クイーン アンド ジャック(Queen&Jack)の2024年春夏コレクションが、2023年8月29日(火)に発表された。モードな雰囲気を纏わせて日本・イタリアの共同制作を実現したウィメンズの高級制服ブランド・クイーン アンド ジャックは、前回に続き2度目となるラインウェイショーを実施。セーラーカラー、チェック柄といったスクールウェアの要素をキーワードに、モードな雰囲気を纏うポジティブでエレガントなスクール・ガールを表現する。ブレザーのシルエットを再構築コレクションの中核となるのは、先シーズンより継続するブレザーをベースに、シルエットを再構築したアウター類。大胆にカットアウトしたジャケットは、複雑なパターンメイキングを施し、胸上にギャザーやタックを入れた立体的なシルエットに。セットアップやアウター類は、ナポリのスーツファクトリーとのコラボレーションによるものだ。メンズライクなチェックやストライプ×甘さのあるデザインメンズライクなチェックやストライプのアイテムには、セーラーカラーやプリーツのディテール、断ち切りのフリルなどを配して少し甘さのあるデザインをプラス。たとえば、チェックのブレザーの裾には大きめのフリルを、チェックのベストと合わせたブルーの袖には、袖全体にギャザーを配しており、ボーイッシュな中にフェミニンなエッセンスを落とし込んでいる。エレガントなレース使いコレクションを一気に華やいだ雰囲気にさせるレースを用いたルックにも注目。レースのセーラーワンピースはその好例で、セーラーの片側にコサージュを、袖にはビジューを配したエレガントな一着に仕上げている。このほか、ブラウスの襟元やジャケットから覗く袖口、ボトムス、ジレ型ワンピースには、ペイズリー柄のレースを贅沢に使用した。プリーツスカートとスラックスの組み合わせ制服の定番であるスカートに配したプリーツは、キュロットやジャンパースカート、ワンピースなど様々なスカートに応用。その中でも目を惹くのは、プリーツスカートとスラックスを組み合わせたスタイリングだ。通常、スカートとスラックスの両方が用意されている制服だが、そのどちらも同時に着用することで新たなスタイルを提案した。
2023年09月01日コンダクター(el conductorH)の2024年春夏コレクションが、2023年8月29日(火)に発表された。抑圧からの解放、自由な世界へ「suppression(感情・活動・苦痛・力などを抑えること)」と題した今季のコンダクター。2023年6月ファッションウィーク期間中のパリを訪れたデザイナー長嶺信太郎は、日々市内で様々な主張を展開する人々を目にする。日本ではあまり見ないような光景を見たことから、当たり前だと思い込んでいる日常の中でも、実は“本来の感情や活動が抑圧されているような状態は自然ではないのではないか”。そう考えた長嶺は、抑圧からの解放、自由になるべくもがいている人々の姿にフォーカスしたコレクションを提示する。エレガンスとアンチテーゼの共存今季のポイントとなるのは、エレガンスとアンチテーゼの共存を目指したルックだ。たとえばセットアップは、グレンチェックウールの上から有刺鉄線を格子状に顔料プリント。クラシックさの中に、どこか殺伐とした雰囲気を落とし込んでいる。また、同様の意図が見られるルックとして、ズタズタに引き裂かれたスウェットパンツやデニムパンツ、ショルダーなどの継ぎ目が露わになり中綿が確認できるブルゾンなどが挙げられる。退廃的なアイテムとトラッドな要素を持つアイテムをコレクション内に混在させ、エレガンスと反骨精神の共存を図ったのである。スクールガール調×意外性のあるアイテム前回に引き続きウィメンズアイテムも展開。スクールガール調のスタイルをベースとしつつも、異色なアイテムを組み合わせることで、抑圧された環境下に置かれた内面的な葛藤を表現している。いわゆる制服によく見られるチェックのミニスカートに、パープルやイエローといった鮮やかで印象的なスカジャンを合わせたルックは、その意外性を表した好例だ。ブラックミーンズとのコラボ2シーズンで継続して展開するブラックミーンズ(blackmeans)のとのコラボレーションシリーズの新作にも注目。ネパールの職人技が光る複雑な編み地を施したハンドニットベストに加え、ブラックミーンズ定番のコインケースが登場した。ハルタとのコラボローファーにはメッキパーツ付タッセルを足元を品よくまとめあげるのは、老舗靴メーカーハルタ(HARUTA)とのコラボレーションシューズ。オリジナルのメッキパーツをつけたタッセルが印象的だ。ルーズソックスなど長めの靴下と合わせて披露された。
2023年09月01日ペイデフェ(pays des fées)2024年春夏コレクションが、2023年8月29日(火)に、東京・旧三河島汚水処分場喞筒場(ポンプ)施設にて発表された。現代の重圧から解き放たれて“泳ぐ”今季のテーマは、水中を意味する“underwater”と、文化における背景を指す“underground”を組み合わせた造語「Under Waterground」。古生代デボン紀に生きた海洋生物と安部公房の短編『水中都市』を手掛かりに、“社会や世相といった重圧から解き放たれて、遊泳魚のように自由に泳ぎきる”という想いを込めたルックが登場する。印象的なフリンジコレクション全体を通して、自由にヒラヒラと揺れるフリンジが特徴的。例えば、ファーストルックに登場した真っ白のウェアのように、肩に大きく広がるフリンジを取り付ければ、非日常的な新しいシルエットとなる。深海魚モチーフのジャカード深海魚の鱗を想起させるデザインのジャカードドレスは、透け感のあるフェミニンなデザインに。足元は、ふんわりとした起毛感のある真っ赤なパーツを配し、幻想的な古生代の世界観を現代に呼び起こした。パステルを中心としたカラーパレットまた、ペイデフェらしい神秘的なカラーパレットにも注目。ピンクからブルーに移り変わるグラデーションを施したトップスやパンツをはじめ、淡いブルーのワンピースなど、ファンタジックでカラフルなルックに仕上げている。角度によって艶が変化ショーを締めくくるフィナーレには、シルバープレートが大胆にあしらわれたドレスが登場。角度によって異なる艶を放つサテン生地は、本コレクションのテーマとなった深海に差し込む光と重なる。
2023年09月01日ウィザード(wizzard)の2024年春夏コレクションが、2023年8月29日(火)に発表された。「オーバーダブ」をテーマに「オーバーダブ(Over Dub)」と題された今季のウィザード。音を重ねてゆくオーバーダブ=多重録音と呼応するかのようにして、薄く軽快なファブリックを重ね、連ねてゆく構成が、そのコレクションには見てとれる。たとえば、異素材の組み合わせや細かく波打つようなギャザーのディテール。ミリタリーテイストのスカートには、サイドに波打つようなプリーツを組み入れて、テイストの対立を軽やかにまとめあげて。また、スタンドカラーのティアードシャツやシャツドレスには、波打つようにギャザーを寄せて、ふわりと立体的な表情を生み出した。レイヤードは、衣服の多重性をもっとも明確に見てとれる要素だろう。上品な佇まいながらもリラクシングなシルエットに仕上げたテーラードジャケットの下には、袖口や裾を切りっぱなしで仕上げたライニングを重ねて。ライニングがジャケットの下から覗くよう長さを設定するなど、重ねの妙を引き出す絶妙なバランス感覚が、コレクション全体に通底している。春夏のレイヤードを叶える素材は、薄く繊細、軽やかだ。ショートスリーブのシャツは、繊細な模様を織りなすレースが涼しげな透け感を生みだす。フロントジップブルゾンやミリタリーコートのディテールを取り入れたスカートも、ミリタリーのタフな印象を払拭し、あくまで軽快、空気が行き交うような抜け感を漂わせた。カラーは、重ねる、連ねるという多重性を繊細に引き立てるかのようにして、ホワイトやグレー、ベージュといったトーナルカラーがベース。ブルーやカーキで力強さをプラスしつつ、随所に抽象的で柔らかな総柄を取り入れている。
