■めちゃくちゃラクして文学女子を気どってみない?突然ですけど、文学を語れる女性ってカッコいいと思いません?夏目漱石とか、太宰治とか、芥川龍之介とか──そういう系です。いや、わかります。逃げないでください。めんどくさいのはわかります。時間がないのもわかります。国語の授業みたいで逃げだしたくなるのはわかります。うへええええってなるのもわかります。でもですよ?とはいえ「いつか読めたらいいなあ……」と思ってたりしませんか?文豪がどんなものを書いたのか、ちょっとでも味わえたら人生も広がると思うんです。デートで気の利いたセリフもいえるようになると思うんです。「でも時間がない……」「本を読んでるだけで眠たくなる」「想像するだけでめんどくさい」その気持ち、めちゃくちゃわかります。読書ってしんどいですよね。しかし、今回は、なにも辞書のように分厚い本を読もうという企画ではありません。むしろ「ラクして文学女子を気どってみよう」というズルイ企画なのです。どうせなら美味しいとこだけ、つまみ食いしちゃいましょうよ。・さくっと短く・なんと無料で・スマホで読めるという作品ばかりご紹介します──悪くなさそうでしょう?ブンガクとかいって肩肘はらないでくださいな。ちょっと百年くらい前の、なにかと考えすぎな友人のエモいトークに耳を傾けるくらいの感じでOKです。気楽にいきましょうぜ。■10分で読める有名作品たち今回ご紹介する作品は、青空文庫というサイトのものです。ここでは「著作権の切れた小説」を無料で読めるのです。最高じゃないすか。そこから抱きしめたいくらい好きな3作品を紹介します。どれもURLをつけてあります。クリックすると、その場で読めます。通勤電車のなかや、眠る前に、さくっとスマホで。一応、3つを紹介する順番も気にしてはいます。でもピンときたやつから読んじゃってください。それが貴女の正解ですから。どれかピンときますように。1.『葉桜と魔笛』太宰治「ばかだ。あたしは、ほんとうに男のかたと、大胆に遊べば、よかった。あたしのからだを、しっかり抱いてもらいたかった。姉さん、あたしは今までいちども、恋人どころか、よその男のかたと話してみたこともなかった。姉さんだって、そうなのね。姉さん、あたしたち間違っていた。お悧巧(りこう)すぎた。ああ、死ぬなんて、いやだ。」さっそく太宰にいっちゃいましょう。あのダザイですよ。ダザイ。かの「人間失格」「走れメロス」とかのダザイです。太宰は「女性が告白するみたいに一人で語る文章のときに謎の才能を発揮する」といわれています。かしこで「なんでこんな女心わかるの……?」とまでいわれた文豪なのです。まあ、そのモテすぎた感じで、色々あって、女性と心中自殺することになるわけですけれども……。今回は『葉桜と魔笛』もそうした女性語りの短編です。テーマは恋愛。病弱で、死のせまった少女のもとに青年から恋文が届きます。けれどその手紙には秘密があって──これ以上はいえません。10分くらいなんで読んでください。胸の奥がきゅうううううっとなることでしょう。ひとりの女性の思い出話(主人公は彼女の妹なのです)に耳を傾けるように読んでくださいませ。現代風にいえば「いいね!」押したくなりますよ。2.『文鳥』夏目漱石「十月早稲田に移る。伽藍のような書斎にただ一人、片づけた顔を頬杖で支えていると、三重吉が来て、鳥を御飼いなさいと云う。飼ってもいいと答えた。しかし念のためだから、何を飼うのかねと聞いたら、文鳥ですと云う返事であった。」お次は夏目漱石です。ちょっと前に千円札だった文豪。話としては「文鳥を飼ってみていろいろ感じたことがあったよ」という現代ではブログでやりなさいといわれそうな内容です。もちろん深みがあるんですけれども。とにかく日本語の上手さを味わってもらえたら嬉しいなと思います。文鳥を表現するのにここまで細かく書けるのか、というのが個人的にアツい推しポイントです。だって原稿用紙をわたされて「文鳥を飼った感想を書け」といわれても一枚も書ききれないですよ、普通。これぞ文章力ですよね。これは日本独特の「私小説」というジャンルになります。スターウォーズや三国志や歴史小説みたいに戦争だ反乱だ革命だと壮大なドラマが──というのでなく「私生活を文章にしてみた」という軽い感じです。小さな個人的生活を書きながら、それを通して、誰もが感じている人生の真実を探ってみよう、という日本独特の文学スタイルなのですね。とはいえ、そんな小難しいことはおいときましょう。たんにキュートな小説だと思っていただければ嬉しいです。そして、最後、ちょっともの悲しいのも文学っぽいんですよ。3.『舞踏会』芥川龍之介「私は花火の事を考へてゐたのです。我々の生(ヴイ)のやうな花火の事を。」僕はこの世にある文章のなかで、これが一番好きかもしれません。ドン引き覚悟で告白しますと、いまコラムを書いている部屋の壁に、この一部を印刷したものを張ってます。狂おしいほどに好きなのです。本コラムを書く理由のひとつは、これを激プッシュするためです。どうか地球に生まれたなら読んでください。読め。読むのだ。舞台は明治。日本は西洋文明を取りいれて、文明開化を進めている途中。さる貴族の令嬢が鹿鳴館の舞踏会に呼ばれたときの物語です。そこで悲しげな顔をしたフランス人の将校と出会います。少女はまだ人生のことがわからないなりに、彼の目の奥になにかを感じることになるのです。派手な事件がおきるわけではありません。ふたりの人物が出会うだけです。それでも、ふと記憶の底に焼きつくような不思議な出会いってありますよね。そうした瞬間をコレクションすることが、人生ってやつなのかもしれません。かの三島由紀夫(この人も有名な文豪ですよね)も本作品をめちゃくちゃ誉めていた記録がのこっています。なかでも「本来、芥川はこっちの作風に進むべきだった(これとは違って神経質な作品を書き続けたから自殺することになったのでは?)」とコメントすらしています。芥川はとにかく文章がカッコいい。漢字の使いどころや、言葉のいいまわしが。都会的でキザなのですね。本物の読書には「味読(舌で味わうように読む)」という表現が使われます。ぜひ、味読に絶えうる、美しい日本語を味わってください。■感想なんて思い浮かべる必要なし!いかがでしたでしょう?この作品のどれかが貴女のハートのド真ん中に、夜空の花火のように、よくわかんない一撃を喰らわしてくれたことを願うばかりです。そして気に入った作者のものをどんどん読んでもらえたらしめたものです。といっても、これは国語の授業じゃありません。なにも「ここがおもしろかった」「この主人公の心の動きが……」という感想をひねりだす必要はありません。世の作品は、やっぱり売れてナンボです。だからこそ、わかりやすい作品が喜ばれます。簡単に感想をいえるものも多かったりします。わかりやすいが正義、みたいな。けれど貴女もご存じのように、人生って、もうちょっとだけ複雑だったりするじゃないですか。正しくて悪いとか。悲しいけど嬉しいとか。好きだけど殺したいとか。生きたいけど死にたいとか。簡単には言葉にできないことばかりですよね。そうした「人生の真実(人生ってなんだろう?)」を考えて、文章にしたり、悩んだり、読んだりするのが文学なのかなと思っています。むしろ「どう言葉にしていいかわからない……」という「不穏な人生に対するなにか」を感じていただけたら嬉しいです。さて、さて。こんなコラムを書いちゃったからには、私も新しい一冊を手にとって、まだ見ぬページをめくりたくなってきました。どうか貴女も、その優れた文学に触れたときの戸惑うような感覚を胸のうちに秘めて、ちょっと天気のいい日曜の午後なんかに、また別の文学を読んでみようかな、と思ってくれますように。
2019年11月10日エレン・デジェネレスが来年1月5日に開催される第77回ゴールデングローブ賞にて、キャロル・バーネット賞を受賞することが明らかになった。月曜日(現地時間)、ゴールデングローブ賞を主催するハリウッド外国人映画記者協会(HFPA)が発表した。エレンもSNSで「新しい週の始まりに、最高のニュース。ありがとう、ハリウッド外国人映画記者協会」と報告している。HFPAの代表ロレンツォ・ソリアは「彼女の番組はシットコムからスタンダップコメディまで、お茶の間に欠かせないものとなっています。彼女はテレビ界のパイオニアで、その魅力と知性で25年近く視聴者を引き付けてきました。また、テレビ界での成功に加え自分のプラットフォームが持つ影響力を通し、献身的な慈善家として声を上げ、優しさや喜びを広めてきました」とエレンの功績を称え、授賞の理由とした。今年新設されたキャロル・バーネット賞は、テレビ界への貢献者に贈られるもので、今年はキャロル・バーネット本人が受賞した。エレンは二代目の受賞者となる。なお、来年のゴールデングローブ賞で、映画界での貢献者に贈られるセシル・B・デミル賞はトム・ハンクスが受賞者に決定している。(Hiromi Kaku)
2019年11月05日ボブ・ディランが来年4月に、東京・Zepp DiverCity(TOKYO)、東京・Zepp Tokyo、大阪・Zepp Namba(OSAKA)にて来日公演を開催することが決定した。【チケット情報はこちら】ノーベル文学賞を受賞したことでも話題を集めたボブ・ディラン。今回の来日公演は本人の希望で日本限定のライヴハウスツアー、東京と大阪のZeppで14公演行われる。今回で9度目の来日ツアーであるが、いままで毎回ちがったステージを見せてくれているボブ・ディラン。1978年の初来日では大編成のバンド、1986年はトム・ペティと組み、ネヴァーエンディング・ツアーでは、1994年、1997年、2001年、2010年、2014年、2016年と6回来日し、ロック、カントリー、フォーク、さらに多くのアメリカン・スタンダード曲をカバーするなど、じつに多彩なステージを見せた。昨年は1回のステージだったが、フジロック・フェスティヴァルにも参加した。一般発売に先駆けて、ぴあではいち早プレリザーブを実施。受付は11月5日(火)より。■ボブ・ディラン開催日程・会場2020/4/1(水)・2(木)・4(土)・5(日)・6(月) Zepp DiverCity(TOKYO) (東京都)2020/4/8(水)・9(木)・10(金) Zepp Namba(OSAKA) (大阪府)2020/4/14(火)・15(水) Zepp Tokyo (東京都)2020/4/17(金)・19(日)・20(月)・21(火) Zepp DiverCity(TOKYO) (東京都)
