メゾン キツネ(MAISON KITSUNÉ)の2017年春夏コレクションが発表された。ブレイク・エドワーズ(Blake Edwards)監督の映画『The Party』の風刺喜劇の世界を探求した今シーズン。インド人俳優が巻き起こすハリウッドでのドタバタ劇を描いたコメディタッチな物語の世界を、自由奔放な女性像に変えて表現。プレイフルでありながらも今までよりもエレガントに、そしてロマンティックに。自由な組み合わせからは、フレンチガールたちの楽しい遊びが感じられる。軽快な装いは、流れるようなシルエットから生まれる。クレープやサテンを使用したエレガントなワンピースにはラッフルをプラスして、シースルーのトップスにはプリーツを施して、リラックスムードを流し込む。身体の動きにシンクロするように、動けばさらにその魅力を拡大する。新鮮に映るのはペイズリー柄で、エフォートレスなスタイルの中にインパクトを与える役割を果たしている。なかでも、ワイドシルエットのワークパンツはこれまでブランドがあまり提案したことのなかったスタイルだ。そして、春夏の定番とも言えるストライプやチェック柄は、いつもよりエネルギッシュに表現。ストライプは一層カラフルに、チェック柄はより大胆にあしらった。その様相は幻想的でありながらも生き生きとした雰囲気を醸し出す。ウィットに富んだディテールやテキスタイルが溢れる中、刺繍やプリントとなりユニークな表情を見せてくれたのは愉快な動物たち。特にゾウは映画の中にも登場したアイコニックな存在と言えよう。一方、透明なPVC素材のバッグやポーチに現れた魚は、2017年リゾートコレクションのジャック・タチの風刺喜劇の世界を受け継いだ、ヴィラ・アルペル邸宅の噴水彫刻をモチーフにしたものである。カラーは、ネイビーやブラック、グレー、エクリュといったニュートラルカラーに、イエローやオレンジ、そしてターコイズを加えることで遊び心をプラス。さらに、女性らしいパステルカラーを織り交ぜて、ロマンティックなムードを加速させている。
2016年10月26日ネーム(Name.)の2017年春夏コレクションが、2016年10月22日(土)、東京・渋谷ヒカリエで発表。東京ファッションウィークを締めくくる大トリということもあり、会場内のどよめきに期待感がにじみ出る。今シーズンの着想源は、The Whoの『The Kids Are Alright』から連想したノスタルジーなイメージと、Ryan McGinleyの同名の写真集から連想する豊かな色彩感覚や自由な若者達。同じ名前ながらも、異なった世界観を持つ両者が組み合わせられた時のメッセージをワードローブに落とし込んだ。ノスタルジックな世界の若者達を洋服から感じたシーン。それはまるで親のタンスから引っ張り出してきたような大ぶりのアイテムが現れた時だ。ジャケットにせよコートによ、パンツにせよ、2回りほど大きめに着こなしている。ハイウエストでタックインしたスタイリングや、アウターの上にさらに大きいベストレイヤードするなど、一見不慣れなようなバランスが、程よい均衡を生み出す。そんなモノクロ映像が脳内に流れるアパレルを現代に引き戻しているのが、パキっとしたカラーパレットだろう。オレンジやレッド、ブリーチしたインディゴをアクセントに加えることで、ブラックやキャメル、ヌーディカラーのアイテム達がより輝いた。着想源となった2つの“The Kids Are Alright”。その要素の強い部分も弱い部分も隠すことなくぶつけた結果、鮮やかさを孕んだ、どこか懐かしい洋服として結実した。
2016年10月25日コートメール(COTE MER)の2017年春夏コレクションが、2016年10月22日(土)に発表された。ランウェイには、ドーベルマンインフィニティのスウェイ(劇団EXILEの野替愁平)も登場した。ファーストルックからラストまで、一貫して捻りの効いたストリートウェアが登場。今季のテーマは“路地裏の美学”だ。デザイナー自身がロサンゼルスで暮らしたという経験や、古い洋服を好む美学を反映し、自分の生活の延長線上にあるようなコレクションを披露した。巧妙なデニム使いが、ストリート一色に染まったワードローブにアクセントをもたらす。フード付きビックサイズスウェットの片腕部分だけに用いたり、ペンキで汚したような跡をつけてジャケットに仕立てたり、ダメージジーンズとして登場させたり…。使い古されたヴィンテージ風の素材を用いることで、尖ったストリートウェアに有機的な一面を持たせた。何点か現れたデニムジャケットにも注目。バックには、着物の帯を用いた和柄模様の装飾が施されている。一方、肩や背中の上の方には3Dプリンターで製作したという、ひし形のようなオブジェが。異素材の混合だけではなく、古い物と最新の物とを混ぜ合わせて、新たなミックススタイルを提案している。ジャケットを解体してボトムに仕立てなおす、再構築の技を用いたことも今季の特徴の一つだ。一度利用した素材を再活用したり、古いものに価値を見出そうとする姿勢。こうして完成したワードローブは、決してメインストリートではない“路地裏”の美しさへと観る者を導いてくれた。
2016年10月25日プラスチックトーキョー(PLASTICTOKYO)の2017年春夏コレクションが2016年10月22日(土)に発表された。テーマは「イミグレーション」。入国審査やドレスコードなど、ある一つの空間に入るための「規定」に注目し、それを揺さぶるようなショーを展開した。証明が落とされた仄暗い会場。ランウェイには、向かい合うようにナイフやお皿といったテーブルセットが並び、その間には食事ではなく数本の蛍光灯が置かれている。アートワークの展示空間のような異質な演出は、まるでディナーという規定に縛られた場の解体を示唆しているようだ。序盤は、スーツをベースにしたルックが登場。パンツの裾をスネまでカットし、ブーツのように丈が長い革靴と合わせたり、ジャケットの背中を切り取り、シルク素材をなびかせたり。フォーマルウェアの代名詞とも言えるスーツを解体していく。グレーのストライプスーツは、ベストにブルーのシルクの袖を組み合わせ裾口を絞り、まるでブルゾンのように再構築。パンツの側面には、同じくブルーでラインを施し、スポーティな印象に仕上げた。フォーマルなイメージがあるツイードは、ゆったりとしたシルエットでジャージのようなセットアップに。アウターも一般的なジャケットではなくパーカーに仕上げた。ナイロンのパンツやウィンドブレーカーなどのスポーティなアイテムと合わせて、さらにかっちりとした印象を崩していく。終盤には、ベルトを使ったルックを展開。デザイナー、今崎契助が「ストリートを象徴するアイテム」と語ったベルトを何本も重ねて作ったベストは印象的だ。カジュアルなアイテムをフォーマルに見立てることで、ドレスコードをかいくぐること様を表現しているこのベストは、まさに「イミグレーション」をテーマに掲げる本コレクションを表すアイテムと言えるだろう。
