劇団鹿殺しの丸尾丸一郎と松岡充が、新たな演劇ユニットを始動。OFFICE SHIKA PRODUCE VOL.Mとして『不届者』を上演する。一見意外な組み合わせにも思えるこのふたりが、なぜ共に新作舞台を創作するまでに至ったのか、話を聞く。【チケット情報はこちら】2012年の『リンダリンダ』で俳優として共演したふたり。お互いの第一印象を訊ねると、丸尾いわく「世間一般でいうチャラ男」、一方松岡は「稽古中は演出家の、公演中は観客の求めることが手に取るように分かるズルい男」と、決していいものではなかったよう。しかし「松岡さんはすごくストイックだし、お客さんに何か残さないといけないという意識がすごく強い」、「鹿殺しの作品を観続けていくうちに、鹿殺しとは、丸尾丸一郎とはってところがブレない人だと分かってきた」と続け、徐々にお互いに対するリスペクトの度合いを高めていった様子。丸尾は『不届者』創作の原点について、「『リンダリンダ』ではすごくポジティブだった松岡さんですが、僕はその腹の底にある、何か黒い部分を描いてみたくて」と明かす。さらにそれは、残忍な一面を隠し持っていたとも言われる“徳川吉宗”を松岡が演じることで、作品としての明確な輪郭をもち始める。そんな丸尾のアイデアに対し松岡は、「鹿殺しのファンだから」と切り出し、「僕は丸尾丸一郎の描く世界観というものにグッときているひとり。しかも丸くんは、“人間”というものをちゃんと描くことが出来る稀有な存在でもある。だから不安はありません」と、丸尾に全幅の信頼を寄せる。松岡が徳川吉宗を演じるということで、江戸時代が舞台の時代劇かと思えば、決してそうではないと丸尾は言う。「ある詐欺事件と吉宗のいる江戸時代の話がシンクロしていく、そんな劇構造にしようと思っています。だから時代劇でもないですし、恐らく着物も着ない。お客さんにいろいろ想像してもらって、最後には誰もが感じる怖さや情けなさ、生きたいっていう願望なんかが残る作品になればいいなと思います」。ふたりの創作は今後も続いていくのかと問うと、「そう思わせる作品にしないといけない」と丸尾。「松岡さんはもちろん、お客さんに対しても『丸尾と組むといろんな松岡充が見られるぞ』って思わせたいなと。ある意味、松岡さんのことが嫌いな人にも観てほしいです」と笑うと、「本当は俺のこと嫌いなんちゃう?(笑)」とすかさず松岡。だがそんなツッコミも、丸尾への期待の表れなのだろう。「やるからには松岡充の、丸尾丸一郎の代表作だって言えるものじゃないと嫌だからね!」と松岡が見つめた丸尾の顔には、一瞬の不安の後に、はっきりとした自信を見てとることが出来た。OFFICE SHIKA PRODUCE VOL.M 「不届者」は9月27日(水)から10月1日(日)まで、東京・天王洲銀河劇場で上演。チケットは発売中。取材・文:野上瑠美子
2017年09月04日アイドルグループ・Hey! Say! JUMPの山田涼介が18日、主演映画『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(9月23日公開)の完成披露試写会に、西田敏行、尾野真千子、村上虹郎、寛一郎、門脇麦、林遣都、廣木隆一監督とともに登場した。原作は東野圭吾によるベストセラー作品で、全世界で累計500万部を突破、中国での映画化も決定している。かつて人々から悩み相談を受けていた「ナミヤ雑貨店」にたどり着いた青年・敦也(山田)と幼馴染の3人は、1980年とつながった郵便受けを通じて、昭和の人々の悩み相談に対し返事を書くことになる。ナミヤ雑貨店の店主・浪矢雄治を西田敏行が演じる。寛一郎は、撮影現場の雰囲気について「僕と虹郎がわちゃわちゃしているのを、優しく山田くんが見守ってる」と振り返った。山田は「暗いシーンが多かったので懐中電灯を持ってたんですけど、その懐中電灯の光をお互いの顔に当てて『ウェイ』ってやってるだけだから、見守りますよね」と苦笑。「『おおなんか、かわいいな』って。かわいかったですね」と、年上らしい様子を見せた。また、19歳から51歳を演じる尾野が「ね。19歳とかね、無理があるでしょ」と苦笑すると、山田はマイクを外して「大丈夫」と声をかける。尾野が驚いて「え!?」と聞き返すと、山田は「すごい強い目で『え?』って言われました」と笑い、尾野は「そうやっておだてられ、できました!」と報告した。門脇と林は劇中歌を歌うことになるが、林は「西田さんが『麦ちゃん、素晴らしかったね』ってずっとおっしゃっていて、僕も一応歌ってたのになって……」と切ない空気に。林は「一役者として、優しい目で見てくださいとは言いたくないですが、『売れない、芽が出ないミュージシャン』という設定なので、わかった上で見てください」と訴えかけると、西田も「そういった意味では役に忠実だったと思います」と納得していた。
2017年08月18日俳優としての一歩を踏み出してから4年──。20歳を迎えた村上虹郎に、自分に俳優は向いていると思うか?と投げかけると「ほかの仕事をしていたら…とも考えることもありますが、俳優の仕事は興味深すぎて、面白い。映画もドラマも舞台もやらせていただいて、今回の『武曲 MUKOKU』も含めて、やっぱり映画っていいなと思います」。何とも真っ直ぐな答えが返ってきた。そして「自分で作品を選びはしませんが、この作品のようにいい出会いがあります」と語るように『武曲 MUKOKU』は彼の人生の一部となり、今後の村上虹郎を語るうえで必要不可欠な1本となった。監督は熊切和嘉、主演は綾野剛。クランクイン前に熊切監督は鎌倉近郊での撮影に備え逗子に移り住み、イメージを膨らませた。綾野さんは研吾になりきるため剣道の稽古に邁進。さらに剣道家の身体を創り上げるために壮絶な肉体改造を自らに課した。そんなふうに並々ならぬ想いでこの映画に挑む監督と主演俳優に、村上さんはどう向きあったのか。演じるのは、研吾の宿命のライバルとなっていく天才剣士・融。「演じる役が難しいことも大変なこともありますが、今回の融は演じるのは大変ではなかったです。もちろん身体的なアクション部分は大変でしたが、融を生きることは僕にとってすごく楽しくて、すごく幸せな時間でした」。そう思えるのは、音楽と剣道、村上さんにとって身近なカルチャーが融のキャラクターを構築していることも大きかった。融は、ある理由から“剣を棄てた男”研吾と出会い、スポーツとしての剣道ではなく、生死をかけた決闘のような剣に魅せられていく。その感情はどうやって捉えたのだろう。「いま生きているこの時代には放射能や大気汚染、農薬などの問題があって、事故もある、自殺者も増えている。決して死は遠いものじゃないと思うんです。映画にも死を描いたものがあって、そういう映画を観ることで僕らは死を疑似体験している。でも融にとっては、何て言うか…死はもっとリアルなんです。彼にとって剣道はスポーツではなく生死をかけたものであって、精神世界での殺し合いというか…。僕も小学校から中学校にかけての数年間、剣道をやっていてスポーツとしての剣道は知っています。でも、この映画を通じて別の剣道の一面を知ることができました」。難しかったのは融が上達する前の芝居、剣道初心者の芝居をしなくてはならなかったことだ。参考にしたのは、なんと熊切監督。剣道の経験のない監督に「竹刀を振ってもらったり、蹲踞の姿勢をしてもらったりして、下手な人の動きを把握するためにいろいろお願いをしました。ふり返ると、監督にすごいことをさせてしまいました…(苦笑)」と無邪気に話すが、実は前々から「熊切監督と仕事がしたかった」のだと明かす。念願の熊切組だった。融が研吾に出会い刺激を受けたように、村上さんは熊切監督から刺激を受け取った。「どの現場でもどの役でも、芝居をしているときはその役の人生を突きつけられるし、答えを求められます。僕と熊切監督の間には(いい意味で)都合もないし、しがらみもないし、自分の信じたことを演じさせてくれる、それが素敵なんです」。また、研吾が野獣だとすると融は小さな恐竜だと2人の関係性を語る。「融から見た研吾は、得体の知れない者としての怖さがあって、何だこの人?というような普通の人にとっては出会いたくない人です。でも、刺激を求めていた融にとっては会いたかった人。関わることで自分のなかで新しい何かを見つけられるような、そういう出会いだったと思います」。研吾を演じる綾野剛との出会いからも「綾野さんの役づくりは本当にスゴい。そして美しかったです」と刺激を受けた。クライマックスに用意されている台風の夜に2人が決闘するシーンは村上さんにとってのクランクイン。さぞかし緊張したのかと思いきや「嵐のなかの決闘シーンよりもラストシーンの道場での決闘で、防具を着けるときのほうが緊張しました」と話す。村上さんが「一番好き」なシーンとして挙げるのは、嵐の決闘後に研吾と再会するシーンだ。その理由は──「なぜあそこで融は、声にならない声で“すみませんでした”と言うのか、撮影前は理由がわからなかったんです。わからないのは、僕と融が違う人間だからではなく気持ちがまだそこにたどり着いていないからで、そこまで行こう、行ってやろうと思いましたし、融として答えを見つけなくてはならなかった。その答えは言葉にするのが難しいですが、彼の成長でもあって──それまで腑に落ちなかったものが腑に落ちた、そういう演技ができました。決闘シーンも大切ですが、僕にとっては謝るシーンも大切で、好きなシーンです。完成した映画を観て、あの融の顔はいつでもできる顔じゃないって感じました」。セリフはないけれど強く訴えかけてくるものがあり、研吾と融の心の声、魂の叫びに、きっと心が震えるだろう。そんな男たちの戦いを「女性にも観てほしい」と村上さん。「剣道の世界は男っぽいかもしれないですが、人間らしさが描かれています。それぞれのキャラクターの色気、それぞれのキャラクターが貫こうとしているものを感じてほしい。とても男くさいですが、女性もきっと楽しんでもらえると思います」。男だからこそ共感できるものもあれば、女だからこそ感じるものもある──その色気、女性こそ必見。(text:Rie Shintani/photo:You Ishii)■関連作品:武曲 MUKOKU 2017年6月3日より全国にて公開(C) 2017「武曲MUKOKU」製作委員会
2017年05月30日日本文学の名作を人気声優が読むドラマリーディングシリーズ第2弾『三四郎/門』が11月30日(水)よりTOKYO FMホールで上演される。舞台『三四郎/門』チケット情報キャストは上演回ごとに異なり、置鮎龍太郎、岸尾だいすけ、武内駿輔、野島健児、濱野大輝、古川慎、浅倉杏美、、阿澄佳奈、石川由依、大久保瑠美、加藤英美里、下田麻美、藤田咲が出演。今年3月に上演した『それから』に続いて夏目漱石作品を取り上げる。構成・演出は映画監督として知られるが、近年は舞台演出にも意欲的な深作健太。深作は「「声」という洗練された表現力を武器として、近代の日本文学の代表作が放つ言葉の魅力を、普遍的なものとして、時代を超えてお届けしたいと願っております。このプロジェクトが、現代の新しいスタンダードとなって、末永く続くことを祈りまして」とコメントしている。チケット発売中。■『三四郎/門』回替わりキャスト11月30日(水)19:00開演…野島健児 古川慎 加藤英美里 大久保瑠美12月1日(木)13:00開演…岸尾だいすけ 濱野大輝 石川由依 大久保瑠美12月1日(木)19:00開演…岸尾だいすけ 武内駿輔 阿澄佳奈 下田麻美12月8日(木)19:00開演…岸尾だいすけ 武内駿輔 石川由依 浅倉杏美12月9日(金)19:00開演…置鮎龍太郎 古川慎 加藤英美里 藤田咲
