生命保険の被保険者が殺人・他殺で死亡したら保険金は支払われる?

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殺人事件で被保険者が亡くなった場合、生命保険の保険金は支払われます。しかし、生命保険の契約者や受取人が殺人事件に関わっている場合は、保険金は支払われません。今回、他殺以外でも保険金が支払われない場合や生命保険金殺人の量刑などについても解説していきます。

生命保険の被保険者が殺された場合、保険金は支払われる?

内容をまとめると

  1. 他殺でも、契約者や受取人が犯行に関係していなければ保険金は支払われる
  2. 契約者や受取人が犯行に関係していれば、目的に関係なく保険金は支払われない
  3. 他殺以外でも、自殺や災害などの場合、保険金が支払われない可能性がある
  4. 日本でも、様々な保険金目的の殺人事件が実際に起きている
  5. 金銭が絡む保険金目的の殺人事件は、無期懲役や死刑になる可能性が高い


被保険者が殺人事件の被害者になってしまった場合、受取人は生命保険の保険金を受け取ることはできるのでしょうか。

ここでは、

  • 保険金目当てではない殺人の場合
  • 団体信用生命保険は、殺人の被害者でも対象となるか
  • 殺人では保険金が受け取れない理由

について、詳しく解説していきます。


被保険者が他殺であっても、保険金が支払われる可能性はありますが、殺人の犯行目的犯人と被保険者の関係によって、支払われるかどうかが決まります。

保険金目当ての他殺でなければ、保険金は支払われる?

殺人により被保険者が死亡した場合でも、

  • 保険金目当ての殺人でない
  • 契約者や受取人が事件に関わっていない

であれば、保険金は支払われます。


しかし、殺人事件の場合は警察や保険会社が調査し、事件に関わっていないという事がはっきりわかるまで保険金は支払われません。


契約者や受取人が事件に関わっている場合は、保険金は支払われません。この場合、殺人の理由は関係ありません。


例えば、保険金目当てではなく別の理由で被保険者を殺害してしまった場合も、契約者が殺人に関わっているので、保険金は支払われません。


もし保険金を受け取った後に殺人だったと判明した場合は、保険会社から保険金の返還請求をされます。


また、受取人が殺人を犯しても他にも受取人がいる場合は、事件に関与していない受取人が保険金を請求することも可能です。

団体信用生命保険は殺人でも保険金はおりる?

団体信用生命保険の場合も上記と同じように、

  • 保険金目当ての殺人でない
  • 契約者や受取人が事件に関わっていない

であれば、殺人により被保険者が死亡しても保険金は支払われます。


団体信用生命保険とは、住宅ローンを組む際に加入する生命保険の事で、「団信」とも呼ばれます。


この保険に加入していれば、住宅ローンを組んだ後に万が一契約者が死亡した場合や高度障害状態になった場合、住宅ローン残高と同じ金額の保険金が受け取れます。


それが、そのまま住宅ローンの返済にあてられますので、被保険者が亡くなった後は住宅ローンの支払いが不要となる仕組みになっています


保険金目当ての殺人では、もちろん保険金は支払われませんが、殺人未遂の場合も、例え高度障害状態になったとしても保険金は支払われず、そのまま契約解除となります。

なぜ殺人では生命保険の保険金が受け取れないのか

不正に保険金を受け取ることが目的の場合、契約者と保険会社の関係性は公平とは言えませんので、保険金は受け取れません。


生命保険を悪用し、不正に保険金を受け取ろうとする行為を「モラルリスク」といいます。


保険金目的の殺人の場合、あらかじめ多額の保険金をかけておき、犯行後に受け取ることを目的としています。これは明らかに不正行為であり、そのようなことが可能になってしまえば、保険会社の経営は危うくなり、保険会社の信頼も落ちてしまいます。  


このようなモラルリスクに対応するため、保険会社も殺人の場合は保険金がおりないようにしています。


また、保険金目的の殺人を見逃さないように生命保険協会は警察との連携し、モラルリスク対策を強化しています


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殺人(他殺)の他に、生命保険の保険金が受け取れない場合とは?