2019年10月28日作・佃典彦、演出・松本祐子のタッグによる、文学座10月公演『一銭陶貨』が10月18日(金)から東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAで上演される。日本中が金属不足にあえいでいた第2次世界大戦末期、窮余の策として「せともの」で作られた「一銭陶貨」。あらゆる職人技を結集させて生まれた「陶貨」だったが、お上にさんざん振り回されるうちに終戦を迎え、結局、世に出ることはなかった。そこに透けて見えるのは、日本が誇る技術の高みと、それにまつわる人々の揺れる思い。それは時に気高く、時に滑稽で愛おしい。生活の中のユーモアを細やかにすくい上げることに定評のある佃典彦が、この題材をひとつのストーリーへと織りあげた。時は昭和18年。瀬戸の町に長く暮らす陶芸家の家系にある加藤家の物語。長男の和雄は陶芸の才能豊かで超エリート。母の愛を一身に受けてきたが、ある日、赤紙が届く。次男の昭二は足が不自由で徴兵不合格の身。陶芸の才能にも乏しく、母に疎ましがられて育った。そんな加藤家に、京都・有田・瀬戸で、金属貨幣に替えて陶器貨幣を製造するという話がもたらされた。昭二は、今までの鬱積のすべてを陶貨作りにぶつけようと心に決める……。演出を手がけるのは劇団内外で高い評価を受ける松本祐子。佃とのコンビは2007年の『ぬけがら』以来で、同作で佃は岸田國士戯曲賞を、松本は千田是也賞を受賞している。技術や才能、嫉妬や欲望。「ものづくり」の周辺で人間を葛藤させるあれこれを、ふたりの「芝居づくり」師がどう描くか。文:小川志津子
2019年10月15日国内映画賞のトップバッターとして注目を集める「第11回TAMA映画賞」の受賞作品及び受賞者が決定。『長いお別れ』と『嵐電』が最優秀作品賞に選ばれ、『天気の子』『新聞記者』が特別賞を受賞、『愛がなんだ』で共演した成田凌と岸井ゆきのがそれぞれ最優秀新進男優賞・女優賞に選ばれた。毎年晩秋に開催されている映画ファンの祭典「第29回映画祭TAMA CINEMA FORUM」が今年も開催。併せて、多摩市及び近郊の市民からなる実行委員が「明日への元気を与えてくれる・夢をみせてくれる活力溢れる<いきのいい>作品・監督・俳優」を、映画ファンの立場から感謝をこめて表彰するTAMA映画賞も発表された(2018年10月~2019年9月に劇場公開された作品が対象)。映画ファンを魅了した事象を表彰する特別賞に選ばれた『天気の子』は、「少年・少女が緻密に描かれた東京の街並みから壮大な天空に放たれた開放感は、言葉に表せないほどの映像体験を観客にもたらした」、そして『新聞記者』は「昨今の政治的題材に取り組みながら苦悩する個人に光を当てたドラマを作り、終演で拍手が起こる『新聞記者現象』を引き起こした」との受賞理由。『嵐電』『こはく』などに主演した最優秀男優賞・井浦新には「経験に裏打ちされる思慮深さ、知性と品、色気を自在に調節し作品のカラーに溶け込む、映画界になくてはならない存在」、『長いお別れ』で認知症が進行していく父親を演じた山崎努には「一瞬みせる敬愛される家族の長としてのお父さんの姿は、俳優・山崎努の凄みを感じさせた」との声が寄せられた。最優秀女優賞を受賞した蒼井優には「『長いお別れ』『宮本から君へ』『斬、』において、多岐にわたる役柄を演じ分け、観客の脳裏に鮮烈に焼き付けた」、同じく前田敦子には「『旅のおわり世界のはじまり』で演じた女性像は、女優・前田敦子の資質・魅力と鮮やかにシンクロし、稀有な存在感を放った」とのコメント。『愛がなんだ』から『人間失格 太宰治と3人の女』まで多彩な作品で大活躍を見せた成田凌には「身近にいそうな自然な佇まいで役に溶け込む一方、他方では誰もが持つ弱い部分を丁寧に演じ、多彩な表現力で観客を魅了した」、同じく『愛がなんだ』で主演をつとめた岸井ゆきのには「ヒロインを大胆な立ち居振る舞いと繊細な眼差しで体現し、リアルな恋愛群像劇のなかにキュートな魅力をもって立ち上がらせた」との受賞理由が寄せられ、『新聞記者』で松坂桃李とW主演をつとめたシム・ウンギョンも、「真実を追い続ける真剣な表情・確かな演技力は、観るものを強烈に作品に引き込み、初出演の日本映画で鮮烈な印象を残した」と最優秀新進女優賞を受賞した。<第11回TAMA映画賞 受賞作品・受賞者>最優秀作品賞[本年度最も活力溢れる作品の監督及びスタッフ・キャストに対し表彰]『嵐電』 鈴木卓爾監督、及びスタッフ・キャスト一同『長いお別れ』中野量太監督、及びスタッフ・キャスト一同特別賞[映画ファンを魅了した事象に対し表彰]新海誠監督、及びスタッフ・キャスト一同 『天気の子』藤井道人監督、及びスタッフ・キャスト一同 『新聞記者』最優秀男優賞[本年度最も心に残った男優を表彰]山崎努 『長いお別れ』井浦新 『嵐電』『こはく』『赤い雪』『止められるか、俺たちを』『宮本から君へ』ほか最優秀女優賞[本年度最も心に残った女優を表彰]蒼井優 『長いお別れ』『宮本から君へ』『斬、』『ある船頭の話』『海獣の子供』前田敦子 『旅のおわり世界のはじまり』『葬式の名人』『町田くんの世界』ほか最優秀新進男優賞[本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰]成田凌 『愛がなんだ』『チワワちゃん』『さよならくちびる』『人間失格 太宰治と3人の女』『翔んで埼玉』ほか清水尋也 『ホットギミック ガールミーツボーイ』『パラレルワールド・ラブストーリー』『貞子』最優秀新進女優賞[本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優を表彰]岸井ゆきの 『愛がなんだ』『ここは退屈迎えに来て』『ゲキ×シネ「髑髏城の七人」Season風』シム・ウンギョン 『新聞記者』最優秀新進監督賞[本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰]山戸結希監督『ホットギミック ガールミーツボーイ』『21世紀の女の子』奥山大史監督 『僕はイエス様が嫌い』「第11回TAMA映画賞授賞式」は11月17日(日)、中央大学 多摩キャンパス クレセントホールにて開催。「第29回映画祭TAMA CINEMA FORUM」各種上映プログラムは11月23日(土・祝)~12月1日(日)、東京都多摩市内の3会場にて開催。(text:cinemacafe.net)■関連作品:長いお別れ 2019年5月31日より全国にて公開(C)2019『長いお別れ』製作委員会愛がなんだ 2019年4月19日よりテアトル新宿ほか全国にて公開©2019映画「愛がなんだ」製作委員会新聞記者 2019年6月28日より全国にて公開©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ天気の子 2019年7月19日より全国東宝系にて公開(C)2019「天気の子」製作委員会
2019年10月03日9月22日(現地時間)、ロサンゼルスのマイクロソフトシアターでエミー賞授賞式が開催された。今年のアカデミー賞と同様、エミー賞も司会者を立てずにプレゼンターたちが授賞式を進行するというスタイルを取った。注目されていたのは今年最終章を迎え、最多32ノミネーションを受けていた「ゲーム・オブ・スローンズ」。ノミネートされていたメインキャストたちがリミテッドシリーズ/テレビ映画部門の助演女優賞のプレゼンターとして登壇し、会場を沸かせた。主要部門では作品賞獲得の快挙を果たし、ピーター・ディンクレイジが助演男優賞を受賞した。主要な受賞者は以下のとおりドラマシリーズ部門作品賞「ゲーム・オブ・スローンズ」主演男優賞ビリー・ポーター「Pose/ポーズ」主演女優賞ジョディ・カマー「キリング・イヴ/Killing Eve」助演男優賞ピーター・ディンクレイジ「ゲーム・オブ・スローンズ」助演女優賞ジュリア・ガーナー「オザークへようこそ」監督賞ジェイソン・ベイトマン「オザークへようこそ」脚本賞ジェシー・アームストロング「サクセッション」コメディシリーズ部門作品賞「Fleabag フリーバッグ」主演男優賞ビル・ヘイダー「バリー」主演女優賞フィービー・ウォーラー=ブリッジ「Fleabag フリーバッグ」助演男優賞トニー・シャルーブ「マーベラス・ミセス・メイゼル」助演女優賞アレックス・ボースタイン「マーベラス・ミセス・メイゼル」監督賞ハリー・ブラッドビア「Fleabag フリーバッグ」脚本賞フィービー・ウォーラー=ブリッジ「Fleabag フリーバッグ」リミテッドシリーズ/テレビムービー部門リミテッドシリーズ作品賞「チェルノブイリ」テレビ映画部門作品賞「ブラックミラー:バンダースナッチ」主演男優賞ジャレル・ジェローム「ボクらを見る目」主演女優賞ミシェル・ウィリアムズ「Fosse/Verdon」(原題)助演男優賞ベン・ウィショー「英国スキャンダル~セックスと陰謀のソープ事件」助演女優賞パトリシア・アークエット「The Act」(原題)監督賞ヨハン・レンク「チェルノブイリ」脚本賞クレイグ・メイジン「チェルノブイリ」(Hiromi Kaku)■関連作品:ゲーム・オブ・スローンズ[海外TVドラマ]© 2012 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.
