●空前のアウトドアブームが後押し“潜在需要3,000万人”……これは1990年代、あるレジャー産業に対して使われた言葉だ。3,000万人といえば、日本人の4人に1人がそのレジャーを楽しんでいる計算となり、超巨大産業を想像させる。この言葉が使われていたレジャー産業とは、ズバリ“釣り”だ。だが、周囲を見回しても4人に1人が釣りにいそしんでいるとはとうてい思えない。これはいったいどういうことなのだろうか。日本生産性本部がとりまとめた「レジャー白書」によると、釣り人口がピークに達したのは1990年代後半で、2,000万人を突破していたという。積極的に釣りに行かなくとも「誰かに誘われたら行く」「キャンプや旅行のついでに釣りをする」といった層を加えれば、潜在需要3,000万人というフレーズもあながちウソとはいえない。釣り人口がこれほどふくらんだ当時の背景について、アウトドア雑誌を手がけたこともある元編集者は次のように語った。「1990年代、空前のアウトドアブームが起こりました。それと同時に人気を博したのがルアーフィッシングやフライフィッシングといったゲームフィッシングです。特にルアーを使ったバスフィッシングは、タレントの木村拓哉さんや俳優の反町隆史さんが趣味にしていたこともあり、その人気に爆発的に火が付きました。このブームが釣り人口の増加を後押ししたのは確かです。当時、河口湖や霞ヶ浦といった首都圏のバスフィッシングフィールドは、週末ともなれば入る隙間もないほどアングラー(釣り人)が立ち並び、ショップに人気ルアーが入荷したと聞けば数時間で完売してしまう現象が起きたほどです」。ところがその後10数年、釣り人口は減少の一途をたどり、2011年には940万人、2012年には810万人、2013年には770万人まで落ち込んでしまった(いずれもレジャー白書から)。では、なぜこれほどまでに釣り人口が減ってしまったのだろうか。まず挙げられるのが長引く不況による可処分所得の低下だ。消費者庁によると1999年の43万7,981円をピークに年間可処分所得は徐々に減少、2009年には年間39万0,253円まで落ち込んだ。この間、移動体通信の利用料やパソコンといった情報機器購入など、可処分所得で補わなくてはならない出費も増え、釣りに限らずレジャー産業全体に打撃があったことは否めない。また、前出の元アウトドア雑誌編集者によれば、バスフィッシングのイメージダウンが“釣り離れ”を加速させたという。「先ほど話したように、爆発的なブームにより有名な釣り場はアングラーで飽和してしまいました。結果、周囲の釣り人とのトラブルを回避するため思うままにキャスティングできなかったり、魚がスレて(ルアーに興味をなくすこと)しまったりで、まったく釣れない。“釣れない釣り”ほどストレスがたまるものはなく、一過性のブームでバス釣りを始めた人たちは離れていってしまったでしょう」。さらに2005年に施行された「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」もバス釣り離れに拍車をかけたという。バスフィッシングの対象となるオオクチバス、コクチバスが特定外来生物に指定されたため、バスフィッシングにダークなイメージがつきまとうようになった。実際、一部の心ない釣り人による“ブラックバスのゲリラ放流”が社会的な問題になったし、生きたブラックバスをクルマで運搬したため逮捕された例も生じた。また、ワーム類(ラバーや合成樹脂で作られた軟らかいルアー)が根掛かりし、湖底の環境を損ねているという指摘も、バス釣り人気衰退の一因となった。一方、海釣りにおいても強い逆風が吹いた。2001年に発生した同時多発テロにより、船舶・港湾施設の保安強化が叫ばれるようになり「改正SOLAS条約」が施行された。これにより、立ち入り禁止になる波止場や護岸などが増加、釣り場が減った。また、撒き餌による水質汚染およびゴミの不法投棄によるイメージダウンなども重なり、釣りがネガティブに捉えられる風潮が生まれた。