2016年11月14日10月25日(火)より開催される「第29回東京国際映画祭」のJapan Now部門で行われる「監督特集 岩井俊二」の記者会見が、10月4日に行われた。この日は、岩井俊二監督を始め、椎名保(東京国際映画祭 ディレクター・ジェネラル)、安藤紘平(「Japan Now」部門プログラミング・アドバイザー)が登壇した。昨年新たに設立された「Japan Now」部門。いま一番海外に発信したい監督にスポットを当てる本部門では、今年国内外で幅広く活躍し、アジアで絶大な人気を誇る日本を代表する岩井監督を特集する。本部門のプログラミング・アドバイザーの安藤氏は「『リップヴァンウィンクルの花嫁』を見たときに日本人に生まれて誇らしいと思ったからです。岩井監督は岩井美術と呼ばれる独特な美意識をもって現代の若者の姿を描く稀有な監督ですが、今回の作品を見てその力をさらに上げたな、と思いました」と今回の特集開催決定の経緯を説明した。本部門では、今年公開された『リップヴァンウィンクルの花嫁』を始め、『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』、『Love Letter』、『スワロウテイル』、『ヴァンパイア』といった5作品を上映。これにあたって岩井監督は「こういう機会だと、リラックスして映画ファン・映画批評家の方たちと向き合い、一緒に映画を楽しめるので嬉しいです。劇場公開の時には言い知れぬプレッシャーがあり、楽しめないので。バケーションに近い感覚があります」とコメント。今後、中国との合作は?という問には、「すでにプロデュースという形で携わり、いまもいくつか関わっております。中国だけでなく、日本もふくめ映画市場が広がり、盛り上がる方が、アート映画の居場所は作りやすい。そういう意味で可能性があると思います」と回答。また、アニメーションの制作を続けていくのか?という質問には、「現在、実はミュージッククリップを作成中で、実写とは全く勝手が違うのですが、(アニメーション制作を)もの凄くやりたい!と思っています」と明かし、「『花とアリス殺人事件』はヨーロッパでも公開されていて、ヨーロッパの人は、自分をアニメーション監督だと思っている人もいて(笑)。このままヨーロッパの人たちにも知っていただきたいですね」と語った。なお、映画祭の上映後のQ&Aに参加するゲストに、『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』の宮藤官九郎監督、現在大ヒット公開中の『君の名は。』を手掛けた新海誠監督、『ダゲレオタイプの女』の黒沢清監督らが登場することも発表された。「第29回東京国際映画祭」は10月25日(火)~11月3日(木・祝)の期間で六本木ヒルズ、EXシアター六本木(港区)ほか都内の各劇場および施設・ホールにて開催。(cinemacafe.net)
2016年10月05日村上虹郎主演で贈る映画『二度めの夏、二度と会えない君』。この度、10月2日(日)にクランクインしたばかりの本作から、写真が初公開された。篠原智(村上虹郎)は、もう2か月も塞ぎ込んでいた。突然現れてどうしようもなく惹かれてしまった森山燐(吉田円佳)が死んだのだ。死の直前、思いを抑えきれず「好きだ」と智が告げたとき、燐が見せた苦しそうな表情が頭から離れない。幼なじみで生徒会長の菅野瑛子(加藤玲奈)の説得も全く耳に入らず、ふらふらと歩いていると、気付けば燐との思い出の場所に来ていた。そこで起こったのが“タイムリープ”。半年前の夏、燐と出会った夏に戻ってきてしまっていた。燐は「バンドやろう!」と、記憶の中と同じく積極的に智を誘ってくる。戸惑う智だったが、前と変わらぬ燐のパワーと一緒に演奏できる嬉しさに抗えず、ドラムの花京院姫子(金城茉奈)、ベースの石田六郎(山田裕貴)を巻き込み、バンド活動を始める。バンド禁止の学校で、遂には会長を味方につけるほどの活躍を見せるが、刻々とあの瞬間が近付いていた…。智がやるべきことは決まっていた。2度めの夏に、大好きな燐が最期まで笑顔でいるために。原作は、「ガガガ文庫」(小学館)が10周年企画として満を持して送り出した赤城大空の同名ライトノベル。キャストには主演の村上さんを始め、演技初挑戦となる新星・吉田円佳、「AKB48」の加藤玲奈、金城茉奈、山田裕貴ら若い才能が集結する。今回到着したのは、クランクイン日に撮影されたメインキャスト5人の集合カット。この日5人が揃ったのは、貼りだされた実力テストの結果を各々が見に行くという場面。学園を舞台にした作品でよく見られるシーンではあるが、主人公の心情が表れており本作では物語を大きく動かす重要な場面となっている。撮影時は初日らしい緊張感がありながらも、キャスト同士の会話で笑顔を見せるなど良い雰囲気。爽やかな制服姿で登場した5人は、それぞれが役柄に合わせて外見が変化。特に髪色を変更したキャストは、これまでと大きく印象が変わっており、黒髪にチェンジした加藤さん、そして原作キャラクターを尊重し思い切って髪を銀に染めた山田さんが異彩を放っている。まだまだ撮影は始まったばかりの本作。この初日の撮影シーンが、一体どのように物語に結びついていくのだろうか。『二度めの夏、二度と会えない君』は2017年秋、全国にて公開予定。(cinemacafe.net)
2016年10月05日ライブ配信サービス「LINE LIVE」にて、9月12日(月)今夜、「岩井俊二監督、行定勲監督をゲストに重大発表!?」のタイトルで特別番組が生配信されることが決定した。10月25日(火)より10日間にわたって開催される「第29回東京国際映画祭」のLINE LIVE初回配信となる本番組。『世界の中心で愛をさけぶ』『ピンクとグレー』などを手掛ける行定勲監督と、『花とアリス』や今年3月公開された『リップヴァンウィンクルの花嫁』の岩井俊二監督をゲストに迎える今回は、「第29回東京国際映画祭」に関する重大発表を行うという。気になる重大発表の中には、過去に季葉、岡本あずさ、山崎紘菜などフレッシュな顔ぶれが抜擢され映画祭を盛り上げた「東京国際映画祭ナビゲーター」が発表されるほか、行定監督も参加するアジアの気鋭監督3名が、ひとつのテーマのもとにオムニバス映画を隔年で共同製作するプロジェクト「アジア三面鏡」の新たな情報や、東京国際映画祭の大きな2本映画特集のひとつ「JAPAN NOW」部門にて、岩井監督の作品を改めてふり返る企画「岩井俊二監督特集」の新たな情報が発表されるようだ。「東京国際映画祭SP企画 岩井監督&行定監督登場で重大発表!?」は9月12日(月)20時~LINELIVEにて配信。(cinemacafe.net)
2016年09月12日岩井俊二監督の最新作『リップヴァンウィンクルの花嫁』のBlu-ray&DVDの発売を記念して7日(水)、都内でトークイベントが行われ、岩井監督とかねてより親交があるという「闇金ウシジマくん」などの人気漫画家・真鍋昌平が登壇。「闇金ウシジマくん」の大ファンという岩井監督が、「ワンカットごとに丁寧に映像化してみたい」とラブコールを送った。脚本家・北川悦吏子を介して知り合い、意気投合したという岩井監督と真鍋さんは、黒木華演じる主人公・皆川七海が体現しているメッセージについて言及。主体性がない主人公像について真鍋さんが、「(七海は)合わせることしかできなくて、翻弄されて、流されていく。それは誰にでも起こり得ることで、彼女が特別な子だからではないんですよね」と普遍性があるキャラクターであると分析すると、岩井監督も「七海に限らず、そういう弱さは誰でも持っていると思う。誰に起こっても、不思議なことではないんです」と補足して、現代社会が抱えているだろう問題を描いた本作について、一般客の前で語り合った。また、トークショーでは、岩井監督が大ヒットコミックである「闇金ウシジマくん」の大ファンであることを、真鍋さん本人の目の前で告白!読み始めた当初は刺激的な内容に驚いて挫折しかけたこともあったそうだが、やがて読み続けていくうちに「まるで奇跡のような作品」という最高の評価になったそうで、突然の賞賛の言葉に真鍋さんも大感動!さらに、「ウシジマくんのエピソードの中には撮ってみたいものもある。ワンカットごとに丁寧に映像化してみたいですね」と岩井監督が映像化への“ラブコール”を送ると、真鍋さんは「サングラスの下は泣いていますよ(笑)」と信じられないといったような面持ちで答え、会場の興奮と笑いを誘った。BD&DVD『リップヴァンウィンクルの花嫁』は発売中。(text:cinemacafe.net)
2016年09月09日1902年香川県高松市に生まれた画家・猪熊弦一郎。作品を通じて猪熊弦一郎とはどんな人物だったのかを知るために、猪熊の故郷香川にある「丸亀市猪熊弦一郎美術館(通称 MIMOCA、以下MIMOCA)」を訪ねた。MIMOCAを訪ねるまで、頭の中には一つの疑問があった。猪熊弦一郎のことを調べる程、その多彩な絵画様式に驚かされ、そしてまた「どれが本当の猪熊さんなのか」という疑問が沸き上がってきたのだ。もちろん、どの作品もその絵筆を持った猪熊作品に違いないのだが、時にその作品からはアンリマティスを色濃く感じ、時に作品からはピカソの面影を感じる。また、具象と抽象を行き来し、自在に色彩やフォルムを操っているようにさえ見える。さあ、猪熊はどのような生涯をアーティストとして歩んだのか、6月30日まで開催中の展示「猪熊弦一郎展「私の履歴書」前編ーー絵には勇気がいる」を同館学芸員の古野華奈子さんとともに巡りながらお届けしよう。1/2はこちらから。■幼少期から晩年まで、約2万点の猪熊作品の収蔵約2万点もの猪熊作品を所蔵するMIMOCA。猪熊が幼少期に書いた絵から、東京美術大学(現 東京藝術大学)在学時の作品も含めて、日本、フランス、ニューヨーク、ハワイなどで創作された晩年までの作品を収蔵している。それに加えて、猪熊が蒐集していた雑多なものたちも保管されており、その時々の企画に合わせてセレクトされ、彼の絵画作品と共に展示されている。MIMOCAは、まさに猪熊の生涯に渡る創作活動の軌跡を知ることが出来る場だ。■私の履歴書ーー絵には勇気がいる5月にMIMOCAを訪れた時は、1979年に日本経済新聞の連載「私の履歴書」のために猪熊が半生を綴った原稿を元に構成された企画展「猪熊弦一郎展「私の履歴書」:前編ーー絵には勇気がいる」と、猪熊が晩年描いた「顔シリーズ」が展示されていた。学芸員の古野さんと共にこの二つの展示を歩きながら彼の作品を通して猪熊と向き合ってみたい。■絵の上手な少年が画家・猪熊弦一郎になるまで「私の履歴書」を元に猪熊の半生を知る企画展は、猪熊が絵画に目覚めた幼少期の作品からスタートする。その後、現東京藝術大学に進んだ猪熊は、後に画家として活躍する同級生、小磯良平、荻須高徳、中西利雄、岡田謙三、山口長男らの洗練を受ける。同級生たちと切磋琢磨し、自分らしい作品とはと猪熊が試行錯誤を繰り返したことは、次々と作風の変わる作品からも感じ取れる。