2019年09月23日『グリーンブック』や『ラ・ラ・ランド』『スリー・ビルボード』などアカデミー賞に直結する作品を多数送りだしてきたトロント国際映画祭の最高賞「観客賞」に、タイカ・ワイティティ監督最新作『ジョジョ・ラビット』が輝いた。『マイティ・ソー バトルロイヤル』のタイカ・ワイティティ監督が、4度アカデミー賞作品賞に輝き、創立25周年を迎えたFOXサーチライト・ピクチャーズのもと、スカーレット・ヨハンソンやサム・ロックウェルら世界を代表する豪華キャスト陣と共に、第2次世界大戦下のドイツを舞台とした壮大なヒューマン・エンターテインメントを作りあげた。第44回トロント国際映画祭では開幕前からマスコミ陣も映画ファンも注目、ワールドプレミアは熱狂をもって迎えられた。ワイティティ監督自身が、主人公の少年ジョジョの空想に登場するアドルフ・ヒトラーを演じるとともに、オーディションでジョジョ役をつかんだローマン・グリフィン・デイビスがその愛くるしいルックスと確かな演技力を披露し、一躍注目の新星の座に躍り出た。戦争に対する風刺をハートフルなコメディの形をとりながら表現し、戦時下における人々の生きる喜びを正面から描いた本作は、最もアカデミー賞に近い賞といわれるトロントの観客賞を獲得したことで、今季の映画賞レースの目玉となりそう。なお、観客賞次点2位にはノア・バームバック監督の『マリッジ・ストーリー』、3位にはポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』が選ばれている。『ジョジョ・ラビット』は2020年1月、全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2019年09月17日現代美術家6名によるグループ展『話しているのは誰? 現代美術に潜む文学』が国立新美術館で11月11日(月)まで開催されている。同展に参加するのは、北島敬三、小林エリカ、ミヤギフトシ、田村友一郎、豊嶋康子、山城知佳子の6名のアーティストたち。1950年代から1980年代生まれまでと年齢は幅広く、表現方法も映像や写真を用いたインスタレーションをはじめとして多岐にわたる。そんな彼らの共通点は、作品のうちに「文学」の要素が色濃く反映されていることだ。2014年より日本各地を撮影した風景写真シリーズ「UNTITLED RECORDS」の制作を行う北島敬三。目に見えないもの、時間や歴史、家族や記憶をモチーフとして作品を手がける小林エリカ。映像や写真などを用いて、社会政治的事象、とりわけセクシュアリティとマイノリティの問題を取り上げた作品を手がけるミヤギフトシ。既存のイメージやオブジェクトを起点にしたインスタレーションやパフォーマンスを手がける田村友一郎。そろばん、サイコロ、安全ピン、油絵具などの既製品や美術に馴染みのある物質を素材に手を加え、これら事物の中に複数の見え方が表出する作品を制作する豊嶋康子。写真、映像、パフォーマンス、インスタレーションによって沖縄における米軍基地や戦争の問題を掘り下げてきた山城知佳子。さまざまな形式で表現活動を行う彼らの作品の中に「文学」がどのように潜んでいるのか?その多様な現れ方を感じ取ってみたい。【関連リンク】 国立新美術館(https:// www.nact.jp )北島敬三 《ツィルカール村 アルメニア共和国》(「USSR 1991」シリーズより)1991/2019 年 顔料印刷 66.0×93.0cm 作家蔵 ©KITAJIMA KEIZO小林エリカ 《ドル》 2017年 ウランガラス、鏡、紫外線ランプ 61.0×41.0×7.5 φ70cm 個人蔵 協力:妖精の森ガラス美術館 © Erika Kobayashi Courtesy of Yutaka Kikutake Galleryミヤギフトシ 《A Lamp》(「物語るには明るい部屋が必要で」より) 2019 年 デジタルCプリント 作家蔵 ©Futoshi Miyagi田村友一郎 《Sky Eyes》 2019 年 ミクストメディア 作家蔵 ©Yuichiro Tamura豊嶋康子 《ズレ》 2018 年 紙、割りピン、アクリル絵具、ボールペン φ11.5cm 作家蔵 撮影:木奥惠三山城知佳子 《チンビン・ウェスタン『家族の表象』》 2019 年 4KHD ヴィデオ、カラー、サウンド 作家蔵
2019年09月05日文学座が上演する『スリーウインターズ』は、クロアチア・ザグレブ出身の女性作家、テーナ・シュティヴィチッチが描く、ある家族の4世代にわたる物語。第二次世界大戦直後から、グローバリズムの波に飲み込まれてゆく現代まで、クロアチアの3つの時代を背景に、生き方を模索する女性たちの姿が綴られる。上演会場は、約70年にわたって数々の意欲的な舞台を生み出してきた文学座アトリエ。本日9月3日、ベテランから若手までそろう座組みによって、いよいよ初日の幕を開ける。第二次世界大戦後の1945年、ザグレブ。ローズは、かつてナチスの協力者だったブルジョワジーの家を手に入れる。この家は、ローズの母親がメイドとして働き、ある事情から追い出された家でもあった。時は移り、ユーゴスラビア分断が決定した1990年、さらにクロアチアがEUに加盟をした2011年と、ローズを取り巻く状況は大きく変化してゆく。人々は、そして女たちは、この3つの冬をどう受け止め、生きたのか。2014年にロンドン・ナショナルシアターで初演、2016年にはクロアチア国立劇場でも上演された本作。日本初演となる今回の演出を手がけるのは、文学座の演出家・松本祐子だ。文学座アトリエの会では、『ペンテコスト』『ホームバディ/カブール』など異文化間の対立を描いた問題作を発表してきた松本。外部公演でも、新たな視点による『ピーターパン』の演出で、第47回毎日芸術賞千田是也賞を受賞するなど、戯曲の魅力を引き出す手腕に定評がある。アトリエ公演という密な空間で、どんな物語を紡ぎだしてくれるのか期待はふくらむ。そしてこのたび、シュティヴィチッチの来日が急きょ決定。9月4日13:30の回の終演後に、シュティヴィチッチと松本のアフタートークが開催される(別日のチケットでも参加可能)。女性にとっての“自分らしさ”や幸せのありようが大きく変化するなか、著作が10カ国語で翻訳され、ますます注目が高まるシュティヴィチッチの戯曲。日本の観客にとっても、多くの示唆を与えられる舞台となるに違いない。文:佐藤さくら
2019年09月03日展覧会「話しているのは誰? 現代美術に潜む文学」が、2019年8月28日(水)から11月11日(月)まで国立新美術館にて開催される。「話しているのは誰? 現代美術に潜む文学」は、文学をテーマにしたグループ展。映像や写真を用いたインスタレーションなど、文学の要素を色濃く反映している日本の現代美術家たちの手掛ける作品を展示する。出品作家は、目に見えない物や時間、記憶をモチーフとして作品を手掛ける小林エリカや、既存のイメージやオブジェクトを起点にインスタレーションやパフォーマンスを発表する田村友一郎ら6名。それぞれの作品から、日本の現代美術における文学のさまざまな表れ方を感じることができる。さらに会期中、国立新美術館館内にて作家たちによるアーティストトークやギャラリートークも開催されるので、気になる人はぜひチェックしてみてほしい。【詳細】「話しているのは誰? 現代美術に潜む文学」会期:2019年8月28日(水)~11月11日(月)会場:国立新美術館 企画展示室1E住所:東京都港区六本木7-22-2開館時間:10:00~18:00(毎週金・土曜日について、8・9月は21:00まで、10・11月は20:00まで)休館日:毎週火曜日 ※10月22日(火・祝)は開館、10月23日(水)は休館。※入場は閉館時間の30分前まで観覧料:(当日)一般1,000円、大学生500円/(前売・団体)一般800円、大学生300円※2019年11月3日(日・祝)は文化の日につき入場無料。※高校生、18歳未満の人(学生証または年齢のわかるものが必要)、障害者手帳を持参の人(付添1名を含む)は入場無料。■アーティストトーク場所:国立新美術館 3階講堂定員:260名 ※先着順、申込不要日時、アーティスト:・9月14日(土) 18:00~20:00(17:30開場) ミヤギフトシ・9月22日(日) 14:00~16:00(13:30開場) 北島敬三・10月20日(日) 14:00~16:00(13:30開場) 豊嶋康子・10月22日(火・祝) 時間未定 田村友一郎・10月26日(土) 17:00~19:00(16:30開場) 小林エリカ■ギャラリートーク場所:国立新美術館 企画展示室1E ※申込不要出演者、日時:・9月15日(日)14:00~15:00 豊嶋康子・9月21日(土)14:00~15:00 小林エリカ・10月5日(土)16:00~17:00 小原真史、北島敬三※アーティストトーク・ギャラリートークの聴講は無料。本展の観覧券(半券可)の提示が必要。【問い合わせ先】TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
2019年08月26日今年の再々演でラストステージを迎えた、村上春樹原作、蜷川幸雄演出の舞台『海辺のカフカ』。それに続く村上文学の舞台化第2弾、『神の子どもたちはみな踊るafter the quake』が今夏、上演される。【チケット情報はこちら】原作は阪神淡路大震災をモチーフに、地震のニュースに触れた人々の心の動きが綴られた作品を集めた短編集で、その中から『かえるくん、東京を救う』『蜂蜜パイ』の2編を取り上げて構成。脚本は『海辺のカフカ』を手がけたフランク・ギャラティ。演出は、蜷川演出の舞台『私を離さないで』(2014年、カズオ・イシグロ原作)で脚本を担当した倉持裕が担うこととなった。今回、『海辺のカフカ』のナカタ老人役で海外からも多くの賞賛を得た木場勝己が、“かえるくん”役で出演。再び村上ワールドに挑む思いを聞いた。「『海辺のカフカ』パリ公演の時に村上春樹さんのトークショーがあって、10代の若い女性ファンが作品のテーマなどを質問するんですね。村上さんはテーマのことはおっしゃらずに“僕は物語を作るんです”と主張されていました。僕ら俳優の場合は物語を作るというより、その瞬間、瞬間の場で起こったドラマをつなげることで、最終的に物語になると考えていて。そこが作家とは違うなと思っていたら、さらに“僕は、プロットは作らない。登場人物を置いた後、彼らがどう動くかは書いてみないとわからない”とおっしゃった。その感覚はちょっと近いかな、なんて思いましたね。豊かな物語に負けないよう、その瞬間、瞬間のつなぎをちゃんとやらなきゃと思っています」蜷川との思い出を「ああしろ、こうしろと言われたことは皆無。だから自分の好きなようにやって、それを蜷川さんがニヤニヤして見ていた」と笑いながら振り返る。倉持との舞台作りは今回が初。その期待とともに気になるのは、自身が担うキャラクターである。「何しろ人間じゃなくて、蛙だからね。蛙の気持ちは知らないけれど(笑)、未知な分だけ面白いと思います。村上さんは“総体としての蛙”という言い方をしていたかな。かえるくんは、信用金庫に勤める片桐さんに「みみずくんが東京に大地震を起こそうとしている。一緒に闘ってくれ。あなたでなければいけない」と頼むんです。その片桐さんというキャラクターがとても興味深いんですよ。風采があがらず、腕に覚えもないのに、ヤクザの前でも動じずにこちらの要求を通したりする。そういう嫌な仕事を押し付けられるんだけど、きちんとやり遂げていて。そんな片桐さんを、かえるくんはなぜシンパシーを感じて選んだのか。そこが1番、僕のモチベーションの核になるだろうと思います。僕自身、そういう人がちょっと好きですから」地震をモチーフに人々の繊細な心の揺らぎを描く本作について、「ラストは再生に向かっている、と感じられます」と穏やかな表情で見据える。共演する古川雄輝、松井玲奈、川口覚ら瑞々しい才能たちの頼れる支柱となることは間違いない。“ナカタさん”から“かえるくん”へ、魅惑の村上ワールドを飄々と泳ぐ、熟達の味わいに期待せずにはいられない。取材・文上野紀子
