近年、あらゆることに「〇活」という言葉が使われていますが、そのなかでもいつかは誰もが考えるものといえば終活。そこで、今回ご紹介する映画は、人生の終わりに新たな生き方を見つけていく人たちの姿を優しく描いた珠玉の物語です。『やすらぎの森』【映画、ときどき私】 vol. 380カナダ・ケベック州。人里離れた深い森にある湖のほとりで、年老いた3人の男性が愛犬たちと一緒に静かな暮らしを送っていた。それぞれの理由から社会に背を向け、世捨て人となった彼らの前に、ある日ジェルトルードと名乗る80歳の女性が現れる。彼女は少女時代に不当な措置によって、60年以上も精神科療養所に閉じ込められていたという。外界と隔絶した生活を飛び出し、マリー・デネージュという名前で新たな人生を踏み出すことを決意した彼女は、森のなかで徐々に活力を取り戻していく。ところが、そんな穏やかな日常を揺るがす緊急事態が発生し、彼らは重大な決断をそれぞれ強いられることとなるのだった……。カナダのアカデミー賞とされるカナダ・スクリーン・アワードでは5部門にノミネートされ、助演男優賞を受賞するなど、高く評価された本作。今回は、この物語に魅了されたこちらの方にお話をうかがってきました。ルイーズ・アルシャンボー監督短編やテレビシリーズなどを幅広く手がけ、精力的に活動を続けているアルシャンボー監督。長編3本目となる本作では、自身の出身地でもあるケベック州を舞台に描いています。そこで、原作との出会いから生と死に対する考え方などについて、語っていただきました。―今回は、ジョスリーヌ・ソシエさんの本に感銘を受けて、映画化されたということですが、きっかけについて教えてください。監督この本を評価している批評を目にして、手に取ったのが始まりでした。確かにとても興味深い物語だと思いましたが、そのときはほかのプロジェクトを抱えていたので、すぐに何か行動に移すことはできなかったんです。ただ、数か月経っても、この物語が頭から離れなかったので、「これは絶対に映画にするべきだ」と考えるようになりました。―原作を読んだとき、監督は成熟したキャラクターと彼らの歩んできた人生に心と魂が満たされたとコメントされています。監督自身はまだ50歳ですが、80代の登場人物たちのどんなところに共感を覚えたのでしょうか?監督正直に言って、年齢は関係ないと私は思っています。それよりも、この作品ではアウトローな生き方をしてきた人たちが、異なる道のりを歩んできた姿を描くことがおもしろいと感じました。精神病院で育ったマリー・デネージュやガンを患っているチャーリー、アル中のトムといった具合に、自分を見失っていた彼らが森のなかでいろいろなことを発見していく様子を伝えたいと思ったのです。たとえば、「誰かを愛し、誰かに愛されたい」とか「自分の尊厳を保ちたい」といったことを考えるうえでは、20歳でも90歳でも同じですよね。劇中でも、マリー・デネージュは何も持たない状態で森にたどり着くものの、心を開くことによって、新しいことや愛を学んでいくのです。30代の人でも「私の未来はどうなってしまうのだろう?」と悩むことはあると思いますが、彼女と同じように少しでも心を開けば、ポジティブな発見があるはず。どんな環境でも、心を開くことで希望が生まれるんだということを描きたいと思いました。お互いの違いを認め合う美しさを感じてほしい―この作品では、生きる希望を見つける者もいえば、自ら死を選ぶ者もいますが、そういうキャラクターを描くうえで、意識したことはありましたか?監督本作に登場するキャラクターたちのいいところは、それぞれに欠点があり、重い過去を抱えているものの、それでも“いま”をつかもうとしている人たちであることです。人生においては、小さなことからでも喜びを感じることが必要だと思っています。そして、たとえ過ちを犯したとしてもそこには解決策があるんだということと、他人に手を差し伸べることの大切さも描きたいと考えていました。―そういった彼らの姿は、まさにいまの私たちが学ぶべき部分と言えますね。監督そうですね。文化や宗教や国籍が違っていても、人間関係においてはみな同じことを大切するべきだと私は思っています。ただ、人との違いを恐れることが原因で戦争や緊張状態を引き起こしてしまうことがありますが、一見違うようでも、実は人間はみな同じものを求めているはずなんです。彼らのようにお互いを認め合い、一歩ずつ歩み寄ることで、何か美しいものを得られたらいいなと感じています。―また、この作品ではどのような人生の終わりを迎えたいかということについても考えさせられますが、日本でもここ数年「終活」に対する注目が高まっています。監督自身もこの作品を通して、そういったことについて向き合うことはありましたか?