2016年10月25日ケイスケ ヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)の2017年春夏コレクションが、2016年10月22日(土)に渋谷・みやした こうえんにて披露された。アキコアオキ(AKIKOAOKI)に続くファッションポートニューイースト(FASHION PORT NEW EAST)での発表となる。これまでの3シーズンは、“日本の子供たち”や“制服”を取り上げ、そのテーマの背後にある景色を表現してきた。4シーズン目となる本コレクションは“リボーン(Reborn)”がテーマ。これまでのブランドイメージを刷新して生まれ変わるような、ウィメンズに絞った新しい挑戦を見せた。スーツやシャツといったメンズ服のベーシックな素材を主に使用。素材だけでなく、シャツの袖をスカートから垂れ下げたり、ボタンを縦に羅列したりすることで、そのディテールも取り入れた。全体を通して特徴的なのは、フリルとプリーツを応用していること。ファーストルックから、大きなラッフルが揺れる白のスカートに、プリーツを部分的に取り入れた黒のトップスを合わせた。フリルは、パンツにライン上に施されたり、真っ赤なドレスの襟となったり、大きなカフスとなったり…様々なルックに姿を変えて登場する。色合いも、ピンクや薄いブルー、ホワイト、ベージュといった淡いものをセレクトし、フェミニンなワードローブと程よく調和している。シンプルな布地を彩るプリントは、写真家の草野庸子によるもので、女性クリエーターとも積極的に協働したという。これまでのコレクションには見られなかった、女性に寄り添う服作り。精神的“リボーン”を遂げたブランドの今後の展開が楽しみだ。
2016年10月25日アキコアオキ(AKIKOAOKI)が、2017年春夏コレクションを2016年10月22日(土)に東京・渋谷のみやした こうえんで披露。レナルメルスキー(Lena Lumelsky)に続くファッションポートニューイースト(FASHION PORT NEW EAST)での発表となる。目立ったのは、体のラインをあらわにするシルエットと、対比的にボリュームあるフォルム。コルセットはその手段として多様されている。シャツの上から巻いてウエストのシェイプを強調。裾には短冊型のピンストライプをヒラヒラと舞わせた。あるいは、オーバーサイズのデニムコートの上から施して、豪快な襟のボリュームとのコントラストを生んだ。腰の部分が不自然に飛び出したロココ調のワンピースは、女性をエレガントに見せる必需品として幾度となく登場している。肩から腕にかけてのラインは、ボリュームを持たせたものが多く、パフスリーブ、チューリップスリーブといった具合に、ギャザーを添えて空気を孕むシルエットを構築している。クラシカルなシャツは、袖のボリュームを控えめにする代わりに大きなリボンタイを設けて足し引きしたゴージャスを導きだした。人工的なシルエットだけでなく、バックが大きくあいたベストやテーラードジャケットは肌をそのまま見せることで女性的なラインを創出。露出という面でいうならば、シュミーズのようなサテン地のドレスは、裾も切り拓かれた解放感溢れるルックのひとつである。また、ワイドパンツはプリーツを施してランダムなヘムに仕立てることで動きを出し、流動的な空間を作りだした。素材にも、服と身体の空間を意識したものが採用されている。特に、肌に密着するラバー素材のボディコンシャスなワンピースや、透明のナイロンコートがそうだろう。フェミニンな花柄やマニッシュなストライプに紛れた近未来的なものたちが、このコレクションに大きなインパクトを与えている。
2016年10月25日レナルメルスキー(Lena Lumelsky) 2017年春夏コレクションが、2016年10月22日(土)、東京・渋谷にある、宮下公園スケートパークで発表。ファッションポートニューイースト(FASHION PORT NEW EAST)のトップバッターを飾るブランドのショーに注目が集まる。2007年、ヴェトモン (Vetements)のデザイナー、デムナ・ヴァザリアとともにステレオタイプスとして東京コレクションに参加しているデザイナー、ヘレナ・ルメルスキー(Helena Lumelsky)。アントワープを卒業後、初めてのショーを行ったこの街で、原点に帰る気持ちで挑んだ。「LUCKY」をテーマに設定した今シーズン。従来ブラックを採用することが多いブランドではあるが、世界のネガティブな情勢と対照的な、ポップな色使いで、楽しげなワードローブを展開する。シルクやコットンといったナチュラルな素材を、一流の職人の手によって加工。一見化学繊維や合成繊維を思わせる技巧的な風合いを醸し出す。メッシュのように軽やかな加工が施されたヌーディーなテキスタイルは、着ている人の肌の色をパッと明るくするような印象すら与えてくれる。アシンメトリーなアイテムが立体的な物量感をもたらしているので、春夏のウェアといえど、過剰なシンプルさは影を潜めている。それよりももっと日常に、普段の生活に寄り添うような、気張らないシルエットを意識した。例えば、コルセットは通常の締め付けるデザインではなく、体を包むような柔らかさがもたらされている。歩くたびに揺れ動く洋服の表情が、女性たちの内なるポジティブな願いと通じ合い、美しさに拍車をかける。「LUCKY」を意識したからこそ見える、フェミニンな魔法が会場を包み込んだ。
