最近出版された作品に加え、過去作にも名恋愛小説は多数。何か読みたいけれど、何を手に取っていいかわからない~。そんな迷える子羊たちに、2つのブックレビューサイトが今読むべき作品を推薦します。まずはここから読んでみて!人気のブックレビューサイトに聞きました。今読んでほしい恋愛小説、教えてください!好書好日朝日新聞出版が運営するサイト。今回は、サイトで書評を執筆しているライターの清繭子さんが選書を担当。心の奥にある本当の気持ちに気づかせてくれる作品たち。読み終わったときに恋する良さを改めて実感したり、辛い結末でも、悲恋だからこそ感じられる切なさがきちんと詰まっている。そんな恋愛哲学を持った5冊。1、『恋の幽霊』町屋良平朝日新聞出版1980円「自分を罵倒する年下上司とセフレ関係にある京は、大晦日、恋の限りを尽くした高校時代の3人の仲間に“みんなどうしてる?”とメールを送る。あの頃の〈触れたい〉〈わかりたい〉と思う切実な気持ち。思うままにならない世間と自分。友情も恋愛も混濁したまま、拙く寄り添い合った日々。私にもそんなときがあったと、自身の恋の幽霊を見つけるはず。そして大人になった今も、心のどこかであのややこしい恋に飛び込みたい自分に気づくだろう」2、『プリズム』著・ソン・ウォンピョン訳・矢島暁子祥伝社1760円「失恋後の空白に我慢できず、すぐ次を探してしまうイェジン。悲しい過去があり人と一定の距離を保つドウォン。元夫と不毛な関係を続けるジェイン。愛のない家庭で育ち、恋愛に興味がないホゲ。年齢も職業も恋愛観も違う男女4人が交錯する恋物語。韓国ドラマ的展開に興奮しながらも、恋愛とは己を映し出す鏡でもあるのだと気づかされる。恋をし、自身の脆さや危うさを知った彼らが出すそれぞれの答えは、どれもプリズムのようにきらきら輝いている」3、『僕の女を探しているんだ』井上荒野新潮社1870円『愛の不時着』の主人公のリ・ジョンヒョクがなぜか日本の恋に悩む者の前に現れ、キューピッドになる物語。転校する秋斗への気持ちに戸惑う小学4年生の〈あたし〉。目の前で夫が死に、立ち直れない〈私〉。ゲイバーの常連客に弄ばれていることを知りながら待ってしまう〈僕〉。好きの気持ちに自信を持てない人におすすめ。原作の地続きにあるジョンヒョクの紳士な振る舞いと、リアル世界で展開される恋の揺らめき。幾重にもきゅんとする幻想恋愛短編集」4、『かんむり』彩瀬まる幻冬舎1650円「中学3年生で出会った光と虎治が結婚し、子を育て、共に老いるまでを描く物語。二人は〈夫が稼ぎ、妻は家事・育児を担当〉〈女は性の主導権を握らない〉といったジェンダー的価値観に蝕まれ、そしてすれ違っていく。やがて光は、虎治もまた“男であること”に追い立てられていることに気がついて…。パートナーとのやり取りやセックスの不平等にモヤモヤを抱えた人におすすめ。夫の裸を“かわいい”と妻が愛でる、朗らかで温かな性描写にも注目」カドブンKADOKAWAが運営。本を選んでくれたのは、「カドブン」編集部に異動しもうすぐ3年になる編集Kさん。読み終わったあと、登場人物の幸せを祈りたくなる作品群。登場人物と恋愛相談をしている気分。読んでいると、現実の悩みに対して思いがけない答えももらえたり…。そんな恋愛小説の醍醐味が味わえる5冊をご紹介。1、『汝、星のごとく』凪良ゆう講談社1760円「浮気する父に苦しむ暁海と、男に依存する母を持つ櫂。瀬戸内の島で出会った高校生の二人は、やがて恋人になる。しかし、成長した二人の選択には少しずつズレが生じてしまい…。どんなに相手のことを愛していても、人生の最後、結末がどうなるかは誰にもわからない。どのような〈選択〉をして生きていくのか、果たして結ばれることが愛なのか、人生観が変わる物語。最後まで読み終わったあとに必ずプロローグをもう一度読みたくなるはず」2、『きらきらひかる』江國香織新潮文庫572円「好きな人から〈その人の好きな人〉の話を聞くとき、どんな気持ちで耳を傾けるのか。まして自分から話を促すなら…。アルコール依存症の妻・笑子と、同性愛者で恋人のいる夫・睦月。キスもなく、互いの愛情だけで成り立つ不確かな二人の日々に、睦月の恋人・紺もいつの間にか馴染んでいる。そんな3人の関係を描いた物語。誰かを好きになる気持ちがわからなくなった人に、とびきり切実な〈好き〉がここにたくさんあるのだと、この本を差し出したい」3、『ナラタージュ』島本理生角川文庫660円「大学生の泉に、高校時代片思いし続けていた先生から電話が。泉は再会にときめくが先生には暗い秘密があった。この後の人生を一人で生きるくらいならいっそ壊してほしい。失恋経験者なら一度は感じたことのある感情かもしれない。こんなにも想っているのに私を捨てる人なんて嫌いになれればいいのに、それができない。秘密を知っても、ほかの人を思い続けているとわかっても、振り回されぼろぼろになってもなぜ愛することをやめられないのか…」4、『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』尾形真理子幻冬舎文庫638円「舞台は渋谷の路地裏にあるセレクトショップ。ここを訪れる5人の女性たちは、それぞれ恋の悩みを抱えている。迷い、不安、もどかしさ。ままならない感情でいっぱいになった心が、新しい服との出合いをきっかけに変化していって…。前を向いて歩き出した彼女たちの〈その後〉はわからないけれど、物語の余韻が心地よくて愛おしい。大切な人のことを想いながら、とっておきの一着を探しに出かけたくなる、ほろ苦いけれどすがすがしい読後感の短編集」どちらも推薦『愛がなんだ』角田光代角川文庫572円「仕事もプライドもかなぐり捨て、電話一本でマモちゃんの元に駆けつけるテルコ。そんな彼女を都合よく使うマモちゃん。ダサくひ弱で器も小さい男になぜそんなに執着を?片思いの謎に迫るある意味ホラーな恋愛小説。テルコの情けなさに心をえぐられつつ、不思議と恋の活力が湧いてくる。片思い小説の金字塔」(好書好日・清さん)「待ち焦がれる苦しさや、想いが届かない辛さも恋だと突き付ける、究極の片思い小説。テルコはマモルに生活のすべてを捧げた結果、同僚からは嫌われ会社はクビ寸前。その暴走っぷりは、痛々しいが目が離せない」(カドブン・編集Kさん)※『anan』2024年2月21日号より。写真・内山めぐみ(by anan編集部)
2024年02月18日文:八木 奈々写真:後藤 祐樹クリスマスが近づき、街がどこか華やいだように感じられる今日この頃。皆さんにはこの季節になると思い出す本はありますか……? 子供のころに読んだあの絵本? それとも映画にもなったあの名作?あたたかい作品から切ない作品、ユニークな作品まで、クリスマスをテーマにした作品は多くの作家さんによってさまざまな目線で描かれています。写真はイメージです。今回は、毎年この季節になると思い出したように読みたくなる私のお気に入りの物語を紹介させていただきます。もちろん舞台はクリスマス。どこか特別な匂いを感じながら触れる作品たちは、毎年読んでいても読後は新しい感情に出会えます。あなただけのクリスマスストーリーが見つかるかもしれません。1.東野 圭吾(ひがしの けいご)『サンタのおばさん』皆さんのイメージするサンタクロースはどんな容貌ですか? この作品は、東野圭吾さんによって描かれた、大人も子供も深く考えさせられる“大人の絵本”です。……とはいえ、風刺あり、ジェンダーあり、人種、ステップファミリーなど現代社会のあれこれに焦点をあてています。短い物語なのでさらっと読めますが、本作品の初版は2001年。当時の東野圭吾さんの慧眼にも心惹かれます。世界中のサンタさんが会議をして相談しあう描写はとても印象的で、毎年この季節になると今年もたくさんの“サンタさん”が活躍するんだろうなあ……とこの物語を思い出します。東野圭吾さんが綴る文章と素敵な挿絵から優しいメッセージを感じ、読後はほっこり幸せな気持ちになりました。“大人の絵本”と書きましたが子供にもぜひ読んでほしい……というか子供の頃に出会いたかった一冊です。サンタがおばさんでも……いいですよね。2.森見 登美彦(もりみ とみひこ)『太陽の塔』本作品は、いまや多くの人に知られる森見登美彦さんのデビュー作。「何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。なぜなら、私が間違っているはずがないからだ。」この書き出しで始まる小説が面白くないわけがないと即購入しました。舞台はクリスマスの嵐が吹き荒れる京都。自分はモテないと開き直った主人公とその友人たちが実にくだらない妄想を貪り続けながら進んでいく「非リア対クリスマス」。2〜3行に一度は笑っていたような気がします。そして、いつでも最後に辿り着く結果は関係ないのだと彼らの“今現在”の生き方が語りかけてきます。クリスマスならではの華やかさとは真逆のストーリーですが、これはこれで心地よく、読後はどこまでが現実でどこからが妄想だとかどうでもよくなり、現実と2センチほどズレた物語の世界にしばらく腰をかけていたくなるはずです。くだらないけど素晴らしい。3.奏 健日子(はた たけひこ)『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』クリスマス目前に恵比寿、渋谷で起こる連続爆弾テロ。しかし犯人の声明は「これは戦争です」。犯人の予告、首相の全国生放送対談などを通して、国民の恐怖や緊迫感が現実味を帯びてくるあたりがとても生々しく描かれており、フィクションであって、フィクションではないのではないかと思わざるを得ません。まだまだこれからかと思えば残りのページはわずかで、最終章で一気に畳みかけるジェットコースターのような展開に、少し物足りなささえ感じてしまうほどあっという間に読めてしまいます。偶然そこにいた人、意図的にいた人、ひやかし、野次馬、逃げる人、守る人、企てる人、それぞれの人の行く末……。その誰目線で読むかによって物語の見え方も180度変わってくるのかもしれません。ひとまず私は別の世界線で出会い恋をしたふたりを想像するとします。これもまた楽しいのです。■クリスマスに寄り添う物語でほっこり今回はクリスマスをテーマにした“角度の異なる”三作品を紹介させていただきました。クリスマスに読書なんて寂しいという声が聞こえてきそうですが、小説を片手にクリスマスを祝う……というのも粋なものです。大切な人や、自分自身へのクリスマスプレゼントにもいかがでしょうか。一冊の物語をおともに素敵なクリスマスを……。↓ クリスマスを彩るアイテムをチェック ↓「パチパチ」と耳に優しい暖炉の音を聴きながらの読書は至福のときです。スタイリッシュなデザインでインテリアになじむ、「CARL MERTENS」の卓上暖炉。心地良さを重視するなら加湿機能付きのセラミックファンヒーターを。■「TheBookNook」についてこの連載は、書評でもあり、“作者”とその周辺についてお話をする隔週の連載となります。書店とも図書館とも違う、ただの本好きの素人目線でお届けする今連載。「あまり本は買わない」「最近本はご無沙汰だなあ」という人にこそぜひ覗いていただきたいと私は考えています。一冊の本から始まる「新しい物語」。「TheBookNook」は“本と人との出会いの場”であり、そんな空間と時間を提供する連載でありたいと思っています。次回からはさらに多くの本を深く紹介していきますのでお楽しみに。
2023年12月22日文:八木 奈々写真:後藤 祐樹動画やSNSの流行によって本離れが叫ばれている昨今ですが、やはり文字だけで綴られた小説でしか得られない楽しみがあることに、本好きの方なら強く同意してくれると思います。物語には描かれていない背景、つまりその小説の舞台がわかればより深く本の世界に浸ることができます。ときに、地名がはっきりと描かれてない作品でも“もしかしたらあそこかも……”なんて想像するのも楽しいと思いませんか?文字の裏側にある景色や音、湿度、その場所に行かずとも感じられるさまざまな描写に自ら触れにいくことで読後の余韻もより深く味わうことができます。写真はイメージです。今回は、読み終えたらきっとすぐにでも訪れたくなる、実在の街町を舞台にした小説を紹介させていただきます。1.有川浩『阪急電車』タイトルにもある通り、“阪急電車”に乗り合わせた人々が織りなす出会いの物語。テンポのいい会話劇にほっこりしたり、スカッとしたり、胸が締め付けられたり。人との出会いを大切にしたくなるこの作品は、宝塚駅と西宮北口駅をつなぐ約15分間のローカル線“今津線”が舞台となっています。私も実際に足を運んだことがあるのですが、電車に揺られる人達がみんな物語の主人公のように思えて、今日はこのたった15分の区間でいくつのドラマが繰り広げられたんだろう……と考えながら本を片手に物語の余韻に浸っていました。小説に出てきた場所を目指すつもりが、今津線沿いの街の雰囲気が想像以上によく、なんとなく降りた駅で気になったお店にふらっと入ってみたりなんかして。まるで物語の続きを描いていくように一人旅を堪能していました。何度でも読みたくなる味わい深い作品です。2.伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』“本屋を襲わないか?”と不気味な隣人から持ち掛けられた、僕。現在と二年前に起きた事件が奇妙に符合していき、読み進める途中でバラバラになったものが伊坂幸太郎氏の話術により徐々に繋がっていく快感。そして決してハッピーエンドではないのに読後は少しの救いと温かさを読者に感じさせてくれます。宮城県仙台市を舞台に描かれている本作品ですが、なかでも仙台駅のコインロッカーは、タイトルにもある通りこの物語の最後に登場する重要な場所です。残念ながら現在はこのコインロッカーは撤去されてしまっているみたいですが、私は駅のコインロッカーを見ると思わずボブ・ディランの“風に吹かれて”を口ずさみたくなります。この作品に関わらず、日常の中で物語を思い出す瞬間が私はすごく好きで、むしろその瞬間に出会いたくてたくさんの本に触れているのかもしれません。みなさまにもそんな経験はありますか?3.夏目漱石『坊ちゃん』言わずと知れた文豪、夏目漱石の名作。読んだことがなくとも“松山”が舞台ということをご存じの方も多いのではないでしょうか。……といっても“坊ちゃん”こと主人公は作品内であまり松山という土地のことを褒めません。むしろその松山でさまざまなトラブルに巻き込まれていきます。それでも読後はなぜか“坊ちゃんがそんな風に言うのはどんな場所なんだろう……?”と知りたくて堪らなくなります。唯一、坊ちゃんが気に入っている“道後温泉”は誰もが知る人気観光スポットですが、この小説を読む前と読んだ後では、訪問した際の気持ちがまるで変わってくるはずです。100年以上も前に描かれた本作品は、時代背景も描かれる景色も何もかもが今とは違いますが、不思議と共通する部分もあり、現代でも楽しく読むことができます。坊ちゃんが感じたことを追体験するつもりで松山へ温泉旅行に出かけてみませんか?■物語の世界を旅しない?今回は、特に読後感が良いものや、情景がありありと思い浮かび、ついつい物語の舞台に足を運んでみたくなる作品を厳選して紹介させていただきました。実際に行かなくてもいいんです。描かれた舞台を想像しながら読書したり、検索して浸ってみたり、いつか行きたい場所を物語を通して考える時間はとても有意義なものです。ぜひ、より深い物語の世界へ。■「TheBookNook」についてこの連載は、書評でもあり、“作者”とその周辺についてお話をする隔週の連載となります。書店とも図書館とも違う、ただの本好きの素人目線でお届けする今連載。「あまり本は買わない」「最近本はご無沙汰だなあ」という人にこそぜひ覗いていただきたいと私は考えています。一冊の本から始まる「新しい物語」。「TheBookNook」は“本と人との出会いの場”であり、そんな空間と時間を提供する連載でありたいと思っています。次回からはさらに多くの本を深く紹介していきますのでお楽しみに。↓ 前回ご紹介作品の購入はこちらから ↓↓ 旅行に便利なお役立ちグッズをチェック ↓