2019年07月05日文学座の公演『ガラスの動物園』が6月28日(金)、東京芸術劇場 シアターウエストにて開幕する。アメリカ演劇を代表する劇作家テネシー・ウィリアムズによるこの名作を、文学座が上演するのは5回目で、1990年の前回から実に29年ぶりとなる。「『ガラスの動物園』は、文学座の人間にとっては馴染みの深い作品です」と語るのは、その大切な演目を自ら選び、演出に名乗りを上げた高橋正徳だ。「名作なのでプレッシャーはあるけれど……、よくプレッシャーに対して“肩肘張らずにやろう”とか言いますが、座組の皆とは、むしろ“肩肘張って、やっていこう”と話しています。ちゃんとプレッシャーを受け止めて、そういう作品をやるチャンスを得たことを、肝に銘じてやっていこうと」文学座の俳優養成機関である附属演劇研究所において、森本薫『女の一生』、ソーントン・ワイルダー『わが町』に次いで、長きに渡り教本として扱われてきた戯曲が『ガラスの動物園』だ。高橋も、研究所時代にこの戯曲と初めて出会ったという。「僕が研究所に入ったのは20年近く前です。それ以前の学生時代は主に小劇場演劇を観ていたので、いわゆる演劇の名作戯曲を読んだのは研究所からでした。とても読みやすいし、当時の僕自身にも身につまされる内容ではあったんですが、やってみたいとまでは思わなかった。その頃はやっぱり、新しいものをどう取り入れるかということばかり考えていたんですね。20年経って、当然ながら歳を取るごとに戯曲の見え方も変わってきます。新しい作品、作家との出会いで刺激を受けることも大事だけど、過去の文学座の作品を先輩方から受け継いで、あらためて検証し、リニューアルというか、更新することも大事だと考えるようになりました」父親不在の家庭で、現実に心を閉ざして生きる母アマンダと娘ローラ。トムはそんな母と姉にいら立ちながら、見捨てることもできずにいる。そこに青年ジムが現れ、一家の生活に変化が訪れる——。アマンダ役の塩田朋子、ローラ役の永宝千晶、トム役の亀田佳明、ジム役の池田倫太朗と、高橋の望む最強の布陣が整った。とくに29年前の劇団公演でローラを演じた塩田には、「ぜひアマンダを演じていただきたかった」と強調する。「29年前の塩田さんのローラは残念ながら観ていないけれど、芝居に対する熱量や力強さが素敵だなと感じる女優さんです。アマンダは、家庭の中で母としての役割を全うしようといろんな表情を見せる役なので、今回は塩田さんの多彩な表情が見られると思います。亀田君は同い年で、演劇的な言葉のやりとりができる俳優です。すごく信頼しているので、二人三脚で作品作りをしているような感覚でいますね。永宝さんも実力のある女優さんで、舞台より先に声の仕事で……、『スター・ウォーズ』のレイ役とかで忙しくなったんですが、本来は舞台がやりたい、文学座の作品に出たいと。ローラは相当内面が屈折した、闇を抱えた女性なので、深く掘り下げる力のある女優を考えた時に、永宝さんが思い浮かびました。池田君は元サッカー少年で、怪我でサッカーから離れる時に、ふと思い立って文学座を受けたら受かっちゃった人(笑)。だから当初は演劇のエの字も知らなかったけど、やっぱり身体性が優れている。役者はどこかナルシスティックなところがあるから、自分の役ばかりに集中しがちなところを、彼は無意識に周りを見られるタイプなんですね。また、演劇って初舞台から数年は楽しいけど、徐々に成長曲線が落ちてきて、未来に対するぼんやりとした不安を抱える人は多いと思うんです。でも長年スポーツに取り組んできた彼みたいな人は、2、3年で結果は出ないということを知っているから頭でっかちにならない。つねに前向きに、じゃあ今何が必要かということを具体的に考えられる人間なので、すごく面白いです」後列左からジム役の池田倫太朗、トム役の亀田佳明、前列左からローラ役の永宝千晶、アマンダ役の塩田朋子過去の公演はすべて鳴海四郎訳での上演だが、今回は小田島恒志に新訳を依頼。その狙いを「とても現代劇な問題を孕んだ家族劇なので、よりアクチュアルな関係を観客に提示したい」と語る。「描かれているのは1930年代のアメリカです。金融恐慌から立ち直ろうとする社会状況の中、トムは仕事の単純作業に日々明け暮れ、生きている実感を得られずにいる。若者たちが未来を想像できない状況という点は、とても今の日本に通じるものがあります。また、父親不在による問題、母と娘の関係など、観る人によって、“他人事じゃない”といった共感ポイントはたくさんあると思うんですよね。“あんな母親がいたら、逃げ出すよ”って人もいれば、“いや、母親とはそういうものだ”と、トムを責める人もいるかもしれない。客席からどんなリアクションが聞こえてくるのか、楽しみです」文学座での初演は1969年。劇団力で引き継いできた至宝の舞台が、清々しく頼もしい精鋭たちの力で、さらに太い幹となって立ち上がろうとしている。「それぞれのキャラクターが持つ寂しさ、悲しみがちゃんと浮き出てくるよう、丁寧に作り上げたいと思います」7月7日(日)まで。取材・文:上野紀子
2019年06月21日今年7月、21年ぶりの来日公演が行われるエイフマン・バレエ。その公演を控えた6月2日、上演作品の『アンナ・カレーニナ』『ロダン~魂を捧げた幻想』について、文学、美術の専門家を講師に招いた「エイフマン・バレエ来日記念講演会」が開催された。【チケット情報はこちら】『アンナ・カレーニナ』についての講師は、東京外国語大学教授でロシア文学研究者の沼野恭子。まず小説に登場する3組の家庭の関係性の解説から始まり、冒頭の有名な一文「幸福な家庭はどれもみな似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである」を引用。小説では「幸福と不幸」「都会と田舎」「生と死」など対比のコントラストが効いていることを紹介した。また機械文明の象徴として「鉄道」が物語の伏線となっている点など、小説を読み解くヒントを提示し「当時のロシア社会がリアリスティックに、端整な文体で描かれている。読書の快楽を味わうことができる名著」とその魅力を語る。さらに小説とバレエでは描かれ方が違うことに触れ「小説がどのように“アダプテーション”(原作を映画や舞台に脚色、翻案すること)されているかを観るのがもっとも楽しい。バレエという身体言語で文学をどのように表現しているのかも見どころ」と締めくくった。続いて、彫刻家オーギュスト・ロダンの創作魂に迫る『ロダン~魂を捧げた幻想』にちなみ、ロダン・コレクションで知られる静岡県立美術館の上席学芸員、南美幸が登壇。ロダンが一躍有名になった作品「青銅時代」について、そのリアルさが物議を醸したことや、代表作「地獄の門」「カレーの市民」の制作過程について、写真を交えながら解説した。またバレエでも描かれている、妻ローズと助手で恋人のカミーユとの三角関係に言及し、カミーユがロダンとローズを揶揄して描いたデッサンや、3人の関係を表現した彫刻「分別盛り」など、愛憎うごめく作品も紹介。晩年のロダンがニジンスキーの『牧神の午後』を賞賛し、彼をモデルにした彫刻を作っているという話もバレエファンにとって興味深い内容だった。最後にサンクトペテルブルクで『ロダン』を鑑賞し、バレエ団の稽古も見学した舞踊評論家の桜井多佳子が登壇。長身の美しいダンサーたち(ダンサーの採用基準は男性が184cm、女性は173cm以上)がアクロバティックな動きを繰り広げる興奮と、音楽の効果的な使われ方の面白さについて臨場感たっぷりに語った。文学、美術講座としても知識欲を刺激する贅沢な内容の2時間で、バレエファンはもちろん、文学、アート好きにとっても楽しめる公演になることを確信する講演会だった。公演は7月13日(土)に滋賀・滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール、7月15日(月)に静岡・グランシップ(静岡)中ホール・大地、7月18日(木)~21日(日)まで東京・東京文化会館にて行われる。取材・文:郡司真紀
2019年06月12日この連載のタイトルは「ものがたりが開く世界への扉」ですが、ちょっと目を上に向けていただけるとサブタイトルが見えるかと思います。「子どものための英文学」となっていますね。一番最初の記事ではこんな風に書きました。実は「英文学」というくくりには数多くの問題があるのですが、とりあえず、今の段階では「英語で書かれた」「主にイギリスの」文学、としておきましょう。堅苦しく考えることはなく、ピーター・ラビットも、不思議の国のアリスも、ハリー・ポッターも英文学の世界の住人です。(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|英語をただ学ぶだけでは身につかない?英文学から得られる文化的な読解力「文化リテラシー」)ここで言っている「数多くの問題」について、今日は「英」の部分を取り上げて、少しだけ考えてみましょう。お父さんとお母さんが気付いているかどうかで、物語を読んだ後の子供への声がけが変わってくるでしょうし、そもそもどんな本を子供と読むべきかという判断も変わってくるだろうと思うからです。「国」と「言葉」と「物語」は一直線ではつながらない?「英文学」の「英」とは、「英語」なのでしょうか、「英国」なのでしょうか?さらにいえば、「英国」はいつの時代のことをさしているのでしょう?かつて大きな帝国を持っていたイギリスの国境は、時代によって大きく動きます。そのうちの、どの国境が「英文学」について話をする時に適用されるのでしょう?今年2月に公開されたディズニー映画『メリー・ポピンズリターンズ』を親子で観に行ったという方もいるかもしれません。その原作となった、古典的な児童文学の名作『メアリー・ポピンズ』を例にあげてみましょう。ロンドンを舞台にした、とてもチャーミングで人気のある物語です。けれども、原作の作者のP.L. トラヴァースは、オーストラリア生まれです。子供時代をオーストラリアで過ごし、大人になってからイギリスに移住しました。イギリス生まれの父親を持ち、オーストラリアとイギリスの二重国籍者です。さて、『メアリーポピンズ』は英文学でしょうか、それとも、オーストラリア文学でしょうか?英語話者=50数ヶ国語話者!?○ヶ国語という表現の落とし穴「英文学」という言葉の中には、「国」や「言葉」や「文学」に関わる概念が複雑に入り混じっています。この国と言葉と物語の関係性について、子供達にできるだけ柔らかい態度を持っていてもらいたいのです。多くの日本の人は、なんとなく漠然と「言葉」と「国籍」と「住んでいる国」がきれいな形で繋がっていると思っています。けれども実際は、言語と国籍と居住国は、必ずしも一致するとは限りません。日本語が使える外国人は数多くいますし、日本語しか使えない外国籍の人も数多くいます。私も含め、日本の外に住んでいる日本人も少なくありません。生まれた時の国籍と、大人になった時の国籍が異なる場合だってあるでしょう。英語という言語は一つですが、英語を公用語とする国は現在50を超えるはずです。つまり、英語と日本語を話す私は基本的には2言語話者ですが、屁理屈を言えば50数ヶ国語話者でもあるのです。「○ヶ国語」のように、「国」と「言葉」を一本の線で結びつけて言語や社会を理解しようとすることに、そもそも無理があるのかもしれません。「単なる日本語の表現の問題じゃないの?」と思われるかもしれませんね。確かに、「2言語」というのか「2ヶ国語」というのかは、とてもささいなことです。けれど、国や言葉、文化について考えていく、とても身近なきっかけでもあります。それを潰して欲しくはないなあ、とも思うのです。言葉と文化と国の関係に柔軟な姿勢を、幼少期から育むためにこれから先、子供達が暮らしていくであろう世界は、必ずしも国と言葉と文化や文学が一本の線で単純につながっていくような世界ではないだろうと予想がつきます。「イギリスに住むイギリス人が、母語である英語を使ってイギリス人の心を描いたのが英文学」と単純にくくることができないように、「日本に住む日本人が、母語である日本語を使って日本人の心を描いたのが日本文学」と言うことが適切でない世界に、子供達は育っていくでしょう。細かいことを言えば、これからの子供達がそういう世界に育っていくのではなく、もともと世界はそういうもので、今まで私たちの多くが気づかなかっただけなのかもしれませんね。「英文学」「英語の物語」という言葉を聞いた時に、「イギリスの」あるいは「アメリカの」物語だけを思い浮かべるのではなく、もう少し、広い世界を想定できること。そして、「国、言葉、文学(文化)」が一直線で繋がらない、という、シンプルだけれどとても重要なことを理解していること。