2023年09月01日フェティコ(FETICO)の2024年春夏コレクションが2023年8月28日(月)に東京・寺田倉庫で発表された。フェイ・ウォンをミューズに、ソフィ・カルの作品集にも思いを馳せて今季のミューズとして捉えたのは、香港のシンガーソングライターで俳優のフェイ・ウォン。ウォン・カーウァイが監督を務めた青春映画『恋する惑星』などに出演したフェイ・ウォンは、1990年代にアジアン・ポップスの女王として名を馳せた人物だ。また、ステージ上では前衛的な衣装を、プライベートでは90年代らしい洗練された衣服を身に纏い、当時のファッションアイコンとしても注目を集めた。そしてもう1つの着想源となったのは、フェティコのデザイナー・舟山瑛美が久しぶりに訪れたパリでふと手に取ったという、フランスの現代美術家ソフィ・カルの作品集『THE HOTEL』。イタリアのクラシカルなホテルでメイドとして働いていたソフィが、旅行客が過ごした空間をカメラで記録した非常にプライベートな作品集で、好奇心とスリルが混ざり合う刺激的な一冊となっている。今季は、そんなフェイ・ウォンと作品集『THE HOTEL』にヒントを得ながら、舟山が追求する女性の美しさを引き立てるコレクションを提案していく。ステージ衣装を思わせるドレスやジャケットまず最初に注目したいのは、フェイ・ウォンのステージ上の衣装を思わせる、90年代のシルエットを落とし込んだアイテム。レースのように繊細なサマーウールのミニドレスや、透け感のあるシルクコットンに艶のある素材を合わせたジャケットやパンツなど、センシュアルな肌見せを叶えるエレガントなピースが展開された。壁紙やベッドフレームをイメージパジャマ風のシャツとパンツのセットアップやベロアのボディスーツに落とし込まれた芍薬柄は、作品集『THE HOTEL』に登場する壁紙から着想を得たもの。また、ベッドフレームの装飾をパンチング加工によって表現した、ワイドなデニムパンツも提案された。ランジェリーディテールこれまでのコレクションでも繰り返し提案されてきたランジェリーディテールは、パープルとブラックでコントラストを効かせたキャミソールドレスや、コルセットのラインを取り入れたロングドレスなど随所に。また今季は、サイドのカットアウトが印象的なスイムウェアも展開される。ブランド初のバッグブランド初となるバッグとして、がま口のクロージャーがアクセントになったハンドバッグと、ボクシーなトートバッグもランウェイに。いずれも『THE HOTEL』のインテリアを思わせる薔薇柄がエンボス加工で表現された、エレガントなデザインが魅力的だ。さらにブラン(BLANC.)とのコラボレーションサングラスや、ラインストーンとスタッズが施されたクロッグシューズも発表された。
2023年08月31日ヴィルドホワイレン(WILDFRÄULEIN)の2024年春夏コレクションが、楽天ファッションウィーク期間中の2023年8月28日(月)に、渋谷ヒカリエにて発表された。テーマは「The Prayer」。アメリカでの日常や文化を取り入れてヴィルドホワイレンがショーを開催するのは、ニューヨークで開催して以来6年ぶり。アメリカと日本の2カ国を拠点とするデザイナー・ループ志村は、日曜の午前中に教会へ訪れるのが習慣だという。家族を大事にすること、仲間を思いやること、そんなことを頭に描きながら流れる教会での時間が好きだというループ志村は、教会での様子を表現すべく、「The Prayer」に沿ったコレクションを展開する。“祈る人”でショーは幕開けテーマよろしくショーは手を合わせて祈りを捧げるモデルからスタート。光を浴びて祈る姿を見ると、まるで会場が教会になったかのような錯覚を覚える。清廉な印象を受けるホワイトのシャツドレスに身を包み、バックには天使と口づけする人物が描かれたタペストリーを配した。ちなみに、コレクションアイテムの随所に見られる絵は、幼い頃から多ジャンルな芸術に囲まれて育ったループ志村のバックグラウンドを表すように、すべて彼が描いたものだ。世界を旅する中で描き続けてきたものを採用し、その試みは今後も続けていくという。ミリタリー要素を日常に落とし込んで身近な出来事、すなわち日常や文化をコレクションに落とし込むことも目指した今季。アメリカでは、メッセージ性などは一切なしにミリタリー要素を当たり前のようにファッションに取り入れる人が多いと感じたループ志村は、ミリタリーなディテールをウェアの中に取り入れた。大きなポケット4つをフロントで繋ぎ合わせたベストを、カーゴパンツやメッシュ素材のトップスと組み合わせている。荘厳なゴールドの刺繍繊細な輝きを放つのは、ロングTシャツなどに施されたゴールドの刺繍だ。ホワイトのトップスにはドラゴンの刺繍を、タイダイ柄のロングTシャツにはフロント全面に、中央で羽を広げる鳥や草花などの刺繍をあしらい、荘厳な雰囲気をプラスしている。レザーのキーケースなど小物類小物類にも注目したい。ボックス型ハンドバッグや、表面に生地の重なりが見える大きなショルダーバッグなどが登場する。また、レザーのキーケース兼ネックレスには、あるストーリーが込められている。デザイナーがやんちゃだった頃、全く家に帰らなかったことにちなみ、家に帰ることを促すかのようにコレクション内では鍵を首から下げることにしたそうだ。なお、セットしている鍵は、ブランドがスタートしてからの10年間の中で使用してきたアトリエや事務所の鍵を使用している。
2023年08月31日ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)の2024年春夏コレクションが2023年8月28日(月)、上野・東京国立博物館の法隆寺宝物館にて発表された。儚く美しい夏の情景を切り取って「親密な日常のポートレート」をテーマに掲げる今季のハルノブムラタ。着想源となったのは、1960・70年代の華やかな社交界をフィルムに収めた写真家スリム・アーロンズと、青年2人の一夏の恋を描いた映画『君の名前で僕を呼んで』だ。いずれの作品も夏のバカンスを情景として美しく、儚く切り取り、観る者にエレガンスを感じさせる。カジュアル×エレガンスの出会いデザイナー・村田晴信は今季、そんな夏らしいカジュアルさが融合した、"軽やかなエレガンス"を纏った女性像を提案する。ブランド初となる春夏のランウェイショーは、法隆寺宝物館の風通しの良い水盤を囲んで開催。静寂かつミニマルな空間に、映画『君の名前で僕を呼んで』のサウンドが心地よく流れていた。軽やかな素材で、気分まで軽快にファーストルックには、“ふわりとした”ジャージー生地の純白ショートドレスが登場。足元にはオーエーオー(OAO)とのコラボレーションスニーカーを合わせ、素材から足取りまで軽快な様を表現している。また、シアーなブロックチェックが目を惹くロングワンピースや、濃いブルーのシルクコットンのセットアップなど、こだわり抜いた軽やかな素材のルックも散見された。鮮やかなカラーパレットさらに、鮮やかなカラーパレットも今季ならでは。モノトーンを基調に重厚なムードでまとめ上げた2023年秋冬コレクションから一転、夕焼けをイメージさせる赤く染まったシルクドレスや、ブルーの海のようなグラデーションを施したチュールトップスなど明るい色使いが印象的だ。ゆったりと過ごす時間の中でデザイナー・村田晴信が意識したのが、ゆったりと過ごすバカンスで生まれるエレガンス。描く女性像はそのままに、朝はフレッシュなコットンを使用したシャツ、昼はパイル生地のローブ、夜はドレッシーなブラックドレスといった、時間の移ろいとともに変化する空の色やオケージョンに合ったウェアを展開する。ラストルックは、華奢な3本の肩紐が女性らしさを引き立てるブラックのナイトドレスで締めくくった。
2023年08月31日ナノアット(NaNo Art)の2024年春夏コレクションが発表された。テーマは「Rest in peace」。「Rest in peace」――“終わる”ことの美しさ今季のコレクションの着想源となったのは、特定の堆肥に埋めると約1年で水と二酸化炭素に分解される「生分解ポリエステル素材」だ。リサイクルやリユースと違い、生分解はそこに一度終わりが存在している。廻り続けるのではなく、自らの役割を終えて美しく消えていく――その姿に、デザイナー・後藤と田中は自らの人生や死生観を重ね合わせたのだという。洋服を人体に見立てて散見されたのは、洋服を人体に見立て、命を吹き込んだかのようなデザイン。たとえば、心房や心室のモチーフを襟のデザインに投影したポリエステルのシャツは、今季のテーマを体現したアイコニックなアイテムのひとつだ。上品な光沢を湛えた優美なキャミソールドレスは、肩ひもの部分が三つ編みの髪の毛のように編み込まれているのがユニーク。そのほかにも、静脈に見立てたシャーリングなど、ルック全体に人体を思わせるディテールが散りばめられていた。パジャマやガウンなどの“寝具風”ウェアパジャマやガウンといった寝具風のウェアは、「Rest in peace(=安らかに眠れ)」というテーマをそのまま反映させた、ウィットに富んだアイテムだ。パジャマはエレガントなセットアップ、ガウンはシックなコートとして着こなすことで、“部屋着感”を払拭。中にロングシャツをレイヤードするなど、意外性のあるシルエットを組み合わせたスタイリングもまた、シティライクな雰囲気を加速させる。履き口の一部を切り取ったシューズコーディネートにアクセントを添えるシューズにも注目したい。2023-24年秋冬コレクションのルックにも登場した鹿革のシューズは、デザインをアップデートして今季もお目見え。“輪廻転生からの解脱”を示唆するかのように、本来環状であるはずの履き口の一部が切り取られている。ニュアンスカラーに鮮烈な青を差し込んでカラーパレットは、荘厳な雰囲気を演出するホワイトとブラックを中心に、くすんだグリーンやベージュ、ペールグレーなどのニュアンスカラーを織り交ぜているのが印象的。そんな中、ひときわ視線を奪ったのが鮮やかなブルーのパジャマジャケット。彩度の低い世界に差し込まれた強烈な青が、コレクション全体を引き締めるのに一役買っていた。
