1993年にヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞したのち、配給された20か国以上の地域で熱狂的な支持を集めつつも日本で劇場公開されなかった1本の映画。今回ご紹介するのは、30年のときを経てついに日本初公開となるオーストラリア発の衝撃作です。『悪い子バビー』【映画、ときどき私】 vol. 606「ドアの外に出れば、汚染された空気の猛毒で命を落とす」という母親の教えを信じ、暗く汚い部屋に閉じ込められていたバビー。身の回りのすべてを母親が管理し、ただそれに従うだけの日々を35年間も続けていた。ある日、何の前触れもなく“父親”だと名乗る男が突然現れ、その出来事をきっかけにバビーの人生は動き出す。言葉、音楽、暴力、宗教、美味しいピザといった刺激に満ち溢れた外の世界で、純粋無垢なバビーは大暴走。誰もが彼の自由で荒々しいスタイルに巻き込まれていくことに…。公開された国のなかでも、ノルウェーでは年間興行収入第2位にランクインするほどの大ヒットを記録したこともある本作。そこで多くの観客を虜にした理由について、こちらの方にお話をうかがってきました。ロルフ・デ・ヒーア監督オランダで生まれたのち、オーストラリアに移住し、1984年に映画監督デビューを果たしたロルフ監督。これまでに“モダン・ジャズの帝王”マイルズ・デイヴィスが出演した『ディンゴ』や『クワイエット・ルーム』などを手掛けて、高く評価されています。今回は撮影の裏話や約40年のキャリアで大事にしていること、そして忘れられない日本でのエピソードなどについて語っていただきました。―30年という長い年月を経て、ようやく日本で劇場初公開されることになりましたが、いまの時代に本作が日本の観客に届けられることをどう感じていますか?監督この作品に関しては、これまでに次から次へといろんなことが起きているので、ずっと驚かされ続けているんですよ。今回日本で公開されるということで、やっとみなさんの心の準備ができたのかなと思っています。やはり映画館で観るのがベストだと思うので、うれしいことですね。―近年、日本でも「毒親」という言葉が頻繁に使われるようになっているので、そういう意味でも本作には現代に通じる題材が描かれていると思いますが、改めてご自身で振り返ってみてどのように感じていますか?監督オーストラリアでの公開からちょうど30周年ということで、数か月前に上映があり、僕もまた観客と一緒に鑑賞したんです。そのときは、約半分がすでに鑑賞済で、残りが初めての観客でしたが、そういう方々は「こんな作品が存在していたのか」とすごく驚いてくれました。上映後に質疑応答を行った際、質問の内容を聞いていてもこのテーマがいかに普遍的でタイムレスなものだったのかと感じることが多かったです。作品によっては時代に合わないものもありますが、この作品はずっと観客に響き続けているように思っています。子ども時代におけるダークサイトを描きたかった―ちなみに、ご自身はバビーとは違って非常に幸せな子ども時代を過ごしたそうですが、そんな監督がこういった物語を描こうと思ったきっかけは何ですか?監督映画を作るときはいろんな理由が重なっているものですが、もともとは子ども時代におけるダークサイトを描いた映画を作りたいというのがありました。というのも、僕自身の幼少期は素晴らしいものでしたが、そういう機会を与えられない子どもがたくさんいることを周りから見聞きしていたからです。ただ、子どもを主人公にした映画を作りたくはなかったので、バビーのように“大人だけど子ども”というキャラクターを形成することに。そのほうがよりダークな部分に足を踏み入れることができると考えたのです。―なるほど。先ほど「周りから見聞きしていた」とおっしゃっていましたが、バビーにはモデルのような方もいたのでしょうか。監督特にそういった人物はいないですが、記憶に残っているのは、シドニーにある友人の家に遊びに行ったときのこと。庭にいると、隣の家から母親が自分の娘を棒のようなもので叩いている音と声が聞こえてきました。でも、その娘は「ママ!愛してるよ!」とずっと泣き叫んでいたんです。2人の姿を見たわけではなかったのですが、そのときのことが強烈な印象として自分のなかに残っていたのかもしれません。実際、この映画ではバビーと母親のシーンではそれがある種の“フィルター”のようになっていたように感じています。