からみるとこんなかんじ早速お気に入りの映画を再生。中の様子。視界は完全に映画館なんと、画面までの程よい距離感とみごとな真っ暗闇で本当に映画館にいるような臨場感!これ、底にミニチュア模型の座席とか貼り付ければ、より映画館気分を演出できるんじゃないでしょうか。“手持ち”ということで腕が疲れるかと思ったけれど、寄りかかったり寝転がったり自由な態勢で観られるから、まったく問題ナシ。かなり映画に集中できますもちろん、お菓子だって食べながら鑑賞できます。空箱さえあれば3ステップでかんたんに作れる“おひとり映画館”。周囲を気にせず泣くも笑うもできるから、どっぷり映画の世界に浸れました。 好きなお菓子をたんまりと買い込んで、今夜あたり、あなたもいかがですか?Text/千葉こころ
2015年10月29日今年はワイドパンツが大流行していますが、着こなし方や見せ方も着ている人の個性によってそれぞれ違います。ワイドパンツには一体どのようなコーディネートが選択肢にあるのでしょうか? 買ったものの合わせ方に悩んでいるという方にもわかりやすくイラストで紹介しているので、是非プチプラおしゃれハンター・うかつさんのスタイルを参考にしてみてくださいね!※店頭にない商品もあるかもしれませんが、類似品でうかつさんのコーディネートを真似るのも良しです!GUのワイドクロップドパンツ¥1990(c)吉田うかつ生地がしっかりしていてシワが付きにくい上に、ウエストインするとすっきりとして見えるのがこの商品の良い所。足元はタイツでも、靴下を合わせてもGOOD!GUのイージードレープガウチョパンツ¥1,490(c)吉田うかつキャメルといえばデニム素材とよく合う色ですが、イラストのように小物を同系色でまとめてしまうのも良いですね! さらに、普段モノクロアイテムばかり着ている人でもキャメルは相性が良いので、おススメです。安カワイイ GUのワイドアンクルパンツ¥1,990(c)吉田うかつワイドパンツはなんといっても靴がポイント! 履いているものでかなり印象が変わります。スニーカー、バレエシューズ、色々試してみてくださいね。さらに、この商品はウェスト部分がしっかりとしているのでウエストインしても恥ずかしくありません。身長が低いのでワイドパンツに手を出すのは控えていたのですが、 ワイドパンツの中でもいくつか種類があるため、これなら履けそう! という商品が見つかって嬉しかったです(笑)次回はどんな商品でコーディネートを考えてくれるのでしょうか? 冬に向けたうかつさんのプチプラファッションが待ちきれません。TEXT/SOLO編集部
2015年10月27日「東京でまだ消耗しているの?」というタイトルのもと、移住先の高知での生活を伝えながら、都市生活の疲弊について論じているブロガー・イケダハヤト氏。その主張に賛否両論はありながらも、大都市に住んでいる人であれば皆、少なからず考えさせられることは多いかもしれません。東京生まれ、東京育ちで独身、フリーのライターとして独立以降は、ふだんの生活も全方位的おひとりさまライフに突入した小野好美さんもその一人でした。私がイケハヤ氏と高知でビールを乾杯するに至るまで(c)Gunilla G2014年8月某日。気づくと私は、東京から800キロほど離れた高知県のとある川原で、ビールを掲げ乾杯していました。紙コップを合わせているのは、有名ブロガーのイケダハヤト氏とそのご家族。空はどこまでも青く清々しく、ビールはどこまでも冷たい。それに、高知のローカルフードは驚くほど新鮮な食材が使われており、何を食べてもハズレがない。そこにいる全員が、当然のこととして、心からの笑顔を浮かべていた。…どうして私は、イケハヤ一家と真っ昼間から野外で乾杯しているんでしたっけ。そもそもなんで高知県?はじめまして。おひとりさま系ライター小野好美と申します。“おひとりさまの居場所”特集ということで、僭越ながら私が昨年、思い切って30年以上住み慣れた東京を離れ、居場所をガラッと変えたお話をさせていただきたく存じます。よろしくお願いいたします!未婚女性的2大ハードルが到来全方位的おひとりさまライフに東京生まれ・東京育ちの私は、別段何の疑問も抱かず、それまでずっと東京で暮らし続けてきて、これからもずっとそうするものだと思っていました。しかし、震災の少し前に「そういうもんだ」が一変。突如として「なんか…自分のなかに自然が足りない気がするッ」という衝動が生まれたのです。その何年か前から「冷えとり」やヨガに取り組んで小さな頃から弱っちかった体が少しずつ生命力を取り戻したり、瞑想して内観する時間をとるようになったことで、身体の声が聞こえるようになったのかもしれません。とにもかくにも内側から湧き上がってきた自身の“野生”に戸惑うばかりでした。それでも東京の外に飛び出す勇気もなく、違和感を持ちつつも相変らずの東京的生活を送っていましたが、31歳の頃に「会社を辞めてフリーに転向」「一緒に暮らしていた男と別れる」という未婚女性的2大ハードルがほぼ同時にわが身にやってきました。これによって仕事もプライベートも一人でいるのがデフォルトに。全方位的おひとりさまライフここに極まれり、というわけです。自分で選んだフリーの道だけど…“喜び”よりも“不安”が行動の原動力になる矛盾やがて、心の奥底で感じ続けていた“自然が足りない”という思いに加えて、今度はお金の不安が頭をもたげてきました。もともと宵越しの金は持たないというか持てない、完全江戸っ子仕様の私は、充分な貯金もないのに不安定なフリー稼業を始めてしまったのです。冷静に考えると危険すぎる賭けですが「こうしたい」と思ったら止められないし、「死にはしないさ」とアバウトすぎるどんぶり勘定野郎な私は、実際に社会の大海にたった一人、小さな船で漕ぎだしてみてから「待って待って、これ危険すぎ、船が粗末すぎ」と慌てる体たらく。実際には、ありがたいことにフリー一年目にしては充分に稼げていたのですが、いかんせん貯められない女である私は稼いだら稼いだだけ使い、ちょっとでも収入が少ない月があるとその時点でピンチに陥るという一番フリーになってはいけないタイプだったのです。それまでは、もし自分のお財布が多少心もとなくなっても、彼氏が何とかしてくれましたし、風邪をひいて1日や2日、会社を休んでも給料は支払われました。それに、お金の面だけでなく、彼氏がいれば体調が悪くても家事を協力し合ったり、心が不安にさいなまれていても元気づけられたり、といつの間にか切り抜けることができる。そうした恵まれた状況に慣れきっていて、二重、三重の意味でフリーになった時のリスクが具体的に描けていなかったのです…って失ってから気づいたモノの価値が大きすぎるッ。おひとりさまもフリーランスも、どちらも自分で選んだ道。それなのに、いつの間にかその“喜び”よりも、お金や将来への“不安”が行動の原動力になっているという矛盾。せっかくの好きな仕事も、お金のためにキャパ以上に抱え込み、ムリヤリこなしている始末です。だいたい東京は家賃が高すぎるんじゃー、と自分の読みの甘さを棚上げしてしっかり責任転嫁しつつ、完全に「いま東京で消耗しています」状態に。不安にガッチリフォーカスが合うと、せっかく新しい仕事の話が舞い込んでも手を挙げる気力が湧かなかったりして、ますます悪循環の四面楚歌なのでした。「あー、久しぶりに生きている感じがする…」という言葉が胸に刺さりまくるそんなある日、あれは2014年6月1日のこと。イケダハヤト氏が「高知県に移住します」とツイートし、同時にブログのタイトルを「イケハヤ書店」から「まだ東京で消耗してるの?」に変更。突然の地方移住宣言&中央ディスに、ネットは賛否両論が巻き起こり大炎上。しかし、東京から飛び出すきっかけをどこかで待っていた私は、リアルタイムの地方移住者の出現にどきどきしながら、その成り行きを見守っていました。何より、氏が移住を発表した記事に添えていた「あー、久しぶりに生きている感じがする…」という言葉が、生きる心地がしない毎日を送る心に刺さりまくっていたのです。その後もイケハヤ氏は連日「カツオがうまい」、「トマトがうまい」と高知ではしゃぎます。さらに抜かりなく「まだ東京で消耗してるの?」と東京在住者の神経を逆撫でしながらも、移住の支援策やお試し移住のための格安で借りられる物件情報などもキッチリ紹介してくれる。表現の仕方がツンデレすぎる…!そうして知った高知の物件は、東京と比べたらウソみたいにお得な家賃。「やっぱり、東京の家賃の高さは異常なんだ…。もし家賃をそれぐらい抑えられたら、もっとゆったり生活を楽しめるかも?」、「でも、いくらフリーとはいえお世話になってる会社や人はみんな東京にいるわけだし…」、「縁もゆかりもない場所に移住なんてできないよな…彼氏とかと一緒ならまだしも、一人で知らない土地に行くなんてハードルが高すぎる…」悶々は最高潮に達しつつ、イケハヤブログを欠かさずチェックする日々が続きます。東京はワクワクしないことに対して支払う対価が高すぎる(c)小野好美そんななか、イケハヤ氏が東京に凱旋し、移住について講演するという知らせをネットで見つけた私は、速攻前のめりで申し込みボタンを連打&連打。当日の講演終了後に「自然があるところへの移住、いいなぁって思います。でも仕事の都合もあるし…」とグダグダな私に、「えっフリーのライター? いますぐ移住すればいいじゃないですか。むしろ何でしないんですか? 高知は最高ですよ。はっはっは」とイケハヤ氏はあくまでヴァイブス軽め。あれっもしかして、移住って私が思ってるより簡単なの…?このイベントが行われたのは2014年6月の終わり。当時住んでいた下北沢の部屋の更新時期は7月末。高い家賃に加えて、更新料を払ってまで同じ環境に住みたいか、と問われれば答えはノー。じゃあまた新たに高い敷金・礼金を払って、東京のどこか別の場所に住むの? と問われれば、それもまた心が踊りません。どっちもイヤだ。ワクワクしないことに対して支払う対価が高過ぎる。ならば第三の道をいくしかない。私は新しい部屋のメドがまったくつかないまま、部屋の管理会社に電話をかけると、賃貸契約を更新せず、7月末で退去する旨を伝えました。「来月からはホームレス」という言葉がちらりと頭をかすめるなか、まだ見ぬしあわせな居場所を探すべく、まずは四国に向かいました。(続く)Text/ 小野好美