2023年08月31日カナコ サカイ(KANAKO SAKAI)の2024年春夏コレクションが、楽天ファッション・ウィーク東京1日目の2023年8月28日(月)、東京・渋谷のヒカリエホールにて発表された。カナコ サカイ、初のショーを開催ショーを通して、ルックブックでは伝えきれないカナコ サカイというブランドの精神性を、世界に向かう姿勢を表現したかった──2022年春夏シーズンにデビューしたカナコ サカイが、今季ブランド初のランウェイショーを行うに際して、デザイナーのサカイカナコはそう語る。では、その精神性とは何かというと、ひとつには自由が、肯定の身振りがあるのではなかろうか。サカイはなるほどウィメンズウェアを手がけているが、しかしそれは単に女性に向けた服であるというより、カナコ サカイというブランドと出会い、ふと魅了された人すべてに向けられている。そこにはだから、本当はウィメンズ/メンズという区分もない。サカイはこうした姿勢を、「自由を纏う」と言い表している。ランウェイを歩いたモデルのおよそ半数が男性モデルであるのも、サカイ自身のそうした姿勢の自然な表れなのだ。さて、コレクションにおいて自由は、たとえばカナコ サカイを代表するアイテム、洗練された佇まいのテーラリングに見て取れる。ハリのある素材で構築的なフォルムをかたち作るという、テーラリングのいわばソリッドな側面を、いかにして開くか──それは文字通りに衣服の面を開くことであり、具体的にはフロントの両側に施したスリットや、バックに深く入れたベンツなどによって、ジャケットやロングコートは歩みに合わせて律動的に揺らめき、生き生きとしたダイナミズムを示すことになる。硬さを開かれ、柔かな表情を獲得したジャケットは、そのスリットの下に繊細なレース、さらにはそれらを身に纏う身体の存在を、層に層を重ねて繊細に指し示す。きらめきを帯びたフリンジをティアード状に連ねたドレスは、刻一刻と波打つように光を反射し、定まった表情を見せることなく偶然が織りなす表情を引き出す。あるいは市松模様を編み目で表したワンピースは、身体のシルエットを心地よくなぞる。だから、ここでは衣服を着る人の身体そのものが肯定されているのだといえる。サカイが自らの製作においてもうひとつ強調するのが、出会いの偶然だ。今季、そこにたとえば、軽快なチェスターコートの市松模様に用いた「螺鈿織り」を挙げることができる。螺鈿織りとは、貝殻を使った伝統的な装飾技法「螺鈿(らでん)」を、織物に用いたものだ。七色にきらめく硬い貝殻が、自在に形をなす柔らかな織物になる──そんな新鮮な驚きが、今季、サカイと螺鈿織りの出会いにはあったという。螺鈿織りを手がけるのは、日本海を望む京都・丹後の織元「民谷螺鈿」。揺れうごく丹後の海のきらめきを、織物にできないか──そうした発想から生まれた螺鈿織りは、丹後の織物の歴史のなかで紡がれてきた伝統技法「引き箔」に、海が育んだ貝殻を交叉させるものだ。螺鈿織りでは、薄く削りだした貝殻の真珠層を、フィルムの上に貼り付ける。これを、細かな柵状に裁断する「引き箔」の技術で糸となし、織物の緯糸として織りこんでゆくのだ。丹後ならではの歴史と自然が交錯することで生まれる螺鈿織りは、素材との出会い、その魅惑にふと捉われては突き詰めてゆく、カナコ サカイの姿勢を象徴するものだといえるではなかろうか。
2023年08月31日08サーカス(08sircus)の2024年春夏コレクションが、楽天ファッションウィーク期間中の2023年8月28日(月)に発表された。内なる強さとエレガントさを共存させて今季の08サーカスは、“レイヤードとバランス”に着目。とりわけ今季は、ウィメンズの素材感やバランスをメンズウェアに取り入れることで、従来よりもジェンダーレスの世界観をエクスパンド。静かに佇む強さと、ウェアの動きによって生まれるエレガントさを共存させたコレクションを展開する。レイヤードでシルエットを変化まず始めに注目したいのは、“レイヤードとバランス”にフォーカスし、レイヤードすることで形を変化させることが可能なルック。たとえば、メンズライクなパープルのジャケットの上にビスチェを合わせることで、ボリュームをシェイプさせフェミニンな印象を与えたり、透け感のある素材によって着る人の身体のラインをあえて見せたりと、シルエットに変化を生じさせている。前後で魅せる異なる表情“前と後”の関係性にフォーカスを当て、二面性のある洗練された空気を纏っているのも今季の特徴だ。それを象徴する、前後で異なる表情を魅せるアイテムの例となるのは、ファーストルックとして登場したトレンチコート。正面から見ると、縦にすっきりとしたロングトレンチコートだが、後ろから見ると、マントのディテールによってまるでポンチョのようにも見えるのがポイントだ。柔らかで透け感のあるファブリック素材は共通して、柔らかで透け感のあるものが多く見られる。エアリーで軽やかな着心地のシルク素材を用いたワンピース、ブランドが得意とする流動的な模様が美しい“墨流し染め”を施したヴィンテージサテンのパンツなどが例として挙げられる。黒を中心にベージュやアイスグレーを差し込んでカラーは、質感や透け感を通して様々な表情を魅せるブラックを中心に、美しさを際立たせるニュートラルなベージュ、落ち着いた色味のサックスやアイスグレーで、よりエレガントさをプラス。全体的にプリーツを施したトップスやスカートなどに、スタイリングに奥行きを与えるアイスグレーのカラーを採用した。
2023年08月31日KAMIYAは8月28日、国立競技場内の駐車場に設けられた特設会場で2024年春夏コレクションを発表しました。Courtesy of KAMIYA2015年にスタートしたMYneが、デザイナーである神谷康司の名を冠して「KAMIYA」とブランド名を変え、新たな歩みを始めたのが先シーズン。KAMIYAとして初の展示会を終えたばかりの神谷は、ビリー・プレストン(Billy Preston)の歌う「Nothing From Nothing」に出会い、彼の頭に去来したのは、ブランドとしての次のステージ、「ファッションショー」に挑戦してみたいという衝動でした。Courtesy of KAMIYAそして8月28日に開催された初のショーは、KAMIYAのロゴを施し、造作された壁を巨大なスピーカーを積んだトラックが破壊して登場するド派手な演出で幕を開けます。©FASHION HEADLINE©FASHION HEADLINE激しいダメージ加工やブリーチ加工を施したカットソーや、ダック地のワークジャケット、ペインターパンツやコットンニットなど、神谷が青春時代を過ごした大阪のアメリカ村にある古着屋をルーツと感じさせるアイテムが目立ちます。また、ショーの終盤には、バブルが舞う演出も。幻想的な雰囲気の中、「いかにリアリティをもってストリートで消化できる服であるか」という神谷の創作の根底を垣間見ることができたショーとなりました。Courtesy of KAMIYACourtesy of KAMIYACourtesy of KAMIYACourtesy of KAMIYA
2023年08月30日ティート トウキョウ(tiit tokyo)の2024年春夏コレクションが2023年8月24日(木)、新豊洲ブリリアランニングスタジアムにて発表された。アメリカ西部のフロンティア時代に立ち返って映画『ノマドランド』からインスパイアされたという今季のティート トウキョウ。"NOSTALGIA"をテーマに、アメリカ西部で過酷な労働をしながら旅をする遊牧民・ファーンの生き方を投影したコレクションを展開する。ランウェイは、アメリカの雄大な自然を感じさせる、落ち葉が一面に敷き詰められた会場で幕を開けた。ウエスタンファッション今季のムードを最も体現しているのが、ウエスタンファッションの要素を盛り込んだルック。ウエスタンホースを総柄でプリントしたジャンパースカートを、黒のひもで引き締めている。また。ジグザグ柄に刺繍されたジャケットやざっくり編みのメッシュニット、麻のベルトを合わせた水玉のオールインワンなど、開拓者時代を思わせるディテールも印象的だ。メリハリのあるディテールまた、光沢のあるシアーな肌見せシャツでウエスタンシャツを再解釈したり、温かみのあるコーデュロイ生地のシャツの胸元下とショートパンツに大胆なフリンジをあしらったり…とメリハリのあるルックも散見された。まるで遊牧民が厳しい環境の中でも強く生き抜いていく姿勢を表しているようだ。自然をイメージしたカラーパレットカラーパレットは、アメリカ西部の広大な大地を連想させるナチュラルなベージュのワントーンを中心に、カーキのスカートやグレーのジャケットを採用。さらに差し色として、空をイメージしたブルーのワンピースやキャミソールを取り入れることで、アクセントを加えている。
