白鳥雄介主宰の演劇ユニット「ストスパ」第4回公演『エゴイズムでつくる本当の弟』が、7月19日(水) に下北沢・小劇場B1で初日を迎えた。本作は、白鳥自身の家族の実話をもとにした“家族崩壊阻止型うっちゃりコメディ”。複雑な状況にある一家の再生を目指し、各々が奮闘するさまを描き出す。「青嶋家」として描かれる家族の次男、そして白鳥“本人”役であるユウスケを丸山港都が、血の繋がっていない末弟・ミツオを秦健豪が好演。そして母親・セツコを森下ひさえ(theatre PEOPLE PURPLE)、長男・ダイスケを青地洋、実の父親・ケンスケを大内厚雄(演劇集団キャラメルボックス)が演じる。また、どんどんと新しく繋がっていく家族に賢茂エイジ(円盤ライダー)や小山百代/木村友美(Wキャスト)、飛世早哉香(in the Box / OrgofA)が登場。そしてこの物語の重要なエッセンスとして株元英彰、内田めぐみ(ソラカメ)が出演する。『エゴイズムでつくる本当の弟』は、7月23日(日) まで同所で上演される。■作・演出:白鳥雄介 コメントこれは僕の家族にまつわる実話を元に描いた作品です。素敵なキャストさんたちが個性的な僕の家族となって、この30年余りの記憶を舞台に蘇らせてくれました。切なく、悔しく、理由もわからず、泣くことすらできなかった頃のお話ですが、記憶を辿ってみると、クスッと笑ってしまうシーンも数多く出来ました。そして僕が一番曝け出したくなかった心の内にまで切り込んで、その浅ましさを描きました。なぜこんな人生を曝け出したくなったのか、答えは是非、劇場でご覧ください。まるでジェットコースターのように乱高下する、どうしようもない、愛すべき家族の物語は、きっと皆さんの心に大切な誰かを守る気持ちを宿すと信じています。札幌のまだ少し肌寒い、夏の前の空気を下北沢で感じてもらえたら幸いです。ご来場、心よりお待ちしています。撮影:金子裕美<作品情報>ストスパ 4th『エゴイズムでつくる本当の弟』7月19日(水)~23日(日) 下北沢 小劇場B1ストスパ 4th『エゴイズムでつくる本当の弟』ビジュアル作・演出:白鳥雄介出演:秦健豪、丸山港都(劇団東京夜光)、株元英彰、小山百代 ※ダブルキャスト、木村友美 ※ダブルキャスト、内田めぐみ(ソラカメ)、飛世早哉香(in the Box / OrgofA)、青地洋、賢茂エイジ(円盤ライダー)、森下ひさえ(theatre PEOPLE PURPLE)、大内厚雄(演劇集団キャラメルボックス)チケット情報はこちら:
2023年07月20日白鳥雄介が主宰するストスパの第4回公演「エゴイズムでつくる本当の弟」がまもなく開幕する。“家族崩壊阻止型うっちゃりコメディ”と銘打たれた本作は、白鳥自身が生まれ育った家族の物語をベースに、複雑な状況にある一家の再生を目指し、各々が奮闘するさまを描き出す。白鳥と一家の末弟のミツオを演じる秦健豪に話を聞いた。あくまで、実話をベースにしたフィクションだが、少なくない部分で白鳥の実体験が元になっており、白鳥は「稽古場で見ていると、秦くんが弟にしか見えなくなったり、森下ひさえさんが演じる母を見て、切なすぎて笑ってしまったりしています」と明かす。秦が演じる末弟のミツオは、父の再婚で一家に加わったが、その実父が蒸発したことで、家族の誰とも血の繋がらない存在となり、さらに様々な不運も重なり、引きこもりのような生活を送っている。「僕自身はわりとコミュニケーションを取るのが好きなタイプだし、置かれた状況も自分とは異なる部分が多いので、“演じている”という感覚が強いんですけど、なぜか稽古場で、ものすごく感情移入してしまって、兄を見て『僕は、この人の弟だけど、血の繋がりはなくて…』とか考えて苦しくて泣いてしまったり。感情としては苦しいんですけど(苦笑)、役者・秦健豪としては、本気で挑んでいる感覚で心地よいです」。どの登場人物も個性的で魅力的だが、ひときわ光るのは、何があろうと明るく、そしてパワフルに生きる母親の存在だ。白鳥は「セリフにもある『つらい時こそ笑おう』というのは実際に母が口にした言葉です。つら過ぎてそう言わずにいられなかったのかもしれませんが。時に地獄を見ながら、ジェットコースターのような人生を送ってきた人で、間違いなくこの作品の魅力だと思います」と頷く。白鳥とは2作目となる秦は「脚本から、いざ役者が立って演技する段階になって加えられる“笑い”の演出が白鳥さんの魅力。この作品も、シリアスで生々しい物語ですが、笑いが差し込まれることで、より切なくなっています」と語る。特異な一家に見えて「必ずどこかで観ている方の家族と重なる瞬間があると思います」と白鳥。「苦しいながらも愛おしさみたいなものを失わずに歩んできた家族の姿を見ていただければと思います。稽古場で生まれる、一言では表せないような感情や空気、そこに演劇にしてる意味と手応えを感じています」と言葉に力を込める。「エゴイズムでつくる本当の弟」は小劇場B1(東京・下北沢)にて7月19日(水)より上演。
2023年07月18日「ここですかね?」開場前のステージで、この日の主役でバイオリニストの穴澤雄介さん(48)が立ち位置を確認する。客席側から「時計と反対回りにあと10度ほどです」と返すのは、彼が毎日配信しているYouTubeチャンネルの撮影担当者だ。東京・御成門のピアノ・カフェ「ベヒシュタイン」でのこの公演も第一部が生配信される。定位置を決めた穴澤さんは足元に木製の棒をテープで固定した。「踏んだ感覚でわかるようにティンバレス(太鼓の一種)のスティックを貼って、立体的な印をつけるんです。これがなかった時分には、ステージから落ちてしまったことがありました……」午後1時、来場者の視線がサングラスにカウボーイ・スタイルの穴澤さんに降り注ぐ。その右手の弓が弦の上を行き来し、明るく軽やかなメロディを奏で始めた。オリジナル曲『海峡を渡る風』では、指で弦をはじくピチカートという技法を用いて、津軽三味線のような鋭敏な音色を刻んで観客のテンションを引き上げる。かと思えば手を止めて口笛を吹いたり、オタマトーンなる珍しい楽器でアニソンを愉快に奏でたり。バラエティ豊かなステージ構成に一貫するのは、「譜面をめくって演奏するスタイルでない」こと。「学生時代にほぼ視力を失った私は、ほかの演奏家と同じ手法では勝負にならないと悟っていました。プロの音楽家としての、私だけのスタイルを探してきたんです」そう、穴澤さんは両目の視力をすべて喪失した中途失明者であり、全盲のバイオリニストである。先天性の心臓疾患と心臓手術で目に著しくダメージを受け、高校3年生で右目、26歳で左目を摘出して、すべての光を失った。そんな穴澤さんが曲間のMCで、声をはずませて、しゃべりだす。「2日前に、YouTube用に『うる星やつら』のラムちゃんのお絵描きを仕上げたところです。こんなふうにね、ラムちゃんのフィギュアを触りながら……」あやしそうな手つきで、人形のボディラインをまさぐるしぐさ。「全盲の私が感覚だけでデッサンすると、どんな絵が描けるかっていうゴキゲンな企画だっちゃ!」おどけた口調に、女性が中心の客席が笑いに包まれる。彼のチャンネルのオープニングトークも「全盲のユーチューバー、アナちゃんでございま〜す!」とアゲアゲな入りで、芸人みたいに始終コミカルなしゃべりなのだ。近年では’20年東京、’22年北京のオリンピック・パラリンピックでNHKユニバーサル放送(視聴覚に障害のある人などが視聴しやすいよう、手話や字幕、音声解説などを充実させたコンテンツ)のコメンテーターも務めた多芸ぶり。穴澤さん本人は、こう語る。「ハンディキャップがあるからと大目に見てもらっているようでは、ダメだと思っていました。私はイチ社会人として、プロの音楽家として食べていくことを、つねに望んできたんです」多彩な楽曲と爆笑トークの底に、強い信念と自負心がうかがえる。■先天性の障害が心臓と目に。小学校高学年で「一般的な仕事」は諦め、バイオリンを猛練習ファンから「アナザー(穴澤)・ワールド」と称される独自世界を築いた穴澤さんは’75年3月29日、千葉県市川市に生まれた。父は、医療機器会社に勤務する会社員で、母は専業主婦だった。「私は先天性の障害が心臓と目にありました。生まれたときに紫色の顔をしていたそうで、即入院。2歳までほとんど病院で過ごしていて、入院や通院を繰り返していたのを覚えています」幼少時期から運動を制限され、眼鏡をかけていた穴澤さんがバイオリンに触れたのは5歳のこと。「幼稚園の友達と一緒にお稽古事として通いました。母親同士が決めたんだと思います」世に中流意識が叫ばれた時代に、穴澤家は「中の上くらい」の生活水準だった。月謝は2千円、与えられたバイオリンは中古だった。だが小学校中学年以降、心臓の動きがだんだん悪くなってきた。「10歳で最初の心臓手術をしました。麻酔が効きすぎたのか、丸2日、記憶がありません。そしてそこから、どんどん視力が落ちてきてしまったんです」先天性緑内障と診断されており、視野狭さくも大きくなってきた。教科書を読むにも拡大鏡が必要で「人の3倍」時間がかかった。「小学校高学年のころ『一般的な仕事には就けないだろう』と悟りました。同時に『演奏家だったらなれるかな』と。耳や手先の感性を研ぎ澄ましていけば、なんとかなると思ったんです。そこから、バイオリンを猛練習しました」中学進学の際は、筑波大学附属盲学校中学部へ。「将来的に全盲になる覚悟をしなければなりませんから、盲学校を選びました。盲学校では私より重度の障害がある級友がずいぶん明るく過ごしていたので、『弱音を吐いてはいられない』と励みになりました」軽音楽部に入部してキーボードやパーカッション、ドラムを経験。楽譜を見ながらの演奏は困難になってきて、耳で覚える「耳コピ」が主となっていく。「音楽家志望ながら、楽譜を見ての演奏が基本となるクラシックは無理だと、選択肢が狭まっていく時期でもありました」だが筑波大附属盲学校の高等部本科音楽科に進学後、視力はますます衰えていった。「外出時にけがすることが増えました。思い切り何かに激突したり、転倒もするので、白杖を持つようになったんです。点字の勉強も、この時期から始めました。ちなみに、私は駅のホームから、これまでに2度転落しています」何げなく彼は話すが、つねに命の危険と直面しているのがわかる。「視覚障害者の鉄道での人身事故は、時折、起こります。まったく予期できず線路に落ちるため、打ちどころが悪く致命傷になってしまうことだってあるんです」この高等部時代に体育の授業で右目を負傷して、猛烈な痛みが引かず、17歳で右目を摘出手術。折あしくバブル崩壊直後で、父が経営する会社も業績悪化する。「もう『中の上の生活』なんて言っていられず、一度の受験失敗で音大進学もあきらめました。高等部卒業後、2年の専門教育を受けられる専攻科音楽科に進学。音楽を仕事にするためでした」’95年、専攻科を修了するとフリーランスで音楽活動をスタート。「バイオリンを受け入れるバンドやアンサンブルを、探しては応募しました。でもグループに入っても、最初の楽譜の読み込みから、ほかのメンバーに著しく遅れてしまうんです」楽譜を受け取り、視覚障害者のためのボランティアに依頼すると、1週間ほどで点訳が上がる。そこからやっと練習を始められるが、「バイオリンは、楽譜を見ながら両手で弾きます。でも、私はまず点字を指で触れて理解し、その後にバイオリンと弓を持って……。いちいち持ち替えながらでしか練習ができないから『人の3倍は時間がかかる』と言われるんです」ほかのメンバーから、お荷物扱いされることもあった。「あるとき『スケジュールが合わないから』と解散したアンサンブルが、私以外のバイオリニストで、ちゃっかり再開していました」当時の仕事頻度は、バイオリンの家庭教師が週1〜2回、ライブは多くて月2回ほど。「ノルマのチケット代を回収しても、手取りわずか数千円でした」理想とかけ離れた現実を味わい、悶々とした青春時代だった。