言葉と文化と国の関係に柔軟であることは、やがて子供達が、自分の暮らす社会や、もっと広い世界を理解しようとする時に、手助けになるだろうと思うのです。英語の物語の世界の広がりを味わえる絵本様々な歴史のせいで、世界のあちらこちらで使われている英語は、国と言葉と文化は多元的・流動的だという実感を育むために、良い下地を作ってくれるのではないかと思います。英語で書かれた物語の世界の広がりを感じさせる作品を、いくつかご紹介しましょう。まずはオーストラリアの子供だったら、誰でも必ず読んだ事のある絵本、Possum Magic(『ポッサムの魔法』本邦未訳)。オーストラリアの記念硬貨にモチーフが使われたことがあるくらい、よく知られた作品です。ポッサムはオーストラリアの動物です。日本の方にはあまり馴染みがないかもしれませんね。おばあちゃんポッサムが魔法を使って孫娘を透明にするのですが、元に戻すことができなくなってしまいます。孫娘をもう一度見えるようにするために「人間の食べ物」を食べるのです。オーストラリアの動物たちとオーストラリアの名物料理がたくさん並ぶ、楽しいお話です。数多くの読み聞かせ動画もあります。台湾系アメリカ人作家によるA Big Mooncake for Little Star(『小さなお星さまの大きな月餅』本邦未訳)も可愛らしい物語です。舞台は空。お母さんが作った大きな月餅を、本当は食べちゃいけないのに、食べてしまいたい小さなお星さま。月餅は、台湾では重要な民俗行事、中秋節(旧暦8月15日)に、お月見をしながら食べるもの。なんとも微笑ましいお話です。中国やアフリカの赤ずきんちゃん!?日本語訳もある絵本中国生まれの作家、エド・ヤングによる『ロンポポ——オオカミと三人のむすめ』は、中国に伝わる民話を元に、英語で書かれたお話です。1990年、アメリカで出版されたもっとも優れた児童文学に授与されるコールデコット賞を受賞しました。英語版では「中国の赤ずきん」という副題で愛されています。南アフリカの作家ニキ・ダリーによる『かわいいサルマ』。こちらの副題は「アフリカのあかずきんちゃん」。原色の挿絵が美しいだけでなく、街角の様子も楽しいのです。英語の読み聞かせもネット上で見つけることができます。文化や言葉は国境を超えていきます。最初から難しいことを子供に説明する必要はありません。世界のあちらこちらで描かれている物語を楽しみながら、いずれ、大きくなってきたときに、ほんの少し、言葉と文化と物語の関係を考えてもらえるといいな、と思うのです。英語で書かれた物語の中には、世界の様々な地域へと扉を開いていくものが確実にあるからです。(参考)映画.com|メリー・ポピンズリターンズMem Fox, Possum Magic, (LindfieldL Scholastic Australia, 2018., 初版1983)Grace Lin, A Big Mooncake for Little Star (New York: Little, Brown and co., 2018)エド・ヤング『ロンポポ——オオカミと三人のむすめ』(古今社、1999年)ニキ・ダリー『かわいいサルマ——アフリカのあかずきんちゃん』(光村教育図書、2007年)
2019年04月18日ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)、フランスのアカデミー賞と言われるセザール賞で4冠(監督賞・撮影賞・美術賞・音響賞)を受賞した『THE SISTERS BROTHERS』(原題)が、『ゴールデン・リバー』の邦題で7月、日本公開されることが決定。ポスタービジュアルも到着した。時はゴールドラッシュ。普通を夢見る兄と、裏世界でのし上がりたい弟は、最強と呼ばれる殺し屋。政府の内密な依頼で偵察係と追うことになったのは、黄金を見分ける化学式をみつけた科学者。しかし、黄金に魅せられた4人は手を組むことになり…。本作は、イギリスの文学賞のひとつであるブッカー賞の最終候補作にもなり、様々なミステリ・ベスト10入りも果たすパトリック・デウィットの「シスターズ・ブラザーズ」を基に映画化。『真夜中のピアニスト』『君と歩く世界』などを手掛けるジャック・オーディアール監督の最新作で、オーディアール監督初の英語作品でもある。1851年のゴールドラッシュに沸くアメリカを舞台に、決して手を組むべきでなかった4人の男たちを黄金が狂わせていく、一攫千金ウェスタンサスペンス作品。西部劇のルックながらサスペンスドラマの要素が入り、読めない展開、誰が善で誰が悪なのか、ツイストしていく人間ドラマに目が離せない…。そんな4人を演じるのは、いずれも実力派揃い!最強と呼ばれる凄腕の殺し屋“シスターズ兄弟”の兄イーライを『シカゴ』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『ロブスター』のジョン・C・ライリー、弟チャーリーを『グラディエーター』『ザ・マスター』のホアキン・フェニックス。偵察係を『ブロークバック・マウンテン』『プリズナーズ』『ナイトクローラー』『ノクターナル・アニマルズ』などに出演、幅広い役柄を演じ切るカメレオン俳優のジェイク・ギレンホール、科学者を『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』『ヴェノム』のリズ・アーメッドが演じている。トラウマ、憧憬、疑心、かすかな友情――。黄金に魅せられた彼らは何を得、何を失うのか?思いがけないラストに注目だ。『ゴールデン・リバー』は7月、TOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開予定。(cinemacafe.net)■関連作品:ゴールデン・リバー 2019年7月、TOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開予定Ⓒ 2018 Annapurna Productions, LLC. and Why Not Productions. AllRights Reserved.
2019年03月20日話題のスポットやエンタメに本誌記者が“おでかけ”し、その魅力を紹介するこの企画。今回はアカデミー賞で、作品賞、助演男優賞、脚本賞を獲得した『グリーンブック』を見てきました!■映画『グリーンブック』(TOHOシネマ日比谷ほか全国公開中)舞台は’62年のアメリカ。無教養でガサツだけど頼りがいのあるトニー(ヴィゴ・モーテンセン)は、天才肌で神経質な黒人ピアニストのドクター(マハーシャラ・アリ)の運転手として、アメリカ南部へ演奏ツアーに出ることに。このときにタイトルにもなった『グリーンブック』が登場。黒人が利用できる飲食店・ホテルなどが記載されているガイドブックで、人種差別が色濃く残る当時のアメリカでは、これを利用することで安全を確保することができたのです。2人の旅は、真逆な性格もあってどこかちぐはぐな始まりでしたが、しだいに友人として距離を縮めていきます。名優、ヴィゴ・モーテンセンもよかったけれど、ドクター役のマハーシャラ・アリの演技にも目がくぎ付けになりました。ただ神経質なだけではなく、戦災で、黒人社会にも居場所がない深い孤独を抱えるドクターを見事に体現していました。人種差別の実態はおそらくもっと根が深く複雑だと思いますが、知らない者に対して知ろうとする意欲を持つことで変われる、というシンプルなメッセージを受け取りました。むしろ距離を縮めたくないから知ろうとしないのかも、と思ったり。実話をもとにした映画というのが感動をさらに呼ぶ作品です。
2019年03月18日第91回アカデミー賞で長編アニメ賞に輝いた『スパイダーマン:スパイダーバース』が本日から公開になる。本作は他にも英国アカデミー賞、アニー賞、ゴールデングローブ賞など多数の映画賞を受賞。単に“スパイダーマン”のアニメ作品ではなく、映画史にその名を刻む傑作映画として高く評価されている。マーベル・コミックの人気キャラクターのひとり“スパイダーマン”はこれまでに幾度となくアニメ化、実写映画化されてきたアイコン的な存在だが、本作は主人公が暮らす世界とは“異なる次元”にも同じようにスパイダーマンが存在し、ある事件をきっかけに複数のスパイダーマンが集結するドラマが描かれる。アメリカのブルックリンで暮らす高校生マイルスはある日、突然変異したクモにかまれたことで驚異的な力を得る。やがて彼は地下鉄で“異次元”との扉を開く装置を発見。さらに街の安全を守っていたスパイダーマン=ピーター・パーカーの死を目撃する。その後、異次元から“別の世界のピーター・パーカー”が出現。さらに別の次元からもスパイダーマンが現れ、マイルスは自身の能力を制御する術を学び、さらに自分は一体、何者なのか? 自分は何をするべきなのかを見出していく。複数の次元から複数のスパイダーマンが集まる設定はこれまでにもコミックで描かれてきたが、本作は『21ジャンプストリート』や『LEGO ムービー』など数々の傑作を手がけてきたフィル・ロードとクリス・ミラーのコンビが製作を担当。ロードは脚本も執筆しており、平凡な主人公がヒーローに成長する定番の物語を主軸に置きながら、ヒーローの継承の物語や家族のドラマを、掟破りのギャグや展開をアクセントにしながら巧みに描き出している。さらに本作はこれまでにないアニメーション表現に挑んでおり、単にデジタル3Dのアニメーションを制作するだけでなく、そこに手描きの線やコミックブックの質感(効果線やドット模様など)、グラフィティの要素をミックスし、観客が“コミックの世界に入り込んだ”ような映像世界を実現。音楽もストリングスを主体とした劇伴だけでなく、HIPHOP、エレクトロミュージックの音源をミックス&スクラッチして、これまでにないトラックが生み出されている。本作はすでに公開されている国と地域で高評価を集めており、日本でも絶賛の声が広がることになりそうだ。
2019年03月08日「第42回日本アカデミー賞授賞式」が3月1日(金)に開催され、『万引き家族』が最優秀作品賞を受賞した。12部門において優秀賞を受賞している『万引き家族』だが、作品賞以外にも、最優秀監督賞、最優秀主演女優賞、最優秀助演女優賞、最優秀脚本賞など、最多計8部門で最優秀賞を受賞した。なお、最優秀主演男優賞は『孤狼の血』の役所広司、最優秀助演男優賞は『孤狼の血』の松坂桃李が受賞した。『万引き家族』は、是枝裕和監督が、貧困と幸せ、血縁と心の絆など社会に抱いたある違和感に、10年間描いてきた家族に関するテーマを投入した渾身作。下町の一軒家で、家主である老女(樹木希林)の年金を目当てに暮らす柴田家。足りない生活費を万引きなどで稼いでいた彼らは、冬の日、親から虐待を受ける少女を拾い一緒に暮らし始める。しかし、ある事件をきっかけに家族の秘密は白日の下にさらされる。日本映画の頂点に立ち、抱き合って喜び合った是枝監督、リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優などの“家族”たち。是枝監督は「撮影からちょうど1年、長い旅をこの作品と続けてきました。本当にいいラストを迎えることができました」と簡潔ながら気持ちのこもったコメント。優秀主演男優賞を受賞したリリーさんは、「すごく小さく始まった映画でしたけど、知らないうちにお祭りが続いて、1年間いろいろなところに行かせていただきました。つらいこと、人のおわかれもいっぱいありましたが、この映画の魔法にかかって楽しく過ごさせていただきました」と、リリーさんらしい詩的な言葉に思いを乗せた。リリーさんの妻役となった安藤さんは「素敵な時間をありがとうございます!本当にたった1年と思えない1年間でした。(城)桧吏、(佐々木)みゆ、やったね!」とステージの向こうにいるであろう子役たちにも笑顔を投げかける。終始涙をこらえられない様子の松岡さんは、「ものが浮かぶタイプですけど、本当に浮かばない…」とマイクを返す仕草をしたものの「ありがとうございます」と伝え、この日何度目かの涙を流していた。(cinamacafe.net)■関連作品:万引き家族 2018年6月8日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2018フジテレビジョンギャガAOI Pro.