2023年08月27日エンジニアド ガーメンツ(ENGINEERED GARMENTS)は、2024年春夏コレクションを発表。ユニークな素材が多彩に登場多彩な素材使いにより、幅広いコーディネートの可能性を見せるエンジニアド ガーメンツの2024春夏コレクション。ナイロンリップストップや、さらりとしたヘンプ素材、プリントデニムなどアクティブな素材から、クラシカルなグレンチェックのリネン、艶やかな光沢を備えたサテン、ソフトなコットンポリエステルのベロアなど、ユニークな風合いの生地を用いたウェアが目白押しとなっている。賑やかなパッチワーク中でも目を引くのは、華やかなパッチワークのウェア。ピンクをメインカラーに、花柄や幾何学模様を組み合わせ、レースを装飾したセットアップやジレは、春夏らしい明るさを装いにもたらしてくれる。また、コーデュロイのパッチワークブルゾンやハーフパンツは、三角形のパネルを繋ぎ合わせジオメトリックなデザインを際立たせることで遊び心のある表情に。様々な色のチェック地を組み合わせたシャツもまた、鮮やかさの際立つエネルギッシュなアイテムだ。プレイフルなアクセントを加えたアイビールックスタイルは、アイビールックをメインに構成。アクセントをさりげなく取り入れた、プレイフルな装いを提案している。例えば、上品なグレーのジャケットとパンツには、花柄のネクタイとアニマルモチーフのカラーブロックベストをコーディネート。また、銀色のボタンが光るネイビーのブレザーには、緩やかにギャザーを寄せたパンツを合わせることで抜け感をプラスした。さらに、表情豊かなデニムジャケットとパンツ、ブルーのシャツのコーディネートには、幾何学柄のネクタイを結んでアクセントを加え、チェックオンチェックのセットアップにはストライプシャツ、ドットネクタイを合わせることで、異なる柄同士の調和を楽しむスタイリングに。この他にも、セットアップスタイルに賑やかさをもたらしてくれる、ロゴプリントのオフィサーパンツや、シアサッカーのジャケット、キャンディストライプのボタンダウンシャツ、薄く柔らかなポロシャツなど、アイビースタイルにぴったりのアイテムが充実している。アイキャッチなクロシェ編みニットまた、ウィメンズにおいては、クロシェ編みのニットジレやカーディガン、ワンピースがアイキャッチなポイントに。ホワイトのワンピースに重ねた、淡いピンクとパステルブルーのニットジレはチャーミングなエッセンスをもたらしている。一方で、ブルーとホワイトを基調した刺繍ドレスには、ネイビー、グレーのクロシェ編みカーディガンを羽織ることで、涼しげな佇まいを演出した。
2023年08月14日ネイプ(NAPE_)の2024年春夏コレクションが、2023年8月6日(日)に下北沢・アドリフトにて発表された。中立で居続けるための強さ「中立であるためには、中立で居続けるという強い意志が必要」──ネイプのデザイナー・山下達磨はそう語る。争うわけではなく、反骨精神を持ちながらも他者との接続を志向すること。ネイプはその難しさと尊さを、“neutral position”と名付けた2024年春夏コレクションによって我々に訴えかけてくる。ミリタリーの存在感今季のキーワードは3つ。一つ目は、ミリタリーテイストに託された“強さ”だ。中でも立体的なポケットを複数配したパンツや、紐を交差状にあしらったブラックボトム、ゆったりとしたシルエットのカーゴパンツなどのボトムス類が、着用者の足取りに確かな存在感を与えている。砂上に落とされた水二つ目は精神的余裕から来る“慈愛”。例えばそれはカラーリングに表れており、先述したミリタリーテイストに由来するカーキ色やサンドカラーをベースとしながらも、ときおり曖昧なブルーがペイントやプリント、スカーフ等に差し込まれることで、淡く優し気な表情が浮かび上がる。なお、ジャカード織にはギリシャ神話の“パエトンの墜落”から着想したアフガンストール柄が採用されている。青空にひるがえる旗三つ目は、精神的余裕があって初めて成立する“反骨精神”。ホワイトorブラックのシングルブレストジャケットの背面には、布に覆われた人物がプリントされており、あたかも何かを扇動しているかのように見える。しかしその人物が持っている赤い旗には、実はアラビア語で“昼寝”と書かれている。ブランド名“NAPE_”の“E”を抜くと“NAP(=昼寝)”になる、という発想から生まれたこのプリント。どんな状況であろうと、自分自身を支配できる強さと余裕を持ち、荒ぶる川の流れに逆らうことも流されることもしない──眩しいほどの青空に、その決意が赤々とはためいている。コラボレーションシューズ&テックアクセサリーもさらに、2023-24年秋冬コレクションでも好評を博したスニーカーブランド「フラワーマウンテン(Flower MOUNTAIN)」とのコラボレーションシューズや、「シーショアインク(seashoreinc.)」とタッグを組んだiPhoneケース、ストラップ等が発表された。
2023年08月10日アレキサンダー・マックイーンは、クリエイティブディレクター Sarah Burtonによる2024年メンズ春夏コレクションのルック画像を公開しました。Courtesy of Alexander McQueen今回のコレクションは、洗練されたシンプルさ、カット、プロポーション、シルエットに重点を置きました。解剖学的構造に対する継続的な探求により、より柔らかく、カーヴィーに作りこまれたデザインが特徴的。伝統的なウールテーラリングのアイテムは、丸みのあるシルエットまたはすっきりとしたシャープなショルダーラインと細いウエストのアイテムが登場します。Courtesy of Alexander McQueen衣服は、一見継ぎ目のないように体に巻き付けられています。儀式用に用いられる刺繍や柔らかなアップリケのハーネスは、マックイーンのアーカイブからインスピレーションを得て制作され、オランダの巨匠の絵画からインスピレーションを得た、立体的な手編みニットやコントラストの明暗法を用い描かれた花が特徴的です。マックイーンの長年のコラボレーターであるサイモン・アンドレスが開発した抽象的な折り目を表現したプリントは、ジャカードや刺繍でも表現され、身体つまり解剖学的構造を包み込む形で表現されています。Courtesy of Alexander McQueenCourtesy of Alexander McQueenCourtesy of Alexander McQueenお問い合わせ:アレキサンダー・マックイーンtel. 03-5778-0786
2023年07月23日アニエスベーでは、2023年夏のTシャツコレクションがラインアップしました。ボーダー柄やロゴプリントなど定番デザインの新色をはじめ、アニエスベーが日本に初上陸した40年前に想いを馳せた限定Tシャツ、さらにこの夏復刻したアーティストTシャツなど、夏のスタイルを自在に楽しむためのキーピースが7月31日(月)までの期間、全国のアニエスベーショップと公式オンラインブティックに揃います。【Artists T-shirts Special Edition】アニエスベーはかねてより、有名、無名を問わずフランスをはじめさまざまな国籍のアーティストに呼びかけ、キャンバスのような白地に自由な発想で彼らの作品をプリントした、アーティストTシャツ「T.shirts d'artistes!」をリリースして来ました。このコレクションは、1994年より今日まで続いています!日本では、初上陸から40年目の節目を迎える今年に合わせて、過去に発表した10名のアーティストTシャツが数量限定で復刻!時代を映し出し、瞬間を切り取ったアーティストたちの作品の中から特別にセレクトされた選りすぐりの10選を、「Artists T-shirts Special Edition」としてお届けします。Photo by Masaya Tanakadeja 40 ans!「Artists T-shirts Special Edition」特設サイトはこちらから ■Photo print T-shirtsアニエスベーを語る上で欠かせないエッセンスのひとつである「フォト」。ブランド創設者のアニエス・トゥルブレが創作活動のひとつとして長年に渡り慣れ親しんできた写真の世界にフォーカスし、彼女がファインダー越しに捉えた光やモチーフを転写したフォトTシャツが、今季のTシャツコレクションに加わりました。■Logo and iconic T-shirtsアニエス・トゥルブレの手書きサインに基づいて考案されたブランドのロゴTシャツをはじめ、手書きのメッセージやブランドのアイコニックモチーフを様々にプリントしたTシャツ、さらに、日本に初上陸した1983年から2023年までの時の流れに思いを馳せて「ハート」で繋いだ限定Tシャツも発売。Photo by Kotori Kawashima「the T. shirts collection !」特設サイトはこちらから 8月中旬よりアニエスべー ギャラリー ブティックでは、復刻版「Artists T-shirts Special Edition」10型とアーカイブTシャツの、展示・販売を予定しています。agnes b. galerie boutique ※「agnes b.」の正式表記は「agnes」の“e”の上に`(アクサン・グラーブ) 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年07月20日ダイリク(DAIRIKU)の2024年春夏コレクションが2023年7月12日(水)に国立競技場の駐車場で発表された。