■生きたくても生きられない子が、世の中にはたくさんいる。粘り強く、しぶとく生きていこうと誓った事件は21歳のときに起きた。父の会社の倒産と、夜逃げーー。「その日、家庭教師バイトを終え、帰宅したのが21時ごろでした」呼び鈴に応答すると、知らない男性2人がいきなり入ってきた。その後も立て続けに何人も上がり込み、20人ほどに取り囲まれた。「そこで『父の会社が倒産した』と聞かされました。彼らは債権者だったんです。『父親の居場所を教えろ』『金を出せ、あるんだろ!?』怒鳴られ、脅され……本当にドラマのワンシーンのようでした」商売道具のバイオリンだけ死守してほうほうの体で家を飛び出し、知人や友人宅を転々とした。2カ月後なんとか4畳半アパートに落ち着いたが、家からは家財道具一式、持ち去られていて……。「残ったのは炊飯器だけ。お米を炊いてもおかずを買う余裕がなかった。体重が40kg台に落ち、ガリガリに痩せ細ってしまいました」視覚障害者の手当はあったが、それだけでは生活できない。市川市役所で追加支援の有無を聞くと、信じがたい差別発言を放たれた。「50代の男性職員が、笑いながら『あなたみたいな人にできる援助はないということですわ』と言いました。強烈な悔しさで涙が出て」その怒りが、一切の甘えと退路を断った。以来「どんなに小さい仕事でもくまなく探して取りに行く」営業スタイルで動きだした。ライブハウスから結婚式場まで、片っ端から電話をかける日々。「些少なギャラでも『ありがとうございます』と引き受けました。高齢者施設のボランティア演奏も喜んで行った。ノーギャラでも、交通費が出て院内給食をいただければ御の字です。だって、おかずがあるんですから!」経験を重ねれば、経歴に書ける項目も増えていく。職業訓練校に通って習得したパソコン処理で、履歴書も企画書もお手のものに。「売り込みながら同時にコンテストを受けました。なるべく賞が取りやすいものから応募したんです」たとえばビール会社のCMオーディションに採用された曲がFMラジオでOAされると即、実績に上書きして、また営業へーー。「ふつうはクラシック奏者が書かないものも、構わず書いてアップデートしました。病院や施設での演奏歴もすべてです」そしてついに、CDデビューのチャンスが。’99年、24歳でアルバム『シンシアリー・ユアーズ』を発表したのだ。「プロとして『やっていける』と思えた瞬間です。収入はわずかでしたが、これを営業ツールにして『食べていける』自信になった」’01年、26歳で左目を摘出手術して、両目が義眼となったが。「かえって、スッキリしました。『もう目のことで闘わなくてもいいんだ』と。手術前、記念に自分の顔に向けてカメラのシャッターを切り、光の見納めをしました」’06年、第25回浅草ジャズコンテストで金賞。そして’10年、障害のあるミュージシャンの国際音楽コンクール「第7回ゴールドコンサート」でグランプリを受賞。再三の苦境もそのつど、笑顔で前を向き、乗り越えてきた原動力とは、なんだったのかーー。「最初の心臓手術をした、10歳のとき、病室の隣のベッドに5歳の男の子がいました。その子は生まれてからずっと入院生活で病院を出られない子だった。いつも消火器のおもちゃを握っていたあの姿に『遊びたくても遊べない、生きたくても生きられない子が、世の中にはたくさんいるんだ』と思い知らされました。私自身は『どんなにつらいことがあろうと命を無駄にしない。粘り強く、しぶとく生きていこう!』と、あのとき誓ったんです」だからこそ「食べていけること」の幸せをかみしめていたのだ。夜逃げしていた父は、穴澤さんが29歳のころ消息がわかった。穴澤さんはその後「付かず離れず」の距離にいて、父は71歳で亡くなった。■与えられた環境でベストを尽くす。穴澤さんのメッセージは曲となって人の心を打つ富山県在住でファンクラブ会長を務める星井光さんは、15年前、オリジナル曲『あの木に寄りかかって』を耳にして、心に響いた。「父を亡くしたばかりだった私が、初めて聴いた穴澤さんの曲でした。富山で穴澤さんが参加したライブで、『父を思って書きました』演奏された、やさしい音色に号泣したのを思い出します。いまも穴澤さんの曲に癒され、元気をもらいます。ジョギング中でも聴いているんです」5月30日からは東京都写真美術館ホールを皮切りに、主演ドキュメンタリー映画『光をみつける』(永田陽介監督)が全国順次ロードショー公開される。「中途失明で、心臓疾患があって、生活困窮者だった私が、なんとか演奏家として生活できています。どこかにコンプレックスがあっても、人それぞれ与えられた環境で、ベストを尽くすことが大事。それを、ひとりでも多くの方に伝えていきたいと思っています」穴澤さんの音が、先々で出会う人たちに、光をもたらしていく。【後編】母は家出、父は夜逃げ全盲のバイオリニスト・穴澤雄介さんの壮絶半生へ続く(取材・文:鈴木利宗)
2023年05月28日【前編】暗闇に負けない!希望の調べ全盲のバイオリニスト・穴澤雄介さんより続くハンディキャップがありながらも、がむしゃらに、泥臭く歩んできた半生。つらく苦しい経験を重ねてきたからこそ、穴澤雄介さん(48)の音は聴く人の心に灯をともすのだ。5月30日からは東京都写真美術館ホールを皮切りに、主演ドキュメンタリー映画『光をみつける』(永田陽介監督)が全国順次ロードショー公開される。そんな穴澤さんの半生とはーー。穴澤さんは’75年3月29日、千葉県市川市に生まれた。父は、医療機器会社に勤務する会社員で、母は専業主婦だった。「私は先天性の障害が心臓と目にありました。生まれたときに紫色の顔をしていたそうで、即入院。2歳までほとんど病院で過ごしていて、入院や通院を繰り返していたのを覚えています」母は、穴澤さんを妊娠中に風疹にかかったのだという。「じつは、医師から『障害児になるかもしれません』と告げられた母は、堕胎しようと考えたらしいんです」堕胎に反対したのは、父だった。「父は、母にこう言い張ったそうです。『もう心臓も動いているのに、人殺しみたいで気が進まない』と。そのおかげで、私はこの世に生を受けることができました」しかし生まれた子には、障害があった。「だから言ったじゃないの!」。母は父に激怒したのだと。「母はなんでも完璧にできないと許せない性格でした。料理、掃除、裁縫とあらゆることをハイレベルにこなすだけに、産んだ子が障害児だったことが、許せなかったんだと思います」■視力が落ちるたびに激怒した母穴澤さんは14歳のときから会っていない母のことで、穴澤さんの口からいい言葉は出てこない。それでも産み育ててくれた母ではないか。「確かに通院も世話も、母がしてくれました。でもそれらが、私への愛情からだったのか疑問です。母は私の視力が落ちるたび激怒しました。それも、わが子が具合が悪くなるのが許せないからだと私には思えた。暴力的なことさえ、されてきましたから」しぜん母との時間が窮屈になり、叱られるのが怖くなった。逆に父のおおらかさに、救われたのだと振り返る。「父はズボラな人です、寝たばこしていて焼け焦げを作ってしまうような。だからか、息子の私にも何もうるさく言わなかった」幼少時期から運動を制限され、眼鏡をかけていた穴澤さんがバイオリンに触れたのは5歳のこと。中学進学の際は、音楽大学付属中学も合格したが、筑波大学附属盲学校中学部への入学は、自分で決めた。母には大反対されたが、希望を通したのだ。進路を考えるこのころ、家では両親の不仲が明らかになってきた。「家に帰れば父母がけんかしているんです。母はだんだん家に帰ってこなくなりました。中学2年生のとき、両親は離婚しました」穴澤さんはサラリと振り返る。結局この14歳の多感な時期から今日まで、母には会っていない。「大人になって以後、一度、手紙は来ましたが『元気でやりなさい』というような内容でした。恨んでいるわけではないのですが、あえて会うこともないと思うんです」いま母について話す口調は淡々として抑揚がなく、なんの感情も抱いていないかのようにも映る。ともあれ、両親の離婚後は、脱サラして貿易会社を起業していた父と一緒に暮らすことになった。折あしくバブル崩壊直後で、父が経営する会社も業績悪化する。穴澤さんは高等部卒業後、2年の専門教育を受けられる専攻科音楽科に進学。音楽を仕事にするためだった。’95年、専攻科を修了するとフリーランスで音楽活動をスタート。■夜逃げした父は29歳のとき消息が判明。5年前、危篤状態で意識のない父に手向けの曲を奏でて事件は21歳のときに起きた。父の会社の倒産と、夜逃げーー。いきなり自宅にやってきた債権者に取り囲まれ、商売道具のバイオリンだけ死守してほうほうの体で家を飛び出し、知人や友人宅を転々とした。2カ月後なんとか4畳半アパートに落ち着いたが、家からは家財道具一式、持ち去られていて……。「残ったのは炊飯器だけ。お米を炊いてもおかずを買う余裕がなかった。体重が40kg台に落ち、ガリガリに痩せ細ってしまいました」視覚障害者の手当はあったが、それだけでは生活できない。市川市役所で追加支援の有無を聞くと、信じがたい差別発言を放たれた。「50代の男性職員が、笑いながら『あなたみたいな人にできる援助はないということですわ』と言いました。強烈な悔しさで涙が出て」その怒りが、一切の甘えと退路を断った。以来「どんなに小さい仕事でもくまなく探して取りに行く」営業スタイルで動きだした。そしてついに、CDデビューのチャンスが。’99年、24歳でアルバム『シンシアリー・ユアーズ』を発表したのだ。「プロとして『やっていける』と思えた瞬間です。収入はわずかでしたが、これを営業ツールにして『食べていける』自信になった」’06年、第25回浅草ジャズコンテストで金賞。そして’10年、障害のあるミュージシャンの国際音楽コンクール「第7回ゴールドコンサート」でグランプリを受賞。夜逃げしていた父は、穴澤さんが29歳のころ消息がわかった。「保健所から電話で父の名前を言われ『息子さんですね』と。結核にかかって身元引受人が必要となり、私に連絡が来たんです。『ああ、父は生きていたんだ』と」父からも直接、電話を受けた。「特に夜逃げしたことを謝るでもなく『大変なことになって参ったよ〜』と。基本やさしくおおらかな人。怒る気もありませんでした」その寛容さは、父への特別な思いがあったからだと打ち明ける。「私に生を受けさせてくれたのは、父だという感謝があるからです」父の結核は快方に向かい、穴澤さんはその後「付かず離れず」の距離にいた。その父が71歳で亡くなったのは、’18年8月。穴澤さんは、その日、埼玉県でライブ中だった。「当時、父は軽い脳梗塞を発症してリハビリ後、神奈川のグループホームに入所していました。そこで脳幹出血で倒れて『危篤状態です』という連絡を受けました」穴澤さんはライブをアンコールまでしっかり演奏し終え、神奈川まで電車を乗り継いだ。「夜12時近くでしたが、もう意識のない父に向け、消音器をつけてバイオリンで演奏しました。父が好きなビバルディの『四季』から『冬・第二楽章』を」父と息子だけの小さな演奏会を終えると、病室は無音になった。「中途失明で、心臓疾患があって、生活困窮者だった私が、なんとか演奏家として生活できています。どこかにコンプレックスがあっても、人それぞれ与えられた環境で、ベストを尽くすことが大事。それを、ひとりでも多くの方に伝えていきたいと思っています」穴澤さんの音が、先々で出会う人たちに、光をもたらしていく。(取材・文:鈴木利宗)