「どんな絵画表現が出来るのだろうか」と言う問いに対するその時々の猪熊の答えが作品になっているかのようだ。《題名不明》1919年《画室》1932年■マティスからの一言ーー「お前の絵はうますぎる」学生時代よりパリに行くことを熱望していた猪熊は、1938年妻・文子と共に憧れの地を踏む。そこで猪熊はマティスに絵を見てもらう機会を得るのだが、そこでマティスに「お前の絵はうますぎる」と言われる。このことを猪熊は、著書『私の履歴書』にこう記している。ーー結局、うまく描くということは人によく見てもらいたいと思うために描くことに通じている。(中略)思ったことを素直な、虚飾のない姿でカンバスにぶっつけることこそ一番大切だ。「絵がうますぎる」という先生の言葉はそんな意味だ。(中略)この言葉は私の一生を通じて、すべてのことに最も大きな教訓となっているーー■自分らしい表現を追求して猪熊と親交が深かった画家の一人に藤田嗣治がいる。藤田と猪熊は第二次世界大戦中、フランスの片田舎へ共に疎開したり、日本への引き上げ船に乗るようにと藤田が猪熊を諭したりと、まさに寝食を共にしながら過ごした友人でもあった。同企画展では、藤田独特の乳白色の地塗りのテクニックを猪熊なりに真似たような作品『レゼシーの人形のような子供』(1939)も展示されている。また、日本への最後の引き上げ船に乗る直前まで、戦火の中描き続けた作品『マドモアゼルM』(1940)。この作品はパリでの最後の作品となり、猪熊の具象作品の代表作と言われている。《マドモアゼルM》1940年3年という短いパリ滞在期間においても、猪熊の作品は次々とその様相を変えてゆく。濃密な3年間、自分らしい表現とは何かを追求する猪熊の姿を、この展示を通じて知ることができた。猪熊は制作活動を通じ、「自分の表現とは何か」「美しさとは何か」を、生涯問い続けていたのだろう。アーティスト猪熊弦一郎の生涯は、創作を通じた発見の連続だったのかもしれない。ーー私は画家になって本当に良かったと思う。(中略)毎日を喜びと感謝を持ちつつ制作を続け、ますます子供の心のように清く生き生きとそして明るく、何事によらず未知の世界に大きな驚きと興味を持ち続けて、いままでにない何かを作り上げたい念願で一杯である。ーー『私の履歴書』猪熊弦一郎著より抜粋MIMOCAでは、勇気を持って絵と向き合うことを選んだアーティスト・猪熊弦一郎の軌跡に触れることができる。瀬戸内を訪ねるのなら、ぜひ訪れたい場所の一つだ。【展覧会情報】企画展「金氏徹平のメルカトル・メンブレン」会期:7月17日から11月6日常設展「猪熊弦一郎展ニューヨークでの制作ーデザイン・壁」会期:7月17日から11月6日特別展示「ホンマタカシ《三越包装紙》」会期:7月17日から11月6日【美術館情報】丸亀市猪熊弦一郎現代美術館住所:香川県丸亀市浜町80-1(JR丸亀駅前)開館時間:10時から18時まで(入館は17時30分まで)休館日:年末(12月25日から30日)※臨時休館の場合あり
2016年06月28日瀬戸内を訪ねるにあたり、気になるアーティストがいた。1902年香川県高松市に生まれた画家・猪熊弦一郎。スキャパレリーピンクの小石が遊ぶように書かれた三越の包装紙「華ひらく」のデザインや、JR上野駅の中央改札の上に架かる壁画「自由」も広く知られる彼の作品だ。きっと誰もが、一度は猪熊の作品を目にしたことがあるだろう。今回FASHION HEADLINEでは作品を通じて猪熊弦一郎とはどんな人物だったのか知るために、彼の故郷・香川県にある「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(通称 MIMOCA、以下MIMOCA)」を訪ねた。■駅前に現代美術館を作った理由MIMOCAは、猪熊弦一郎の生前に完成した美術館だ。故に、美術館の設立を猪熊に提案した丸亀市の熱意と、猪熊本人の思いが込められた館になっている。美術館があるのは、高松駅からJR予讃線で約40分のところにあるJR丸亀駅から、徒歩1分のところ。まさに駅前美術館だ。1902年香川県高松市に生まれ、幼少期の一時期を香川県丸亀市で過ごした猪熊弦一郎。MIMOCAの設立は、丸亀市から猪熊へ「猪熊弦一郎の記念館を作りたい」という提案からはじまったという。しかし、猪熊は「私個人の記念館ではなく、世界の現代美術と触れ合える美術館にしましょう」と逆提案したのだと同館の学芸員、古野華奈子さんが教えてくれた。現代美術館にしたいと猪熊が願ったのは、自身の作品だけでなく現代の優れたアーティストや現代美術を紹介することで、何度も足を運びたくなる場所にしたいという願いから。そして、それが西洋の教会のように「訪れるとすっきりリフレッシュできるような「心の病院」のような存在でありたい」と生前猪熊は語っている。■MIMOCAの建築はMoMAも手がける建築家・谷口吉生駅からMIMOCAに向かうと、大きく広げたキャンパスのような猪熊による壁画「創造の広場」の脇に小さなドアがある。このトンネルの中に入って行くような感覚を覚えるエントランスを抜けると高さ14mにも及ぶ自然光が差し込む吹き抜けが私たちを迎えてくれる。「猪熊は小さな頃からいいもの、いい空間を体験して欲しいと願っていました」と古野さん。その願いから、今でも高校生までは無料で入館することが可能だ。猪熊は才能を見出すことにも長けていた人物。丹下健三の名建築の一つである香川県庁も、歴史を紐解けば当時の香川県知事から猪熊が県庁建築にあたり相談を受けた折に、丹下の名前を挙げたのがきっかけだという。MIMOCAの建築にあたっては、後にニューヨークのニューヨーク近代美術館(MoMA)の建築をデザインコンペで勝ち取る建築家、谷口吉生が猪熊によて選ばれた。谷口の設計による展示室の一つからは、その上部に設けられた横長の窓から丸亀の空を覗くことができる。美術館を訪れた人は、その日の空模様を感じながら作品と向き合うことができるだろう。また、展示室からカフェへと渡るガラス張りの渡り廊下からは駅前の光景を眺めることができる。「街の人々に訪れてもらえる場所に」という熱意はMIMOCAにもう一つのエントランスがあることからもよく分かる。前述の入り口の横に、建物に入らずとも上へ昇ることが可能な大階段がある。その先にあるのは、瀬戸内の海を思わせるような青の絨毯が印象的なカフェレスト MIMOCAや、猪熊の蔵書等を公開する美術図書室などの共有スペースだ。街に開かれた場所でありたいという思いが、至るところから感じられる仕掛けだ。後編は、MIMOCAの収蔵作品を通じて知る、アーティスト猪熊弦一郎が生涯求め続けた"美"について
2016年06月28日仮面ライダー誕生45周年記念映画『仮面ライダー1号』が3月26日より公開されている。本作では、1971年のテレビシリーズ第1作『仮面ライダー』の主人公、俳優の藤岡弘、演じる本郷猛/仮面ライダー1号が再び主役として描かれるストーリーであることが大きな話題を呼んだ。本稿は、企画の仕掛け人である白倉伸一郎プロデューサーにインタビューを敢行し、<前編>では企画成立までの経緯を、<後編>ではさらに映画の内容に踏み込み、設定・演出上の疑問をぶつけた。――今回、映画では本郷猛の衝撃的なシーンが描かれていますが、これは藤岡さんと相談されていた企画のプロットの中に当初からあったものなのでしょうか。それはないですね。これは脚本の井上敏樹さんが考えられたことなのですが、井上さんの考えとしては、仮面ライダーゴーストを映画に出すのであれば、1号にはどうしてもゴーストに敵わない部分があるというんですね。それは、ゴーストが"生死を超えた存在"であるというところ。もちろん、これはゴーストの最大の特徴でもあります。『仮面ライダー』でも、本郷猛が死んだと思ったらよみがえったという話は何回もやっていましたけど、実際問題として生死を踏み越えたという経験はありません。本郷がここを超えていかないと、ゴーストに遅れを取ることになってしまう。だから、ゴーストがいるからこそ、超えていく儀式の描写は必要だということになったんです。タケルがよみがえるためには理屈があるんですよね。一方、本郷の場合は理屈を超えています。そうすることで、本郷の超越性を強調することになっている。それほど深くまで考えるというのは、本郷猛を主人公に映画を作るということが脚本家にとってもそれだけ大きなことだったんですね。――劇中では、いままでの本郷になかった少し格好悪いシーンなども描かれています。昔は"完璧な人間像"としての本郷猛という設定があったと思うんです。IQが600あって、将来を嘱望されているエリート大学生で、どうやら家も金持ちらしく、学業も優秀。頭はいいわ、スポーツ万能だわ、未来はあるわ。ショッカーが目をつけるだけの、エリート中のエリートなんですね。でも、話をする中で、藤岡さんにはとても真面目な一面がある一方で、どうでもいい話をする力の抜けた感じが非常に魅力的だったんですね。締めるとこは締めるけど、抜くところは抜くという緩急が藤岡さんの魅力なのに、本郷をどちらかに偏らせるのは惜しいなと。本郷猛の笑顔だったり、落ち込んでいるところだったり、いろんな本郷猛を見たいなと思いました。また戦いの面でも、「地球のため」とか「世界のため」に戦うのはゴーストだけで十分だと思うんですよ。強い敵が出てきても、それはゴーストがパワーアップすればいいだけの話で。それに、若造がピンチだからといって、それを助けにいく本郷も小さいですよね。今回は、本郷も自分なりのミッションをもって帰ってきてほしかった。それは立花麻由を助けることなのですが、これは大儀というより本郷猛という人間像に帰着しうるものなんですね。そこを描くことによって、結果的に本郷猛という人間を描くことにつながっています。――戦う敵という点では、ショッカーを大ボスにする展開もありえたのではないかと思います。ノバショッカーを登場させた理由はあったのでしょうか。普通は、一番古い先輩と新しい後輩が会うストーリーだと、反目から融和というパターンになってしまいます。でも、今回は世代の断絶はテーマじゃないので、世代間対立を描きたくない。なので、世代間の対立をショッカーに任せてしまうことで、ショッカー側にも45年の歳月が流れていることを見せることができる。一方の仮面ライダー側は、「君もライダーか」のひと言で済ますことができるんじゃないかという脚本家の工夫ですよね。それであれば、敵がショッカーである意味も出てきます。――クライマックスには大杉漣さん演じる地獄大使の見せ場も用意されています。本郷にとって古い仇敵と新しいライダー、どっちに愛着をもつかなと思ったんですね。敵同士なので考え方は違うけれども、45年という歳月も表現したい。ただ、そこはテーマではないので深くは掘れませんでしたが、最終的には『地獄大使物語』みたいになりましたね(笑)。――これから50年目に向けての計画などはありますでしょうか?まだまったくありません。これが『仮面ライダー』45周年の企画第一弾なので、スーパーヒーローイヤーと銘打ったこの年にできることをやっていくつもりです。それをしっかりやった上での次ですね。(C)2016「仮面ライダー1号」製作委員会(C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映