2015年10月26日形式だけで「つながった気」になっている私たち『愛蔵版 CIPHER』(成田美名子/白泉社 花とゆめCOMICSスペシャル)全7巻「年賀状に子どもの写真をプリントするのはアリかナシか」という議論があります。「子どもが欲しくてもできない人に出すのは気遣いがない」というわけです。とはいっても、「子どもが欲しいけどできない」というパーソナルな悩みはあまり人に言わないだろうから、気遣いしようにもできないかもしれません。それに、出す方も多少「幸せ自慢」的なところがあるんだろうから、そもそも気遣いと言われたら、気遣いよりも自分ってところですかね。そもそも「挨拶」って、相手との関係を慈しんでするものだと思うんです。だったら年賀状も全員に同じプリントで渡すのではなく、ひとりずつ内容を変えるべきでしょう。プリントごっこが発売になる前まではそうだったはず。私はすべて手書きが面倒くさくて、とうとう年賀状を書かなくなってしまいました。挨拶すらしないのと、形式だけのご挨拶と、どっちがいいかはわかりませんけど。『CIPHER』は、美術学校に通う双子のイケメン俳優と、男勝りの少女アニスの物語です。80年代のマンガらしく舞台はニューヨーク。完全カラー再現で電子化されたので、久しぶりに読んでみました。イケメン俳優のサイファとシヴァは、ちょっと訳ありでとんでもない秘密があります。その秘密を知っているのはアニスだけ。共依存の関係にあったサイファとシヴァですが、どえらくゴッタゴタしたあと、精神的自立と人間らしさを取り戻していきます。もともと、作者の成田美名子さんは「人との関わりは大事だよ」「友達最高!」と熱く語りかける物語を描く作家さんです。この物語でも、サイファとシヴァ、両親、家族、友人と、相手を変えて、これでもか、これでもかと「人と深く関わること」について、相手への理解や許容についてを語っていきます。人と深く関わることに向き合わせる成田美名子作品(c)Enric Fraderaサイファとシヴァをはじめ、サイファとハル、シヴァとアレックスたちの関係(全員男)は、ゲイなんじゃないかと思うほど濃厚です。マウスtoマウスでキスはするし、ハグは当たり前、ちょっと帰宅が遅くなると生娘が家出したかのように心配して探しまくる。ささやかな表情の変化も見逃さず「なにかあったのか」「なんでも俺に言え」と、つめよります。サイファとシヴァは序盤、他人を信用することなく、友人たちとも「その程度」の付き合いしかしません。いい顔を見せて、笑うべき場面で笑い、やるべきことをやる。完全に俳優として「自分を形作って見せ」ているのです。共依存の関係にある双子の相手にすら、本音を話しません。そういう考えに真っ向から対立したのがアニスで、彼女はサイファとシヴァに深く関わっていきます(そこら辺が少女マンガらしい優越感を感じる展開なんですが)。読んでいて、なんとなくSNSが頭に浮かんできました。Facebookには特に「誰に宛てたのではないけども」という公開日記が氾濫しています。旅行先の美しい景色、さっき食べた美味しい食事、友達との集合写真、そういう「見せたい自分」だけを垂れ流して、人からの評価(友達の数や「いいね!」の数)を欲しがるけれど、すべてをさらけ出せる相手がいるかどうか。「つながった気」「仲がいい気」になっているだけではないでしょうか。少女マンガがすごいと思うのは、何十年も時代を先取りして問題を提起する作品がたくさんあることです。『CIPHER』は間違いなく、現代の希薄で浮薄な人間関係に疑問を提示する、今こそ読みたい作品だと思います。また、家族関係の問題についてもいろいろと取り上げています。家族に対してモヤモヤを抱えている人は多いと思います。サイファとシヴァやその他の登場人物たちが、本音で話し合って関係を再構築したのと同じように、近しい関係だからこそ起こる不満や行き違いは、ちゃんと言葉を尽くして話し合わない限り、解決しないのかもしれません。Text/和久井香菜子
2015年10月23日深夜2時。僕は、中国人のジャックと、インディラ・ガンディ国際空港で送迎車が来るのを待っていた。日本からインドに行こうと思うと、深夜着の便しかない。インドで一番やっかいなのがこの深夜着問題。交通手段がタクシーしかないので、乗らざるを得ないのだが、目的の宿に連れて行ってもらえないのだ。必ずツーリストオフィスに連れて行かれて、高額のツアーを申し込まないといつまでも宿には辿りつけない。仕方なくバックパッカーは、朝まで空港で過ごす。インドは女性のひとり旅が圧倒的に多い。彼女たちが空港で朝を待つ光景を眺めながら、僕はタバコを吸い、不思議な気持ちで送迎車を待つ。ホントは僕もあっち側だったのだ。ひとり旅のほうが出会いがある僕は7年前、休暇を利用してひとりでインド旅行に出かけた。成田発、北京経由、ニューデリー行き。北京での乗り継ぎでひとりの中国人青年と出会った。僕が読んでいた小説を不思議そうに眺めながら、それは誰だい?と話しかけてきたのだ(ちなみに読んでいたのは舞城王太郎のディスコ探偵水曜日)。向こうは英語ペラペラで、僕は英語が苦手。彼の話を必死に聞き取り、質問を投げた。彼はジャックと名乗った。中国の天津生まれで天津大学を卒業したあと、中国のIT企業としては最大手になる華為(ファーウェイ)という会社に就職した技術者で、年齢は26歳。メガネをかけていて、細身の体。見た目は日本人とあまり変わらない。インドにある支社で3ヶ月間開発を行うためにムンバイに行く予定だが、その前にデリーで打ち合わせがあるためにこの飛行機に乗ったということだった。年齢も比較的近かったので(このとき僕は29歳だ!)なんとなく波長があった。とりとめのない話を続けていると「今日のホテルはどこなんだ?」と彼が聞いて来た。僕は、ホテルは決めてない。デリーの街に出てから適当に探すと答えると、凄くびっくりしたようだった。「それは危ないよ。よかったら、僕の社宅の部屋にひとつ空きがある。そこに泊まればいい」と彼は言った。僕は渡りに船と快諾し、深夜の空港につくと、路上で寝ているインド人をかき分け、送迎車が来る場所まで向かった。車はどんどん郊外へ走る。もやっとした熱気で街の灯がぼやけて見える。高速道路の標識には「グルガオン」の文字。そうか、僕はグルガオンに向かっているのか。インドの別の顔として知られIT系の企業が密集し、巨大スーパー、タワーマンションと、イメージのインドとはかけ離れた近代的な、まるで箱庭のような街。着くと巨大なマンションに入り、疲れていたのかすぐに寝た。郷に入っては郷に従え朝起きるとなんだか騒がしい。リビングに向かうと中国人が10人くらいいた。少しびっくりした。一人暮らしではなかったのだ。一部屋を借りて、そこでみんなで暮らしているとジャックは言った。ごはんはもちろん自炊。まるでタコ部屋じゃないか。最大手企業でも、現実はこのようなものなのか。ジャックは図らずも、僕に、インドと中国、ふたつの国の矛盾を見せてくれた。ジャックはそのことについてどう考えているんだろう。悲しいかな、僕の語学力ではどうにもならなかった。この、一見幸せで優雅な街に、どのような無数の物語があるのだろう。そんなことを考えながら、僕はいよいよ、本物のインドに出会うべく、ニューデリー駅に向かった。まずは朝食。近くのメインストリート、パハールガンジを歩いていると、日本人の女の子に話しかけられた。ひとりでバックパッカー的な旅をしているそうだった。朝食を一緒に食べることになった。しかし、カレーしかない。仕方なく、カレーを食べることにした。カレーと言っても日本のいわゆるカレーではない。ルーはサラサラしているし、ごはんではなくナンだし、日本のインド料理屋のインドカレーのほうが正直旨い。しかも、ハエが飛び交い、衛生的には最悪の店。郷に入っては郷に従えのふたりは、手で食べ、出てきた生水を飲んだ(これによって僕は腸チフスに感染し、日本で1ヶ月入院することになる、彼女は大丈夫だった)。ひとり旅に出て思うことは、圧倒的な女性の強さだ。騙されたら男はすぐ泣き寝入りするけど、女性は粘る。途中から合流した大学生の男子は、騙されて高額ツアーを買わされていたのだが、彼女が事務所に乗り込んで抗議し、解約することができた。おひとりさまというのはバイタリティが必要だ。誰に頼ることもできない。何も知らない海外、ましてやインドで。非日常で自分を捨てることができるからだろうか。男性は内弁慶でなかなかそれができない。そんな彼女たちは、間違いなくカッコいい存在といえる。このあと、僕は昼の電車でバラナシに向かうことにしていた。ガンジス河で有名な街だ。切符を買い、ホームで電車を待つが、時間が来てもまったく来る気配がない。それを見越して、弁当売りがホームを回り始める。乗せられて僕は一つ買ってしまった。サフランライスにちょっとしたカレー(またカレーだ)。ここはインドなんだ。電車が来ないのは当たり前。日本の価値観に縛られすぎては、インドに来た意味がない。1時間経過。来ない。2時間経過。全然来ない。3時間経過。やっと来た!電車に乗ると、隣の席のインド人がラジカセを持込大音量で音楽をかけて踊っていた。それを見て、僕はちょっとだけノッてみた。ゆっくりからだをゆらした。なかなか気持ちよかった。だってここはインドなのだ。絶対的価値観などこの世の中にはないのだ。Text/神田桂一