2023年05月28日山形県鶴岡市出身のフルーティスト鎌田邦裕のリサイタルが目前だ。「笛吹絵巻(ふえふきえまき)」と題された今回のリサイタルは、「日本」「ふるさと」がテーマ。その心は、幼少の頃からクラシック音楽に触れ、日本にいながらにして西洋文化についての学びを深めてきた鎌田にとって、日本人が西洋の文化を学ぶ意味とはなにかを考えることにあるという。「日本」に焦点を当てたプログラムには、日本の音楽や、日本人が作った西洋の音楽、西洋から見た日本の音楽が並ぶとともに、鎌田と同じ中学・高校の先輩でもある、鶴岡市出身の作曲家・佐藤敏直がフルートソロのために作曲した楽曲も披露される。中でも興味深い作品が、フルートと詩の朗読による作品「笛吹き女(ふえふきめ)」だ。菅原明朗作曲によるこの曲には、与謝野晶子に師事していた昭和の詩人、深尾須磨子の詩が用いられている。深尾須磨子は、詩人であると同時に昭和初期の女流フルーティストでもあり、昭和5年に発表した詩集「雌鶏の視野」において、自らとフルートのことを描いた詩がこの「笛吹き女」だというのだから意味深だ。東京公演の朗読は、冨永みーな(代表作:「サザエさん」カツオ役、「それ行け!アンパンマン」ドキンちゃん/ロールパンナ/レアチーズ役)。山形(庄内)公演は、松野太紀(代表作:「金田一少年の事件簿」金田一一役、「スポンジ・ボブ」スポンジ・ボブ役)が出演。鎌田邦裕のフルートと朗読で共演するのも楽しみだ。山形から世界へと羽ばたく俊英の“今”を見届けたい。「鎌田邦裕フルートリサイタル〜笛吹絵巻〜」出演:鎌田邦裕(フルート) / 遠藤直子(ピアノ)ゲスト:冨永みーな(東京公演)、松野太紀(山形(庄内)公演)【東京公演】2月17日(金) 19:00 開演(18:15 開場)※18:40 頃よりプレトーク開催江東公会堂(ティアラこうとう)小ホール【山形(庄内)公演】3月18 日(土) 14:00 開演(13:15 開場)※13:40 頃よりプレトーク開催。庄内町文化創造館 響ホール 大ホール■プログラム(予定)山田耕作:「この道」を主題とする変奏曲尾高尚忠:フルート協奏曲D. チェスノコフ:日本狂詩曲 Op. 48江文也:祭典ソナタ鶴の巣篭もり (尺八古典本曲)佐藤敏直:舞 ‒ フルートソロのために菅原明朗:笛吹き女
2023年01月31日パフォーマンスユニット・円神(エンジン)の山田恭が、白鳥雄介の主宰するStokes/Park第3回公演『フゴッペ洞窟の翼をもつ人』で舞台初主演を務める。開幕まで約10日となった稽古場で、山田と作・演出を手がける白鳥の話に耳を傾けた。劇中では、北海道余市町に実在する続縄文時代の遺跡「フゴッペ洞窟」を舞台にした白鳥オリジナルのストーリーが展開される。幼少期から母の介護に明け暮れる26歳の主人公(山田)が、刻画(こくが)として壁に現存する“翼の生えた人間”が実体化した存在と出会って魂と心を通わせていく様子が描かれる。札幌市出身の白鳥が、洞窟の刻画に感銘を受けたのは大学生の頃だったという。「1500年前に描かれた“翼の生えた人間”に勇気づけられた僕自身の体験を芝居のモチーフに散りばめました」「人生ハードモードな“翼がない人間”でも、自ら求めて他者と繋がり信頼関係を育むことで豊かな未来を開拓していけるのではないか、と思いまして」という白鳥の話に、山田は深く頷く。サバイバルオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN』に挑戦し現在円神として活動している山田は、演じるヤングケアラーの誠太に自身の境遇を重ねていた。「最終メンバーに選ばれず挫折感を味わった僕には、思うように人生が運ばない誠太のジレンマがよくわかるんですよね」「周りの人を信じながら自分の力で羽ばたこうとする誠太をまっとうすることで、僕自身が翼を授かって自信に変えていけたら」と期待を込める。キャラクターの履歴書をつくって役理解を促すなど、山田の成長に伴走している白鳥。特に幼い頃から母に尽くしてきた誠太の暮らしぶりを見せる冒頭シーンの稽古がターニングポイントになったらしく、「俳優同士で話し合い、内面の掘り下げを徹底的に行ったことでグッとよくなったんですよ!」と笑顔を見せた。山田自身も「もっと自分の殻を突き破っていいんだと気づいて、感情の幅を大きく見せられるようになりました」と手応えを感じたようだ。そんな劇世界をよりドラマティックに盛り上げるのが、茂呂剛伸による縄文太鼓の生演奏だ。白鳥は「和太鼓やアフリカの楽器とも異なる、神秘的で不思議な音色をぜひ劇場で聴いていただけたら」と呼びかける。また、劇場では物産展「よいちマルシェ」も開催。名産のリンゴをはじめ、ニシンやアンコウといった水産加工品も並ぶという。「北海道余市町の風を、東京・下北沢に起こせたら」と言って、白鳥はインタビューを結んだ。公演は7月13日(水)~17日(日)に、東京・下北沢の小劇場楽園にて上演される。チケット販売中。取材・文=岡山朋代
2022年07月12日内野聖陽、岡本圭人出演、劇団チョコレートケーキの日澤雄介が演出する舞台『M.バタフライ』が6月24日、東京・新国立劇場 小劇場にて開幕。開幕を前に内野、岡本、日澤による舞台挨拶と、約13分間のプレスコール(一部シーンの上演)が行われた。あるフランス人外交官が国家機密情報漏洩という大罪を犯すほど愛に溺れた相手が、性別を偽った中国のスパイだった。という驚愕のニュースに着想を得たアメリカの劇作家・デイヴィッドヘンリーファンが、オペラ『蝶々夫人』を劇中に取り入れながら創作した本作。1988年にトニー賞最優秀演劇賞を受賞しており、日本では1990年に劇団四季で上演されて以来32年ぶりの上演となる。出演は内野、岡本のほか、朝海ひかる、占部房子、藤谷理子、三上市朗、みのすけ。マスコミ向けに公開されたのは実直な外交官ルネ・ガリマール(内野)が、エキゾチックで美しい衣装を纏い京劇の舞を披露するスター女優ソン・リリン(岡本)に心を奪われ、彼女と一緒に街を歩き会話しただけの事実を伝えられず初めて妻に嘘をつくという場面。そして夢の中で同級生マルク(みのすけ)とソンについて対話するという一連のシーン。舞台挨拶で「演出プランとしてはルネ・ガリマールの頭の中にお客様をいかに連れていけるか、いかに共有できるか、という事を軸にした」(日澤)、「彼の脳内劇場で起こるさまざまなストーリー」(内野)と語る通り、観客はルネの脳の中を覗くように、このエキゾチックで興味深い登場人物たちの物語をたどる。(参照: 『M.バタフライ』ルネ・ガリマールの頭の中を探る日々-主演・内野聖陽×演出・日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)対談() )また、「(翻訳の)吉田美枝先生の編み出した日本語の美しさ、素晴らしさにあらためて気づいた」(内野)としつつ、30年前の翻訳戯曲という事で、「日本語に対してすごくうるさい俳優」という内野が今の時代の言語に合うように1年程かけてすべてを見直し、日澤らの助けも借りながら今回の上演に漕ぎつけたと明かし、「この壮大な作品をなんとかクオリティをあげて楽しんでもらえるように、『M.バタフライ』が日々成長していけるように皆様の心に想像力をはばたかせるような物語になっていければ」。そんな「日本語にうるさい」内野からはイントネーションをよく注意されると語った岡本は今回、舞台出演2作目にして、性別を偽ったスパイであり、京劇のスター女優という難役に挑む。「所作指導の先生、京劇の先生、メイクさん、衣裳さん、日澤さん、内野さん、その他スタッフ、沢山の方に支えていただいた。ひとりではできなかった」と語り、「舞台というのはお客さんに観ていただいて初めて完成するので、この『M.バタフライ』がどう完成するのか楽しみです」と期待を寄せた。東京公演の上演は7月10日(日)まで。その後7月13日(水)から15日(金)まで、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて大阪公演を予定している。撮影:岡千里<公演情報>『M.バタフライ』原作:デイヴィッド・ヘンリー・ファン翻訳:吉田美枝演出:日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)出演:内野聖陽、岡本圭人、朝海ひかる、占部房子、藤谷理子、三上市朗、みのすけ
2022年06月25日主演・内野聖陽、演出・日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)が初タッグを組んで立ち上げるのは、オペラ『蝶々夫人』をなぞるように綴られる、驚愕の事実を元にした哀しい愛の物語だ。劇作家ディヴィッド・ヘンリー・ファンによるトニー賞受賞作(1988年)が、日本では1990年の劇団四季での上演以来32年ぶりに登場。文化大革命の時代の中国・北京を舞台に、フランス人外交官ルネ・ガリマール(内野)と、京劇のスター女優を装いながら実は毛沢東のスパイ、そして性別も偽っていたソン・リリン(岡本圭人)の、あまりにも衝撃的な愛のドラマが描かれる。作品ごとにイメージを打ち破って役に憑依する“カメレオン俳優”内野と、主宰する劇団の公演や昨年末のミュージカル『蜘蛛女のキス』などで重層的な劇世界を生み出し、確かな手腕に評価が集まる日澤。両者が向き合う稽古場で今、湧き起こる化学反応とは……!?誰もがガリマールになり得る瞬間を、どう共有し立体化していくか――あるフランス人外交官が性別を偽った中国のスパイと恋に落ち、国家機密漏洩の罪を負った実話をヒントに作られた物語です。最初は作品のどんなところに心惹かれたのでしょうか。内野とてもよく出来た戯曲(ホン)で、とくにラストの展開が意外で、僕としては不可解極まりないんですよ。その劇的な作り方に一番惹かれましたね。今、稽古をやればやるほど、すごい戯曲だな! と唸らされて。もしかしたらこれは僕が演じる外交官ルネ・ガリマールという男の妄想で、すべては彼が頭の中で喋っている言葉かもしれない……、稽古を重ねるうちに、相手の役者さんの言葉が自分の言葉のように聞こえて来る日があるかも……なんて(笑)。まだまだこれから発見があるだろうなと感じています。日澤僕も、“本当にあった事件をもとに”という部分に、え、本当なの!?って驚いたところからまず入って。まあ時に、現実は想像を超える瞬間があるということなんだろうなと。そういった出来事を、説得力を持たせて舞台にする、そこにすごく面白味を感じました。歴史の大きな流れがベースにはあるけれど、そこにあるのはやっぱり人間の本質であったり、とても個人的なことであったり。でもその個人的なことに僕らもお客さんも強く共感する、そうなり得る瞬間を感じるんですよね。具体的に言うと、誰もがガリマールになり得る瞬間、それを俳優さんともお客さんとも共有して、どう立体化させていくか……。面白いけど、相当大変ですね。内野さんはほぼ出ずっぱりですし(笑)。――1960年代、文化大革命の頃の中国・北京が物語の背景であり、戯曲を読むとアジアや女性に対する蔑視表現も多々見受けられて結構ドキドキするものがありました。どのような意識で今の日本の観客に提示しようと考えていらっしゃいますか。内野僕としては、そういう部分は薄味にしないほうがいいと思っています。今の時代の尺度を入れてしまうと、この作品が崩壊するような気がしますね。西洋が東洋を見下す視線、そういったものが確実にあり、男女の性差が大きかった時代の物語なので、そこは勇気を持ってその時代の様相を表現したほうがいいと僕は思います。日澤まさに、そこはテーマでもあると思うんですよ。この物語では、西洋対東洋が、男対女になぞらえている。じゃあ今はそういった視線はないのか?と問われたら、本質としてはそうとも思えないですし。この作品に描かれている意識や見方というものは、今もまだ色濃く残っていて、僕自身の中にもあるだろうと感じています。ある種グロテスクに感じる部分もあっていい、そんなふうに考えていますね。ただ、それを単に「ある種の差別だ」と表すだけで止めない作品です。さらにその先を考えさせる力を持ったホンなので、僕は、心配はしていませんね。「本当の自分が見えない」ルネ・ガリマールといかに向き合うか――主人公のフランス人外交官、ルネ・ガリマールという人物を、おふたりがどう捉えて表出しようとしているのか伺いたいです。