撮影監督を変えることでいい影響が作品に出た―また、本作では合計32名の撮影監督が参加したというのが驚きですが、最初から複数で行く予定だったのか、それとも撮りたい映像を追求していったらそうなったのでしょうか。監督この映画を作りたいなと思ったとき、まだ予算がなかったので、フィルムを買うために自分で稼ぎ、1本購入したら撮影しよう考えていました。ただ、その方法だと1人のカメラマンのスケジュールをずっと押さえることができないと気がついたんです。そこで、「屋内に閉じ込められているバビーが外の世界で経験することはすべて初めて」という設定にすればいいんだと思いつきました。そうすれば、違うカメラマンが撮っても成立するのではないかなと。同じカメラマンを確保できないことを大きな問題とするのではなく、逆に面白いと思うことにしました。―まさに発想の転換ですね。実際、それによってどのような効果が得られたとお考えですか?監督脚本にいろんな視点を入れることができましたし、視覚的にもいい影響が出たと感じています。ほかにも大きかったのは、違う撮影監督が入るたびに、新しいエネルギーを現場に持ち込んでくれたこと。そういうところも含めて、いまはよかったなと思っています。日本の映画からは深く影響を受けている―また、バビーの耳に届く音の刺激をリアルに再現する「バイノーラルサウンド録音」を採用するなどしていたそうですが、そのほかにもこの作品ならではのこだわりと言えば?監督今回、冒頭の30分はスタジオ内にあるセットで撮影をしていますが、バビーの父親が登場して以降はそのセットを25~30%大きくしています。これは、バビー自身の世界が少し広がったことを表したかったからです。といっても、おそらく観ている方は言われないとわからないくらいかもしれませんが、それを肌で感じてもらえたらいいなと。最初の息が詰まるような閉塞感との違いをそういった演出で表現しました。―非常に興味深い点なので、ぜひ意識して観ていただきたいですね。それでは、まもなく公開を迎える日本とのエピソードがあれば、お聞かせください。監督日本には2009年に行われたイベントに参加するために滞在したことがありますが、もともと映画の面でも深く影響を受けていたこともあって、素晴らしい国だなと感じました。なかでも印象的だったのは、黒澤明監督の『デルス・ウザーラ』を好きな作品としてスピーチで紹介したときのこと。イベントの参加者のなかに黒澤組のスタッフだった方がいて、なんと黒澤監督と写っている写真をくれたんです。これはいまでも大切に部屋に飾っています。心から情熱を感じる題材であることが大事―素敵な思い出ですね。今回はオンライン取材ということもあり、監督のお部屋の壁にびっしりと映画のアイデアとなるメモが貼り付けてあるのが見えるのですが、いくつになっても尽きない創作意欲には感銘を受けます。映画作りにおいて大切にしていることはありますか?監督僕の場合は、まず映画が好きというのがありますが、題材に心から情熱を感じられないとダメなんですよ。脚本を書くことから始まり、映画作りは大変な作業も多いですが、だからこそ楽しめる方法を見つけることが大事なのではないかなと。そうすれば、作品の質も上がると考えています。ちなみに、僕にとってはこうしてどんどんメモを書いていくほうが簡単で、リラックスできるやり方なんです。―それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。監督映画というのは、何かしらのカタチで人の心を動かすものでなければいけないと僕は思っています。同じ作品でも、人によっては感動する場合もあれば、すごく笑える場合もあるし、面白くないと感じる場合もあるかもしれません。そんなふうにたとえ正反対のリアクションだったとしても、観客にとってはいいことだと考えています。というのも、いまの私たちは現代社会のなかでそれだけの強い感情を味わうことが少なくなっているからです。『悪い子バビー』に関しては、自分の作品ではありますが、感情的な美しさを持っていると自負しているので、たとえ一部分だけでもその美しさを感じてもらえたらうれしいなと思います。待ち受けるのは、唯一無二の映画体験!30年が過ぎても色褪せることない衝撃を観客に与え続け、「映画の常識を覆した」とも言われている本作。想像を上回る異色作は、驚きとまさかの感動で観る者の心を揺さぶること間違いなしです。取材、文・志村昌美刺激的な予告編はこちら!作品情報『悪い子バビー』10月20日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー配給:コピアポア・フィルム️(C) 1993 [AFFC/Bubby Productions/Fandango]
