Adobe Systemsは「Flash Runtime 17 and more!」において、「Adobe Flash Player 17」および「Adobe AIR 17」の公開を伝えるとともに、特に今回のバージョンで注目される新機能を紹介した。「Adobe Flash Player 17」および「Adobe AIR 17」にはバグ修正のほか、開発コミュニティから要望の多かった機能が実装されており、注目度の高いバージョンとなっている。「Adobe Flash Player 17」および「Adobe AIR 17」における主な新機能や改善点は次のとおり。Flash Playerコントロールパネルの改善Flash Player Macインストーラの改善ADTパッケージ時間の向上(iOS向けでは並列コンパイルを実現)AIRにおいてVideoTexture APIをサポート(Windows版、Mac版、iOS版)AIRにおけるVideoTexture APIのサポートはこれまでAIRデベロッパから要望が高かった機能だけに、今回のリリースはAIRでアプリを開発しているデベロッパにとって嬉しいリリースと言える。「Flash Runtime 17 and more!」のページには、iOSでVideoTexture APIを使った様子が動画で公開されている。今回のバージョンではAndroidにおけるVideoTexture APIのサポートは見送られており、今後対応するとしている。
2015年03月16日17歳の少女はめまぐるしく表情を変えていく。朝8時にTVをつければNHK連続テレビ小説「あまちゃん」で、ヒロインとは対照的なアイドル志望の美少女を演じ、お茶の間でも人気沸騰中の彼女の姿を見ることができる。一方で、昨年までは「血糊が似合う顔なので…(苦笑)」と語るように、貞子役を始め数々のホラー・サスペンスに出演し、触れれば切れるようなミステリアスな美しさを見せつけたほか、『桐島、部活やめるってよ』、『ツナグ』ではいまどきの女子高生を体現。特に『ツナグ』では感情のリミッターを振り切ったような慟哭シーンで観客の心を奪った。作品ごとに観る者に強烈な印象を植え付けながらも、そのイメージに落ち着くことなく変化を続ける橋本愛。そんな彼女がまた新たな一面を見せてくれるのがまもなく公開となる映画『くちづけ』である。本作にも出演している宅間孝行が自ら率いる劇団でかつて上演し、涙なしでは見られないと話題を呼んだ舞台に堤幸彦監督が惚れ込み映画化。知的障害を抱える主人公(貫地谷しほり)とその父親(竹中直人)の深い愛情の物語が彼らの哀しい選択と共に綴られる。「商業映画でオブラートに包んでしまいそうなところを露呈させた脚本で、宅間さんの檻をぶち破るような精神が『好きだな』と思いました。叩かれにくいものを出せばダメージは少ないけど、やっぱり大胆に出さなきゃ伝えたいことは伝わらないから」と橋本さんは物語が問いかけるメッセージに共鳴した。彼女が演じたのは、知的障害者たちが暮らす自立支援ホーム「ひまわり荘」を運営する医師・国村の娘・はるか。幼い頃より住人たちと共に生活してきたため彼らへの偏見は一切なく、一緒に笑い、泣き、そして時に厳しく叱り飛ばす。橋本さんが演じる上で何より重要視したのは、障害者たちの中でごく普通の女子高生として生活するはるかの“立ち位置”だった。「はるかがひまわり荘、この物語にいる意味は何なのか?単に元気で明るい女の子ではなく、彼女のうーやん(宅間さん)たち障害者との接し方はどういう形であるべきなのか?純粋で彼らへの偏見がなくて…というのはもちろんそうなんですが、時に母親や姉のようであったり、そうかと思えば彼らと一緒に子どものようであったり。シーンごとに相手との関係性というのを意識してました」。「涙が止まらない!」という感想がクローズアップされがちの本作だが、涙と同じかそれ以上に笑いが散りばめられた作品でもある。個性的なひまわり荘の住人たちが引き起こす様々な事件がクスリとではなく、ドカンと笑いを誘うことは必至!この笑いの深さが結末へと繋がる悲しみややるせなさをより一層、浮き彫りにする。そんな笑いのシーンにおける橋本さんの貢献度は半端ではない。うーやんがボケるたびに絶妙のタイミングと勢いでツッコみ、26歳も年上の宅間さんの頭を驚くほどの強さでビシバシとどついていく。コメディにおける魅力を見事に開花させたように思えるが…。「そう言っていただけるとすごく嬉しいんですが、いまだにコメディは苦手なんですよね(苦笑)。今回の笑いのシーンに関しては、はるかは常に本気なんです。真剣に怒ってどついてる。だから私自身、ツッコミのタイミングとかどうやったら面白いか?というのを意識することなく愛情を持って本気でやってました。多分、そのスタンスがよかったんだと思います。笑わそうとするのではなく、後から笑いがついて来たというのは嬉しいです」。「あまちゃん」でもこれぞ宮藤官九郎作品!というべき笑いが随所に見られるが、本人曰く「苦戦中です…」とのこと。「脚本を読むと『これは絶対面白い!』って笑っちゃうんですが、全然自分のものにならないんです(苦笑)。共演者のみなさんが凄すぎて…見ている側がいいなぁって思いつつ…。やっぱり意識したらできないし、かと言って無意識に天然でできるほどのセンスもないので、後は自分を捨てて役になりきるしかないなって感じでやってます」。笑いに加え、『くちづけ』でも橋本さんは『ツナグ』を彷彿とさせるような号泣する姿を披露している。2時間の映画で描かれるのは、ひまわり荘におけるほんの一時期の時間だが、泣きじゃくる橋本さんの姿は、背後に存在する彼女と住人たちの長きにわたる時間、様々な思い出をしっかりと感じさせる。