2016年04月05日●半分冗談、半分本気で提案「仮面ライダー」シリーズ最大の異色作『仮面ライダーアマゾン』が、完全新作『仮面ライダーアマゾンズ』として生まれ変わり、「Amazonプライム・ビデオ」にて4月1日より配信される。3月18日に行われた制作発表会見では、本作が全13話で展開されること、劇中では仮面ライダーアマゾンオメガと仮面ライダーアマゾンアルファという2人の対照的なライダーが登場することが明らかにされた。しかし、ある程度の想像はつくものの、なぜ「Amazonプライム・ビデオ」で作品が配信されることになったのかという理由については会見でも説明されることはなかった。本稿では、作品成立の経緯から、『仮面ライダーアマゾン』を象徴するキャラクター・モグラ獣人登場の可能性など設定の気になる点を、製作プロデューサーを務める白倉伸一郎氏に訊いた。――『仮面ライダーディケイド』での待遇の良さ、『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』(2009年)における目立ち具合と、白倉さんはアマゾンがそもそもお好きなのではないですか?『仮面ライダーアマゾン』は、男の子心としては印象に残る作品ですよね。『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』は、ライダーが25体くらい並び、撮影も大変なものでした。男性スタッフは皆「おい、あれブラックだよ!」とか「ストロンガーだ!」とか燃えるものがあるんですけど、女性スタッフは「仮面ライダー」の仕事をしているけどあまり作品を見たことがない人もいるんですね。そんな中、女性スタッフの間ではアマゾンがダントツで人気だったんですよ。「なにあれ、かわい~!」って。それを現場で見ていて、「ああそうなんだな」と。何か惹きつけるものがあるのかなと思い、テレビでもアマゾンにスポットを当てた回をやらせていただいたんです。今でこそ、『仮面ライダーアマゾン』は、『ターザン』とか『少年ケニヤ』とか『ジャングル・ブック』の「仮面ライダー」版だよねと理解することはできるのですが、当時はまだシリーズ4作目。仮面ライダー1号、2号、そしてV3が社会現象的に一世を風靡していた時期です。そこから、いきなり「強くてハダカで速い奴!」ですよ。強烈ですよね。変身前にしても変身後にしても、内容もとにかく異質。そういうとんでもないものも、もしかしたら『ディケイド』なら受け止めてくれるのではないかと思ったんです。――今回、「Amazonプライム・ビデオ」での配信が決定した背景についてお教えください。アマゾン ジャパンさんが「Amazonプライム・ビデオ」のサービスを日本でも始めるとお聞きして、半分冗談、半分本気で提案してみたんです。――提案した時はどのような反応でしたか?「そんなのあるんだ」という感じでしたね。あちらは外資系ということもあり、あまり作品については御存じではなかったようで、「そんなドンピシャなタイトルがあるんだ」という反応でした。もちろん、その共通性だけではなく、アマゾン ジャパンさんは通信販売のデータをお持ちになっていて、関連商品の動きもいいことなどから、これはいけると判断されたのだと思います。――プロモーションビデオ(PV)を拝見したところ、かなり大人向けの印象でした。もちろん、ほかの「仮面ライダー」と同じようにキッズを中心としたファミリーに向けたものになっています。ただ、配信で映像を見るのは30~40代の男性が主体になると思うんですよね。そこから広がっていくものだと思うので、ちゃんと見応えのあるものにしなくちゃいけない。一方で、テレビとの違いも意識しています。配信は、テレビと違って流れているものをたまたま見るということは絶対にありません。会員になってタイトルを選ぶということは相当アクティブな人じゃないと見ない。途中から見るということもないですよね。皆さん絶対に第1話から見るので、物語としても映像としても仮面ライダーのかっこよさ、怪人の怖さなど、とにかく全要素を1話から凝縮させなければいけないと考えました。第1話に関しては、全方位外交ではないですけど、海外ドラマファンから見ても、映画ファンから見ても、もちろんヒーローが好きな人も引き込まれるようなものを目指しました。――海外の視聴者も意識したということでしょうか?日本で盛り上がらないと、その先の海外もないので強く意識したわけではありません。ただ、Netflixの『デアデビル』や「Amazonプライム・ビデオ」のアメリカのほうでやっているドラマ『高い城の男』であったりと、配信ではすでにテレビ以上のクオリティーをもったドラマが出てきている。比較対象がそちらになってしまうので、日本としても負けてないぞというところを見せなきゃならないという意識はあります。●異色作であることが「仮面ライダー」の本流――今回脚本では、『仮面ライダー龍騎』などを担当されてきた小林靖子さんを起用されています。小林さんって、ものすごく腕も立つけど、すごく深く考える人なんですね。深く考えるからこそ、小林さんが知力を振り絞るに足る題材じゃないとお願いできないと常々思っていました。原作があってそれを踏まえる作品ではなく、オリジナルで、登場人物の造形から掘り下げていくということが向いている作家さんです。今回は、そういう機会がたまたま巡ってきたので、小林さんにお願いしたいと思いました。まあ、作品では頑張り過ぎちゃって、えらいことになってしまっていますね。PVでもありましたけど、駆除班が7人くらいいるのかな。登場人物がやたらめったら多いですし、その上一人ひとりを掘っていくんですね。背景もそうだし、行動原理も全部違う。そうなると当然、ストーリーも膨らみますよね。――今回のリブートに際して、オリジナルから引き継いだ要素、そして大事にしたポイントはどこでしょう?「ターザン東京に来る」じゃないけど、東京というコミュニティーにアマゾンという違和感が入り込んでくる「文化衝突」がオリジナルのテーマだったと思うんです。でも、それをそのまま置き換えても、文化的背景が全然違うので、現代の人には伝わらないですよね。ですので、その精神みたいなものを現代のわれわれにも通じるようにどう咀嚼して再送信するかということは意識しました。もう一つは、『仮面ライダーアマゾン』にはモグラ獣人というキャラクターがいて、これは敵から寝返って味方になる怪人なんですね。1号ライダーの時からある設定なのですが、敵と味方の同一性ともいえる、基本的には気の持ちようでどちらにも転ぶことができるという考えが「仮面ライダー」にはあるんです。そこには、人間が選択することで、正義・悪どちらの陣営にもつくことができる、それは個々人の選択次第なんだという石丿森章太郎先生の思いが込められています。本作では、"現象面として"のモグラ獣人は踏襲して、味方のモグラの怪人と、主人公たる水澤悠/仮面ライダーアマゾンオメガがどのような関係を取り結んでいくのかというところが、物語のサブだけれども大事な軸を担っていって、一つのクライマックスになるのではと思っています。――今後、『仮面ライダーアマゾンズ』はどのように広がっていくのでしょうか。ほかのライダーとの共演構想などはありますか?アマゾンズがどこかに客演できないくらい、そしてほかのライダーも出てくることができないくらいオリジナリティーのある作品にしたいと思っています。突出している存在になりたいし、なっていると自信をもっています。――そういう思いが、制作発表会見冒頭の「個人的に最近『仮面ライダー』がおもしろいと思わない」というコメントにつながっているのでしょうか?良いところを継承して、研ぎ澄ましていくことができるのが長寿シリーズのいいところです。でも、十数年もやっていると、「『平成ライダー』ってこういうものだよね」という"あり方"や"話の進め方"ができてしまうんですね。これは作り手も受け手にも共通することです。この辺で、ライバルっぽい2号ライダーが出てきて、こいつがちょっとクール系で、このへんで悪から寝返って、続いて3号ライダーが出てきてと、作品は違うのにそれが時期も大体一緒という感じになってしまう。それから、「スーパー戦隊」ではありませんが、車とかゴーストなど明確なモチーフを決めて、登場するのはこれぐらいのアイテム数でと、よくも悪くも定式化していく。一度"黄金の定式"みたいなものができてしまうと、崩せなくなってしまうんですね。もちろん、いいところはいっぱいあります。1年見なくても、去年の「仮面ライダー」の評判を聞いて今年見ても楽しめることで、見てくださる方の裾野は広がっていきます。しかし、「平成ライダー」の初期や、それこそ『アマゾン』や「昭和ライダー」などが担っていたような野心的で挑戦的な「仮面ライダー」の精神性がどこかで失われてきていたのではないか。それだけメジャーになってきたということでしょう。でも「仮面ライダー」って、「ウルトラマン」が太陽だったら、月とか陰とかそういうイメージなんですね。王道なんだけど、若干外れているのが良さだった気がする。異色作と言われたいと言いつつ、こちらが「仮面ライダー」の本流だという思いもあります。(C)2016「仮面ライダーアマゾンズ」製作委員会(C)石森プロ・東映
2016年03月31日仮面ライダー誕生45周年記念映画『仮面ライダー1号』が3月26日に公開となる。本作では、1971年のテレビシリーズ第1作『仮面ライダー』の主人公、俳優の藤岡弘、演じる本郷猛/仮面ライダー1号が再び主役として描かれるストーリーであることが大きな話題を呼んだ。本稿は、企画の仕掛け人である白倉伸一郎プロデューサーにインタビューを敢行し、<前編>では企画成立までの経緯を、<後編>ではさらに映画の内容に踏み込み、設定・演出上の疑問をぶつけた。――45周年で『仮面ライダー1号』をやった理由というのはありますでしょうか。50年目という選択肢もあったと思うのですが。30年目、40年目でやっておけばよかったなというところもあるのですが、お互いに機が熟するまでに時間がかかったというところでしょうか。最初に藤岡さんにお目にかかったのは2001年。『仮面ライダー』30周年の時でした。15年かけて口説き続けたわけではないのですが、"昭和ライダー"をやっていたプロデューサーやスタッフたちが亡くなってしまっていく中で、折にふれて藤岡さんとお話をして、こちらもお話を聞かせていただいて、主演でお願いできる距離感ができてきたという印象です。もちろん、50周年というタイミングに向けて、もっと掘り下げて準備をしていくことはできないかという話も藤岡さんからはありました。でも、機が熟したという感じがするんですよね。"45周年"と銘打っているのは建前というのかな。世間に対してであったり、委員会まわりに企画を通すための後付けに近いものです。――映画の実現が決まった後にも、藤岡さんとの間でプロット(物語の筋)をどうするかというやりとりがあったとお聞きしました。これには数ヶ月かかっていますね。今回は現行の仮面ライダーである仮面ライダーゴーストががっつり絡んでいますが、これもかなり後から決まったことなんです。最終的に推したのがA~E案の5パターンぐらいなのですが、話をしていく内にどんどん広がっていっちゃうんですよね。