2019年03月01日役所広司が『孤狼の血』で、第42回日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞を受賞した。第41回では『三度目の殺人』で最優秀助演男優賞を受賞しており、2年連続での名誉ある受賞に、名優は「今日は本当に素晴らしい賞をいただいて、びっくりしました」と謙虚に目を丸くしていた。主演男優賞では、『散り椿』の岡田准一、『万引き家族』のリリー・フランキーなど賞レース常連の俳優陣に加え、『終わった人』でいぶし銀の魅力を見せた舘ひろし、さらには2018年の邦画界のビッグトピックスとなった『カメラを止めるな!』で、何があってもカメラを回し続ける監督を熱演した濱津隆之が優秀賞を受賞。最優秀のブロンズは、役所さんの手に渡った。『孤狼の血』では、やくざを手なずけ、弱みを握って警察官を脅す型破りな刑事・大上となった役所さん。大上のことを「汚れた世の中のゆがみの象徴」と捉えた役所さんは、ダーティな捜査をしながらも、自分の正義感に突き動かされて行動する男を体現。呉弁を駆使し見事なアウトローを誕生させ、高い熱量で物語を完璧にリードした。開口一番、「いやあ、本当に意外でした」と最優秀主演男優賞の受賞について漏らした役所さん。「岸部一徳さんが『死の棘』で最優秀主演男優賞をとられたときに“こんなことってあるんだな”とおっしゃったのを、会場で聞いていてすごく感動した記憶があるんです。僕も最優秀主演男優賞は2年連続でいただいて以来、ずっともらっていなかったですけど本当に最優秀は難しいことだろうなって…」と第21回の『うなぎ』以来20年ぶりの受賞に感慨深げ。この日、最優秀助演男優賞を受賞し、息の合った松坂桃李とのコンビについて、役所さんは「素晴らしい男優さん。今日は主演男優賞と助演男優賞をかえっこしたいくらいです」と手放しで賞賛。うれしそうに役所さんを眺めた松坂さんは、「本当に、この役は同年代には渡したくないくらい、役所さんと一緒に過ごせていただけた時間だったので、宝物のようでした」と、つもる思いを返していた。(cinamacafe.net)■関連作品:孤狼の血 2018年5月12日より全国にて公開ⓒ 2018「孤狼の血」製作委員会
2019年03月01日今月24日(現地時間)開催のアカデミー賞授賞式において、監督&出演した『アリー/ スター誕生』で主演男優賞、作品賞、脚色賞などにはノミネートされたものの、監督賞の候補入りを逃したブラッドリー・クーパー。監督賞を受け取る可能性がなくなり、「恥ずかしい」となげいたブラッドリーに朗報だ。火曜日、PETA(動物の倫理的扱いを求める人々の会)が独自に開催している“オスキャット賞”で、ブラッドリーが監督賞に選ばれた。PETAはブラッドリー選出の理由を「ブラッドリーは虐待的な扱いをする犬の訓練施設を通さず、愛犬のチャーリーを『アリー/スター誕生』に出演させました。犬は小道具ではありません。家族の一員なのです」と、“俳優犬”を使わなかったことを評価したと説明している。オスキャット賞は、昨年からPETAが始めた「アニマル・フレンドリー」な作品や人を表彰する賞。今年は監督賞のブラッドリーのほか、作品賞は『ブラックパンサー』、男優賞と女優賞はそれぞれベジタリアンのウィンストン・デューク(『ブラックパンサー』)とナタリー・ポートマン(『Vox Lux』原題)が受賞した。(Hiromi Kaku)■関連作品:アリー/ スター誕生 2018年12月21日より全国にて公開© 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
2019年02月14日2月24日(現地時間)に開催される第91回アカデミー賞授賞式において、撮影賞、編集賞、短編映画賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞の4つの賞が、コマーシャル中に授与されることが明らかになった。授賞式を主催する映画芸術科学アカデミーの会長ジョン・ベイリーが、メンバーたちにこの計画をメールで伝えたという。「Variety」誌などが報じた。今年のオスカーは、テレビでの生放送の時間を例年の4時間弱から3時間へと大幅に短縮。そのため、アカデミーはどこをどう削るかに苦戦しているとみられ、先日、候補者を集めて行われたランチパーティーでも、ベイリーはこんな“注文”を口にしたという。「(受賞して)舞台に向かうときは急いでください。早く舞台に上がりたいという感じを見せて…」。というのも、受賞者の名前が呼ばれてから舞台に上がり、スピーチを終えるまではたった90秒しかないからだそうだ。また、歌曲賞にノミネートされている5曲中、2曲のパフォーマンスしか行われないといううわさも出た。この件については現時点でアカデミーが5曲中4曲のパフォーマンスの確定を発表しているため、全曲が披露されるとみられる。ベイリーは、テレビの生放送では見ることのできない4部門の賞の受賞スピーチなどは、編集した録画を授賞式後に放送し、オスカーの公式HPやSNSでも公開すると話している。(Hiromi Kaku)
2019年02月12日27日夜(現地時間)、ロサンゼルスの「シュライン・オーディトリアム」で、アカデミー賞を占う賞としても注目を集める全米映画俳優組合賞の授賞式が行われた。司会は女優のメーガン・ムラーリーが務めた。最高賞にあたるキャスト賞は、アカデミー賞の作品賞にもノミネートされている『ブラックパンサー』が獲得した。受賞リストは以下の通り【映画部門】キャスト賞『ブラックパンサー』主演男優賞ラミ・マレック『ボヘミアン・ラプソディ』主演女優賞グレン・クローズ『天才作家の妻 40年目の真実』助演男優賞マハーシャラ・アリ『グリーンブック』助演女優賞エミリー・ブラント『クワイエット・プレイス』スタント・アンサンブル賞『ブラックパンサー』生涯功労賞アラン・アルダ【テレビ部門】男優賞(テレビ映画/ミニシリーズ部門)ダレン・クリス「アメリカン・クライム・ストーリー/ヴェルサーチ暗殺」女優賞(テレビ映画/ミニシリーズ部門)パトリシア・アークエット「Escape at Dannemora」(原題)男優賞(ドラマ部門)ジェイソン・ベイトマン「オザークへようこそ」女優賞(ドラマ部門)サンドラ・オー「キリング・イヴ/Killing Eve」男優賞(コメディ部門)トニー・シャルーブ「マーベラス・ミセス・メイゼル」女優賞(コメディ部門)レイチェル・ブロズナハン「マーベラス・ミセス・メイゼル」アンサンブル賞(ドラマ部門)「THIS IS US 36歳、これから」アンサンブル賞(コメディ部門)「マーベラス・ミセス・メイゼル」スタント・アンサンブル賞「GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング」(Hiromi Kaku)■関連作品:ブラックパンサー 2018年3月1日より全国にて公開© Marvel Studios 2017 MARVEL-JAPAN.JP/blackpantherクワイエット・プレイス 2018年9月28日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開(C) 2018 Paramount Pictures. All rights reserved.ボヘミアン・ラプソディ 2018年11月9日より全国にて公開© 2018 Twentieth Century Foxグリーンブック 2019年3月1日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開© 2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.天才作家の妻 -40年目の真実- 2019年1月26日より新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて公開(c)META FILM LONDON LIMITED 2017
2019年01月28日クイーンのボーカルであるフレディ・マーキュリーの生き様を描いた映画『ボヘミアン・ラプソディ』が、第91回アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、音響編集賞、録音賞、編集賞の5部門でノミネートされた。アカデミー賞の前哨戦となるゴールデン・グローブ賞では、クイーン本人も、フレディ・マーキュリーを演じたラミ・マレック自身も驚いた、最優秀作品賞(ドラマ部門)と最優秀主演男優賞(ラミ・マレック)をダブル受賞。世界中の映画ファン、クイーンファンを歓喜させ、同時に、公開当初には賛否両論だった映画批評家たちをもうならせる大躍進となった。日本では公開11週目にして週末ランキング2位をキープ。2018年映画興収入ランキングNo.1の記録を更新、衰え知らずの興行を続けている。(C)2018 Twentieth Century Fox
2019年01月23日第42回日本アカデミー賞の正賞15部門各優秀賞および新人俳優賞・正賞外賞が1月15日(火)に発表された。■『万引き家族』『北の桜守』『孤狼の血』が最多12部門第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で最高賞のパルム・ドールに輝き、先日発表されたLA映画批評家協会賞では、日本映画として33年ぶりに外国語映画賞を受賞した『万引き家族』をはじめ、『北の桜守』『孤狼の血』が最多12部門を受賞(『万引き家族』は13賞)。池井戸潤作品を初めて映画化した『空飛ぶタイヤ』が9部門、国内興収30億を突破した『カメラを止めるな!』が8部門で続いている。第42回日本アカデミー賞は、2017年12月16日~18年12月15日に東京地区の商業映画劇場にて有料で初公開され、1日3回以上、2週間以上継続して上映された40分以上の劇場用劇映画及びアニメーション作品が対象になっている。■6年連続司会の西田敏行、『孤狼の血』の役所広司は「ライバル」東京・グランドプリンスホテル新高輪で行われた発表会見には、授賞式の総合司会を務める西田敏行、昨年『彼女がその名を知らない鳥たち』で第41回最優秀主演女優賞を受賞し、今回初めて司会に挑むことになった蒼井優が出席した。6年連続で総合司会を務める西田さんは「また、この時期が来たと思うと、いろいろな思いが去来する」としみじみした表情。優秀作品賞に選ばれた『孤狼の血』について、「ライバルの役所(広司)くんが出ているから、なるべく受賞してほしくない」と笑いを誘ったほか、「これだけ褒められた作品ですから、日本アカデミー賞だけは外すこともあるのかな…」と『万引き家族』の受賞結果にも興味津々。『カメラを止めるな!』にも「これだけ稼いでくれたんだから」と関心を寄せていた。■初司会の蒼井優は白石和彌監督にエール「肩入れしてしまう」一方、「人生初の司会が、日本アカデミー賞という大きな場で緊張しています」と語る蒼井さんは、「去年の私にとって、そうであったように、どなたかにとって忘れられない1日になるはずなので、皆さんの喜びを感じつつ、楽しんで司会ができれば」と意気込み。「どうしても、白石監督に肩入れしてしまう」と、『彼女がその名を知らない鳥たち』『孤狼の血』の白石和彌監督にエールを送っていた。主な優秀賞受賞リストは、以下の通り。◇優秀作品賞『カメラを止めるな!』『北の桜守』『孤狼の血』『空飛ぶタイヤ』『万引き家族』◇優秀アニメーション作品賞『ドラゴンボール超(スーパー)ブロリー』『ペンギン・ハイウェイ』『未来のミライ』『名探偵コナンゼロの執行人』『若おかみは小学生!』◇優秀監督賞上田慎一郎『カメラを止めるな!』是枝裕和『万引き家族』白石和彌『孤狼の血』滝田洋二郎『北の桜守』本木克英『空飛ぶタイヤ』◇優秀主演男優賞岡田准一『散り椿』舘ひろし『終わった人』濱津隆之『カメラを止めるな!』役所広司『孤狼の血』リリー・フランキー『万引き家族』◇優秀主演女優賞安藤サクラ『万引き家族』黒木華『日日是好日』篠原涼子『人魚の眠る家』松岡茉優『勝手にふるえてろ』吉永小百合『北の桜守』◇優秀助演男優賞岸部一徳『北の桜守』ディーン・フジオカ『空飛ぶタイヤ』西島秀俊『散り椿』二宮和也『検察側の罪人』松坂桃李『孤狼の血』◇優秀助演女優賞樹木希林『日日是好日』樹木希林『万引き家族』篠原涼子『北の桜守』深田恭子『空飛ぶタイヤ』真木よう子『孤狼の血』松岡茉優『万引き家族』◇優秀外国作品賞『グレイテスト・ショーマン』『シェイプ・オブ・ウォーター』『スリー・ビルボード』『ボヘミアン・ラプソディ』『ミッション:インポッシブルフォールアウト』◇新人俳優賞上白石萌歌『羊と鋼の森』趣里『生きてるだけで、愛。』平手友梨奈『響 HIBIKI』芳根京子『塁かさね』『散り椿』伊藤健太郎『コーヒーが冷めないうちに』中川大志『坂道のアポロン』『覚悟はいいかそこの女子。』成田凌『スマホを落としただけなのに』『ビブリア古書堂の事件手帖』吉沢亮『リバーズ・エッジ』授賞式は3月1日(金)にグランドプリンスホテル新高輪の国際館パミールで行われ、各部門の最優秀賞が発表される。(text:cinemacafe.net)