テーマは“MY HERO”。映画のヒーローたちに、愛を捧げてダイリクのデザイナー・岡本大陸は、子供の頃、父親の隣に座りながらよくテレビを観ていたという。そこに映っていたのは『大脱走』の名優スティーヴ・マックイーンであり、『燃えよドラゴン』のブルース・リー、そしてイタリア製西部劇・マカロニウエスタン映画から黒澤映画まで。当時、“古い映画だ”とさえ思っていたこれらの作品は、気が付くと自身の“ヒーロー”になっていたそうだ。そんな“映画のヒーローたち”に思いを馳せた今シーズン。ショーは「ハリウッドサイン」を模したオブジェの裏からヴィンテージカーが現れるという、まさに映画のようなドラマチックな演出によって幕を開けた。“MY HERO”のロゴ入りトップスまず目を引くのは、今季のテーマ“MY HERO”のロゴをあしらったシースルートップス。ある時は大胆に一枚で、またある時はスーツジャケットやスカジャンのインナーとして提案された。ブルース・リーの衣装を思わせるオールインワン『燃えよドラゴン』でブルース・リーが披露したトラックスーツを彷彿させるアイテムもランウェイに。イエローのボディにブラックのラインという劇中のアイテムと同様のカラーリングで仕上げたオールインワンは、ファスナーを大胆に開けて中のロゴを見せることで、ストリートなテイストに。ブラックのボディにグレーのラインでシックに仕上げたバージョンは、ブラックのロングコートを合わせることで上品な印象にまとめ上げている。ウエスタンファッションフリンジが大胆に揺れるアイテムは、マカロニウエスタン映画の登場人物たちを思わせるもの。長めのフリンジが目を引くデニムパンツはその好例。トップスには、フリルの装飾がフレッシュなムードを演出するチェック柄のウエスタンシャツを合わせている。スカーフを取り入れたスタイリング今季は、スカーフを取り入れたスタイリングが繰り返し提案されたのも印象的。長年愛用されたようなルックスのレザージャケットとパンツのセットアップは、スカーフを取り入れることで、無骨な中にクリーンなムードをプラス。首元が大胆に開いたブラックドレスは、スカーフを巻くことでアクセントを加えている。なお、ショーノートのあとがきは、長寿番組『日曜洋画劇場』の解説者として映画の魅力を伝え続けた淀川長治の名台詞、「さよなら、さよなら、さよなら…!!」の言葉で締めくくられており、細部に至るまで映画愛を感じられるコレクションとなっていた。
2023年07月15日マリーン・セル(MARINE SERRE)の2024年春夏コレクションが発表された。高鳴る鼓動を鮮やかに身にまとって“HEARTBEAT”—―「高鳴る鼓動」をテーマに2024年春夏シーズンでマリーン・セルが表現したのは、活気あふれるパーティに集まった多様な人々が、同じ脈打つリズムに合わせてグルーヴする世界観。デッドストック素材を再生したアップサイクルアイテムを中心に、フェミニニティとストリート要素が交錯するエネルギッシュなコレクションを展開する。官能的なリゾートムード散見されたのは、ハワイの美しさにインスピレーションを得たハイビスカス、鳥や動物など、南国を思わせるリゾート風の色鮮やかなモチーフ。これらはブランドのアイコニックな“三日月”モチーフと共に、ユニセックスで着用されるスカートや露出度の高いカットアウトドレスに配されることで、フェミニンなムードにどこかミステリアスでエキゾチックなテイストを加えている。表情豊かなドッキングドレスドレスアイテムには、大胆で遊び心あふれるドッキングを施して。中でも象徴的だったのは、プリーツスカーフやアップサイクルTシャツなどの表情豊かなファブリックをあえて不均一に繋ぎ合わせたロングドレスだ。布の落ち感と呼応したギャザーとドレープを効かせることで、メリハリのあるシルエットに仕立てている。ざっくりニットでエフォートレスなムードをプラス流れるような生地の使いかたとは対照的に、カントリー調で素朴なムードのニットウェアが織り交ぜられているのも面白い。かぎ針編みによってざっくりと編まれたカラフルなニットは体のラインを際立たせる端正なシルエットのドレスやミニスカート、再構築されたカーディガンなどに取り入れられ、コレクション全体に意外性のあるコントラストを生み出していた。ドレスやブルゾンなど、豊富なバリエーションのデニムウェアまた、ブランドのアイコニックなブルーデニム生地を用いたウェアは5ポケットジーンズをはじめ、セットアップやボクシーベスト、ミニスカートなど、カジュアルからフォーマルまで様々なスタイルで登場。デットストック生地を繋ぎ合わせることで、クラシックなシルエットを再構築していた。たとえば、デニム生地を斜めに紡いだクチュールライクなドレスは、ウエストラインを強調するステッチや、肌を大胆に露出するカットアウトなど、デットストック生地を繋ぎ合わせることで再構築。ブランドのアイコンである“月”はバストを象るようにあしらわれ、センシュアルな雰囲気を強調する手段として取り入れられている。
2023年07月13日ウェールズ・ボナー(WALES BONNER)の2024年春夏コレクションが、2023年6月21日(水)、フランス・パリにて発表された。「マラソン」をテーマに今季のウェールズ・ボナーのテーマは「マラソン(MARATHON)」。ランナーへとオマージュを捧げるようにして、ブランドのベースにあるスポーティ、テーラリングを基調としたコレクションを展開した。スポーツウェアは、ブランドのエッセンスであるばかりでなく、今季はそのテーマゆえに直接的な参照源であると言えるだろう。それはたとえばトラックスーツであり、スポーツ用のハーフパンツなどである。トラックスーツはバックの配色を大胆に変えるなど、ベーシックなアイテムの表情を変えている。また、サイドラインには組紐を添わせるなど、アフリカ的な要素を彷彿とさせるディテールが組み込まれている。一方、テーラリングは、ショルダーは端正なセットイン、シルエットは身体に自然に寄り添うラインを描く、洗練された仕立てが貴重。しかし、衿周りの配色を切り替える、ラペルを小さく設定する、デニム素材を用いる、パンツにはスポーティな側章を施すなど、随所にカジュアルな要素を取り込んだ。上で少しふれたように、コレクションにはアフリカの要素を散りばめている。手刺繍を施したラフィア素材は、スカートやベストに採用。ビーズをふんだんに用いたマクラメ編みのベストやスカートも見られる。あるいは、広くスタッズをリズミカルにあしらった装飾も用いられている。カラーは、ベージュ、ホワイトやブラックといったベーシックなものを軸に、ブルーやレッド、イエローといった力強い色味をスポーツウェアに採用。また、アニマル柄や花柄も取り入れ、存在感あるアクセントをもたらした。
2023年06月30日6月24日、 パリの中心部にある歴史的なフランス共和国親衛隊の馬術トレーニングアリーナに設けられた特設会場にてロエベ2024年春夏メンズコレクションショーが開催されました。Courtesy of LOEWEパースペクティブの研究。ものの認識とスケールを決定する「視点」、そして認識とスケールが描きだすシルエットについて。リンダ・ベングリスの巨大な噴水が取り囲む中、観客は広角で、また下から見上げるようにして、ある種の壮大さに圧倒されながらランウェイを眺めます。長いレッグ、高いウエスト、コンパクトなバストからなるシルエットもまた、そのような見方を誘います。Courtesy of LOEWE伸長されたプロポーション、ジェスチャー、製法の探求が、単純なものを婉曲的に、かすかなものを大胆に提示します。コレクションを構成するのはブレザー、コート、バンカーシャツ、ニットポロ、ツインセット、アーガイルニット、ジーンズ、チノパンツ。いずれも捻りをきかせながら、見かけの平凡さが目を欺きます。フィルターのように表面を覆い、緻密なストライプやピンストライプを描くクリスタル。動的カットにより、構築物と化すボディ。シューズはトラウザーへと成長し、地面から生えてきたかのようです。Courtesy of LOEWEこれまで以上にロエベらしく、予期せぬ手法が物事を覆してゆきます。ピンの刺さった、生地見本のような巨大なトップス。アクセサリーは衣類の一部に。切り刻まれたブロケードのトップスの上にクリスタルのハチドリ。きらびやかに装飾されたサングラス。Courtesy of LOEWE熟考されたカラーパレット。柔らかな色合いやソリッドなブルー、ブラックやカーキ。ラウンドトゥのチェルシーブーツやサンダル、バレエシューズ。スエードのペブル バケットバッグやパズルトートなどのオーバーサイズのバッグが、プロポーションに関する研究を深めています。Courtesy of LOEWEアートワークについてショーのセットは、アーティストのリンダ・ベングリス(1941年生、アメリカ・ルイジアナ州)が制作した3つの噴水を中心に展開されています。60年にわたるキャリアの中で、ベングリスは形態と物質性における絶え間ない革新によって芸術作品を再定義し、流体の予測不能な振る舞いを探求してきました。