内野基本、キャラクターってそんなに作品の中で変化していかないと思うんですけど、このルネ・ガリマールは本当に柔らかく変化していくんですよ。シーンによって変化していく……、もしくは変化させられていくキャラクターなので、そこが今回やっていて一番難しいところなんですよね。ソン・リリンとの出会いによって、どんどん輪郭が変化していくんです。その不定形なキャラクターにいかに説得力を持たせて、お客さんに受け入れてもらい、一緒に旅をしてもらうか……。本当にセンシティブに、大事に表出しなくちゃいけないなと。それにはものすごく集中しないといけないので、稽古が終わるとドッと疲れて、もう何もしたくなくなるんです。ハッハッハ!日澤稽古着のワイシャツを何枚も替えますもんね。内野汗がすごいからね。今回、具体的なセットがあるわけではなく非常に無機質なステージなので、俳優たちの演技で、それぞれの関係性や背景などを観客に想像させていかなくちゃいけないんです。僕ら自身が豊かなイメージを持って立たないとダメですよね。日澤僕もこの『M.バタフライ』を演出するにあたって、ルネ・ガリマールといかに向き合うか、どう彼の頭の中に入っていくかをずっと考えていて。とても繊細だけれど、それだけじゃない、ある種の破壊衝動……と言ったら言い過ぎかもしれないけど、自分の何かに疑いを持っている人なんですね。本当の自分に手が届きそうで届かない、何かが違う、それは何だ!?と、つねにガリマールは追いかけているような……。内野そう!日澤内野さんが本当に粘り強く稽古をして、一歩一歩、ガリマールという人間を作り上げていっていますが、もしかしたらその芯を見つけた頃にはお芝居が終わる、みたいな……。内野ええええ〜!(一同笑)日澤そういう作品のような気がするんですよ。そこがまた面白いところで。内野まあ、人間のいろんな面を気づかせてくれる役だなと。面白いけど、とにかく大変です。構造自体はすごく発見があるので、それに気づくと、おお〜なるほどね! と溜飲が下がる部分もあるんですけど……。日澤僕が今言ったことは難しく思われるかもしれないけど、ガリマールって人はとてもチャーミングですよ。精神的に非常に繊細であるけれども、そこから表出する言動がとてもチャーミングで、すごく人間臭かったり。それはやっぱり台本の面白さと、内野さんが演じることで立体化した時のパワーや魅力だったり。それは今でも十分に感じています。内野いやいや〜僕はもう、昨日、稽古の動画を見てヘコんでいますから。この取材に来るのも自分をすごく奮い立たせて来てるくらい、ヘコんでるから!(一同笑)日澤そんなことないのに〜。内野ホントに。まだ上辺の上辺だけだなって実感して。もうね、雲の上の頂が隠れて見えない、真っ暗で巨大な山を目の前にしているような感じですよ。これどうやって登るんじゃ!みたいな(笑)。ようやく山肌が少しずつ見えて来て、あ〜こういう構造の山なのね、でも頂上は雲の上で見えない〜さっぱりゴールがわからん〜というところです、今は。「圭人君が人の2倍頑張るんなら内野だって人の3倍ぐらいは頑張れよっ!」――内野さんがこんなにも苦悩されている巨大な山に、相手役に大抜擢されてともに挑む新鋭、岡本圭人さんの心境はいかに!? 稽古場での様子はいかがですか?日澤ソン・リリンはすごく挑戦的な役ですね。圭人さんは実際、悩んでいる部分も多々ありますが、真正面から内野さんにぶつかっていっています。京劇スターの振る舞い、オペラの“蝶々さん”など、やるべきことが多い中で、内野さんとの対話の戦いもある。ソン・リリンはガリマールを変化させなければいけないし、ガリマールから影響を受けなければいけない、本当に一瞬も気の抜けない役どころで。とにかく一歩一歩、稽古を重ねていくのみですね。『M.バタフライ』メインビジュアル。内野演じるルネ・ガリマール(左)と岡本圭人演じるソン・リリン内野彼、相当頑張っていると思いますよ。舞台に立つのがまだ何本目か……というキャリアで、これだけの大役を得た。おっしゃるように、オペラも少し歌わなければいけないし、京劇の舞や女形の所作もある。気の弱いヤツだったら心が折れるほど、やるべきことが多い。でも頑張ってるから、相当な根性ありますね。僕が彼くらいの年齢の時は、こんなすごい役もらえてないし、心もいっぱい折れて悔し涙ばかりの日々でしたよ(笑)。日澤彼自身も、素晴らしいキャリアを持った方々に囲まれて、自分がまだまだ出来ていないところがあることは当然自覚しているんですよね。だからこそ、今やるべきことはやる!と、腹を括っている感じがします。内野僕だってそんな余裕あるわけじゃないんですよ。「圭人君が人の2倍頑張るんなら内野だって人の3倍ぐらいは頑張れよっ!」って自分に拍車をかけてます。「日澤さんはすごく柔らかい感性を持った方」「内野さんは、可愛いですよ」――おふたりは初タッグになりますが、お話を伺いながらすでに息の合ったコンビネーションを感じます。内野日澤さんはすごく柔らかい感性を持った方なんですよ。今回、やっぱり役者と演出家ではホンの読み方が違うんだなってあらためて感じていて、日々すごく助けられています。僕ら役者ってどうしても生々しくイメージしていかないと、台詞が定着しないんですよね。だから具体的な読み方になってしまうんだけど、日澤さんは抽象度の高い読み方で、戯曲を緻密に理解していらっしゃる。そうか!だよな〜!って毎回、気づかされることばかりですね。日澤これは僕の演出方法でもあるんですけど、俳優さんの体や声などを通すことで、想像力が膨らむんです。もちろん戯曲は十分に読み込みますが、その言葉を発した時の内野さんの声、表情、立ち位置とかで、あ、ここはこんなシーンなんだ!ってパーンとひらめく時があるんですよ。内野それも僕、感じていました。役者のやったことにすごく触発されて、ポンポンポンポン言い始めるというか(笑)。役者としては、日澤さんをメラメラさせるような芝居をしたいと常に思いますよね。日澤内野さんは、可愛いですよ。内野ひゃあ〜!(一同笑)日澤本当に可愛い!拝見して来た舞台やテレビドラマでは、漢!って感じが多いけれど。まず、すごい芝居の虫ですよね。表現を突き詰め出したら止まらないし、それがすごく無邪気なんですよ。大先輩だけど、ご自身をバコーン!とフルオープンにして来てくれる方なので、そういう意味ではすごく可愛いです(笑)。内野僕、心を無にして、無邪気にならないと何も出来ないタイプなんですよね。とにかく一度、素っ裸になるしかない。モノ作りにおいては鎧なんて必要ないから。でも日澤さんもね、女性的な感性も持っていらっしゃると思っていて。僕は劇団チョコレートケーキの舞台を一度しか拝見していないんですけど、それが歴史モノでとても硬派な作品だったんです。だからすっごいインテリで硬いイメージの人なのかなと思ったら、ソン・リリンの演技指導の時とか、声も仕草もとても女性的で柔らかくて。それは意外な楽しい発見でした。男の話をする時は男の脳になり、女の話をする時は女の脳で、たたずまいも女性に見えちゃう……みたいなところがありますよ(笑)。日澤いや〜ありがとうございます。褒め言葉ですよね?(一同笑)内野そう、変幻自在な感じ。だから演出が出来ちゃうんだろうなと思いました。演出のキーワードはガリマールの“頭の中”――それぞれに触発し合う稽古場から、どんなスリリングな愛のドラマが立ち上がるのか、楽しみです。内野この作品はトニー賞受賞作であり、そういう意味では演劇的に質の高い戯曲なので、演劇を見慣れない人にも「不思議な話で、面白かった」と感じていただける気がします。けっして小難しい話ではなく、いわば男の女の話であると。しかも20年間もスパイに騙されていた、そうした事実が下敷きとなっていることにも興味津々じゃないかなと。そんな気軽な興味をきっかけに、劇場に来て、演劇の楽しさを味わってもらえたら嬉しいですね。日澤そう、ガリマールという普通の男の物語なんですよね。でもその普通の男の中に、何かがある。僕は本当にガリマールの頭の中に入りたいと思っていて、美術にしても、雑然としているけれど“頭の中”を大きなビジョンとして持っています。お客さんもガリマールの頭の中に入っていき、そこにある“何か”を一緒に探していただきたい。で、その先にあるルネ・ガリマールのラストを、どう捉えていただけるのか……。そこにすごく興味がありますね。本当に俳優さんには申し訳ないけれど、まったく拠り所にならない美術を考えていますので(笑)。内野でも、ものすごくカッコいい舞台になりそうな予感がしていますよ!取材・文=上野紀子撮影=You Ishii<公演情報>『M.バタフライ』2022年6月24日(金) ~7月10日(日) 東京・新国立劇場 小劇場※大阪、福岡、愛知公演あり
2022年06月17日有限会社IDT(大阪市浪速区)は、ミセスコンテストの世界大会であるミセスグローブの45歳以上の部、ミセスクラシックに日本代表として出場する鎌田 真紀子の挑戦を応援するプロジェクトをクラウドファンディングCAMPFIREにて開始いたしました。夢と希望があれば、年や病気に負けず、明るい未来をつかむことができるを皆様にお伝えしていきたいと考えております。61歳、世界への挑戦表紙「61歳世界への挑戦 夢と希望があれば未来は開ける」クラウドファンディングサイト ■背景還暦を過ぎて、老いていくことや、度重なる病気に見舞われ、後ろ向きな生活を送っていましたが、そんな自分を変える決心をして、人生初めてのミセスコンテスト(ミセスクイーン)にエントリー。そして、世界大会であるミセスグローブの45歳以上の部ミセスクラシックに選んでいただき、日本代表として、2022年5月に渡米することになりました。■特徴*挑戦を楽しむ新しいことを始める時に、「失敗したらどうしよう?」という不安も。たとえ失敗しても、その経験は、財産となり、次に進むことができます。「人生は一度キリ」どんなことも楽しんで生きていける心をもつことが大事。*「キレイ」は作られる背も高くないし、顔も、スタイルもごく普通、見られることも恥ずかしいと思っていたけれど、ウォーキングやメーキャップの練習、努力することで、「キレイ」は作ることができます。*夢があればいくつになっても未来は明るい今や女性の人口の半分以上は50歳を超えています。いくつになっても自分のやりたいことにブレーキをかけなくていい。■リターンについて5,000円 :世界大会での出場記念写真データをお送りします。10,000円:世界大会の映像や写真を見ながらのオンラインミーティングの参加券20,000円:世界大会のイブニングガウンコンペティションで使用するピアスと同じもの(新品)をお送りします。※その他、多くのリターンをご用意しています。■プロジェクト概要プロジェクト名: 61歳、日本代表として世界に挑戦!病気や苦手を克服し、世界に羽ばたきたい期間 : 2022年2月22日~3月26日23:59URL : ■会社概要商号 : 有限会社IDT所在地 : 〒556-0011 大阪市浪速区難波中2-8-75設立 : 2003年8月事業内容: スポーツウェア企画販売資本金 : 300万円URL : 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年03月04日山形県鶴岡市出身のフルーティスト鎌田邦裕が、20 歳のときから毎年、地元の鶴岡市でリサイタルを 開催している事業の一環であるコンサートシリーズが今年も全国3都市(京都・東京・鶴岡)で開催される。スタート以来のテーマである“故郷を音楽の力で元気に”という想いと、後に続く若い音楽家を支援する気持ちが込められたステージが目前だ。今回のプログラムでは、ヨハン・セバスチャン・バッハの名作「無伴奏チェロ組曲」の中でも、最もエネルギーを必要とすると言われる 第5番がフルートで演奏されるほか、行動が制限されていた第二次世界大戦中と現代のコロナ禍を重ね併せ、その当時に作曲された作品の数々が、作曲家たちの思いとともに奏でられる。鎌田邦裕ならではのトークと音楽の絶妙なコラボに期待したい。公式ホームページ: ●「鎌田邦裕フルートリサイタル〜祈りの音〜」公演概要出演:鎌田邦裕(フルート)、 笹まり恵(ピアノ)、 遠藤直子(ピアノ)【京都公演】⻘山音楽記念館 バロックザール2022年2月26日(土) 14:00 開演(13:15 開場)※13:40 頃よりプレトーク開催。前売(全席自由) 一般-3,500 円 学生-2,000 円 ※当日はいずれも 500 円増。※未就学児は入場不可。【東京公演】ティアラこうとう 小ホール2022年3月11日(金) 19:00 開演(18:15 開場)※18:40 頃よりプレトーク開催。前売(全席自由) 一般-3,500 円 学生-2,000 円 ※当日はいずれも 500 円増。※未就学児は入場不可。【鶴岡公演】荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館) 大ホール2022年3月18日(金) 19:00 開演(18:00 開場)※18:40 頃よりプレトーク開催。前売(全席自由) 一般-2,500 円 学生-1,000 円 ペア(※前売のみ)-4,000 円※当日は一般・学生共に 500 円増。未就学児は入場不可。■プログラム(予定)F.マルタン:バラードA.ジョリヴェ:リノスの歌P.ヒンデミット:フルート・ソナタJ.S. バッハ:無伴奏チェロ組曲より第 5 番 ハ短調 BWV 1011(フルート版)S.プロコフィエフ:フルート・ソナタ ニ⻑調 OP.94