だがこのシーンに関しても橋本さんは「全然、うまくいかなくて…」と反省しきり。「号泣なのに、うまく涙が出てこなくて何度もリテイクを重ねました。途中で『目薬使う?』って言われて、素直に使えばいいのに『はい』と言えずに『もう1回だけやらせてください!』って繰り返して。終わってから監督に慰められて涙が出そうになりましたね(笑)」。「『ツナグ』の号泣シーンで初めて“自分がゼロになる”という感覚を知った」と語る橋本さん。その感覚を今回の現場では「見失ってしまった」とも。「『ツナグ』でできたことで、恐怖がなくなったというか…自信と言えなくもないんですが、これまでみたいに『できる、できる。大丈夫!』って自分に無理やり言い聞かせなくても、やれるようになってきてたんですね。だから今回の号泣シーンも『感情を込めて演じればやれる!』って思ってた。そしたら見事にできなくて(苦笑)。でもいまになって考えると、できなくてよかったなと。『ツナグ』で自分が“無”になる瞬間を感じられたことに意味があって、今回、それができなくなったことにも意味があると思う。『こなしたくない』という気持ちが強いので、うまくいかないのが楽しいですよ」。最後にもう一つ。インタビューや舞台挨拶で彼女が口にする言葉の一つ一つは、17歳とは思えない独特のユーモアと鋭さをもって人々の心に染み込んでくる。「新人賞」を授賞したある表彰式では、これまでの自身について「活躍しているフリをしてた」と言ってのけ、「(去年)やっと子宮から出てきた、まだ生まれて一年も経ってない赤ん坊です」と語った。この日のインタビューでもセットが与えた影響の大きさについて語る際に、こちらの「現場の空気感」という言葉に対し「空気感じゃなくて空気そのもの。撮影所の空気じゃなくてひまわり荘の酸素がそこにあって、呼吸できたんです」と鋭い言語感覚の一端を垣間見せた。「何でしょうね…(笑)?スルッと出てきたものを周りが面白がっていて、『不思議だな』と思うことは時々あります。授賞式のときは、本当に昨年、私を女優として産んでくれた方々がいて、そのときの苦しさや、やっと出てこられたという思いを含めて感謝の気持ちを伝えたいって思ったらああなりました。伝えたい感情が自分の中にあって、それをどうしたら一番伝わるのかって考えて、考えて…ポロっと出てくるような感じです。言葉って怖いし厄介だけど、でもやっぱり表現者として思いを伝えたいという意思は強く持ってます」。本作に「あまちゃん」、さらに続く様々な作品を経て1年後、数年後、彼女は自らの現状をどんな言葉で表現してくれるだろう?楽しみに待ちたい。(photo / text:Naoki Kurozu)■関連作品:くちづけ 2013年5月25日より全国にて公開(C) 2013「くちづけ」製作委員会
2013年05月21日故デニス・ホッパーの息子ヘンリー・ホッパーが少女に対するレイプ行為の容疑で訴えられた。昨年末に公開されたガス・ヴァン・サント監督『永遠の僕たち』での好演が記憶に新しい新進俳優である21歳のヘンリーだが、カリフォルニア州ベニス・ビーチの自宅に当時15歳の少女を連れ込み、アルコールとドラッグで酩酊させた後、性的暴行に及んだとされている。ゴシップサイト「TMZ.com」によれば、現在16歳となる少女の母親が提出した訴状には、少女とヘンリーがFacebookを通じて数か月にわたりメッセージ交換を続けた後、自宅に連れ込んだヘンリーが「性交、オーラルセックス、ソドミーを含む性的暴行を少女に加えた」と記されているという。昨年2月に共通の友人を介して紹介されて以来、少女はヘンリーの自宅を数回訪れていたようだ。少女側の弁護士は、ヘンリーが「繊細な若い子供の好意を利用して、アルコールと違法ドラッグを餌に自宅に連れ込み、若く傷つきやすい少女を繰り返し利用した」と強く非難している。この件について、少女の母親は損害賠償と少女の精神的トラウマに対する治療を求めているという。ただ本件の被害届けが警察に提出されているかは分かっていない。■関連作品:永遠の僕たち 2011年12月23日よりTOHOシネマズシャンテ、シネマライズほか全国にて順次公開
2012年08月02日来る5月17日は「高血圧の日」。世界の高血圧専門家で結成された高血圧を乗り切るためのキャンペーン「 Power Over Pressure(パワー・オーバー・プレッシャー)」のチームは、約4500人の高血圧患者の実態調査を行った。啓蒙活動の一環として行われた同調査は、調査会社ハリス・インタラクティブによるもの。日本を含む世界8カ国の高血圧と治療抵抗性高血圧患者が対象だ。その結果によると、日本の治療抵抗性高血圧の患者の92%が健康への悪影響を懸念しており、高血圧が精神的な負担となっていると答えた患者が86%に達した。また、85%が高血圧が気分に悪影響を、79%が仕事や作業能力に悪影響を及ぼすと感じていることが判明。高血圧により、脳卒中が引き起こされることを懸念している人は50%、死期が早まるのではないかと心配している人も38%いた。日本高血圧学会理事長の島田和幸氏(小山市民病院院長)は、「日本でも、血圧コントロールができないストレスが、患者の日常生活全般に深刻な影響を及ぼしていることがわかった」とコメント。また、治療方針に従って高血圧に立ち向かうべく努力していても改善が見られない治療抵抗性高血圧の患者の声に耳をもっと傾け、専門の医師が、各個人に適したよりきめ細やかな治療方針を決めていくことが患者のQOL向上のために必要とされていると述べた。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年04月24日IMF(国際通貨基金)は4月17日に、2012年1月に発表した世界経済見通しを改定し、「世界経済が急激に減速する恐れは弱まった」ことなどを背景に、2012年の世界の成長率予想を3.5%(1月時点3.3%)、2013年を4.1%(同3.9%)とそれぞれ上方修正しました。