ブロンズ、ポリウレタン、ラテックス、グリッター、紙、プラスター(石灰または石膏を主材料とした塗装材料)、水などといった多様な素材に対して動的かつ物理的にアプローチし、伝統的な彫刻の境界に挑戦してきました。Courtesy of LOEWEベングリスによる最初の噴水は、1984年のニューオーリンズワールドフェアのために制作した《The Wave of the World》です。ショーでは以下の3つの作品が展示されています。《Crescendo》(1983-84/2014-15)は、《The Wave of theWorld》の進化形であり、ドラマティックに張り出した形状はクラッシュする波や火山の噴火を連想させます。3つの巨大な銅製の塔からなるBounty, Amber Waves, Fruited Plane》(2021)は、花のような形状が積み重なり、生命の成長や凍った水の爆発を想起させます。《Knight Mer》(2007-2022)は、藻類に覆われた岩のように水面から突き出ています。壮大でありながら親密なベングリスの噴水は、いきいきと脈打ち、観る者にエネルギーを伝染させながら、感覚と本能を触発します。Courtesy of LOEWEロエベについて1846年スペインにて誕生したロエベは、176年以上にわたって世界的なラグジュアリーブランドの一つとして名を連ねてきました。2013年からはジョナサン・アンダーソンによる指揮のもと、新たな章へ。知的かつ遊び心に満ちたファッションと、大胆でいきいきとしたスペインのライフスタイル、レザーにおける類稀な専門性を背景に、クラフトとカルチャーを重んじるブランドとして存在感を示しています。お問い合わせ:ロエベ ジャパン クライアントサービス電話:03-6215-6116
2023年06月30日ターク(TAAKK)の2024年春夏コレクションが、2023年6月25日(日)、フランス・パリにて発表された。細部の震え、繊細さとダイナミズム今季のタークのテーマ「GOD IS IN THE DETAILS (神は細部に宿る)」とは、多くの場合、建築家ミース・ファン・デル・ローエの言葉とされている。これに少しだけ補助線を引くと、実はこの言葉は、19世紀後半から20世紀前半にかけて生きたドイツの美術史家アビ・ヴァールブルクによって用いられたものでもある。ヴァールブルクが主に対象としたのが、サンドロ・ボッティチェッリをはじめとするルネサンス絵画である。ルネサンスとは古代ギリシア・ローマの文芸の復興のことであったが、この時ヴァールブルクにとって、古代の造形を甦らせて生き生きとした息吹を与えるのが、波打つ衣裳の裾や、風に揺れる髪といった細部であったのだ。たとえば、ボッティチェッリの《ウェヌスの誕生》を思い浮かべればよい。だから、今季のタークには、あたかも細波が震えるようなダイナミズムと静謐さが交錯している。それは、緻密な刺繍で波のようにファブリックを連ね、あるいは流動的な柄を縫いとったシャツやジャケットであるし、波打つように一面にリボンを織りなしたMA-1ブルゾンやパンツであり、あるいはフリンジのように震えるプリントシャツである。このうち、刺繍という技法が、今季デザイナーの森川が徹底してこだわりたかったものであった。そこには、安直に流行のデザインや技法に従って、日本で培われた技術の数々が失われてゆくことに対する危惧があったという。ダブルブレストのテーラードジャケットに施した装飾模様や、ストライプシャツのフロントにあしらったブレードのようなモチーフにおいては、その精緻な技術によって静かに震えるような表情を織りなされている。静かにたゆたい、その震えでもってダイナミックな息吹を感じさせるウェアには、オープンワークでリズミカルな格子模様を生みだしたベストやプルオーバー、甘くランダムな模様に編みあげたニットなどに観ることができる。また、鮮やかなプリントを施したロングコートやシャツなどには、薄く透け感のあるファブリックを用いるなど、風に繊細にゆらめく官能的な佇まいももたらされている。
2023年06月29日sacai(サカイ)の2024年春夏コレクションが、2023年6月25日(月)、フランス・パリのソルボンヌ大学にて発表された。力強く開く花のように突き抜けるような夏の青空のもとで発表された今季のsacaiは、ミリタリーやワークといったブランドが軸とするテイストを基調に、力強い陽の光を受けて育つ植物、あるいは花さながらにダイナミックな造形を示しているように思われる。たとえば、ショーの幕開けとともに登場したデニムウェアは、リジッドデニムのハリのある質感を活かし、立体的に広がり、起伏をなす造形に。裾にかけて広がるデニムジャケットはもちろん、矩形のファブリックを褶曲させることで花のようにいきいきと膨らむベストやスカートなども展開した。素材のひだを活かすことで生まれるフォルムは、ジャケットやドレスなどにも見ることができる。ニットのカーディガンやトップスは、ショルダー周りに余裕を持たせる一方、ウエスト部分には縦に複数のタックを寄せることで、緩急のついたシルエットに。また、トレンチコートをベースにしたノースリーブドレスは、やはり大胆なタックによってウエストから裾にかけて広がるよう仕上げている。このように、デニムジャケットやミリタリーブルゾン、スカートといったウェアは、ハイブリッド的な要素を交えつつ、全体として裾に向かってダイナミックに広がるシルエットを示している。また、MA-1には大胆なサイドスリットを設けるなど、身体の動きに沿った躍動感も示している。柄としては、植物や花がモチーフとして取り入れられている。いずれも大胆に図案化、平面化されたこれらのモチーフは、プルオーバーのトップス、シャツ、カーディガン、スカートといったアイテムを力強く彩った。また、ノーカラージャケットやスカートにのせたクラシカルなチェック柄、ニットに採用したノルディック調パターンなども挙げることができる。カラーは、ブラックやグレー、ネイビー、カーキ、ベージュといったベーシックカラーを基調としつつ、ヴィヴィッドなレッドやブルー、花柄を彩るオレンジやグリーンなどが、コレクションに生命感あふれる色彩を添えた。
2023年06月28日ダブレット(doublet)の2024年春夏コレクションが、2023年6月25日(月)、フランス・パリにて発表された。テーマは「NOW. AND THEN」。表層の戯れ衣服がすぐれて、それを身にまとう人の印象を作りだすものであるのならば、ダブレットはそのシルエットで、素材で、あるいはディテールで、その印象を──ユーモラスに──戯れてみせる。ジャケットを見てみよう。ショルダーには大胆にパッドを施し、パワーショルダーを超えでた力強いフォルムに。全体としてオーバーなサイズ感を採用することで、その下に覆われた身体のシルエットをはぐらかしてやまない。素材はどうか。リラクシングなロングコートに用いたのは、薄く軽やかなビニール素材。しかし、さながら経年変化を帯びたレザーのような表情に仕上げることで、人工素材が(まあおおよそ)示すことのない時間の変化と、レザーではなしえない軽快な表情を示している。シャネルジャケットの力強いモダンさも、ここでは屈折される。もともとのクラシカルなファンシーツイードは、甘く織られたツイードへと変奏。長く愛用されたタオルを彷彿とさせる、柔らかく軽快な素材をオーバーサイズで採用することで、元来のストレートなラインを気怠い佇まいに仕上げた。また、ミリタリーブルゾンもこうした柔らかな素材を用いることで、テイストと質感のギャップを生んでいる。あるいは、金属的な光沢を示すデニム、トロンプルイユのプリントを施したアイテムなど、表層と実体を戯れてやまないユーモラスさを、コレクションを通して提示したように思われる。
2023年06月28日ケンゾー(KENZO)の2024年春夏ウィメンズ&メンズコレクションが、2023年6月23日(金)、フランス・パリのドゥビリ橋にて発表された。東洋と西洋の往還エッフェル塔とパレ・ド・トーキョーをセーヌ川の上につなぐドゥビリ橋を会場に、陽が沈む本の手前の心地よい時間に開催された、今季のケンゾーのショー。そこでは、東洋と西洋それぞれの要素を取り入れたウェアを展開した。たとえば柔道着は、そのフォルムを踏襲しつつ、素材にワークウェアで使用されるファブリックを採用することで、日常に溶け込む衣服にアレンジ。また、日本の着物で伝統的に用いられてきた文様「青海波」は、ジャカードのブルゾンやフーディといったカジュアルウェアに反映されている。デニムウェアも数多く展開されている。パンツやミニスカートはもちろん、チェスターコート、シングルブレストジャケット、ドレスシャツといったフォーマルウェアにカジュアルなデニム素材を用いることで、テイストの交錯を育んでいる。また、その上にのせたバラの模様が大胆な華やぎを添えた。また、カッティングやパターンにも日本の伝統的な衣服の要素を取り入れているようだ。ブレザーやダウンアウターなどには、着物を彷彿とさせる直線的なカッティングを反映している。カラーは、ベーシックなブラックやベージュ、インディゴなどを軸としつつ、レッドやネイビーの花柄、大きくバラを咲かせたライトブルーやライトピンクなど、日常に馴染む軽快な色味を加えている。
