ミステリ&ファンタジー小説『かがみの孤城』が、今年度の本屋大賞を圧倒的支持で受賞。作家生活14年目にして進化し続ける人気作家・辻村深月さんの今、そしてこれから。「いつも通り全力投球」という感覚でした(笑)。本年度の本屋大賞が辻村深月さんの『かがみの孤城』に決まった。4度目のノミネートでの栄冠だ。新作長編『青空と逃げる』も好評で、来年には作家生活15周年を迎え、充実の時期を迎えた彼女は今、どんな思いを抱いているのか。――まずは本屋大賞受賞おめでとうございます。辻村:今までノミネートされたどの作品で受賞できても嬉しかったのですが、今回特別に感じるのは、前年の受賞者がプレゼンターになるため、恩田陸さんから花束を受け取れたこと。このための今年の受賞だったのかと思いました(笑)。私は10代の頃から、それこそ恩田さんのデビュー作『六番目の小夜子』からずっと作品を読んできているんです。大好きな恩田さんからバトンをもらったことで、私も次にバトンを渡していけたらなと強く感じています。もちろん私にとっては今まで書いてきたどの作品も大切で、ひとつひとつ愛情を持って書いてきたつもりです。今回も特別気合を入れたということはなく、「いつも通り全力投球」という感覚でした(笑)。それでも、今まで開かなかった扉が開いた感じがあるのは嬉しいですね。――この作品は、学校に通えなくなった少女が、鏡を通じて異世界の城と行き来するようになる、という内容。でもある仕掛けにより、すでに大人になった読者にも、自分たちにも関係する物語なんだ、と思えますね。辻村:そういう思いで書きました。読んでくれた方の感想がものすごく熱くて、みなさん“自分の物語”として受け止めてくれているのが分かるんです。その方たちも今回の受賞を喜んでくれるだろうと思うと、とてもありがたいです。自分の代表作って自分で選べないんですよね。いろんなテイストのものを書いていることもあって、人によって「辻村深月の代表作」が違うと思うんです。今後は本屋大賞を受賞したことで『かがみの孤城』が代表作だと言ってもらえると思いますが、それは誰に対しても悔いがないというか。――14年間の作家生活のなかで、変わらないものは何ですか。辻村:やっぱり原点にあるのはミステリです。ミステリ作家であることが私の支え。傍から見れば私が書くものは、謎を提示して真相を探るというオーソドックスな形ではないかもしれません。でも、今まで全部の小説を、私はミステリの技法を使って書いてきました。謎だと思っていなかったものが実は謎だったり、謎だと提示しないでいきなり秘密を明かす方法を物語作りの軸にしてきたんです。――『かがみの孤城』はミステリ作家たちにとって大切な賞、日本推理作家協会賞の長編および連作短編集部門にもノミネートされていますね。この取材の時点で発表はまだですが。辻村:そうなんです!憧れの賞なのですごく嬉しいんです。自分はミステリの本家の子じゃなくて分家の子だから、この賞は目指せないのかなとも感じていたので。今回のノミネートで、ミステリ作家だと見てもらえているんだと思えました。ノミネートされたこと自体が、これからも頑張ったら扉は開くんだと、励みになりました。――来年で作家生活15周年です。先ほどご自身もおっしゃいましたが、作風を広げてきましたよね。辻村:ノンミステリのものも含めいろいろ書いてきましたね。デビューの頃からリアルタイムで読んでくださっている方に「初期の頃のような青春ミステリを書いてください」と言われて「待っててね」と言い続け、ようやく書けたのが『かがみの孤城』でした。ただ、今でも初期の作品を挙げて「最近これを読んで、そこからハマりました」と言ってくださる方も多いんです。10年前に書いたものも現役の物語として、今も読んでくれている人がいるのが嬉しいです。――2007年の作品『スロウハイツの神様』が昨年、演劇集団キャラメルボックスにより舞台化するなど話題になっていますし。過去の作品も愛されていますよね。辻村:『かがみの孤城』の初版の帯に「著者最高傑作」とあったのですが、それに怒ってくれる読者もいるんですよ。「実際に読んだら本当に傑作だったけれど、自分にとっては『ぼくのメジャースプーン』が最高傑作なんです」とか「過去の作品も全部あっての辻村さんなのに」とか(笑)。作品に一番愛情を持っているのが作者とは限らないものなんですよね。作者以上に作品のこと、登場人物のことを愛してくれたり、考えたりしてくれる人がいるのがすごく幸せ。自分の小説が今、私の手を離れたところで愛されている自覚を持てることを、作家として一番誇りに思います。