IMFは今回の見通しで、米国で景気回復の勢いが増しており、欧州の債務危機が和らぐ中、世界経済の成長は緩やかに改善しつつあるとの見方を示しました。ただし、改善の足取りは極めて弱く、リスクは依然として高いとも指摘しており、欧州の債務危機が再燃したり、地政学リスクの高まりなどを受けて、原油価格が急騰すれば、世界経済の成長への回復が損なわれかねないとしています。こうした見通しの中で焦点となっているユーロ圏については、2012年が「緩やかな景気後退局面にある」との見方を変えなかったものの、ドイツやフランスの経済がやや上向く見込みであることを織り込み、前回の見通しを小幅に引き上げました。また、米国については堅調な景気の改善を、日本については復興需要による押し上げ効果などを背景に、それぞれの成長率予想を引き上げました。その結果、先進国全体では、2012年~2013年の成長率が平均1.7%と、1月時点の平均1.5%を僅かに上回りました。新興国については、金融および経済政策の一層の緩和と世界経済の回復などに伴なう外需の改善を背景に、2012年の減速の後、2013年の成長率は6%台まで再加速すると予想しています。新興国の大国、中国については、中間所得層の拡大に伴なう消費の伸びが輸出減速を補う形で成長を後押しすると分析し、2012年成長率予想を8.2%、2013年を8.8%と見込んでいます。世界経済の先行きについては、IMFが指摘するリスク要因などを注視していく必要がありますが、全体として経済成長率の見通しの改善は金融市場において世界景気回復に対する投資家の自信を強めることにつながるものと期待されます。(※上記は過去のものおよび予想であり、将来の運用成果等を約束するものではありません。)(2012年4月18日 日興アセットマネジメント作成)●日興アセットマネジメントが提供する、マーケットの旬な話題が楽に読める「楽読」からの転載です。→「楽読」【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年04月19日17歳というと、青春を象徴するお年頃。そのせいか映画でも、この年齢の主人公が少なくありません。ちょっと前になるけれど、ウィノナ・ライダー主演で少女特有の危うさを見事に描いていたのが『17歳のカルテ』。まだ初々しいスカーレット・ヨハンソンとソーラ・バーチの無愛想な様子が妙にリアルな『ゴーストワールド』。最近でも、キャリー・マリガンを主演に17歳を目前にした少女の揺れ動く心を描いた『17歳の肖像』や、愛を知らない少女が新しい人生を見出していく様子を映し出した『プレシャス』など、引きもきりません。昔17歳だった人々には多少の覚えがあるでしょうが、どこか不安定で焦りやイライラなどを抱えがちな年齢なのは確か。18歳というと、世界的にも大人として認められ始められる年齢ですが、17歳はいつでも子供扱い。育った時代や環境、抱える問題は違っても、子供でもなく大人でもなく、どこかモヤモヤしていて曖昧、それでいて成長著しい面白い年齢なのです。映画人たちもそういう共通点に描き甲斐を見出しているのかもしれませんね。世界、そして映画界にもいろいろな17歳がいる中で、今注目したいのが映画『ウィンターズ・ボーン』に登場する大人びた少女、リー・ドリー。現代アメリカ社会とは隔絶された山村で、心を病んだ母親と幼い弟妹の世話をしながら、その日暮らしの生活を送っています。ドラッグ・ディーラーの父親は警察に逮捕され、さらに自宅と土地を保釈金の担保にしたまま行方不明に。翌週に行われる裁判に父親が出頭しなければ、家も土地も没収されてしまうという危機にも瀕しているのです。両親が当てにならないために、すべてを背負う17歳。自分だって他の17歳同様に、学び、遊び、恋愛だってしたいはず。でも、家族を守ることができるのは自分だけ。そこでリーは、アメリカにいる多くの17歳が享受するすべてを捨てて、非情な掟が存在する大人社会へと足を踏み入れるのです。のんびりと恵まれた環境で育つ者には、信じられないリーの日常が、本作では次々に映し出されていきます。単に、貧しいという状況とは違い、犯罪に関わることで生き延びてきた山村が舞台なので、父親探しを始めたリーの行動は、村に存在するさまざまな闇を穿り出していくことに。関わっていく人物もとんでもない荒くれ者ばかり。彼女の捜索を邪魔しようと、妨害工作、いやがらせ、しまいにはリンチまで飛び出す始末。そんな中でも、リーは必死に家族一緒に暮らせる術を手繰り寄せていくのです。大人が直面したとしても、とても苛酷なリーの状況。17歳といえば、モヤモヤしながら大人への階段のありかを手探りで見つけ、なんとか一段一段登っていき、成長していくという感じですが、リーの場合は明らかに、崖を登らされたという感じ。いや、もしかすると崖から突き落とされたというべきか…。いずれにしても、環境が彼女に子供でいることを許さなかったということなのでしょう。映画では、冒頭からすでにリーはすっかり大人びているのですが、物語を追うごとに17歳という年齢に大きな意味があるように感じられてきます。大人でも怯むような状況にも正面から向っていくあの無鉄砲さは、いかにも怖いもの知らずの子供らしい姿。彼女にかき回されることで、非情な掟に縛られた村が徐々に変化の兆しを見せるあたりも、17歳の無邪気さの勝利でもあるように感じます。この作品が面白いのは、経験を積むことで大人になっていく少女を描いたお決まりの成長物語なのではなく、すっかり大人びてしまったかに見える少女の中に、17歳の無垢な心を見出せるところ。