2023年06月28日ホワイトマウンテニアリング(White Mountaineering)の2024年春夏コレクションが、2023年6月24日(土)、フランス・パリにて発表された。テーマは「Memories」。「Memories」をテーマにデザイナー自身が今まで目にしてきた景色、あるいは旅から得た着想源に、自らの経験した時代と情景の変化を「写真」として捉えた、今季のホワイトマウンテニアリング。ブランドがベースとするアウトドア、スポーティなテイストを軸としつつも、したがって、そこには豊かな抒情性が感じられる。コレクションのひとつの中核となるアウトドアやスポーティのウェアは、ブラックを基調に、機能的な素材とディテールでまとめられている。マウンテンパーカーはもちろん、コーチジャケット、ベストなどのほか、シングルブレストジャケットもスポーティな表情でアレンジした。一方、スタイリッシュなブラックの統一とは対照的に、さながら自然を写し入れたかのようなウェアは、色彩とニュアンスに富んだ表情を醸し出している。それは、樹林を彷彿とさせる柄であるし、建物をニュアンスに富んだ色彩で写したプリントであるし、パッチワーク状に組み合わせたチェック柄であるし、あるいはペイズリーや波柄模様である。また、記憶と時間の重層性を仄めかすかのように、レイヤードにより長短のリズミカルな丈感が示されている点も特徴的だ。アウターの下に重ねるシャツは、やや長めの丈感に。また、トップスのコーディネートに変化を加えられるベストやオーバーサイズのクルーネックなども見受けられる。カラーは、上で軽くふれたようにブラックを中心に、グリーン、エクリュやベージュがベース。また、パープルなどの鮮やかな色彩により、存在感をもたらした。
2023年06月28日カラー(kolor)の2024年春夏コレクションが、2023年6月24日(土)、フランス・パリのソルボンヌ大学にて発表された。アウトドアやスポーティを再構築風の吹き荒ぶような音響のなか、幕を開けた今季のカラーのショー。そのコレクションでは、アウトドアやスポーティをベースに、ブランドらしい解体・再構築的なデザインによるウェアを展開している。たとえば、オーバーサイズのロングコートやジャケットには、テクニカル素材を軸に用い、アウトドアやスポーツで活躍するウェアのパーツをコラージュ的に取り入れて構成。配色も、グリーンやオレンジ、ネイビーなど、アウトドアウェアに特徴的な力強いカラーを複数取り入れることで、存在感ある表情に仕上げている。機能的なウェアをベースとはしつつ、その素材は春夏らしく薄く軽やかだ。とりわけ、コートやスカートには透け感のあるファブリックを用いることで、レイヤードを引き立てている。また、コートのバックスタイルにはギャザーを寄せるなど、機能的なウェアとは一線を画する華やぎも反映している。また、冬服に用いられることが多いノルディック柄ニットのモチーフも、こうした軽快なアイテムに装飾的に取り入れられている。ハーフスリーブのニットにのせるのはもちろん、テクニカル素材のアウターのスリーブに組み合わせるほか、バックにもさながらヨークのようにしてあしらった。
2023年06月27日メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)の2024年春夏コレクションが、2023年6月23日(金)、フランス・パリにて発表された。80年代後半〜90年代を着想源にデザイナーの三原が自身の10代の頃、1980年代後半から90年代にかけての記憶をよすがに展開された、今季のメゾン ミハラヤスヒロ。「流行や情報を持たない、怖いもの知らずで熱狂的な若者のファッションコミュニティーが今の時代にあったとしたら」との思いのもと、推進力に富んだバンドの演奏とともに繰り広げられたそのショーは、反抗的な気怠さを帯びている。コレクションの基調をなすのは、きわめて大きなシルエットでまとめられたウェアだ。アンコン仕立てのジャケット、MA-1ブルゾン、デニムジャケット、スカジャン、あるいはパンツなど、いずれもスーパービッグと形容できるサイズでルードで気怠いムードを演出。アウターのスリーブ下にはスリットを設けて腕を出せるようにするなど、着こなしにも変化がもたらされている。もうひとつの特徴が、色落ち加工による経年変化を帯びたような表情。デニムアイテムはもちろん、ナイロンアウター、鈍い光沢を帯びたファブリックにも加工を施し、反抗的なスタイルを際立てている。随所に施されたほつれ加工にも、同様の効果を見てとることができる。色落ち加工により豊かな表情をもたらしつつも、カラーパレット自体は抑制されている。グレーやブラックなどを軸に用い、色褪せたようなニュアンスを引き立てている。さらにコレクションでは、転写を得意とするトーキングアバウト ジ アブストラクション(TALKING ABOUT THE ABSTRACTION)とのコラボレーションによる、マガジン型のクラッチバッグやラジカセ型のショルダーバッグを披露。とくに、クラッチバッグのモチーフには、当時を代表するストリートスナップ誌『FRUiTS』創刊号のバックナンバーの写真をのせた。
2023年06月26日アミ パリス(AMI PARIS)の2024年春夏コレクション が、2023年6月22日(木)、フランス・パリで発表された。1990年代のミニマル・スタイルに着想1990年代のミニマルなスタイルに着想を得たという今季のアミ パリスは、デザインを削ぎ落としつつ、リラクシングな快適さを示している。たとえば、コレクションのひとつの軸となっているテーラリングは、メンズにもウィメンズにも幅広く見られ、心地よいセットインショルダーとやや長めの丈感に設定し、身体にそっと寄り添うような自然な上品さを演出している。また、ロングコート、ワンピース、フルレングスや膝下丈のパンツといったコレクションを構成するアイテムは、いずれも極度なデフォルメを避けたすっきりと流れるようなシルエットが特徴。いずれもデザインを抑制し、ミニマルな佇まいに仕上げた。そうしたなか、素材で目を引くのはシアー素材やスパンコールだろう。シースルー素材はすっきりとしたシルエットのトップスなどに用い、心地よい涼やかさを演出。一方、スパンコールは、シャツやパンツ、ワンピースなどにのせられ、削ぎ落とされたシルエットに華やぎを添えている。カラーは、柔らかく上品なトーンがベース。ベージュやグレー、ブラックといったベーシックカラーに加え、ライトブルーやライトグリーンが爽やかにコレクションを彩った。
2023年06月26日KENZO BY NIGOが2024年春夏 ウィメンズ & メンズ コレクションを発表しました。東洋と西洋の間を行き来するリアル・トゥ・ウエアのワードローブ。KENZOの2024年春夏のウィメンズとメンズのコレクションは、アーティスティックディレクターのNigoによって生み出されたメゾンのコードを新たな世代のエレガンスに統合しました。パレ・ド・トーキョーとエッフェル塔をセーヌ川上につなぐドゥビリ歩道(PASSERELLE DEBILLY)で発表されたこのコレクションは、髙田賢三のヘリテージとNigoの現代的なビジョンを結びつけ、シティ・ポップの思い出に映し出されます。1980年代の日本でデザイナーが青春時代に聴いていたサウンドトラックは、マルチジャンルのポップ、ファンク、ブギーと共に、グラフィックで洗練されたプレッピーでポッピーなルックスと相まってコレクションに軽快なスピリットを吹き込んでいます。このコレクションでは、日本と西洋のワードローブのコードを切り替えながら展開しています。柔道の上着はチョアジャケットとして再コンテクスト化され、青海波(せいがいは)と呼ばれる古代の波模様がインディゴでアレンジされています。ウィメンズのシルエットは、透明感のある生地の軽やかなレイヤリングと、アーカイブのモチーフでよりエレガントなラインを強調。コレクションでは、Nigoの長年の友人である日本のグラフィックアーティスト、Verdyとのクリエイティブな対話も展開されており、彼のシグネチャーであるスワッシュ・フォントでKENZOのロゴがウエアやアクセサリーに大胆に描かれています。戦後の日本でシティポップが盛り上がりを見せ、髙田賢三のキャリアにおいても最も印象的な瞬間と重なり合っていました。近年、世界中でのこのジャンルの再評価が見られ、またそれが当初その道を切り開いた時代や文化から完全に切り離された若い世代によって行われたことから、Nigoの目にはKENZOのヘリテージが現代のメンタリティにおいていかに合致しているかを示す強力なアナロジーと映っています。ショーのサウンドトラックは、1990年代中盤以来、Nigoと同世代の友人であり時折コラボレートもしているCorneliusによって制作されました。彼もデザイナーと同様にシティポップを高く評価しており、そのジャンルを反映したスコアを作り上げました。