2022年02月16日株式会社朝日出版社は『図解 鎌田 實医師が実践している 認知症にならない29の習慣』(著・鎌田 實)について、8刷目を決定しました。本書は、医師である著者が、70歳を過ぎたころから、人の名前が出てこないことが多くなり、認知機能を健全に保つにはどうしたらいいのか、自身の生活習慣を見直した経験から、実践していることをまとめた一冊です。コグニサイズ鎌田式かかと落としパタカラ体操巻頭ページでは、新型コロナウイルスから身を守るための「免疫力を上げる7つの習慣」を特別収録。新型コロナへの対策は、認知症予防にも通じる点が多くあります。長引くコロナ禍においても孤立を防ぐ方法、重症化のリスクとなる高血圧などを防ぐ食生活のひと工夫や、運動不足の解消と生活リズムを整える方法など、写真や図解でわかりやすく解説しています。「コロナに負けない7つの習慣」特別収録著者・鎌田 實氏のコメント(本文より)認知症を予防するために鎌田が実際にやっていることを書きましたが、この本は、認知症になってからも、進行を遅らせるためにも役に立つと、僕は考えています。70歳をすぎ、本を読むスピードが遅くなったり、時々、人の名前が出てこなくなった僕は、人生の第4コーナーを曲がっても、最期までピンピン、生きることを楽しみ、ヒラリと人生のゴールがきれるように、今できることを自分のできる範囲でやっています。PPH、ピンピンヒラリです。一人でも多くの方に、本当に体や心にいいことや正しい情報をきちんとお伝えしたい、いつもそう思っています。読者のなかには、「認知症になったらおしまい」というイメージをもつ人がいるかもしれません。しかし、「認知症=何もできない人」というのは大きな誤りです。脳の機能の一部がそこなわれても、できることはたくさんあります。現存能力を生かしながら、自分の「居場所」や「役割」を持ち続けることが、脳にいい刺激を与える。脳を刺激すれば、進行を遅らせ、いい状態を長く保つことができる――好循環を生み出します。認知症になったからといって、人生をあきらめる必要はないのです。僕には忘れられない言葉があります。「認知症になって不便なことは増えたけれど、不幸ではありません」本当にその通りだと思います。80歳になってもスキーができ、90歳になっても一人でジャズライブハウスに行けるように、僕が日ごろ、どんなふうに認知機能の低下を防ぎ、できる限りアップさせるために実践していることをすべてお伝えしました。しかし、本当の目的は「認知症にならないこと」だけではありません。認知症になっても、ならなくても、今ある自分の能力をフルに生かし、最後まで人生を楽しんでもらうために、この本のノウハウが役立てば幸いです。そう、この本は、人生を楽しみ尽くすための本です。書誌情報書名:図解 鎌田實医師が実践している 認知症にならない29の習慣著者名:鎌田 實発売日:2020年5月定価::1,408円(本体1,280円+税)体裁:A5判ISBN: 9784255011776ページ数:124発行:朝日出版社※電子書籍も配信中書籍詳細はこちら : 目次(抜粋)・鎌田医師の認知症を防ぐ毎日習慣 3つの柱・鎌田医師の一日〜脳の健康のために実践していること〜・若々しい脳のために、毎日これだけはやっています!〈第1章〉 認知症は生活習慣で防げる・ 軽度認知障害のかんたんチェック・ こんな症状は、生活習慣を見直すサイン・ 認知症予防のカギは、「慢性炎症」と「フレイル」対策〈第2章〉脳を元気に、若々しく保つ食べ方・週2回以上は、青魚を食べる。刺身や缶詰がオススメ・ えごま油は、食べる直前にサッとひとかけ・ 健康長寿のスーパーフード! 高野豆腐や粉豆腐を活用〈第3章〉鎌田式 ウォーキングと筋トレで、脳をイキイキ・歩幅を10㎝広げる「速歩き」と「遅歩き」を交互に行う・「鎌田式ワイドスクワット」で、効率よく下半身を鍛える・ 足踏みをしながら「しりとり」「計算」をするコグニサイズ・ 「鎌田式かかと落とし」で、骨から脳を活性化!〈第4章〉意識と習慣を変えれば、毎日が「脳トレ」になる・ 軽い運動、料理、片付けは、最高の脳トレにする!・ 新聞、本、映画、音楽を楽しむ日々。感動は声や文章で表す・ 新聞活用やボランティア─役割や生きがいをみつけるおわりに――認知症になっても、幸せに生きることができる番組出演情報テレビ朝日系「徹子の部屋」2月8日(火)午後1:00~1:30 ※事情により放送日が変更になる場合があります。著者プロフィール鎌田實(かまた みのる)1948年東京生まれ。1974年、東京医科歯科大学医学部卒業。1988年に諏訪中央病院院長、2005年より名誉院長に就任。患者の心のケアまで含めた地域一体型の医療に携わり、 長野県を健康長寿県に導いた。日本チェルノブイリ連帯基金理事長、日本・イラク・メディカルネット代表。06年、読売国際協力賞、11年、日本放送協会放送文化賞を受賞。ベストセラーに『がんばらない』『鎌田式「スクワット」と「かかと落とし」』(集英社)など著書多数。 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年02月08日11月26日(金)に初日を迎えるミュージカル『蜘蛛女のキス』。開幕を約1ヵ月後に控えた稽古場で、同性愛者のモリーナ役を務める石丸幹二と、演出の日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)がインタビューに応じた。アルゼンチンの作家マヌエル・プイグの小説を原作にミュージカル化され、1993年のトニー賞7部門を制した本作。『キャバレー』『シカゴ』で知られるジョン・カンダー(音楽)とフレッド・エブ(歌詞)のコンビが手がける楽曲は人気が高く、1996年以降に日本でも定期的に上演されている。劇中では、ラテンアメリカにある刑務所の一室を舞台にした物語が展開。映画を愛するモリーナは、社会主義運動の政治犯バレンティン(相葉裕樹 / 村井良大:Wキャスト)と同室に。最初は互いを理解できず激しく対立するふたりだったが、極限状態の中、モリーナが映画スターのオーロラ、また彼女が演じる蜘蛛女(安蘭けい:2役)について語るうちに、心を通わせていく──。同性愛者のモリーナは「特別な個性がないとやれない」と思っていたけれど――作品との出会いを教えてください。石丸僕が『蜘蛛女のキス』を観たのは、チタ・リヴェラが蜘蛛女とオーロラに扮していた、ブロードウェイのハロルド・プリンス演出版ですね。リヴェラは『ウエスト・サイド・ストーリー』のアニタが印象的で、群を抜いて声が低くシャープに踊るディーヴァ(歌姫)です。そんな彼女が「どんなことをするんだろう?」って興味から劇場に足を運びまして。バックボーンをまったく知らずに観たら、ラテンのショーみたいだと思いました。――海外でご覧になった当時、石丸さん扮するモリーナにはどんな印象を抱いていたんでしょう?石丸当時は僕もまだ若かったこともあって、バレンティンのキャラクターに共感していました。「彼を演じたい」って。モリーナは「特別な個性がないとやれない役」と思っていたんですが、この年齢になってオファーを頂戴し、僕が海外で拝見したバージョンに立ち返ってみると、ビビビッと繋がって。親近感が湧いたんです。――どんな点に直感が働いたのでしょうか?ミュージカル『蜘蛛女のキス』稽古場より石丸僕が年始に主演した『パレード』のオリジナル・キャストのブレント・カーヴァーが、当時モリーナに扮していたんです。彼がやっているなら『蜘蛛女のキス』に挑戦したい、と思いました。それでモリーナ視点で台本にあたると、バレンティン目線で読んでいたこれまでとはまったく異なる世界が広がっていて。これを、社会派の人間ドラマに定評のある日澤さんが演出したら「一体どうなるんだろう?」ってね。日澤普段はチョコレートケーキという劇団で、ストレートプレイの演出をしています。大原櫻子さんが主演した『リトル・ヴォイス』などで音楽劇の経験はあるんですが、グランドミュージカルを手がけるのは初めてでして。「ホリプロさんは何を意図して僕にオファーを?」と正直驚きました。でも演目の成り立ちやバックボーンを知って、いろんなことを議論するうちに「演出家のキャリアを重ねるうえでも絶対に向き合うべき作品」と感じるようになって。――それほどまで感じる『蜘蛛女のキス』の魅力って?ミュージカル『蜘蛛女のキス』稽古場より日澤音楽が物語と絡み合っていて、何ひとつ無駄がないところでしょうか。1曲で成立しているナンバーでもやがて重層的に積み重なって、モリーナとバレンティンの関係を変えているような。物語が進んでいくと、メロディの中に前のシーンで使った象徴的なフレーズがちょっとだけ入ってくるんです。たとえば「蜘蛛女のテーマ」にあるメロディラインは、いたるところに登場する。バレンティンとモリーナに合わせて楽曲も並走している感じが「本当にうまいな!」って。石丸各所にモチーフが散りばめられているんですよね。フレーズが流れるだけで、観客の記憶を呼び覚ます。その効果をすごく使っていて。「蜘蛛女のテーマ」が流れたら「これから不穏なことが起こるんだ」ってメッセージが伝わる。ミュージカルならではのつくり方をしています。メロディに乗るほどの強いメッセージを意識して歌う――そんな「ミュージカルらしいミュージカル」を、優れた社会派ストレートプレイを生み出している日澤さんがどのように味つけしているか気になります。日澤グランドミュージカルの演出に際しても、僕はこれまでのスタンスを変えようとは思っていないんですよね。というのも、どんな作品だって登場人物の心情や関係性に迫るストレートプレイと追求すべきことは変わらないとわかったから。特にバレンティンが歌う「あしたこそは(The Day After That)」という楽曲で、メロディと歌詞の移ろいがモリーナとバレンティンの心情や関係性に変化をもたらしていることをキャストの皆さんと検証した瞬間が楽しかったんですよね。「歌はセリフなんだ」と体感できた。ミュージカル『蜘蛛女のキス』稽古場より石丸ミュージカルナンバーは、ストレートプレイでいうと「長ゼリフ」ですよね。いろんな感情が溜まりに溜まって、音楽に乗ってあふれ出る。だからこそ「どうして長ゼリフになるのか」という理由が腹落ちしていないと、無意味な“おしゃべり”になってしまうんです。