はかりごとをせず、まっすぐに突き進んでいく無垢な心は、大人になり計算高くなると失われがち。でも、どんなにすさんだ生活をし、心の荒れた大人たちに汚されそうになっても、彼女にはまだ、若さゆえの強さがある。それは誰にも奪いとることのできない武器なのです。ただ、気になるのは彼女の今後。父親探しという大きな挑戦を通して得たものも大きいはずですが、そのかわりに大人になることで失う純粋さもあるはずです。それとも、彼女はほかの村人のようにはならず、その純粋さを持ち続けられるのか。今後、リーから失われていくであろう部分にも思いを馳せながら観ると、このドラマが別世界で起きている単なる他人事ではなくなるはず。何かを得ることで別の何かを失っていくというのが人間の成長なのですから、17歳だった自分を思い出しながら、リーの刹那的かつ力強い若さに酔うというのも、この映画のひとつの楽しみ方なのかもしれません。(text:June Makiguchi)特集『ウィンターズ・ボーン』■関連作品:ウィンターズ・ボーン 2011年10月29日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて順次公開© 2010 Winter’s Bone Productions LLC. All Rights Reserved.■関連記事:オスカー候補最後の一作に秘められた希望『ウィンターズ・ボーン』が描く「現実」【シネマモード】映画で覗いてみる、アメリカの「いま」誰もが心を揺さぶられる感動作『ウィンターズ・ボーン』試写会に5組10名様ご招待アカデミー賞候補の最後に残された名作『ウィンターズ・ボーン』ポスター画像解禁弱冠20歳、J・ローレンスが放つ迫真の演技に注目『ウィンターズ・ボーン』予告編
2011年10月12日「僕たちは世界を変えることができない」。一見、ネガティブに思えるこの言葉で結びつけられた2人の男が初めて顔を合わせた。「銀杏BOYZ」のボーカル峯田和伸と、医学生時代にふとした思いつきからカンボジアに学校を建設し、向井理の初主演映画の原作となる本を執筆した葉田甲太。確かに世界を変えることはできないかもしれない。だが彼らは、確実に人の心を動かし、いや心だけでなく実際に人を動かし、自らの思いを“形”に残している。年齢も歩んできた道も違うが、隠すことなく自らをさらけ出して生きているところに共通点がある。そんな2人が互いの思い、自らの活動や表現、生き方についてガチンコで熱く語り合った。「世界を変えることはできない」という言葉に込めた思い元々、「僕たちは世界を変えることができない」というのは「銀杏BOYZ」の楽曲およびメンバーの活動を追ったドキュメンタリーDVDのタイトル。中学時代から峯田さんの大ファンであった葉田さんが自らの活動を綴った本の題名として借用したのだ。――そもそも、峯田さんはどのような思いでわざわざこんなネガティブなタイトルを?峯田:実は僕自身、あまり分かってなくて(笑)、メンバーと「タイトルどうしよう?」って話して、適当にいくつか言ったうちのひとつなんです。意味は分からないけど、何とでもとれる。なぜか引っかかって…まあDVDはタイトルと関係なく下ネタ満載なんだけど(笑)。でも引っかかるということは何かが良いんだろうな、と。いろんな人に意味を聞かれるけど、みんな深読みし過ぎなところもあって。いろんな状況がこの言葉の意味や見方を変えてくれるようなところはあるんだなと感じてます。この言葉がある“場所”は変わらないけれど、状況がこの言葉の捉え方を変えてくれる。そういういろんな捉え方ができる言葉は好きですね。葉田:タイトル、借用してすみません。僕自身、すごく深くあれこれ考えてました(笑)。ただ、僕が本のタイトルに選んだのは、僕のやってきた活動は相手がいてこその活動で、自分が幸せだと思うことを相手に押し付けてはいけない。僕らではなく、当事者の人たちが「変える」ものなんだという意味で、自分に対して調子に乗るなよっていう気持ちが9割です。残りの1割は、乱暴な言い方ですが、世界が変わらなくてもいいんじゃないかって思い。変える必要はないんじゃないかと。峯田:最初に映画の話を聞く前に、本屋で積まれているのを見たんですよ。「なんかこのタイトル、見たことあるなぁ」って(笑)。あぁタイトルが一緒だと気づいてやっぱりこの言葉が引っ掛かった人がいたんだと思いましたよ。葉田:高校の頃とかずっと「銀杏」聴いてて、「恋と退屈」(峯田さんの著書)読んだら一言では言い表せない感情があって…峯田さんてカッコ悪いところも全部出すからカッコ良いんです。峯田:僕はカッコ悪いことをカッコ悪いって思ってなくて、もちろんカッコ良いとも絶対に思ってないんだけど。これやったらマズいとか、これ書いたらヤバいとか、そういう気持ちがないんだよね。葉田:一般論で言うところのカッコ良いとかカッコ悪いっていう価値観を(峯田さんに)崩されましたね。共感、ボランティア、さらけ出すということ葉田:僕はこの本を書く上で「何かを伝える」とか「共感してほしい」とかそういう思いはなかったんです。だから出版者の人にも怒られて(笑)、経験も実績も知識もない中で「何ができるのか?」って考えたとき、「こうあるべき」とか「こうしろ」じゃなくて「僕はこう思いました。どう思いますか?」としか言えなかったんです。峯田:海外でなくても日本国内でも世の中にはいろんな問題があるけど、海外に行ってボランティアをやる人はいる。僕はボランティアの経験ないんだけど、どういう思いでカンボジアに行ったの?葉田:郵便局でたまたま見たパンフレットがカンボジアだったというだけで、それが日本だったら日本で活動してましたね。いつも「何となく」と言ってます。