2023年12月08日文:八木 奈々写真:後藤 祐樹みなさんは『時をかける少女』『パプリカ』などを代表作にもつ作家、筒井康隆をご存じでしょうか? 星新一、小松左京と並んで「SF御三家」と称されているように、日本にSFを根付かせたうちのひとりといわれています。本連載でも以前、筒井先生の『旅のラゴス』を紹介させていただきましたが、私と筒井先生の出会いは約9年前。なんとなく手に取った作品にがっちりと心を掴まれてしまい、読後の熱が冷め止らぬまま、書店のサイン会に足を運びました。筒井先生の作品は当時の私に、物語が面白い、だとか、装丁が美しい、などだけではない、読み手の向き合い方次第で同じ物語でも全く違うものになるという本の無限の楽しみ方を教えてくれたのです。こちらの写真は、許可を得て引用しています。そんな筒井先生の作品のなかでも個人的に思い入れの強い筒井康隆ワールド全開の3作品を、今回はご紹介させていただきます。少々難しくてもなんとか最後まで読んでいただきたい。描かれていないはずの展開や、その背景、行間に込められたの感情がみえてきたとき、最後まで読んだ自分を抱きしめたくなるでしょう。※ ↑単行本でのご紹介となります。1.『残像に口紅を』私が14歳の頃、初めて出会った筒井先生の作品がこちら。一章ごとに使える文字がひとつずつ消えていき、それと共に小説世界のその文字を含むものも消えていく感覚はありながらも、記憶は確実になくなってしまうといういかにも実験的な物語。難解に聞こえるかもしれませんが、そこはさすがの筒井先生。文字のみの小説なのに文字が消えていくのを感じさせないほど見事に物語が構成されています。正直、物語としてスラスラ読める作品ではないかもしれませんが、最後の“あとがき”ならぬ“調査報告”にある学術論文のような解説を読み終え本を閉じた後、この上ない高揚感に包まれました。言葉のプロである“作家”という仕事と、描かれていない物語の背景に深く興味をもち、これ以降、私は本を読むのが一段と好きになりました。2.『モナドの領域』河川敷で女性の「美しい」片腕が見つかるところから始まる本作品。前知識なしで読んだため、最初は著者久しぶりのミステリー小説かなと期待していたら、唐突に素領域理論の“神”が登場し……。なるほどそうきたかと期待を大きく上回る筒井康隆ワールド全開の展開へ。書かれている内容についてしっかりと味わうためには哲学に対する基礎知識が必要な表現も多く、私のなかでかみ砕けない部分もありましたが、不思議と読みづらさは感じず、頭をフル回転させながらページを捲る時間さえやけに心地よく感じました。物語に浸かりすぎてしまい、後半、登場人物が自分の方へ顔を向けた気がしてゾッとしましたが、自ら物語に巻き込まれていく感覚と読了後の穏やかな余韻が忘れられず、今日までに何度も何度も手に取っています。中毒性あり。3.『大いなる助走』直木賞に落選した作家が、逆恨みで選考委員を殺していくという衝撃的な大虐殺ストーリー。当時大いに話題を呼びベストセラーにもなった反面、文壇について茶化す表現や馬鹿にする描写がたくさんあるため、他の小説家を敵に回してしまったとも言われている問題作でもあります……が、筒井先生が描く人間の理性が壊れるさまは本当に魅力的で、強い引力で私たち読者を惹きこんでいきます。リアルだけれどファンタジー、ファンタジーだけれどリアル。その壊れ方には妙な説得感があり、描かれる文壇の内部事情からは目をそむけたくなるほどグロテスクですが、コミカルなタッチと終盤の怒涛の展開は読んでいて純粋に面白く、自分自身すらネタにしてしまう筒井さんのしたたかさと小説芸は見事だなと感じざるを得ません。……恐るべし。■噛むほどにハマる筒井ワールドをご賞味あれ……!いかがだったでしょうか……? まだまだ紹介したい作品や語りたい魅力はたくさんあるのですが、正直、予備知識なしで手に取るのが一番気持ちの良い筒井康隆ワールドへの浸り方だと私は感じています。ぜひみなさんも騙されたと思って一度手に取ってみてください。そして一文字一文字を味わってみてください。噛めば噛むほどおいしい筒井康隆の世界へ。■「TheBookNook」についてこの連載は、書評でもあり、“作者”とその周辺についてお話をする隔週の連載となります。書店とも図書館とも違う、ただの本好きの素人目線でお届けする今連載。「あまり本は買わない」「最近本はご無沙汰だなあ」という人にこそぜひ覗いていただきたいと私は考えています。一冊の本から始まる「新しい物語」。「TheBookNook」は“本と人との出会いの場”であり、そんな空間と時間を提供する連載でありたいと思っています。次回からはさらに多くの本を深く紹介していきますのでお楽しみに。↓ 八木奈々さんご紹介作品の購入はこちらから ↓
2023年11月17日文:八木 奈々写真:後藤 祐樹“読書の秋”もいいけれど“食欲の秋”も捨てがたい……。そんな欲張りなあなたにぴったりな今回のテーマ「食」。人が何を食べているかより、誰と食べているかを見ることだ。というエピクロスの有名な言葉があるように、食と人はいつの時代も密に繋がっています。旬の肴とおいしいお酒、舌鼓を打つジビエ料理、ほっこり優しい懐かしの料理、思い出の味は人それぞれ。小説の中の“食”は、ときに忘れていた自身の大切な“食”の記憶を思い出させてくれて、ぽっかり空いたまま気づかずにいた心の穴を埋めてくれます。写真はイメージです。今回はそんな心もお腹も満たされる“食”にまつわる本をご紹介させていただきます。読み終えた後のご飯は、いつもよりも少しだけおいしく、隣にいる人はいつもより大切に感じられるかもしれません。1.群 ようこ『かもめ食堂』映画化もされた群ようこさんの本作品。映画を観た後でも構いません、ぜひ“小説”で触れていただきたいです。フィンランドを舞台にしている物語のためか、ベタっとなりがちな人間関係がほどよくドライにうつり、淡々とした日常描写に、読み終えるのが惜しくなるほどの居心地の良さを感じます。そう、物語に大きな山場などなくていいのです。“普通”であることがどれだけ尊いか、肩の力を抜いて生きるヒントを真っ直ぐな語り口調で群さんは私達読者に教えようとしてくれます。文字だけの小説だからこそ伝わることは本当に多くあります。きっと読後はあなたも、アラビアの綺麗な青いお皿におにぎりを置いて食べたくなるはずです。もちろん、塩おにぎり。2.髙田 郁『みをつくし料理帖・八朔の雪』全十巻の連続時代小説のシリーズ一作目となるこちらの作品。つい先日、家で心太(ところてん)を食べる機会があり、ふと本作を思い出しました。幸せを足踏みするほど苦労続きの主人公が、自ら唯一の奉仕の道とする“料理”で、ひたむきに、ひたむきに、恩返ししようとする姿、その周りにいる人々、その全てがあまりにも愛おしくて、抱きしめたくてたまらなくなります。また、登場する食べ物の表現が時代を感じさせないほど食欲をそそり、地域ごとの味の違いやレシピ、豆知識等もちりばめられており、まさに“食”の本。一話ごとに読み切りとなっているため、連続時代小説だからといって敬遠せず、ぜひお手に取ってみてください。無性に茶碗蒸しが食べたくなりますよ。3.小川 糸『あつあつを召し上がれ』小川糸さんらしい馴染みやすい文章で綴られた食卓をめぐる7つの短編集。いずれも憂いを含む内容でありながら、絶品料理のおいしい記述でほっこりしてしまいます。生きることは食べることであり、味覚と思い出は密に繋がっていると感じさせられると同時に、味や香りだけではない、景色や感情で覚えている思い出の一皿が誰にでも在り得るという“今日までの幸せ”を考えさせられました。忘れてしまった“忘れられない味”の記憶をたどって思い出せることは、始まりよりも終わりの方が圧倒的に多く、切ない気持ちにもなりますが、それでいいのです。もう食べられない味、触れられない人、知ることができないレシピ。全部全部、ちゃんと思い出して、思い出にできたら、いいと思うのです。今度こそ忘れないように……。■五感で味わう“食”小説いかがだったでしょうか? 世の中には味わい深い“食”小説が読み切れないほどに溢れています。ぜひ、綴られた文字をただ読むだけではなく、耳で、鼻で、心で、作家さんが紡ぐ一皿を思う存分味わってみてください。おいしい匂いがただよってくるようなあなただけの素敵な一冊が見つかりますように。■「TheBookNook」についてこの連載は、書評でもあり、“作者”とその周辺についてお話をする隔週の連載となります。書店とも図書館とも違う、ただの本好きの素人目線でお届けする今連載。「あまり本は買わない」「最近本はご無沙汰だなあ」という人にこそぜひ覗いていただきたいと私は考えています。一冊の本から始まる「新しい物語」。「TheBookNook」は“本と人との出会いの場”であり、そんな空間と時間を提供する連載でありたいと思っています。次回からはさらに多くの本を深く紹介していきますのでお楽しみに。↓八木奈々さんご紹介作品の購入はこちらから↓↓ 食欲の秋のお供に ↓
2023年11月03日文:八木 奈々写真:後藤 祐樹“SF”ときいて皆さんは何を思い浮かべますか?映画でいえば“スターウォーズ”や“バック・トゥ・ザ・フューチャー”などが有名ですが、そんな圧倒的自由な非現実世界で繰り広げられるのがSFの世界の特徴です。どのストーリーも読めば読むほどに嫌でも惹き込まれてしまいます。ただ、興味はあっても小説だと最後まで読み切れるか不安で手を出せずにいるという声もよく聞きます。もったいない……。難解に思われがちなSF小説ですが、SFと一括りにいっても扱うテーマは多岐にわたり、なかには驚くほどサクッと読めるものも存在するのです。写真はイメージです。今回はSF好きな人はもちろん、初めての方にもおすすめのSF小説をより手に取りやすい“短編集”に絞ってご紹介させていただきます。まとまった読書時間がとれない人や集中して読むのが苦手な人でも短編集であれば気兼ねなく物語に浸ることができるはずです。1.星新一『ボッコちゃん』日本のSF作家の第一人者でもある、星新一のショートショート集。なんと作者自らが選んだ50もの作品がこの一冊に集約されています。荒んだ人間社会への皮肉や教訓、起こり得そうな未来にゾクッとしたり……かと思えばクスッと笑えたり。50年以上も前に書かれた作品とは思えない世界観と、想像できそうでできない結末に何度でも搔き乱されたくなります。一作一作の物語はかなり短いにも関わらず、展開が二転三転するスピード感とそのオチを理解した後にもう一度読まずにはいられなくなる表現力の高さに気づけたのは大人になってからでした。星新一、恐るべし。2.キム・チョヨプ『わたしたちが光の速さで進めないなら』韓国人SF作家の初短編集。本作はコミュニケーションを主題に、コールドスリープやファーストコンタクト等SFの定番ネタを盛り込んで紡がれていきます。SF要素が強いのに不思議と物語に住む人たちは現在の私達とそれほど心持ちは違わず、親しみやすいのが印象的です。そう、なんといいますか、SF小説を読んでいたつもりが、いつのまにかどうしようもない現実に目を向けてしまっているような……一度読んだら癖になる面白い読書体験でした。もしこの物語の結末にあなたの心が動いたとしたら、現代で自分がすべきことは何か、“片手間に”考えてみてください。かなり引力のある作品なので読後の感情は自己責任でお願いします。3.倉田タカシ『あなたは月面に倒れている』短編でも強い刺激を感じたい人におすすめの作品。正直かなり変化球でぶっ飛んでいるお話も多いですが、SF特有の独特な世界観と特異な設定は健在です。読みながらも私は今何をしているのだろう……と我に返ったり、そうかと思えば背筋を伸ばして足早に読み進めてみたり、ときに独特な表現から脳内の配線に直接触れられたような感覚に陥ります。理解が追いつかないまま進む物語が苦手な人は少し読み疲れてしまうかもしれません。でも私はこの本を手に取った自分を誇りに思います。最後に、この短編集への敬意をこめて私が読後に抱いた感情を残します。「最高の時間の無駄遣いでした」。■SFの世界を味わうならまずは短編からいかがだったでしょうか? 今回の3作品からはあえて外しましたが私は12歳の頃、日本のSF作家、“筒井康隆”さんから小説の世界にグッと魅了されました。難解なイメージをもたれがちなSF小説ですが、一度その魅力にハマると心ごと掴まれ抜け出せなくなります。まずは忙しい合間にも手軽に読める短編から、SFの世界に飛び込んでみてください。■「TheBookNook」についてこの連載は、書評でもあり、“作者”とその周辺についてお話をする隔週の連載となります。書店とも図書館とも違う、ただの本好きの素人目線でお届けする今連載。「あまり本は買わない」「最近本はご無沙汰だなあ」という人にこそぜひ覗いていただきたいと私は考えています。一冊の本から始まる「新しい物語」。「TheBookNook」は“本と人との出会いの場”であり、そんな空間と時間を提供する連載でありたいと思っています。次回からはさらに多くの本を深く紹介していきますのでお楽しみに。↓八木奈々さんご紹介作品の購入はこちらから↓
2023年10月20日「猫」を取り巻く純文学。文:八木奈々写真:後藤祐樹「猫」。さっきまでのんびり寝ていたかと思えば、風で動いたカーテンや突然訪れた虫たちに大歓迎とばかりに飛びつき戯れる、そんな自由気ままに生きるその姿はどこまでも愛おしく、どこか羨ましく、その前では多くの人が無条件に笑顔になってしまいます。そう、もしかしたら疲れた私達人間に癒しを届けるためにやってきた魔法使いなのかもしれません。写真はイメージです。そんな猫たちに魅了されるのは、日々文章を紡ぐ作家さんたちも同じです。その証拠にあらゆるジャンルの本に“猫”はその姿や立場を変えて自由な形で登場しています。今回はそんな“猫”の魅力を再確認できる、猫好きさんの心を掴んで離さない癒しの“猫”作品をご紹介させていただきます。1.奥泉光『「吾輩は猫である」殺人事件』題名の通り、かの有名な「吾輩は猫である」の“あの猫”が生きていたという設定に始まる本作品。夏目漱石を彷彿とさせる文体で続編小説のように楽しめます。親しみのある登場人物達が思わぬ陰の一面を持っているなんて考えも及ばず、“腑に落ちないまま”惹きこまれていきます。冒頭のあの一文がこんな展開に繋がっているなんて、そして、ちゃんと収拾がつくなんて……。正直読むのにはかなり時間がかかってしまったのですが、不思議なもので、読み終え振り返ってみると、これは物凄く面白いかもしれない……と思わされました。ぜひ、『吾輩は猫である』を読んだあとに続けてこの作品に触れてみてください。きっとあなたも私と同様、どこまでが漱石で、どこからが奥泉光か分からなくなるでしょう。2.越谷オサム『陽だまりの彼女』10年ぶりに中学時代の幼馴染と偶然出会い……というどこにでもありそうな真っ直ぐな恋愛小説。切なくて残酷だけれど、明るくて甘く、胸焼けするほどベタ甘な恋愛描写が続くため、つい飛ばし読みしてしまいそうになりますが、どうか一文字も逃さずに読み進めてみてください。驚愕とも、呆気ないともとれる物語の結末と、後に気づく構成力に、見事なまでに振り回されます。正直、好き嫌いが大きく分かれる作品かもしれません。私も学生時代に初めて読んだときは感情移入できず本を閉じてしまいましたが、今、時を経て、ふと大切な人を思い出すようにこの本に会いたくなるときがあります。なんとなく、ただ会いたい人に会いに行くように。読後は、あなたの大切な人が、ひとり増えるかもしれません。3.小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』少年がチェスと猫に出会い、たくさんの人と心を繋げていく、静謐で美しくどこまでも慈愛に満ちた本作品。登場人物の会話シーンは少なく、私達読み手の五感、はたまた六感にまでも訴えかけてきます。沢山の因果が折り重なって進んでいくストーリーは、チェスを知らない私でも、芸術的なチェスマッチのように感じられました。そして、チェスの盤、ビルの屋上、回送バスの中……物語の中の景色一つひとつは“自分が収まっている限られた場所”を儚く美しく意識させてきます。読後、この物語を素直に“うつくしい”と思えたとき、私は涙が出てきました。ぜひあなたも耳を澄ませ、息をひそめ、小川洋子の世界に深く沈んでみてください。■純文学であなたの世界を広げてみませんか娯楽性よりも芸術性に重きを置いているとされる“純文学”ですが、実は読み手に優しい物語も多く、その世界にどっぷりと浸からせてくれます。ぜひ、猫をはじめ、好きなものを通して普段は読まないジャンルにも手を伸ばしてみてください。あなたの見ている世界が広がりますように。■「TheBookNook」についてこの連載は、書評でもあり、“作者”とその周辺についてお話をする隔週の連載となります。書店とも図書館とも違う、ただの本好きの素人目線でお届けする今連載。「あまり本は買わない」「最近本はご無沙汰だなあ」という人にこそぜひ覗いていただきたいと私は考えています。一冊の本から始まる「新しい物語」。「TheBookNook」は“本と人との出会いの場”であり、そんな空間と時間を提供する連載でありたいと思っています。次回からはさらに多くの本を深く紹介していきますのでお楽しみに。↓ 八木奈々さんご紹介作品の購入はこちらから ↓↓ 猫のいる暮らし、おすすめグッズ ↓「ユカイ工学 Qoobo(クーボ)しっぽ ふりふり ロボットセラピークッション」しっぽのついたクッション型セラピーロボット。撫でると、まるで猫のようにしっぽを振って応えてくれます。「パーフェクトペット ぬいぐるみ 猫」お腹のあたりがまるで息をしているかのようにほのかに動くぬいぐるみ。みているだけで癒されそうです。「YETI Rambler マグ」大容量のマグカップ。好みの飲み物をたっぷり用意して、香りにも癒されつつリラックスしたひとときを。
