生命保険の差押とは?差し押さえ回避の方法や入院給付金などが差押になるか解説

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生命保険が差押えの対象になることをご存知でしたか?解約返戻金や給付金のある生命保険は差押えの優先順位も高いので、差し押さえられる可能性も高まります。ここでは、生命保険が差押えになる理由や、差し押さえにならない保険、差押えを回避や解除する方法について紹介します。

そもそも差し押さえとはどういうこと?

内容をまとめると

  1. 終身保険など解約返戻金や満期金のある生命保険は差押さえの対象になる 
  2. 公的年金や健康保険からの給付金は差し押さえにはならない  
  3. 掛け捨ての保険は資産価値が認められないので、加入し続けられる 
  4. 返済すれば、差押さえは解除になる 
  5. どうしても返済が難しいときは、介入権制度を利用したり、弁護士に相談したりすることが重要


差し押さえ」とは、個人の持っている財産の処分を国によって禁止されることです。


借金などの債務がある人(債務者といいます)が債務の返済をしなかった場合、お金を貸している人(債権者といいます)が強制的に債務者が持っている換金性の高い財産を差し押さえて、取り立てることができるのです。


そして、その決定や命令は裁判所から出されます。


差押さえられるものはさまざまですが、たとえば税金を滞納している場合、会社員であれば給与や銀行口座などが対象です。


また、生命保険などの解約返戻金も差押さえられます。


住宅ローンの返済が滞った時は、金融機関から督促状が届き、それでも返済できないと、不動産が競売にかけられたりします。

生命保険は、差し押さえや強制執行の対象?判例はある?


生命保険は平成11年の最高裁判所の判決で、差し押さえの対象になることが認められました。


それまでは、生命保険を差押さえられるかどうかについて、明確な方針はなかったのですが、現在は解約返戻金については取り立て対象であるとの見解が出されています。


つまり、債務者が生命保険に加入しており、その保険に解約返戻金がある場合は、債権者が解約返戻金を差押さえた上で、解約返戻金を債権者に返済することができるのです。


また、解約返戻金だけでなく、満期金や配当金がある場合も同様に差押さえ対象となります。


これらは債務者の預貯金と同様、特別に取り立て項目から除外する理由が見当たらないということで、差押さえ項目の代表的なものとして挙げられています。

なぜ、生命保険が差し押さえの対象になるの?

では、なぜ生命保険が差し押さえの対象になるのでしょうか。


それには、以下のような理由があります。

  • 預貯金と同様の資産価値がある
  • 保険を解約して、解約返戻金などを受け取ることで、債務の返済に充てられる

生命保険には「生活保障」の面がありますが、同時に「投資対象」としての側面もあります。


そして現在においては、運用利率などを重視する投資対象としての側面が強く出ていますね。


そして、生命保険に加入しておくことで経済的利益を受けることも多々あります。


その利益が決して少なくないことを考えると、生命保険には現金などと同じような資産価値があり、解約返戻金などもそれなりに受け取れると認識されているのです。


このような理由によって、生命保険も差し押さえの対象になります。

生命保険の解約返戻金以外の差し押さえの対象は?入院給付金や死亡保険金も対象?

生命保険における解約返戻金以外でも、差し押さえの対象になるものがあります。


たとえば、以下のものは差し押さえられます。

  • 配当金
  • 満期金
  • 入院給付金
  • 死亡保険金など

理由として、これらは受給のタイミングによっては、かなり金額が大きくなる場合があるからです。


特に生命保険などで満期を迎えた場合、契約にもよりますが数百万円という満期金が受け取れる場合があります。


配当金なども、運用利率などをもとにして、高額になることも考えられるため、解約返戻金と同様、資産価値があるとして差し押さえ対象となるのです。


ただし、入院給付金死亡保険金などに関しては、債務者が被保険者でないと、債権者は回収できません。


保険の契約上、被保険者に給付金などの受給資格があるため、被保険者と保険契約者が同一の場合のみ、差押さえできることになります。

生命保険の中でも差し押さえの対象にならない保険はあるの?