ただ、“誰か”が悲しんでるだけじゃ人は動かないと僕は思っていて、その誰かが知っている“あの人”になれば動くのかなと。縁があって現地に行ったことで、カンボジアは僕にとって“誰か”じゃなくて“あの人”になったんです。峯田:すごく良いことしてると思うけど、日本に帰って気持ちが落ちて、デリヘルを呼んだとかまで書いたのはなんで(笑)?正直、そういう部分があるからこそ僕は信頼して読めたんだよね。これがボランティアやって子供と遊んでってだけなら、「ウソくせぇ」って思ってた。――葉田さんは抵抗はなかったんですか?やましいことがなくても自己満足だとか偽善だとか言って足を引っ張る人たちがいる中で、あえてここまでさらけ出すことに。葉田:いや、全部出したくなかったんですよ、デリヘルのエピソードだって(苦笑)。でも書かざるを得なかったんです。峯田:なんで?葉田:書かなきゃ勝負できなかったんですよね、やっぱり。それ以外、自分にはないと思ったんです。峯田:うん。そこ書かなきゃ植村直己さんは超えられないよね(笑)。椎名誠さんは書いてないですからね。書いてほしい!まあ、書きゃいいってもんじゃないけど。よく書いたよ!葉田:「深夜特急」にもないですね(笑)。でもオカンは泣いてましたけどね。「何でそんなこと書くの?」って(苦笑)。シラフのままじゃ書けなくて、梅酒飲んで気づいたら出来上がってた感じ。ちょっと脱線しますけど、僕は“ボランティア”って好きじゃないんです。勝手にやればいいものだと思ってて。語弊があるかもしれないですが、“自分探し”とか言ってカッコつけて、恋愛してそこから逃げてボランティアにすり替えたりってすごく多い。それは違うなって思ってて…。峯田:まぁ僕がボランティアをやるとしたらまず間違いなく女の子狙いですね(笑)。――葉田さんはいま、エイズ問題や建設された学校の維持に携わってますが、葉田さん自身の中でどういう位置づけでやってらっしゃるんですか?葉田:出会った人が泣いていたり悲しんでいるから、僕の勝手な“エゴ”で笑ってほしいと思ってやってるのかな。それを何て呼ぶのか、いまだに僕にも分からない。友達が悲しい顔してるから笑顔になってほしいっていうのはボランティアとは言わないですよね?峯田:僕だったら絶対ヤッてますね。葉田:いや、そんなこと聞いてないですから(笑)!批判を受け止めるということ葉田:峯田さんも昔、TVでデリヘル呼びまくってるって言ってましたけど…。峯田:TVで言ってた?まあ…いろんな弊害はありましたけど(苦笑)。でもこうなると何言ってもネタか本当か分からなくなってるからね。葉田:批判やネット上でのバッシングとかもあると思いますが、峯田さんはどういう気持ちでそれを受け止めるんですか?峯田:評論家の声もネットの声も含めて、別にいいかなと思ってる。言ってもらった方が良くないですか?さっきの本と一緒でキレイごとだけでなく、いろんなことを含めて作品として面白いんだから。褒められるだけだと気持ち悪い。世に出した以上は嫌ってる人も含めて両方いないとね。葉田:僕は毎回、ヘコんでました。だから峯田さんのその言葉聞けて良かったです。峯田:あんまり考えてないからね。お母さんに怒られたらヘコむけど、それ以外はどうでもいいの。葉田:お母さんに怒られることあるんですか?峯田:あるある。「最近、お金遣い荒いよ」とか。うちはお母さんが通帳持ってるから。――葉田さんは医師として勤務しながらカンボジアのために活動し、本も執筆されていますけど、どうやって両立されてるんですか?カンボジアに学校を建てた後で、医師になるという現実を前に虚脱感とかはなかったんですか?葉田:情けないんですが僕、マザコンなんですよ。子供の頃、病院で母親に医者になって治してあげるって言ったら喜んでくれて、それで何とかなれました(笑)。やってく中でバランスがとれるようになりましたね。右脳と左脳みたいなもので、医者の自分と表現する自分は全く別人格なんです。医者のときはロジカルに、書いたりするときはエモーショナルに、本書いたりするだけじゃ酒ばかり飲んでダメになる。2つでバランスとってます。だから、峯田さんのように表現してお金稼いでいる人はすごいなと尊敬してます。峯田:いやいや、カンボジアの前に僕を助けてほしいです。今度、診てください(笑)!この後もここでは書けないような彼女についての話や、デリヘルの話などで大いに盛り上がる2人。世界を変えようなどとはこれっぽっちも思ってもいない、ただ自らの道を進む似た者同士の男たちの激し過ぎる初対面だった。(photo/text:Naoki Kurozu)「僕たちは世界を変えることができない。 But, we wanna build a school in Cambodia.」(小学館文庫刊)定価:500円(税込)発売中「それでも運命にイエスという。 」(小学館文庫刊)定価:500円(税込)10月6日発売銀杏BOYZ ドキュメンタリーDVD「僕たちは世界を変えることができない」 (初恋妄℃学園)定価:3,990円(税込)発売中『僕たちは世界を変えることができない。』3連続インタビュー 松坂桃李インタビュー:: 向井理インタビュー■関連作品:僕たちは世界を変えることができない。 But, we wanna build a school in Cambodia. 2011年9月23日より全国にて公開© 2011「僕たち」フィルムパートナーズ■関連記事:向井理、総立ちの客席と深作監督のメッセージに感激し絶句向井理インタビュー引き算の演技で魅せた“ヒーローじゃない主人公”向井理、思わず本音が!?「パルテノン神殿は汚いところだった」松坂桃李インタビュー照れ屋な22歳が見つけた“熱いもの”向井理、流暢な英語でスピーチ!海外オファーは「なきにしもあらず」?