監督今回はあるキャラクターが最期を迎えるシーンについて、年配のキャストの方々と話をする機会がありました。物語はフィクションではありますが、みんなでたくさん話し合いをし、いろいろと考えるきっかけになったと思います。チャーリー役のジルベール・スィコットは、そのシーンで非常にエモーショナルになっていらっしゃって、自分の場合はどうすればいいのかと今後の人生についても考えていましたし、トム役のレミー・ジラールはご自身の奥さまが若い頃に自ら命を絶ったという経験があったので、演じるうえで役の気持ちがわかるともお話されていました。彼女は自分らしい最期を自ら決断した―マリー・デネージュ役のアンドレ・ラシャペルさんは本作が最後の出演作となりましたが、彼女とは現場でどのようなお話をされましたか?監督アンドレはしばらく映画出演から離れていたのですが、この映画を最後の出演作にしたいと言って出てくださいました。この映画を通じて、自分が生き返ったような気持ちになったとお話してくださったのは、うれしかったです。彼女は夫をガンで亡くされており、そのときの延命治療が大変だったこともあって、自分は違う形で最期を迎えたいという気持ちがあったんだと思います。残念ながらこの映画が公開された2か月後にガンでお亡くなりになりましたが、その際には治療することをやめて尊厳死を選択したそうです。後日、アンドレの息子さんから、「母はこの映画に出演したことで、自分が何を望んでいるのかに気がついたようです」とお話がありました。パジャマ姿で家族に囲まれて、みんなで歌を歌いながら笑って亡くなったそうですが、彼女は本当に明るくて聡明な人だったので、それが彼女らしい決断だったんだと思います。―カナダでは、2016年から安楽死が合法化され、今年の3月には安楽死の対象が拡大されたというニュースも出ています。それによってカナダの方々の終活や死ぬ権利に対する考え方は変わってきていますか?監督そうですね。確かに、カナダでも死ぬ権利というのが認められてから人々の意識は変わってきていると感じています。ただ、安楽死が認められているといっても、病気であることと普通の生活を送ることが難しいことという2つの条件を満たさなければいけないので、すべての人が対象になっているわけではありません。とはいえ、そういう選択肢があるということは、私たちにとっても新たな一歩であることに間違いはないと思います。病気でも何でもない人から見たらおかしいと思う場合もあるかもしれませんが、普通の生活が送れず、ただ痛くて苦しい思いをしている人もいるのは事実ですから。現在は、精神病の人にも安楽死を認めてほしいという新たな運動も始まりました。こういった基準を決めるのは非常に難しいですし、デリケートな問題でもあると思いますが、生きるのがつらい人たちの声に耳を傾けるようになっただけでも進歩しているように私は感じています。刺激的で興味深い日本の文化が好き―どこの国でも、今後大きな課題のひとつとして向き合うべき問題だと改めて感じました。では、劇中のことに関しておうかがいしますが、いくつか日本に関する描写が出てきていますよね?そのなかでも、「相撲」と書かれたメモが登場するシーンが気になりました。その意図について教えてください。監督映画のなかでマリー・デネージュの甥であるスティーヴが「昔は地球の上のほうに自分たちがいて、下のほうにアジアがあると思っていた」という話をしています。その話から、彼が実際に日本へ行くことを夢見るようになり、日本に関するリサーチを始めてメモを取っている、という意味を込めました。私自身も刺激的で興味深い日本の文化が大好きなので、あのシーンを入れることにしたのです。―ちなみに、監督は日本のどのようなところがお好きですか?監督日本は、まず生活様式が美しいと思っています。それは、料理や洋服にはじまり、美術、建築、デザイン、歴史、文化的な儀式にいたるまですべてにおいて感じることです。私はこういったものすべてのルーツが自然にあると考えているので、自然が豊かな地に暮らす私は日本と繋がりを感じることがあります。そのいっぽうで、テクノロジーが発達し、既成概念にとらわれない物の考え方をしているところもあるので、伝統的でありながら革新的というコントラストがあるところにも惹かれますね。私個人として一番好きなものは、日本の食べ物。味覚や食感、見た目など、ひとつひとつが際立っていて、本当に素晴らしいなと。そのうえで、それらをみんなでわかちあう文化でもあるので、そういう部分もふくめてとにかく興味深い国だと感じています。―ありがとうございます。それでは最後に、日本の観客にメッセージをお願いします。監督日本のみなさんにも、登場人物たちがたどってきた道を知り、そこから力を感じてほしいです。