歌になるくらいの強いメッセージを、つくり手サイドは意識しなければいけません。そういう意味で、モリーナの自己紹介ナンバー「ドレスアップ(Dressing Them Up)」は、自分のことが好きすぎるモリーナの想いがよく表れていますよね(笑)日澤たしかに!(笑) 楽しいのは「ドレスアップ」ですけど、僕は「彼女は女(She’s A Woman)」ってナンバーがすごく好きだなぁ。同性愛者のモリーナが「いいよね、あなたは女で」「私も女ならよかったのに」って女性をうらやむ曲なんだけど、幹二さんがモリーナの内面や今の状態を情感たっぷりに表現しているので、ぜひ皆さんに聞いて欲しいです。ラストの「映画の夢(Only in the Movies)」も素敵ですけどね。ミュージカル『蜘蛛女のキス』稽古場より石丸今回、カッコよく歌い上げる曲はバレンティンとオーロラに占められています(苦笑)。先ほど話題に挙がったバレンティンの「あしたこそは」も光の当たり具合がどんどん変わって、台本をめくったら違う世界が広がっているんですよね。若い頃、歌いたかった!――ぜひミュージカルコンサートでお聞きしたいです!石丸そうですね! でもモリーナにも、秘めた想いの味わい深いナンバーが揃っていますから。「このメロディライン自体がモリーナその人を表しているんだな」と思って、愛しながら歌っています。日澤さんがおっしゃった「彼女は女」も、歌えば歌うほど名曲だということが伝わってくるんですよね。カンダー&エブが手がけた音楽の素晴らしさを、ぜひ観客の皆さんにもお届けできれば。モリーナが好きなアイテムを身にまとい、内面に近づく――モリーナはどういう人物だと受け止めていらっしゃいますか?石丸いまとは時代が違いますから、モリーナのように産まれついた人には「生きづらい」世の中だったんじゃないかな。同性愛者として胸を張って自分らしく生きてはいるけれど、一方では人生に失望してもいて。ひょっとしたら、監獄の中が最低限の尊厳を保って生きていられた場所なのかもしれない。どこまでも愛する人を想って、「これが自分の生きる道」と決意する、ギリギリ崖っぷちなところを必死に生きている人です。――モリーナは数々の先輩が演じてこられた役だと思いますが、石丸さんはどうやってオリジナリティを発揮しようとしていらっしゃいますか?石丸僕ね、日本人キャスト版の先輩モリーナを拝見していないんですよ。だから比較できないんですが、トニー賞授賞式で見たブレント・カーヴァーのパフォーマンスには驚きました。彼、女性としての「生き方」をたった数分間で観客の目に焼きつけたんですよ! その姿を見た時に「ここまでやらないと、モリーナの個性って観客に伝わらないんだな」と。ミュージカル『蜘蛛女のキス』稽古場より――カーヴァーのパフォーマンスには、どんな特徴があったのでしょうか?石丸その人の内面って、所作や振る舞いに表れますよね。カーヴァーはモリーナらしさを、デフォルメしながらも自然に見せていて。対する僕は、モリーナとしての中身が、その時点で空っぽ。どうしようか悩んだ結果、艶やかな色の服を身にまとってみようと思いました。ひとりでは買いに行けないので、ショップまで女性マネージャーについて来てもらって。彼女が買うフリをしながら僕が試着して、自分の体に合うピンク色の花柄ガウンを購入しました。――形から入って、どんな収穫がありましたか?石丸羽織ってみると膝にシャランと落ちて、体にまとわりつくような感じを受けました。着慣れない素材一つひとつ、新鮮でね。いま「こういうものを愛しているのがモリーナなんだ」と学んでいるところです。形だけマネするんじゃなくて、内面まで近づけないとね。日澤稽古初日から派手な色のパンツを履いて、本当にキュートなんです。昨日やった、看守に「モリーナ来い」と呼ばれて連れ出されるシーンの稽古では色っぽさにゾクっとしましたよ。赤いガウンを着ている幹二モリーナが、はだけていた胸元をスッと隠したんです。石丸ホントですか? 自覚なかったけど女性としての防衛本能かもしれませんね。内面もモリーナに近づいているなら嬉しいな。――モリーナらしさを獲得している最中なんですね。石丸そうですね。劇団四季にいた時、『オペラ座の怪人』の稽古でジャージ姿だった僕に対して、浅利慶太さんが「劇中の時代の様式を身につけることで、キャラクターの中身がつくれるかもしれない」とおっしゃったんですね。「作品の世界観にマッチするものを稽古場で身につけなさい」「普段着はボロでもいいから稽古着に気を遣いなさい」と。そのくらいやって「初めて役を獲得できるんだ」とご指導いただいたことを思い出したんです。なので、モリーナと向き合うには「まずピンクから始めよう」と試みました。彼女が好きそうな華やかなアイテムをまとって外見から少しずつ変えたら内面にどんな変化が訪れるかな、と。今日もこんなのを持ってきましたよ!(と言って赤いストールを見せてくれる)――モリーナが好きそうですね! 石丸さんがどのように彼女を立ち上げるか、本番を楽しみにしています。取材・文:岡山朋代ミュージカル『蜘蛛女のキス』2021年11月26日(金)~2021年12月12日(日)会場:東京芸術劇場 プレイハウス、ほか大阪公演ありチケット情報
2021年11月17日ミュージカル『蜘蛛女のキス』の開幕を約1ヵ月後に控えた稽古場で、同性愛者の主人公モリーナ役を務める石丸幹二と、演出の日澤雄介がインタビューに応じた。アルゼンチンの作家マヌエル・プイグの小説を原作にミュージカル化され、1993年のトニー賞7部門を制した本作。『キャバレー』『シカゴ』で知られるジョン・カンダー(音楽)とフレッド・エブ(歌詞)が手がける楽曲は人気が高く、1996年以降、日本でも定期的に上演されている。劇中では、ラテンアメリカにある刑務所の一室を舞台にした物語が展開。映画を愛するモリーナは、社会主義運動の政治犯バレンティン(相葉裕樹 / 村井良大:Wキャスト)と同室に。最初は互いを理解できず激しく対立する2人だったが、モリーナは映画スターのオーロラ、また彼女が演じる蜘蛛女(安蘭けい:2役)について語る。二人は次第に心を通わせていき──。ブロードウェイで本作を鑑賞した石丸は当時、バレンティンに共感したという。同性愛者のモリーナは「特別な個性がないとできない役」と捉えていたが、自身が年始に主演した『パレード』の本国版で同じ役を務めたブレント・カーヴァーがモリーナに扮したと知ると親近感が湧き、「彼がやった役に自分も挑戦したい」という気になったエピソードを明かす。同性愛者が抱える葛藤を掴むのは難しい。そこで石丸は、劇団四季時代に浅利慶太から受けた「劇中の舞台になっている時代の様式を身につけることでキャラクターの中身に近づける」というアドバイスを思い出す。また、ピンクや赤といった鮮やかな色の衣装を稽古場で身にまとうように。「はだけていた胸元を看守の前で隠す所作にゾクっとした」という日澤の言葉を受け、石丸は「女性としての防衛本能かも。内面もモリーナに近づいてきたんですかね」と微笑んだ。自身が旗揚げした劇団チョコレートケーキで、史実をベースにした社会派の人間ドラマを生み出している日澤。本作でグランドミュージカルを初めて手がけるが、「登場人物の心情や関係性に迫るストレートプレイの演出とスタンスを変えることはない」と話す。「水と油のような関係のモリーナとバレンティンがどうやって互いを認め合い尊重するのか。彼らの“心と心の交流”を丁寧に描くことで生まれる化学反応を現代の客席にお届けできれば」と意気込み、インタビューを結んだ。公演は11月26日(金)~12月12日(日)に、東京・東京芸術劇場 プレイハウスにて。その後、12月17日(金)~12月19日(日)に大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティへ巡演する。ぴあでは座席指定できるチケットを販売中だ。取材・文:岡山朋代
2021年11月05日気鋭のフルート奏者、鎌田邦裕のリサイタルが目前だ。2月14日(日)の京都公演を皮切りに、 2月28日(日)東京、 3月18日(木)鶴岡で行われる3公演のツアーには「儚き水の精」という副題が付けられる。同公演は、山形県鶴岡市出身の鎌田邦裕が20歳のときから毎年地元鶴岡市でリサイタルを開催している事業の一環だ。「コロナ禍で数々の公演がキャンセルとなる中、いったい音楽家の仕事とはなんなのだろうか、音楽は必要とされていないのだろうかと考えさせられました。人との接触や繋がりが絶たれ、デジタル化へと移行する中、家の中で一人、孤独を感じている人も沢山います。 先行きはまったく見えず、不安ばかりが心の中に広がっている今だからこそ、音楽の出番なのではないかと考えたのです」と公演への思いを語る。日本の芸術文化の発信地でもある京都、東京を入れた3都市での公演を開催することは、フルーティスト鎌田邦裕にとっても更なる飛躍へと繋がる大きな一歩となることだろう。熱演に期待したい。■京都公演:2月14日(日)15:00 / アートスペース Hase 二条城前■東京公演:2月28日(日)19:00 / ディアラこうとう(小ホール)■山形/鶴岡公演:3月18日(木)19:00 / 荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)大ホール(公演プログラム)W.A. モーツァルト:ロンド ニ長調 KV.373滝廉太郎:花C. ライネッケ:フルート協奏曲 ニ長調 Op.283C. ライネッケ:ピアノとフルートのためのソナタ ホ短調「ウンディーネ」他
2021年02月01日「3年前に不整脈が出たときがきっかけで、『これはまずい、しっかり体を鍛えなくては』と危機感を覚えたんです」こう話すのは、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實さん(71)だ。当時から地元での医療活動のほか、1年のうち100日間は全国のあちこちを飛び回って、精力的に講演活動をする日々を送っていたという。「15年くらい前から、行く先々で僕のオリジナルの『スクワット』と『かかと落とし』をすすめていたのですが、実のところ、僕自身は思いついたときにする程度でした。もちろん、健康に気を使った食事もしていたのですが、どこか“医者の不養生”なところがあり、おなかはポッコリで、少し階段を上がると息切れがしていたんです」(鎌田さん・以下同)運動不足が招いた不整脈だと反省し、仕事が忙しくても、毎日運動をしようと決意した鎌田さん。自身で開発したスクワットとかかと落としは、最短時間で効率よく体を鍛えられる、格好のエクササイズになったのだ。「高齢になると大切なのは、『筋活』『骨活』です。『筋活』はしっかり動けてけがをしない筋肉を作る活動、『骨活』は骨密度を上げて骨を丈夫にする活動です」高齢者が要介護になるきっかけの約13%は、骨折をまねく転倒だ。太ももが上がらなくなったり、つま先が上がらなくなって、じゅうたんや畳の縁につまづいたり、階段を下りるときに足をとられて転ぶなど、転倒のほとんどは室内で起こる。特に骨折は女性に多く、70歳以上の女性の7割以上が骨粗しょう症だ。だからといって転倒防止のために一日中座ってばかりの生活を送っていると、末端の毛細血管に血液が循環しなくなり、エコノミークラス症候群や肺塞栓症といった病気の原因となる。「筋肉は何歳になってからでも鍛えることができますが、じゃあ体が衰えてからやればよいというわけではなく、女性の場合は特に、女性ホルモンが激減する40~50代から始めてほしいです」「鎌田式スクワット」は筋活に、「鎌田式かかと落とし」は骨活にそれぞれ有効だ。それは鎌田先生自身が証明している。「僕自身、3年間毎日スクワットとかかと落としを続けて、3年前に起こった不整脈は再発していません。骨密度に至っては130%です。丈夫でしょう?