2023年10月06日文:八木 奈々写真:後藤 祐樹新しい本を手にするとき、皆さんは何を基準に選びますか?その本の装丁やタイトル、作家、評判、帯にある言葉、惹かれる理由はさまざまだと思います。ちなみに私は図書館にある“最近返却された本”というコーナーが好きで、そこから無造作に本を借りることも多いです。写真はイメージです。そんな数ある本との自由な出逢いのなかで、タイトルと物語の温度差が激しい作品に出会ったことはありませんか? 美しい装丁やタイトルからはとても想像もできないような物語に触れた後、改めて目にするその表紙がまるで初見のように感じられることもあります。今回は、物語の面白さだけではなく、視覚から掻き乱される感覚を皆様に味わっていただきたく、読む前と読み終えた後の感情の差が激しいと私が感じた作品を紹介させていただきます。1.中島京子『妻が椎茸だったころ』日常の片隅に起こる、ちょっと怖くて愛おしい、5つの偏愛短編集。夢と現実が交差するような奇妙さで、不思議な夢を見たけれど、どこからが夢だったか思い出せないときのような読後感を味わえます。吸引力のあるタイトルから抱いた印象とはまるで違う、静かに歪んだ登場人物と、心温まる話なのに、読後しばらく経ってから時間差でゾクッとくる気味の悪さ。背筋をなぞる不安感が病みつきになります。私は表題作と最後のお話が特に好きでした。タプタプの余韻に浸りながらも、“特に感想はない……”と言ってしまいたくなる。これがこの作品の感想です。2.村上龍『限りなく透明に近いブルー』著者の処女作にして芥川賞受賞作品。タイトルの美しさと表紙の青に惹かれ手に取ってしまったこの作品。ドラッグ、セックス、暴力、依存。文体から滲み出てくる匂いや感覚が妙に生々しく、中学生の私は途中で読み進めるのを断念してしまいました。そして大人になって再読。相変わらず作中で蠢(うごめ)く薬や性の描写はとても強烈で、その容赦ない不快感に耐えられず、日常のフィルターを通しながらでなければ向き合えませんでした。でも、本当に一瞬だけ、この物語に刹那的な希望を見ました。いや、見間違いかもしれません。この本を手に取るときはどうか自己責任でお願いします。3.高瀬準子『おいしいごはんが食べられますように』こちらも芥川賞受賞作品。仕事と食事、三角関係、それぞれの正義。他人に弱さを見せることを許される者とそうでない者。これは虚無とも絶望とも諦めとも違う。でもその全てが含まれていて、読了後には致命的な感情の静けさが襲います。暖かい表紙と祈りのようなタイトルでありながら呪詛のようにも思える本作品。うっかり落とした一滴の“黒”が何者かによってかき混ぜられてしまう恐怖、終始息苦しさに苛まれるのはきっと誰もが感じたことのある妙に生々しく身近な感情が重なるからかもしれません。一気読み必須な作品です。■読書の締めくくりにタイトルと装丁を眺めてみては?どんな本でもタイトルや装丁には何かしらのメッセージが込められていると私は考えています。ぜひ、皆さまも本を読み終えた後、改めてタイトルの字体や色、装丁に目を向け、思考を自由に巡らせてみてください。もう一歩深い、本の世界へ踏み込めるかもしれません。素敵な読書ライフが広がりますように。■「TheBookNook」についてこの連載は、書評でもあり、“作者”とその周辺についてお話をする隔週の連載となります。書店とも図書館とも違う、ただの本好きの素人目線でお届けする今連載。「あまり本は買わない」「最近本はご無沙汰だなあ」という人にこそぜひ覗いていただきたいと私は考えています。一冊の本から始まる「新しい物語」。「TheBookNook」は“本と人との出会いの場”であり、そんな空間と時間を提供する連載でありたいと思っています。↓ 八木奈々さんご紹介作品の購入はこちらから ↓↓ 秋の読書体験を充実させるおすすめ商品 ↓「YETI Rambler マグ」大容量のマグカップ。好みの飲み物をたっぷり用意して、香りにも癒されつつリラックスしたひとときを。「藤栄 陶香 超音波アロマディフューザー」インテリアになじむシンプルなデザインがおしゃれな陶器製アロマディフューザー。超微粒子アロマミストでヒーリング効果も期待できそうです。↓ 前回ご紹介作品 ↓「秋の夜長を味方に。【TheBookNook #6】」1『旅のラゴス』筒井康隆2『夜のピクニック』恩田陸3『舟を編む』三浦しをん
2023年09月22日文:八木 奈々写真:後藤 祐樹“読書の秋”とはよくいいますが、ひと口に“秋”といっても、初秋から晩秋まで、秋の見せてくれる表情はさまざまです。どこか甘く切ない爽やかさ、深まっていく紅葉に彩られた美しさ、そして侘しさ(わびしさ)や物悲しさ……小説のなかの秋はいつも饒舌過ぎるほどに印象的です。写真はイメージです。今回は時間を忘れて物語に浸れる、飽きがこない名作を紹介させていただきます。せっかくの秋。時間がたっぷりある秋の夜長にこそ読みたい、心惹きこまれる、あなただけの物語を見つけてみてください。1.筒井康隆『旅のラゴス』北から南へ、そして南から北へ。人や場所がどんどん変わり、まるで短編集のような装いがありつつも確かに繋がっていく筒井康隆ワールド全開の本作品。ひたすら旅が続くかと思いきや途中さらっと明かされる目的、最後に向かう旅の終着点、そして人生……。読み進めながら芽生えた感情が指の間をすり抜けていくような不思議な感覚の文体が癖になります。30年近く前に出版された作品ですが、全くそれを感じさせません。密度の高いこの物語。深い余韻と共に本を閉じたとき、その本の薄さにあなたもきっと驚くはずです。2.恩田陸『夜のピクニック』青春小説の代表作ともいわれる今作品。人間の複雑な感情と存在の意味に思いを馳せさせ、孤独と希望が交差するクライマックスまで読者を引きずっていく、“永遠の青春小説”です。恩田陸の緻密な描写と深みのある文体、哲学的なテーマが語彙力豊かな読者にさえも訴えかけてきます。登場人物達それぞれの抱える想いや悩みが交差し、その歩みが進むにつれて、物語も一歩ずつ進んでいきます。苦痛だが終わってほしくない青春と、覚えのあるはずのない日常に触れ、きっとあなたも本を閉じた後、表紙の“黒”が嘘みたいに眩しく見えることでしょう。“戻れない”って美しい。3.三浦しをん『舟を編む』“辞書”の完成に向け、奮闘する辞書編集部を舞台にした本作品。“言葉”という絆を得て、登場人物達の人生が優しく編み上げられていきます。難しい言葉もあり、久しぶりに辞書を引き、メモしながら読み進めました。登場する一つひとつの言葉が多様な意味を持ち、豊富な解釈に富み、時代によりその色さえも変えていきます。不器用な主人公を応援せずにはいられず胸が熱くなりました。さらにこの作品を通して日本語の奥深さと曖昧さ、美しさを再認識でき、人生の早い段階で出会えて本当によかったなと思える作品でした。もはや愛おしい。■本の世界に浸って気分をリセットしてみては?今回の記事も楽しんでいただけましたでしょうか? じっくりと本の世界に没頭することは、ストレス解消にもつながります。少しセンチメンタルな気持ちにもなる長い秋の夜には、日常を忘れて、どっぷりと浸れる物語を手に取ってみませんか?あなたにぴったりな一冊が見つかりますように。■「TheBookNook」についてこの連載は、書評でもあり、“作者”とその周辺についてお話をする隔週の連載となります。書店とも図書館とも違う、ただの本好きの素人目線でお届けする今連載。「あまり本は買わない」「最近本はご無沙汰だなあ」という人にこそぜひ覗いていただきたいと私は考えています。一冊の本から始まる「新しい物語」。「TheBookNook」は“本と人との出会いの場”であり、そんな空間と時間を提供する連載でありたいと思っています。次回からはさらに多くの本を深く紹介していきますのでお楽しみに。↓ 八木奈々さんご紹介作品の購入はこちらから ↓▼前回ご紹介作品▼「忙しない日々に、心を満たしてくれる日本の児童文学を。【TheBookNook #5】」1『銀河鉄道の夜』宮沢賢治2『ごんぎつね』新美南吉3『二分間の冒険』岡田淳↓ 秋の夜長を充実させるおすすめアイテムの購入はこちらから ↓
2023年09月08日文:八木 奈々写真:後藤 祐樹皆さんは「児童文学」と聞いて、何を思い浮かべますか?大人気映画『ハリー・ポッター』や『ロード・オブ・ザ・リング』『ナルニア物語』など、大人になっても意外と触れる機会の多い“児童文学”。昔、読んだ名作も、大人になった今だからこそ違う捉え方ができ、子供のころには理解できなかった物語の“奥深さ”や“作者のメッセージ”にも気がつけるかもしれません。写真はイメージです。今回は、私たちの凝り固まった心をじんわりと解してくれる暖かみのある作風の「児童文学」を日本の作家さんに絞って紹介させていただきます。どの作品もスラスラ読めるものばかりなので、できるだけ中断せずに読み切るのがおすすめです。展開に甘えて漠然と読み進めるのではなくて、あの頃に戻って騙されたように真っ直ぐに児童文学の世界に入り込んでみてください。1.宮沢賢治『銀河鉄道の夜』宮沢賢治の死の直前まで変化し発展し続けたと謳われる未完の名作。彼の思想の集大成とされていますが、同時に多くの謎を含んでおりその評価はさまざまです。表題作のほかに「よだかの星」「ひかりの素足」「貝の火」なども収められています。描かれた世界がどれもあまりに透明で、正直、浸れないし追いつけず、手を伸ばしても届かない感覚と同時に、それと対照的な登場人物の孤独やラストの展開に何度読んでも良い意味で振り回されてしまいます。原作はやや難解ともいわれていますが、分かりやすく再構成された新編/漫画版なども出版されていますので、一度読むのを断念した方も、ぜひ宮沢賢治の世界に飛び込んでみてください。2.新美南吉『ごんぎつね』小学校の教科書にも載っている日本児童文学の名作。衝撃的な結末に子供の頃は好きになれなかった方も多いのではないでしょうか。でも実は、教科書に掲載されている“ごんぎつね”のラストと、原作のラストは少しだけ異なります。ごんが最後に本当はどんな気持ちを抱いたのか、主人公がこの先背負うもの、そして教科書に載るまでになった理由。大人になった今だからこそ、この救われない物語に込められた“もうひとつのメッセージ”を、美しい挿絵とともにぜひ味わってみてください。決して悲しいだけの物語ではありません。3.岡田淳『二分間の冒険』小学生の男の子が突然異世界冒険に巻き込まれ、仲間と共に竜に立ち向かう本作品。現実に帰るために“この世で一番大切なもの”を見つけないとなりません。これは別世界で無敵の救世主となりボスを倒す……というありがちな“冒険もの”ではありません。特別な力を持っていないのに試練を乗り越えていかなくてはならないという状況に、大人なら誰もが共感できると思います。分かりやすく教訓的な物語と童話特有の“黒さ”が垣間見え、大人になっても楽しめる作品となっています。これぞ児童文学。“あとがき”にある皮肉ともとれる作者の言葉まで逃さずに読んでほしい一冊です。■本を、安眠のお守りにいかがだったでしょうか? 今回は数ある日本の児童文学の中から「名作」と呼ばれているものを三作品紹介させていただきました。頭を使わずに心だけでも受け取れる児童文学は、物語でありながら、ときに、手紙のようにも感じられます。どんな自分も受け止めてくれるお守りのような本が一冊でも心にあると、とても心強い気持ちになるものです。いや、本でなくても構いません。歌でも、映画でも、なんでもいいんです。ここにいる皆様が、今夜、安心して眠れますように。■「TheBookNook」についてこの連載は、書評でもあり、“作者”とその周辺についてお話をする隔週の連載となります。書店とも図書館とも違う、ただの本好きの素人目線でお届けする今連載。「あまり本は買わない」「最近本はご無沙汰だなあ」という人にこそぜひ覗いていただきたいと私は考えています。一冊の本から始まる「新しい物語」。「TheBookNook」は“本と人との出会いの場”であり、そんな空間と時間を提供する連載でありたいと思っています。次回からはさらに多くの本を深く紹介していきますのでお楽しみに。↓ 八木奈々さんご紹介作品の購入はこちらから ↓▼前回ご紹介作品▼「疲れた心と共に、本の世界へ飛び込む。【TheBookNook #4】」1『天国はまだ遠く』瀬尾まいこ2『きりこについて』西加奈子3『本日は、お日柄もよく』原田マハ
2023年08月25日文:八木 奈々写真:後藤 祐樹「本を読むと疲れる」「疲れて最後まで読むことができない」そんな声を耳にすることも多いですが、実はその疲れた心こそが新たな気づきや癒しを求めている合図なのかもしれません。心を優しく包み込むような物語や、心に響く言葉の数々。その魅力は、とどまることをしりません。もし、もしも、一冊の本に触れるだけで、ほんのちょっとでも心が落ち着いたら。自分のペースを取り戻すことができたら。ゆったりとした眠りにつくことができたら。写真はイメージです。それだけで明日が、目の前の景色が、ほんの少しだけ変わるとは思いませんか?そんな、心を満たす本との出逢いが皆さんに訪れる未来を願って、今回は「疲れたときこそ読んで欲しい特別な本」を三冊ご紹介させてください。1.瀬尾まいこ『天国はまだ遠く』。仕事や人間関係に疲れ切った女性が、山奥へ向かい自ら命をたとうとしてしまうショッキングな物語。……でありながら、死ぬために訪れた土地で出逢った人々の影響で、彼女の慌ただしく不安な心はいつのまにか癒されていきます。前向きになっていく中で「ずっとこのままではいられない」という気持ちが生まれ、主人公が再び一歩を踏み出すまでの心情が描かれています。彼女の抱えていた漠然とした生きる不安、気持ちの変化、新たな出会い、旅立つ勇気、寂しさ、それらの全てが静かに自分と重なり、私の心に寄り添う大切な一冊となりました。読後は、視界がクリアになり、脱皮した様な感覚になれる一冊です。主人公が日常から離れて得た癒しや心の変化は、私が本を通して感じるそれと少し似ているかも知れません。2.西加奈子『きりこについて』「きりこは、ぶすである」という衝撃の一文から始まるこの物語。“ぶす”であることから普通の社会生活を送れずに引きこもっていた主人公が、成長していくにつれて見つけていった哲学が、一見ありきたりな意見のようで、巧みなエピソードによって描かれていて、私たち読者の前に圧倒的な説得力を持って提示されます。読後も日常のふとした瞬間で、その中にある鮮やかなシーンを思い出してしまうような物語であり、いつまでも読者、とりわけ女性を支えてくれる存在でもあります。自分を愛せなくなったとき、容姿に自信が持てないとき、他人の言葉に深く傷ついたとき。この小説は、あなただけを見つめ「あなたはあなただ」と真っ直ぐに偽りなく語ってくれます。読後は一見地味な日々の営みがほんのり甘く色付いて、自分の存在が限りなく尊いものに思えるから不思議です。3.原田マハ『本日は、お日柄もよく』原田マハさんといえば美術関係の作品を思い浮かべる人も多いと思いますが、本書はそんな原田さんの専門分野が解禁される前の作品です。物語は“スピーチライター”という職業にスポットライトが当てられており、作中には名言がいくつも登場します。そして本のタイトルにもなっている「本日は、お日柄もよく」。物語の序盤でも目にするこの言葉ですが、終盤になるにつれてその素晴らしさが身に染みて、自然と涙腺が緩んでしまっていました。それくらいこの作品は“言葉”の一つひとつが選び抜かれていて、問答無用で私たち読者を虜にしてくれます。読後には少し背筋を伸ばして、自分の発する“言葉”を大切にしたくなるはずです。本日はお日柄も良く。■お守りみたいな作品で心に安らぎを疲れた自分に寄り添ってくれるような、お守りのような一冊があると、とても心強い気持ちになるものです。いや、本でなくても構いません。歌でも、映画でも、なんでもいいんです。ここにいる皆様が、今夜、安心して眠れますように。■「TheBookNook」についてこの連載は、書評でもあり、“作者”とその周辺についてお話をする隔週の連載となります。書店とも図書館とも違う、ただの本好きの素人目線でお届けする今連載。「あまり本は買わない」「最近本はご無沙汰だなあ」という人にこそぜひ覗いていただきたいと私は考えています。一冊の本から始まる「新しい物語」。「TheBookNook」は“本と人との出会いの場”であり、そんな空間と時間を提供する連載でありたいと思っています。次回からはさらに多くの本を深く紹介していきますのでお楽しみに。↓ 八木奈々さんご紹介作品の購入はこちらから ↓
2023年08月11日文:八木 奈々写真:後藤 祐樹皆さんは“海外小説”に触れたことはありますか?日本の作家さんが対象の国を舞台に書いた物語でも、旅行をした方の体験記でもない、現地の作家さんが書いた物語。その文章に現れるその国の“らしさ”。「こんなときにこんなこと考えるんだ」とか「こんな見方をするんだ」など、さまざまな文化の違いをより多く感じられるのは文章で構成される小説ならではです。登場人物の名前がカタカナで頭に入りづらいとか、たとえが分かりにくいなど、外国小説には独特のハードルもありますが、一度ハマってしまえば抜けられないほど面白いのも海外小説。写真はイメージです。次の休日は、“世界”を片手に、ゆっくり時間をかけながら、いろいろな国を巡ってみませんか?今回は日本にいながら小説を通して世界を旅する「海外小説」を紹介させてください。1.【フランス】サン=テグジュペリ『星の王子様』世界百数十の言語に訳され、聖書とも比較される、誰もが一度は耳にしたことのあるこの作品。“大切なものは目に見えない”“この世で唯一のバラ”……など、数々の有名なセリフがちりばめられていますが、原文を見直すと、より深く強い作者のメッセージが見えてきます。児童書に分類される作品ですが、大人になってからこそ、何度も、読み返してほしい一冊です。読んだ回数だけ新しい気づきがある『星の王子様』。忘れてしまっていたのか、忘れたフリをしていたのか、“本当に大切なこと”を、そっと、気づかせてくれる作品です。2.【カナダ】モンゴメリ『青い城』“赤毛のアン”でよく知られているモンゴメリの隠れた名作。正直、物語の前半は鬱々とした場面の連続で気が滅入ってしまいがちなのですが、どうか、どうか、中盤まで我慢していただきたいです。“余命宣告された主人公”という使い古された一見陳腐にすらみえるテーマですが、二転三転、本当に最後の最後まで先が見えないラブ・ロマンス。しっかり恋愛描写を描いている一方で、あくまでもメインは主人公の成長にあるので、甘すぎる恋愛小説が苦手な人にもおすすめです。カナダの美しい自然の描写もとても魅力的です。3.【オーストラリア】トレント・ダルトン『少年は世界をのみこむ』世界の住みやすい都市としても印象強いオーストラリア。良いイメージの裏側で、実は問題となっている麻薬密売や暴力に関する社会問題。この作品はそんなオーストラリアで2019年に一番売れた小説だといわれています。物語のおよそ半分は実話だという本作には衝撃的な描写もありますが、ちょっとした風景、僅かな心の動き、流れてくる音楽、テーブルの上に置かれた食べ物、そして主人公の空想の産物さえも細やかな表現で描かれており、まるで自分自身が“そこ”に生きているかのように感じられます。色や情景が浮かんでくる文章と、爽快な伏線回収もさることながら、特にラスラの畳みかけるところと標題の章はグッと胸に迫るものがありました。■行ってみたい国の物語で素敵な旅の思い出を他にも紹介したい海外小説は沢山ありますが、今回はそのなかでも、特に印象に残っている三作品をご紹介させていただきました。まずは“今”、皆さんが行ってみたい国が舞台の小説から、手に取ってみませんか? きっと素敵な旅の思い出ができることと思います。↓ 前回までの記事はこちらから ↓【TheBookNook #1】■【TheBookNook #2】■「TheBookNook」について今連載は、書評でもあり、“作者”とその周辺についてお話をする隔週の連載となります。書店とも図書館とも違う、ただの本好きの素人目線でお届けする今連載。「あまり本は買わない」「最近本はご無沙汰だなあ」という人にこそぜひ覗いていただきたいと私は考えています。一冊の本から始まる「新しい物語」。「TheBookNook」は“本と人との出会いの場”であり、そんな空間と時間を提供する連載でありたいと思っています。次回からはさらに多くの本を深く紹介していきますのでお楽しみに。↓ 八木奈々さんご紹介作品の購入はこちらから ↓