2011年09月26日「ぴあ映画生活」調査による9月23日、24日公開の映画満足度ランキングは、カンボジアに学校を建てようと活動する大学生の姿を描いた向井理初主演作『僕たちは世界を変えることができない。But, we wanna build a school in Cambodia.』がトップに輝いた。2位に“モテ期”に翻弄される草食系男子を森山未來が演じる『モテキ』が、3位にサミュエル・L・ジャクソン主演作『4デイズ』が入った。ぴあ映画生活「映画満足度ランキング」1位の『僕たちは世界を変えることができない…』は、葉田甲太の体験を基に出版された同名小説を映画化したもの。出口調査では「同じ人間なのに生まれた国や環境によってこんなにも生活が違うということを知り、辛くなる場面もあったが、行動していく彼らの姿に感動した」「カンボジアの歴史や実態を知り、私も自分のできることをしていこうと思った」「向井理の演技はアドリブのように自然体で、学生4人の感情がリアルに伝わってきた」など、主人公たちと同じ20代の学生を中心に、10代から60代までの幅広い世代から高く評価され、涙ながらにコメントする女性の姿も見られた。2位の『モテキ』は、久保ミツロウの同名コミックを原作に、好評を博したTV版から1年後の主人公を描いたオリジナルストーリー。アンケート調査では「同じ男として主人公に共感はできないが、終盤になるとよく頑張ったなと親近感がわいた」「長澤まさみがエロティックで魅力的。中高生だった頃の甘酸っぱい気持ちを自分も引きずっていると気付かされた。素晴らしい疑似体験!」「漫画よりもドラマよりも映画が一番面白い! 監督の趣味が大爆発していて、“モテ期”の生活をリアルに覗き見しているようで新鮮だった」など、特に男性から好評だった。(本ランキングは、2011年9月23日(金)、24日(土)に公開された新作映画11本を対象に、ぴあ編集部による映画館前での出口調査によるもの)(C)2011「僕たち」フィルムパートナーズ
2011年09月26日カンボジアに学校を設立しようと奮闘する大学生の姿を描いた『僕たちは世界を変えることができない。 But, we wanna build a school in Cambodia.』のプレミア試写会が9月7日(水)、東京・千代田区の明治大学駿河台キャンパスで開催され、映画初主演を果たした向井理をはじめ、共演した松坂桃李、柄本佑、窪田正孝、村川絵梨らが出席した。同校は向井さんの出身大学。“後輩”を前に特別授業と銘打った舞台挨拶は、大盛り上がりだった。原作は2008年に自費出版された葉田甲太による体験記「僕たちは世界を変えることができない。」(パレード刊)。ありきたりな毎日を送る医大生・コータ(向井さん)が、ふと手にしたチラシをきっかけに「カンボジアに学校を建てる」という夢に突き進む物語を軸に、仲間たちとの衝突や葛藤、そして想像を超えるカンボジアの“現実”をつぶさに描き出す青春ストーリーだ。もともとカンボジアに強い思い入れを持つ向井さん。「ボランティアやカンボジアといった題材を通して、実際には日本を描いた作品。(撮影後)日本に帰ってきて、普段の風景が全然違って見えてショックだった。当たり前なことが、実は当たり前じゃないと気付かされた」と神妙な面持ちだ。現地に暮らす人々との共演は、アドリブも多かったそうで「みなさんのつらい経験を聞いているのは、正直辛かった。でもお芝居じゃないリアリティに触れて、役者として負けたなと思いました…。これからの役者人生でも、こんなシーンはなかなか撮れるものじゃないなって」と初の主演作は、向井さんにとってまさに新境地となったようだ。この日は学生たちとの質疑応答が行われたが、なぜかTBSアナウンサーの安住紳一郎が乱入!実は安住アナも明治大学の卒業生で「先ほど、学生さんが『明治といえば、向井さんか長友(佑都)選手』と言っていたが、私のことも忘れないで」と猛アピールする場面も。向井さんと安住アナは、プレミア試写会が始まる前に番組の収録を行っていたそうだ。気を取り直して、向井さんは「イマドキの大学生を描いた作品。だから、みなさんがどんなことを感じてくれるのか、とても気になります。僕自身、メッセージだけの映画にはしたくなかった。この映画が『これから何かしよう』と思うみなさんの原動力になってくれれば」と後輩たちにアピールしていた。『僕たちは世界を変えることができない。 But, we wanna build a school in Cambodia.』は9月23日(金・祝)より全国にて公開。■関連作品:僕たちは世界を変えることができない。 But, we wanna build a school in Cambodia. 2011年9月23日より全国にて公開© 2011「僕たち」フィルムパートナーズ■関連記事:向井理主演『僕たちは世界を変えることができない。』試写会に100組200名様をご招待向井理、芦田愛菜、武井咲、中山優馬が「ほんとにあった怖い話」でホラー初挑戦!癒し系?頼れる系?親友にしたい俳優ランキング三浦春馬と天海祐希が1位に!一緒に旅行に出かけてみたい俳優は?「acteur」最新号を5名様にプレゼント「女神のイタズラ」松坂桃李動画インタビュー!共演の杏を大絶賛の理由とは…?