2016年10月25日エトセンス(ETHOSENS)は、2017年春夏コレクションを東京・渋谷ヒカリエで2016年10月22日(土)に発表した。東京で9年目を迎えたエトセンス。今季のテーマは「交わる線」だ。白い菱形のブランドタグ「white rhombus」に向き合い始めた2015年秋冬。そこから線の面白みに惹きつけられるかのように、シーズンを越えて同じテーマ「線」に向き合い続けている。昨シーズンはテーマ名も同じ「交わる線」であったが、今季は視覚的な仕掛けを添えて、より複雑なウェアを提案している。線と線の交差する様からイマジネーションを膨らませて、ドッキング型の新ウェアが誕生した。デニムジャケットの上にまたデニムジャケット、ボンパージャケットにさらにボンパージャケット。同じアイテム同士をレイヤードしているかのようにみせる独特のフォルムが、表現しがたいまとまり感へと繋げている。白いTシャツはツヤのあるシャツと繋ぎ合わせた。コットン風のカジュアル素材から覗く、光沢を帯びたシャツ地。異なる個性を持つ2つのウェアであるが、同系色でまとめることで、ユニークな一体感が出来上がっている。また、ラインへの意識はディテールへのこだわりにも影響。パンツやコートには大きくスリットを配し、どのトップスも通常より長めのスリーブに整えられている。また、ベルトやサスペンダーを使った遊びも面白く、ロングコートの裾よりもさらに低い位置でベルトが垂れ下がている。
2016年10月25日サルバム(sulvam)が2017年春夏コレクションを2016年10月22日(土)に東京・渋谷ヒカリエで発表した。アップテンポのランウェイは、観客を一気に飲み込んだ。モデルたちは、全員が小走りほどの速いスピードで颯爽と歩いていく。緩いジャケットにパンツ、粗めに編まれたニットを赤と黒で表現した力強いルックがスタート。袖の縫い方も荒く、本来内側になるはずの断切り面が露わになっている。続くセットアップは、白い糸が飛び出していてシーチングのような粗目の素材が裏地として採用されている。脆いシャツは、縫い目がずらされていて、掛け違えたボタンによってそのジャケットにふさわしい“くしゃくしゃ”としたフォルムだ。アウターのライナーは、本来は一体化しているはずなのにあえてレイヤードの仕立てになっていて、早いスピードがマッチしている。風は躍動感の味方だ。“袖があるのに袖のない服”を揺らし、大きくスリットの入ったワンピースを靡かせた。縫製すべきところを安全ピンでとめた荒々しさは、縫い代をわざと外に出す豪快なディテールよりも、さらに雑多なイメージを与える。滑らかなベロアからローゲージのニットまで、あらゆる素材からなるルーズな洋服の装飾品としても役目を果たした。また、それと同時にパンクなイメージも連想させ、ボンテージパンツや縛ったベルトと相互作用を生んでいたようだ。こんなに荒々しくも力強いワードローブがなぜ完成したのか。それはおそらくブランド名でもあるサルバム(=即興演奏)が答えなのかもしれない。パターンをひく時も、縫製をするときも、服作りの過程で一瞬の感情を、純粋にぶつけた洋服。それが今回のコレクションではより顕著に表れていたように思う。
2016年10月25日ベッドフォード(BED J.W. FORD)の2017年春夏コレクションが、2016年10月21日(金)、東京・渋谷ヒカリエで発表された。ブランド創設以来、初めてのランウェイとなる今回、デザイナーの山岸慎平と高坂圭輔がどんなワードローブを展開するのか、会場が期待に包まれる。音楽を担当したのは、日本のバンド「yahyel(ヤイエル)」。デザイナーの憂鬱な気分を反映したような、内臓を動かす音楽が、空間に響き渡る。彼らのフィーリングは、テキスタイルの表情や洋服のシルエットにも顕出。肩や袖などがきっちりと作られている一方で、パンツやコートの裾はアシンメトリーにカットされ、揺らぎを感じさせるデザインだ。ジャケットやコートを多用しながらも、重々しさはあまり感じさせない。シャツを作るように作ったというこれらのアイテムが、スタイリングに統一感をもたらしている。テーマの“BATTLE DRESS JACKET”が色濃く出ているのは、カラーパレットだろう。ネイビーやキャメル、ブラックといった色は、どこか軍服を連想させる色合いだ。それぞれの要素が、輝きを放つ中、コレクションとしての“筋”を通しているのは、スタイリングの興味深さだ。ブラックのロングコートの下には、オレンジのストライプの大判スカーフをインナーのようにあしらい、丈に立体感を創出。同系色でありながら、素材の違うアイテムを上・下に配置し、歩いた時の動きの違いを楽しませてくれるものもあった。流行のシルエットなどには一切左右されず、自分が「カッコイイ」と思ったものだけを作ることに徹したという今シーズンのベッドフォード。これを機に、今後もランウェイでの発表をしていくという日本のブランドから目が離せない。
2016年10月24日ユキヒーロープロレス(YUKIHERO PRO-WRESTLING)の2017年春夏コレクションが2016年10月21日(金)、渋谷のライブハウス「クラブ キャメロット」にて発表された。今シーズンのコレクションは、人気ティーンファッション誌のモデルによって結成されたアイドルグループ「夢見るアドレセンス」や女優、秋野暢子を迎えた、ミュージカル形式で展開。 スポットライトが青い光を放ち、スモーク立ち込める会場内に設置されたステージには、土管や電柱などが並ぶ。これから何が起こるのか全く予測できないユニークで斬新な演出がブランドらしい。古典的なミュージカル映画を思わせる快活な音楽が流れ、『ヒールをはいた猫』という演目がスタート。猫に扮したメンバーによるダンスや歌がショーを盛り上げる。さらにストーリーは進行し、舞台は突如モデルたちによるランウェイに変化する。ポップアートをはじめとする「60年代のアメリカ文化」、ミュージカルの主役でもある「猫」、そしてブランドを象徴する「プロレス」。この通常は交わることがない3つの要素が、プリント、素材、シルエットで表現され、融合し、全く新しいものが生まれている。