東日本大震災のあと、繰り返し放送された津波映像も、沿岸部での釣りを敬遠させる心的要因になっていることも加味するべきだろう。●フィッシングメーカーによる地道な啓蒙活動○逆風の中での釣り用品産業は?これほど釣り人口が減ってしまうと、釣り産業に与える影響が気になるところだ。矢野経済研究所がリリースした「スポーツ用品市場に関する調査結果 2015」によると、2014年の釣り用品の国内市場は1,251億7,000万円の見込みだという。釣りブーム全盛期には3,000~3,500億円といわれた釣り用品市場は、実に1/3ほどまで縮小してしまったことになる。こうした情勢の中、釣り産業で名の通った企業はどのように対処したのだろうか。まずはグローブライドについて。グローブライドという社名にあまり馴染がない方もいるかもしれないが、「ダイワ精工」といえば誰もが思いつくだろう。2009年よりグローブライドに社名変更した旧ダイワ精工は、釣り用品のグローバルブランド名に「ダイワ」をそのまま採用。そのためグローブライドという社名よりも、ダイワというブランド名に親しみを感じている釣り人のほうが多いのではないだろうか。そのグローブライドの2015年3月期の売上高は約741億円。同社広報担当者によると、この売上高のうち8割強がフィッシングに関わるものだという。実に600億円以上をフィッシングで売り上げたことになり、まさに釣りが主力事業だ。もう一方の釣り業界の雄、シマノの場合はどうだろうか。同社の2015年3月期の売上高は3,331億円で、そのうちフィッシング部門での売上高は588億円。売上高の大半はスポーツサイクルの部品で、2,739億円を占める。スポーツサイクルのコンポーネント(駆動部品やブレーキ部品)で世界的に圧倒的なシェアを誇り、コンピュータ業界でCPU・チップセット分野を寡占するインテルにちなみ、“サイクル界のインテル”とも呼ばれるほどだ。とはいえ、フィッシング部門は同社にとって第2の柱。釣り市場がどんどんシュリンクしていく情勢に気が気ではなかったはずだ。ある釣り業界関係者は「一気に釣り需要が縮小した2000年代前半が各社にとってもっとも厳しかったと思います」と当時を振り返る。事実、グローブライドは1998年に売上高688億円だったが、2004年には474億円まで減少した。わずか5~6年で売上高が約7割まで減少したことは、企業にとって非常に痛手だ。何かしらの手を打たないと致命傷になりかねない。この難局に対しグローブライドは、製品ラインナップの拡充から手を付けた。2003年にベトナムに工場を新設。それまでわりと高額な製品をメインに取り扱っていたが、普及価格帯の釣り用品の扱いを強めた。さらに海外展開も強化。北米、ヨーロッパ、アジア地域に積極的に進出し、国内釣り市場の縮小で生じた“穴”を埋めた。だが、同社が徹底したのは釣り人に対する啓蒙や、ライフスタイルとしての釣りの提案といった施策だった。「国内の釣り人口の減少は我々も痛切に感じていました。テクノロジーを進化させてより魅力的な製品を提供することや、マーケティング強化によるダイワブランドの一層の浸透など、メーカー企業としての努力は当然怠りませんでした。加えて、釣り人そのものを育てるような取り組みを行わないといけないと考えたのです」(グローブライド広報担当者)。釣り場のゴミ拾い活動を通しての啓蒙など、業界全体で取り組んだ施策もあれば、グローブライド単体で行った方策も多いという。例えば、同社は1976年から「DYFC」(DAIWA YOUNG FISHING CLUB」という、若年層向けの釣りクラブ活動を運営しているが、2005年からイベント数を増やすなどしてこの取り組みを強化。子どもやその親に対して釣りへの理解を深める活動を行った。また、クラブツーリズムやJTB、東海汽船といった旅行・運輸産業とコラボして釣りツアーを実施するなど、異業種との連携を積極的に行った。特に東海汽船との取り組みは、“島ガール”と呼ばれる女性の取り込みをねらったもの。子どもや女性といった釣りから縁遠い層へのPRに努めたのだ。