2023年07月28日文:八木 奈々写真:後藤 祐樹皆さん、最近、胸が熱くなるような想いをしましたか?大人になると、子供の頃に比べ毎日の生活の中で心を動かされる機会が少なくなります。平凡な毎日の繰り返しでつまらないなと感じているなら、この夏だけは騙されたと思って、じっくりと本の世界と向き合ってみてください。読み終わる頃には、来年の夏が待ち遠しくなっているかもしれません。※ 画像はイメージです。来年の夏も待ち合わせしたくなるような“夏に読みたい/夏を感じる小説”を今回は紹介させていただききます。1.道尾秀介(みちおしゅうすけ)『向日葵の咲かない夏』生まれ変わりを信じる少年の“ある夏休み”を舞台にした物語です。登場人物それぞれがどこか怪しく、読み進めるにつれてだんだんとその違和感が私達読者を襲ってくる、いい意味で不快感MAXの物語です。疑問を抱かせられる場面も多いのですが、最終的に「そうだったのか」と、腑に落ちると同時に、ブルっと全身寒気に襲われます。何度読み返しても飽きがこない道尾さんの技法がとにかく素晴らしく、思い出しただけでもぞわぞわする、なんともいえない読後感は唯一無二で、きっと来年の夏も、私は、この本を手に取ると思います。私のもうひとつの夏休みを、皆さんも、ぜひ。2.ロバート・A・ハインライン『夏への扉』言わずと知れたSFの金字塔(きんじとう)ともいえるこの作品。1956年出版にも関わらず、古さを感じさせず、今もなおさまざまな媒体で紹介され続け、年代問わず多くの人を魅了しています。私がこの本と出会ったのは中学一年生のとき。人気のSF小説として書店で紹介されており手に取りました。はじめは冷凍睡眠、タイムトラベルといったSF要素に目がいき、当時は思い描いていた作品を読めたことに満足感を抱いていたのですが、大人になって読み直してみると、SFとして括ってしまうにはもったいない人間的な要素を多く感じ、表紙から受けるイメージさえも大きく超えた感動を与えてくれました。60年以上経っても色あせない輝きを、ぜひ堪能していただきたいです。3.鷺沢萠(さぎさわめぐむ)『少年たちの終わらない夜』青春真っ只中の10代の主人公を描く4つの物語。あと少ししたら、大人としてひとりで人生を歩まなくてはならない。もう戻ることはできない。分かってはいるけれどいまこの瞬間は何者にもならず仲間とただ笑っていたい。思春期を生きる主人公たちの心の葛藤と10代最後のきらめきを閉じ込めたような一冊。1990年代出版の作品のため時代や性差の違いが感じられる反面、時代が変わっても少年少女の抱く焦燥は変わらないという現実を突きつけられます。何より、いつかは忘れてしまうような一瞬の感情や光景を掬いあげている鷺沢さんの言葉は子供にも大人にも真っ直ぐに作用します。ぜひいろいろな年代の方に手に取って頂きたい一冊です。■暑い夏に、熱い物語を夏に読みたくなる作品、まだまだ沢山ありますが、今回は“今夏の私”が読みたくなった三作品をご紹介させていただきました。冷たい麦茶でも飲みながら「 夏」の暑さを全身に感じて読書するのはとても気持ちの良いものです。ぜひ、暑い夏だからこそ楽しめる熱い物語を皆さんに味わっていただきたいです。皆さんの夏がより濃く色づきますように。↓ 前回の記事はこちらから ↓■「TheBookNook」について今連載は、書評でもあり、“作者”とその周辺についてお話をする隔週の連載となります。書店とも図書館とも違う、ただの本好きの素人目線でお届けする今連載。「あまり本は買わない」「最近本はご無沙汰だなあ」という人にこそぜひ覗いていただきたいと私は考えています。一冊の本から始まる「新しい物語」。「TheBookNook」は“本と人との出会いの場”であり、そんな空間と時間を提供する連載でありたいと思っています。次回からはさらに多くの本を深く紹介していきますのでお楽しみに。↓ 八木奈々さんご紹介作品の購入はこちらから ↓
2023年07月14日文:八木 奈々写真:後藤 祐樹■昨日まで知らなかった世界を、今日の私は知っている。皆さんにとって素晴らしい本とは何ですか?私にとって素晴らしい本とは、私をここではないどこかに連れ出してくれたり、作者独自の物事のとらえ方を教えてくれたりする本。本を読んでいると、そこにある言葉や景色に触発され、私はいろいろなところへ旅をします。というのも、私にとって本とは殆どの場合、“知識を得るための手段”ではなく“思考をするための手段”だからです。世の中の書き手のある全ての作品は、その人の思考、人生そのものであると私は考えています。他者の思考、人生に、たった数百円、数時間で触れる事ができる。いわば最も簡単な人生のチート技が“本を読むこと”だと思っています。この連載では、本が好きな人は、どんな事を考え、何を楽しみ、感じているのか。そんな事を交えながら、私のおすすめの本をテーマに沿って紹介していきたいと思っています。「本を読むのが苦手。何をどう面白がっていいのか分からない。でも、気にはなる」そんなよく耳にする不都合を解決できるような連載を志しています。■時間と命を考える『モモ(Momo)』ミヒャエル・エンデ著『モモ(Momo)』(ミヒャエル・エンデ:著、大島 かおり:翻訳 / 岩波書店)初回となる今回ご紹介するのは、小学生の私を旅に連れて行ってくれた思い出の本です。きっと多くの人が目にしたことのある小学校の図書室にも置かれているあの厚い特徴的な絵が表紙の一冊、ミヒャエル・エンデの『モモ(Momo)』。この物語のテーマは「時間」。少女が“時間泥棒”によって奪われた時間を取り戻しに行く物語です。最後には無事に“ソレ”を取り戻すことができるのですが、そのために少女がしたことは、ただ、相手の話を聞く事だけでした。本作は現代人が見失いがちな“時間の大切さ”を訴えているだけではなく、時間とは何か、命とは何か、死とはなにか、という誰もが心に一度は抱く問題をファンタジーという手法を使って子供にも分かる言葉で考えさせてくれる作品です。灰色の男達が言葉巧みに奪っていく“時間”。でも当の本人たちは、失われているのは単なる“時間”ではなく、“自分らしく生きる命”だという事に気づいていない。作中にある「人間とは時間を感じ取るために心というものがある」という一節からも、作者エンデさんは本作を通じて“時間とは命そのものである”ということを伝えたいのだと私は感じています。はたして小学生の私はどんな感想を抱いたのでしょうか。思い出せそうにもありませんが、きっとまたすぐこの物語にある言葉達に会いたくなるような気がしています。児童文学ではありますが、時間に余裕がない、毎日があっという間に過ぎていく“大人”にこそ触れてほしいおすすめの一冊です。■「TheBookNook」について今連載は、書評でもあり、“作者”とその周辺についてお話をする隔週の連載となります。書店とも図書館とも違う、ただの本好きの素人目線でお届けする今連載。「あまり本は買わない」「最近本はご無沙汰だなあ」という人にこそぜひ覗いていただきたいと私は考えています。一冊の本から始まる「新しい物語」。「TheBookNook」は“本と人との出会いの場”であり、そんな空間と時間を提供する連載でありたいと思っています。次回からはさらに多くの本を深く紹介していきますのでお楽しみに。↓ 八木奈々さんご紹介作品の購入はこちらから ↓
2023年06月30日■クレンジングをやめたら肌がきれいになった積んであるあの本が、私を待っている……。少し早く帰れそうな夜、DRESS世代に、じっくりと読み進めてほしい本をご紹介する連載【積読を崩す夜】。21回目は、『クレンジングをやめたら肌がきれいになった』(著:北島寿)を取り上げます。女優の安達祐実さんが、メイクモデルに初挑戦。ナチュラルコスメの第一人者である著者が、クレンジングをやめるという切り口で、新しい美肌理論を教えてくれます。■「クレンジングは肌にいい」は間違いクレンジングは、一日の役目を終えたメイクや汚れを落とすもの。肌にとって不要な汚れを取り去る、という行為自体は必要なことです。「汚れを落とすものなんだから、クレンジングは肌にとっていいものだ」と思う方も多いかもしれません。でも、実際はその逆。クレンジングでメイクを落とすことを繰り返していると、肌がどんなダメージを受けてしまうのか、それはなぜなのか。(9ページより引用)肌のためにメイクをしっかり落とすクレンジングは欠かせないと、私たちの多くが思っているのではないでしょうか。前提として、メイクを落とさずに寝ることは肌に良くない、そして1日過ごした肌の上にはメイクや皮脂、汗、ホコリなどが付着。それを放っておくと、毛穴が詰まったり酸化したりして、肌を刺激してしまうのだと著者はいいます。さらに、洗顔は汚れを落とすだけではなく、肌表面の不要になった角質を落とすことで、肌のターンオーバーのリズムが整い、健康でバリア機能が高い肌をキープすることができるといいます。ところが、クレンジングは肌のバリア機能を乱し、乾燥やトラブルを引き起こす一因となってしまうのだとか。一般的なメイク製品には、もちや仕上がりをよくするために、合成ポリマー・シリコーンなど油性の化学成分が入っています。これらを落とすには、油で溶かすオイルか、油を水になじませる界面活性剤、またはアルカリの力を借りるしかありません。そして、ほとんどのクレンジングには界面活性剤が入っていて、これが肌のバリア機能に大きく影響しているのだというのです。■ナチュラルコスメに替えてみる肌のきれいを損なうクレンジングを使わずにメイクを愉しむ――その方法は、ただひとつ。お湯や石けんだけですっきり落ちるメイクアイテムを使うことです。合成成分を使わず、天然原料で作られているナチュラルコスメやミネラルコスメがそれにあたります。(23ページより引用)クレンジングを使わずに済ませるには、メイクの種類を変えることだと著者は推奨しています。落ちにくい合成成分を使わずに作られたナチュラルコスメを選べば、フルメイクをしていてもクレンジングを使わずに、石けん洗顔で落とすことが可能だというのです。自然由来というと、何となく色がぼやけていたり、崩れやすそうな印象がありますが、みずみずしいツヤ感や発色の良さを保ったナチュラルコスメも、最近では増えてきています。クレンジングを使わずに、肌にやさしいメイクをするからといって、美しさに妥協する必要もない。軽やかでしっとりとした使い心地は、むしろストレスフリーであると著者はいいます。■石けんでメイクも汚れも一度に落とすよく、「本当にクレンジングしていないんですか?」「石けんで何度か洗いますか?」と聞かれることがあります。はい、合成成分を使わない日焼け止めやメイク、フィルムマスカラだけなら、クレンジングなし、1回の石けん洗顔で落とすことができます。(105ページより引用)ナチュラルコスメに替えたら、クレンジングの代わりとなる石けんでの洗顔になります。そもそも石けんとは、天然の油脂にアルカリ性の苛性ソーダを加えて反応させ、枠に入れて固めたもの。油脂がアルカリ性に反応するときに、自然と界面活性剤ができて、それが泡立ちや汚れ落ちのもととなります。しかし、石けんは、水で薄まるだけでその活性作用を失うという特有の性質があるのだとか。他の合成界面活性剤とは一線を画した、肌や環境にやさしい洗浄剤であると著者はいいます。また、石けんは基本的にアルカリ性なので、洗浄力と活性剤のバランスが発揮され、汚れ落ちはいいのに、肌への負担はマイルドなのだとか。落ちにくいメイクをやめて、汚れは石けんで落とす。シンプルなスキンケアの提案は、私たちの毎日も、シンプルで自然なものに変えてくれそうです。それが「クレンジングをやめたら肌がきれいになった」状態につながるのでしょう。『クレンジングをやめたら肌がきれいになった』書籍情報著者北島寿さんプロフィール1971年生まれ。100%ナチュラルのミネラルコスメ「MiMC(エムアイエムシー)」開発者兼代表取締役。東北大学大学院理学研究科博士課程前期終了。日本の自然派化粧品会社に勤めた後、2001年にアメリカ西海岸に渡り、オーガニック化粧品や先進的美容治療のマーケティングを学ぶ。2007年に「MiMC」を設立。現在は新宿高島屋をはじめ百貨店に4つの直営店があるほか、コスメキッチンなど全国のセレクトショップで取り扱いのある人気ブランドに。
2021年05月24日いいランジェリーを買ったら、とっておきの日に身につける――そう考えてしまうのは、ランジェリー=特別なときに、特別な誰かに見せるもの、身につけていい気分になるもの(気分が上がるもの)、という思い込みがあるからかもしれません。結果、日常(普段)では適当な、ちょっとくたびれたランジェリーを、非日常では一番いいランジェリーをまとうというように、手持ちのランジェリーが「よれよれのレギュラー・ランジェリー」と「お気に入りの補欠・ランジェリー」に分かれていませんか。でも、そもそも非日常つまり特別な日は、生きている間に一体どれくらいの頻度で何度訪れるのでしょうか。なんてことのない日常のほうが、圧倒的に多いはず。特別な日だけに限定して、いいランジェリーを身につけて、気分を上げようとするのはもったいない!お気に入りのランジェリーを数着、できるだけ頻繁に着用して、毎日をいきいき過ごすほうが、人生はきっと楽しくなることでしょう。こう教えてくれるのが『人生を美しく生きる女は、服の下から美しい―フランス女性に学ぶ大人のランジェリーのすべて』(キャスリン・ケンプ - グリフィン著/ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)です。どんなときでも満ち足りて過ごすため、感覚を心地よく刺激するために、ランジェリーを「ワードローブ」と見立てて楽しみながら、“粋に着こなす”フランス女性たちのランジェリーにまつわるアイデアが満載です。本書から私たちが今日からでも実践できるランジェリーとの付き合い方を、いくつか選りすぐってご紹介します。1.ランジェリーを身につけて、どう見えるかではなく「どう感じるか」を大事にする自分の体型の中で不満な部分を改善できれば、自分のことをもっと好きになれる、自信を持てるようになる。多くの女性はそう思い込んでいて、ランジェリーをその際の手段として考えがち。でも、補正下着などで体型を改善しなくても、ランジェリーを身につけた自分が「どう感じるか」といった感覚を大事にし、心から気に入ったランジェリーをまとうことで、自分のボディイメージを改善できるのです。そのために重要なのは「(自分にとって)心地よい生地」を基準にランジェリーを選ぶこと。適切な生地で作られたランジェリーは、どんなときでも体を引き立ててくれます。また、窮屈さや不都合さはなく、常に自分の動きにしっくりくるのが特長。シルクは別格ですが、どんな生地にも長所と短所があります。デザインだけではなく、品質表示のタグを見て、試着して、身につけたときに心身がどう感じているかを、自分の感覚に素直になって、確かめてみるのが大事です。2.欠点なんて気にしない。自信のあるパーツを強調したランジェリーを選ぶ体型の欠点は「隠したいもの」「なくしてしまいたいもの」「嫌なもの」だと感じてしまう女性は多いかもしれません。でも、欠点を補正しようと躍起になっていては、魅力的な部分を見過ごしてしまう可能性もあります。欠点にとらわれすぎるのではなく、魅力的な部分を強調することで、自然と欠点がうまくカモフラージュされている――そんなフランス女性たちの心得から学びたいもの。大事なのはバランスです。光と影があるように、自分の体には欠点という影に隠れて見えていない、表に出るべき長所があり、そこを誇らしく思うべき。欠点を影にしてしまえばいいのです。簡単にいうと、魅力的な部分を見せることで、体の気に入らない部分は隠せます。たとえば、バストが小さいと気にしている方は、上品で華奢な首と肩を目立たせるランジェリーを選ぶ、というように。3.自分らしくいられる、ときめきを感じるランジェリーだけを残すランジェリーを収納している引き出しには、自分がときめくランジェリーだけを入れるようにするのがコツ。毎日引き出しを開けるとき、気分が華やぐこと間違いなし。そのために一度、引き出しから全ランジェリーを取り出して、着用して心地よいもの、身につけたいと心から思えるものだけを、シビアに判断して取捨選択するのです。本書では「在庫リスト作成」も勧められています。自分自身を反映したランジェリーか?身につけたときに笑顔になれるランジェリーか?そんな基準でも点検してみます。理想はブラとショーツの組み合わせで、8セット用意しておくこと。万一洗濯をためてしまっても、ランジェリーを身につけられるように。ランジェリーは肌とダイレクトに接している点で、服よりも自分と近い距離にあり、ファッションと同じくらい、おしゃれとして楽しみ、自己表現できるアイテムでもあります。つけていて快適で、心も体も前向きになる――そんな大好きなランジェリーを毎日選んで、自分自身を慈しみながら過ごしていきたいものですね。2017年1月13日公開2019年7月27日更新