プリントは、メンバーが着用していた衣装にも施されていたアンディ・ウォーホルの名作『キャンベルスープ』を猫缶にオマージュしたものや、猫のモチーフをコピーのように何匹もプリントし、ポップアート風に仕上げたものなどが登場。裾を結んだシャツや、腰のくびれを強調したワンピースなど、シルエットも60年代らしい。モデルもマリリン・モンローのようなメイクで登場した。さらに、プロレスラーのキャラクターでさりげなく遊び心を演出。ニットにプリントされたリングのコーナーのモチーフは、一見グラフィカルな模様のよう。黒のデニムパンツはフロントから見るとクールな印象だが、後ろのポケットにはプロレスラーが。さらに、かっちりした印象のジャケットにはメッシュ素材を使用するなど、プロレスを切り口にイメージを崩していくようなディテールがなんともユニークだ。クライマックスには、デザイナー本人も登場し、モデルからミュージカルの役者まで全員を交えてダンスや歌で大騒ぎ。エネルギーと個性が溢れるブランドにふさわしい斬新なショーに幕を閉じた。
2016年10月24日ケイイチロウセンス(Keiichirosense)が2017年春夏コレクションを2016年10月21日(金)、渋谷・ヒカリエで発表。“共鳴”というテーマを掲げた今季は、不安定かつ抑圧の存在する現代に対して戦う姿勢を洋服に落とし込んだ。暗い会場に閃光が走り、辺りが明るくなってショーは始まる。ビニール製のジャケットやワンピースに、光沢のあるブルーやゴールドのタイトなスカートをスタイリング。近未来的な洋服は、現代のサブカルチャーをデザイナー・由利佳一郎のフィルターに通すことで生まれたものだ。らせん構造のような形状の布を施したタイツや、前から見ると純円に見えるポンチョからは曲線を纏うことへのこだわりを感じる。ワイヤーで形状を固定したスカートの曲線は歩くだけでは崩れない。服を作るというよりは“皮膚”を作ることを意識しており、銀のブラトップやタイトなシルバーのパンツなど、身体の動きに関係なくしっかりと形が決まるようなアイテムが多数登場する。日本の伝統的な要素がプラスされていることに注目したい。刺繍の和柄や、襟部分が着物になっている服、背中部分が大きく開いている帯…これは戦国時代から未来である現在にタイムスリップしてきたというテーマを反映している。バック・トゥ・ザ・フューチャーのように様々な時代・視点に立って、ケイイチロウセンスの考えている未来を映したコレクションだった。
2016年10月24日ユマ コシノ(YUMA KOSHINO)が、2017年春夏コレクションを2016年10月21日(金)に東京・渋谷ヒカリエで発表。コンセプトは“Optical Illusion”。エッシャーのだまし絵のような視覚効果を表現していた。ブルーのレーザーがランウェイの道筋を示し、ショーは始まる。ジャケットやスカート、ソックスに配されたアルチザンジャカードは、クリーミーなカラーのトップスと合わせて存在感を放った。重たげな印象を抱くと思いきや驚くほど軽々と揺れる。コレクション序盤は同系色のアイテムを合わせていたが、ミニマルなミュージックにイレギュラーな鋭い音が入り会場を期待感に包むと、徐々に視覚的なコントラストを訴えかけるように。暖色のオレンジと寒色のブルーのアイテムを組み合わせたり、光沢感で冷ややかな印象の素材とふわふわと暖かそうなニットなどの素材を合わせたり。さらに、テクスチャーをミックスすることで、引き立て合って相互作用を生んでいた。熱量を感じるマルチストライプのようなグラフィックは、リボンや裾のカッティングによる効果で、下から上へと私たちの視線を常に動かす。これは、水が重力に逆らって坂を上っていくように見えるエッシャーのだまし絵を想起させる。ラストは、ブラックと原色のプリーツウェーブのドレス。一枚の布から出来ているプリーツは、歩くと風を含み一瞬一瞬カラーバランスが変化する。釘付けになるような錯覚・視覚効果をグラフィックと素材感で表現し、期待で終始目が離せないコレクションだった。
2016年10月24日ジン カトウ(ZIN KATO) 2017年春夏コレクションが、東京・渋谷ヒカリエで2016年10月21日(金)に発表された。今シーズンのテーマは「Eternal Return(永劫回帰)」。1回ではなく、同じことが何度も循環していく意味の言葉を、巡り巡って、繰り返されていくファッションムーブメントに重ね合わせた。今再び感じる1920〜30年代ファッションの息吹。そんな時代のエッセンスを取り入れたコレクションを披露した。ファーストルックは、まるで優美な蝶を彷彿させるようなシフォンドレス。ボリュームのある裾の広がりがエレガンスを運ぶ。続いて、様々な色彩のバラなど、フローラルを取り入れたワンピースやドレスが登場。裾や肩部分のレース使いや、歩く度に揺れるフリルによって、まるで妖精のような雰囲気だ。そんな、優美なドレススタイルが中心だが、中にはクロプド丈のトップスにショートパンツやミニスカートを合わせた着こなし、ショート丈のサロペットなども披露された。ルックにはすべて、アクセサリーとしてチョーカーが取り入れられ、インスピレーションとなった時代を感じさせる。後半は大ぶりのビーズやビジュー、スパンコールといった、きらびやかな装飾使いを採用したドレスを展開。少しタイトめのラインで、ゴージャスな雰囲気が1920〜30年代に代表される名作『グレート・ギャツビー(The Great Gatsby)』の世界観を彷彿させた。