そのほか、「釣り→魚料理」の観点からグルメ誌とコラボしたり、千葉県や神奈川県といった自治体と連携したりと他業界との取り組みを進めた。それ以外にも、新たな釣りジャンルの創生にも努めた。「餌木」(えぎ)と呼ばれる日本古来の疑似餌を使ったイカ漁をゲームフィッシング風にアレンジした「エギング」、ラバーで装飾されたルアーで鯛をねらう「タイラバ」など、新しいファン層を取り込むため施策も行ってきた。「2000年代半ばからは、ライフスタイルとしての釣りを提案する施策やイベントを数多く手がけるようになりました。爆発的なフィッシングブームが起こっていた1990年代には、こうした取り組みは行っていませんでした」と、グローブライド広報担当者は振り返る。前出の矢野経済研究所による「スポーツ用品市場に関する調査結果 2015」によれば、国内釣り市場の規模推移は、2011年に1,124億円、2012年に1,161億円、2013年に1,219億円、2014年に1,251億円(見込み)、2015年に1,293億円(予測)と、大震災のあとに徐々に回復基調にある。また、旺盛なインバウンド需要による高級釣り具の販売が好調との報告もある。余暇をいかに過ごすかという高齢者が今後増えること、東京都を流れる多摩川に代表されるように良質な釣り場環境が戻ってきていることなど、フィッシングをとりまく情勢に好材料が見え隠れする。今後、フィッシング市場が延伸するかどうかは、釣りを生業にする企業が、こうした好材料をいかに活用するかに関わってくるだろう。
2015年10月07日きょうご紹介したいのは、『世界が一瞬で変わる 潜在意識の使い方』(石山喜章著、あさ出版)。組織開発コンサルタントである著者が、「潜在意識」の重要性について説いた書籍。自分の世界、相手の世界をつくっている潜在意識を理解できれば、ムダに悩むこともムダに傷つくこともなくなる。そんな考え方を軸に、人間関係を円滑にするコミュニケーション能力を身につける方法を紹介しているわけです。■自分の価値観以外を受け入れることが大切ベースになっているのは、「マインドーム」という概念。「マインド(心)」と「ホーム(家)」を合わせた造語で、人間が持っている「判断基準」をさすのだとか。自分の知っている世界のなかだけでは、自分の価値観だけでしか物事が判断できないもの。だからこそ、自分の価値観以外の世界を受け入れ、従来の判断基準を手放すことが大切だという考え方です。では、マインドームの概念からみた「コミュニケーション能力」とはどういうものなのでしょうか?著者は、これからの時代は、4つのコミュニケーション能力を統合した「4C能力」が必要とされると説いています。マインドームの重要な考え方で、この力を備えていれば、本質的な問題解決が可能になり、組織でも必要な人材になれるのだといいます。それは、次の4つです。[1]カウンセリング(Counselling)[2]コーチング(Coaching)[3]コンサルティング(Consulting)[4]コミュニケーション(Communication)■現代に必要な「4C能力」とはどんな能力?[1]カウンセリング能力カウンセリング能力は、相手の心を理解し、判断基準やアイデンティティーができた背景を理解することによって、悩みや迷いの原因に気づかせる能力。過去の話を聞いて、「なぜ、いまの状態になってしまったのか」に気づかせ、解決策を明確にするわけです。[2]コーチング能力コーチング能力は、「将来、どのようになりたいのか」と未来の目標やゴールのイメージを明確にさせ、実現に至るステップを整理し、気づかせる質問力。目指すべき最終地点を指揮させ、それをサポートしていくわけです。[3]コンサルティング能力コンサルティング能力は、クライアントの観点の外側から、問題点や解決法、ビジョンなどを明確に伝えるためのスキル。なにが問題なのかを診断し、根本原因、解決策、明確なビジョンを伝達していくということです。[4]コミュニケーション能力コミュニケーション能力は、相手の立場や状況を十分に理解して認めることにより、信頼のつながりへと転換していける力。交流によって信頼関係を築くわけです。*マインドームの概念と4C能力を活用すれば、円滑なコミュニケーションが可能になるということ。人との関係性を考えなおすためにも、参考にしたいところです。(文/印南敦史)【参考】※石山喜章(2015)『世界が一瞬で変わる 潜在意識の使い方』あさ出版