2015年10月23日元外資系バリキャリ不健康OL時代の反動で一転、東京砂漠の小さなマンションのベランダでハーブを育てはじめ、 ていねいな暮らしへとシフトした料理研究家・太田みおさん。とはいえ、独身の忙しい生活のなかで「“ていねいなごはん”なんか作ってる余裕ない…!」という気持ちも分かりすぎるほどよく分かるという太田さんが、おひとりさま女史のための、ちょっとおしゃれで気軽な週末ごはんを提案する連載です。柔らかく甘いかぼちゃと、カリッとしたナッツの新鮮ハーモニー(c)太田みお誰もが振り返ってしまうほど美しい、女友達がいる。彼女は、外資系金融会社のマネージャーとしてバリバリ活躍中のキャリアウーマン。容姿がずば抜けて美しいだけでなく、とてつもなく仕事ができるので、ヘッドハンティングされながら、金融業界を優雅に舞い渡っている。そしてさらに、歳を重ねるほど、色香が増し魅力的になっているように思う。そんな彼女が、ある休日、私の家に遊びに来てくれた。そのとき持参してくれたのが、このかぼちゃのサラダ。軽井沢に住むおばあさまが畑で育てたかぼちゃを使い、彼女が作ってきてくれたらしい。なめらかな舌触りの甘いかぼちゃに、カリッとした食感が楽しく香ばしいナッツが絡み合い、とても新鮮なハーモニー!以前にも書いたが、やはり「仕事ができる女は料理も上手い」説は、今のところ、私の周りでは例外がない。そして彼女のように、ただ若さにまかせた美しさではなく、歳を重ねるほど魅力的になっていくひとは、「忙しい仕事」を言い訳にせず、日々の食事や暮らしにも気をつかい、豊かな時間を重ねているのだと思う。今年のハロウィンは今月末の土曜日。あのときの感動を、“舌の記憶”を頼りに再現してみた秋らしい一品を週末ごはんにぜひ!かぼちゃのごろごろナッツサラダ<材料>作りやすい量かぼちゃ 500g豆乳 25mlはちみつ 大さじ1と1/2塩 小さじ1/2ミックスナッツ ひとつかみレーズン ひとつかみ<作り方>1. かぼちゃは種とわたを取り、大きめの一口大くらいにザクザクと切る。皮付きのまま、皮を上にして耐熱皿に並べ、少し水をふりかけてラップをし、電子レンジ500Wで5分を目安に柔らかくなるまで加熱する。(c)太田みお2. 柔らかくなったら、皮を切り捨て、ボウルに入れてマッシャーやフォークなどでつぶす。そこに、豆乳を加えて、スプーンでなめらかになるまで混ぜる。(c)太田みお3. はちみつ、塩も味を見ながら加えてよく混ぜる。味が整ったら、ミックスナッツ、レーズンを加えて一混ぜし、冷蔵庫で冷やして出来上がり。Text/太田みお
2015年10月22日(c)Enric Fraderaかねてより知人から「一般常識が欠けている」という注意を受けることの多い私なんですが、みなさんは新幹線の「のぞみ」と「こだま」のちがいって理解していますか?恥ずかしながら齢28のワタクシは、これは機体の種類か何かがちがうだけだろうとつい最近まで思い込んでいたのです。先日、到着時刻をよく調べずにその場で来た「こだま」にテキトーに乗ったら、大阪での待ち合わせに1時間遅刻するという失態をやらかしました。みなさんも気を付けて。さて、一般常識が欠けているアラサ―女性というのはどう考えてもヤバイので、私も世間様の顔を窺いつつオロオロしているのですが、代わりに日常生活で役に立たないムダ知識なら、脳に腫瘍ができるほど溜めこんでおります。「常識ないのはどうなの」という突っ込みはひとまず横に置いていただいて、今回はおひとりさまの人生を何倍も面白くするムダ知識の溜めこみ方について、少し思うところを語ってみます。ムダ知識の溜めこみ、あなたはどこから?私は本からまずは「ムダ知識とは何か」という定義から入りますが、今回はこれを「今すぐには役に立たない知識」くらいの意味で使うことにします。「のぞみ」と「こだま」のちがいを知ればその瞬間から新幹線に乗り間違えるというミスはしなくなりますが、カンボジアでポル・ポトが行なった虐殺の歴史をひも解いても、研究者でもない限りその知識はすぐには役に立ちません。で、こういった「今すぐには役に立たない知識」の大切さを語ってきた人は別に私に限らずいくらでもいるのですが、じゃあこれを一体なんのために溜めこむのかというと、「教養」とかいい出すヤツはアホ、と私は思っています。だれかにひけらかしたり偉ぶったりするために溜めこむわけじゃなくて、「あくまで自分が楽しむためのもの」「自分のまわりの人を楽しませるためのもの」です。異論は認めますが、自分が面白くないんだったらいくら高尚なこと考えててもしょうがないよなー、と個人的には思います。そんなムダ知識、きっとみなさんも日々いろいろな場所からくわえこんでいると思うのですが、鉄板の確保場所はやはり「本」ですよね。というわけで私のおすすめ本の紹介を……といこうと思ったのですが、ここでシュミを爆発させて私の意外にロマンチストな一面が漏れてしまうと恥ずかしいので、今回はおそらくこのコラムを読んでくれている方の8割に楽しんでもらえるだろうと思う最終兵器を1つ出しておきます。HONZという書評サイトの代表・成毛眞さんがまとめた、その名も『面白い本』。歴史に科学に民俗学に、良質なノンフィクションが100冊紹介されているブックガイドです。今すぐには役に立たないムダ知識に救われる面白い本 (岩波新書)成毛 眞 (著)こちらの本で紹介されている、死海文書だとか、ヴォイニッチ手稿だとか、ロゼッタストーンだとかの話は、普通に日常生活を送っていたら本当にまじで必要のないムダ知識だと思うんです。だけど、そんなムダ知識をたくさん抱え込むと、今の自分の視点をボールみたいにポーンと遠くに投げられるんですよ。紹介されている本を1冊実際に手に取ってみることももちろんおすすめなんですが、本の紹介文を読んでいるだけでも、地球の果てから果てまでを何往復も連れまわされている気分になれます。私がこちらで紹介されている100冊のなかからマイベストを選ぶとしたら、定番ですがジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』ですかね。これ、読むのに徹夜したんですよ。世界は広い。歴史は長い。25mサイズのプールだと思っていたものが実は海だったと知ったとき、一瞬足元がふらつくような感覚を覚えますが、その眩暈はとても心地いいものです。私たちの生きている世界は、こんなにも面白かったのか!詐欺だ!……と気が付いたら、きっとひとりでいる時間は今までの何倍も楽しくなるんじゃないかな。ちなみにこの『面白い本』、以前私の部屋に遊びに来た彼氏が、本棚から引っ張り出して私の話をまるで聞かずに読みふけっておりました。みなさんも、本の魅力に負けないで。あと、「のぞみ」と「こだま」のちがいに注意です。Text/チェコ好き
2015年10月22日お酒と料理と食べ歩きをこよなく愛する、食ブロガーのツレヅレハナコさん。彼女が紹介した「桃モッツァレラ(内田真美さんのレシピ)」や「味噌バター白菜鍋(重信初江さんのレシピ)」は、ネットで大きな話題となりました。そんなハナコさんが、夜遅く帰ってきて一杯やりたいとき、一人でもすぐに作れるとっておきのおつまみと常備菜のレシピを教えてくれる連載です。(c)ツレヅレハナコ下味をつけて片栗粉をもみ込むのがポイントぎゅ、牛肉ですって……?まさか、あんな高い肉!うちでは、鶏か豚しか使いませんから!!!(鼻息)……で、ですよねー。外食代がとんでもないことになっている私だって、スーパーで300円/100g以上の肉の前では震える子羊……。でもでも、どーしても「牛肉的な肉」が食べたい日ってありませんか?店で食べればお高いけれども、スーパーの牛肉なら手が届く範囲。中でも、「牛切り落とし肉」ってのが狙い目なのですよ。(そういえば「小間切れ肉」と「切り落とし肉」の違いをご存知ですか。「小間切れ」=いろいろな部位の端っこ、「切り落とし」=同じ部位の端っこです!)年齢的に、「サシ(脂)たっぷり」の肉を食べたいわけではないけれど、あの牛肉でしか味わえない肉肉しさ……少しだけでいいの。酒のつまみとして食べたい!そんなときにオススメなのが、牛切り落とし肉をササッと炒めたもの。素直に塩こしょうで食べても良いのですが、オススメは「オイスターバター炒め」。この調味料の組み合わせはいろいろな食材に活用できますが、牛切り落とし肉にはぴったりなのです。ポイントは、下味をつけて片栗粉をもみ込むところ。牛肉の切り落としから出るうま味を閉じ込めつつ、バターとオイスターソースがぐぐっと底上げしてくれます。ヘタすると、白メシが進みすぎる危険なオカズですが、焼酎や日本酒をちびちびやりながらだと最高かと!「牛肉のオイスターバター炒め」(c)ツレヅレハナコ<材料>・牛切り落とし肉・酒・片栗粉・オイスターソース・長ねぎ(斜め薄切り)・ごま油・バター・大葉(千切り)(c)ツレヅレハナコつくり方1.ボウルに牛肉を入れて、酒、片栗粉、オイスターソースをもみ込む。2.フライパンにごま油を入れて弱火にかけ、香りが出たらたっぷりの長ねぎを入れて焼きつける。(c)ツレヅレハナコ3.1の牛肉を加えて炒め、ほぼ火が通ったら、バターを入れて溶かしからませる。皿に盛り、大葉を添える。Text/ツレヅレハナコ
2015年10月20日肌寒い日が続き、見に付けるファッションアイテムも秋モノになりつつある今日この頃。街中では季節がらダークカラーに身を包む女性たちが目立ちますが、みなさんは今年の秋どのようなファッションに挑戦しようとお考えですか??これから買おうとしていたもの、手持ちにあるもの含め簡単にオシャレ度アップできることができたらステキですよね。ということで、今回はそんな悩める女性にInstagramで大人気なプチプラおしゃれハンター・吉田うかつさんをご紹介します。まずは、値段と使いやすさのバランスNo.1であるZARAの商品を使った秋のコーディネートをSOLO編集部がまとめてみました。うかつさんのイラストレクチャーがとってもわかりやすいので、是非ご覧ください!※店頭にない商品もあるかもしれませんが、類似品でうかつさんのコーディネートを真似るのも良しです!ZARAのスタッズシューズ¥5,900ブームのスタッズつきレースアップに似た形で、なにより5900円には見えないクオリティ!シンプルなシャツ&パンツにプラスするだけで、かっちりとしたステキ女子コーデのできあがりです。ZARAGIRLSのバレエシューズ¥2,990女性に人気のバレエシューズはどんなスタイルにもよく合うので、あえてワントーンコーデに使うのはいかがですか? さりげなくついている小さなリボンが乙女心をくすぐり、可愛らしい印象を与えることができそうです。ちなみにこちらはキッズサイズですが、大人がはけるサイズもそろっています。ZARAのきんちゃく型フリンジバッグ¥10,990意外に難しいと思われがちな“フリンジ”アイテムですが、バッグで取り入れれば、あっさりコーデのレベルアップが可能。形に変化のあるものなので柄ものの洋服にもしっくりきますし、ワンピース、パンツスタイルにもよく合います。スエードフリンジバッグ¥15,990こちらは、よりベーシックで使いやすいフリンジバッグ。今年の秋は絶対にフリンジを買うべき!とは言いませんが、それくらいのテンションでフリンジアイテムが店頭に並んでいます。このバッグはブラックなので、フリンジでもシックにまとめることができますし、シンプルなのに少しだけ個性的な形が、周りの人と差をつけられそうです。秋のコーディネート、いかがでしたか? どれも手持ちのアイテムと合わせられそうで、オシャレへの意欲がさらにアップしました。現在もうかつさんのInstagramでは、様々なアイテムやブランドが紹介されているので、是非毎日のコーディネートの参考にしてみてください!TEXT/SOLO編集部