2016年10月24日ミューラル(MURRAL)の2017年春夏コレクションが2016年10月21日(金)に渋谷・ヒカリエで発表された。柔らかな木漏れ日の中、1人の女の子がゆっくりと歩をすすめる。ここはメランコリック ガーデン(melancholic garden)。彼女はまだ色をしらない。その女の子が身に着けているのは真っ黒の衣装。ジャカードのコートにかすかな光を受けて光る繊細なラメが唯一の色で、それでも大きな襟には立体的な刺繍が貼られていたり、パンツはエナメルを用いたり、黒一色のなかで一生懸命のお洒落を楽しんでいる。時には歪つな光沢を放つクロコの型押しを配して、フリルをたくさんあしらって、そしてラグジュアリーなレースはボトムスに多用して…、試行錯誤を繰り返している。そんな中、流れるラッフルに導かれて、辿り着いたのは色の世界。森の中で出会った花は彼女に色を教えてくれた。まだ合わせ方はちぐはぐで、ロイヤルブルーのワンピースには、裏地が赤く染まったピンクのブルゾン、中には黄色のメッシュをレイヤードして、沢山の色を寄せ集めた。フォレストグリーンのロマンチックなシャツには、目の覚めるようなイエローをあわせて、アクセントとして繊細なレースを施している。彼女が最後にたどり着いた世界は、どこか地に足の付かないような浮遊した空間。身に着けたのは、優しい赤とピンクのコントラストから成るメランコリーなワンピース。手刺繍による歪んだパールを装飾して“優雅っぽく”彩っている。肩のラインに沿うような小さなフリルの集合体も、裾で揺れる小さなタッセルも、すべてがこの浮遊した世界ではラグジュアリーに変わる。彼女のお洒落は足元にもぬかりない。フリルのサンダルや、ワードローブと同じく刺繍を施したサボ、時折グリッターシューズを織り交ぜて魅せていた。精一杯のファッションへの姿勢は、憂鬱なものでは決してなくて希望の光にみちたものだった。
2016年10月24日ビューティフルピープル(beautiful people)の2017年春夏コレクションが、2016年10月20日(木)に渋谷・ヒカリエで発表された。来シーズンから発表の場をパリへ移すことを公表し、今回は東京でのラストショーとなった。そんな今季のテーマは「Do it Ourselves=自分達でやってみよう」。春らしいレース・シフォンのワンピースやスカート、パジャマパンツ、オールインワンなどを展開。ブランドのシグネチャーアイテムとも言えるトレンチコートは、今シーズンノースリーブ仕様に。上着でウエストマークし、まるでドレスのような着こなしを提案した。全体を通してウェアはビッグシルエットで、リラックスした雰囲気が漂う。ポリエチレンや和紙といった素材使いによりシワ感を出し、テーマ通り“着る人が自分で味付け”できるように作り上げた。そんなウェアは小物使いで遊び、ヒネリを効かせた。2017年リゾートコレクションでも展開された、デザイナー・熊切秀典の「熊」をモチーフにしたアクセサリーは今季も豊作だ。ブランドのシグネチャーアイテム:レザージャケットを羽織ったテディベアのポシェットや、つま先のかぎ爪が光る熊のファーサンダルなど。ゴールドやシルバーのかぎ爪は、ブレスレットやスニーカーの装飾にも取り入れられた。さらに、イエローやオレンジといった、鮮やかなカラーサングラスも着こなしのアクセントに。ランウェイショーの最後は、デザイナー自身がテディベアの着ぐるみを纏って登場。テーマに合わせて、自分たちのバンド演奏で締めくくり、会場を沸かせた。
2016年10月23日ベッドサイドドラマ(bedsidedrama)が2017年春夏コレクションを2016年10月20日(木)、東京・渋谷ヒカリエにて発表。テーマは“daydream believer”。起きてても夢を忘れないデザイナーの、10周年への意気込みが感じられた。ブランコと窓が吊り下げられた幻想的な会場に、スローテンポの曲が流れ始めてショーは始まった。動物のぬいぐるみが付いているマフラーや、袖にフェザーがついたオールインワンが、会場をふわふわとした優しい雰囲気で包む。ぼんやりともやがかかったような象徴的な柄は、トップスやワンピース、スウェットなどにカラーを変えて登場する。シルエットは眠りに落ちる時のようにリラックスしており、ルームウェアのようなセットアップやワンピース1枚で完成されたスタイリングも。ぬいぐるみを抱えて、夢を見る準備は万端といったところだろうか。靴やかぎ針編みのパンツに鎖のモチーフを付けたり、大きなタッセルがついたテニスラケット、ロウソクのヘッドピースなど非現実的で無秩序なモチーフは、私たちの夢の中での風景を思わせる。カラーパレットはアースカラーや、ホワイトやグレーで基本的にナチュラルな風合いだが、単色のレッドワンピースなど主張の強いアイテムも。カーキのブルゾンの胸元に配された動物は歴代のルックで登場したキャラクター達で、10周年の意味合いも込めている。最後は忌野清志郎の「デイ・ドリーム・ビリーバー」の女性ボーカルアレンジが流れ、締めくくられたショー。柔らかな夢を私たちに見せると同時に、10年経っても色褪せないデザイナーの夢を反映していたコレクションだった。
2016年10月23日ヒロココシノ(HIROKO KOSHINO)の2017年春夏コレクションが、2016年10月20日(木)に恵比寿ガーデンホールにて発表。“BOUNDARY(境界)~あたりまえへの挑戦~”と題された今季のコレクションは一体どのようなものなのか、会場は期待に包まれた。登場したファーストルックは、サイドにラインが入ったスキニーパンツにタンクトップを合わせたシンプルなデザイン。素材はジャージのようなもので、伸縮しながらドレープを作る。続く数ルックも同素材だが、スポーティな印象を与えるそのラインはやがて曲線となり、デザインにユニークさをプラスしていった。突然、曲調の変化と同時に、ワードローブも変化。赤や青、黒がぶつかり合うキュビスム絵画のような柄が現れた。キュビスムを創始したピカソ風の描写を取り入れたモデルのメイクが、このユニークな柄と共鳴する。写実的な絵画を捨て、自らが考えるリアリズムをキュビスムによって獲得しようとしたピカソは、コレクションのテーマである“あたりまえへの挑戦”をした代表的人物といえるだろうか。多彩な素材のうちいくつかは、スポーツへの関連を想像させた。メッシュのタンクトップや、ダンボールニットのように厚みと柔らかさを持った生地。アクティブな要素を保ちつつも、曲線を描く絶妙なカッティングによって優雅さを損なわない。常に前へ、先へと挑戦しようとするスポーツが、“あたりまえへの挑戦”というテーマの元に、キュビスムと一つになっていく。終盤は、オールホワイトとオールブラックのルックのみだ。メッシュやカッティング、ジャカードといったマテリアルの多様性を生かし、それらを重ね、ワードローブに変化をもたらす。当たり前のカラーに限定された中での表現の挑戦には、崇高ささえ感じることができた。