2023年10月17日ヴィクター&ロルフ(VIKTOR & ROLF)が展開する多彩なラインのアイテムが揃う期間限定ショップが、2021年2月20日(土)から3月11日(木)まで伊勢丹新宿店にて開催される。スペシャルドレスやプレタポルテなど多彩なアイテム今回の期間限定ショップでは、オランダ・アムステルダムにて1993年に設立されたヴィクター&ロルフのオートクチュールをはじめ、プレタポルテの「チュール」など、幅広いアイテムがラインナップ。構築的で立体的なファブリックが特徴のドレスライン「マリアージュ」からは、本イベントでしかオーダー出来ないスペシャルドレス&ベールを用意する。2020年秋冬シーズンよりスタートしたメンズライン「ミスター・ミスター(Mister Mister)」からは、 2021年春夏のアイテムを中心に、ファーストシーズンで人気を集めたジャケットセットアップなども登場。2021年1月のオートクチュールコレクションで発表された「メリッサ(melissa)」とのコラボレーションブーツも展開される。コラボドール&ドールハウスもその他、オリジナルプリントを使用した限定アウトフィットに初のオリジナルのアイウェアをコーディネートしたコラボレーションドールや、「KLOKA DOLLHOUSE」とコラボレーションした限定ドールハウスコレクションも発売。受注販売されるドールハウスはカーペットの色を選ぶことができ、オプションで家具をカスタマイズして楽しむことも可能だ。【詳細】ヴィクター&ロルフ ファッション アーティスト for 伊勢丹期間2021年2月20日(土)~3月11日(木)場所:伊勢丹新宿店 本館2Fイセタン ザ・スペース住所:東京都新宿区新宿3丁目14−1時間:10:00~21:00※営業日・営業時間が変更となる場合あり。※「KLOKA DOLLHOUSE」コラボレーションドールハウスは数量限定の受注生産商品。伊勢丹オンラインショップでも販売予定。【問い合わせ先】TEL:03-3352-1111(大代表)
2021年02月19日ヴィクター&ロルフ(VIKTOR & ROLF)とメリッサ(melissa)のコラボレーションによるユニセックスブーツが登場。2021年2月20日(土)から3月11日(木)まで伊勢丹新宿店にて先行販売され、8月からは全国販売される予定だ。ヴィクター&ロルフとメリッサのコラボ第2弾はブーツヴィクター&ロルフの2021年春夏オートクチュールコレクションで発表された、メリッサとのコラボレーションブーツ。2回目となる今回は、ヴィクター&ロルフのコラボレーションでは初となるブーツを用意する。コンバットシューズをベースに、華やかにきらめくグリッターやヴィヴィッドなカラーを取り入れることで、遊び心あふれる1足に仕上げた。また、シルエット自体は一見するとシンプルながらも、ステッチや存在感のあるソールなどのディテール部分に独自のデザインを詰め込んでいる。カラーは、ピンクやシルバー、ブラウンなど、全6色で展開する。詳細MELISSA COTURNO + VIKTOR & ROLF先行販売期間:2021年2月20日(土)〜3月11日(木)場所:伊勢丹新宿店 本館2階 =イセタン ザ・スペース住所:東京都新宿区新宿3-14-2全国販売時期:2021年8月〈予定〉価格:23,500円+税カラー:全6色サイズ:EU35/36(22.5cm)〜44(28cm)〈ユニセックス展開〉