2019年07月27日いい靴は女性にとって、気持ちを上げてくれるだけでなく、おしゃれも楽しくなるし、心地よく歩ける……というふうにメリットがいっぱい。元GUCCIカリスマ販売スタッフ・横田真由子が大人女性向けのいい靴をご紹介します。■女性におすすめのいい靴3選セルジオ・ロッシ7〜9センチヒールで美脚見えするのに驚きの安定感まず最初に、カッコいいキャリアウーマンになりたいのなら、「セルジオ・ロッシ」のパンプスがおすすめです。立ち仕事や歩く仕事だと、3~5センチヒールでないと無理だと思いがちですが、この靴は、その概念を変えてくれます。「山にも登れるパンプス」というあだ名があるくらい、履きやすい靴です。ヒールの踵部分、1点に体重が乗る感覚があるので、安定感があります。7~9センチのヒールでも走れるし、階段も楽に上り下りができます。靴が身体の一部のようだと感じられるでしょう。脚が長く、スタイルが良く見えるヒールの高さは、やはり7~9センチです。この高さの靴は、ほど良い緊張感を与えてくれますので、プレゼンテーションで人前に立つ場面などで履くと、自信と存在感が増すのです。サルヴァトーレ・フェラガモ「ヴァラ」エレガンスの代表格自立心のある女性でも、たったひとりのプリンセスとして、誰かから大切に扱われたいという気持ちは必ずどこかに持っている気がします。そんな幸せな淑女になりたいときは、サルヴァトーレ・フェラガモの定番「ヴァラ」を履いてみましょう。1978年の発売以来、100万足以上も売れたと言われるこの究極の王道靴は、コンサバでありながら、キュートなリボンのデザインで、時代が変わっても女性のハートをがっちりつかむアイテムです。フェラガモのリボンのデザインは、大人の女性のかわいらしさを強調するだけでなく、清楚さを醸し出す効果があり、男性受けも良いようです。丸みのあるつま先や、低めのヒールは安心感があり、エレガントです。あまりにも流行の最先端という尖ったアイテムよりも、コンサバティブな部分が残るアイテムの方が、多くの人の支持を得るのです。女性に売れるアイテムは、実は男性のハートもつかんでいるということではないでしょうか。クリスチャン・ルブタン女性としての高揚感に浸れる小悪魔の靴日本人の女性は、仕事に懸命になっているときや、誰かのためにがんばっているとき、「女性らしさ」を置き去りにしてしまいがちだと感じます。日常生活で女性としての高揚感に浸ることは、絶世の美女を除いては、そうあることではありません。けれども、この靴だけは特別です。そう、「クリスチャン・ルブタン」です。靴底が赤いこの靴は、どんな方でも一度は目にしたことがあるはず。他人には見せない足裏が赤く彩られていることは、何だか秘密めいていて、決して本心を見せず男心を翻弄する小悪魔のような靴なのです。この赤い色は、デザイナーが女性のペディキュアからインスパイアされたと言われています。歩いたときに、ちらりと覗く赤色は、後ろ姿を魅力的に見せてくれます。実は他者から見られている姿は、正面よりも後ろ姿が多いのです。マリリン・モンローばりに歩けてしまうこの靴を履くとき、どんな女性にも魔法がかかります。女性として自信が持てないとき、この靴はとっておきの効果を発揮してくれるでしょう。Text/横田 真由子(よこた まゆこ)GUCCI JAPAN(現 株式会社ケリングジャパン)販売スタッフとして有名人やVIP客の担当となり、3年で店長に昇格。顧客獲得数NO.1となる。VIP客の物選びに女性としての優雅な生き方を学び、独自の「大人エレガンス」を実践。2004年研修講師として独立。「行動力が人生を変える」との思いから、英語の「do」と同義のイタリア語「fare」を 屋号に、「オフィスファーレ」設立。キャリアカウンセラーとして女性のキャリア支援を行い満足度、リピート率は97%。著書に『すてきな靴が一歩ふみ出す自信をくれる』、『本当に必要なものはすべて「小さなバッグ」が教えてくれる』(クロスメディア・パブリッシング)がある。本体価格:1380円+税ISBN:978-4295400363発行:株式会社クロスメディア・パブリッシング2017年1月4日公開2019年4月20日更新
2019年04月20日■いつまでも「乾かない肌」でいるためにモデルでありながら「幸せ美人になる方法」という講座で美容講師を務める著者の有村美樹さん。講座は大好評を博し、リピーターも多数。さらに、メイク動画を中心とした自身のインスタグラムは、フォロワー8万人超え。そんな著者が語る、毎日短時間で仕上げることができる「乾かない肌」でいるためのスキンケアとメイク直しのコツをご紹介します。■朝のスキンケアはたっぷりの水分補給を私が理想としているのは、光を放ったようなツヤのある肌。肌の奥が透けて見えるようなみずみずしい肌が女性らしくて美しいと思っています。でも多くの女性を見ていると、残念ながら圧倒的に潤いが足りていない。肌トラブルの多くは肌が乾いていることが原因なのです。(18ページより引用)18歳からモデルとして活躍してきた著者は、どのような経緯で美容講師へとなっていったのでしょうか。それは、自身が体験したストレスによる肌荒れがきっかけでした。仕事への不安やストレスが原因で肌が荒れてしまったとき、カイロプラクティックに通い始めたら、次第に治り始めていったといいます。そして、世の中ではインスタグラムが流行りはじめ、自分がいいと思う化粧品の紹介を投稿していくうちに、読者から肌荒れに関する相談のコメントが増えてきたのだとか。以前に体験した自身の肌荒れのような症状を、多くの人たちが悩んでいることを著者は実感します。やがて、雑誌では伝えきれていない美容のポイントを伝えるための数々の投稿が反響を呼び、今では講師を務めるまでになったといいます。その著者がいうには、朝はまず、日中の乾燥から肌を守ってくれる水分と油分を肌にたっぷり補充することが大事。表面にさっと塗る程度ではなく、たっぷりの量を入れ込むことが重要なのだとか。さらにはその前に、1円玉程度のオイルを塗っておくと、化粧水の肌への浸透が高まるといいます。「乾かない肌」でいるためにも、朝の化粧水タイムをもっと重要視することが、最初にやるべきことであるといえるでしょう。■日中はこまめにバームをオンする現代の生活環境は、どこでもエアコンは効いていて肌の水分はどんどん奪われていきます。乾燥が進むと目周りなど皮膚の薄い所にチリメンジワのようなシワの「もと」ができ、放っておくと折りジワのように深く刻まれてしまうことに。アイロン前に霧吹きをして伸ばすように、こまめに保湿してシワのもとが顔に定着するのを予防することが大切。使いたいのは保湿パームです。(118ページより引用)冬の暖房だけではなく、1日中冷房が効いた夏のオフィスなどは、肌が乾燥しやすいものです。笑ったときの目元のチリメンジワは、やはり気になります。そんなときに著者がおすすめするのは保湿バーム。押さえるようになじませれば、メイクの上からでも使えて乾燥から肌を守りつつ、潤いをチャージしてくれるといいます。顔にはもちろん、リップやハンドクリーム代わりにも使えるというのだから、万能ですね。理想は3時間おきくらいに保湿すること。ドライアイに目薬をさすような感覚で肌に保湿すると、夜まで潤いを保てるといいます。「乾かない」肌でいるためには、口から摂る水分補給も重要なのだとか。著者は、毎日1.5リットルの水を目安に飲んでいるといいます。コーヒーやお茶ではなく、あくまで水を。また、一気飲みではなく、口を潤すような感覚でこまめに飲むことが大切なようです。身体というものは肌だけではなく、自分で思っているよりも繊細で乾きやすいのかもしれません。1日の中でこまめに潤いを補ってあげたいものですね。■夜のスキンケアは今日のリセットと明日の仕込みを夜のお手入れは、日中浴びた紫外線や大気汚染などの汚れをオフし、疲れた肌をいたわってあげるための時間です。1日外にいた肌には、メイクだけではなく目には見えない花粉や黄砂、チリやほこりなどさまざまなものが付着しています。それらが蓄積することでトラブルの原因になったり赤みを引き起こしたりするので、そのすべてをキレイにオフすることが基本。(128ページより引用)夜のスキンケアは、しっかり汚れを落として、朝まで「乾かない肌」をつくる。そんな今日のリセットをしつつ、明日の仕込みをするふたつの役割があると著者は言います。クレンジングで大事なのは、肌への摩擦を最小限にして、スピーディーに汚れをからめとることなのだとか。そのためにも、クレンジングの量は手のひらになみなみとたっぷりの量をとって、肌表面が引っ張られないくらいに使ってよいそう。夜も朝と同じように、洗顔後の肌にオイルをなじませてマッサージをすると、顔のコリやむくみをとることができて、その後の美容成分がしっかり浸透するのだとか。乾燥が気になる夜は、とろみ化粧水を選択して、じっくりゆっくり肌に水分を入れ込んで。1日中乾燥する室内にいたような日や、肌が疲れている日は、化粧水、美容液のあとに乳液をたっぷりなじませる。その後、寝るまでに時間がある場合は、寝る直前にたっぷりとクリームを塗るのだとか。時間帯にあわせて、そしてその日の肌の調子にもあわせつつ、私たちが思っているよりもたっぷりめの保湿を心がけてあげることが「乾かない肌」をつくるポイントといえるでしょう。これから冷房で乾燥する季節を迎えます。毎日のこまめなケアを心がけて「乾かない肌」をつくっていきたいものですね。著者 有村美樹さんプロフィールモデル・美容講師。18歳でモデルを始め雑誌『JJ』『AneCan』などで活躍。現在は美容雑誌『美的』の専属モデル。2016年から講師をつとめるNHK文化センターの講座「幸せ美人になる方法」は大好評でリピーターも多数、現在も全国で開催中。わかりやすいメイク動画が多数投稿されているインスタグラムはフォロワー8万人超え。
2018年06月09日■春の憂鬱気づけば3月。最高気温はあまり変わらないのに、昨日までの服装がどこか野暮ったく見えるのは、明るい陽射しのせいでしょうか。いつまでもぬくぬくと重いコートにくるまっていないで、新しい季節を迎える準備をしなければ……。■パステルカラーが落ち着く春でも、なんとなく億劫。というわけで、気分転換で久しぶりに海を見に出かけました。青が冴えわたる真冬の海に比べると、春先は海の色も少し白を落としたような優しい色合いです。3月は、空も花も街の緑も空気さえも色味が柔らかくなります。すべてがパステルカラー。本格的な春を迎えるまえのメローでアンニュイな気分のときは、そういう色合いのほうがむしろ落ち着きます。たまたま立ち寄った海のそばのカフェで素敵な本を見つけました。■『山本容子のジャズ絵本 Jazzing』山本容子と言えばだれもが知っている女流銅版画家。ちなみに、わたしは、吉本ばななを愛読していた若かりし頃、山本周五郎賞受賞作『TSUGUMI』の表紙でその名を初めて知りました。透明感のあるストーリーに彩り豊かな表紙画。とても印象に残っています。たしかに、山本容子の作品は、どれも構図が独特でカラフルなのに、落ち着いた色使いが印象的、洗練されていながら遊び心も感じさせ、美しくも茶目っ気のあるご本人の佇まいと重なります。『山本容子のジャズ絵本』はまさにタイトルに偽りなし。山本容子本人が、20世紀に生まれたさまざまなジャンルの曲を絵と言葉で紹介しています。「雨に唄えば」「ニューヨーク・ニューヨ―ク」「モナ・リザ」「星に願いを」などなど、名曲揃いの全24曲。しかも、人気銅版画家がそれぞれの曲をイメージして描いた絵が1冊にまとめられているのですから、それだけでもかなり贅沢。■観てよし音楽という時間の流れのあるものを、彼女ならではのイマジネーションで、1枚の紙のなかに見事に描き切っていて、作品集としても見応えじゅうぶん。歌詞や音符まで絵の小道具にしてしまうところがなんとも洒落ています。彼女が表現している曲の世界観は、自分がその曲に対して漠然と思い描いていたイメージとは違っていたり、でも、どこか重なっていたり。どの絵にも大胆さと繊細さ、哀愁と洒落っ気、それになんとも言えない温かみがあります。そして、もちろん、色使いの美しさ。不思議な心地よさを感じます。これぞまさしくパステルカラー・マジック。■読んでよし絵に添えられている文章も、いちいち気が利いています。長すぎず、短すぎず。曲にまつわる豆知識やエピソードに触れながら、作家本人の人生観をすこしばかり織り交ぜて……。でも、スパイスはほんのちょっぴりだけ。その匙加減が大切。なにごともスパイスの利かせすぎは禁物です。ところで、この本のタイトルには「ジャズ」という言葉が入っています。その理由は本を手にするとわかります。紹介されている全24曲のジャズ・ナンバーを納めたCDがもれなく付いてくるのですから――。■聴いてよしCDのプロデュースを担当したのは作曲家の谷川賢作。この本のためだけのオリジナル版とあって、曲ごとのアレンジが絵の世界観にぴたりとはまっています。山本容子本人いわく、「CDを流しながら、目で絵を追いかけると、絵がメロディに乗って動くように見えてくる」……まさしく。本を購入後、家ではずっとこのCDを流し、時間を見つけては本を眺めています。目覚めに優しく、就寝前には心を落ち着けてくれる。春先の憂鬱な心を、パステルカラーのスカーフのようにそっと包んでくれる逸品。■持ってよし、贈ってよしCD付きで2800円(税別)という価格もとても優しい。手元に置くのもよし、とっておきの友達へプレゼントするのもよし。配信される音楽をイヤホンで聴くことがあたりまえの今、手に取って目で見て耳で聴いて音楽を楽しむことがとても新鮮に感じられるはずです。
2018年03月04日■「美人な印象」はつくれる積んであるあの本が、私を待っている……。少し早く帰れそうな夜、DRESS世代に、じっくりと読み進めてほしい本をご紹介する連載【積読を崩す夜】。23回目は、『印象美人コーデのつくり方』(著:星玲奈)を取り上げます。Instagramで35万人超のフォロワーを抱える著者。知的な着回しテクを身につけて、「そうありたい自分」を周りに伝え、表現するおしゃれを学びます。■主役アイテムを中心にコーディネートする私のクローゼットはシーズン毎に見直す主役アイテムと、シーズン問わず数年愛用しているベーシックアイテムの2つに分けられます。主役アイテムは、主にトレンドを取り入れたもの。ベーシックアイテムは毎日を支える定番アイテム。最低限の厳選アイテムでコーディネートは無限大。主役アイテム×ベーシックアイテムで3週間分以上コーディネートが作れました。(7ページより引用)人気インスタグラマーとして活躍する著者は、まず主役アイテムを決めてから、全体のコーディネートを決めていく方法を推奨しています。主役アイテムとは、コーディネートの軸となるアイテムのことで、たとえば、朝起きたときに「この服が着たいな」と、ぱっと思いつくような服が主役アイテムであるといいます。シンプルになりすぎず、「華やかだね」と周りから言ってもらえるスタイルづくりは、主役アイテムを何にするかで大きく変わってくるようです。スカートは、丈の長さなどトレンドに左右されやすいため、定期的に見直しが必要だそう。柄は、柄部分と地の色が同系色だったりと、控えめで無地の延長線で着られるものがおすすめ。カラーは、甘口にも辛口にも、どちらにも着られる色味がよいと著者はいいます。■着回し度無限大なベーシックアイテムは?季節を問わず1年中、何度も登場する毎日を支えるワードローブ。とっても使えるので、色違いでそろえているものもあります。トレンド感の強い主役アイテムもベーシックアイテムと合せるだけで安定感が生まれます。30代になり、似合う服が決まってきた今、辿り着いたベーシックアイテムをご紹介します。(20ページより引用)うって変わって、主役アイテムにあわせるベーシックアイテムは、毎日を支えるワードローブの軸になると著者はいいます。1年中、1週間……。何度も登場して、何にでも似合う万能服こそがベーシックアイテムであるとか。そのベーシックアイテムの条件とは……。・1年中着られる素材であること・コーディネートが3つパッと思い浮かぶこと・色は白、黒、グレー、インディゴ、迷ったら白・トップスはパンツにもスカートにも合うこと・パンツはヒールにもぺたんこにも合うことコットンやデニム、とろみ素材などが、1年中着られる素材です。トップスは、裾がインにもアウトにもできると着方を調節しやすく、パンツにもスカートにも合います。ヒールでもぺたんこでも合うパンツは、足首の見えるアンクル丈がおすすめだそう。毎日のコーディネートを支えるベーシックアイテムは、好きな主役服を引き立ててくれる、縁の下の力持ちといえるでしょう。■白から始める、失敗しない色使い私のスタイルに欠かせない色の白。季節を問わず1年中身につける色です。その理由は清潔感があって明るく見える。合わせ方によって、どんな場でも相応しいスタイリングになれるから。「服が派手で落ち着かない」のは嫌なので、そうならないためにも、どこかに白を取り入れることが多いです(中略)何を着るか迷った日には、白を着るように。印象美人には欠かせない色だと思っています。(85ページより引用)白、というと膨張して見えたり汚れやすかったりと、人によっては避けてしまう色かもしれません。しかし、著者は、白い色が持つ清潔感や明るさの秀逸さを取り上げ、日々のスタイルに欠かせない色は、白であるとまで断言しているほどです。かといって、「服が派手で落ち着かない」のは、あまり好きではないのだとか。逆に、白をどこかに入れることで、季節を問わず、どんな場にもふさわしいスタイリングに仕上がるといいます。白を着るときに気をつけることは、白をベースにして色を足していくこと。さらに、トップスにはベーシックな色を持ってくると、落ち着いた印象にコントロールできるようです。これからの季節、暖かくなって春に向かうときに着るとしたら、やっぱり黒よりも白。新生活に向けて、与える第一印象を自分でコントロール。明るいイメージで、スタートしたいものです。『印象美人コーデのつくり方』書籍情報著者星玲奈さんプロフィール二児のママ。程よくトレンドを取り入れたきれいめスタイルに定評があり、さまざまなファッション雑誌で活躍。ファッションコーデをアップしているInstagramも大人気でフォロワー数は35万人超。