さらに体重9kg減、ウエスト9cm減で、それまではいていたズボンがブカブカになりました。僕はあつらえたズボンをはいているので、サイズが変わるとお直しをしてもらうのですが、テーラーの方から『太もも部分も細くなりましたね』と言われました。脂肪が筋肉に変わって太ももが締まったみたいです」ポッコリおなかも今はスッキリ。毎年冬になると大好きなスキーを楽しむが、ここ数年は筋力が上がったため、以前よりも速く滑れるようになったという。ここでは「骨活」となる「鎌田式かかと落とし」を紹介。■椅子ありスクワット(1セット10回×1日3セット)(1)椅子の背につかまり、背筋を伸ばして立つ。(2)かかとをつけたまま、つま先をゆっくりと上げてむこうずねの筋肉を強化する。腰が引けないように。(3)つま先を下ろすと同時にかかとを少し上げる。(4)さらにかかとを上げ、背筋をピンと伸ばす。ふくらはぎの筋肉に意識を向ける。(5)かかとをドスンと落とす。「つま先をしっかりと上げることで、むこうずねの筋肉が鍛えられます。ここは意識しないと、日常生活の中ではなかなか使われていない筋肉です。転倒の原因もこの筋肉が衰えることで起こります。しっかりとつま先を上げ、その後かかとを上げて“ドスン”と勢いよく落とすことで、骨を再生する骨芽細胞に刺激を与えて、骨ホルモンのオステオカルシンを分泌させます。これにより骨密度を上げる効果が期待できるのです」オステオカルシンには血糖値やコレステロール値を下げる働きのほか、動脈硬化予防の働きもあるという。また、ふくらはぎは第二の心臓ともいわれるが、ふくらはぎの筋肉を刺激することで、足先から全身に血液が巡って心臓や脳の血流もアップする効果が期待できる。鎌田先生は、毎年最低1回はイラクの難民キャンプに医療支援に行っている。飛行機で片道20時間はかかる長い行程だ。普通は年齢を重ねると、長時間の渡航は体に負担を感じるようになるが、「僕は今71歳だけれど、海外に行っても時差ボケもなく行動できます」とキッパリ。「80歳まではイラクに行き続けたいし、大好きなスキーは93歳まで滑り続けたい。そのためにも、スクワットとかかと落としを続けて、いつまでも元気に動ける体を保つつもりです」
2019年07月18日おなじみ鎌田先生、スリムになってます。実は自身で考案したエクササイズが功を奏したそう。若返り効果もあるとかで、人生100年時代を最後まで元気に生きるために、さあ、試してみよう――!「3年前に不整脈が出たときがきっかけで、『これはまずい、しっかり体を鍛えなくては』と危機感を覚えたんです」こう話すのは、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實さん(71)だ。当時から地元での医療活動のほか、1年のうち100日間は全国のあちこちを飛び回って、精力的に講演活動をする日々を送っていたという。「15年くらい前から、行く先々で僕のオリジナルの『スクワット』と『かかと落とし』をすすめていたのですが、実のところ、僕自身は思いついたときにする程度でした。もちろん、健康に気を使った食事もしていたのですが、どこか“医者の不養生”なところがあり、おなかはポッコリで、少し階段を上がると息切れがしていたんです」(鎌田さん・以下同)運動不足が招いた不整脈だと反省し、仕事が忙しくても、毎日運動をしようと決意した鎌田さん。自身で開発したスクワットとかかと落としは、最短時間で効率よく体を鍛えられる、格好のエクササイズになったのだ。「高齢になると大切なのは、『筋活』『骨活』です。『筋活』はしっかり動けてけがをしない筋肉を作る活動、『骨活』は骨密度を上げて骨を丈夫にする活動です」高齢者が要介護になるきっかけの約13%は、骨折をまねく転倒だ。太ももが上がらなくなったり、つま先が上がらなくなって、じゅうたんや畳の縁につまづいたり、階段を下りるときに足をとられて転ぶなど、転倒のほとんどは室内で起こる。特に骨折は女性に多く、70歳以上の女性の7割以上が骨粗しょう症だ。だからといって転倒防止のために一日中座ってばかりの生活を送っていると、末端の毛細血管に血液が循環しなくなり、エコノミークラス症候群や肺塞栓症といった病気の原因となる。「筋肉は何歳になってからでも鍛えることができますが、じゃあ体が衰えてからやればよいというわけではなく、女性の場合は特に、女性ホルモンが激減する40~50代から始めてほしいです」「鎌田式スクワット」は筋活に、「鎌田式かかと落とし」は骨活にそれぞれ有効だ。「筋活」となる「鎌田式スクワット」は4段階のレベルがある。ここでは、レベル4の「鎌田式スーパースクワット」を紹介。■鎌田式スーパースクワット(1日5~10回×1日3セット)(1)両足を肩幅の広さで立ち、手を胸の前で組む。(2)手を胸の前で組んだまま、膝がつま先より前に出ないように気をつけながら、太ももと床が平行になるまで下げる。つま先を少し外に開くと楽になる。同時に骨盤底筋を5秒締める(肛門をおなかのほうに引き込む感じ)。お尻を後ろに突き出すようにして曲げる。(3)お尻を5cm上げて5秒数える。これをさらに3回繰り返し、その都度5cmずつ上げる。5cm上げるたびに骨盤底筋を緩める・締めるを交互にする。このスクワットでは息をゆっくり吸ったり吐いたりする。(4)ゆっくりと1の状態に戻る。「10年ほど前、黒柳徹子さんとお会いしたときに、『ジャイアント馬場さんに教えてもらったスクワットを日課にしている』と聞き、スクワットの効果を確信しました。『鎌田式スーパースクワット』は、僕が考案した最も効率のよいエクササイズです。太ももとお尻の筋肉だけでなく、骨盤底筋を鍛える動作も盛り込んであり、尿モレなど泌尿器科系の悩みも改善できます」テレビを見ながらとか、家事など、何かをしながらできるので、気軽に行いやすい。「スクワットは負荷がかかって少しきつい運動なので、好きな音楽をかけてそれに合わせて行ったり、自分でリズムをとってリズム運動のように楽しく行うのもよいでしょう。リズム運動をすると、幸せを感じるセロトニンが脳内から分泌されますので、気持ちも明るくなり、効果倍増です」女性がこのエクササイズを続けると、ウエストが引き締まり、小尻効果が期待できるという。さらに、筋肉運動をすると、マイオカインという筋肉作動性物質(ホルモン)が体内で分泌される。「マイオカインは、血糖値や血圧を下げる働きをするだけでなく、がんやうつのリスクも下げ、記憶力をよくするという研究結果が出ている、まさに夢の若返りホルモンです」体の中で最も筋肉量の多い太もも部分を動かすスクワットで、効率よくマイオカインを分泌させて、若返りも狙えるというわけだ。
2019年07月18日「3年前に不整脈が出たときがきっかけで、『これはまずい、しっかり体を鍛えなくては』と危機感を覚えたんです」こう話すのは、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實さん(71)だ。当時から地元での医療活動のほか、1年のうち100日間は全国のあちこちを飛び回って、精力的に講演活動をする日々を送っていたという。「15年くらい前から、行く先々で僕のオリジナルの『スクワット』と『かかと落とし』をすすめていたのですが、実のところ、僕自身は思いついたときにする程度でした。もちろん、健康に気を使った食事もしていたのですが、どこか“医者の不養生”なところがあり、おなかはポッコリで、少し階段を上がると息切れがしていたんです」(鎌田さん・以下同)運動不足が招いた不整脈だと反省し、仕事が忙しくても、毎日運動をしようと決意した鎌田さん。自身で開発したスクワットとかかと落としは、最短時間で効率よく体を鍛えられる、格好のエクササイズになったのだ。「高齢になると大切なのは、『筋活』『骨活』です。『筋活』はしっかり動けてけがをしない筋肉を作る活動、『骨活』は骨密度を上げて骨を丈夫にする活動です」高齢者が要介護になるきっかけの約13%は、骨折をまねく転倒だ。太ももが上がらなくなったり、つま先が上がらなくなって、じゅうたんや畳の縁につまづいたり、階段を下りるときに足をとられて転ぶなど、転倒のほとんどは室内で起こる。特に骨折は女性に多く、70歳以上の女性の7割以上が骨粗しょう症だ。だからといって転倒防止のために一日中座ってばかりの生活を送っていると、末端の毛細血管に血液が循環しなくなり、エコノミークラス症候群や肺塞栓症といった病気の原因となる。「筋肉は何歳になってからでも鍛えることができますが、じゃあ体が衰えてからやればよいというわけではなく、女性の場合は特に、女性ホルモンが激減する40~50代から始めてほしいです」「鎌田式スクワット」は筋活に、「鎌田式かかと落とし」は骨活にそれぞれ有効だ。それは鎌田先生自身が証明している。「僕自身、3年間毎日スクワットとかかと落としを続けて、3年前に起こった不整脈は再発していません。骨密度に至っては130%です。丈夫でしょう?さらに体重9kg減、ウエスト9cm減で、それまではいていたズボンがブカブカになりました。僕はあつらえたズボンをはいているので、サイズが変わるとお直しをしてもらうのですが、テーラーの方から『太もも部分も細くなりましたね』と言われました。脂肪が筋肉に変わって太ももが締まったみたいです」ポッコリおなかも今はスッキリ。毎年冬になると大好きなスキーを楽しむが、ここ数年は筋力が上がったため、以前よりも速く滑れるようになったという。「筋活」となる「鎌田式スクワット」は4段階のレベルがある。ここでは、レベル2の「椅子ありスクワット」を紹介。■椅子ありスクワット(1セット10回×1日3セット)(1)椅子の背につかまり両足を肩幅に広げて立つ。(2)ゆっくりと膝を曲げて腰を落とす。膝は曲げすぎないように(90度以上保つ)。お尻を後ろに引くイメージで。(3)ゆっくりと呼吸しながら、5秒ほど同じ姿勢を保つ。(4)ゆっくりと1の姿勢に戻る。「10年ほど前、黒柳徹子さんとお会いしたときに、『ジャイアント馬場さんに教えてもらったスクワットを日課にしている』と聞き、スクワットの効果を確信しました。『椅子ありスクワット』は、台所で食事の支度をしている合間などにできる簡単なスクワットです」
2019年07月17日ごちゃごちゃと光り輝くネオンのなかを行き交う無数の人々。東京一のゲイの街、二丁目。昔から続く劇場にライブハウスやひっそりと佇むZINEの専門ショップ。淡々と鳴り響くいささか不気味なドラッグ規制の放送や、数え切れないほどの風俗店はちょっとアングラな雰囲気が漂うけれど、紛れもなく最先端のカルチャーを生み出し続けている東京を代表する歓楽街、新宿。今回そんな新宿の街中で、野外フィルムフェスティバルが開催されることになった。どうして「映画」なのか。今回映画にまつわるプロデュースを務めた服部進(はっとり すすむ)氏と鎌田雄介(かまた ゆうすけ)氏は、映画こそ多様性を扱うのにぴったりのメディアだと話す。映画は芸術作品のなかで、もっともたくさんの人間が関わるものだと思います。 誰でも、どの国でも作ることができます。多様性をテーマにするもっともふさわしいメディアだと思います。さて、第二回目となる明日の上映作品は『ギフテッド』。『ギフテッド』生まれて間もなく母親を亡くした7歳のメアリーと独身の叔父フランク。メアリーに天才的な特別な才能が明らかになることで、静かな日々が揺らぎ始める。「(500)日のサマー」のマーク・ウェブ監督がメガホンをとったファミリードラマ。会場には充実したキッチンカーも用意されるそう。映画を楽しむだけでなく、街や野外ならではの雰囲気を楽しむことができるだろう。そしてなんとこのイベント、入場無料。いつもと違った新宿を楽しみ、多様性について考えてみれば充実した週末の幕開けとなるだろう。『新宿パークシネマフェスティバル』Website≪主なスケジュール≫7/6(金)グランド・ブタペスト・ホテル8/3(金)ギフテッド9/7(金)マリーゴールド・ホテルで会いましょう 10/4(木)リトル・ミス・サンシャイン10/5(金)(500)日のサマー 10/6(土)ファミリー・ツリー