2015年10月02日「セルフ・アイデンティティー・スルー・ホ・オポノポノ」(以下、SITHホ・オポノポノ)という言葉を、みなさんは聞いたことがありますか? これはハワイに古くから伝わる問題解決法のことで、ネイティブ・ハワイアンの故モーナ・ナラマク・シメオナ女史が、現代の人々に合うように、さらにシンプルで効果的な方法として編み出したメソッドです。具体的にいうと、ある4つの言葉を繰り返し唱えることで、潜在意識(=インナーチャイルド/ハワイの言葉でウニヒピリともいう)の内側から記憶を消去(クリーニング)し、様々な問題を解決していく、というもの。故モーナ女史から継承したイハレアカラ・ヒューレン博士によって広められ、今では世界中で静かに親しまれています。先月、「SITHホ・オポノポノ」アジア事務局スタッフであり、ヒューレン博士らのそばで学んだ自身の体験をシェアする講演活動を行っている平良アイリーンさんが、著書『ホ・オポノポノ ジャーニー ほんとうの自分を生きる旅』(講談社)を出版。それを記念し、日々「SITHホ・オポノポノ」を実践しているという作家の吉本ばななさんを迎え、講演会を実施しました。今回は、その講演会でのお話や、平良アイリーンさんの著書を参考にしながら、「SITHホ・オポノポノ」に迫りたいと思います。問題を解決する、4つの言葉とは?まず、「SITHホ・オポノポノ」のキーワードともいえるのが、“クリーニング”。クリーニングのために必要となるのが、以下の4つの言葉です。「ありがとう、ごめんなさい、許してください、愛しています」この4つの言葉を繰り返し唱え、潜在意識をクリーニングすると、問題から解放され、本来の自分の完璧なバランスを取り戻し、自分らしく生きることができるのだといいます。たった4つの言葉で、そんなまさか! と思う方は多いかもしれません。スピリチュアルなことはちょっと苦手、という方もいることでしょう。もともとアイリーンさん自身も、スピリチュアルなことには疑問を持っていたそうで、母親に連れられ、初めてヒューレン博士のイベントに行った際には「記憶を全部消したら、人生つまらなくないですか?」と質問したほどだったとか。ところが、ヒューレン博士から「クリーニングをしたら、あなたが体験したことのないことが訪れる。すべて、あなたの中にある」といわれたことが、なぜだか、すっと心の中に落ちてきたんだそうです。「クリーニング」とは、自分の過去の記憶を消去し、「ゼロ」にすることヒューレン博士が話した「すべてあなたの中にある」という言葉。これは、「世の中に起きてくる問題は、すべて過去の自分の記憶の再生に起因する」という意味。だからこそ、自分の記憶をゼロにすることで、問題が解決するのだといいます。アイリーンさんの著書に出てくる、故モーナ女史のこんな言葉も印象的です。「私は何か問題が起きたとき、誰かが大変な目にあっているという体験をしているとき、その対象を変えようとはしません。私は自分自身をクリーニングします。あなたがあなたを覆い囲む記憶を消去し、それを許さない限り、変化は起きないからです」「外にはないの。あなたの内側をお掃除することが大切」「どんなときであっても自分を取り戻すこと。記憶から、たましいをもとの完璧な状態に戻ることが何よりも大切なことです」自分の外側で起きている問題が、自分の潜在意識や記憶に深く関係していると感じている人は、ほとんどいないかもしれません。ただ、私自身もそうでしたが、モーナ女史やヒューレン博士の言葉は理解できるという人も多いのではないでしょうか。「SITHホ・オポノポノ」に出会う以前から、“ウニヒピリ(潜在意識)”の存在に気づいていたという吉本ばななさんは、「SITHホ・オポノポノ」に出会ってから日々、ウニヒピリに語りかけ、クリーニングを続けることで“自分自身でいること”を実感していると語っていました。