2019年01月15日1月13日(現地時間)、レディー・ガガが放送映画批評家協会賞授賞式で見事主演女優賞を獲得した。『アリー/ スター誕生』でアリーを演じたガガは、ゴールデングローブ賞でも主演女優賞にノミネートされていたが、惜しくも大ベテランのグレン・クローズ(『天才作家の妻 40年目の真実』)に敗れ、受賞を逃していた。今回の放送映画批評家協会賞では、そのグレンとともに主演女優賞を受賞し、喜びを分かち合った。ガガは受賞スピーチの初め、同じ舞台上でやさしく見守るグレンに対し、「うちのママがグレンと友達なの。だから今夜、あなたが受賞したことはとってもうれしいわ」と同時受賞となったグレンを祝福。その後、涙を流しながら婚約者のクリスチャン・カリーノや、『アリー/スター誕生』の共演者で監督のブラッドリー・クーパーらに感謝の気持ちを伝え、受賞したことを「光栄」と喜んだ。この日ガガは主題歌賞も受賞した。授賞式が終わるとグレンと一緒ににこやかに写真撮影に応じたガガだったが、その後はパーティーなどに参加せず、瀕死の状態にあった愛馬のもとへと駆け付けた。ガガのインスタグラムによれば、アラベラにお別れを言うことができたようだ。(Hiromi Kaku)■関連作品:アリー/ スター誕生 2018年12月21日より全国にて公開© 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
2019年01月15日こんにちは。アートディレクターの諸戸佑美です。ノーベル文学賞といえば日本では、作家のカズオ・イシグロ氏や大江健三郎氏、川端康成氏が受賞していますが、直木賞や芥川賞なども含め、権威ある文学賞を受賞するのは大変なことですね。【シネマの時間】第53回は、”ノーベル賞の栄光に隠された愛と嘘” 映画『天才作家の妻ー40年目の真実ー』をお送りします!作家である夫を慎ましく支える妻のジョーンに扮するのは、『危険な情事』『アルバート氏の人生』などでアカデミー賞に6度ノミネートの実績を誇り、第76回ゴールデングローブ賞で主演女優賞を受賞した女優グレン・クローズ。才能がありながら”天才作家の妻”として生きた女性の内なる激しい葛藤を、繊細かつ重厚に演じ、すでに本年度オスカー最有力との声も高まっています。ジョーンを愛しながらも男のエゴをさらけ出すジョセフをリアリティーを持って巧みに演じるのは、『未来世紀ブラジル』『キャリントン』の名優ジョナサン・プライス。さらにクリスチャン・スレーターが夫婦の秘密を探る記者役で絶妙な演技を披露。クローズの実の娘アニー・スタークが若き日のジョーンに扮し、母娘の本格初共演も話題です。メガホンをとったのは、映画のみならず演劇の分野でも活躍するスウェーデンのベテラン、ビョルン・ルンゲ監督。毎年スウェーデンのストックホルムで華やかに行われるノーベル賞授賞式を背景に、人生の晩年に差しかかった夫婦の危機を卓越した心理描写でスリリングに描いた本作は、結婚や仕事、人生の意味を観るものに問いかけ深い余韻を残します。1月26日(土)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー。ぜひこの機会に映画館でお楽しみください!■ノーベル文学賞とは?ノーベル賞は、ダイナマイトの発明者として知られるアルフレッド・ノーベルの遺言に従って1901年から始まった世界的な賞です。物理学、化学、生理学・医学、文学、平和および経済学の「5分野+1分野」で顕著な功績を残した人物に贈られます。ノーベル文学賞は、文学の分野において理念をもって創作し、最も傑出した作品を創作した人物に授与されます。アルフレッド・ノーベルは少年時代から文学に関心を持っており、特にバイロンとシェリーの詩に熱中して自らも詩を書いていました。また母語であるスウェーデン語に加えて、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ロシア語に堪能であり、外国の文学作品の翻訳も趣味でした。晩年になっても戯曲「ネメシス」の執筆しているなど文芸に強い関心を抱いていました。このためノーベル賞の構想時にも、科学だけでなく文学も人類にとって重要であると認識し、遺言の中で「理想的な方向性の ( in an ideal direction )」文学を表彰の対象に含めました。ノーベル文学賞はその作家の作品、活動の全体に対して与えられるものであって、一つの作品に対して与えられるものではないとされているが、場合によっては特に代表的な作品や選考の上で評価された作品などの名前が賞記に記されることもあります。原則として選考の時点で生存している作家が対象であり、追贈は行いません。資格を持っている各地のペン・クラブや大学、文学者などから候補が推薦され、これをスウェーデン学士院が選考します。授賞式は、ノーベルの命日である12月10日に、「平和賞」を除く5部門はストックホルム(スウェーデン)のコンサートホール、「平和賞」はオスロ(ノルウェー)の市庁舎で行われ(古くはオスロ大学の講堂で行われた)、受賞者には、賞金の小切手、賞状、メダルがそれぞれ贈られます。出典:ノーベル文学賞■映画『天才作家の妻ー40年目の真実ー』あらすじーノーベル賞の栄光に隠された愛と真実。1990年代、米コネチカット州。ある早朝、現代文学の巨匠として名高いジョゼフ・キャッスルマンと妻ジョーンの元に、スウェーデンから国際電話がかかってきました。「今年のノーベル文学賞は、あなたに決まりました!」待ちに待った吉報を受け、抱き合って喜び合うふたり。友人や教え子らを自宅に招いたお祝いの席のスピーチでは、最愛の妻に感謝の言葉を告げるジョセフ。「ジョーンは人生の宝だ。彼女なくして、私はいない」満面の笑みを浮かべて寄り添うふたりは、その場にいた誰の目にも理想的な仲睦まじい夫婦に見えました。夫婦は、ノーベル文学賞受賞式に出席するため、スウェーデンのストックホルムへ訪れます。駆け出しの作家である息子のデビットも旅に同行しますが、実は偉大なる父に劣等感を抱いています。ノーベール文学賞授賞式を前に、家族は慌ただしいスケジュールをこなしていきますが、ジョーンは有頂天となり無遠慮な言動を繰り返す夫の世話にほとほと疲れてしまうのです。そしてひとりでホテルのロビーにいたところ、記者のナサニエルに声をかけられます。ジョセフの伝記本を書こうとしているナサニエルは、夫婦の過去までも事細かに調べ上げていました。ふたりが大学で教授と学生という関係で出会い、情熱的な恋に落ちたこと。すでに妻子がいたジョセフをジョーンが奪い取る形で結ばれたこと。作家としては当時、二流だったジョセフが、ジョーンとの結婚後に次々と傑作を世に送り出してきたこと。そしてナサニエルは、「あなたはうんざりしてるのでは?影として彼の伝説作りをすることに」と自信ありげに核心に迫る質問を投げかけます。「すごい想像力ね。小説でも書いたら?」と切り返して立ち去るジョーンでしたが、心中は穏やかではありません。実は若い頃から文学の才能に恵まれていたジョーンでしたが、(1960年代前半)出版業会に根づいた女性蔑視の風潮に失望し、作家になる夢を諦めた過去がありました。そしてジョセフとの結婚後、常に控えめに寄り添いながら、夫の世界的作家としての成功への道を支え続けてきたのでした。さらに追い打ちをかけるように、ナサニエルは息子のデビットにも近づいて両親の秘密を吹き込み、その後一波乱が起こります。夫が栄光のスポットライトを浴びようとしている陰で、ジョーンは彼を愛していながらも、心の奥底に押しとどめていた怒りや不満の感情が沸き起こってくるのを抑えられなくなってきます。誰も想像だにしない夫婦の秘密とは、一体何なのか……?おしどり夫婦に人生最高のときがようやく訪れたと思いきや、この栄誉が40年築きあげてきた夫婦の絆を危うくしてしまうのです。世界最高の権威を誇るノーベル賞授賞式を背景に、人生の晩年に差しかかった夫婦の危機を見つめた本作。男女間の心の機敏をリアルかつ残酷にあぶり出し、男女の社会的地位の格差というテーマに切り込み、仕事の成功や結婚、人生の意味について問いかけます。複雑な感情をひた隠し華やかに正装した夫妻は、人生最高の晴れ舞台であるノーベル賞授賞式の会場へ。はたしてジョーンは、夫がスポットライトを浴びる陰でいつものように慎ましく完璧な“天才作家の妻”を装うのでしょうか。それとも本当の人生を取り戻すために、衝撃的な真実を世に知らしめるのでしょうか……!?■映画『天才作家の妻ー40年目の真実ー』作品紹介2019年1月26日(土)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー!公式サイト:監督:ビョルン・ルンゲ原題:The Wife原作:メグ・ウォリッツアー脚本:ジェーン・アンダーソン製作:ロザリー・スウェドリン、ミタ・ルイーズ・フォルデイガー、クローディア・ブリュームフーバー、ジョー・バムフォード、ピアース・テンペスト製作総指揮:ジェーン・アンダーソン、ビョルン・ルンゲ、ゲロ・バウクネット、マーク・クーパー、フローリアン・ダーゲル、トマス・エスキルソン、ガード・シェパーズプロダクション・デザイン:マーク・リーズ撮影:ウルフ・ブラントース衣装デザイン:トリシャ・ビガー音楽:ジョスリン・プーク日本語字幕:牧野琴子製作年:2017年上映時間:101分映倫区分:G製作国:スウェーデン・アメリカ・イギリス合作配給:松竹後援:スウェーデン大使館ⓒMETA FILM LONDON LIMITED 2017■映画『天才作家の妻ー40年目の真実ー』キャストグレン・クローズ=ジョーン・キャッスルマンジョナサン・プライス=ジョゼフ・キャッスルマンクリスチャン・スレイター=ナサニエル・ボーンマックス・アイアンズ=デビッド・キャッスルマンハリー・ロイド=若い頃のジョゼフ・キャッスルマンアニー・スターク=若い頃のジョーン・キャッスルマンエリザベス・マクガバン【シネマの時間】アートディレクション・編集・絵・文=諸戸佑美©︎YUMIMOROTO
2019年01月13日火曜日(現地時間)、全米監督協会(DGA)賞のノミネーションが発表された。この賞の長編映画監督賞はアカデミー賞の監督賞とほぼ毎年一致しているため、注目度が高い。とりわけこの5年は2013年のアルフォンソ・キュアロン、2014年&2015年のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ、2016年のデイミアン・チャゼル、2017年のギレルモ・デル・トロと完全に一致している。また、「Variety」誌によれば、DGA賞の長編映画監督賞のノミネートされた監督たちの80%が、アカデミー賞でもノミネートされているという統計もあるという。今年、DGA賞の長編映画監督賞にノミネートされたのは、先日ゴールデングローブ賞監督賞を受賞したアルフォンソ・キュアロン(『ROMA/ローマ』)、ブラッドリー・クーパー(『アリー/スター誕生』)、ピーター・ファレリー(『グリーンブック』)、スパイク・リー(『ブラック・クランズマン』)、アダム・マッケイ(『バイス』)。ブラッドリーは初めてメガホンを取った監督たちの中から選ばれる初監督賞にもノミネートされている。DGA賞授賞式は2月2日、ロサンゼルスのハリウッド&ハイランドセンターで開催される。(Hiromi Kaku)■関連作品:アリー/ スター誕生 2018年12月21日より全国にて公開© 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLCグリーンブック 2019年3月1日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開© 2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.ブラック・クランズマン 2019年3月22日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開(C)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.