2021年02月01日ヴィクター&ロルフ(VIKTOR & ROLF)が、メリッサ(melissa)とのコラボレーションシューズ&バッグを2020年4月より発売する。2020年1月22日(水)、2020年春夏パリオートクチュールコレクションにて発表されたヴィクター&ロルフとメリッサのコラボレーション。シューズは、メリッサのコレクションの中でも人気のあるフラットタイプのサンダル「ポゼッション(Possession)」をベースにしており、3Dカットでフラワーレースのモチーフを表現したフェミニンでエレガントなデザインだ。カラーは、ブラック、ホワイト、スカイブルー、ベビーピンク、マットクリーム、ベージュを展開する。バッグは、ラフィアのカゴをモチーフにした軽やかなルックスで登場。PVCを使用してポップに仕上げるとともに、取り外し可能なフラワーモチーフのショルダーストラップを付属することで機能性も叶えた。カラーはブラック、スカイブルー、ベビーピンク、クリーム、ベージュの5色で展開する。【詳細】ビクター&ロルフ×メリッサ 新作シューズ&バッグ発売時期:2020年4月※取り扱いは未定価格:シューズ 17,500円+税、バッグ 24,500円+税
2020年01月26日ヴィクター&ロルフ(VIKTOR & ROLF)の2019年春夏オートクチュールのカプセルコレクションが、ドーバー ストリート マーケット ギンザに登場。ヴィクター&ロルフは2019春夏オートクチュールコレクションで、「ファッション ステートメント(FASHION STATEMENTS)」をテーマに掲げ、SNSのキャプションから着想したカラフルでボリューミーなチュールドレスを発表。「NO」「GO TO HELL」「LESS IS MORE」「I WANT A BETTER WORLD」「LEAVE ME ALONE」「GIVE A DAMN」「SORRY IʼM LATE I DIDNʼT WANT TO COME」「GO F* YOURSELF」などのテキストを大胆に配したチュールドレスは、ランウェイで注目を集めた。ドーバー ストリート マーケット ギンザ 4Fで販売するカプセルコレクションのアイテムは、ランウェイで登場したテキストのアートワークを施したチュールTシャツ、スウェット、ジャケット、ドレスなど。また1Fエレファントスペースでは、コレクション発表時に実際に披露された貴重なピースを、2019年6月25日(火)まで展示する。【詳細】ヴィクター&ロルフ 2019春夏オートクチュール カプセルコレクション発売中 ※2019年6月現在販売場所:ドーバー ストリート マーケット ギンザ 4F住所:東京都中央区銀座6-9-5 ギンザコマツ西館TEL: 03-6228-5080・Tシャツ 28,000円~71,500円・スウェット 84,500円・ジャケット 112,500円・ドレス 56,500円~124,000円■コレクションピース展示展示場所:ドーバー ストリート マーケット ギンザ 1F エレファントスペース
2019年06月13日各ブックストアがFASHION HEADLINE読者に向けて「今読むべき1冊」をコンシェルジュ。毎週土曜日は、洋書を専門に扱う原宿のブックショップ「シェルフ(Shelf)」(東京都渋谷区神宮前3-7-4)が選ぶ書籍をご紹介。■『Cover Cover』VIKTOR&ROLF オランダのファッションデザイナーデュオ、ヴィクター&ロルフ(VIKTOR&ROLF)のファッションショーにまつわるスケッチやメモ、イメージが収録された一冊。ドイツ人グラフィックデザイナーのアーマ・ボーン(Irma Boom)によって考案・デザインされたこの本は、ヴィクター&ロルフの伝説的なコンセプト作品を生き生きと見せている。特定のショーに関連するカバーで全体が構成され、そのコレクションを示すイメージ、スケッチ、引用符が付いている。奇妙で驚くべき壮大な作品の数々を収録。【書籍情報】『Cover Cover』デザイナー:VIKTOR&ROLF出版社:Phaidon言語:英語ソフトカバー/520ページ/280×250mm発刊:2018年価格:2万8,690円(為替により変動)■Shelfオフィシャルサイトで『Cover Cover』 を購入する