「SITHホ・オポノポノ」はとても奥が深いメソッドですが、ある意味、誰にでも、どこにいても、実践できること。恋愛や結婚、お金や仕事、健康、家族など様々な問題に直面したとしても、何の道具がなくても、クリーニングを実践することで解決し、日常を自分らしく、豊かに生きるコツが見つかるかもしれません。何十年もクリーニングを続けてきたハワイの人々に学ぶアイリーンさんの著書『ホ・オポノポノ ジャーニー ほんとうの自分を生きる旅』は、ハワイに暮らし、生活の中でコツコツと「SITHホ・オポノポノ」を何十年も実践し続けてきた人たちが、どんなふうに「SITHホ・オポノポノ」と共に人生を歩んできたのか、クリーニングを続けることはどんなことなのか、彼らの体験を聞き、まとめたものです。故モーナ女史の一番弟子であるKRさん、吉本ばななさん、アイリーンさん、3人の対談も収録されているほか、基本的なクリーニングの方法、ホ・オポノポノの呼吸方法などもわかりやすく紹介されているので、詳しく知りたい方は、是非、参考にしてみてはいかがでしょうか。また、ヒューレン博士やKRさん、アイリーンさんの講演会を体験してみるのもおすすめです。参考書籍:『ホ・オポノポノ ジャーニー ほんとうの自分を生きる旅』平良アイリーン=著 イハレアカラ・ヒューレン、KR =監修 講談社平良アイリーン1983年、東京都生まれ。明治学院大学文学部卒業。2007年にホ・オポノポノに出会って以来、生活のあらゆる場面で実践中。現在はSITHホ・オポノポノアジア事務局スタッフとして、日本を始め、アジア各国の講演会の際に講師に同伴し、活動している。また、ヒューレン博士やKR女史のそばで学んだ自身の体験をシェアする講演活動を関東、関西を中心に行っている。翻訳書に『ホ・オポノポノライフ ほんとうの自分を獲り戻り、豊かに生きる』(講談社)、共著に『ウニヒピリ』『アロハ! ヒューレン博士とホ・オポノポノの言葉』(共にサンマーク出版)がある。写真:©『ホ・オポノポノ ジャーニー ほんとうの自分を生きる旅』
2015年09月08日ソネット・メディア・ネットワークスは7月7日、「Logicad 潜在顧客ターゲティング」を開発し、その第一弾として、アットホームの「新築分譲 AI ディスカバリー」に対し、不動産業界に特化した限定版を提供すると発表した。「Logicad 潜在顧客ターゲティング」は、同社の提供するDSP「Logicad」が保有するオーディエンスデータを活用し、優良顧客となり得る潜在顧客層にリーチして行動変容を促すもの。同社R&Dグループのメンバーが、ソニーグループで培った機械学習技術をもとに開発した、高精度な行動予測を可能とする人工知能「VALIS-Engine」を搭載する。これにより、商品に興味関心を持つユーザーの特徴を学習したあと、「現時点では無関心と推測されるが、興味関心を持つ確率の高いユーザー」を発見し、最適なタイミングで行動誘引する広告を配信。拡大させた興味関心層の中からコンバージョンする確率の高いユーザーを抽出し、リターゲティングなどの広告配信を用いて顧客獲得をサポートする仕組みだ。同社は今後、アットホームの「新築分譲 AI ディスカバリー」に対し、不動産業界特化型の「Logicad 潜在顧客ターゲティング」提供を皮切りに、レポート機能などの機能拡充を行い、全業種対応型の提供を目指す。