2015年10月19日(c)Courtney Carmody仕事を頑張っている女性、恋愛に夢中な女性、育児を立派にこなしている女性……本屋で、あるいはウェブメディアで「女性」に関する記事を読んでいると、キラキラした彼女らに勇気づけられるとともに、ちょっとだけ食傷気味になってしまうのは私だけでしょうか。みなさんが素敵にご活躍されているのは大変喜ばしいことなのですが、ふと自分のことを振り返ってみると、仕事は良くも悪くもといった具合だし、恋愛だっていつもアドレナリン出まくってるわけじゃないし、あと私の場合は子供がいません。だからなんというか、嫌味でも僻みでもなく、「けっこうなことですわ……」とナナメ目線で見てから雑誌のページをパタンと閉じてしまうんですよね。私の性格が悪いだけ?キラキラしていないと、世間から爪弾きにされる「恋人に会うために、飛行機のファーストクラスに乗ってイスタンブールに向かう自分を、とてもかっこいいと思ったの」……といっていたのは確か作家の林真理子さんで、なるほどそりゃかっこいいや!と私も共感を覚えたものです。バリバリ働いてキャリアアップして、たくさんお金を稼いで、うっとりするような豪華ホテルに泊まったり高級店で食事をしたりする。料理の腕や外見を磨いて、一流企業に勤める優しい旦那様をゲットする。子供が生まれたら、仕事と子育てをしっかり両立して、良き妻であり母であり続ける。昨今はここまでわかりやすい「キラキラした女性」はあまり見かけなくなったような気もしますが、根底に流れる通奏低音は同じで、そのラインから逸脱すると世間から爪弾きにされたような気分になります。男性だって似たような構造はあると思うのですが、女性の場合はその傾向がより顕著です。(c)なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか(文庫ぎんが堂)理由はいろいろ考えられますが、個人的にはAV監督の二村ヒトシさんの著書『なぜあなたは愛してくれない人を好きになるのか』のなかにあった考察がしっくり来ているんですよね。男性の場合、漫画や映画のなかに「アウトロー系ヒーロー」という、正統派ヒーローとは異なるロールモデルがあって、ギャンブル漬けになってみたりゲームに狂って廃人になってみたり働かずにニートになったりしても、「そんなアウトローな俺も、かっこよくない?」という自己肯定ができるらしいのです。いわれてみれば確かに、女性の場合は「廃人の私も、かわいくない?クールじゃない?」っていう価値観はあまり共有されていないですよね。私は好きですけどね、廃人女子。仕事・恋愛(と結婚)・育児というのは日本社会において他者からの承認を得やすい三種の神器のようなもので、我々はこれを求めて日々地の底、海の底を這いずり回っておりますが、やっぱりこれらのアイテムがいまいち合わないというか、神器を神器とかんじられない人もいるわけで。私などはその典型ですが、では我々は指をくわえて、神器を手に入れキラキラしている人たちを遠巻きに見つめているしかないのでしょうか。わかりやすいキラキラと、わかりにくいキラキラ私の女友達が先日、南米を旅してきたそうなのですが、旅行の写真を見せてもらってびっくり。「ホテルの前にいつもいたから友達になった」といって、素性のわからない怪しげなホームレスのおっさんと、笑顔で楽しそうに記念撮影をしていたのです。その様子を話す彼女の表情の、なんとキラキラしていたことか……。三種の神器にいまいち食指が動かなくても、別にいいと思うんです。だけど、そのせいで人生が楽しめないのは、ちょっと悔しいじゃないですか。世間が作ったわかりやすいキラキラを手に入れる気にならないのなら、自分で勝手に作ったわかりにくいキラキラを放てばいい。わかりにくいだけに気付いてくれる人があまりいないのが難点ですが、伝わる人にはそれこそ光の速度で伝わります。「女の人はキラキラしてないといけないの?」という今回のタイトルの問いには、私はやっぱりキラキラしていたほうがいい、と答えます。なんというか、羽虫も人間も生物はみな基本構造が同じで、明るいところとか楽しそうにしている人に吸い寄せられるものだと思うんですよね。別に仕事をバリバリやらなくてもいいし、恋愛しなくてもいいし、子供を産まなくてもいいと思うんですけど、「いい話」はキラキラしている人のもとにやって来るのが世の理。まあそういうものすべてに背を向けて、「俺は孤独だ……!」と闇を抱えて社会から逃走するように生きるのもそれはそれでかっこいいと思うんですけど、こちらはちょっと芸術家向きで一般人にはハードかな。私は今イスラエルとパレスチナに関する著作を集めることに凝っているのですが、本に触れる自分の目がキラキラしているといいな、といつも思っています。みなさんからの「いい話」、いつでもお待ちしておりますよ。でも、マルチ商法の勧誘はやめてね!Text/チェコ好き
2015年10月19日障がいを“飯のタネ”に生き延びる見世物小屋の人たち『五色の舟』(漫画:近藤ようこ、原作:津原泰水/KADOKAWA エンターブレイン)12年ほど前に、スペインのセビリアに短期留学しました。初めてのスペイン、初めてのアンダルシア。イスラム文化が色濃く残る魔法の国のような街で、見るものすべてが新鮮でした。その中で驚いたことがあります。それは、片足がないとか、片手がないとか、指が三本(妖怪人間ベムを地でいく感じ)の、いわゆる障がい者が街にたくさんいたことです。そのときに「今まで日本で、こんなにたくさんの障がい者を見たことがあったかな?ここが障がい者の多い街なのか、それとも日本の障がい者が外に出ないだけなのか?」と疑問に思いました。その答えはまだ出ません。「障がい」という言葉は少々ネガティブに響きます。でも、大勢の人とは異なると考えれば、それは「個性」とも言えます。『五色の舟』は、いわゆる障がい者たち5人が家族として暮らしているお話です。両膝から下を切断したお父さん、身体は小さいけれど怪力の昭助兄さん、下半身が合体している結合双生児だった桜、肩から直接指が生えていて耳の聞こえない和郎(かずお)、両膝の関節が前後ろ逆についている清子さん。5人は第二次世界大戦のさなか、見世物小屋で興業しています。自分たちの個性的な身体に加えて、いくつかの芸を見せることで収入を得ているのです。彼らは、酔狂な金持ちに呼ばれて密かに催しを続け、戦争末期にもかかわらず食うに困ることはありません。桜は全身にウロコの入れ墨を入れ、ヘビ女としてカエルを飲み込み、また吐き出す芸を。和郎は手の代わりに器用に足を使って絵を描いたり食事をするさまを見せます。お父さんをはじめ、家族たちに悲壮感はありません。お父さんは、桜と和郎のまぐわいを見世物のひとつとしていて、いつか桜か和郎か、それとも両方に似た子が生まれるのを望んでいます。「それなら一生食べるに困らないから」。清子さんは、家族の一員になるときに「今までいやなことばかりだったから、これからはこれでお金を稼いで、笑って暮らしてやるのさ」と言います。異形に生まれた自分を肯定し、受け入れるたくましさ(c)martinak15両足を切断してしまったお父さんは歩けないので、怪力の昭助兄さんがいつでも担いで歩いています。それは当たり前のことで、「いつもすまない」みたいなことはありません。お父さんは歩けないから昭助兄さんが担ぐ、和郎は腕がないから足を使う。和郎は桜のことを「生来無いところをほかで勝手に補ってしまうような逞しさがない」と言っています。つまりほかの4人には、そうした逞しさがあるというのです。自分を受け入れ、個性として自分たちの身体を見世物にすらして揚々と生きている彼らに「障がい」という言葉は浮かびません。物語は、少しだけ不思議な設定です。「もし~だったら」という仮想の世界が存在し、その世界へは「くだん」という牛と人間のあいのこが連れて行ってくれるのです。そして「くだん」によって別の未来を手に入れた家族たちは、新しい身体を手に入れても、「見世物小屋の一座にいたことを恥ずかしいとは思いません。みんな自分の力で一生懸命生きていましたから」と否定をしないのです。私は、特段、障がいと言えるようなものを持っていません。でも、特に頭がいいわけでもなく、視力も良くないし、よく風邪を引く平々凡々な人間です。けれども、自分を肯定するのがとても難しいのです。必要なのはキレイで性能のいい入れ物ではなく、力強い精神だということはわかってはいても、なかなか実践できません。『五色の舟』は、津原泰水による原作小説が発表されたとき、世間に大変な衝撃を与えたそうです。それを漫画化した“近藤ようこ版”は、原作の世界をそのままに、違和感なく彼女らしい補足をしてあります。ラストは不思議な展開ですが、考え方によってさまざまな受け取り方ができるのではないかと思います。秋の夜長にひとりじっくりと味わいたい作品です。Text/和久井香菜子