2018年03月02日■正しいヘアケアで、美髪を目指そう積んであるあの本が、私を待っている……。少し早く帰れそうな夜、DRESS世代に、じっくりと読み進めてほしい本をご紹介する連載【積読を崩す夜】。16回目は、『なぜか美人に見える人は髪が違う』(著:津村佳奈)を取り上げます。自分の髪質に悩んでいる女性は多いようです。年齢によって髪も変化し、ヘアケアに関する疑問を持ちつつも、何が正解なのかわからないものです。生まれ持った自分の髪質を知り、正しいホームケアを教えてくれる一冊。人気美容院のトップスタイリストである著者が、そのコツを教えてくれます。■頭のコリをほぐせば「シワ」「たるみ」が消えるまた、頬のたるみや目尻のシワなど、年齢を重ねた女性に共通する加齢のサインも、頭皮のケアをすることで改善することがあります。というのも、顔のたるみ、シワ、くすみなどは、頭皮の筋肉の衰えが一因となっているからです。そもそも、頭皮と顔は一枚皮でつながっています。そして、頭はてっぺんにあるため、全身で一番重力の影響を受けやすい部分。(043ページより引用)頭皮の下には薄い筋肉があり、前と後ろの筋肉でバランスをとっていると著者はいいます。この部分の血流が滞ってしまうと、頭皮が凝り固まって筋肉の弾力が失われてしまう。結果、顔における目の左右の違いやクマ、たるみに影響してくるわけです。パソコンで長時間デスクワークをする人、スマホをよく使う人は、たいてい頭がカチコチであるといいます。ストレスは、頭皮にも大きく影響しているのですね。めぐりが悪くなった頭皮は、肌の老化だけではなく、育毛にも影響するのだとしたら一大事です。頭皮が凝りやすい場所は、頭の上部のハチまわりと、こめかみ部分だとか。頭皮のコリを防ぐには、やはり毎日のブラッシングとマッサージ。ブラッシングは、下からつむじに向かって、「下から上」を意識して行うと良い、と著者。ブラシで血行をよくしたら、シャンプー中に指マッサージを。全体を洗い終えたら、手をグーにして指の第二関節で約1分ほどグリグリと、つむじに向かって下から上へ押し流して。そして、髪を乾かすときに自分の頭皮の状態をチェック。毎日のケアの中にうまく取り入れて、頭のコリを常に解消したいものです。■シャンプーは二度づけしない実は、家族全員で同じシャンプーを使うのは考えもの。男性と女性では、頭皮の油分が違います。男性が女性用のものを使っていたら、油分が多すぎることがありますし、逆に女性が男性用のものを使っていたら、脂を落としすぎてフケや乾燥の原因になることも。中略頭皮が脂っぽい日には、一度のシャンプーでは泡立ちが悪い日もあると思います。でも、そこでシャンプーをもう一度足して泡を立てようとするのはNGです。(054~055ページより引用)シャンプーの男性用・女性用の使い分けは言うまでもありませんが、女性は季節によって調子も変わりますし、毎月の生理前には脂っぽくなることもあるとか。体調によって、頭皮の状態が変化するということは驚きです。そして、いつもの分量で泡立ちが悪いときに、つい二度づけしてしまうということはよくあることです。泡立ちが足りないときは、一度洗い流して、もう一度洗い直すことを著者は推奨しています。また、洗い流し方にもコツがあります。シャワーで上から下へと流すように洗っていると、耳の後ろをおろそかにしがちです。この部分は毛流れから、特に髪の毛がたまりやすい部分でもあるので、シャワーヘッドを持って耳の後ろから襟足にかけて、直接水流をあてながら洗うとよいのだとか。どんなに疲れて帰っても、体調や季節にあったシャンプーを使って、適切な洗い方を実践したいものですね。■素髪で外に出ないホームケアをきちんとしたら、外出のときのケアも忘れずに。子どもの頃は朝起きたまま、髪には特に何もつけずに出かけていたと思いますが、大人は素髪で外に出るのはやめましょう。中略紫外線や乾燥した空気で髪は傷みます。傷んだ髪は広がりやすくなり、スタイリングをくずしてしまいます。(073ページより引用)ホームケアだけではなく、外出時のケアも忘れずにしてほしいと著者はいいます。日差しの厳しい季節には、頭皮や髪の紫外線予防スプレーをすると、髪の傷みを防ぐとともに、頭皮を守ることもできて、一石二鳥だとか。また、頭皮の匂いはちょっとした動きをしたときに意外と気になるものですが、香りつきスプレーを選べば、1日中良い香りをキープできます。また、スタイリング剤は、「パーの手」でつけることを著者は推奨しています。シアバターなどの油分をつける際には、べたっとしないように手のひらにとってよく伸ばし、手の平をパーとして。その状態で髪の内側に手を入れ、空気を入れ込むように手を動かしながら髪全体になじませます。ワックスの「もみ込み」も、実はあまりよくないそう。握るようにして髪にワックスをつけると、最初に握った部分がべったりと重くなってしまうのです。まとめ髪でもダウンスタイルでも、スタイリング剤をつけることから始めてみたいものです。『なぜか美人に見える人は髪が違う』書籍情報なぜか美人に見える人は髪が違う著者:津村佳奈発行:大和書房単行本 : 200ページ発売日:2017/11/24価格:1400円+税[公式サイト]著者津村佳奈さんプロフィールUn ami表参道店のトップスタイリスト。幅広いテクニックの引き出しで、常にお客様に向けたオンリーワンのヘアスタイルを提案。ビューティー感度の高い女性たちから絶大な支持をされている。カット、カラーやヘアアレンジにくわえてメイクも得意とするため、ファッション誌の撮影依頼も絶えない。美容家、神崎恵氏からもたびたび指名され、雑誌や書籍のヘアの多くを担当している。周囲を明るくする話しやすい人柄と確かな技術で、多岐のジャンルに渡って幅広く活躍中。
2018年01月11日相撲好き女子、スー女が増え、相撲ブーム再来と言われていた昨今。しかし、昨秋から角界で不祥事が相次ぎ、明るいニュースが出てこなくなったのが実情……。とはいえ、1月14日からは一月場所が始まります。入手困難なチケットを手に入れて、両国国技館へ大相撲観戦に行く予定の方もいるのでは?そんな方や相撲に興味がある方向けに、相撲×グルメを楽しめる新刊『相撲めし-おすもうさんは食道楽-』(著:琴剣淳弥)をご紹介します。お相撲さんがどんなものを食べて大きな体を作ってきたか、所属する部屋で稽古後に何を食べているのか、お気に入りの店は、ゲン担ぎの食べものはetc.、なかなか知ることができない“力士グルメ”が満載!食通の親方やお相撲さん39人(!)の声でできた本書の中身を少しだけ覗いてみましょう。■お相撲さんにとって食事も仕事のひとつ。だからグルメになっていくタイトルにある通り、お相撲さんにはグルメな人が多いといいます。というもの、食べることも「仕事の一環」であり、地方巡業で各地を回っているから。巡業は、奇数月に両国国技館やエディオンアリーナ大阪、愛知県体育館、福岡国際センターなど、決まった場所で開催される本場所の合間に、さまざまな地方で開催されるもの。お相撲さんという職業には、旅人的な側面もあるのです。巡業の合間に食事をとったり、後援会の方との食事会に参加したりするなかで、美味しいお店情報を仕入れていきます。本書でも、人気力士がイチオシする地方グルメがいくつか取り上げられています。たとえば、嘉風関(尾車部屋)が名古屋場所(7月)中に必ず行くのが、瀬戸市にある鰻の名店「田代」。「田代鰻」で検索してみてください。決して高級感があるとはいえない、昔ながらの味わい深い印象の店構えながら、全国の鰻の店ランキングで2位になるほどの人気店なんです。嘉風関はうなぎが何枚も重なった丼を大盛りでオーダーするといいます。お相撲さんらしい食べっぷりがカッコいい!食欲を刺激してくる写真と共に、おすすめの理由が嘉風関のコメントとして紹介されています。■亀戸にあるおいしすぎる純レバ丼とは?東京近郊に住む人であれば、気軽に行ける都内の店も複数紹介されています。たとえば、亀戸にある中華料理店「菜苑」。イケメン力士として女性人気も高い琴恵光関(佐渡ヶ嶽部屋)がおすすめしています。菜苑は佐渡ヶ嶽部屋の力士が代々通う店だとか。そこで琴恵光関が食すのが純レバ丼。甘辛く炒めたレバーとごはんの組み合わせがたまらないそう。想像しただけで美味しい気分になりますね。さらに、持ち帰り用の中華丼についても言及されています。翌朝、冷たいままの中華丼を、ごはんに出汁がしっかり染み込んだ、極旨な状態で食べるのがイチオシのよう。チンしなくていいの!?と驚きますが、あえて冷たいままでいただくのが、美味しさの秘訣なんです。そんな風にグルメにまつわる発見が、随所に散りばめられています。両国国技館や地方の会場へ行った際の店選びはもちろん、お相撲さん御用達の店巡りをしたり、「ゲン担ぎメシ」を食べたいときに参考にしたり、好きなお相撲さんのグルメ情報にふれたり……と、いろいろな楽しみ方ができる1冊です。『相撲めし-おすもうさんは食道楽-』書籍情報出典:相撲めし-おすもうさんは食道楽-著者:琴剣淳弥発行:扶桑社単行本:244ページ発売日:2018/1/12価格:1400円+税[公式サイト]著者琴剣淳弥さんプロフィール1960年7月6日、福岡県田川郡生まれ、本名・宮田登。社団法人日本漫画家協会会員。15歳で佐渡ヶ嶽部屋に入門し、1976年春場所に初土俵を踏む。子どもの頃から漫画家になりたい夢と同時並行で、現役中からスポーツ新聞に漫画連載を持つ。1986年秋場所で引退。其の後、ちゃんこ料理やで修業し、自身も独立してちゃんこ屋をオープンさせた(現在は閉店)。 現在は、相撲漫画家として『相撲』(ベースボール・マガジン社)に連載をもつほか、テレビやラジオ番組出演など多方面で活躍。日本相撲協会の公認グッズなども手掛ける。著書に、『秘伝!大相撲ちゃんこレシピ-家庭でカンタンにできる、相撲部屋直伝の味』(ベースボール・マガジン社)、『大相撲あるある』(共著。新紀元社)など。
2018年01月11日あけましておめでとうございます。新しい年を迎え、皆さまいかがお過ごしでしょうか。お正月飾りや初詣、おせち料理に年賀状。新年は、1年のうちで最も「和」を感じる季節。そんな時期におすすめの本をご紹介します。■挿絵も美しい百人一首の本『千年後の百人一首』。タイトル通り、内容は百人一首です。ただ、「千年後の」とあるように、清川あさみさんが、布や糸・ビーズで描きおろした情景(挿絵)と、最果タヒさんの現代語訳で表現されているため、学生時代に学んだ百人一首とはひと味もふた味も違います。まず、清川あさみさんの挿絵が、本当に美しいのです。ひとつの歌につき、挿絵もひとつなので、当然、挿絵は百あります。歌の内容によって、挿絵の趣もそれぞれ異なり、月や水のような自然を感じるものから、季節を感じるもの、詠み人の切なさや寂しさ、恋心や情念のような感情を感じさせるものなどさまざまで、文章を読まずとも挿絵だけでも引き込まれるほどです。ページをぱらぱらとめくって、この百の挿絵を眺めるだけでも、美しいものに触れる時間を堪能でき、ある意味、芸術鑑賞といってもいいかもしれません。■不倫の歌でさえも情緒のある表現もちろん、最果タヒさんの現代語訳も素晴らしく、たとえ、恋心なんてとうの昔にどこかに置いてきてしまった、という人でも、グッとくるものがあるのではないかと思います。例えば、「なにはがた短き葦のふしの間も逢はでこの世を過ぐしてよとや」この、「なにわがた~」と読まれた瞬間に、札を取りにいこうと必死になってしまう歌が、かぼそく生えゆく葦の節と節の、このわずかな隙間ほどの時間も、あなたは私にくれないのだと、わかってしまう。わかってしまった。(19ページより引用)と、切なさを感じさせる訳になっているのです。単純に古文の授業のように直訳したのではなく、意訳であるために、「こういう気持ち、わかる」とか、「私も昔、こんなこと思っていたかも」と、日々の忙しさで忘れていた、さまざまな感情が湧いてくるので、さっと読み進めるのではなく、ひとつずつ、じっくりかみしめながら読みたくなります。また、現代語訳を読んで思いを馳せるだけでなく、巻末の解説を読むのも面白いです。詠まれている単語がどういう意味なのかはもちろん、どういう状況で詠んだのかや、詠み手と歌を送られた相手、また他の詠み手との関係性、そのほかの豆知識も興味深いです。「わびぬれば今はたおなじ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ」この歌は、元良親王が、皇后・京極御息所との密通が噂されたときに詠んだ歌で、「すべてが知られ、糾弾されても、身を滅ぼしてもあなたに会いたい」という内容なのですが、今でいうと、不倫発覚後に発表されたコメントということになるのかもしれないが、近頃の政治家や有名人とは雲泥の差である。(解説20から引用)と、書かれていて、クスッと笑えつつも、千年前は不倫すらもこんなに美しく、情緒のある表現をしていたんだな、と、日本語の奥深さを感じずにはいられません。■新年に、千年前の「和」に触れてみては?この本のもうひとつ面白い点は、「トノ」「ヒメ」「ボウズ」と、挿絵の横に詠み人が誰かが書かれていること。切なくて胸が締めつけられるような歌を「トノ」が読んでいたり、恨みますと言わんばかりのドロドロとした歌を「ヒメ」が読んでいたりして、これを見ていると、千年前も男性はロマンチストで、女性は怒らせると怖かったりしたのかな、と、長い時を経ても、人の思いというのは変わらないのだなと感じさせられます。意識的であろうとなかろうと、気分が「和」に向きやすい新年のこのタイミングで、学生のとき以来の百人一首に触れてみては。昔は勉強に必死で感じ取れなかった、歌に込められた思いも、今なら新鮮な気持ちで感じ取ることができるかもしれませんよ。