2018年08月02日鎌田醤油が、アウトドア料理研究家の高松美里さんによる監修のもと、2017年のフードトレンドを盛り込んだオリジナルレシピ「KAMADABBQRecipe」を、公式通信販売サイトにて紹介しています。2017年注目のフードトレンド「ポキ」をアウトドアで楽しむ!KAMADABBQRecipeは、鎌田醤油の商品をBBQなどのアウトドアシーンでも楽しめるようにと、考案されたレシピです。今回ご紹介する「鰹のたたき」の場合、炙る、氷水につけるなどのパフォーマンスをプラス。料理を作っている人も見ている人も楽しいBBQになるように工夫がなされています。アウトドア料理研究家 高松美里 PROFILE高松美里(アウトドア料理研究家/フードスタイリスト)ヘアサロントップスタイリストを経て食の世界へ。アウトドアブランドとコラボした料理企画をはじめ、雑誌、広告のスタイリングなど数多く手がける。2児の母でもあり、子供と一緒に楽しむ食育アウトドアクッキングや、ホームパーティーのおもてなしスタイリングなども合わせて発信しているInstagram(@misatotakamatsu)は各メディアにも紹介され話題に。Seared Bonito Poke ~炙りカツオポキ~【材料】鰹のさく(200g)ポキのたれ:だし醤油(大さじ2)、サラダ醤油(大さじ1と1/2)、ごま油(小さじ2)アボカド(2個)ミニトマト(5個(半分にカット))紫玉ねぎ(1/2個(スライスして水にさらす))白ごま適量氷水【作り方】①カツオに串をさし、炭火で炙り、焼き目をつける。(皮の面をしっかり、他は軽く炙るだけ。コンロ、バーナーでもOK)②すぐに氷水に入れしっかり冷やし、食べやすい大きさにカットする。③薄くスライスしたアボカド、カツオのたたき、ミニトマト、紫玉ねぎを彩りよく並べ、白ごまをかける。ポキのたれを仕上げにかけて完成。【監修者コメント①レシピについて】バーベキューとなるとお肉料理という印象が強いですが、魚介料理も簡単に楽しめます。今回、和食のイメージが強い鰹のタタキをハワイ料理を代表する一品の「ポキ」にアレンジしました。アボカドを盛り付け、女性も食べやすく、彩りに食欲をそそられます。一番のポイントは串にさす、氷水につけるなど調理過程を工夫し、作っている方も見ている方も楽しめる点です。【監修者コメント②使用商品について】「だし醤油」、「サラダ醤油」は、バランスよく様々な食材が原材料に使用されている合わせ調味料です。レモンを絞ったり、他の調味料と細かく計量して合わせたりといった手間も省け、時短にもつながり、アウトドアにぴったりです。だし醤油醤油の名産地讃岐の天然醸造醤油に、日本全国の特産地から厳選したさば節・かつお節・昆布の天然材料のだしを利かせ、普通濃口醤油の塩分より25%減塩した風味豊かなだし入り醤油です。サラダ醤油本醸造醤油とワインビネガーにゆず果汁を加え、野菜の旨みでまとめたノンオイルの体にやさしい和風ドレッシングです。鎌田醤油「BBQレシピ」紹介ページ
2017年07月19日鎌田商事が、北海道産の牛乳と卵、国産丸大豆100%の本醸造特級醤油を使用、塩キャラメルのような味わいを楽しめる「醤油アイス」を、期間限定販売において販売目標の300%達成したことを受け、6月30日(金)より、特設サイトで通年販売を開始します。醤油×濃厚ミルク鎌田醤油が、220年以上続く醤油造りのノウハウを活かし、2016年に開発した「醤油アイス」。同年5月に坂出蔵元売店、北海道支店において開催したお客様感謝イベントにて販売したところ、2か所合計で約1,400個が完売しました。2017年1月には期間限定で全国通信販売を実施。想定の約300%の売上を記録し、大きな反響を得たことから、今回通年での販売が決定しました。「醤油アイス」は、北海道十勝の大自然で育った乳牛から搾った牛乳、北海道産のこだわりの卵、鎌田醤油自慢の国産丸大豆100%の本醸造特級醤油が原材料のベースとなっています。また、醤油とアイスクリームを絶妙なバランスで調えた美味しさ、はちみつを隠し味に採用することで上品な味わいを楽しめます。醤油とアイスクリームのコラボレーションによる美味しさの理由は、メイラード反応にあります。これは、醤油の色素を形成している、還元糖とアミノ酸・たんぱく質の間で起こる成分間反応を指します。香気を強くし、食べ物を美味しくする反応であり、砂糖を煮詰めてできるカラメル化に似ています。醤油の香ばしい香りと深いコクとミルクアイスの甘みや旨味により、塩キャラメルのような味わいを実現しています。「醤油アイス」商品概要①厳選された原材料を使用カマダの醤油と一番相性のよい、十勝の大自然で育った、乳牛から搾ったフレッシュな牛乳と、北海道のこだわり卵を使用②醤油とミルクアイスの絶妙なバランス味の決め手は醤油の風味が生きている国産丸大豆100%の本醸造濃口醤油③乳化剤、安定剤、着色料、香料無添加原材料はシンプルに。自然素材にこだわりました。販売期間:2017年6月30日(金)〜販売サイト販売価格:80mlx6ヶ入2800円(送料・税込価格)※沖縄は別途送料1,600円/箱
2017年06月29日建築家・藤田雄介による「11の戸(こ)と戸(と)」展が、10月21日から東京・南青山のプリズミックギャラリーで開催される。建築物において、開閉機能・仕切りの役目を持つ建具(=たてぐ)。藤田雄介は、場所を仕切りながらも同時に新たな関係性を作り出す建具を、“建築の本質を一つの要素で担うもの”として考え、独立して以来、設計した住宅の多くで重要な要素として扱ってきた。さらに、これまで住宅ごとに製作してきた建具を幅広く使ってもらうため、それぞれの家(=戸)のそれぞれの戸をデザインするための建具専門ストア「戸戸(こと)」を立ち上げている。同展では、「戸戸」の見本市として会場を構成。これまで設計した住宅から進行中のものまで、計11戸の写真や模型と実物の建具を展示する。戸と戸の二元的な設計から建築の新しい汎用性を提案する内容となっている。【展覧会情報】「11の戸(こ)と戸(と)」展会場:プリズミックギャラリー住所:東京都港区南青山4‐1‐9 秋元南青山ビル1階会期:10月21日~12月4日時間:平日 10:00~18:00、土日祝 13:00~18:00休廊日:11月16日入場無料
2016年10月20日■六本木、イセタンサローネでは「最高峰」を提案したい――6月10日からイセタンサローネTHE CORNER@ISETANでは、上質なギフトをテーマにしたセレクトでプロモーションを展開中です。どのような基準で、「THE」のアイテムをセレクトされたのでしょうか水野:僕は、イセタンサローネには、ものすごく高価なものがあってもいんじゃないかなと思ったんです。1個2,000万円くらいの花瓶とか。それは、ある種の美術館のようでもあり、ある人はそれを実際ポンポン買っていく。イセタンサローネに参画する意味を鑑みて商品をセレクトしました。六本木って、本当に東京の中心なんですよね。その東京の真ん中で、信頼されている百貨店である伊勢丹さんと僕たちが何をやるべきかを考えましたね。「THE」であると同時に、ある意味での「最高峰」のものをプレゼンテーションしたいなと考えました。実現できなかったものもありますが、保安上置ける範囲で最高峰のものを選んだつもりです。■イセタンサローネのデザインを手掛けた杉本博司と「THE」の共通項――イセタンサローネの内装は「アートとファッションの融合」をコンセプトに、杉本博司さんが手掛けています。屋久杉をはじめ、日本古来の素材や技法を活かした環境で「THE」を展開されていかがでしたか米津:初めて、開店時に「THE」の商品が並んでいる様を見て、杉本さんの手掛けられた美術館的な内装に置いても、「THE」のアイテムが見劣りしてなかったことが嬉しかったですね。自分たちのやってきたことに間違いはなかったと感じました。――アート作品は、シーズンで作られたものとは違って、半永久的にいいと思われたものが収蔵されていきます。水野さんが話されていた「定番とは長い流行」という話にも通ずるところがありますね。鈴木:杉本さんのアートは新しいものを作ろうとするよりも、今まで誰もが知っていたものを見えるようにするきっかけを提示してくれているように感じています。海をモノクロ写真に収めた「海景」もそうです。いままで知っていたけど、改めて見ることがなかった素材や技法に気づかせてくれるのが杉本さんのアートであり、今回のお店の特徴なのかもしれません。「THE」も新しいものを作ろうとしていない点で通ずるところがあると思いました。クリエイティブの考え方として、通ずる部分があるのではないかと思います。――杉本さんも「古くから良いとされているものは、一番新しいもの」という考え方を話されていました。そこが「THE」に繋がっていて、いい融合になっているのだと思います■一番プレゼントが入っていそうな袋を考えてみたら…――6月10日からは「THE」に新たなラインアップも加わるそうですね米津:今回はTHE KITCHEN CLOTHということで、パートナーとして中川政七商店の「花ふきん」とコラボレーションしています。水野:これは「THE」のオリジナルパッケージですね。中川さんは自分のところの商品なので、他に出したい訳ではないんですが、「『THE』だけで売るんだったらいいです」というお許しを頂いています。なんでそこまでして、僕がこれを売りたいのかというとTHE KITCHEN CLOTHと言えば、「花ふきん」の他にないからなんです。そして、THE KITCHEN CLOTHらしいパッケージってなんだろうと考えました。ふきんらしさとは何かを追及した結果生まれたのがこのパッケージなんです。――日本語と英語の表記にされた理由はなんでしょうか水野:一つはもちろん海外の人にも買って欲しいからです。もう一つは、明治から昭和初期にかけて、日本というのは一時横文字文化に振れた時があったんですよね。ふきんといえば『ブレードランナー』みたいだねという人はいなくて、昭和初期のあの懐かしい感じを思い浮かべる訳です。ふきんそのものらしさを感じるのがその時代だったんです。――6月10日からは、オリジナルのギフトパッケージもスタートするとか米津:イセタンサローネ内にTHE CORNER@ISETANを展開する時から、「GIFT」に特化した場所にしたいという話がありました。実は、15年4月のオープン時にもショッパーの在り方やギフトラッピングを考えようという話もあり、日本中の誰もが知っている伊勢丹チェックのショッパーに「THE SHOPPING BAG」とプリントするといったアイデアもありました。今回は自分たちの商品である「THE SHIRTS」のオックスフォード生地で作ったギフトバッグを展開します。水野:結局、どんな袋にプレゼントが入っていたら嬉しいか?と考えると、いかにもプレゼントが入ってそうな上質な包みとリボンが嬉しいんですよね。なので、一番プレゼントが入っているべき袋を考えた結果、袋に「PRESENT IS INSIDE」とデザインしました。――今後、「THE」で挑戦していきたいことは何でしょうか米津:「THE」はパートナーとして協業する企業と様々なジャンルの“THE”を共に考え、研究し、開発するブランドです。「THE」のコンセプトのいいところは、汎用性の高さ。どんな分野にも“THE”的な考え方で新しい視点があると思いますので、いろんな業態と取り組んでいきたいですね。自動車メーカーとTHE CARを手掛けてみたい、とよくメンバー内でも話しています。また、小売業としてのTHE SHOPの中に留まらず、飲食THE旅やTHE CAFEなど、旅行企画や飲食にも挑戦してみたいですね。1/2に戻る。
2015年06月10日