いくつか持っていけば、「これとこれを組み合わせてこうしよう」というのが決まったらば絞れると想定していました。ですが、藤岡さんも発想の豊かな方なので、どんどん広がってしまい、かえって分散したようなところがありましたね。こちらから絞って決めて持っていけばよかったと後から思いました。――今回は劇場特典として「仮面ライダーカード」が復活することも話題になっています。「仮面ライダーカード」というのはドンピシャ世代にとってはめちゃくちゃ思い入れが強いものというか、切っても切り離せないものなんですよ。当時はビデオもなかったので、手元に残るものが記憶とカードだけだったんですね。"平成ライダー"になってから、カードが出てくる作品が登場するんです。『龍騎』とか『剣(ブレイド)』とか『ディケイド』とか。放送当時は「『仮面ライダー』でカードなんてふざけるな! 商売丸出しだ」という人もいました。でも昔から見ている側からすると、「『仮面ライダー』といったらカードでしょう」と。むしろ、作品と同じくらい思い入れのあるものなんですね。ですので、本郷猛が帰ってくるということは当然「ライダーカード」も帰ってくるという感覚が旧世代としてはあったりします。――ドンピシャ世代にとっては、やはり本郷猛というのは特別な存在なのでしょうか。難しいのですが、自分の中では仮面ライダー=本郷猛なんです。1号ではないんですよね。1号というのは2号以降が出てきてからそうなったのであって、袖から見てきた人間にとってみたら、本郷猛は1号ライダーではなくて仮面ライダーなんですよ。どうしても1号と付けないと通じないので、便宜上自分でもそう呼ぶし、映画のタイトルにもしているんですけどね。『セーラームーン(無印)』と言っているような感じに近いかな。完成した映画で本郷猛を見た時には、震え立つものがありました。一応プロなので、普段は個人的な考えで見たりすることはないのですが、これに関しては仕事を超えたような感はありますよね。――仮面ライダー1号のコスチュームやサイクロン号のデザインも一新しての復活となっています。藤岡さんにあらためてご出演いただけるのであれば、今の藤岡さんに合ったコスチュームやバイクが必要だと思いました。それは、藤岡さんご自身と藤岡さん演じるところの本郷猛が経験した45年の歳月を背負っている必要があるので、変身した途端に元に戻るのではいけない。それを進化と呼んでいいのかどうかはわかりませんが、"今"の1号ライダー、サイクロン号であってほしいと思いました。――本郷猛の帰還、最新ライダーとの共演、そして藤岡弘、さんサイドからの提案とさまざまな要素が盛り込まれた作品ですが、作品を貫く軸とした要素は何でしょうか?「"今の"藤岡弘、さんが演じる本郷猛を探る」ということについては共通していたと思います。それは、完璧な人間としての本郷猛の"今"を机上で想像したものではありません。藤岡さんは、ご自身が本郷猛という存在を背負って45年間やっていらっしゃいますが、一方で『特捜最前線』やせがた三四郎、探検隊の隊長など、たくさんのものが藤岡さんを形作っています。こちらとしても、藤岡さんの本郷猛ブロックのみを切り取るのは違うなと。それでも、藤岡さんのわりと大きな部分が本郷猛を占めてもいる。そんな中で、お互いに意見をすりあわせながら、まさにその後の「本郷猛、」が映画では描かれています。(C)2016「仮面ライダー1号」製作委員会(C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映
2016年03月26日『スワロウテイル』『花とアリス』を手掛け、女優たちの新たな魅力をスクリーンへと昇華させてきた監督・岩井俊二。最新作『リップヴァンウィンクルの花嫁』では日常の中で「ありえなさそうだけど、現実にはそんなこともある」事件や不条理に出会いながら成長していく女の子を描いている。今回、主人公の友人役として出演する女優・玄理と共に、本作から見る職業の真義、人間のあり方について、さらに岩井監督の心の中にあるという“憧れ”について語ってもらった。■人生の節目の音楽は世界観を変える玄理:私、台本・小説・映画の順で観たので、小説家の岩井俊二はこのシーンはこういう感情で捉えてたんだな、と映画を観たとき初めて分かり、(小説と)ラストが違うからこそ面白かったです。ラストを描いたのはどっちが先だったんですか?岩井監督:映画が先だね。小説は小説の締めくくりを考えてたから。映画は映画の流れで(小説の)構図をもってくると大体失敗するから(笑)。あれは小説ならではというかね。そこにだけ意識がいっちゃって、いっぱいあった情報が集約されちゃうから、かえってやらない方が映画の場合は良かったりするんだよね。玄理:最近公開される邦画では、盛り上がる場所でクラシック音楽を使うのが流行りから定番になってるなという感じがしてて、でも岩井さんのクラシック音楽の使い方っていうのは風格があるなと思いました。映画に寄り添っているというか、気づいたら心の深いところに入ってきてて、別になんてことないシーンでも、ちょんっと突かれたら泣きそうになる感じが3時間続いてたんですよね。岩井監督:音楽はね、普段自分で作ったりしてるんだけど、今回は結婚式のウェディングソングのCDの中から選んだんだよね。割とみんなが知っている曲が次々出てくるけど、それって基本、華々しいセレモニーのときにかかる曲じゃない?でもそれが人生のいろんな節目でかかると違って聞こえるというか。そういうところを狙っていきたかったんだよね。玄理:すごく素敵でした。岩井監督:ここまで良い効果になると思わなかった。『リリイ・シュシュのすべて』のときにドビュッシーでやったんだけど、映画にはめてみると偉大な効果を生んで、いまとなってはホテルとかで流れると立ち止まっちゃうもんね(笑)。玄理:有名すぎて聴き慣れた曲なんだけどシーンごとに曲が流れると心が持っていかれました。■外の世界を知ると同時に“自分”が見えてくる玄理:作品に出演するにあたり、いろいろ勉強したんですよ。そのなかでAV監督に話を聞く機会もあったりして。日本にいるとエロ漫画の広告とか電車の中吊りでも卑猥な単語が飛び交ってるし、AVってこんな感じでしょってイメージで分かった気になってたけど、改めてちゃんと見たらすごかった。岩井監督:大学のときに友達がAV女優になって、本人が言うには、アートなんだって。これが自己表現なんだと言ってて。自分はすごく真面目にやっているんだと切々と語るんだよね。ちょっと用があって自宅に電話したときがあって、本人だと思って話してたら、お母さんだったのよ。そしたら堰を切ったように突然「うちの娘はあんなことする娘じゃないんです」と2時間くらい話を聞かされて、もう親御さんはパニックになっているわけなんだよね。そのときから対極にあるような本人と親のそのギャップっていうのは一体何なんだろうって、自分の中に大きな宿題として残ってた。あるときそういう人たちと取材できるタイミングがあって話を聞いたんだけど、やっぱり同じ親子の修羅場があって、でも本人たちはお金のためにやっているということじゃなくて、ひたむきにやっていたり、輝いてるんだよね。俺らより生き生きしていたりして、光り輝いているものは何なんだろうって非常に興味があったんだ。もちろん簡単なことじゃないし、いろんな苦労もたくさんあるだろうけど、なんか自分たちに持ち得ていないものを持っている感じ、これは何なんだろうって。海外に行ったり違う国の人を見ると感じたりするでしょ?発展途上国と言われているところに行って、そこの子どもたちに会うと、学校に行っていないがゆえに、テレビゲームをやっていないがゆえに、天然の人間というか、輝き方が違う、元気度が違う、体内エネルギーが全然違う。そういうの見ると、自分たちって養殖されている魚みたいな生き方をさせられているんじゃないかって、自分たちの反省も含めてそこを覗いてみたいと思ったんだよね。■多様性が必要とされている時代…常に自分と違うものに憧れる玄理:何年か前に岩井さんがお食事しているときに、囲炉裏の縁の内側が通常、普通の社会だとして、外側が普通じゃない異常な世界だとしたらこの囲炉裏の縁にいる人たちを描きたいっていうことを言っていたのを私すごく覚えていて、だから今回台本を読んだとき、その人たちのことなんだなって思ったんです。岩井監督:ずっとそこをやり続けている気がするんだよね。『花とアリス』ですらそこを描いているんだと思う。普通の人の実感の中にあるものを描きたくて、だから大体みんな孤独なの。友達とつるんで和気あいあいとして最後までつるみっぱなしの作品とかほとんどやったことがない(笑)。玄理:もちろん職業に貴賎がないという言葉の通り。そうだと思うけど、そのAV監督の話を聞いたとき、一番思ったのがその職業がどうっていうことより守るものがあったり、これからできたりするのであるならば、その一線を超えるとその代償って大きいなっていうのは聞いてて思った。岩井監督:どんな世界でも人は生きているし、人を殺した人ですら同じ空気を吸って生きているわけで、それが世の中だろうから。同じ時間・空間、同じ幸せ・不幸をシェアして生きているというか。我々って自分たちのいる場所が当たり前で、それと違うものはすぐ“違和感”という言葉を簡単に使ったりして、そのセンサーがみんな正しいものって思いがち。日本の場合、民族の多様性っていうのもあまりないからなおさらだよね。同調圧力が強いって言われるけど、マイノリティーって言われる人たちの気持ちや立場をなかなか理解しないでしょ、一部の政治家とかは人としてどうかと思うくらいそういうところ欠落していたりするじゃない?自分が目を向けたいのは、そういうところ。応援したいとかではなくて、なんか憧れがあるんだよね。この真ん中の世界に生きていて、いろんなところが麻痺している劣等感があって…。玄理:確かに、(縁の)外側の人たちにしか見えないものって絶対ありますよね。岩井監督:差別は良くないけど区別くらいまでは良いと思う。人を区別するときに蔑んだり、憐れんだりするのは酷いけど、憧れるのはいいと思う。自分じゃないいろんな人たちから学習し続けたいと思ってるんだよね。(text:cinemacafe.net)