2019年01月09日アカデミー賞の行方を占う前哨戦の1つ、第76回ゴールデン・グローブ賞授賞式が現地時間1月6日に開催され、『ボヘミアン・ラプソディ』がドラマ部門作品賞、主演男優賞を受賞した。候補となった2部門を制覇した『ボヘミアン・ラプソディ』で、フレディ・マーキュリーを演じ、主演男優賞を受賞したラミ・マレックは「クイーンに感謝します。ブライアン・メイ、あなたに。ロジャー・テイラー、あなたに」と授賞式に出席したクイーンのメンバー2人に感謝のスピーチ。そしてフレディに「これはあなたのため、あなたの賞です、ゴージャス!」と呼びかけた。最多6部門で候補になった『バイス』はクリスチャン・ベールがミュージカル/コメディ部門で主演男優賞を受賞、『グリーンブック』がミュージカル/コメディ部門作品賞、助演男優賞(マハーシャラ・アリ)、脚本賞で最多3部門を受賞した。外国語映画賞を受賞したNetflixの『ROMA/ローマ』はアルフォンソ・キュアロンが監督賞も受賞。歌曲賞を受賞したレディー・ガガはステージ上で涙ぐみ、「音楽業界では女性が真剣に扱ってもらうのはとても難しい。でも、この3人は私をサポートしてくれました」と共作者のマーク・ロンソン、アンソニー・ロッソマンド、アンドリュー・ワイアットに感謝し、「ブラッドリー、大好きです」と締めくくった。『バイス』で、ジョージ・W・ブッシュ政権下で「史上最強」とも「史上最悪」と言われ、影の実力者として知られたディック・チェイニーを演じ、主演男優賞に輝いたクリスチャン・ベールは「インスピレーションを与えてくれたサタンに感謝します」とスピーチ。関係者や家族に感謝を述べて、「誰か忘れていなかったっけ?」と客席の妻に助けを求める微笑ましい一幕も。主演女優賞を受賞した大ベテランのグレン・クローズは、本当に驚いた様子で涙ぐみながら、プレゼンターのゲイリー・オールドマンからトロフィーを受け取った。「みんなここに上がるべきよ」と賞を競った候補者たち4人をたたえた。司会を務めながら、テレビの部ドラマシリーズ主演女優賞を受賞したサンドラ・オー(『キリング・イヴ/Killing Eve』)は感極まった様子で関係者に感謝を述べたあと、客席にいた両親に「お母さん、お父さん、愛してる」と韓国語で語りかけた。日本からノミネートされた『万引き家族』(外国語映画賞)、『未来のミライ』(アニメーション映画賞)は惜しくも受賞を逃した。■映画の部ドラマ部門作品賞『ボヘミアン・ラプソディ』主演女優賞グレン・クローズ『天才作家の妻 -40年目の真実-』主演男優賞ラミ・マレック『ボヘミアン・ラプソディ』ミュージカル/コメディ部門作品賞『グリーンブック』主演女優賞オリヴィア・コールマン『女王陛下のお気に入り』主演男優賞クリスチャン・ベール『バイス』助演女優賞レジーナ・キング『ビール・ストリートの恋人たち』助演男優賞マハーシャラ・アリ『グリーンブック』監督賞アルフォンソ・キュアロン『ROMA/ローマ』脚本賞ニック・ヴァレロンガ、ブライアン・ヘインズ・クリー、ピーター・ファレリー『グリーンブック』音楽賞ジャスティン・ハーウィッツ『ファースト・マン』歌曲賞「Shallow」『アリー/ スター誕生』外国語映画賞『ROMA/ローマ』メキシコアニメーション映画賞『スパイダーマン:スパイダーバース』■テレビの部ドラマ部門作品賞「ジ・アメリカンズ」主演女優賞サンドラ・オー 「キリング・イヴ/Killing Eve」主演男優賞リチャード・マッデン「ボディガード -守るべきもの- 」ミュージカル/コメディ部門作品賞「コミンスキー・メソッド」主演女優賞レイチェル・ブロズナハン「マーベラス・ミセス・メイゼル」主演男優賞マイケル・ダグラス「コミンスキー・メソッド」リミテッドシリーズ/テレビ映画部門作品賞「アメリカン・クライム・ストーリー/ヴェルサーチ暗殺」主演女優賞パトリシア・アークエット「Escape at Dannemora」(原題)主演男優賞ダレン・クリス「アメリカン・クライム・ストーリー/ヴェルサーチ暗殺」助演女優賞パトリシア・クラークソン「KIZU-傷-」助演男優賞ベン・ウィショー「英国スキャンダル~セックスと陰謀のソープ事件」セシル・B・デミル賞ジェフ・ブリッジスキャロル・バーネット賞キャロル・バーネット(text:Yuki Tominaga)■関連作品:アリー/ スター誕生 2018年12月21日より全国にて公開© 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLCスパイダーマン:スパイダーバース 2019年3月8日より全国にて公開ボヘミアン・ラプソディ 2018年11月9日より全国にて公開© 2018 Twentieth Century Foxファースト・マン 2019年2月8日より全国にて公開女王陛下のお気に入り 2019年2月15日より全国にて公開(C)2018 Twentieth Century Foxグリーンブック 2019年3月1日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開© 2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.天才作家の妻 -40年目の真実- 2019年1月26日より新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて公開(c)META FILM LONDON LIMITED 2017ビール・ストリートの恋人たち 2019年2月22日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開©2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.
2019年01月07日空想と現実を行き交う自由な発想とタッチで描いた作品。猫や少女、きのこ、不思議な生き物たちが繰り広げるまるでサーカスに迷い込んだような世界が繰り広げられる。画家・絵本作家ヒグチユウコの約20年にわたる活動を網羅する展覧会「ヒグチユウコ展 CIRCUS」が、世田谷文学館で開催される。《Circus》 2018 年 ©Yuko Higuchi画家としての作品制作のみならず絵本の刊行など幅広い活躍をみせる画家ヒグチユウコ。そんなヒグチの自身初となる大規模な個展となる本展では、絵本原画をはじめ、企業とのコラボレーション作品、書籍の装画、自身のブランドグッズのイラストなど、500点を超える作品が公開される。展覧会のテーマは“サーカス”。会場には、実際にサーカステントが出現し、ヒグチユウコのお馴染みキャラクターである「ねこのピエロ」などが映像や、ぬいぐるみ作家・今井昌代による立体造形を交えて空間はサーカスの会場に。《ギュスターヴ若冲雄鶏図》 2016 年 ©Yuko Higuchiさらに本展に合わせてヒグチユウコのとって6年ぶりの画集『CIRCUS』(3,200円)も発売される。224ページからなる本書には、歌人・穂村弘によるヒグチの作品についての書き下ろし原稿なども掲載。展示会場では、カバーデザインの異なる限定版も登場し、夢野久作原作の短編をヒグチが新たに描き下ろしたビジュアルストーリー「きのこ会議」 も収録されている。そのほか会場では、ヒグチユウコが愛用するホルベインのペンセットをはじめ、ポストカード、ピアスやブローチなどのアクセサリー、マグカップやグラスなどの食器、カプセルトイなどグッズも豊富に展開される。関連イベントとして、2月第1、第3土曜日には閉館後の展示室でライブとダンスパフォーマンス「ナイトミュージアム」が行われたり、3月にはコンサートと展覧会を両方楽しめる特別な一夜「黒色すみれとヒグチユウコのサーカス・ナイト」、オリジナルバルーン作りが体験できる「バルーンアート・ワークショップ」などが開催予定。【開催情報】ヒグチユウコ展 CIRCUS会期:2019年1月19日~3月31日会場:世田谷文学館 2階展示室住所:東京都世田谷区南烏山1-10-10時間:10:00~18:00休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)料金:一般 800円 / 65歳以上・大学・高校生 600円 / 中学生以下無料問い合わせ:ナイトミュージアム日時:2月2日、16日 18:00~19:30会場:2階展示室出演:黒色すみれ(歌手)、史椛穂(ダンサー)参加費:2000円定員:各日80名、完全前売制バルーンアート・ワークショップ日時:3月3日 13:00~16:00会場:1階文学サロン出演:コンフェッティバルーン Hara harari対象:中学生以下参加費:無料定員:30分毎に各回当日先着10~20名黒色すみれとヒグチユウコのサーカス・ナイト日時:3月16日 18:00~19:30会場:1階文学サロン、2階展示室出演:黒色すみれ、佐藤梟参加費:2000円定員:200名、完全前売制
2019年01月03日2016年のノーベル文学賞を受賞した米の歌手ボブ・ディラン(77)の楽曲が、狂言師・野村萬斎(52)主演の映画「七つの会議」(福澤克雄監督、来年2月1日公開)の主題歌として使用されることとなったという。一部スポーツ紙によると、主題歌となるのは97年の名曲「メイク・ユー・フィール・マイ・ラヴ」。ディランは同賞の受賞後にドラマや映画のタイアップ契約を結んでおらず、日本の映像作品に楽曲の使用を許可するのは今作が受賞後初めて。プロデューサーがディランの大ファンであることから、約1年にわたって交渉。何度も長文のメールを送ってオファーし、説得したという。「世界的ロックバンド『クイーン』のフレディ・マーキュリーを描いた伝記ドラマ映画『ボヘミアン・ラプソディ』が大ヒット。日本では。ひそかにクイーンブームが巻き起こっています。『七つの会議』がヒットすれば、デュランブームも再来するのではないでしょうか」(音楽業界関係者)「七つの会議」の原作者は、11年に「下町ロケット」で直木賞を獲得した池井戸潤氏(55)。数多くの作品がドラマ化されているが、映画化されるのは今年公開された「空飛ぶタイヤ」に続き2作目だ。「『空飛ぶタイヤ』の主題歌は、サザンオールスターズの『闘う戦士たちへ愛を込めて』。映画のために桑田佳祐さんがわざわざ作詞作曲を手がけた力作です。そして今回はボブ・ディラン。立て続けに大物が起用されただけに、3作目はさらにハードルが上がりそうです」(芸能記者)ディランのファンも劇場に足を運ぶことになりそうだ。
2018年11月30日