2011年09月07日今年のアカデミー賞で作品賞、主演女優賞、脚色賞にノミネートされた『17歳の肖像』のブルーレイ&DVDが発売されたのに合わせて、主人公・ジェニーが雨の中で、のちに彼女の人生に大きな影響を与えることになるデイヴィッドと初めて出会うシーンの本編映像が到着した。“ビートルズ以前”の時代のロンドンで、大学進学を目指す16歳の少女が、魅力的な年上の男性との出会いをきっかけに、学校では教わらない、自由な心躍る世界に魅了され、大人の世界への一歩を踏み出そうとする瞬間を甘く、ほろ苦く描き出した本作。お披露目となった2009年のサンダンス映画祭での観客賞を皮切りに次々と映画賞を受賞したが、センセーションとして取り上げられたのは主人公を演じた新星キャリー・マリガン。“オードリー・ヘップバーンの再来”との言葉と共に称賛をもって迎えられ、英国アカデミー賞主演女優賞を受賞、本家のアカデミー賞、ゴールデングローブ賞でも主演女優賞の候補となった。今回、到着した映像に映し出されるのは、ジェニーとデイヴィッドの出会いのシーン。雨の中を制服姿でチェロを持って帰宅するジェニーに、デイヴィッドが車から声を掛ける。突然現れた男に少し警戒心を抱きつつも、彼女の表情から、初対面ですでにどこか好意と呼べる感情を彼に対して持っていることがうかがえる。デイヴィッドは、紳士的でユーモアたっぷりの巧みな話術でジェニーを惹きこんでいく。雨の中の出会い――16歳の少女が“運命”を感じるに十分なこのシチュエーション。短いシーンながらも見る者にしっかりと温かさを感じさせてくれる。何より、あどけなさの残るキャリーの表情がキュート!『17歳の肖像』ブルーレイ&DVDは発売中。※こちらの特別映像はMOVIE GALLERYにてご覧いただけます。MOVIE GALLERY『17歳の肖像』ブルーレイ価格:4,980円(税込)『17歳の肖像』DVDコレクターズ・エディション価格:3,990円(税込)発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント公式サイト:© 2009 An Education Distribution Limited. All Rights Reserved.■関連作品:17歳の肖像 2010年4月17日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開■関連記事:【シネマモード】人間とは、ないものねだりな生き物なのね。『17歳の肖像』三船美佳7人家族願望吐露「父も『七人の侍』だったから」大人の世界の裏側にほろ苦い真実『17歳の肖像』鑑賞券を5組10名様プレゼント本命は誰?女優にモテモテの『ハート・ロッカー』主演男優【アカデミー賞】ファッションチェック!〜レッド&ブラック編〜
2010年08月27日とにかく、すこぶる評判が良い『17歳の肖像』。主演の新星、キャリー・マリガンが本年度のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、さらには作品賞、脚色賞にも選ばれているということは、キャスティングが良く、脚本が素晴らしく、作品としての総合評価ももちろん高いという、バランスの取れた秀作であるということの証明でもあります。脚色したのが、『ぼくのプレミア・ライフ』『アバウト・ア・ボーイ』『ハイ・フィデリティ』の作家ニック・ホーンビィで、監督が世界を大いに泣いて笑わらせた『幸せになるためのイタリア語講座』のロネ・シェルフィグですから、外すはずもありませんよね。少女時代の揺らぎをとても丁寧に、大人から見れば痛いくらいに懐かしく描いているこの作品、青春物語というよりは人生ドラマ。大人に憧れる世間知らずの少女が、現実世界へと入っていく覚悟を決めるまでを緻密に描写しながら、大人たちがもつ大人特有の“スレ”を密かに皮肉る。ピーター・サースガード演じる上っ面のいい大人、ヒロインの両親のように善良だけれど無神経でだまされやすい大人、知的だけれど頭の固い教師陣など、早熟で知識欲いっぱいのヒロインを取り巻く大人のタイプもいろいろです。その人々に囲まれて、それぞれから少しずつ何かを得ながら、理想と現実の違いを学び、成長していく主人公。観客に、ヒロインは何て無謀なんだ、そんな行動は若気の至りだ、と思わせつつ、それでも彼女の成長を応援させてくれる。そんなストレートな語り口に、非常に好感が持てる作品でした。作品の出来もさることながら、60年の頃のイギリスを映したファッションも魅力のひとつ。親では決して教えてくれない刺激的な魅惑の世界を、手取り足取り教えてくれる年上の異性への憧れと夢、そして現実の中で揺れ動く少女の心を、ファッションを使って描き出しました。制服を脱ぎ捨て、大人びたワンピース×スカーフ×ハイヒール×ハンドバッグを身につけるヒロインは、まだ大人のファッションがしっくりくるわけではありませんが、なんとか大人のフリをしようとする背伸び具合に、女性なら誰しも昔の自分を思い出すのではないでしょうか。一所懸命に、ブラウス×タイトスカート×アップスタイルのヘアなどを自分のものにしようとする少女を、瑞々しい知性を感じさせつつ演じたキャリー・マリガンは本当に素敵。アカデミー賞ノミネートも頷けます。でも白状すると、私がより気になったのは、脇を固めたロザムンド・パイクの方。ロザムンドが演じているのは、年下のヒロインに、美しくなるためには何を着るべきか教え、自分の服も惜しみなく譲る寛容で優しい女性ですが、賢いゆえに人生や教育、親に決められた将来に疑問を抱くヒロインとは対照的に、自分で考えるということをせず、地味なオックスフォード大学の女学生を見て、「進学なんかしなければ、綺麗でいられる」と本気で口にする教養も知性も感じられない美女。