Nigo/Courtesy of KENZOKENZO BY NIGO2024年春夏 ウィメンズ & メンズ コレクションシルエットこのコレクションのエレガントな感性は、髙田賢三の伝統に基づくマッチングのオーバーシャツ、トップス、パンプスのアンサンブルや、ワークウエアのジャケットとスカートの組み合わせで表現されています。超軽量なアンクル丈のドレスや、ボタンを留めても外しても着られる柱状のカーディガンドレスのレイヤードシルエットは、優雅な長身のスタイルを作り出します。夏らしいリネン素材を使ったテーラリングは、髙田賢三が好んだ若々しいエレガンスを提案しています。ブレザーには、日本的なカッティングのアプローチが反映され、着物のようなセミデタッチスリーブのデザインで、ノーカラーのトレンチコートやテーラードジャケットには、VerdyのKENZOロゴが施されています。ウィメンズのスーツは、繊細なカラーやベビーピンクからレーザープリントのバラまでのグラフィックと対照的なオーバーサイズのラインでカットされています。柔道着スタイルの刺し子ジャケットやバーシティジャケットは、東洋と西洋のスポーティなプロポーションの間で揺れ動き、アメリカのヴィンテージアイテムにインスピレーションを得たパフォーマンスウエアやワークウエア、キモノカットのダウンパフは、日本の洋服の在り方と融合しています。Courtesy of KENZOCourtesy of KENZOCourtesy of KENZOCourtesy of KENZOテーマとモチーフ日本のグラフィックアーティストVerdyの手がけたKENZOロゴは、複数の色の組み合わせでスワッシュ・タイポグラフィのオールオーバーでメゾンのエンブレムを再コンテクスト化しています。「A Drawn Flowers」は髙田賢三の手描きの花のイメージを呼び起こす一方、「KENZORose」はアーカイブのニットからインスピレーションを受けたハイパーリアルなイメージで、オールオーバープリントやプレースドグラフィックとして使用されています。Nigoのシグネチャーであるカモフラージュは、「Flower Camo」としていくつかの色で花柄と融合しています。日本語で「青い海と波」を意味する切り返し模様の「青海波(せいがいは)」は、インディゴのデニムやキルティングで古代の地図のモチーフとして使用されています。ポップアートのフルーツ・ステッカー・プリントはシャツに飾ったり、単体のプリントとしても使用されていおりドローン・バーシティ・プリントは、1950年代のアメリカの卒業式の服に描かれた学生の落書きを模しています。メンズウエアに使用される4つのヘリテージパターンは、初期の髙田賢三のスケッチを参照しています。シェーディングは筆のような筆触、スケッチ・アーガイルはステンシルのような模様、チェック・ジャカードはチョークのような模様、ヘリンボーン・ジャカードは矢じりのような模様です。象徴的な「ボケの花」はデヴォレの花柄として再登場します。Courtesy of KENZOCourtesy of KENZOCourtesy of KENZO素材と技術柔道着は、ワークウエアで使用されるスポーティな織り地であるナッテという素材で作られています。波模様の「青海波(せいがいは)」は、デニムのインディゴやニットウエアのジャカードで表現されています。VerdyによるKENZOのモノグラムは、プリントやジャカードで採用され、コレクション全体にわたって流動的なシルクやビスコース、コットン、ウールなどの様々な素材で現れます。フォーマルウエアは、1980年代と90年代のKENZOジーンズのトロープから復活した日本の生地や洗いを施したインディゴのデニムに変身。レザーアイテムは、それらにインスピレーションを受けたアーキタイプのヴィンテージ表現を想起させる表面処理を施しています。エレガンスを増したウィメンズウエアは、デヴォレ、チュール、ブロデリーアングレーズなどのふわふわまたは繊細な素材で構築されています。ニットウエアには、グラフィックなジャカードやインターシア、ロングラインのシアーなアルパカのリブ、手編みのストライプ入りムーライン、アーカイブに基づいたウロコのパッチワークが含まれています。Courtesy of KENZOCourtesy of KENZOバッグNigoによるKENZOのコードを確立するために、今シーズンのバッグには、日本の伝統、アメリカの実用性、そしてメゾンのアーカイブに基づいています。レザーのアップリケロゴが施された小さなトートバッグやバックパックは、日本で日本酒を運ぶために使用される形状に基づいています。ショルダーバッグは米の包装をイメージしています。柔道着は伝統に従って巻き上げられ、ストラップで持ち運ばれます。KENZO by Verdyのロゴは、クラシックなバックパックやアメリカのワークウエアワードローブからインスピレーションを得たKENZO Utilityバッグにあしらわれています。メッセンジャーバッグ、バックパック、トートバッグ、剣道セットバッグには、コーティングされた生地とコーティングされていない生地が使われています。アーカイブの形状は、フラップバッグやバケットバッグで表れ、手編みのBOKEの花があしらわれています。Courtesy of KENZOCourtesy of KENZOCourtesy of KENZOシューズKENZO PXT(パリ × 東京)は、メゾンのイースト・ミーツ・ウエストのジェネティクスとNigoによって確立されたコードから生まれた新しいスニーカーです。レザーとスエードで作られ、タンとヴァンプのオーバーレイが補強されており、ミッドソールの輪郭に合わせて反り返ったKENZOダイヤモンドカットのアウトソールが特徴的です。本格的なスケートスニーカーKENZO DOMEはレザーとスエードの新色で登場し、KENZO PACEレザーランナーはミックスカラーの組み合わせで進化している。コレクションでは、超エレガントなドレープ素材のKENZO キトゥン ヒールと、フラワーモチーフのクロッグが登場。KENZO MUKLUKは、ミリタリーの防寒オーバーブーツから派生したカミックのようなパフォーマンスブーツで、KENZO COZYサンダルにもインスピレーションを与えています。Courtesy of KENZOCourtesy of KENZOCourtesy of KENZOCourtesy of KENZOアクセサリー帽子は、ビッグサイズのベレー帽やミリタリーキャプラインのような、拡大されたサイズ感が特徴。1980年代のストリート写真からヒントを得て、ガードキャップ、バケットハット、トップレス・ストローハット、KENZO by Verdyのロゴをあしらったベースボールキャップなどが登場します。このモチーフは、西洋のワードローブを模したタイガーヘッドやBOKEのバックルと共に、メタルベルトのバックルにも現れています。日本の影響は、柔道ベルトやマルチポケットを備えた伝統的な剣道ベルトに表れています。ジュエリーでは、KENZO by Verdyのロゴがネックレスのペンダントに、BOKEのエナメル装飾がリングやカフリンクスにあしらわれています。Nigoのコレクションの定番であるメダルは、メゾンのアイコンが散りばめられたフルーツシールの形を採用しています。Courtesy of KENZOCourtesy of KENZOCourtesy of KENZOProduction by Back of the HouseShow music by CorneliusContent production by KittenStyling by Marq RiseCasting by Samuel Ellis Scheinman for DM CASTINGMake up by Lucy Bridge and the Make Up For Ever teamHair by Anthony Turner using René FurtererNails by Ama Quashie
2023年06月26日ファセッタズム(FACETASM)の2024年春夏コレクションが、2023年6月21日(水)、フランス・パリにて発表された。カジュアルなデイストに華やぎを今季のファセッタズムは、ストリートやミリタリーのウェアを基調としつつ、その雰囲気はひじょうに華やかでカラフルだ。たとえば、チュールのフリルやプリーツ。MA-1ブルゾンなどには、テープ状のフリルを数多と連ねて装飾することで、タフなウェアの表情を変化させた。また、アシンメトリックな切り替えなど、解体・再構築的な要素も随所に見てとることができる。トップスには、片側のみにギャザーとチュールのレイヤリングを装飾。スポーティなブルゾンは相異なるカラーやロゴをひとつに。あるいはチェックのワンピースには、ショルダーにフォルムを変化させるファスナーをあしらってる。彩りの要素で中心的な役割を担うのは、マルチカラーを用いたファンシーボーダーだろう。トップスやニット、ワンピースなど、比較的ストレートなラインに仕上げたアイテムに色とりどりのボーダーをのせることで、視覚を惑乱するかのような力強い効果をもたらした。
2023年06月24日