2016年10月23日ディスカバード(DISCOVERED)の2017年春夏コレクションが、2016年10月20日(木)に東京・表参道ヒルズで発表された。今季のテーマは“stick out”。1993年にリリースされたザ・ブルーハーツ(THE BLUE HEARTS)のアルバムに影響を受け、パンクロックの冷たい印象を服に落とし込んだ。序盤は、ブラックのベロア、レザー、メッシュなど冷徹な印象を与える素材で黒の多様性を表現。ハードなブラックアイテムにグリーンのソックス、ピンクのアームカバーなどの小物をスタイリングし、レイブパンクの雰囲気を漂わせる。ショーが進むにつれ、グレーのヒョウ柄テーラードジャケット、深みのあるブルーのベロアセットアップなどが登場し、カラーパレットはブラックからだんだん多彩に変化していく。幾何学柄のカラフルなグラフィックはポストモダンを表したもので、シャツやオールインワンに配され存在感を放つ。ピンクとブルーのグラデーションニットやホワイトのパーカーなど淡いカラーのアイテムが並ぶが、パステルイエローのジーンズにダメージ加工を施したり、ショート丈のトラウザーやベルト、サンダルにスタッズを光らせたりすることでヒリヒリとした空気感をキープ。ロックに携わる人達のはみ出る精神性を、服を通して刺激的に私達の目に焼き付けていた。
2016年10月23日アン ソフィー マドセン(Anne Sofie Madsen)の2017年春夏コレクションが、2016年10月20日(木)に東京・渋谷ヒカリエで発表された。東京での発表は、昨シーズンに続き2度目となる。ファーストルックは、ブラックのオールインワン。パンツ部分の布が太ももあたりまで分裂し、歩くたびに揺れて舞う。テーマは“failure(失敗)”。まともな形の服に至らない不完全さが危うい雰囲気を醸し出す、フェミニンなワードローブが展開された。この未完成さを象徴するのは、切りっぱなしの素材を組み合わせたルックたちだ。レザー、スエード、オーガンザ…。厚みも質感も異なる異素材のピースを、まるでテープを貼ったように重ねたり、待ち針で留めただけのようにして繋ぎ合わせ、ワンピースやスカートに仕立てていく。切りっぱなしの布からは糸が飛び出し、縫い合わす糸も処理されずに垂れ下がったまま。このディテールは、より思い切ったフリンジという形になって現れた。服から飛び出す細かい付属物が空中で遊ぶ様子は、観る者になんともいえない浮遊感を味わせる。また、柔らかい素材にギャザーを入れて服全体に這わせたルックからも儚さが漂う。終盤になると、ランジェリーを彷彿とさせるアイテムの登場によって、この危ういフェミニンさは決定的となった。光沢のある肌色のスリップのようなワンピース、また、肌が透けたミニ丈のドレス。ライン状にあしらわれたスワロフスキークリスタルの輝きが、“失敗”を超えた先の良き未来を示唆しているようだ。アン ソフィー マドセンは、「人は皆、“失敗”を元に成長していく。失敗の感覚を入れることで、デザインにもユニークさを出したかった。」と語る。未完成の服が導く次なる形状への期待感が、あらゆる可能性を秘めたワードローブの魅力を伝えてくれた。
2016年10月23日ミントデザインズ(mintdesigns)の2017年春夏コレクションが、2016年10月19日(水)、東京・恵比寿にあるリキッドルームで発表。“SUBWAY”というテーマにふわさしい、暗くひんやりとした空気の中、一体どんなワードローブが披露されるのか、会場が高揚感に包まれる。共通するエッセンスは、靴紐のように洋服を編み上げているレースたち。腰から裾にかけて大きくレースアップされているものから、ポケットに当たる部分の切り込みだけ編み上げているもの、靴をぐるぐる巻きにしているものまで、幅広い表現で洋服に変化を加えていた。テーマを反映しているのだろうか、生地の重さが絶妙に操作されているものが多い。一見すると透け感のあるシースルー素材のように思えるファブリックも、動きを加えた時にあまり肌の色が出てきていない。それとは対照的な軽い生地は、柄の重なりが生まれるようにレイヤードされ、光が通過する分量を、きっちりと計算したバランスが組まれている。特にも興味深い、“重ね着”は、ワンピースのようなロングトップスに、軽やかなパンツを合わせたもの。ある時はパンツにネオンカラーを加え、透けて見える色合いに目が眩み、またある時は、パンツのブラックが下から土台となり、トップスの軽快さを引き立てていた。全体を通してみると、パーカやロングシャツ、ワイドパンツ、スウェットなど、どこかマニッシュで退廃的な気配が漂うアイテムが差し込間れている。この“モノ”自体の力強さをベースに、軽やかな素材使いやレースでのシルエット操作を加えることで、新しいフェミニンのあり方を提案した。
2016年10月22日レオナード・ウォン(LEONARD WONG)が、2017年春夏コレクションを渋谷・ヒカリエで2016年10月19日(水)に発表した。ドーン、ドーン、と一定間隔で重低音が響く。暗転すると、前のキューブ型のスクリーンに不気味な映像が映し出された。何かがもがき苦しみ、黒い膜を突き破ろうとしていて、その映像に私たちは画面に食い気味に見入ってしまう。そして次の瞬間……膜が破壊された。中から現れたのはAyaBambi。2016-17年秋冬コレクションでもファッションフィルムに登場したこの2人による強烈なダンスは、さらに観客の視線を一斉に集めた。注目のファーストルックは秋元梢。赤いドレスに足元はモノトーンストライプのショートブーツ。サラサラの髪を高く結って、首元のVネックをより美しく見せる。続いたのはレザーを駆使したジャケットとパンツ、そしてVネックの名残をのこしたトップスを合わせたスタイリングだ。Vネックに引き続き、オフショルダーやホルターネック、詰まった首元に付けたハーネスのようなディテールが見受けられた。そして首元から繋がる前垂れのような生地が1枚、フロント部分に居座っている。そこから派生してなのか、沢山の図形を組み合わせたデザインも特徴的。女性の強さを表現するような幾何学的なカッティングとなって表れた。カラーは、ブランドのアイコニックカラーである黒と白が交互に繰り出され、中盤にネイビーとチャコールグレー、フェミニンなぺールピンクを差し込んだ変化のみ。思い返してみても、最初の赤は異質的だったのが分かる。硬質なレザーとシアーなテキスタイルといったテクスチャーの異なる素材で強弱をつけ、無機質な色をより高貴なものに昇華していた。「真実とはなにか?」今回のコレクションを始めるにあたって、レオナード・ウォンはその問いを全員に投げかけた。膜が破れ、己に立ち返った瞬間のランウェイ。強く生きる女性の美しさがここに集約されていた。