女性を美しくするものは、教養でも知識欲でもなく、いい男と素敵な服だと信じ込んでいるような人です。本当ならば、こんな女性は輝くはずもないのですが、ロザムンドが演じることで、憎めない、チャーミングなおとぼけ女性になっているのです。大人の女性なのに、表情がどこか幼稚で可愛らしいのですが、これも知性があまりないせいかも。実生活でも男性に寄り添って生きることに疑問を持たず、何でも恋人の言いなり。若く、美しいときはいいけれど、本作のヒロインが、後にジャーナリストとなって、この映画の原作を書く人物になったと考えると、古い価値観(当時は当たり前の価値観?)を持った彼女が、どうなったかも気になるところ。これほどまでに、演じた人物の行く末が心配になるなんて、やっぱりロザムンドの演技がなかなかだったせい?彼女自身は、舞台経験もあって、実際にオックスフォード大学で英文学を専攻した才女。才女が演じるおとぼけというのも、味があっていいものですよね。好きなおとぼけキャラクターといえば、ヒロインの同年代ボーイフレンド役を演じたマシュー・ビアード青年もとってもかわいい。初めてガールフレンド(=ヒロイン)の家にお呼ばれしたときの、すべてにおいて間の悪い様子など、私から見ればキュートな限りです。でも、ヒロインの両親、特に父親からしてみれば、ただの子供に見えたようで、娘の相手には不足といったところだったよう。損得ばかり考えるいんちきそうな大人よりも、ドン臭いけれど誠実な男子の方がいいのに、と思う私でしたが、それも人生をそれなりに経験してきたから思えることなのでしょう。もしかすると、ピーター・サースガード演じる大人代表と、マシュー演じる青年代表と、どちらに好感を抱くかで、“少女度”がわかるのかも。大人に憧れる少女たちは、迷わずオシリの青そうなマシューではなく、ピーターを選ぶことでしょう。でも、少女に憧れる(?)大人たちは、初々しいマシューを選ぶはず。ああ、人間ってないものねだり。「まずは、自分のまわりにあるものに感謝しましょう」とは、私の書道の師、武田双雲氏の言葉。がんばります!(text:June Makiguchi)キャリー・マリガン インタビュー■関連作品:17歳の肖像 2010年4月17日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開■関連記事:三船美佳7人家族願望吐露「父も『七人の侍』だったから」大人の世界の裏側にほろ苦い真実『17歳の肖像』鑑賞券を5組10名様プレゼント本命は誰?女優にモテモテの『ハート・ロッカー』主演男優【アカデミー賞】ファッションチェック!〜レッド&ブラック編〜キャリー・マリガン『17歳の肖像』インタビューオスカー候補24歳の素顔と成長
2010年04月16日メリル・ストリープら大物女優たちと並び、2人の新人女優がアカデミー賞主演女優賞候補として名前を連ねている。『17歳の肖像』のキャリー・マリガンと『プレシャス』のガボレイ・シディビーだ。新たなオードリー・ヘプバーンと注目を浴びているキャリー・マリガンが『17歳の肖像』で演じるのは、60年代のロンドン郊外に暮らし大学進学を目指す成績優秀な女子高校生・ジェニー。しかし、彼女のごく普通の学生生活は、ある雨の日デイヴィッドという大人の男性と知り合うことで一変する。16歳の少女が大人の世界へ足を踏み入れ、恋した相手を一途に信じてしまう姿はとても危うく、若さゆえの言動を諭したくなる人もいれば、自分自身の過去と重ね合わせてしまう人もいるだろう。特別なストーリーではないけれど(特に女性は)ジェニーの心の揺れに共感、その共感度の高さがこの作品の魅力だ。本作はイギリスの人気女性ジャーナリストの実体験を『幸せになるためのイタリア語講座』の女性監督が映画化したもの。原作も監督も女性の視点であることも特筆しておきたい。一方、『プレシャス』でガボレイ・シディビーが演じる16歳の少女、クレアリース・プレシャス・ジョーンズの悩みはかなり深刻だ。住まいはニューヨークのハーレム。お腹には2人目の子供、しかもその子の父親は自分の父。母親からは精神的にも肉体的にも虐待を受けている──どう見ても不幸な人生にしか映らない。けれど、プレシャスは悩みつつも自分の幸せを見つけていく、とてもたくましい少女だ。授かった命を大切にし、学ぶことに喜びを見出し、出会った人たちを愛する。そんな彼女の姿を見ていると、環境的にはこの上なく不幸かもしれないが、彼女が自分で選んだ人生は決して不幸ではない、周りの勝手な価値観で人の幸せを量ってはいけないのだと痛感させられる。また、ガボレイ・シディビーは演技経験ゼロ。この作品で発掘された逸材であることも驚きだ。生まれた国も境遇も異なる2人のヒロインだが、16歳という年齢と自分自身の手で大人への道を切り開こうとする姿勢は同じ。ジェニーとプレシャス、あなたが心打たれるのはどっち?(text:Rie Shintani)特集:2010アカデミー賞■関連作品:プレシャス 2010年GW、全国にて公開© PUSH PICTURES, LLC 17歳の肖像 2010年4月17日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開■関連記事:【シネマモード】アカデミー賞開催直前セレブファッション大胆予測!本家オスカーを控え激戦、混戦!英国アカデミー賞で『ハート・ロッカー』6冠お味はどれが一番?アカデミー賞ノミネート作品にちなんだメニューの数々を公開決戦を前に意外にも和気あいあい。オスカー候補者が勢ぞろいの昼食会開催アカデミー賞6部門ノミネート!『プレシャス』試写会に10組20名様をご招待
2010年02月26日