2018年01月02日■姫路~文化服装学院~パリへ高田賢三は、1939年姫路生まれ。神戸市外国語大学に進学したものの、通学途上に車内広告で文化服装学院が男子も募集していることを発見、両親の反対をおして上京。1958年に入学し、60年新人デザイナーの登竜門「装苑賞」を受賞。銀座三愛勤務などを経て、65年に渡仏。恩師の小池千枝の助言で船旅でフランスへ行き、多様な文化や民族衣装を見聞し、これらの体験が賢三の華やかな「フォークロアルック」の原点となりました。パリに初出店した「ジャングル・ジャップ」。店内にはアンリ・ルソーの『ジャングルの夢』をモチーフにしたジャングルの絵を自らペンキで描いた。1970年にパリで初出店(「ジャングルジャップ」)し、一気に時代の寵児となるが、ブランド名はアメリカで日系人コミュニティの猛抗議を受けるなど物議も醸したことも。後輩の山本耀司によれば「賢三さんはパリのメディアやバイヤーに見いだされ、パリで生まれたデザイナー」。その言葉のとおり、一気にプレタポルテの時代のトップデザイナーとなりました。本人曰く、「70年代は、それほどお金はなかったが、次のシーズンにはどんな作品を作ろうかといつも心をワクワクはずませながら服をデザインしていた時代」対照的に「80年代は巨額のお金を稼げるようになったが、自分の好きな服を作ってばかりもいられない。純粋な夢が徐々に変質していった時代」だったといいます。麻の葉の和柄を使ったワンビースが『ELLE』の表紙を飾った。1970年。『ELLE』フランス版の表紙を飾った賢三のジャケット&パンツjacket and pants: Kenzo, blouse: Eta, belt: Jose Cotel Elle France - May 8 1971 Photographed by Peter Knapp■90年に訪れた悲劇波乱もありつつ、順調にビジネスが拡大の一途をたどっていきましたが、1990年に転機が訪れました。共同経営者フランソワ・ボーフュメとの確執が顕在化、仕事の上でも私生活のパートナーでもあったグザビエが病死、翌91年には賢三の右腕だったパタンナーの近藤淳子が脳梗塞で倒れてしまいます。それまで助言者として支えてくれた二人を失って、フランソワを解任するために、LVMHグループへの株式売却を決意することに……。ところが、紳士協定であったフランソワ解任は実行されず、精神的に追い込まれた賢三が辞表を出すことになります。1993年の6月のことでした。買収劇から6年後、1999年10月7日。30周年60歳を区切りとして、辞任を決意して、最後のショーを行います。30年の集大成として、お世話になった方々全員にモデルとして出演してもらい、300点もの作品を2時間かけて披露する。山口小夜子ら200人以上の友人がモデルとして友情出演。華、雪、ジャングルと場面が変わり、賢三の代名詞となった本物の象も登場させる壮大なスペクタクルになりました。アテネ五輪では日本代表のユニフォームをデザイン。2年間は契約で仕事をせず、充電に専念。2004年にはファーストリテイリングが手掛けるというアテネ五輪の日本代表ユニフォームをデザイン。一方、2004年に立ち上げた「五感工房」は軌道に乗らず、資金繰りが悪化して、2007年に会社は破たん。債務整理もあり、2009年にはグザビエと一緒に作ったバスチーユの邸宅などの財産を手放すことにした。2015年9月にはパリ50周年を記念し、500人を招いてパーティーを開く。はかま姿で本物の象二頭を従えて登場し、300羽の蝶を夜空に羽ばたかせた。何歳になっても、人を驚かすことが大好きで、夢を追い続ける高田賢三……。90年代に7年がかりで建てたバスチーユの邸宅内の日本庭園。■山本耀司が語る高田賢三書籍版では日本経済新聞の連載に加筆され、巻末にはコシノジュンコとの対談、山本耀司のインタビューが追加されました。山本耀司が語る高田賢三を一部紹介します。「まったく偉ぶったところがなく、謙虚で純粋だったということ。とってもいい人なんですよ。自分の弱点もサラッと人に見せることができる」「僕は賢三さんの同業者であり、しかも後輩なんですよ。それなのに、パリですでに大成功している先輩に対して、『この人のために自分ができることはなんだろう』となぜか考えてしまう」「これまで色々なフランス人と話してきましたが、みんな賢三さんのことが大好きなんです。あの酔っ払い方が面白いのよ、とか、明るくて、ちゃめっけがあってかわいいのとか」■『夢の回想録高田賢三自伝』著者:高田賢三刊行:日本経済新聞社刊価格:1900円+税四六判/上製278ページ*日本経済新聞の連載に加えて、コシノ・ジュンコとの対談、山本耀司が著者について語るインタビュー、パリと姫路とふたつの故郷を歩くルポも収録。目次第1部夢の回想録I.生まれ故郷/姫路空襲/芽生え/ガリ勉/上京/文化服装学院/花の九期生/就職/パリへII船旅/自炊生活/売り込み/スカウト/母への手紙/初出店/無欲の勝利/トラブル/遊び心/動物とテント/「木綿の詩人」/サントロペとロンドンIII恩人/スタッフ/三宅君と小夜子さん/銀幕スター/ニューヨーク/絡み合う糸/ルルIV解任/映画監督/ギャンブルと占い/倍々ゲーム/時代の波/里帰り/グザビエ/夢の城/重なる悲劇V買収劇/紳士協定/ラストショー/奇妙な誤報/アテネ五輪/自己破産/新たな出会い/冒険心高田賢三が選ぶ自作デザイン10選第2部Iファッションデザイナーという夢対談コシノジュンコx高田賢三後輩・山本耀司が語る高田賢三IIケンゾーと賢三、ふたつの故郷ケンゾーの故郷・パリを歩く賢三の故郷・姫路を歩く
2017年12月21日■すべてのメイクには理由がある積んであるあの本が、私を待っている……。少し早く帰れそうな夜、DRESS世代に、じっくりと読み進めてほしい本をご紹介する連載【積読を崩す夜】。13回目は、『美しくなる判断がどんな時もできる』(著:長井 かおり)を取り上げます。ヘアメイクアップアーティストとして、雑誌・広告・映像などの第一線で、モデルや女優のヘアメイクを手がけてきた著者。「その人の個性を生かすメイク」を得意とし、TV、雑誌などに多数出演しています。どんなシーンでも、どんな状況でも、メイクのキモさえわかっていれば、自分が何をすればよいか判断できるようになる――著者が教えるコツをいくつかご紹介します。■冬はスキンケアコスメを2倍の量に11月になると、「スキンケアを変えたほうがいい?」とみなさん急に不安になるようです。季節が変わって、乾燥で突然肌がピリピリしだすと心配ですよね。そんなときは、何か特別な一品をプラスしたり、冬仕様に何かを買い替えなくても大丈夫です。いつものスキンケアで十分なのです。中略ただ、「今日は肌が乾いている」と感じる日は、スキンケアコスメの量を全体的に増やしてみてください。(24ページより引用)著者は、メイク前のスキンケアの大切さについて語っています。使うのは、ふたつの化粧水(ミストローション、化粧水)、保湿美容液、乳液orクリーム(夜のみ)、UV乳液(朝のみ)の、全5品でよいのだといいます。たしかにスキンケアは、ベースメイクを美しく仕上げるために必要な「ツヤ肌」を手に入れるために重要なものです。最初の化粧水は、ミスト状のものを洗顔後すぐに吹きかけて。少しでも乾燥するのを防ぐと同時に、肌を柔らかくするので、次の化粧水を浸透しやすくするブースターの役割も果たしてくれます。そして、もうひとつの化粧水は、保湿のしっかりできるものを選び、表示量の1.5~2倍ほどを手を洗うような感じで、手のひらいっぱいに出して細部まできちんと塗っていきます。そして、冬に向かう季節の変わり目などに乾燥でゆらぐと感じたときには、これまでの量では不足しているととらえて、2倍の量にするとよいと著者は言います。特別なものを加えるのではなく、普段のスキンケアを少し見直すだけでも、肌のうるおいは十分にキープできそうです。■目が中心に寄った顔にする顔のパーツが中心に寄っていることは、いわゆる正統派美人の条件と言われます。もし、自分は目と目の間が離れている……と感じるなら、アイラインを目頭ギリギリから入れてみてください。目と目が近づいて見えます(中略)まつ毛はあげればあげるほど目が大きくなるので、アイラッシュカーラーで根元から毛先まで全力であげるのが鉄則ですが、たまに「ビックリした顔になる」という人がいます(中略)まつ毛の半分までは全力であげてください。その後は緩やかなカーブに変更しましょう。(90・95ページより引用)自分の目と目の間が離れているのかわからないという人は、目頭からアイラインを入れてみるとよいようです。それで、「ちょっとケバい」「キツイ顔になった」と思ったら、もともとが求心的な顔だといえるでしょう。アイラインは、目頭から入れると、目が中央に寄ってきて求心的になります。目が寄ることで、彫りが深くなり、鼻筋が通って見えて立体的な顔立ちになります。ちなみに、目を大きく見せるには、マスカラをつけるよりも、どれだけまつ毛を上げるかにあると著者はいいます。マスカラをどれだけ重ねても、逆にぼてっとして目を小さく見せてしまうこともあるようです。まつ毛の根元からアイラッシュカーラーで挟み、最後まで上げきることがポイント。自分のまつ毛の自然なニュアンスを活かすメイクこそが、美人への一歩といえそうです。■夕方のぺったり髪は「指1本」で直す夕方になると髪がペタッとしてきて、どうやっても直らない……。髪が寝ていると、急に老けてみえてしまいますよね。そんなとき、実は指1本!数秒で解消できます、ぜひ覚えてください。ポイントは、新しい分け目をつけることです(中略)どんな髪型でも、毛束さえつまみ出せば可愛く見えます。雨が降ったとき、髪の毛がぺったりしたとき、作業で髪が邪魔になったとき、さっとゴム1本で結び、「つまみ出し」さえすれば立派なおしゃれです。(195・199ページより引用)夕方になると、前髪がぺたっとしてしまうことがあります。解消のポイントは、新しい分け目を指1本でつくることにあると著者はいいます。今の分け目の1センチぐらい隣のおでこ部分に小指を当てて、分け目と平行に小指を全部入れ込んで滑らせ、よいしょっと今の分け目を隠すように、髪をひとすくいするとよいようです。たったこれだけでトップがふわっと変化します。応用編としては、髪をまとめていて、雨などで髪がぺたっとしたときには、細く細くつまみ出しをすることで、抜け感ができるといいます。親指と人差し指の爪を使う感覚ですると、上手くいくのだとか。ちょっとしたテクニックを知って、実践することで、美しくなる判断力は磨かれていきます。『美しくなる判断がどんな時もできる』書籍情報美しくなる判断がどんな時もできる著者:長井 かおり 発行:ダイヤモンド社単行本 : 236ページ発売日:2017/8/24価格:1500円+税[公式サイト]著者長井かおりさんプロフィールヘアメイクアップアーティスト化粧品メーカーの販売員としてキャリアをスタートさせ、2005年にヘアメイクアップアーティストへ転身。雑誌・広告・映像などの第一線で、モデルや女優のヘアメイクを手がけている。「その人の個性を生かすメイク」を得意とし、また、多くのウェディングヘアメイクの現場で培った技術から、「崩れないメイク」に定評がある。TV、雑誌やウェブ媒体のメイク指南ぺージでの出演多数。自らが出演してテクニックをレクチャーするメイク動画や、コスメをブランドの偏りなく、プチプラからハイブランドまで幅広く紹介することなども高い支持を受けている。
2017年12月15日フィリピンと聞くと何を思い浮かべるでしょうか。セブ島のビーチ?混沌としたマニラの市街?では、フィリピンの小説って読んだことありますか?フィリピンを舞台にした小説は日本語や翻訳で何点かあるものの、手に取ったことがない方がほとんどではないでしょうか。そんな中、フィリピンで生まれたミステリー小説を日本で出版しようとする企画が立ち上がりました。作品タイトルは『Smaller and Smaller Circles』。■『Smaller and Smaller Circles』あらすじ1997年夏、フィリピン・マニラ。ゴミ山がいくつもそびえるパタヤス地区で顔の皮を剥がれ、内臓を抜き取られた少年の死体が次々に発見される。フィリピン国家警察から捜査への協力を要請された法人類学者のサエンス神父は、残忍な連続殺人鬼を見つけ出すため、かつての教え子で友人でもある心理学者ルセロ神父とともに全力を尽くす。やがて2人は心に深い闇を抱える犯人を導きだすのだが――。本書のオリジナル版は、フィリピン国内で異例の発行部数を記録し、フィリピン国民文学賞など数々の賞を受賞しました。それが世界の優れたクライムミステリーを出版するニューヨークの出版社、Soho Crimeの目に留まり、大幅に加筆されて2015年にアメリカで刊行されると、フィリピン初のクライムフィクションとして多数メディアでも紹介され、英ガーディアン紙が「古典的で良質なシリアル・キラー小説」と絶賛しました。そして今年、本書を日本の読者に届けるために、日本語版の出版を目指すクラウドファンディングプロジェクトがはじまったのです。ここではこの作品のおすすめポイントをご紹介していきます。■本書の出版に関わる女性たちの活躍がすごい!まず注目したいのは、本書の出版に関わる女性たちです。著者のF.H.バタカンはフィリピン大学大学院で修士号取得後、政府の情報機関であるフィリピン・インテリジェンス・コミュニティーで10年近く勤務したのち、放送ジャーナリストとなったという異色の経歴をもちます。諜報員とジャーナリスト両方の目を通してフィリピンの社会に向き合ってきた著者が書いたからこそ、本書はリアリティあふれる作品となったのです。『Smaller and Smaller Circles』の著者、F.H.バタカンまた、『Smaller and Smaller Circles』を発掘してアメリカに紹介したJacaranda Literary Agencyは南アジア初の文芸エージェンシーです。運営するのはインド、シンガポール、そしてフィリピンをそれぞれ拠点とする3名の女性。小説からノンフィクション、児童書に至るまで、アジアを中心とする優れた作品を欧米の出版社に紹介する橋渡し役として活躍し、世界中の出版社から注目されています。南アジア初の文芸エージェンシー、Jacaranda Literary Agencyを運営するインド、シンガポール、フィリピンを拠点とする3名の女性、Andrea、Helen、Jayとトランネットのスタッフ。■日本ではまだ数少ないアジア文学、そして引き込まれるストーリー!アジアの文学作品が日本語に翻訳されることも近年は増えてきているものの、日本の翻訳文学市場のほとんどを占めるのは欧米の作品です。本プロジェクトには「西洋以外でも文学が書かれていること」をより多くの人に知ってもらいたい、そして「欧米の作品ばかり翻訳される流れを変えていきたい」という思いも込められています。またエンターテイメント作品として面白いことはもちろん、フィリピンの社会問題を鋭く描いていることも本書の魅力です。ゴミ拾いをしてその日その日を生き抜く子供たち。腐敗に慣れきってしまっている警察組織。本書のオリジナル版が書かれたのは90年代ですが、フィリピンの状況が今も変わっていないことに著者は怒りをあらわにしています。日々のニュースとは異なるレベルでフィリピンの実情を容赦なくつきつけてくる本書は、ミステリーや海外文学の愛読者に限らず、フィリピンをはじめとするアジア、国際情勢に関心がある人など、幅広い読者に受け入れられること間違いありません。ぜひ、本プロジェクトのサポーターとして、翻訳出版を応援してください。■クラウドファンディングならでは、の特典も!プロジェクトを主催するのは、クラウド・ファンディングを活用して世界中の本の翻訳出版を、という新しい出版の仕組みを提唱するサウザンブックス。2016年の設立後、すでに6作品の翻訳出版プロジェクトを成立させています。そして、今回は出版翻訳を専門とする翻訳会社トランネットとのコラボ企画で、翻訳者はトランネットが主催するオーディションによって選定されるため、文芸作品の翻訳家デビューを目指す人にとっても、貴重なチャンスです(オーディション参加費やトランネット入会費とセットになったプランもあります)。支援の募集期間は2018年2月3日まで。「出版記念イベントご招待」や「ロンドンブックフェアご案内」等のお楽しみプラン(数に限りあり!)や、書籍が一般販売価格よりもお得に購入できるなプランも用意していますので、ぜひご支援をよろしくお願いいたします。■映画『Smaller and Smaller Circles』が12月にフィリピンで公開!先立って10月に開催された釜山国際映画祭でも上映された本作は、映画祭の創設者である故キム・ジソクを敬って新設されたキム・ジソク賞にもノミネートされました(受賞は吉田大八監督の『羊の木』)。残念ながら受賞は逃したものの、本作品が映画界でも高い評価を受けていることが窺えます。