保険金目的の殺人以外にも保険金が受け取れないがあ可能性があります。


自殺

契約してすぐに被保険者が自殺した場合、保険金は支払われません。支払われない期間は、1~2年が多く、保険会社によって異なります。


死刑

被保険者が犯罪を起こし死刑になった場合、保険金は支払われません。


戦争

戦争の場合、減額になるか支払われないかは、被保険者の死亡者数によって決まります。


故意の過失

被保険者が死亡する可能性があると知りながら故意に行動した場合、保険金は支払われません。


告知義務違反

告知していた内容が、正確ではなく虚偽の申告をしていた場合、保険金は支払われません。例えば、病気であるのを隠して保険に加入し、その病気が原因で死亡した場合は保険金は支払われません。


約款違反

契約する時にもらう約款に書かれている内容に違反した場合は、保険金は支払われません。

日本での保険金殺人の実態とは?


日本でも、保険金目的の殺人事件は実際に起きています。

「夕張保険金殺人事件」は、1943年に北海道夕張市で起きた生命保険と火災保険の保険金を目的の放火殺人事件です。この事件の首謀者は、社長とその妻の夫婦でした。
従業員の宿舎で火災が発生し、この火災で従業員やその家族を含む6人が亡くなり、1人が重症を負いました。また、消火活動をしていた消防士1人もこの火災で亡くなっています。
この時、夫婦は従業員にかけていた火災保険と生命保険の保険金、合計1億3,800万円を受け取っています。
実行犯は別にいましたが、首謀者としてこの夫婦には死刑判決が言い渡されました。

この他にも様々な保険金目的の殺人事件が起きており、ここでは、

  • 日本初の保険金殺人事件
  • 女性による保険金殺人事件
  • 被害者が子供の事件

について、解説していきます。

日本初の保険金殺人は?

日本で初めて起きた保険金目的の殺人事件は、1935年に起きた日大生が被害者となった事件です。


当初は強盗殺人事件とされましたが、不審な点がいくつもあったため、警察の調べにより強盗殺人ではなく父親主導による保険金目的の殺人だったという事がわかりました。


実際の犯行に及んだのは母親であり、長女も手伝ったとされています。


長男には3社の生命保険がかけられており、受け取った保険金の合計金額は、66,000円でした。この金額は、現在の価値で考えるとおよそ1億数千万円にもなります。


その当時は生命保険の加入は珍しく、お金持ちの人しか加入することはできませんでした。また、この家族も長男以外の他の家族には生命保険はかけられていませんでした。

女による保険金殺人の例とは?

実際にあった女性による保険金目的の殺人事件は、以下のような内容でした。


北九州保険金殺人事件

2005年福岡県北九州市で起きた事件です。犯行は被害者の妻によるものでした。


女性が運転している車が、車ごと岸壁から転落する事故が起こりました。この事故で、運転している女性は無事脱出しましたが、助手席にいた男性はそのまま死亡しました。男性は、その後体内から睡眠導入剤が検出され、保険金殺人の可能性が浮上しました。

男性には、総額1億3,000万円の生命保険がかけられており、その内5,000万円は事故の11日前にかけられたものでした。


久留米看護師連続保険金殺人事件

1998年看護学校の同級生だった4人で犯行に及びました。2件の保険金殺人を行い、合計約6,800万円の保険金を受け取っていました。


主犯格の女性は、他にもいくつか犯罪を犯しており、殺人・詐欺罪などに問われ、死刑判決が下されました。

子供が被害者の保険金殺人の例とは?