2016年10月22日シナ スイエン(sina suien)の2017年春夏コレクションが、2016年10月19日(水)に東京・青山で発表された。今シーズンは、デザイナー・有本ゆみこが訪れた新潟の西明寺から着想を受け、僧侶の衣服=袈裟、着物、インドのサリーなどをイメージしたウェアを披露。モデルがゆっくりと登場し、手になにやらキューブのようなものを手にしている。よく見るとスピーカーで、独特の音色が辺りに鳴り響いてゆく。そんな中登場する衣服は、インドの民族衣装である「サリー」の要素をあらゆるところに感じさせた。淡いブルーやパープル、ベージュの色彩に映える、美しいゴールドの装飾と刺繍。目を凝らすと、スパンコールやビーズ使いも見られ手の込んだディテールに気づく。ウェアと共に音の欠片が歩き回り、まるで“刺繍のオーケストラ”が出現する。さらに、ロングワンピースはレオパード、チェック、ドットと異なる柄の布を縫い合わせたかのような、パッチワーク風のデザインに。元来「袈裟」は、身に纏う僧侶が世間で不要となった布を自ら縫い合わせ、進行の旗印に昇華していたという。そんなストーリーとのつながりを感じさせた。他にも、左前合わせのドレスやガウンの帯使いは、着物からのインスピレーションを感じさせる。いずれもバックスタイルでの絶妙な肌見せや、肌が透けるレース使いによって、妖艶な雰囲気を醸し出しているのが特徴だ。 着た人が眠るように、心地よく陶酔するさまを込めて名付たというブランド名を感じさせる、優艶な服と演出であった。
2016年10月22日テンボ(tenbo)の2017年春夏コレクションが、2016年10月19日(水)、東京・表参道ヒルズのスペース オーにて発表された。毎シーズン洋服を通じメッセージを投げかけるテンボがテーマに選んだのは、「ハンセン病」だ。完全な治療法が確立される前の時代に発生した、感染者や感染の疑いがある者への差別や隔離運動である「無癩県運動」。その被害者は感染者自身にとどまらず、その子供達にも広がっていたという。ワードローブを彩るテキスタイルには、その子供達や被害者の姿や心の叫びをイラストで表現。ポップな印象に込められたメッセージに観衆の心が奪われる。療養所から故郷を想う人々は、その街に帰ることができないことが多い。その“望郷”の思いは、姿を変え、あらゆる人を美しく彩る洋服になる。展示をデザインに落とし込んだシャツワンピースを身に纏うのは、着る人の個性を引き立てるような役割を果たしていた。ショーの終盤には、四季をイメージした4つのドレスが。ライウェイが季節に埋め尽くされると、ハンセン病回復者の槙ミヨさんが白のドレスで登場した。井上あずみによる『故郷』が響き渡る中、これまでの苦労や苦悩を、ファッションという媒介を通じて投げかけ、重くなりがちなテーマを前向きなイメージで捉えさせてくれるコレクションとなった。
2016年10月22日ドレスドアンドレスド(DRESSEDUNDRESSED)の2017年春夏コレクションが、2016年10月19日(水)に東京・渋谷ヒカリエにて発表された。モーレス、モラル、マナー。今シーズンは、集団における規律を意味するその3つの言葉を念頭に置いた。始まりを飾ったのは、シンプルなスーツに透明感ある白いコートを合わせたルック。2ルック目もハーフパンツのスリムなフォーマルスタイルだ。しかし、1人、2人と姿を現すごとに最初にあったテーマとはかけ離れていく。ダブルブレストのデフォルメされたコートや、袖が膝程にまでだらんと伸びたシャツなど、元来正装に用いられるはずのアイテムがアレンジされている。アイテム同士がぶつかることで、その規律はさらに緩和。シャツにはシャツを羽織って、あるいはデニムのルックに“きっちりと”サスペンダーを合わせて、さらにはストッキングを連想させるヌーディーなトップにだらんとベルトののびたトレンチコートを合わせて…。あげればきりがないが、根本は制服であっても最初の念頭に置いた3つの言葉からはかけ離れたものばかりである。終盤には、片袖のないトップスやアウターまで登場する。さらに片側は、袖山部分が外れてしまっていて肌があらわになっている状態。それなのに、今までだらんと前を空けてきていたシャツはピタッと一番上のボタンまで閉めて、トレンチコートはしっかりベルトを結んだ丁寧な着こなしだ。デザイナーの北澤武志と佐藤絵美子曰く、モーレス、モラル、マナーという言葉に繋がるようなフォーマルなものをストリートのユーモアで工夫したという。また、時折見せた官能的な露出は、規律とは真逆にある人間の羞恥な部分をとらえたもの。そして、佐藤が先シーズンから今シーズンに至るまでの中で出産し、子供への想いがさらなる遊び心あるデザインに繋がったようだ。今回が節目の10シーズン目。2人が作り出すファッションの“規律”はこれからも私たちを楽しませてくれそうだ。
2016年10月22日ヨハン クー(Johan Ku)の2017年春夏コレクションが、東京・渋谷ヒカリエで2016年10月19日(水)に発表された。今季のインスピレーションとなったのは、イギリスの映画『JUBILEE(邦題:聖なる年)』。1578年、エリザベス一世は大魔術師ジョン・ディーに呼び出された天使エアリエルに、来世の英国を案内される。そこは墜落しきった無法地帯の世界だった、、。パンク調の音楽が鳴り響く中、映画の舞台=英国を感じさせるチェック柄のウェアが登場。レッドやピンクなど鮮やかなカラー使いをし、上にスタッズを散りばめたり、異なるサイズ感の柄を組み合わせたり、またはパンツに空いた穴からパターンが顔を出したりと様々だ。さらに、シルバースタッズが肩や手首から飛び出すガウンや無数の穴が空いたトップス、切り裂かれたスカートが英国の“パンクスタイル”を彷彿させる。そんなスタイルを助長するのが、ヘッドギアのようなアクセサリー。チェーンやトゲが無数に生え、無骨なパンクを完成させる。さらに後半展開される、トップスからシャツ、アウターまであるゆるウェアを染めあげるプリント使い。ロンドン出身のフォトグラファー・Andrew Penkethと共に手掛けたデザインは、映画に登場するエリザベス一世を彷彿させる巨大な王冠や、空き缶・安全ピン・アクセサリー・スタッズなど様々なものが、無秩序にばらまかれた混沌としたもの。まるで映画で登場した来世の英国=「無法地帯」を感じさせた。