2017年12月13日■寒い冬の朝、着る服にもう迷わない積んであるあの本が、私を待っている……。少し早く帰れそうな夜、DRESS世代に、じっくりと読み進めてほしい本をご紹介する連載【積読を崩す夜】。12回目は、『毎朝、服に迷わない秋/冬 暖かいのにおしゃれになれる』(著:山本あきこ)を取り上げます。スタイリストとして、雑誌やテレビで多くのモデルや女優をスタイリングしてきた著者は、一般人向けにもファッションアドバイスをするパーソナルスタイリングをしています。寒くて何を着たらよいか迷う冬。防寒とおしゃれのバランスについて、トライしてみたくなるファッションのコツが語られています。■ざっくりニットはベーシックカラーを選ぶざっくりニットは、可愛らしいほっこりした感じがあり、しかも下にたくさん着られるので、冬に欠かせないアイテムです。まずは網目の粗いローゲージのものを選びましょう。網み目自体が模様になっているものは、太って見える可能性があります。だから、必ず飾りなどのないシンプルなものにしましょう。(065ページより引用)センスのいいコーディネートにとって必要なものとは、センスではなくまず「アイテム」であると著者はいいます。高いものである必要はなく、あくまでシンプルでベーシック。デザインも何もついていない「普通の服」こそが使えるのだとか。大人になってからのおしゃれは、何をどう組み合わせるか、冬は防寒との兼ね合いが悩みどころです。秋冬おしゃれのいちばん大切なルールは、「寒々しく見えないこと」で、おしゃれの大元は季節感を表すことであると著者はいいます。そのために意識するのは色と素材。そして、秋冬に持っておくと便利なトップスはざっくりニットで、色のいちおしは少し薄めのグレー。女性らしく上品になり、かつ暖かそうに見えるといいます。グレー以外の色としては、白や茶色も著者のおすすめで、丈は腰骨が隠れるぐらいの長さでないと、ぼてっと見えてしまうのだとか。身体のラインに沿う程度のゆるさがベストです。柔らかい色合いのニットは、フェミニンに見える上に、実際とても暖かくて一石二鳥ですね。■ワイドパンツはおしゃれな防寒アイテムもはや定番となったワイドパンツ。大人の余裕を出し、しかも脚も隠して長く見せられるこのアイテムは、なくてはならないものといっても過言ではありません。ワイドパンツは何と言っても中にタイツや靴下を重ねられるのが魅力。ですから秋冬は、腰にタックに入ったものにしましょう。たくさん着てもゆったりして見え、着やすいからです。(093ページより引用)スカートでは寒い、普通のパンツだとシャープになりすぎるといった悩みを解消してくれるワイドパンツ。センタープレスが入っているものを選ぶと脚が長く見えて、きれいめな着こなしができるようです。色は締め色になる黒やチャコールグレー、濃いベージュのような明るいブラウンもおすすめだと著者はいいます。幅は、ワイドすぎないストレートなものをチョイス。あまり広すぎないほうが重心が下がりすぎないので、身長に関係なくもたつかずに着ることができるのだとか。ワイドパンツはチェスターコートとの相性が抜群によさそうです。ウールのような暖かい素材のワイドパンツと合わせて、木枯らしの中を元気に闊歩してみたいものですね。■着太りしないコツは、薄いものを3枚以上重ね着の鉄則は、「たくさん重ねればおしゃれに見える」です。でも、冬の重ね着は失敗すると、着膨れして途端にほっこりした印象になってしまうのも事実。重ね着をしてもシャープでスタイリッシュにするにはどうしたらいいでしょうか。重ね着は、3枚以上重ねるとおしゃれに見えます。そして、ほっこりしないためには、「薄いものを重ねる」が鉄則。寒いかもと思われるかもしれませんが、3枚以上重ねれば、しっかり防寒もできます。(175ページより引用)たとえば、ヒートテックの上にシャツを着て、その上からタートルネックのように薄いものを重ねてみて。ニットの襟ぐりからシャツの襟を出したりすると、首をすっきり見せることができるのだとか。ボトムでいえば、パンツやスカートの中にタイツをはいて、その上に靴下やロングブーツを重ねたり。トップスを重ねた場合はボトムを軽めに、ボトムにボリュームが出たらトップスの重ね着は軽めにすることで、真冬にもすっきり見せることができるようです。タイツは異なるデニール数のを3種類持っておくのがおすすめだとか。透け感のある20~40デニール、やや厚い60デニール、もっと厚い80デニール以上と、寒くなるにつれてタイツのデニール数を上げていくのです。冬にしか楽しめない重ね着をうまく活かして、この時期ならではのおしゃれを楽しみたいものですね。『毎朝、服に迷わない秋/冬 暖かいのにおしゃれになれる』書籍情報毎朝、服に迷わない秋/冬 暖かいのにおしゃれになれる著者:山本あきこ発行:ダイヤモンド社単行本 : 264ページ発売日:2017/09/14価格:1500円+税[公式サイト]著者山本あきこさんプロフィールスタイリスト。1978年生まれ。女性誌や広告などで多くのスタイリングを手がけながら、「女性にとって大切な外見力を上げるため、一般の人でもプロのスタイリストに気軽に相談できる場をつくりたい」と、2013年より毎月個人向けのパーソナルスタイリングや、スタイリングを教える講座などを行う。以来、予約開始と同時に申し込みが殺到する「予約の取れない」スタイリストに。
2017年12月11日■『医者が教える食事術 最強の教科書』が食習慣を見直すきっかけにアラフォーにもなると、食事による健康や美容への影響がどれだけ大きいかは、きっと皆さん体感していると思います。しかし、あなたがいいと思っている、その食事法が間違っているとしたら?そんな、「いいと思って食べていたのに、実は……」ということが書かれているこちらの本、『医者が教える食事術 最強の教科書』。美容鍼灸師という、いわゆる東洋医学な仕事をしていますが、鍼灸関係の本だけではなく、こういった西洋医学的な健康や美容に関する本も読んでいます。中でもこの本は、美容・健康・ダイエットのどれかに興味がある方に、とてもおすすめしたい内容でした。私のインスタグラムで紹介したところ、なかなか好評でしたので、改めて詳しくご紹介します。■よかれと思ってしていたことが、実はそうでもなかった著者いわく、「ビジネスパーソンを悩ませる病気や不調の原因の9割以上は血糖値の問題」だそうです。その血糖値をコントロールするための「医学的に正しい食べ方」がまとめられています。今まで正しいと思っていたことが、実はそうではなかった……目からウロコな内容がいろいろと書かれていて、かなり面白いです。たとえば、ジューサーで搾ったオレンジジュースは「搾りたてでフレッシュだし、体によさそう!」と思いきや、果物に含まれる果糖はすぐに脂肪になって貯蔵されてしまうので、実際は太りやすいのだそうです。太りやすいということが、体にいいことでないのは明白。その事実を知ってしまうと、「私が毎朝飲んでいたスムージーって、もしかして……」と、背筋が寒くなります。また、サプリメントで摂りがちな、アミノ酸やプロテイン。「アミノ酸を摂るようにしたら、疲れにくくなったかも」なんて思っていたのですが、アミノ酸やプロテインも、実は大量に摂取すると、腎臓を疲弊させて壊してしまうのだそうです。よかれと思ってやっていたことが、実は別の部分では体によくない影響を与えてしまうことだった。なんとなく信じていた俗説や認識を考え直すのにちょうどいい本です。■辛口の白ワインを1日1杯。停滞期の体重が減ったもちろん、よくないことだけではなく、「これがこんなにいいものだったとは!」ということも書かれています。たとえば白ワイン。赤ワインに関しては、含まれているポリフェノールの抗酸化作用でアンチエイジングにいいと知っていましたが、なんと、辛口の白ワインには痩せる効果が期待できるんだそうです。ものは試しと、毎晩辛口の白ワインを飲んでみたところ、飲み始めて4日目くらいに、いつも「ここから体重が減らない」と悶々としていたボーダーラインの体重から、あっさり1kg減っていました。けっして大量に飲んだわけではなく、お店でワイングラスに注がれる程度の量を毎日1杯飲んだだけ。それで体重に変化があるとは驚きです。もちろん、体質面の個人差や、普段の食事量など生活習慣の違いもあり、全員が私と同じようにすぐに体重に変化が出るというわけではないでしょう。ただ、信頼できる機関による研究の結果、ということなので、信憑性も高そうです。そうでなくとも、この自分自身の結果を見てしまうと、今まで日本酒派だった私も、「さようなら日本酒(糖質)、こんにちはワイン」という気持ちになってしまいます。アルコールを受け付けない体質の人を除き、ワインは適度に飲むと良いのかもしれません。■好きなページから読むことができる読みやすさ書かれている内容もさることながら、この本は、ひとつの項目が1~3ページ程度でまとめられているので、気になるところだけ読むことができて、とても読み進めやすいです。まずはワインのページを、いやいや私は「菓子パンは命を削る食べ物」ってページが気になる、など、最初から順番に読まずに、興味のあるページだけを拾い読みしてもいいので、普段あまり本を読まない方も抵抗なく読めるのではないかと思います。自分の健康と美容を維持するために、老化を防ぐために、一読してみてはいかがでしょうか。『医者が教える食事術 最強の教科書』書籍情報出典:医者が教える食事術 最強の教科書著者:牧田善二 発行:ダイヤモンド社ページ数:280ページ発売日:2017/9/22価格:1500円+税[公式サイト]著者牧田善二さんプロフィールAGE牧田クリニック院長。糖尿病専門医。医学博士。1979年、北海道大学医学部卒業。ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行う。1996年より北海道大学医学部講師。2000年より久留米大学医学部教授。2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業し、延べ20万人以上の患者を診ている。
2017年11月22日■akko3839さんが選ぶ、運命の8着で作る大人の着回し積んであるあの本が、私を待っている……。少し早く帰れそうな夜、DRESS世代に、じっくりと読み進めてほしい本をご紹介する連載【積読を崩す夜】。10回目は、『基本の8着で人生が変わる大人着回し術』(著:akko3839)を取り上げます。シンプルおしゃれなコーディネートで話題、13万人のフォロワー数を持つインスタグラマーakko3839さん(44歳・主婦)。等身大の働く主婦・2児のママとして、誰もが抱くおしゃれの悩みを解決してくれます。■秋冬はシルエットに注意して、着ぶくれ防止を体がきれいに見えるシルエットやこなれ感、そして大人に似合うほんの少しの今っぽさ。そんな条件ほクリアして、ここ数年、活躍度がいちばん高いアイテムを選びました。人生が変わる8大着回し基本服秋冬編01/08黒のチュールスカート02/08グレーのVネックニット03/08モノトーンのチェックシャツ04/08黒のタートルニット05/08ベージュのガウチョパンツ06/08デニムジャケット07/08白のアンサンブルニット08/08グレーのベスト(012~015ページより引用)高校生、小学生のふたりの子どものママであるakko3839さん。スタイリングのアドバイスや、企業やブランドとコラボしての商品デザインなど、ファッション関連の仕事に就いている傍ら、インスタグラム上で自身のコーディネートを披露。着こなしやすくて、女性らしいシンプルスタイルが話題になっています。アラフォーから、アラフィフ世代へと移りつつある筆者は、「シンプルな服が人生を変えていく」と語ります。筆者が提唱する基本の8着は、決して奇抜でも突拍子もないデザインでもありません。着方によっては、年間通じて着ることができる定番アイテムばかりです。秋冬コーデにおける、「なんか素敵のコツ」は、着ぶくれしないことにあるようです。配色が重くなり、アウターをはおったりすることでレイヤードが増える秋冬は、ついつい着こんでしまいがち。Vネックのセーターであれば、鎖骨のひとつ下あたりを目安にしたネックライン選び。または、ボトムにあわせて、靴やタイツなどを微妙に調整。シンプルなアイテムを厳選して、組み合わせを繊細に考えることで、素敵な秋冬服の着こなしができそうです。■秋冬アウターはこの3アイテムがあれば大丈夫01/03グレーのチェスターミディ丈だと古臭く見えてしまうので、ヒザ下の長め丈。かっちりしすぎないやわらかな素材使いもポイントです。02/03黒のダウンブルゾンちょっとモード感のある、カジュアルすぎないデザイン。袖の取り外しが可能なので、着回し力も抜群。03/03白のダッフルコートあえて白を選びました。はおるだけで、どんなシンプルコーデも明るく、印象的に変わるお気に入り。(037~039ページより引用)秋冬のアウターは、たくさん持っているわりにいまひとつ決まらない、ということがあります。流行とスタンダードの間で、おしゃれ迷子になることはよくある話です。著者は、グレーのチェスター、黒のダウンブルゾン、白のダッフルコートの3着があれば、秋冬は乗り切れるといいます。年齢や流行に関係なく、長く使えることと、着心地にこだわって選ぶことがポイントのようです。グレーのチェスターは、スカートにもデニムにも。黒のダウンブルゾンは、タイトスカートやパンツにあわせて。白のダッフルコートは、淡いトーンの上下にあわせても、色に差がついて映えるのだとか。それぞれ表情が違う3着で、いろいろなスタイルに合わせてみたいですね。■定番色を最高にセンス良く見せる私にとって、白と黒は定番色のなかでも別格。年齢とともに似合わなくなったり、気分で着なくなったりしないから、モノトーンには絶対的な安心感があります。たとえば「黒が少し重いから白を足そう」とか。モノトーンならバランスの取り方が簡単で、いつでも上品。地味に見えたり、着太りしたり。そんな失敗を何度も繰り返してたどり着いたのが、フェミニン・ベージュ。たとえば透け感や光沢のある素材使い、ウエストリボンのようなメリハリの効くディテールetc.。素材も形もシンプルだと普通すぎてしまう。女性ならではの華やぎで、ベージュは印象的に変わります。(042・050ページより引用)筆者にとっての基本色とは、黒、白、グレー、ベージュ、デニムカラーであるといいます。地味すぎたり、いろいろな失敗もしてきたりしたなかで見つけた、定番色を最高にセンスよく見せるための着こなしルールがあるのだとか。これらの色のトーンや素材のニュアンス、色と色の組み合わせを提唱したのが、以下の6つのルール。シンプル・モノトーン、モード・グレー、ホワイト&ホワイト、フェミニン・ベージュ、スパイシー・インディゴ、きれい色ミックス……。その中でも、シンプル・モノトーンは、どう着ても上品に見えると著者は太鼓判を押しています。たしかに、白と黒のモノトーンは甘さと引き締め感の両方を演出できます。フェミニン・ベージュとは、地味に見えたり、着太りしがちなベージュでも、透け感や光沢のある素材を使うと、脱・シンプル。華やかで女性らしく見えるようです。基本の8着と定番の色使いで、少しひねった大人らしいおしゃれを楽しみたいものですね。『基本の8着で人生が変わる大人着回し術』書籍情報基本の8着で人生が変わる大人着回し術著者:akko3839発行:幻冬舎単行本 : 127ページ発売日:2017/10/12価格:1400円+税[公式サイト]著者akko3839さんプロフィール13万人のフォロワー数を持つ、44歳(働く主婦・2児のママ)の注目インスタグラマー。シンプルおしゃれなコーディネートが話題になっている。
2017年11月01日■スーパーハブと呼ばれる世界の金融業界を牛耳る大物たち著者のサンドラ・ナビディは弁護士というエキスパートでありながら、時には金融業界のコンサルタントであり、インサイダーとして、あるいはオブザーバーとして世界の金融界のリーダーと接してきました。彼女はそうした金融業界の大物たちをスーパーハブとして定義し、財産とネットワークこそが彼らの強みだとしています。1992年のポンド危機でイングランド銀行を負かしたヘッジファンドのジョージ・ソロス、JPモルガンのCEOジェイミー・ダイモン、元FRB議長ベン・バーナンキ、元米国財務長官ロバート・ルービンなど、世界経済を牛耳る大物たちのネットワーク=スーパーハブの世界にアクセスした筆者がその現実を描いています。ジョージ・ソロスに代表されるような大富豪たちが「スーパーハブ」として機能し、ネットワーク全体とつながっている。それはたとえば、ダボス会議というスイスの山奥で開催される会議に出席できる一握りのスーパーエリートたちで、スーパーハブは、自らの位置によって他のスーパーハブへアクセスできるという「資産」を持っているといいます。スーパーハブによって、金融危機が救われた場合もある一方、金融緩和によって、圧倒的に貧富の格差が拡大したことも指摘しています。■女性が頂点を目指すには高い壁も9章では女性金融界のトップに少ない理由を探ります。それなりの位置を得ている筆者ですら、アシスタントか通訳に間違われることもしばしばあり、この世界では女性は誰かの付属品として見られると言います。職業を弁護士と言えば、「弁護士っぽくないですね」とどっちつかずのお世辞を言われ、会社を経営していると「マーケティングかPRですか」と聞かれてしまう世界。昔からマーケティングとPRは女性の定番職業と思われているからです。筆者によると世界の大手金融会社150社のうち、経営者が女性なのはわずかに6社。アメリカでは、フィデリティ・インベストメンツのCEOアビゲイル・ジョンソンだけ。アメリカで女性が運用する投資信託の資産は全体の2%、女性のヘッジファンドマネジャーは男性の80分の1しかいない。アメリカでも女性が金融業界のトップへ上ることが難しい状況を指摘しています。そんな現状でも、IMFの理事の女性として活躍するフランス人女性ラガルドについて、高度な社会的知性とレジリエンス(たくましさ)を併せ持っていると評価しています。世界の最強人脈の裏側を筆者のサンドラとのぞいてみませんか。■『スーパーハブ世界最強人脈の知られざる裏側』著者:サンドラ・ナビディ翻訳:石原薫発行:TAC出版価格:2160円(税込)発売日:2017年9月13日四六判/392ページ■サンドラ・ナビティプロフィールドイツ生まれ。弁護士・金融コンサルタント。戦略的ポジショニングに関するアドバイスを行うコンサルティング会社、ビヨンドグローバルの創業者で最高経営責任者(CEO)、弁護士、キャスター。ドイツのケルン大学で法学を学び、アメリカのフォーダム大学ロースクールで銀行・会社・金融法の修士号を取得。ドイツとニューヨーク州の弁護士免許を持つ。国際金融コンサルタントとして、各国のテレビ、新聞、雑誌などで積極的に意見を発信している。■目次1)世界経済を支配するビリオネアの正体ー金融ネットワークの中心にいるのは誰?2)スーパーハブになる力学ーステータス、アクセス、ソーシャルキャピタルの「超活用法」3)スーパーハブをつなぐリンクー金、人脈、特権的情報へのアクセス4)マトリックスースーパーハブのDNAを解読する5)同質化する金融エリートたちー似た者同士のつながり6)ネットワークで世界を動かす!-人脈を作ることの本当の意義7)スーパーハブのプラットフォームー金融エリートたちの会議、イベント、パーティーの内幕に迫る!8)世界を動かすスーパーハブー官民を行き来して独占的ネットワークを形成する!9)スーパーハブであるが故の苦悩ー華やかな世界の裏側にあるトップたちの果てなき犠牲10)ジェンダーギャップー途切れた女性へのリンク11)リンクは切れるのか?ネットワークからの完全追放はあり得るのか12)スーパークラッシュ金融危機の犯人はスーパーハブかシステムか
2017年10月08日