2015年07月08日日産自動車(日産)の「新型スカイライン 乗らず嫌い試乗会」――。新型スカイラインに否定的な「アンチユーザー」だけを集めて試乗会を催し、そこでのユーザー体験をオンラインで共有させるという試みだ。その背景には、ネガティブ・コメントが寄せられたことを性能と世評のギャップを埋めるチャンスと捉え、果敢に取り組む姿勢があった。後編となる本稿では、日産におけるソーシャルメディアマーケティングの役割と考え方に迫りたいと思う。○体験の共有で新たなブランドを創る前編にて述べたように、試乗会の参加者全員が新型スカイラインに対する悪印象を好印象に変えたわけではない。だが、そうした結果も、試乗会の結果に「リアリティ」を与える意味では有意義だったようだ。「試乗会の参加者全員が新型スカイラインのファンになってくれるのが本当は理想なのでしょう。ですが、現実はそう甘くはありませんし、そうならなかったからこそ、試乗会でのユーザー体験がよりリアルになり、他のユーザーから見て魅力的で、共感しやすいコンテンツになったと考えています」(冨井氏)2015年3月時点、円安の追い風もあり、世界市場における日本の自動車メーカーの業績は好調だ。だが、こと日本国内に限って言えば、国産乗用車、とりわけ軽乗用車を除く小型・普通乗用車の販売台数は依然伸び悩んでいる。日本自動車販売協会連合会の調査によると、小型・普通乗用車の販売台数は、2013年1月~12月で287万2111台(前年比95.3%)、2014年も286万472台(前年比99.6%)に留まった。また、スカイラインが類する国産高級セダンも日本での苦戦が伝えられ、欧州勢に押され気味とされている。「とはいえ、スカイラインの性能・機能が、欧州勢の高級セダンに劣っているわけでは決してありません。問題は、型どおりのマス・マーケティングでは、ライバルに比したスカイラインの優秀性がなかなか伝えられないことです」と、冨井氏は指摘する。「そんな日産車の実力・魅力を、正しく知ってもらうことがソーシャル・チームの大きな役割です。例えば、ソーシャルメディアを通じて、性能・機能をさまざまなかたちで伝え、ときには体験してもらい、それをまた広く共有していただく。それによって、スカイラインなど、日産車の新たなブランドをかたち作っていきたいと考えています」(冨井氏)○お客様の潜在意識に「日産いいね」を日産におけるマーケティングの本流は、あくまでもマス・マーケティングであって、ソーシャル・マーケティングではない。だが、本流ではないがゆえに、日産のソーシャル・マーケティングでは、型にとらわれない施策を自由に展開することが可能であり、実際にもそうしてきたという。例えば、ソーシャル・チームは以前、軽自動車「DAYZ(デイズ)」を女性限定で30日間貸し出し、「貸し出した7人中 何人が本当に購入するか」という企画を展開した。また最近では、日産の電気商用車「e-NV200」に、バーベキュー道具一式を搭載した「バーベキューカー」をソーシャル・チームで作成。2月から、その車をベースに「究極のスマートBBQカー」を実現するクラウドファンディングのプロジェクトをスタートさせている。「マス・マーケティングで電気自動車の魅力を伝えようとすると、どうしても環境性能の訴求に終始していまい、消費者から『それならハイブリッドでいい』と思われかねません。そこで私たちは、バーベキューカーという電気自動車の新たな使い道を提案し、環境性能だけではない、電気自動車の魅力に気づいてもらうおうと考えたわけです」と、冨井氏は語る。「このように、ソーシャルメディアでは、製品の魅力・機能をさまざまな切り口・アイデアから個別に訴求していくことができ、それら1つ1つの施策に対する反応をとらえ、次の製品企画や開発、マーケティングにつなげていくことができます。そうした足回りの良い活動は、マス・メディアではなかなか実現できないことです」(冨井氏)ちなみに日産では、ソーシャルチームだけでなく、各自動車ブランドなど他のマーケティングチームも、インターネット上で話題性の高い企画を公開している。例えば、「日産 X-TRAIL(エクストレイル)」のチームは、エクストレイルを使ってスキー場でピザを配達するという企画を展開し、その映像をWeb広告化した。また、デイズのチームは、デイズに触れた瞬間に女性が早着替えをするという動画を作成・公開し、100万回の再生を記録したという。このように、インターネットでの話題の広がりを見越したマーケティング手法は、ユーザーに対し日産のキャラクターを楽しく印象づけているようだ。「私たちが志向しているソーシャルメディア・マーケティングには即効性はないかもしれません。