2019年02月23日各ブックストアがFASHION HEADLINE読者に向けて「今読むべき1冊」をコンシェルジュ。毎週土曜日は、洋書を専門に扱う原宿のブックショップ「シェルフ(Shelf)」(東京都渋谷区神宮前3-7-4)が選ぶ書籍をご紹介します。■『Fashion Artists 25 Years』Viktor & Rolfオランダのアムステルダムに拠点を置くファッションブランド、ヴィクター&ロルフ(VIKTOR & ROLF)の25年間を、ティム・ウォーカー(Tim Walker)、ニック・ナイト(Nick Knight)、アンドレアス・グルスキー(Andreas Gursky,)、ハーブ・リッツ(Herb Ritts)、マート&マーカス(Mert & Marcus)、イネス&ヴィノード(Inez & Vinoodh)らの写真とともに見渡す展覧会カタログ。このオランダ人デザイン・デュオ、ヴィクター・ホスティン(Viktor Horsting)とロルフ・スノラン(Rolf Snoeren)は、四半世紀のキャリアを共にしながら、芸術とファッションの限界を押し上げる驚くべきアイデンティティを切り開いてきた。ロマンスと反乱、昂揚と抑制、古典主義と概念主義を対比させながら、私たちの時代の中で最も豪華なイメージを生み出した。ボリュームたっぷりの本書は、「ウェアラブル(着用可能な)・アート」というコンセプトを探求した息を呑むほどの革新的な作品の一部を取り上げる。ティエリー・マキシム・ロリートによる独占インタビュー、さらに現代アーティストや写真家による豊富なイメージを収録。オランダ・ロッテルダムにあるクンストハル美術館では、9月30日まで展覧会「VIKTOR&ROLF: FASHION ARTISTS 25 YEARS」が開催中。【書籍情報】『Fashion Artists 25 Years』作品:Viktor & Rolf出版社:Nai Uitgevers言語:英語ソフトカバー/212ページ/390×270mm発刊:2018年価格:5,690円(為替により変動)■Shelfオフィシャルサイトで『Fashion Artists 25 Years』を購入する【イベント情報】VIKTOR&ROLF: FASHION ARTISTS 25 YEARS会場:Kunsthal Rotterdam住所:Museumpark, Westzeedijk 3413015 AA RotterdamThe Netherlands会期:5月27日~9月30日時間:10:00〜17:00また、8月3日から9月3日の期間シェルフ店内では、アート系パブリッシャーやギャラリーのオリジナル・トートバッグを集めた「TOTEBAG for artbook lovers」フェアを開催。パリの老舗ギャラリー「イヴォン・ランベール(YVON LAMBERT)」やイギリスの「リッソンギャラリー(Lisson Galley)」、写真家コーリー・ブラウンのパブリッシャー「Silent Sound」などのオリジナルトート、さらにトートバッグ付き書籍も販売される。■「TOTEBAG for artbook lovers」フェア
2018年08月04日ヴィクター・ホスティン(Viktor Horsting)とロルフ・スノラン(Rolf Snoeren)によるヴィクター&ロルフ(VIKTOR&ROLF)は、パリのパレ・ド・トーキョーを会場に、2017年春夏オートクチュールコレクションショーを開催した。コレクションタイトルは「Boulevard of Broken Dreams」。昨シーズンは、以前のコレクションで使用した素材を再利用しながら全く新しい作品に仕上げていたが、今シーズンはヴィンテージのカクテルやイブニングドレス由来の古い素材をコラージュ。1体のドレスを解体し、ばらばらにしたパーツを複数のドレスに使用しながらも、各ルックそれぞれが全く異なる雰囲気を醸しているのが興味深い。金糸刺繍の縁取りは、日本の陶磁器の修復方法である金継ぎからインスパイアされたもの。不完全に宿る美を意識しながら、オリジナルを更に美しく価値あるものに変えるものとして、今回のコレクションの方向性と共鳴している。パッチワークとアップリケを駆使したドレスは正にアーティスティックで、「着るアート」という彼等が掲げるコンセプトに合致。しかし、コンセプトに偏り過ぎることはなく、リラックス感も醸しているから不思議だ。その自由なクリエーションにヴィクター&ロルフらしさを打ち出しつつ、前シーズンからの流れを汲んだ当コレクションで、新たなスタイルの確立を感じさせた。今回は特に3点のみホームページ上での販売が決定し、各2万ユーロ(約240万円)の価格が付けられている。動画引用元: (FASHION HEADLINE YouTube:
2017年03月10日ヴィクター&ロルフ (VIKTOR & ROLF)が2017年春夏オートクチュールコレクションを発表。過去のコレクションで使用した素材をクリエイションのベースとした昨シーズンの2016年秋冬オートクチュールコレクションをさらに進化させたワードローブを提示した。解体と再構築による服作りの成果がはっきりと表れた今季のコレクション。様々な年代のヴィンテージカクテルドレスやイヴニングウェアを解体し、切り取ったピースをコラージュすることで、元の文脈から逸脱したシュールレアルなフォームを生み出した。チュールのティアードスカートは、ウエストの周囲半分で途切れたり、ボディの上を斜めに走ったり、さらには襟を飾るカラーのようになっている。また、薄さも柄も色も異なる様々な素材が、大きさも形もバラバラに切り取られ、あらゆる場所で繋ぎ合わされている。これらの継ぎはぎに用いられたのは、日本の伝統的な修復技法である“金継ぎ”の意匠だ。この金のラインは、割れや欠けといった不完全に宿る美を意識させ、同時にオートクチュールならではの豪華さも演出した。ラスト5体には、とりわけゴージャスなプリンセスドレスが登場した。いずれも継ぎはぎされた別布とゴールドのラインが、ペールカラーのドレスから浮き上がっているように見える。シュールレアルな手順によって生まれた美しい違和感が、服をよりアーティスティックな作品へと昇華しているようだ。なお、今シーズンは足元にクリスチャン ルブタンの特注シューズが合わせられている。
2017年01月30日ヴィクター&ロルフ(VIKTOR&ROLF)は、劇場ゲイテ・リリックを会場に16-17AWオートクチュールコレクションのショーを開催。チャールズ・ディケンズ(Charles Dickens)の『バガボンド』をイメージソースに、今までのコレクション制作の過程で使われなかった素材を再生・再利用し、全く新しい物を作り出すという実験的なクリエーションを行った。15SSコレクションのフローラルプリント地はハンドニット地の一部分に、10SSコレクションに使用されたチュールは、トップスを飾る大きなラフルや終盤のミリタリー風グランドソワレのスカート部分に使用され、アトリエに残っていたボタンは色別に分けられ、様々なアイテムに刺繍パーツとして使用されている。ユーズドのコカコーラのトレーナーやデニムパンツ、ミリタリージャケットはカットされ、リボン状に裂いたファブリックを通されて、それまでとは全く違う華やかな表情を見せる。バガボンド(=放浪者)のように、周りにあるものを思いのままに身に着けたかのようなスタイリングは、その実全てが緻密に計算されたもので、彫刻的なシルエットに生まれ変わったアイテムによって新鮮な美しさを見せていた。
2016年07月24日7月7日までドーバー ストリート マーケット ギンザ1階のイベントスペースでは、ヴィクター&ロルフ(VIKTOR&ROLF)2016春夏オートクチュールコレクション「PERFORMANCE OF SCULPTURES」の展示販売が行われている。今年の2月にパリで開催された2016春夏オートクチュールコレクションは、「洋服は彫刻と同じものだと言われているが、今回はまさに彫刻を作りました」とデザイナーが語るように、パブロ・ピカソなどから着想を得たキュビズムを感じさせる彫刻的シルエットと、白のポロシャツを融合したアーティスティックなピースでインパクトを与えた。今回は、そのショーにも登場した6ピースのオートクチュール作品がイベントスペースに展示されているとともに、プライベートオーダーも受け付けているという。また、同コレクションと同じ素材である白のテクニカルピケのポロドレス(34万2,000円)、チュニック(30万5,000円)、ポロシャツ(9万8,000円)をそれぞれ白と黒の2カラーで展開するカプセルコレクションも登場。すべてのアイテムには、イベントスペースに鎮座する象の彫刻にちなんで描かれた象のイラストタグと、ブランドタグにはデザイナー手書きによるシリアルナンバーが施された。なお、これらのアイテムが実店舗で購入できるのはドーバー ストリート マーケット ギンザのみとなっている。