2015年10月15日(c)PROWonderlaneひとり暮らしでよくある悩みのひとつに、部屋の狭さがあります。ワンルームに住んでいるおひとりさまも多く、「収納スペースが限られていて荷物が入りきらない」、「部屋が狭くて家具が置けない」などの理由から荷物が散乱し、疲れて片づけが後回しになることで、カオスと化すことも……。そこで今回は、おひとりさま部屋の収納ポイントを抑え、快適空間に変える方法をお話しようと思います。玄関夏はサンダル、冬はブーツ、運動用のスニーカーに出勤用とお出かけ用なんて、次から次に増えていく靴。小さいゲタ箱には入りきらず、狭い玄関が常に来客中かのような状態になってしまうこともしばしば。この状況を改善するには靴の量を減らすのが一番なのですが、できないから困っているわけで。そんなとき役に立つのが、頭より上の空間。棚タイプのつっぱり棒(もしくはつっぱり棒2本)を玄関ドアより上の位置に取り付け、季節ものや冠婚葬祭用など、すぐには履かない靴を箱に入れて乗せておきます。箱をかわいい包装紙などでアレンジして統一すれば、見た目もスッキリしますよ。キッチンワンルームのキッチンはとにかくコンパクト。「水切りカゴや調味料を置いたら調理するスペースがなくなった!」というくらい狭いこともよくあります。そこで活用したいのが、ワゴン。一番上の段におひとりサイズの水切りカゴと調味料を置いて、調理や洗い物をするときだけ近くに寄せれば、キッチンを広く使うことができます。さらに下にも棚があるので、レンジや炊飯器など場所をとりがちな家電や、お菓子などのストック品を置けば、小スペースでたくさんの収納力も発揮してくれます。クローゼット半間ほどの小さなクローゼットがひとつだけしかないような部屋では、とてもすべての荷物をしまいきれませんよね。でも、上手に使えばかなりの量をしまうことができます。まず、ストーブなどの季節ものや、掃除機など目につかないところにおいておきたいもののスペースを確保します。次に、空いたスペースを棚や引き出しで細かく仕切って、見やすく取り出しやすいようにします。トイレットペーパーのストックやバッグなど場所をとりがちな物も、引き出しに入れてしまえばスマートに収納できますよ。扉の裏側にフックをつければ、アクセサリーやベルトをかけることもできます。リビングできるだけ物を置かずに広々と使いたいものですが、何かと散らかりやすい場所ですよね。そこで、インテリアを損ねないデザインの「なんでもBOX」を置いておきましょう。たたむ時間のなかった洗濯物や目を通す前の書類など、そのまま部屋にあると散乱したイメージを与えるものを“とりあえず”一か所にまとめるだけも、すっきりとした印象になります。また、こまごましたものや色味がたくさんあると、どんなに整頓されていてもゴチャついてみえてしまうので、小さなものはすべてしまい、見える物は色の系統を統一したほうが落ち着いた部屋になります。家具をすべて腰より低い高さにするのも広く見える効果がありますよ。その他部屋をきれいに見せるためには、文房具などの小さな物でもひとつずつに必ず“家”をつくってあげること。しまうべき場所が決まっていれば、所定の位置に戻すだけなのでおのずと片づきます。よく使うものは、開けるだけなど“1ステップ”でしまえるようにしておくことが、面倒にならず片づけられるポイントです。また、服や化粧品などついつい増えてしまいがちなものは所有する数を決めて、「ひとつ買ったらひとつ捨てる」意識をもち、増やしすぎないことも大切です。「断捨離」という言葉がブームになったように、ときには捨てる勇気も大切。持ち物が少なくなれば把握できるので、ムダな買い物も減らせます。ほどよい気候の今の季節、休みの1日を部屋の片づけに費やしてみてはいかがですか?Text/千葉こころ
2015年10月15日元外資系バリキャリ不健康OL時代の反動で一転、東京砂漠の小さなマンションのベランダでハーブを育てはじめ、 ていねいな暮らしへとシフトした料理研究家・太田みおさん。とはいえ、独身の忙しい生活のなかで「“ていねいなごはん”なんか作ってる余裕ない…!」という気持ちも分かりすぎるほどよく分かるという太田さんが、おひとりさま女史のための、ちょっとおしゃれで気軽な週末ごはんを提案する連載です。「簡単」、「華やか」、「ヘルシー」!三拍子揃った優秀秋ごはん(c)太田みお今がまさに旬の、脂が乗った秋鮭を使ったお料理をご紹介します。「プロヴァンス風」なんて、横文字が入ってなんだか気取った風ですが、内容はごくごくシンプル。フランスの南部プロヴァンス地方は、イタリアにもほど近い地中海に面した地域で、オリーブやニンニクやトマトが美味しいエリアなのです。これらの食材を使ったお料理なので、プロヴァンス風と名付けています。脂がのった鮭が苦手という方もいるかもしれませんが、このお料理だったらお野菜とともにさっぱりいただけるので、とってもおすすめ。日頃、お野菜が不足しがちな、忙しいおひとりさま女史の週末ごはんにぴったりです!そして、見た目は華やかなのに、簡単とキタ!!ちゃちゃっと作って、白ワインとともに召し上がっていただき、今週の疲れを癒してくださいね。秋鮭のムニエル プロヴァンス風<材料>1人分鮭の切身1切れ塩こしょう適量薄力粉適量にんにく1/2かけ玉ねぎ1/4個トマト1/2個グリーンオリーブ5粒パセリの葉1枝分オリーブオイル大さじ1<作り方>*写真は倍量です1. にんにくと玉ねぎとパセリの葉はみじん切り、トマトは1.5cm角ほどのざく切りにする。鮭は、塩こしょうで下味をつけ、薄力粉をまぶし、はたいておく。2. ソースを作る。フライパンにオリーブオイルをひき、にんにくを炒めて香りが出たら、玉ねぎ、トマトの順に炒める。全体にしっとりと火が通ったらグリーンオリーブを加え、さらに1分ほど炒める。火を止めて、塩を加えて味を整え、パセリを加えて混ぜる。3. 鮭を焼く。フライパンにオリーブオイルをひき、(2と同じフライパンを使う場合は、一度軽く洗っておくこと)強めの中火で1の鮭を焼く。焼き色がついたら裏返し、裏側も焼き色を付けるように焼く。4. 3の鮭をお皿に盛り、2のソースを上からかけて、できあがり。Text/太田みお
2015年10月13日次々と関係を結ぶ二条は一見ビッチ、だけど…『後宮』(海野つなみ/講談社 KC KISS)全5巻人は誰でも、自立願望があると思います。自分の行動や言葉に責任を持ち、自分のことは自分でやる。失敗したときは辛いけど、誰のせいでもなくて次へのステップになるし、成功すれば達成感があるから。精神的自立と経済的自立はイコールではないけれど、かなり近い関係にあるでしょう。誰かに金銭的に負われていると、その人の意志にかなり自分の人生が左右されるからです。「金は出すけど口は出さない」人はあんまりいないし、自分の身を削って支払いしないと、自分への自信にもつながりません。『後宮』は、平安時代に成立した『とはずがたり』を原作にした作品です。『とはずがたり』は、後深草院(御所様)に仕えた女房の二条の日記的物語です。その中で、御所様のほか、西園寺実兼、性助法親王(御室)との関係が描かれていきます。御所様は、閨(ねや)の教育係だった典侍大(すけだい)のことが忘れられません。その典侍大が亡くなり、忘れ形見だった二条を引き取ります。自分のものにするために手元で育てることにしたのです。まるで『源氏物語』の紫の上ですね。初めて御所様と一夜を過ごしたときの二条の困惑も、『源氏物語』を彷彿とさせます(ていうか『あさきゆめみし』のシーンを思い出しました)。はじめに読んだときは、「二条はビッチでした物語」なのかな?と考えていました。だって、御所様に入内しているにもかかわらず、実兼さまとも御室とも近衛の大殿とも、次々と関係を結んでいくのです。もう彼らとの関係は、ティーンズラブコミックを読んでいるかのようです。御室のストーカーまがいの熱情や、二条への思いを遂げるための策略はかなり萌えです。それ以上にすごいのが、近衛の大殿。二条が実兼と深夜に逢瀬をしたあとに、彼女を部屋に押し戻し、衝立に隠れている実兼の目の前で押し倒します。その次の日は、御所様の前で押し倒します。そのたびに二条は「声を出しちゃダメ」「早く終わって」とこらえてます。禁断のナントカって感じですね。二条が男を選べないのは、経済的に自立できないから(c)Bridget H「誰かに見られちゃう」「あの人にみだらな姿を見られるなんて!」は女性萌えの王道らしくて、エッチなシーンが多い少女漫画にはつきものだったりします。『後宮』は、ティーンズラブコミックでもエロ漫画でもない上に実際の人物の日記ですが、「現実は小説よりもエロなり」って感じですね。しかし、じっくり読んでみると、気付くことがあります。二条が、いやよいやよと思いながら逆らえないのは、彼女自身が誰かに後ろ盾になってもらわないと生きていけないからです。近衛の大殿が二条と関係するのは、彼女の後ろ盾となるためでした。その上、御所様といい実兼といい、二条を好きだ好きだと言いながら、他に女がいて、子どもも産ませてます。そこへ自分ひとりを愛してくれる御室が現れたら、なびいてしまうのもムリはないでしょう。二条は、男に経済的に依存しなければ生きていけないのです。そしてそのためには、求められたら自分の身体を差し出すしかない。強く拒むことができないために何人もの男性と関係を持つことになりました(まあ生涯4人だけなら現代では別に普通かもしれないけど)。『あさきゆめみし』で紫の上は、「源氏に愛し愛され、自分は果たして幸せだったのか」と自問して亡くなっていきます。ハッキリ言って源氏に振り回される人生だったわけです。当時、女性は誰かに頼って生きるしかなかったのかもしれませんが、もしも自立ができたとしたら、源氏を選んだかどうか。二条も同様です。御所での地位を顧みなければ実兼ひとりを選んでいたかもしれないし、そもそも他にも女がいる実兼は選ばなかったのかもしれない。「何もかも捨てて御室と一緒になる勇気」はなかったけれど、何も捨てないのなら御室を選んだかもしれない(近衛の大殿は論外だけどね)。こうした女流文学を読むたびに思うのは、女の自立です。自分は、経済的・精神的に自立できているか。経済的自由を手に入れる代わりに、精神的自由を失ってはいないか。ティーンズラブ風味のサービスシーンも堪能しつつ、ちょっと振り返ってみてはいかがでしょうか。Text/和久井香菜子