つじむら・みづき1980年2月29日生まれ、山梨県出身。2004年「冷たい校舎の時は止まる」で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。‘11年『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、‘12年『鍵のない夢を見る』で直木賞受賞。今年、4度目のノミネートである本屋大賞を『かがみの孤城』で受賞。他の著作に『朝が来る』『東京會舘とわたし』など。※『anan』2018年5月23日号より。写真・女鹿成二インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2018年05月18日(大阪府泉佐野市「黒毛和牛 衝撃の切落し1.75kg」) 故郷や応援したい地方に寄付ができるふるさと納税は、実質自己負担2,000円で税金対策になり、返礼品をもらえるとあって活用しないと損!とはいえ、’17年4月に総務省が豪華な返礼品を控えるよう“お達し”を出したことで、返礼品の還元率が寄付額の3割以下に制限され、パソコンや自転車などの高額商品、金銭類似性が高い商品券やプリペイドカードなどがNGに。 「確かに一部で変更はありましたが、より使いやすく、魅力は依然高まっています。昨年4月から大きく変わったのは、自治体側が税金の使い道をより明確にするようになったこと。返礼品もこれまでのようにお得感だけでなく、地域の魅力をアピールするものを増やしたり、寄付者目線になっていたりするんです」 そう教えてくれたのは、日本最大級のふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」を企画運営するトラストバンクの宗形深さんと田中絵里香さん。’08年4月にふるさと納税がスタートして、ちょうど10年。 返礼品の還元率が3割以下に制限されてから、“お得感”が減ったかといえば、実はそうでもないらしい。その地域では安くても、都会では手に入れにくかったり、高くついたりするものは送料を考えても、ネットで買うより断然お得だという。 年末に駆け込みで申し込む人も多いふるさと納税だが、人気の返礼品は品切れになっていることも多い。一年を通して“いつ”“何を”申し込むのが“お得”かを、あらかじめ知って、計画を立てておきたいところ。そこで、1月~6月までの狙い目とオススメの“豪華返礼品”を紹介! ■1月の狙い目は「定番品」 定番品の肉やスイーツ、加工品をチェック。さくらんぼ(6~7月ごろ配送)、もも(8~9月ごろ配送)、ぶどう(9~10月ごろ配送)など、フルーツの先行予約も始まる。 オススメ:大阪府泉佐野市「黒毛和牛衝撃の切落し1.75kg」寄付金額・1万円以上。 ■2月の狙い目は「旬の魚介類」 旬のカニや貝類といった魚介類が充実。フグや牡蠣、キンメダイなど高級魚も狙い目。漁師直送の返礼品セットに、旬の高級魚が入っていることも! オススメ:高知県須崎市「船上神経締め鮮魚ボックス」寄付金額・1万円以上。 ■3月の狙い目は「フルーツ先行予約」 競争率の高いマンゴー(6~8月ごろ配送)やメロン(5~6月ごろ配送)などの先行予約が続々開始!新生活に向けたタオルや食器など生活用品も増える時期。 オススメ:宮崎県日向市「日向完熟マンゴー」寄付金額・1万円以上。 ■4月の狙い目は「レアもの、定期便」 年度替わりで自治体が返礼品を入れ替えたり、新しく加えたりする時期。人気集中ですぐになくなるレアな返礼品や定期便をゲットしやすい。 オススメ:北海道登別市「無添加極上エゾバフンウニ塩水パック」寄付金額・1万円以上。 ■5月の狙い目は「旬のフルーツ」 路地栽培のいちごが狙い目。さくらんぼやメロン、ブルーベリーなど、旬のフルーツが増える。「増量」「詰め合わせ」など、お得な返礼品を探しやすい。 オススメ:香川県三木町「さぬきひめ(いちご)2.1kg」寄付金額・1万円以上。 ■6月の狙い目は「野菜」 産地直送で新鮮そのものの夏野菜がたっぷり入った返礼品が期待できる。こだわり農家の無農薬野菜や、名産の珍しい野菜にも出合えるかも。 オススメ:千葉県鴨川市「南房総・鴨川の朝採れ野菜セット」寄付金額・1万円以上。 多くの自治体が返礼品の新規入れ替えをするのが、新年度が始まる4月と、9月および10月なのだとか。返礼品が充実する月もあるので、数量限定の珍しいものが登場する可能性も。