残念なことに、子供が被害者となってしまった保険金殺人事件も起きています。


1990年、父親が次女を殺害し遺体を遺棄した事件で、保険金2,000万円を借金の返済に利用するため計画された犯行だという事がわかりました。事件後、保険金目的だということが判明し、保険金の受け取りは未遂に終わりました。


1998年には、母親が愛人と共謀して、次男に睡眠導入剤を服用させた後、海で溺死させる事件が起こりました。次男には生命保険が3,500万円かけられていましたが、保険金の受け取りは未遂に終わりました。


2000年には、母親が入院している長女を薬物で殺害し、保険金3,000 万円を受け取る計画を立てていましたが、殺人・保険金の受け取り共に未遂に終わりました。

保険金殺人はバレない?


保険金殺人は、バレやすくまず成功しないと言って良いでしょう。


その理由は保険金殺人の場合、犯人や共謀者が契約者受取人になっている必要があるからです。

さらに、保険金額が資産や収入に対して不自然に高額である場合は、特に注目されやすく、疑われやすいと言えます。


また、刑事裁判で無罪となった場合でも、保険会社が保険金の支払いを拒否する場合があります。受取人が保険金を請求するため民事裁判を起こしても、証拠優越が原則の民事裁判では保険金殺人と認められ、例え刑事裁判で無罪だったとしても保険金がおりないという事もあります。

保険金殺人の量刑とは?


保険金目的の殺人の場合、量刑は無期懲役死刑になる可能性があります。

 

量刑とは、裁判所が犯人の刑を決めることを言います。

殺人事件の場合、刑の種類には

  • 死刑
  • 無期懲役
  • 有期懲役(懲役期間は5年~20年)
があります。

同じ内容の犯罪を犯しても、同じ刑になるとは限りません。様々な事情を考慮し、刑の種類や懲役の長さなどが決定されます。


保険金目的の殺人のような「金銭が絡む殺人事件」は、極刑になる場合が多いです。

金銭が絡む殺人事件は、他には債務を免れるための殺人や身代金目的の誘拐殺人などがあります。


平成8年 犯罪白書」によれば、身代金が目的の誘拐殺人は、7人中4人が死刑判決となり、残りの3人は無期懲役となっています。

死刑になる可能性は?

保険金目的の殺人事件では、死刑になる可能性も十分あります


上記でも参考にした「平成8年 犯罪白書」によると、保険金目的で殺人を犯した18人中、7人が死刑となっています。

この数字から、全ての殺人の中でも保険金目的の殺人は死刑判決になる可能性が比較的高い方だという事がわかります。


死刑にならなかった残りの11人も、無期懲役となっています。


また、被害者の人数が少ないからといって刑が軽くなることはありません。例え被害者が1人でも保険金目的の殺人事件の場合は、死刑となる可能性が十分にあります


保険金を不正に受け取ることを目的とした殺人は、殺人罪に加え「保険金詐欺」の要素も含まれますので、より悪質性が高くなり刑が重くなります。保険金を受け取った場合は詐欺罪、保険金を受け取れなかった場合も詐欺未遂罪に問われます。

まとめ:保険金目当ての殺人でなければ、基本的には保険金は支払われる


この記事では、「被保険者が殺人で死亡した場合、保険金は受け取れるのか」について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。


この記事のポイントは、

  • 他殺でも、契約者や受取人が犯行に関係していなければ保険金は支払われる
  • 契約者や受取人が犯行に関係していれば、目的に関係なく保険金は支払われない
  • 他殺以外でも、自殺や災害などの場合、保険金が支払われない可能性がある
  • 日本でも、様々な保険金目的の殺人事件が実際に起きている
  • 金銭が絡む保険金目的の殺人事件は、被害者の人数は関係なく無期懲役や死刑になる可能性が高い

でした。


保険金の契約者や受取人は、被保険者の家族がなることが多いでしょう。


殺人事件に一切関係していなければ、保険金の契約者や受取人も大切な人を亡くした言わば被害者です。


事件となれば、保険金を受け取るまでに通常より期間がかかってしまうかもしれませんが、保険金を受け取る義務は変わらずありますので、安心しましょう。

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