2016年03月23日岩井俊二監督の『リップヴァンウィンクルの花嫁』の完成披露試写会が3月16日(水)に開催され、岩井監督と主演の黒木華が上映前のトークに登場。誕生日を迎えたばかりの黒木さんに岩井監督から、人気漫画「東京喰種」の漫画家・石田スイによる黒木さんの似顔絵が贈られた。岩井監督にとっては『花とアリス』以来となる、国内での実写長編映画となる本作。平凡な女性の派遣教員・七海はネットで知り合った男性と結婚するが、彼の浮気が発覚し、しかも罪を着せられ彼女が家を追い出される。苦境に陥った七海は次々と斡旋される奇妙なバイトをすることになるが…。黒木さんは昨年の『小さいおうち』、そして今年の『母と暮せば』で史上2人目となる2年連続の日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞したばかり。白いドレス姿の黒木さんが、岩井監督と共に劇場のバルコニーの階段を下りて登場すると、会場は拍手と歓声に包まれた。本作は一昨年の秋に撮影されたが、七海役は「映画に愛される未来の女優を探す」というコンセプトの下、オーディションで選ばれた。岩井監督は黒木さんについて「会って率直に『この子は撮りたい子だな』と思えた。そのモチベーションだけでここまで来ました。いろんな映画のシーンが頭を巡りました」とぞっこんのよう。「出会ったときは、すでに野田秀樹さんや蜷川幸雄さんに見いだされていましたが、それから山田洋次監督に見いだされ、ベルリン国際映画祭に見いだされ(※女優賞受賞)、とにかく見いだされ続けてる。山田監督とも華ちゃんの話になって『持っているとしか言いようがないですよね』という話になりました」と絶賛していた。一方の黒木さんは、高校時代に岩井監督の『リリィ・シュシュのすべて』を見たそうで「多感な時期で、いろんなことを感じました。いまでも苦しいことがあると、思い出して観たりします」と明かし「自分がその監督の映画に出るなんて思いもよらず、幸せな時間でした」と満面の笑みを浮かべる。映画では現代の日本社会の闇やひずみが鋭く切り取られているが、岩井監督は「震災後にいろんなことがあった中で、いままでと違うムードや景色があり、モヤモヤしたものがあった。信じていたものが崩れる中で、転がるように、転びながら走る主人公が、誰と出会ったら幸せになれるのか?本当の幸せって何なのか?」を描いていると説明する。2日前の14日は黒木さんの26歳の誕生日だったが、岩井監督からは、監督自身がはまって大好きだという漫画「東京喰種」の石田スイさんの手による黒木さんの肖像画がプレゼントされた。黒木さん自身、「東京喰種」を愛読しているそうで「読んでます!面白いです!」と語り、石田さんの絵とメッセージに「嬉しいです」とニッコリ。これからの1年について「いままでと変わらず、地道に頑張っていきたいです」と抱負を口にした。『リップヴァンウィンクルの花嫁』は3月26日(土)より公開。(text:cinemacafe.net)
2016年03月16日三越日本橋本店中央ホールにて3月30日から4月5日まで、三越の包装紙「華ひらく」の生みの親である猪熊弦一郎にフィーチャーした展覧会「猪熊弦一郎と『華ひらく』展」が開催される。同展示会は、猪熊弦一郎が香川県で生まれ育ったことももあり、三越伊勢丹と瀬戸内海の島々を舞台に開催される現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭 2016」とのコラボレーションの一環として開催されるもの。また3月30日からの期間は、戦後間もない1950年に猪熊弦一郎によってデザインされ、三越の顔として現代でも愛され続けているオリジナル包装紙「華ひらく」のデザインを採用した様々なアイテムが全国14店舗の三越各店で展開される(展開アイテムは各店ごとに異なる)。華ひらく柄を採用したラインアップは、廣瀬染工場による江戸小紋ストール、胸元にワンポイントとして華ひらくモチーフを採用したTシャツ、華ひらく柄のペアブリックボトルのミネラルウォーターなど。多彩な表情で暮らしの中にとけこんだ「華ひらく」をじっくりと楽しむことができる機会となっている。
2016年03月16日岩井俊二監督が、史上2人目の日本アカデミー賞「最優秀助演女優賞」2年連続受賞を果たした女優・黒木華を主演に迎えて贈る『リップヴァンウィンクルの花嫁』。このほど、日本公開に先駆け、香港、台湾でも公開されるなど注目を集める本作に、ハリウッドで『ラスト・ナイツ』を監督した紀里谷和明と、『トイレのピエタ』で日本アカデミー賞「新人俳優賞」を受賞した「RADWIMPS」の野田洋次郎がカメオ出演していることが判明。その貴重な場面写真が、シネマカフェにて解禁となった。派遣教員の皆川七海(黒木華)はSNSで知り合った鉄也と結婚するが、結婚式の代理出席を“なんでも屋”の安室(綾野剛)に依頼する。新婚早々、鉄也の浮気が発覚すると、義母・カヤ子から逆に浮気の罪をかぶせられ、家を追い出されることに。苦境に立たされた七海に、安室は奇妙なバイトを次々と斡旋する。最初は、あの結婚氏の代理出席。次は、月100万円も稼げる住み込みのメイドだった。七海は、破天荒で自由なメイド仲間の里中真白(Cocco)に好感を持つ。真白は体調が優れず、日に日に痩せていくが、仕事への情熱と浪費癖は衰えない。ある日、真白はウェディングドレスを買いたいと言い出し…。本作は、中山美穂、蒼井優、北乃きいといった女優たちの新たな魅力を、次々とスクリーンへと昇華させてきた岩井監督が、『小さいおうち』『母と暮せば』で日本アカデミー賞「最優秀助演女優賞」を2年連続で受賞した黒木さんを主演に、『64-ロクヨン-』『日本で一番悪い奴ら』など、いま最も多忙な俳優といわれる綾野剛を共演に迎えた意欲作。そんな本作に、『CASSHERN』『GOEMON』、最近ではモーガン・フリーマンやクライヴ・オーウェンといったハリウッドスターを迎えた『ラスト・ナイツ』を手がけた紀里谷監督と、ロックバンド「RADWIMPS」のカリスマティックなフロントマンであり、昨年『トイレのピエタ』で映画デビューを果たした野田さんがカメオ出演を果たしている。岩井監督は2005年よりアメリカに拠点を移しており、紀里谷監督とはロサンゼルスに在住していたころからの友人。日本に帰って来てからも親交が深く、今回の出演が実現した。劇中では、黒木さん演じる七海が代理出席のバイトで参加した結婚式で、新郎役として登場!新婦役は映画・ドラマなどに幅広く活躍する女優の中村ゆりが務めている。撮影現場の紀里谷監督は、“友人”岩井監督がどんなふうに撮影しているのかを興味深げに見守るとともに、慣れない俳優として参加したことで、俳優部の大変さを実感していたという。また、野田さんには岩井監督が直接オファー。かねてより岩井作品のファンでもあった野田さんが出演を快諾し、実現した。劇中では、七海とCoccoさん演じる真白が出逢った直後に2人で訪れるお店のピアニスト役として登場。七海と真白が歌を歌うシーンの伴奏として、あの名作ドラマ「高校教師」の主題歌だった森田童子「ぼくたちの失敗」と、ユーミンこと荒井由実が亡き愛犬を思って作った「何もなかったように」を野田さんが自らピアノで奏で、シーンに花を添えている。『リップヴァンウィンクルの花嫁』は3月26日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年03月10日『リップヴァンウィンクルの花嫁』の公開を控える岩井俊二監督と『ピンクとグレー』が公開中の行定勲監督によるトークセッションが2月11日(祝・木)、銀座のApple Storeにて開催。20年以上にわたる付き合いがあり“師弟”関係にある2人が互いの作品について語り合った。岩井監督の『Love Letter』『スワロウテイル』などにデビュー前の行定監督は助監督として参加しており、岩井監督曰く行定“助”監督は「一番、監督デビューしてほしくない、片腕だった」とのこと。特に「キャスティングン才能は抜群で、連れてくる子はいい子ばかりで助かってました」と明かす。行定監督はある作品の打ち上げでの出来事を述懐。「ささやくように岩井さんから『行定はいつか、映画監督になるだろうけど、それまではウチでやってよ』と言っていただき、それはずっと支えになってました」と嬉しそうに明かした。その後、岩井組を巣立った行定監督の活躍について岩井“師匠”は「元々、作家性のキツイ男で、うまくやれるか心配はあった。エドワード・ヤンやホウ・シャオシェンが日本でデビューするようなもの。それでも自分のテイストとエンターテインメントをうまく合わせてやってると思います」と目を細める。特に「不在の主人公の探索」を行定作品の永遠のテーマと分析し「『ピンクとグレー』はひとつの到達点。感無量でした」と最大限の称賛を送った。一方、行定監督も岩井組を出てから客観的に作品を見て、岩井監督のすごさを改めて実感したという。「衝撃を受けたのは、『リリィ・シュシュのすべて』。これが世に言う“岩井美学”というものか!と画面からはみ出るような圧を感じました」と語る。社会問題を取り上げつつも、色あせないのが岩井作品のすごさであると熱弁!「娘がこないだ『スワロウテイル』を見てて、実は僕も(キャストで)出てるんですが、最後の字幕に“行定勲”とあって、娘に『すごい』って言われました。これまで散々、監督として映画に名前出てるのに(苦笑)」と笑っていた。岩井監督最新作『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、一時期、ロスで生活をしていた岩井監督の「3.11」以前と以降の心境の変化が大きく反映されている作品となっているよう。なぜ今この作品を?という問いに、東日本大震災以前の日本をロスから眺めていて「あくまで自分の脳内が感じたことなんですが、いじめが蔓延している教室のような空気を感じました。先生もいじめを知らず、反対するとその人もいじめられ、それが是となりハミ出そうとすると『KY』と言われるような空気。重要なのは、みんな、それを知ってるのにそれ以上前に進まないような状況になってると感じました」と説明する。そんなときに東日本大震災が発生!「当然そこで日本がグラッときて動いた。そこで、やっと何かが描ける状況が生まれた。そこで何を描けるのか?と見出したのがこの物語です」と語る。ひと足先に本作を見た行定監督は「嘘」の存在が本作を貫く大きな軸となっていると語る。この点について、岩井監督は、3.11以降の日本において「みんなが『正しい』と思っていることが、本当に正しいのか?と疑うようなことが日々ありました。STAP細胞の事件や最近では覚醒剤の事件があり、昔はTVでみて『バカだね』とか『嘘だよね』と言ってたことが、SNSで表に向かって言えるようになった。それが可視化され、大きな塊になって一個人に課せられたとき、とてつもない衝撃やPTSD(心的外傷)をこうむるようになる」と“正義”に警鐘を鳴らす。「“加害者”たちひとりひとりは間違ったこと言ってないし、ひとりの人間としてつぶやいただけかもしれないけど、その正義が塊となったとき、それは正義なの?ということになる。それを正義が一瞬で人の生活を踏みにじることもある。『正義がまかり通った結果だ』と考えている人がいっぱいいるとしたら、それは空恐ろしい。映画は、何が正義か悪かを描くのではなく、違うアングルから見て『それでも人間は素敵だよね、共感できるところがあるよね』ということを描くもの」と熱弁をふるい、立ち見を含め、会場に足を運んだ聴衆たちは熱心に耳を傾けていた。『ピンクとグレー』は公開中。『リップヴァンウィンクルの花嫁』は3月26日(土)より公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ピンクとグレー 2016年1月9日より全国にて公開(C) 2016「ピンクとグレー」製作委員会