一方で、生命保険の中でも差し押さえの対象にならない保険も存在しています。


それは、掛け捨ての生命保険です。


掛け捨ての生命保険は、生活保障の面が強く、安い保険料で、ケガや入院、万一のことがあった場合には充実した保障が受けられます。


しかし、保険料が安い分、基本的に解約返戻金がないか、あってもかなり低く抑えられています。


そのため、差し押さえてすぐに現金化することで返済を回収したい債権者にすれば、解約返戻金のない掛け捨て型の保険には資産価値がありません。


満期金などがある積立型の生命保険は、解約することですぐに現金化できるので差し押さえても効果があるのですが、掛け捨ての生命保険ではそれができないので、差し押さえ対象から外れています。

生命保険以外の保険で、差し押さえの対象になる保険はあるの?


生命保険以外の保険で、差し押さえの対象になる保険もあります。


たとえば、個人が任意で加入できる個人年金型保険などは差し押さえの対象です。


特に、積立型の保険であれば、解約返戻金が発生するので、それが差し押さえられるわけです。


これは、さきほど解説した生命保険の解約返戻金と同様の理由で対象となります。


ただし、公的年金は差し押さえ対象外です。


国民が必要最低限の生活を送る権利が法律で保障されているので、それを支える公的年金を差し押さえることは法に触れることになるからです。


公的年金だけでは足りないかもしれない、という理由で、独自に加入している個人年金型保険などは余剰分として考えられるため、万一のときは差し押さえられます。


国税庁:財産の差押え

差し押さえが禁止されることはないの?


このように生命保険などの解約返戻金や満期金などは差押さえの代表的なものとして挙げられますが、一方で差押さえが禁止されているものがあります。


それは、公的年金や社会保険における給付金です。


たとえば、以下のようなものは差押さえが禁止されています。

  • 高額療養費
  • 傷病手当金などの健康保険からの給付金
  • 生活保護費
  • 児童手当
  • 障害者給付など

これらは「差押え禁止財産」として法律で規定されています。


最低限の生活を保障するために国から支給されているものになるので、これらを差押さえることは違法行為に当たります。


一方で、個人で加入する生命保険などは、日常生活をよりよくするための補完的な意味合いが強いため、差押さえ対象として認められているのです。

生命保険差し押さえ回避の方法はあるの?


生命保険、特に貯蓄性の高いタイプは資産と認められるため、差し押さえの対象になることがわかりました。


しかし、せっかく加入した生命保険を差し押さえられたら辛いですよね。


そこで次は、生命保険の差し押さえを回避する方法について、

  • いったん解約して、別の掛け捨て保険に加入する
  • 名義変更で、生命保険の差し押さえが回避できるかどうか
以上のことを解説します。

これによって、多少損することはあっても、差し押さえを回避することが可能になります。

もちろん名義変更に関しては注意が必要なので、その点も踏まえて、ぜひご覧ください。

自主解約して滞納した税金や借金を払い、掛け捨ての保険に入る

生命保険の差し押さえを回避するには、加入している生命保険を自主的に解約して、それによって戻ってきた解約返戻金で滞納している税金や借金を払うといいでしょう。


そして、改めて自分では掛け捨ての保険に入ってください。


生命保険には、大きく分けて2つのタイプがあります。


満期金や解約返戻金がもらえる貯蓄型の保険と、定期保険のような貯蓄性のない掛け捨て保険です。


掛け捨て型の保険には資産価値がないと判断されるため、いざというときに差し押さえられず加入し続けることができます。


終身保険などは保険料も高く、積立金や解約返戻金が多いのが特徴です。


そのため資産と判断されますので、差し押さえられる前に解約して、掛け捨て型の保険に加入しなおしてください。


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(参考)差し押さえ前に、生命保険の受取人を名義変更すればどうなるのか?