ですが、乗らず嫌い試乗会やバーベキューカーのような企画を打ち続ければ、『日産=面白いことをする会社で、いいね』というイメージを、性別・世代を問わずさまざまな層の生活者に持っていただくことができるはずです。そうなれば、例えば、若い世代が車を購入するときに、必ずや日産の存在を思い起こしてくれでしょう。そんな明日に向けて、これからも、最終顧客・ユーザー目線に立った斬新な施策を展開していくつもりです」と、冨井氏は最後にこう締めくった。【前編】日産的ソーシャル活用 - 新型SKYLINE 乗らず嫌い試乗会、その狙い【参考】日産自動車 公式Webサイト日産自動車公式facebookページ日産ソーシャルプロジェクト「にっちゃん」新型スカイライン 乗らず嫌い試乗会 特設WebサイトX-TRAIL × PIZZA-LA30DAYS with DAYZ 特設Webサイト究極のスマートBBQカープロジェクト 特設Webサイト
2015年03月31日もう一つの会場は、19世紀のナポレオン統括時代にベネチアに強制的に作られたフランス風の「庭園」、ジャルディーニ内のセントラル・パビリオン。ここでは、カール・グスタフ・ユング(Carl Gustav Jung)の「レッド・ブック」が観客を迎え入れる。これはユングが自身のファンタジーをカラフルな絵に描き、製本したもの。蛇や竜、踊る人間など、奇怪でシュールなイメージで溢れている。アルセナーレでは「自然」「宗教」「身体」「テクノロジー」など、外界との関係によって作家が作り出すイメージが順序を追って展示されているのに対し、セントラル・パビリオンでは様々な作家の内なる「潜在意識」から派生するイメージが多数混在して展示されている。ユングに続いて、仏人作家のルネ・イシェ(Rene Iche)による、詩人アンドレ・ブルトン(Andre Breton)のデスマスク彫刻「マスク・オブ・ブルトン(Mask of Breton, 1950)」が登場。シュールレアリズムの父、ブルトンは観客を潜在意識の世界へと誘う。ここではルドルフ・シュタイナー(Rudolf Steiner)が1920年代に描いたドローイングや、神からのお告げを受けて宗教的なペインティングを描きはじめた仏人作家、オーギュスティン・レサージュ(Augustin Lesage)などの作品も展示され、カルトと哲学とオブセッションの「グレーゾーン」にある作品達が、人間の潜在意識と強く結びついたものとしてピックアップされている。様々な作家の「集合的無意識」が散らばった会場は、ドロドロとした空気で満ちている。この会場では最も優れたアーティストへ贈られる金獅子賞を獲得した、英国人作家ティノ・セーガル(Tino Sehgal)のパフォーマンス作品も観られる。セーガルは写真や映像によってパフォーマンスを記録することを好まず、「場」の特異性を生かして、作品をつくり続けている。形を持たないパフォーマンス作品が金獅子賞を受賞したのは、パフォーマンス・アートが評価される最近の流れを汲んでのことだろう。全体を通して、我々が知識を追求する過程で生まれてきた様々な視覚的「イメージ」を見せることで、人間の知識への飽くなき欲求を昇華させる行為が、あくまで主観的だと再認識させる展示になっている。更に両会場を通して一貫して見られたのは、「誰がアーティスト」なのかという問い掛けだ。アートマーケットとは直接関係を持たない、ありとあらゆるマニアックな作品が細々と集められ、泥臭く、生々しい作品も多くセレクトされた。奇麗な作品、最先端の作品よりもむしろ、「人間らしさ」というアートの根本を見せつけてくれる展示になった。このようにして、アートマーケットに偏ったアートのあり方を批判すると共に、「知識」のアーカイブの多様な方法が見せられ、ウェブ全盛時代の我々の今後のアーカイブの行く末を考えさせられる展示にもなっている。繊細でありながら、熟考されたテーマを強い意志をもって貫くキュレーションに、キュレーションを超えたアートそのものに近い感覚を憶えた。
2013年10月12日