2016年10月22日アキラナカ(AKIRA NAKA)が2017年春夏コレクションを発表した。カッティングとオリジナルレースの組み合わせによる新しい透け感の演出や、立体感のあるレースやオリジナルの幾何学模様のレースにより、軽さと上質感を両立したコレクションとなっている。
2016年10月22日ユキ トリヰ インターナショナル(YUKI TORII INTERNATIONAL)の2017年春夏コレクションが、東京・ラフォーレミュージアム六本木で2016年10月18日(火)に発表された。シーズンテーマは「-花に魅かれて-<Race on Race>」。ファーストルックは、官能的なカクテルワンピースに黒いレースを重ねたトレンチコートを羽織ったスタイル。今季はエレガントなミリタリールックから始まった。続いて、淡いカモフラージュ柄が次々と繰り出されていく。女性らしさは崩さぬように添えられた控えめな遊び心が、花柄の刺繍やビジュー、スパンコールから感じられる。曲調が変わると同時に、ボタニカルシフォンのワンピースが登場する。双子ルックのように現れた2人のカーディガンには、それぞれフラウンスが施されていたり、大きなスリットが入っていたりと、薄手のニットもシフォンと同じく動きの出る工夫が凝らされている。レースは随所に用いられていて女性らしさの基となっている。ムードはずっとフェミニン、ロマンティック、そしてエレガンス。その中で、色柄は迷彩からストライプやドットへ、カーキからソフトピンクやペールブルーへと移り変わる。やがてプレイフルな花柄プリントやマルチボーダーのアイテムが登場し、ガーリーな女性のサマータイムを想わせるコーディネートが主軸となっていた。終盤に差し掛かったころカラーは一変。印象的だったのは、またしても双子ルックでみせた黒のワンピース。ボトムアップ部分にはモノトーンのフラワーモチーフが静かに咲き、裾にかけて動きが出るようにシアーなプリーツをレイヤードしている。さらに動きを予想したアクセントカラーとして、フレアワンピースの裏側にはピンクを差し込んでいるのが面白い。フィナーレにかけてはシアーな素材を多用。さらに自由奔放な躍動感あるロマンティックなワードローブが並んだ。小物では、ワンカラーのルックにゴージャスなイヤリングや、大振りのネックレスを投入。一方で、麦わら帽子を合わせるようなカジュアルガーリーなルックには、ふわりと揺れるスカーフを首元と手元にあしらった。
2016年10月21日まとふ(matohu)が2017年春夏コレクションを2016年10月18日(火)、東京・表参道で発表した。今シーズンのテーマは「うつくし」。「美しい」という意味ではなく、古語での解釈に則った「かわいい」「愛らしい」という意味合い。平安時代の『枕草子』にも「なにもなにも、小さきものは、皆うつくし」という一節が登場するほど、日本では昔からこういった美意識があったようだ。着た人・見た人が「かわいい」と感じることで、心が和らぎ、優しい気持ちになるような服作りをしたとデザイナー・堀畑裕之と関口真希子は語る。まとふのフィルターを通した「かわいい」は、少しファニーなモチーフへ落とし込まれた。無数に並ぶピーナッツや飛び回るツバメ、さらに「小さき人」とデザイナー達が名付けた、小人が踊り回るようなモチーフがジャケットやパンツ、トップスなど、あらゆるウェアに刺繍されている。また、Aラインのワンピースやスカートは、ふんわりとしたドレープやギャザーを採用することで、柔らかく甘い空気感を出した。肌が透けるレース使いのトップスも、そんな雰囲気を助長する。先シーズンも登場した「オートモード平田」の石田欧子デザイナーとのコラボレーションハット。今回は、まるで陶芸品が歪んだような、独特なフォルムが特徴で、着こなしのアクセントに取り入れられた。ここ何シーズンか、“日本の美意識”をテーマに服作りをしてきた「まとふ」。完結した暁には、大きな展覧会を開催し、これまでのウェアをまとめて見られる機会を作るそうだ。
2016年10月21日トクコ・プルミエヴォル(TOKUKO 1er Vol)が2017年春夏コレクションを2016年10月18日(火)に渋谷ヒカリエにて発表した。デザイナー・前田徳子(Tokuko Maeda)本人が世界各地を旅して得たインスピレーションを落とし込んでいくトクコ・プルミエヴォル。今季のテーマはコートダジュールで、現地の文化・色・雰囲気のエッセンスが詰め込まれていた。コレクション前半はレモンのプリントを施したブラックのワンピースや、イエローのシースルーアイテムで爽やかな印象。これはイタリアとフランスの国境の街、マントンで開催されたレモン祭がヒントになっており、大ぶりな首飾りからピアスまでレモンがふんだんに使われている。音楽が変わると同時にプリントのイメージは、葡萄、さくらんぼ、苺など、ヨーロッパの温暖な気候で育つヨーロッパの果物へと変化。ブラックのレースにアップリケ刺繍で大胆にアクセントを加えていた。さざなみが聞こえ会場が青い光に包まれると思うと、今度はエビやタコ、海藻など海の生き物がアーティスティックなモチーフが現れる。まるで洋服の中に海の世界が広がっているような全面プリントのセットアップなど、ターコイズやペルシャンブルーなど様々な青を組み合わせて幻想的に海を表現していた。シルエットは全体を通してリラックスしたものであり、麦わら帽やサンダルでまるで本当にリゾートに旅しているような気分に。デザイナーが自分の軸をしっかり持ち、流行に左右されず旅の中で見たものを落とし込んだ洋服を見ることで、私たちも同時に旅を追体験できるようなコレクションに仕上がっていた。
2016年10月21日