保険契約者と被保険者が同一人物であれば、生命保険は差し押さえの対象になるとさきほど紹介しました。


では、もし差し押さえられる前に、生命保険の名義変更をした場合、どうなるのでしょうか。


この場合、基本的には差し押さえにはなりません。


債権者も、保険の名義をさかのぼって確認するまではしないでしょう。


ただし、資産を隠すために名義変更した場合は、別途訴訟の可能性があります。


債権者には「詐害行為取消権 (さがいこういとりけしけん)」という権利が認められているからです。


これは債務者が一定の要件に当てはまる行為をしたときに、債権者がこの行為を取り消すことができる権利で、民法424条以下で定められています。


これに該当すると判断されたら、訴えられるかもしれませんので注意が必要です。

生命保険を差し押さえられたらどうすべき?


生命保険を差し押さえられたときに取れる行動には、どのようなものがあるのでしょうか。


解約されて無保険期間が発生したり、家族の大黒柱である保険契約者に何かあったとき、残された家族は生活に困ることになります。


そこで、生命保険の差し押さえに対処する方法として、

  • 差し押さえを解除するための方法
  • 介入権を行使する
  • 失効中の生命保険の扱い

以上について、解説します。


基本的には返済をしっかり行うことが重要ですが、どうしても無理なときの対処法を知っておきましょう。

差し押さえは解除できるの?

差し押さえを解除する最善の方法は、借金や債務をしっかり返済することです。


返済が滞っているために差し押さえられているわけですから、返済に応じれば解除してもらえます。


ただし、状況によっては分割での返済が不可能な場合もありますから、家族や親戚から借りるなどして、一括で返済することを考えましょう。


どうしてもそれが難しい場合は、弁護士に相談して債務整理の交渉を頼む方法もあります。


自己破産や、弁護士と相談して個人の借金の減額を、裁判所を通じて行う個人再生が利用できるかもしれません。


もちろん、借りたお金をしっかり返すという意思表示をして、返済していくことが大切です。


しかし、すぐに返済ができない場合やまとまった資金の準備が困難なときは、弁護士などに相談してみましょう。

介入権制度を使って対応することもできる

生命保険が差押さえられたら、「介入権」制度を使って対応することも可能です。


「介入権」とは、債権のある第三者によって保険を解約されそうになったとき、被保険者が高齢であるなどの理由で別の保険への再加入が難しいときに使える権利です。


保険が解約され、無保険の期間に保険契約者に万一のことがあれば、残された家族の生活保障がなされません。


誰でも「最低限の生活をする権利」が保障されているので、介入権を使うと、保険解約をストップできるのです。


ただし、このまま放っておくと、第三者への返済が止まってしまいます。


ですから、第三者が保険を解約しようとして保険会社に通知してから1か月以内に、解約返戻金と同額を第三者に支払うことで、保険の解約を止めることができます。

(参考)失効した生命保険を差し押さえされたら?

失効している生命保険を差押さえられたときはどうなるのでしょうか。


失効とは、保険料の払込ができておらず、払込猶予期間を過ぎても未払いのままにしておくと、万一のときに保険金や給付金が受け取れなくなることをいいます。


失効中の保険については、差し押さえられたあとに、解約される可能性があります。


その際、解約返戻金が受け取れれば、その中から未払い分の保険料が差し引かれ、残った分が差し押さえの対象となります。

まとめ 生命保険は差し押さえの対象 差し押さえられる前に介入権制度などで支払の方法を考えよう



生命保険が差し押さえられた場合について紹介しましたが、いかがでしたか。

この記事のポイントは、
  • 終身保険など解約返戻金や満期金のある生命保険は差し押さえの対象になる
  • 公的年金や健康保険からの給付金は差し押さえにはならない
  • 掛け捨ての保険は資産価値が認められないので、加入し続けられる
  • 返済すれば、差し押さえは解除になる
  • どうしても返済が難しいときは、介入権制度を利用したり、弁護士に相談したりする
でした。

借りたお金は、当然しっかり返済しなくてはいけません。

しかし、返済するつもりでいたとしても、資金繰りが苦しくてできないときもありますね。

貯蓄性の高い生命保険は差押さえの対象になりますから、その前に解約して少しでも返済したり、介入権を行使して、生活を維持できるように考えてください。

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