2018年01月17日故郷や応援したい地方に寄付ができるふるさと納税は、実質自己負担2,000円で税金対策になり、返礼品をもらえるとあって活用しないと損!とはいえ、’17年4月に総務省が豪華な返礼品を控えるよう“お達し”を出したことで、返礼品の還元率が寄付額の3割以下に制限され、パソコンや自転車などの高額商品、金銭類似性が高い商品券やプリペイドカードなどがNGに。 「確かに一部で変更はありましたが、より使いやすく、魅力は依然高まっています。昨年4月から大きく変わったのは、自治体側が税金の使い道をより明確にするようになったこと。返礼品もこれまでのようにお得感だけでなく、地域の魅力をアピールするものを増やしたり、寄付者目線になっていたりするんです」 そう教えてくれたのは、日本最大級のふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」を企画運営するトラストバンクの宗形深さんと田中絵里香さん。’08年4月にふるさと納税がスタートして、ちょうど10年。返礼品の特徴も大きく変化しているという。 「ふるさと納税のいいところは、寄付金として納める税金の使い道を、自分の意思で決められることです。これまでも“子育て支援”や“高齢者ケア”“環境保全”などの項目から選べたのですが、最近、さらにパワーアップして、具体的なプロジェクトへの寄付を募る『ガバメントクラウドファンディング』を実施する自治体が急増しています」(田中さん) ガバメントクラウドファンディングとは、地域の問題を解決するために自治体がプロジェクトを立ち上げ、賛同する人から寄付を募るもの。使い道が具体的かつ明確になっているため、寄付するお金が何に使われるかを知りたい人の関心を集めている。 たとえば、貧困家庭の子どもに食料を届けるプロジェクトを立ち上げた佐賀県では、寄付者は返礼品を受け取る代わりに、子どもたちに直接、寄付ができるのだ。このようにふるさと納税のシステムを利用して寄付を募るプロジェクトを、さまざまな自治体が採用し始めている。 ■佐賀県「さが・こども未来応援プロジェクト」 貧困や困難を抱える子どもたちを救済するプロジェクト。「子どもの居場所に食材をプレゼントコース」(1万円)を選べば、佐賀県産のお米やお肉を返礼品として受け取る代わりに、子どもたちへ提供することができる。 ■千葉県館山市「『沖ノ島』復興プロジェクト」 昨年10月の台風21号で多くの被害を受けた沖ノ島。20種類以上のサンゴが生息するなど豊かな自然が残っているが、遊歩道の決壊や大量の漂流ゴミで、現在は立ち入り禁止に。1万円以上の寄付で館山の花やスイーツセットが返礼品に。 ■愛媛県松山市「小説『坊ちゃん』の舞台道後温泉本館を未来に遺したい!」 国の重要文化財に指定されている道後温泉本館。寄付金は、築123年で老朽化している施設の修理や、近い将来予測されている南海トラフ地震への備えに使われる。1万円以上の寄付で優待券や松山市内で使えるクーポンなどが返礼品に。 ■新潟県新発田市「パラアスリートを夢の舞台へ!次に夢を実現したい障がい者を応援!」 障がい者スポーツ支援プロジェクト。集められた寄付金は本番に使用する用具一式の購入やメンテナンス費用、国際大会遠征費用、障がい者スポーツ発展のために活用される。1万円以上の寄付で「月岡温泉旅館感謝券」などが返礼品に。 ■山梨県身延町「しだれ桜の里づくり事業」 身延高校の生徒が町長に「身延町をしだれ桜の里にしたい」と提案したのがきっかけ。3万円または5万円以上の寄付で、住所や名前入りの「プレート」設置、町内施設の無料優待や割引特典のある「里人の証」(有効期限5年間)が返礼品に。 前出の宗形さんは、ガバメントクラウドファンディングについてこう語る。 「’17年には66件のプロジェクトが立ち上がり、これまでに26億円以上の寄付が集まりました。今年は100件を超える見込みです。税金の使い道を指定して応援できることが、ふるさと納税の魅力になってきていますね」(宗形さん)