2015年10月09日メンタルに少々問題を抱えており、そのせいで度々まわりに迷惑をかけてしまう人……という意味での「メンヘラ」という言葉を私が知ったのはここ数年ですが、昨今ではだいぶ一般に浸透してきましたよね。確かにある種の人間の特性を指す上で有効な言葉である、ということはいえるのかもしれません。しかしその意味するところを聞いてみると、実は人によってまちまちだったりもします。あなたのまわりにはそんな「メンヘラ」はいるでしょうか?広義の「メンヘラ」は、ゼルダ・フィッツジェラルド?ところで、狭義の「メンヘラ」は、リストカット癖があるだとかオーバードーズをしてしまうだとか、そういう方を指すようです。しかし昨今使われることが多いのはこちらの狭義の語ではなく、広義の「メンヘラ」という語です。では広義の「メンヘラ」は、いったいどのような人間を指すのでしょうか。ここで例にあげたいのが、ゼルダ・フィッツジェラルドという女性。この人は『グレート・ギャツビー』などで知られる作家、スコット・フィッツジェラルドの奥さんです。ゼルダは贅沢な生活が大好きで、ベストセラー作家として有名になった夫のお金で豪奢なパーティーを開きまくり、ニューヨークで遊びほうけるんですが、徐々にお金も尽きてきて子供も産まれ、夫婦はフランスに移り住みます。だけど、小説の執筆に集中してしまう夫に退屈したのか、ゼルダはそこでフランス人士官と不倫してしまうんです。夫のお金を思う存分使い、夫の心をかき乱し、さらに耐え切れず自殺未遂や精神病院への入院まで……。私は彼女こそ、時を越えた広義の「メンヘラ」ではないかと思っているのですが、この認識は合ってますでしょうか。「メンヘラ」という語が浸透し始めたのは日本においてここ数年ですが、「メンヘラ」と呼んでよさそうな人というのは昔からいたわけで、何も最近になって急に増たわけではないですよね。ではなぜ、ここ数年の間でこの言葉が生まれたのか。なぜ、彼ら・彼女らの存在が目立つようになったのか。この言葉は2ちゃんねるのネットスラングに端を発しているようですが、その誕生と浸透の背景にあるものを考察したら、けっこう面白いんじゃないかという気がします。しかし恥ずかしながら、本来だと「メンヘラ」について語る資格を、私は持っていないのです。なぜなら実際の日常生活において、私は「メンヘラ」と呼んでよさそうな方に、出会ったことがないから。私のもともとの交友関係がせまいなど要因としてはいろいろ考えられるのですが、おかげでつい最近まで、「メンヘラ」という存在は都市伝説か何かだと思ってたんですよ。まったくいないわけではないのだろうけど、「あの子はメンヘラだよ」と人から聞くのは私にとって「隣村のじいさまがキツネに化かされたよ」くらいのリアリティのない話で、その単語を聞くたびに意味がよくわからず首を傾げていたのです。そこを承知の上であえて踏み込むと、この言葉が広く使われるようになった背景として、私はやはりコミュニケーションを簡略化したいという現代人の欲が隠れているのではないかと考えます。感情の起伏の激しい彼ら・彼女らによって生活のペースがかき乱されたとき、「この子はメンヘラだから」というラベルを貼ると、消耗するエネルギーがだいぶ節約されることでしょう。こちらの身を護ることを考えれば確かに有効な手立てではあるのかもしれませんが、私はそれが同時に弊害を生んでいる可能性というのも考えてしまいます。あなたは、普通のキツネの影を妖怪と間違えていたりすることはありませんか?それがキツネではなくタヌキだったり、ハクビシンだったりする可能性はありませんか?広義の「メンヘラ」という言葉は便利なので、自分にとって都合の悪いやつにラベルを貼って満足してたりする人が、なかにいるんじゃないかと私は疑ってしまうのです。同様に、「おひとりさま」だとか「独身貴族」だとか「こじらせ女子」だとか、人にラベルをつけるような言葉って本当にたくさんあります。それらはキャッチーでわかりやすく、ときに人間関係を円滑に進める効能もあったりするんでしょうけど、ラベルを使って自分のことを説明するとき、あるいはは他人のことを説明するとき、ある部分にのみ焦点を当ててそれ以外は捨ててしまうような捉え方をしないように注意したほうがいいと思うんですよね。インスピレーションの源泉、美しき「メンヘラ」たち「メンヘラ」という語は多くの場合ネガティブな文脈で使われ、そのラベルを貼られた人間は避けるべき対象としてまわりに認識されます。しかし彼ら・彼女らの感情の揺れ幅からくるパワーは、恋愛関係や仕事においてピタッとはまると、驚くべき吸引力でインスピレーションの源泉となることが予想されます。妻のゼルダが夫のスコット・フィッツジェラルドにとって永遠のミューズであり続けた理由は、おそらく彼女が「メンヘラ」だったからに他なりません。そんなのは芸術家に限った話で、実際はただただ迷惑なだけである……ということになるのかもしれませんが、ものは考えようです。まわりの「メンヘラ」に疲れてしまっている方も、自身が「メンヘラ」で悩んでいる方も、その性質にとことん付き合うのであれば、どうか美しい昇華を。付き合わないと決めたのであれば、一切同調しないことです、この私のように。しかし、こんなことを書いていると「この人自体が実はメンヘラなのでは?」という疑いをかけられてしまいそうで怖いのですが、断じていいます、私はキツネの妖怪ではありません。ハクビシンです。Text/チェコ好き
2015年10月09日(c)Alena Getman結婚のメリットやデメリットが日々手を替え品を替え語られる今日この頃ですが、読者のみなさまはいかがお過ごしでしょうか。ちなみに今回のタイトル、「洗脳された結婚願望を抱き続ける女」とは何を隠そう、このワタクシのことでございます。クールな性格を装っているからか「結婚願望がある」というと驚かれることも多いのですが、実は毎日3秒に1回くらい「結婚したーい」って思ってます。……えーと、3秒に1回はさすがに盛りましたが、毎日1回は頭のなかでbotのように「結婚したーい」と呟いているのは本当です。今回は、そんな我々独身女性の「結婚願望」について、ちょっと考えてみましょう。あ、でも既婚の方も、未婚時代のことを思い出して考えてみてくださいね。「結婚したい」と解体すると、何が出てくる?ところで今更ですが、みなさんは「結婚とは何か」という、定義を答えることができるでしょうか。社会学者の上野千鶴子氏はこれを「自分の身体の性的使用権を生涯にわたって特定の異性に対して排他的に譲渡する契約」としているのですが、私も結婚について考えるときはこの定義を採用しています。もちろん法的には、離婚するときの財産分与の話とかいろいろあると思うのだけど、法律の話は私がよくわからないので割愛します。つまり、独身女性がいう「結婚したーい」は、「自分の身体の性的使用権を生涯にわたって特定の異性に対して排他的に譲渡したーい」といっていることになります。うーん、でもなんか変ですね、本当にみんなそんなこと思ってる?思っているとしたら、それはなぜ?「結婚したい」という願望はとても漠然としていて、同じアラサ―女性の「結婚したい」でも、その裏にある思いはきっと様々です。たとえば、男性の反感を買いそうな願望として「働かずに(もしくはパートとかで)養ってもらいたい」というやつがありますが、私のまわりの女性は未婚でも既婚でもみんな文句をいいつつ自立して働いているので、「養ってもらいたい」という願望を抱いている女性ってそんなに数は多くないんじゃないかと思うんですよね。では実際の「結婚したい」を解体すると何が出てくるのかというと、1つ思考実験をしてみましょう。たとえばあなたが事実婚の国・フランスに移住することになったとして、それでも婚姻届を提出する「結婚」をしたいと思いますか?自分の生涯に寄り添ってくれる人がいたら心強いし、そんな人と一緒に暮らせたら毎日が楽しいだろうなとは思うけれど、そのために婚姻届を提出する必要はあるでしょうか。子供を育てることになったら法的に結婚したほうが便利な気がするけれど、それだったら実際に子供ができた後で婚姻届を提出しても遅くないはず。この思考実験を通して考えると、私の場合は、きっとまわりが事実婚なら自分も事実婚でいーや、って思ってしまう気がしたんですよね。みんなが大学に行くから私も大学に行くのが普通だと思ってた、みたいな話です。知らずに洗脳されるか、わかっていて洗脳されるかそうなんです。私の「結婚したい」は、法的に好きな人と財産を共有したいという意味ではなかったのです。じゃあ何なのかというと、よく考えていいかえると「社会的な体裁を整えたい」とイコールだなと。日本に住んでいるアラサ―女性が独身だと、魅力がない女だと思われるから。人間的に問題があるやつだと思われるから。さみしくて不幸な人生を送っていると思われるから。だから結婚したいって思ってたんです。日本が結婚しないことが普通に受け入れる社会になったら、私はたぶん「結婚したい」なんていいません。私と同じような「結婚したい」を抱えている女性がどれくらいいるかはわかりません。でも自分の結婚願望の裏側に気が付いてからは、なんだか気持ちがすっとラクになりました。結婚したいという願望自体も、すでに結婚した友人たちも否定するつもりはないのだけど、私もみなさんも、日本という社会で生きている以上、やっぱり日本社会の価値観や規範にとらわれているし、その枠のなかで物事を考えてしまっています。「結婚したい」とのたまう女性に質問です。あなたはそれを、日本が事実婚を普通に受け入れるような国になっても、いい続けますか?あなたの「結婚したい」を解体すると、何が出てきますか?もちろんその正体に気が付いても、日本社会の価値観や規範から外れることは難しいし、無理して外れる必要もないです。ただ、我々の生きている社会が持っている価値観なんて相対的なものでしかなくて、絶対的なものじゃないんだって思うと、だいぶ救われると思うんですよね。特定の社会の価値観に洗脳されていると知らずに「結婚したーい」と呟くのと、洗脳されているとわかって「結婚したーい」と呟くの、私は後者をおすすめします。段違いにラクだから。しかし、となると私は毎日1回「社会的な体裁を整えたーい」って呟いてるんですね。根無し草のようで、実は意外と社会性があるようです。そしたら今度からは「結婚したいです」じゃなくて、まわりの人にも堂々と「社会的な体裁を整えたいんです」っていっていこうかな。自分の本音を堂々と主張していくことによって、少しずつでも、世界が変わっていくような気がするから。Text/チェコ好き