2016年02月12日昨年の1、2月に放送され大きな反響を呼んだ「岩井俊二のMOVIEラボ」のシーズン2の放送が決定。進行役の千原ジュニアをはじめ、堤幸彦、是枝裕和、長澤まさみといったゲストが登場する。最新作『リップヴァンウィンクルの花嫁』の公開を控える映画監督の岩井俊二が主宰を務める本番組。シーズン2の今回は、1回の放送ごとにそれぞれ「走る」「闘う」「恋をする」「嘘をつく」のテーマを設け、古今東西の映画から名シーンをセレクト。ゲストとともに、そのシーンがどうように撮影され、監督たちがどんなことを表現しようとしたのかを探求する。第1回及び第2回のゲストには、昨年『天空の蜂』を手がけた映画監督の堤監督とアクション・コーディネーターの諸鍛冶裕太が登場。第3回及び第4回のゲストには、第39回日本アカデミー賞で作品賞ほか最多12部門受賞『海街diary』の是枝監督と、同作で優秀助演女優賞を受賞した長澤さんが登場する。撮影の裏話はもちろん、岩井監督とどのような対話が繰り広げられるのかに期待がかかる。また、会場にはプロの映像クリエイターを目指す若者が聴講生として参加。「1分スマホ映画ロードーショー」として、彼らにスマホを使った1分間のミニ映画を制作してもらい、その優秀作品を講師陣が講評していく。新しい才能に対して、監督たちがどんなコメントするのかが楽しみだ。「岩井俊二のMOVIEラボ」のシーズン2は、2月4日(木)よりEテレにて毎週木曜日23時から全4回放送。(text:cinemacafe.net)
2016年01月22日ベルリン国際映画祭を始め、香港、全州、ニューヨークなど海外映画祭で圧倒的な支持を受け、国内でも高い評価を受けた『水の声を聞く』。10月2日よりDVDリリースされた本作の主演を務めるのは日本のみならず韓国・ヨーロッパでも活躍する玄理。透明感のある美しさの中に強さと儚さを見事に表現し第29回高崎映画祭最優秀新進女優賞を受賞した。そんな玄理さんが絶大な信頼を寄せる本作のプロデューサー・村岡伸一郎にインタビューを敢行し、 “プロデューサー業”について徹底解剖!1995年に長崎で撮影された『ファザーファッカー』にスタッフとして参加した村岡氏。2003年『赤目四十八瀧心中未遂』でプロデューサーを務め、 毎日映画コンクール日本映画大賞、ブルーリボン賞作品賞など、その年の映画賞を総なめ。2004年『ゲルマニウムの夜』を製作し、ロカルノ国際映画祭、東京国際映画祭のコンペティション部門に正式出品するなど、国内外で高い評価を得る。2012年、秋葉原無差別殺傷事件をモチーフにした映画『ぼっちゃん』にプロデューサーとして参加。日本プロフェッショナル大賞作品賞を受賞。 同年製作の『さよなら渓谷』はモスクワ国際映画祭コンペティション部門審査員特別賞を受賞した。多くの海外映画祭に参加し、数々の賞を獲得してきた村岡氏に“仕事”の楽しみ方について語ってもらった。■魅力的な人と仕事をして得るもの玄理:村岡さんとは『水の声を聞く』という映画でご一緒したのがきっかけだったんですけど、私の印象としては村岡さんが来て現場の雰囲気がすごい変わったという気がしていて。いるだけで頼もしかったんですよ。プロデューサーってそんな存在なのかな?目指したきっかけみたいなのはあるのでしょうか?村岡:プロデューサーを目指したことは正直なくて、でも荒戸源次郎という幻のプロデューサーみたいな人と10代の頃に出会ってその人が初監督をするときに「伸ちゃんおいでよ」と誘われたのがきっかけです。僕はそのとき、制作部の末端の別のところにいたときでご飯を作ったり、荒戸さんと食事に行ったりってしていたんですけど、そこの現場がすごくて。豊田利晃さんとか渡辺謙作くんとかいまや監督になった人たちがスタッフの末端でいるような現場だったんですけど、その現場の空気が意外に嫌で…。次、荒戸さんがやるんだったら全力で荒戸さんのフォローできる自分になりたいなと思っていました。荒戸さんに『「赤目四十八瀧心中未遂」という原作を読んで、映画化したいから伸ちゃん手伝って』って言われていたんですが、そのとき海外に行きたくて半年くらい日本を出ていたんです。帰ってきたら、荒戸さんいなくてまたちょっとしたら電話がかかってきて「いよいよ立ち上げたい」ってことでそこから参加しましたね。そこから『赤目』のプロジェクトになっていって、結局それが映画に関わるきっかけというか。玄理:荒戸さんは支えたいと思うほどに魅力があったっていうことですよね?村岡:そうですね。そのときは僕は福岡で生きにくい人間だったんですけど、「あ、こんな俺でも生きていいんだ」っていうか荒戸さんの優しさと言葉一つ一つが俺の中に入ってきて…騙されたんでしょうね、きっと(笑)。玄理:その当時は救われたという感じだったんですか?村岡:21歳のときに携わった『ファザーファッカー』という映画に関わっている人たちが変な人が多くて(笑)、動物園みたいな現場だったんですが「あ、こんな人たちも生きてるんだ」と思うと、自分もここでだったら呼吸できるんじゃないかなってすごい思って。そのときからですかね、映画をやりたいって強く思ったのは。玄理:じゃあ、荒戸さんみたく魅力をもった監督と仕事をしようとしているんですか?村岡:もちろんそうですね。僕の場合は監督とのコミュニケーションが一番大事で、その人ならっていう人じゃないと仕事はできないなと思ってるんです。下手すると人生に関わるし、その責任は全部プロデューサーにくる。だからこそ監督とのコミュニケーションは大事かな。■作品を一人前に育てていく喜び玄理:プロデューサーをやっていて一番幸せな瞬間はどんなときですか?村岡:端的に観客が入るとかお金が入るもそうなんですが、役者が賞をとったときとかは最高な瞬間ですよね。玄理:割と撮り終わって出来上がったときに幸せがくるんですか?村岡:プロデューサーって一番最初から最後までずっとやっててみんなが終わった後も付き合っていくから、映画も子どものように生まれるところから一生を見れるのが一番楽しいかな。最初ふわふわな企画がある瞬間からギュッと固まりだして現場に向かっていく、あとは俺にも止められないから突っ走るしかないんですよね。玄理:プロデューサーさんって大きい映画になればなるほどいっぱいいるじゃないですか。あれはどうしてですか?村岡:プロデューサーって一番胡散臭いでしょう?僕自己紹介のときに「一番胡散臭い横文字のやつです」って言ってるんですけど…。「何やってるんですか?」っていつも言われるけど何でもやるんですよね。俺の場合はロケ地探しから何まで全部やっちゃうから。それが楽しいんだけど、大きくなればなるほど、目に見えない仕事がいっぱいあるんじゃないかな。玄理:逆にプロデューサーをやっていて、大変な瞬間、つらい瞬間はありますか?村岡:生みの苦しみというのはあるけど…大変ではないのかな。玄理:俳優もそうですけど、インする前は撮れるか分からないし、完成するかも分からない、公開されるかも分からないじゃないですか。そういうの考えると、すごいヒヤヒヤするんだろうなって。村岡:あまりヒヤヒヤしないから出来るんじゃないかな。ギャンブル好きな感じでワクワクするんだよね(笑)。玄理:そういう強さがあるから村岡さんが現場にくると頼もしいんでしょうね。「『水の声を聞く』でも村岡さんが来たから撮れたよね」ってみんなで言ってましたもん。■自由に発想して楽しめる…“動物園”みたいな場所玄理:これからプロデューサーを目指す、映画界を目指す人たちがたくさんいると思うんですけど、その人たちへアドバイスはありますか?村岡:まあ、動物園みたいなところなのですごい面白いところだし、いろんな役割がいてみんなが一つのことに向かっていく高揚感ってなかなか味わえないじゃないですか。普通の生活してたらなんか寂しくなっちゃうもん。玄理:分かります。現場終わるとめちゃくちゃ寂しくなります。村岡:だからそういう楽しみもあるし、もし志すのなら自由にね。荒戸さんが言われていたのは「映画1本1本に普通があるんだ」というのが教えで、人って“こうなきゃいけない”、“こうあるべきだ”っていうのを勝手に作ってしまっているんだよね。だから自由をこれからも大事にしていきたいし、もしやりたいと思う人がいたら自由に発想できることをやったらいいんじゃないかなと思います。玄理:あまりカテゴリーで分けたくないんですけど、インディーズ映画とメジャー映画ってまた違うじゃないですか。インディーズって何なのでしょうか?村岡:たぶんね、ここ10年くらいですごく変わるんじゃないかな。昔映画を撮るってなるとフィルムでやっていたからお金がかかるっていうのが大きかったけど、いまって簡単に撮れるから、いろんなものが多種多様に出てきてその中から残るものと淘汰されるものがすごい分かれていくんじゃないかな。いま日本映画って格差社会が拡がってどでかいのか、1,000万以下でやっている人たちとかどんどん分かれていくから、対局側から足掻かないとこのままじゃ日本映画自体がダメなんじゃないかな。あと10年くらいで新しい血が吹き込まれると思うけどね。だからそこで良いの悪いのを選んでいけば良いと思う。(text:cinemacafe.net)
2015年12月28日山田洋次監督の『母と暮せば』でも好演を見せる黒木華が主演を務める、岩井俊二監督の最新作『リップヴァンウィンクルの花嫁』。このほど、岩井監督のアジア各国での人気ぶりを受け、本作が国内に先駆けて韓国、香港、台湾で先行公開されることが決定。また、岩井監督自らが手がけた最新予告編という“クリスマスプレゼント”も解禁となった。舞台は東京。派遣教員の皆川七海(黒木さん)はSNSで知り合った鉄也と結婚するが、結婚式の代理出席をなんでも屋の安室(綾野剛)に依頼する。新婚早々、鉄也の浮気が発覚すると、義母・カヤ子から逆に浮気の罪をかぶせられ、家を追い出されてしまった七海。苦境に立たされた七海に、安室は奇妙なバイトを次々と斡旋。最初は、あの結婚式の代理出席のバイトだった――。このほど、実写邦画作品では初めてとなるアジアでの先行公開が決定した本作。特に、3月中旬からいち早く公開となる韓国では、1999年に初監督作『Love Letter』が公開されるや、動員140万人の大ヒットを記録。ヒロイン・中山美穂の劇中のセリフ「お元気ですか?」は若者たちの間で大流行した。その人気はやがてアジア各国へと広がり、中国、台湾、香港などでも岩井監督作品は絶大な影響力を持ち、カリスマとして支持されることに。また、先日12月11~13日には、日韓国交正常化50周年を記念した岩井監督の特集上映がソウルで開催され、監督も参加。多数の韓国メディアの取材を受け、上映会では監督が登場するだけで黄色い声援に包まれるなど、アイドル並みの熱狂をもって韓国の映画ファンに迎えられていたという。そんな岩井監督から、日本のファンへのクリスマスプレゼントとして解禁されたのが今回の予告編。これまで大まかなストーリーのみで、詳細は謎に包まれたままとなっていたが、岩井監督が自ら編集した映像には、主演の黒木さんほか、綾野さん、Coccoら主要キャストたちによる物語のキーとなるセリフが散りばめられ、作品の世界観が少しずつ明らかにされている。なお、監督は公開直前となる2~3月にアジアキャンペーンとして韓国、香港、台湾を訪れる予定で、各国では再び岩井俊二フィーバーが巻き起こること必至。本作をいち早く目撃するアジアのファンの反応にも注目していて。『リップヴァンウィンクルの花嫁』は2016年3月26日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年12月24日音楽プロデューサーの小林武史、大沢伸一と、コーヒープロデューサーの鳥羽伸博が手がける「GINZA MUSIC BAR」にて、12月1日(月)より季節限定のカクテルがスタートする。ロックやジャズ、ソウル、ディスコをはじめ、ニューウェーブ、インディロック、ヒップホップ、テクノ、ミニマル、映画音楽など、ジャンルを超えて厳選された3,000枚オーバーのアナログレコードを最高峰のサウンドシステムで堪能できる「GINZA MUSIC BAR」。先日オープン1周年を迎えた本店舗は、革新的でありながら、銀座独自の文化的ムードを再現するサロンとして、年代や国籍を超えて多くの注目を集めている。12月からは、緑茶と栗のリキュールが使用された「MELTEA-POT」や、ざくろ、カルバドス、ライムジュースからなる「ZACK ROSE」など、季節限定のカクテルが登場。ゲストセレクターとしてDJを招いたイベントなど、音楽とお酒を楽しむイベントも多数企画されている。店内は、フランス人画家イヴ・クラインの「インターナショナル・クライン・ブルー」を基調としたインテリアで統一され、深海に沈むような落ち着きのある雰囲気を演出。本格的に音楽が聴けるバーとして、ぜひチェックしてみて。(text:cinemacafe.net)