2016年06月14日ヴィクター&ロルフ(VIKTOR&ROLF)が1月27日、パレ・ドゥ・トーキョーで2016春夏オートクチュールコレクションのショーを開催した。アートとファッションの融合を目指す2人は、今季「Performance of Sculptures」と題して彫刻と服をミックス。テクニカルピケ素材のポロシャツを基本形に、キュビズムやシュールレアリズムを思わせる仮面のような装飾を施したドレスを発表した。全てのルックにはドクターマーチンを合わせ、スポーティな印象でまとめつつ、大きなラフルや大きく開いたデコルテなど、クチュール的な要素を加えて女性らしさも強調。ショーが進むにつれ、装飾は大きくなり、構造は複雑になっていく。太陽のような丸い仮面や、顔をいくつも重ねたドレスなど、後半に登場したアイテムはアートピースそのものだった。前が見辛いのか、着用するモデルたちはおっかなびっくりでウォーキング。シュールでありながらユーモラスで楽しい雰囲気もにじませ、会場は和やかな空気に包まれた。そしてこのコレクションが伏線となって、ポロドレス、チュニック、ポロシャツ、そして目の形のブローチの4種のカプセルコレクションが、ラグジュアリーオンラインショップ、モーダ・オペランディ(www.modaoperandi.com)上で販売されることが発表された。昨年はプレタポルテから撤退した彼らだったが、このような形で服を手に入れられるようになったのは嬉しい限りだ。
2016年02月08日ヴィクター&ロルフ(VIKTOR&ROLF)が5月13日から6月9日まで、伊勢丹新宿店メンズ館3階のインターナショナルデザイナーズでポップアップショップをオープンする。15SSコレクションでは“ボディワークス”をテーマに、遊び心に溢れながらも知性を感じさせるアイテムの数々を展開。ナイロンを始めとしたスポーティーな素材と、レザーやコットンといったクラシックな素材を組み合わせて制作された。カラーは男性らしい色合いで構成。中でも今季を代表するボトルグリーンは、アイテムにラグジュアリーな雰囲気を与えている。
2015年05月15日ヴィクター&ロルフ(VIKTOR&ROLF)は、パレ・ド・トーキョーを舞台に1月28日、15SSオートクチュールコレクションを発表。牧歌的でシュールな作品を見せた。「私は、自分の作品に心と魂を込める。そして制作過程で我を失う」というフィンセント・ヴァン・ゴッホ(Vincent van Gogh)の言葉を引用しながら、ゴッホの描く風景画が放つ強いエネルギーにインスパイアされたという。女性のハミングが不気味な印象を残す映画『ローズマリーの赤ちゃん』のテーマのリミックスが流れる中、麦わら帽子とサンダル、そしてバティック(ろうけつ染め)のドレスを着用したモデルが登場。ファブリックはオランダのブリスコ(VLISCO)社とのコラボレーションで、布の両面にプリントを施すことで、花柄をカットアウトしてコサージュに仕立てることを可能にさせた。ショー冒頭はモチーフのアウトラインのみで、徐々に色が増し、ドレスのボリュームが膨らみ、バティック、あるいは麦で編んだコサージュが加えられ、麦わらの帽子が極端に大きくなっていく。本コレクションのうち3点は、既に現代アートコレクターであるハン・ネフケンス(Han Nefkens)によって買い上げられている。これは、購入、コミッションピースをボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館に寄贈、長期貸し出しするという「the Han Nefkens Fashion on the Edge project」の一環で、最終的には美術館に寄贈する予定。
2015年02月12日「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR&ROLF)」は9月27日、15SSコレクションを発表した。ギャザーを寄せ、ボリュームを出した造形的なトップスやワンピースがメイン。片方のショルダーやウエストなどにフリルを形作り、歩くたびに揺れる。スカートもフレアで軽やかな表情。合わせられるのはタンクトップやサイクリングショーツ・トラウザーなどスポーティーなアイテム達。造形のみならずテキスタイルも印象的。パンチングが施されたスポーツ素材に明るいフラワープリントやアブストラクトなグラフィックを乗せた生地が面白い。白、ラベンダー、スカイブルーと相まって春夏らしい明るい雰囲気にまとまっている。
2014年09月29日