そして、誰かと愛を分かち合い、愛する人とハグしたくなってもらえたらうれしいなと。もちろん、いまはコロナ禍なので、難しいところもあるかもしれませんが、「I love you」と口にしなくても、一緒にいることを感じ合えるだけでも必要なことだと思います。自分や他人を信じる気持ちや希望といったエネルギーをこの映画から感じ取ってほしいです。いくつになっても味わえる人生の喜びと愛息を飲むほど美しい壮大な自然のなかで繰り広げられる心を揺さぶるヒューマン・ドラマ。人生の終わりに見つけた愛と再生への道のりは、誰にとっても希望の光となるはず。先行き不安ないまに、やすらぎを与えてくれる唯一無二の1本です。取材、文・志村昌美胸に迫る予告編はこちら!作品情報『やすらぎの森』シネスイッチ銀座ほか全国順次公開中配給:エスパース・サロウ© 2019 - les films insiders inc. - une filiale des films OUTSIDERS inc.©JULIE PERREAULT
2021年05月23日ラコステ(LACOSTE)が10月1日、2020年春夏コレクションを発表。クリエイティブディレクター、ルイーズ・トロッター(Louise Trotter)によるセカンドシーズンとなる。
2019年10月02日映画『アデル/ファラオと復活の秘薬』の来日会見が6月7日(月)、東京・赤坂のザ・リッツ・カールトン東京で行われ、リュック・ベッソンの新ミューズ、ルイーズ・ブルゴワンが日本で初お披露目された。これまで『ニキータ』でアンヌ・パリロー、『レオン』でナタリー・ポートマン、『フィフス・エレメント』でミラ・ジョヴォヴィッチと折り紙付きの女優発掘眼を持つベッソン監督に見い出され今回、映画初主演。20世紀初頭のエジプトとパリを舞台にした本作で、妹の命を救うために古代エジプトに伝わる“復活の秘薬”を追うタフでキュートなヒロインを熱演している。手足が長い9頭身スレンダー美女で現在28歳。お気に入りブランドというプラダのサーモンピンクの衣裳に、ヴァンクリーフ&アーペルのジュエリーを合わせたフェミニンなファッションのルイーズが登場すると、カメラマンから激しいフラッシュ放射。昨日から初来日中で、「アリガトーゴザイマス」、「オイシイデスカ?」などと覚えたての日本語を披露するなど愛嬌タップリ。初タッグのベッソン監督について「主演に選んでいただいたことに驚いた。撮影では厳しかったけど、常にカメラの後ろにいる距離感で、いい関係になりました」と好相性をアピールした。ベッソン監督は、今年11月に29歳になるルイーズに「まだ若いけど大変才能のある女優。彼女がいればフランスは元気になる」とベタぼれ。「アリガトー」と謙虚に返すルイーズの健気さに「フランス人は戦闘機を作ったりミサイルを作ったり、原子炉を作ったり、きれいな女優を作ったりします。あと料理もちょっと」とゴキゲンな様子でフレンチギャグ(?)を炸裂させ、会場の笑いを誘った。会見のラストに本作の日本宣伝ミューズ立候補者として、タレントのほしのあきが登場。劇中のルイーズが「エジプトに行くときの衣裳を、ほしの流にアレンジしてみました」とミニスカ姿のほしのさんに、ベッソン監督は「アデルがこんなにミニスカートだったら仕事にならなかったでしょう」と目が釘づけ。「広末さんも出られたことがありますし、何かの機会に私も…監督どうですか?」の熱烈逆オファーに、「『不思議の国のアデル』にしましょう」と“快諾”。ほしのさんは「やった!可能性がちょっとでも上がったかしら?」と大喜びだった。一方、ほしのさんは本作について「アデルは可愛くて強くて女性の憧れ」と大絶賛。ルイーズは「アリガトー」と素直に喜び、ほしのさんと頬をすりよせ合うという、悩ましい(?)ツーショットを披露していた。関係者によると、ルイーズは昨日、浅草、表参道、渋谷などを散策。会見で履いていたハイヒール靴は渋谷で購入。フォトセッション時に同靴を指差して「シブヤ・シューズ!」と言い、片足を折り曲げてポーズを決めるなど、終始サービス精神旺盛だった。『アデル/ファラオと復活の秘薬』は7月3日(土)より全国にて公開。(text:Yoko Saito)■関連作品:アデル/ファラオと復活の秘薬 2010年7月3日より全国にて公開© EUROPACORP - APIPOULAIPROD - TF1 FILMS PRODUCTION■関連記事:キュートでタフな新ヒロイン誕生!『アデル』Tシャツを5名様プレゼント世界を駆け巡る女性版インディ・ジョーンズ!『アデル』試写会に25組50名様ご招待リュック・ベッソン&新女神来日!『アデル』来日記者会見 読者レポーター2名様募集世界を救うニューヒロインの誕生!『アデル』劇場鑑賞券を5組10名様プレゼント
2010年06月07日