2018年01月17日(山形県三川町「天然モクズガニ」) 故郷や応援したい地方に寄付ができるふるさと納税は、実質自己負担2,000円で税金対策になり、返礼品をもらえるとあって活用しないと損!とはいえ、’17年4月に総務省が豪華な返礼品を控えるよう“お達し”を出したことで、返礼品の還元率が寄付額の3割以下に制限され、パソコンや自転車などの高額商品、金銭類似性が高い商品券やプリペイドカードなどがNGに。 「確かに一部で変更はありましたが、より使いやすく、魅力は依然高まっています。昨年4月から大きく変わったのは、自治体側が税金の使い道をより明確にするようになったこと。返礼品もこれまでのようにお得感だけでなく、地域の魅力をアピールするものを増やしたり、寄付者目線になっていたりするんです」 そう教えてくれたのは、日本最大級のふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」を企画運営するトラストバンクの宗形深さんと田中絵里香さん。’08年4月にふるさと納税がスタートして、ちょうど10年。 返礼品の還元率が3割以下に制限されてから、“お得感”が減ったかといえば、実はそうでもないらしい。その地域では安くても、都会では手に入れにくかったり、高くついたりするものは送料を考えても、ネットで買うより断然お得だという。 年末に駆け込みで申し込む人も多いふるさと納税だが、人気の返礼品は品切れになっていることも多い。一年を通して“いつ”“何を”申し込むのが“お得”かを、あらかじめ知って、計画を立てておきたいところ。そこで、7月~12月までの狙い目とオススメの“豪華返礼品”を紹介! ■7月の狙い目は「冷たいスイーツ」 アイスクリームなど、冷たいスイーツが狙い目。意外と知られていない“ご当地スイーツ”を探す楽しみも。下半期に向けて返礼品を入れ替える自治体もある。 オススメ:北海道豊富町「とよとみ牛乳ソフトクリーム」寄付金額・1万円以上。 ■8月の狙い目は「秋のフルーツ先行予約」 秋の収穫に向けて、巨峰やサンシャインマスカット(9~11月ごろ配送)、りんご(9~11月ごろ配送)、柿(9~10月ごろ配送)など予約が増える。8月末ごろからチェックしておこう。 オススメ:栃木県栃木市「栃木市岩舟産巨峰2kg」寄付金額・1万2,000円以上。 ■9月の狙い目は「新米」 北海道から九州まで全国的に新米が登場。期間限定や数量限定のものも多いので、小まめに確認を。還元率も高く、スーパーで買うと重いお米が送られてくるのもうれしい。 オススメ:新潟県魚沼市「魚沼産コシヒカリ特別栽培米5kg」寄付金額・1万円以上。 ■10月の狙い目は「感謝券」 レジャーに使える感謝券をチェック。返礼品の中には、地元のよさを知ってもらおうと、温泉、宿泊施設やスポーツ体験、歴史散策ツアーなどのチケットも豊富。 オススメ:神奈川県湯河原町「湯河原温泉ふるさと納税宿泊ギフト券」寄付金額・3万円以上。 ■11月の狙い目は「リッチ商品」 年末の駆け込み前に、返礼品の追加が増えてくる。まだ余裕があるので、お歳暮やクリスマスディナー用の豪華返礼品や高級おせちの予約などを、じっくりと。 オススメ:山形県三川町「天然モズクガニ(生きたまま発送)」寄付金額・1万円以上。 ■12月の狙い目は「鍋セット、おせち」 寄付率が最も高い月で、返礼品が続々と追加される。集まりが多い時期だけに、鍋セットやおせちなどが見逃せない。ただし、すぐに売り切れる返礼品も多いので注意。 オススメ:高知県奈半利町「キンメダイの鍋セット」寄付金額・1万円以上。 行楽シーズン前には、地域を訪れて土地の魅力を知る「体験型」の返礼品に注目が集まるそう。実用的な感謝券は、旅行シーズンに使えるタイミングで申し込みを。
2018年01月17日「1万円で15キロもらえたお米が10キロになったり、お肉の量が減ってしまったりしたこともあって、それまで頼んだことのなかった北海道のアイスクリームを選んだら、量は多いし、びっくりするほどおいしかった!魅力的な返礼品はまだまだあるんですね」 こう驚くのは、5年間ふるさと納税を続けている東京都在住の主婦・中塚幸代さん(46)。故郷や応援したい地方に寄付ができるふるさと納税は、実質自己負担2,000円で税金対策になり、返礼品をもらえるとあって活用しないと損!とはいえ、’17年4月に総務省が豪華な返礼品を控えるよう“お達し”を出したことで、返礼品の還元率が寄付額の3割以下に制限され、パソコンや自転車などの高額商品、金銭類似性が高い商品券やプリペイドカードなどがNGに。 「確かに一部で変更はありましたが、より使いやすく、魅力は依然高まっています。昨年4月から大きく変わったのは、自治体側が税金の使い道をより明確にするようになったこと。返礼品もこれまでのようにお得感だけでなく、地域の魅力をアピールするものを増やしたり、寄付者目線になっていたりするんです」 そう教えてくれたのは、日本最大級のふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」を企画運営するトラストバンクの宗形深さんと田中絵里香さん。’