2015年10月05日お酒と料理と食べ歩きをこよなく愛する、食ブロガーのツレヅレハナコさん。彼女が紹介した「桃モッツァレラ(内田真美さんのレシピ)」や「味噌バター白菜鍋(重信初江さんのレシピ)」は、ネットで大きな話題となりました。そんなハナコさんが、夜遅く帰ってきて一杯やりたいとき、一人でもすぐに作れるとっておきのおつまみと常備菜のレシピを教えてくれる連載です。(c)ツレヅレハナコ日本酒&ふんわりラッピングで、レンジでもかんたん蒸し魚「清蒸魚」って……な、なんか難しそう、と思った、そんなみなさん。いや、ちょっとお待ちください!全然難しくないから!単に「フライパンでカンカンに熱したごま油を、薬味の上からジュッとかける」ってだけですからー!中国料理の伝統技法ですが、カンタンなのにやたらプロっぽい。最初、友人宅のホムパで見て、「おおぅ……」と感動したものです。お店では食べていたけど、コレって自宅でやってもいいのねえ。セイロに入った大皿には蒸しあがった尾頭付きの鯛が鎮座し、山盛りの白髪ねぎがこんもりと。そこに、熱々のごま油をジュッとかければ、香ばしさとコクがUP!「わーーーー!すごーーーーい!!」(ホムパ一同)見た目だけでなく、味も香りも良くなるので、魚料理には本当にオススメ。できればセイロで蒸したいけど、ひとり呑みならレンジ蒸しで十分です。尾頭付きの鯛じゃなくても、切り身だっておいしくできるし、たら、スズキなどの淡白な白身魚が向いてます。今の時期なら、生鮭の切り身も「清蒸魚」にぴったり!塩鮭と違って秋の生鮭はパサつきがちなので、油を足すとしっとり食べられるのです。レンジ蒸しのポイントは、下味に日本酒をふりかけること(生臭みが消える&加熱するときの蒸気になる)と、ふわっとラップをかけること。長時間加熱しすぎると、あっという間にカチカチになるので注意しましょう。小さめのフライパンでごま油(サラダ油だっていい!)を煙が出る直前まで熱し、薬味を盛ったら上からジュッと!いつものひとり飲みが、ちょっとしたエンターテイメントになりますよー。「生鮭のレンジ清蒸魚」(c)ツレヅレハナコ<材料>・生鮭・好みの薬味(長ねぎ、しそ、みょうが)・酒、しょうゆ・かんきつ類(すだち、かぼす、レモンなど)(c)ツレヅレハナコつくり方1.皿に生鮭を置き、日本酒をふりかける(底に少々たまるくらい)。鮭の上にしょうが(薄切り)、長ねぎの青いところ(ぶつ切り)を置いて、ふんわりとラップをかけたら、電子レンジで2~3分加熱する。(c)ツレヅレハナコ2.白髪ねぎをつくる。超オススメなのは、100円均一で売っている「白髪ねぎカッター」!長ねぎの表面をシュッシュッとなでるだけで、みるみるうちに白髪ねぎの山が……!考えた人、天才!!私はコレを知ってから、白髪ねぎが面倒くさくなくなりました。ほかの薬味も適宜刻む。(c)ツレヅレハナコ3.鮭に2の薬味をこんもりとのせたら、小さめのフライパンに弱火でごま油を熱する。火が油に移らないように注意。(c)ツレヅレハナコ4.油から煙がうっすら出るくらいに温まったら、薬味めがけてジュッとかける。好みでしょうゆをかけ、かんきつ類をしぼってどうぞ!(c)ツレヅレハナコText/ツレヅレハナコ
2015年10月02日他人の人生にとって、自分は「脇役」だと気付くとき『ヒロイン失格』(幸田もも子/集英社 マーガレットコミックス)全10巻「世界は自分のために回っている」なんていう言葉があります。子どもの頃は「そんなわけないじゃん」と思ってましたが、大人になると「ゲッ!自分、どう考えても“世界は自分のために回ってる”って思ってたよな」って気付きました。排他的で、思い通りにならないと気が済まなくて。自分以外の他人にとっては、主人公は私ではなくその人で、自分は脇役なんだということがわかりました。まあこういうことに気付くのが、大人への第一歩ですよね。すみません、正直『ヒロイン失格』というタイトルを最初に見たとき、「はいはい、どうせ胸キュンお涙青春恋愛物語なんでしょ?」と思ってました。薄汚れた大人には楽しめないでしょ、と。でも、食わず嫌いはいけないですね、おもしろかったです。ストーリーは、子ども丸出しの恥ずかしい勘違いをしている主人公・はとりの成長物語です。幼なじみの利太のことを好きなはとりは、自分こそが利太の彼女にふさわしいと思いこんでます。モテる利太に彼女ができても大丈夫。かるーく付き合ってかるーく別れるを繰り返しているので、「快楽を求めて女を変えてるけど、最後は真実(あたし)の愛に気付くの」と思っています。幼なじみの余裕ですよ。なんで幼なじみが余裕かと言えばもちろん、少女漫画では幼なじみが最強だからです。テレビや雑誌の取材で「少女漫画でよくある出会いは?」とか聞かれるんですが、意外と「衝撃の出会い」って少なくて、同級生、幼なじみ、同僚あたりの平凡な感じです。遅刻しそうになって食パンかじりながら走ってる最中にイケメンとぶつかるとか、とりあえず読んだことないです。いったいなんのマンガのシーンだったんでしょうか。で、利太ですが、ぜんぜん彼のタイプじゃない、そして目立つ美人でもないメガネっ子の安達さんと付き合うことになります。そして意外と彼女が強敵だった。今まではとりは、利太の彼女を「脇役」だと思っていたけど、「あれ……?なんか利太のヒロイン、安達さんっぽくね?むしろ自分が脇役?」と気付きます。このときの、はとりの友達・中島の指摘が鋭い。「安達さんはちゃんと告白というオーディションを受けて正当に寺坂(利太)のヒロインになったの。あんた(はとり)は、オーディションも受けてないのに何故か自分がヒロインだと勘違いしてる、舞台にも上がれないただの劇団員」と。胸に刺さりました。私も告白オーディション受けたことないです。告白どころか、いろんなことのオーディションを避けてきた気がします。それじゃあいつまで経ってもヒロインになれないのですね。「笑い」のセンスと知性が、作品のクオリティを左右する(c)kaizen.nguyễnはとりは、自分が一番利太をわかっている、彼が欲しいものをあげている無二の存在と思いこんでるけど、利太にとってはとりは単なる幼なじみだったわけです。「自分と同じように他人も考えているに違いない」ってのは子どもの頃によくやる間違いですよね。そうこうするうちに、イケメンの弘光くんが登場、利太と弘光くんの間ではとりの気持ちは揺れ動きます。この作品のおもしろいのは、ヒーローの2人が女ったらしで、いわゆる少女漫画的優等生じゃないところ。そしてはとりが表情豊かで、めちゃくちゃ変顔が多いところ。全体的にコミカルです。これでシリアスムードだったら、よくある少女漫画の片思い(そのうちくっつく)系の作品なのね、と思うけれど、この軽いノリが「どういう展開になるかわからないぞ」と思わせてくれます。それから、マンガヲタ、アニメヲタにもお勧めです。『北斗の拳』『アタックNo.1』『ゴルゴ13』『ドラえもん』『キャンディ・キャンディ』とヲタネタがてんこ盛り。たとえ本筋のストーリーに興味がなくても、ここだけでも読む価値があるというものです。いやおもしろい。若いうちなんて、自分が世界のヒロインだと思ってるから、恥ずかしいこと山ほどしでかします。そういうことを笑いに落とし込んで恋愛や人間関係を語ってるところがこの作品のみどころです。「マンガは娯楽だから笑いがないといけないよね」っていうことを実感します。どんなにシリアスなことや説教を語りながらも、笑いの要素がある作品が好きです。笑いはセンスと知性のたまものだから、イコールそれが作品のクオリティなんだと思うんですよ。はとりがどんなに真剣に告白しても振り向かない利太とか、はとりを口説いてるくせに他の女ともイチャイチャする弘光くんとか、男性キャラがいまいち思い通りに動かないところも、リアルでいいですね。でもストーリーは、ゆるやかに「少女漫画の王道」へと移行していき、読者を裏切る展開にはなりません。冒頭の元気の良さが光る作品です。Text/和久井香菜子
2015年10月01日(c)PROPedro Ribeiro Simões自由気ままなおひとり暮らし。インテリアにこだわったり、時間を気にせず過ごせたりと、ひとりならではの開放感が得られますよね。でもその反面、話し相手がいない、ひとりの時間を持て余すなど、ひとり暮らしゆえの寂しさを感じることも。とくに恋人と別れた直後や仕事でツラいことがあったときなんかは、「おかえり」の一言が恋しく感じてしまうもの。そんな、ちょっぴり人恋しさを感じているおひとりさまには、“シェアハウス”がおすすめです。ただおひとり同士が集うだけと思いきや、最近では住人同士が家族のように交流を深められたり趣味を満喫できたりと、さまざまなスタイルのシェアハウスが注目を浴びています。そこで今回は、多様化するシェアハウスと物件探しのポイントをお話したいと思います。コンセプトシェアハウスがアツいひとり暮らしの空間は維持しつつ、リビングなどの共用スペースでほかの居住者と交流を計れるシェアハウス。同棲やルームシェアのような煩わしさはないのに、ひとり暮らしの寂しさを感じることもない、程よい距離感が人気のようです。また、ひとり暮らしをするよりも、敷金礼金などの初期費用や家賃、光熱費などが安くなることが多いのもポイントのひとつです。これまでシェアハウスというと学生が借りるイメージが強く、どこも似たり寄ったりといった雰囲気がありましたが、最近はテーマに沿ったライフスタイルを送れるような設備の整った「コンセプトシェアハウス」が続々と登場しています。たとば、語学力アップを目指す“国内留学シェアハウス”。海外からの留学生と共同生活を送りながら生の外国語と触れ合うことで、語学力を身につけられるというもの。ただ日常的に会話をするだけでなく、学習会や発表会を定期的に開催したり、それぞれの国の文化を体感できるパーティを行ったりと、日本国内にいながら留学しているかのような経験が積めるシェアハウスとして人気を博しています。ほかにはどんなコンセプトシェアハウスがあるのか、いくつかその特徴をみてみましょう。・ダイエットができるシェアハウス定期的に行われる体重測定の増減に応じて家賃が変動したり、共用スペースにトレーニングマシーンが置いてあったりと、ダイエットに励みやすい環境が整ったシェアハウス。管理栄養士による健康的なダイエット食を提供してくれるところやフィットネススタジオが完備されているところ、プロのエステティシャンによる美容講習が受けられるところなどもあります。・ナチュラル志向のシェアハウス家庭菜園や農業などで自給自足をして、有機野菜や無農薬野菜を日々の食卓でいただけるシェアハウス。農家のかたが指導してくれたり、自然教室を開催したりと、ナチュラル志向で都会の喧騒に疲れたおひとりさまに人気のようです。ベジタリアン専用のシェアハウスなどもあるので、菜食主義なら同志と心おきなく野菜を味わえますね。・ペットと暮らせるシェアハウスもともとペットを飼っている人はもちろん、飼っていなくても動物好きならOK!なシェアハウス。共用部分で人と動物がくつろいで過ごせるので、癒しにあふれています。ペットを飼いたいけれど諸事情で飼えない人でも、住居者のペットと触れ合うことで動物のいる暮らしを味わうことができます。はじめからペットが住んでいて、住居者全員でお世話をするシェアハウスもありますよ。これらのほかにも、音楽やゴルフなど趣味に没頭できるスペースがあるシェアハウスや、シングルファザー&マザー向けの協力子育てシェアハウス、LGBT当事者や理解のある人が集うシェアハウスなど、さまざまなコンセプトシェアハウスがあります。最高のシェアハウスに住まうためにバラエティーに富んだシェアハウス、住んでみたいコンセプトはあったでしょうか?ただ、シェアハウスの物件探しをするときは、いくつか注意しておきたいことがあります。・脱法ハウスと呼ばれる粗悪物件ではないか?シェアハウスの人気に乗じて、狭い空間をむりやり仕切ったような違法物件が出回っています。必ず一度見学しましょう。・共同ルールが守れるか?共同生活なので、細かなルールが定められていることもあります。自分のライフスタイルに合っているか、ムリなく守れるか、ルール内容を確認しましょう。・友人や親を招けない?共同生活なので、居住者以外の立ち入りには細かなルールを敷いているシェアハウスが多いようです。・年代や性別は自分に近い?あまりにも年の離れた人ばかりの中に入ってしまったり、男性が多数では、日々の生活で暮らしにくさを感じる場面が多くなってしまいます。・設備は居住者人数にあっている?10人以上が住んでいるのにトイレが2個しかないなど、日常生活を送る上で支障が出るような設備では快適な暮らしは望めません。共同生活だからこそ、よく考えずに決めてしまうと「こんなはずじゃなかった!」という事態に陥ることがあります。お気に入りのシェアハウスをみつけたら、入居前に納得いくまで管理人さんや居住者に聞いてみるといいかもしれませんね。Text/千葉こころ
2015年09月28日日本人はセックスを直接話し合うのが苦手…?『情熱のアレ』(花津ハナヨ/集英社 クイーンズコミックス)全4巻※現在はkindle版でのみ発売 少女漫画は、基本的に“寸止め”と“愛”でできています。男子となんやかや心の交流を描いて、盛り上がってきたら寸止め、焦らしに焦らして(ここが見せ場)大爆発、みたいな。やっちゃったあとはなんかトーンダウン、という少女漫画は少なくないですよね。で、そのあと、ラブラブだった頃を通り過ぎて、もしかしたらやってくるかもしれないのが「セックスレス」です。日本人は特に多そうです。だいたい日本は、性に関して語ることがあまりオープンでない風潮があります。男同士は下ネタ活発らしいですが、女同士は生々しい話はあまりしません。また、男性はAVでセックスの勉強をする人も多く、乱暴でいたわりのない行為によって、女にとって苦痛でしかないものに成り下がっている場合もあります。読売新聞でセックスレスの悩み相談企画があるんですが、どれを読んでもとても深刻です。「セックスの話ばかり」「そんなことしか頭にないの?」と否定され、ますます相談ができなくなることもあるようです。もっともコミュニケーションを必要とする行為なのに、話し合いができないのでは、うまく行くはずがないでしょう。知恵袋系のネット相談を読んでいても、「それ、本人と話し合えば解決するんじゃね?」というのが大半です。どうやら、本人を目の前にして自分の気持ちを伝えるという能力が、日本人にはさっぱり抜け落ちているようです。ということで『情熱のアレ』は、男女のセックスに関するあれやこれやのお話です。主人公マキは、類と同棲して3年経ちますが、現在レス2年目です。マキは、母親が経営する大人のおもちゃ問屋の手伝いをすることになります。初めはあられもないグッズの数々を目の前にして、嫌悪感でいっぱいでした。しかし、そこに関わる人たちの真摯な思いや、おもちゃを使うことの意外な効果、オープンに話し合うことのメリットを感じはじめます。「セックスを楽しむ」と「性にだらしない」は別モノ!(c)Pedro Ribeiro Simõesハッキリ言って類は排他的で保守的で、「あれするな」「これするなんて信じられない」と否定的なことばっかり言います。こういう男そこら中にいそうだけど、パートナーとしては最悪です。だって、自分を受け入れて、認めてくれる人だからこそ一緒にいたいわけだし、自分をさらけ出す価値があるわけでしょう。いちいち否定されたら萎縮しちゃって何もできなくなってしまう。楽しくない、幸せな気分になれない相手と一緒にいる意味ってありますか?そうしてマキは、パートナーとの関係の築き方を模索していきます。そうそう、問題はきちんと相手と向き合わないといけません。知恵袋に相談するのもいいけど、そこで自分の思いを告げられるなら、パートナーにだって言えるはず。で、全然話を聞いてくれないならおひとりさまを選べばいいんです。それから、「セックスについてフラットに語ること」と「セックスにだらしがないこと」はまったくの別物です。頭が妄想にまみれたおっさんたちは、女が性について語ると、とたんにセクハラしてきたりしますが、こういう勘違いも、性に対して向き合ってこなかったことから起きるのでしょう。作品では繰り返し、性について語ることのメリットと必要性、セックスを楽しむこととだらしない関係でいることは別物だ、ということが語られます。なかなか誤解なく伝えるのが難しそうなテーマだけど、結婚するお友達に教科書としてプレゼントするとかはどうですかね。「イケメンが都合のいいことだけしてくれる」少女漫画とは違い、なかなか考えさせられます。ところで余談ですが、作品中、実際の企業を思わせるブランド名や商品がたくさん出てきます。そのひとつがTENGAですが、ここは取材に行くたびにオナホールを何本もくれるんです。「ありがとうございます!」とか言ってもらってきて、現在うちに6~7本あるんですけど、心底どうしたらいいのか悩んでます。捨てるのはもったいないし、かといって「ねえきみ、独身なの?じゃああげるね」は失礼なような気もするし、「使いたいからクレ」って言われるのも気持ち悪いし……。と書いてみて、ああ自分もぜんぜん性に関してフラットじゃないなと思いました。……ふう。Text/和久井香菜子
2015年09月25日突然ですが、今回は冒頭から、ものすごく答えにくい質問をみなさんにしてみてもいいでしょうか。ずばり、あなたは自分のことを、美人だと思ってますか?それとも、ブスだと思ってますか?ちなみに私は……と、これやっぱりめちゃくちゃ答えにくいですね。実際の回答は、お互い胸の内に秘めておくことにしましょう。(c)美人とは何か?―美意識過剰スパイラル (集英社文庫)さて、こんなことを聞いてみたくなったのは、最近中村うさぎさんの『美意識過剰スパイラル』という本を読んだから。中村うさぎさんといえば、整形手術を何度もくり返して、自分の理想のルックスを手に入れた女性として有名ですよね。そんな中村さんが、女性のモテと美醜の関係について思いの丈を綴ったのが、こちらの本です。とっても面白かったので、自分のルックスについて思うところがある全女性におすすめですよ。でも私は正直、この本に書かれている内容ーー中村さんがそこまで自分の外見に固執した理由がいまいちわからなかったんです。あなたは中村うさぎ派?くらたま派?というのも、おそらく私は『美意識過剰スパイラル』でいうところの、「くらたま派」の女だから。くらたまとはご存知、漫画家の倉田真由美さんのことです。そしてこの、「くらたま派」か「中村うさぎ派」かというのは、わりときれいに一般女性を二分させるんじゃないかと思うんですよね。私はSOLO読者の女性1人1人に、「あなたはくらたま派?中村うさぎ派?」って聞いてまわりたいくらいです。女性向けのファッション誌に載っているモデルと、実際の男性が好む女性像の間に乖離があるということは、昔からよくいわれています。しかし中村うさぎ派は、それを知ってもなお同性である女性に羨望される、自分の理想のルックスを手に入れたいと考え行動します。バービー人形のような顔とスタイルに憧れ、とにかく女にウケることを、女のなかの強者であることを目指すわけです。一方くらたま派は、自分がしたい服装、なりたいスタイルよりも、「実際にまわりの人間から気に入られるかどうか」を重視。「女の評価は男が決める」――くらたまさんがいうほど私は過激な考えを持っているわけではないのですが、自分の服選びの基準として、「どうせウケるんなら女より男がいーや」という下心があることは、これを機に正直に告白しておいてもいいでしょう。明日、クツのなかに画鋲が入ったりしていませんように。統計をとったわけではありませんが、整形手術をくり返すまでに過剰に自分のルックスに固執する女性は中村うさぎ派が多いのではないかと思います。確かに、バリバリのキャリアウーマンでも、白金に住むセレブ妻でも、他人に「でもブスじゃん」といわれてしまうと、ちょっと弱い。本来は別に人になんていわれようと知ったこっちゃないのだけど、中村うさぎ派はこの「でもブスじゃん」スパイラルに絡め取られ、症状が悪化すると身動きが取れなくなります。逆に「くらたま派」、男ウケを突き詰めると、結婚詐欺で多数の男性を手玉にとった稀代の悪女・木嶋佳苗被告のようになるでしょう。くらたま派は現実の世界でウケていれば実際の自分のルックスはどうでもよくなるので、「でもブスじゃん」攻撃があまり効きません。それはある意味幸せ者といえるのかもしれないけど、でもどうなんでしょうね、まわりの女性から置いてきぼりをくらうの、私はちょっとイヤだなあ。何事もニュートラルに。いちばんラクなのは中庸であること(c)martinak15男性からモテることも、女性から羨望の眼差しを受けることも、どちらも「他人からの欲望をかき集めたい」という根本に、変わりはありません。ただ、私自身の自意識の変遷をよーく思い出してたどってみると、大学生のときくらいまでは中村うさぎ派だったような気がするんですよね。おそらく、私よりももっと早い時期、高校生や中学生の段階で中村うさぎ派からくらたま派に移行した女性もいるのではないかと思うのですが、要はくらたま派というのは現世利益主義なのです。女性からの羨望をかき集めてもなんにもならない(と、私は思う)けど、男性からモテるとそこから恋愛できたり、結婚できたりします。「汚れてしまった……」なんていうといささか話が大きくなりすぎますが、成長する過程で理想よりも現実を追い求めるようになった女性は、けっこう多いのではないかと推測します。聖なる中村うさぎ派と、俗なるくらたま派。「清濁併せ呑む」という表現がありますが、おそらく中村うさぎ派とくらたま派の中間くらいにいるのが、精神的にいちばんラクです。特にこだわりがない女性はそこに落ち着くのがいいのではないか、というのが私の持論なのですが、いかがでしょうか。しかし、俗なるくらたま派としては、いつまでも聖なるものを追い求める中村うさぎ派の女性を目の当たりにすると、自分の過ぎ去りし過去を思い起こしてしまうような、軽蔑とも羨望ともつかない不思議な感情を抱いてしまいます。聖なる中村うさぎ派の目に、俗なるくらたま派はどう映るのか。今度、女友達に中村うさぎ派を見つけたら、腹を割って話してみたいなあと思っています。Text/チェコ好き
2015年09月24日