08年4月にふるさと納税がスタートして、ちょうど10年。 返礼品の還元率が3割以下に制限されてから、“お得感”が減ったかといえば、実はそうでもないらしい。冒頭の中塚さんは「その地域では安くても、都会では手に入れにくかったり、高くついたりするものって多いですよね。送料を考えても、ネットで買うより断然お得です」と、返礼品の魅力を語る。 つい還元率やボリュームばかりを気にして、返礼品を選びがちだが、“地域流通品”や希少価値のある“名産品”が、直接、送られてくるのは、確かにかなりお得! 「全国流通に乗らないブランド米やフルーツが、地域の魅力を伝えるための返礼品として、数多く出ています。また、その地域まで出かけないと食べられない郷土料理が、加工されて返礼品となっていることも。『なかなか手に入らないものを見つける楽しさにハマった』という声を、最近よく聞くようになりました」(田中さん) 「魚が丸ごと届いてもさばけず困った」「量が多すぎて使いづらかった」といった寄付者からの声を反映するべく、自治体側も工夫を重ねている。小分けタイプやレシピ付きなど、使いやすい返礼品が増加中なのが、その証しだ。 「岩手県北上市には野菜セットにシールを付けたユニークな返礼品があります。これは『子どもたちに野菜を好きになってほしい』という地域の生産者の思いから。ふるさと納税を通して、生産者は直接メッセージを届けられる。作っている人の思いも一緒に受け取れるのが、返礼品の魅力となっています」(宗形さん)
2018年01月17日東京・丸の内にある東京會舘。辻村深月さんの『東京會舘とわたし』は、この建物を主人公に、大正・昭和・平成の人間ドラマを描き出す一大群像劇だ。「実は私は7年ほど前、ここで結婚式も挙げているんです。下見で館内を案内された時、“ここは芥川賞や直木賞の会見の部屋ですよ”と言われ、文学賞にゆかりのある式場って縁起がいい気もして(笑)。式を終えた後、ウェディングプランナーの方に冗談で“直木賞を受賞して戻ってきます”と言ったら“お待ちしていますね”と言ってくださって」その後、2012年7月17日に直木賞を受賞、ここで会見に臨んだ。「支配人の方に“結婚式もここだったんです”と言ったら“もちろん憶えていますよ。おかえりなさいませ”と言ってくださったんです」ほどなくして東京會舘は長期の改装工事に入ることになった。つまり、その時期に受賞したのはギリギリのタイミングだった。「そのことを新聞のエッセイに書いたら、社長さんがお礼のお手紙をくださったんです。これは今しかないと思い、東京會舘の小説を書かせてほしいとお願いに行きました。會舘は大政翼賛会の本部になったりGHQに接収された時期があったりと、歴史があって、小説になると思ったんです。改装前のタイミングで取材できてよかったです」バーテンダーや菓子職人、シェフなど館内で実際に働いていた人々が多数登場。どのエピソードも、仕事と真摯に向き合う姿勢に胸打たれる。また、たとえば第3章は灯火管制下での結婚式の話だが、「東京會舘には利用した方からのお手紙もたくさん寄せられていて、戦時に結婚式をした女性からのお手紙を見つけ、ご本人に取材させていただいたんです。ご高齢なのに式に付き添った美容師の名前も憶えていらして、あの話が生まれました」取材すると、事実と事実が結びつく瞬間があり、ミステリー小説をひもとくような楽しさがあったという。「小説だからこんな都合のいい話があるんでしょ、と思われないためにどうするかで苦労しました(笑)」実話がベースと思えないほど味わい深い話が並ぶ。もちろん直木賞を絡めた話もあり、ぐっとくる。「新装オープンしたら、今度は私が“おかえりなさい”と言いたいです」◇つじむら・みづき作家。2004年に『冷たい校舎の時は止まる』でメフィスト賞を受賞しデビュー。‘11年『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、‘12年『鍵のない夢を見る』で直木賞を受賞。◇大正11年に丸の内に落成した東京會舘を舞台にした、一大群像劇。関東大震災から大戦、東日本大震災なども盛り込まれ、時代のうつろいが浮かび上がってくるところも読ませる。毎日新聞出版上下巻各1500円※『anan』2016年9月7日号より。写真・土佐麻理子(辻村さん)森山祐子(本)インタビュー、文・瀧井朝世
2016年09月02日