2015年12月02日『スワロウテイル』『花とアリス』を手掛け、女優たちの新たな魅力をスクリーンへと昇華させてきた岩井俊二監督の最新作『リップヴァンウィンクルの花嫁』の公開が決定。この度、本作の主演を女優・黒木華が務め、共演には現在ドラマ「コウノドリ」で活躍中の綾野剛、歌手のCoccoらが出演していることが明らかになった。舞台は東京。派遣教員の皆川七海はSNSで知り合った鉄也と結婚するが、結婚式の代理出席をなんでも屋の安室に依頼する。新婚早々、鉄也の浮気が発覚すると、義母・カヤ子から逆に浮気の罪をかぶせられ、家を追い出される。苦境に立たされた七海に安室は奇妙なバイトを次々斡旋する。最初はあの代理出席のバイト。次は月100万円も稼げる住み込みのメイドだった。破天荒で自由なメイド仲間の里中真白(Cocco)に七海は好感を持つ。真白は体調が優れず、日に日に痩せていくが、仕事への情熱と浪費癖は衰えない。ある日、真白はウェディングドレスを買いたいと言い出す――。『小さいおうち』でベルリン国際映画祭・銀熊賞(女優賞)を受賞、ドラマ「天皇の料理番」の好演も記憶に新しい女優、黒木さんが今回演じるのは、結婚相手からも突き放され、新たなバイトに没頭する皆川七海。そんな七海に奇妙な仕事を勧めるなんでも屋の安室には『そこのみにて光輝く』『新宿スワン』『ピース オブ ケイク』に出演する綾野剛。そのほかキャストには、七海のバイト仲間となる里中真白役のCoccoを始め、原日出子、地曵豪、毬谷友子、和田聰宏、佐生有語、夏目ナナ、金田明夫、りりィら個性派俳優陣が顔を揃える。本作を手掛ける岩井監督は「ともかく書き上げてはみたものの、これは一体何の話なんだろう、それが自分でもよく分からなかった。ただ描きたかったことはあった。それがこの物語のどこかに描けた気はする。ならばひとまず、それでよしとしようと思った。かくしてずっと悶々と向き合って来たこの原稿を締めくくることにした。311直後から取り組みはじめて、気がつけば四年半が過ぎていた」とコメント。そんな岩井監督作の出演を熱望していたという黒木さんは、「岩井俊二監督の長編映画に出られる日が来るとは、3年前、『マイリトル映画祭』のオーディションで出逢ったときには想像できませんでした。脚本、撮影、音楽、時間、全てのものを、愛おしく思います。観てくださる皆さんに、その幸せを少しでもおすそ分け出来たら嬉しいなと思います」と喜びを語った。黒木さんは岩井監督の作品でどのような輝きを魅せるのか。『シャニダールの花』で共演していた綾野さんとの息の合った演技にも注目したい。『リップヴァンウィンクルの花嫁』は2016年3月26日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年11月19日名古屋観光ホテル(愛知県名古屋市)で12月25日、「80周年記念 ドアラ・つば九郎 2015クリスマスディナーショー」が開催される。ディナーショーには、プロ野球・中日ドラゴンズのマスコット「ドアラ」と東京ヤクルトスワローズのマスコット「つば九郎」が出演。クリスマスの夜にふさわしい(?)ドアラとつば九郎の楽しいトークを展開するという。「"あの"『桃太郎』が帰ってきます!」という情報も。ディナータイム後、ファッションショーや質問コーナー、抽選会、来場者参加コーナーのお楽しみも用意されている。料金は、1人1万9,000円(クリスマスディナー、フリードリンク、サービス料、税込)。申し込みは11月7日10時受付開始。詳細は、同ホテルサイト内で確認できる。
2015年11月05日音楽家・大沢伸一とボンジュールレコード(bonjour records)のバイヤー・上村真俊によるDJデュオ・オフザロッカー(OFF THE ROCKER)が、最新MIX-CD「SOFA DISCO 15FW」のリリースパーティー「SOFA DISCO」を9月12日に代々木Village Music Barにて開催する。“ソファーで聴くダンスミュージック”がコンセプトの「SOFA DISCO」。シリーズ1、2は代官山の高感度セレクトショップ・ボンジュール レコード(bonjour records)で累計売り上げ約800万枚を記録するヒット作となっている。第3弾となる今回は、オフザロッカーのオリジナルトラックに加え、ジョルジオ・モロダー(Giorgio Moroder)の「Right Here, Right Now feat.Kylie Minogue」のリミックスや、国内外の新進気鋭アーティストの新曲を中心にミックスしたCDと、UN-MIXのトラックを収録したCDの2枚組み。東京・代々木で12日に行われるイベントは、オフザロッカーの他、YOSA、DJ RUBY、K (Play decibel)、FLASH BUG (Mistsuharu Kitago + Kazuma Takahashi)をセレクターに迎えて開催。なお、10月3日には、大阪・東心斎橋のseven HOUSEでも開催を予定している。【イベント情報】SOFA DISCO会場:代々木Village Music Bar住所:東京都渋谷区代々木1-28-9会期:9月12日時間:20:00~料金:男性2.000円、女性1,000円(1ショット+1ドリンク付き)
2015年09月09日花とアリスが帰ってきた。『花とアリス』の公開から11年を経て、ふたりが出会うまでの前日譚を描く『花とアリス殺人事件』。本作で岩井俊二監督は、初のアニメーション長編作品に挑んでいる。しかしながら、なぜいま花とアリスなのだろうか?そしてこのタイトルの意味は?さまざまな疑問符が浮かぶ中、稀代の映像作家である岩井監督がどんなアニメショーンを仕上げてくれるのかと、大きな期待が寄せられたはずだ。インタビューでは、前作をふり返りながらストーリーの発端となったエピソードをはじめ、新境地であるアニメ制作の裏側、さらに音楽家としての一面など多岐に渡り、稀代の才能である岩井監督の等身大の姿を垣間見ることができた。海外のキャストを迎え、全編英語で展開された『ヴァンパイア』以来、オリジナル作品としては3年ぶりとなる本作。岩井監督のフィルモグラフィーを見渡してみると、続編といったかたちで制作されたのは、『打ち上げ花火 横からみるか?下からみるか?』に続く作品として制作された『少年たちは花火を横から見たかった』があるが、こちらはドキュメンタリーという体裁をとっており、フィクション=物語としての続編作品は本作がはじめてとなる。今回の前日譚が生まれた経緯について訪ねると、「既に存在していた」と岩井監督は語る。「今回の企画自体は、前作『花とアリス』を作ったあとに、ある種続編的な位置づけで、脚本としてはその時点で存在していたんです。その時に、アニメ企画で立ち上げたんですけど、予算とかいろんな都合があって、実現のところまでいかなくて、途中で立ち消えになっちゃったんですよね。今回はたまたま、こんな企画あるんだけどって話したら興味をもっていただいて、じゃあやろうかという流れで実現しました」。実写として撮影された画をもとに、上から線でなぞるロトスコープというアニメーション手法で制作された本作。岩井監督は、昨年WEBで公開された『TOWN WORKERS』ですでにロトスコープを導入している。タウンワークとのコラボレーションとして制作されたショートストーリーの同作は、岩井監督初のアニメ作品として大きな注目を集めたが、長編アニメーションとしては今回が初となる。これまでに、その圧倒的なクオリティの美しい実写映像作品を数多く世に送り出している岩井監督だが、ロトスコープでは監督最大の武器とも言える実写映像があくまで素材として使用され、そこからロトスコープに変換されていく作業が始まる。「ふたつ分」の作業だったと語る制作過程について聞いてみた。「実写の場合は撮って編集で仕上げてしまえば終わりなんですが、今回はそこからアニメの制作が始まるので、ふたつ分の現場をやったような感じではありましたね。 まずはオーディションで役者さんを選んで、実際に撮影を行いました。ロトスコープの場合は、映像はあくまで素材になるので、ひとりで何役もやっていたりしますよ。20日間くらいかけて撮りましたね。それをベースに3D CGを作ったり、ロトスコープとして手描きでなぞって。さらに3D CGであがったものを手描きで修正したりとかいろんなことをやって、こういう仕上がりになった感じです」。今回の制作を振り返る中で、表現としての実写とアニメの違いについて、その“ダイナミズム”の差異について岩井監督は「実写だと普通に見えちゃうはずのものが、アニメだと妙な凄みを持つことが多々あるんです」と語る。「実写だとほぼ無理なんですけど、顔のアップをあまり使わないで済んだっていうのは意外でしたね。アニメ、とくにロトスコープっていうのは、人の全身が写っているサイズで動いてるときに一番存在感を発揮する気がしていて。その時の凄みっていうのは、なかなか実写だと出ないんです。同じサイズで人が動いててもあんまり印象に残らなかったり、なかなか間が持たなかったりするので、どうしてもアップに逃げたりしがちなんですけど。たぶんこれと同じことを実写でやったら、ややアート色の強い映画みたいな、観客が入っていけない作品に見えると思うんですよね。ところが、アニメだとそう見えなくて、全然普通に見える。そんな風に、ダイナミズム感が違うんです」。そして『花とアリス』の世界において、なによりもその魅力的なキャラクターである荒井花=“花”演じる鈴木杏と、有栖川徹子=“アリス”演じる蒼井優は本作においても出演。花とアリスとの再会は11年ぶりとなるが、岩井監督は自然と作品の世界に入っていったようだ。「蒼井優と鈴木杏に会って、久しぶりと言いつつも、不思議と前の撮影がこないだあったような感覚になるんですよね。『花とアリス』の撮影の仕上げの時期と感覚が直結してくるというか…。『花とアリス』は、映画の中で出てくるバレー教室でリハーサルをやるところからはじめたんですけど、そんな日を思い出したりしました」。そして、『花とアリス』の世界のもうひとつの大きな魅力は、美しい映像を彩るピアノとストリングスを基調とした瑞々しい音楽だ。『花とアリス』の代表的なシーンとも言える、オーディションでアリスがバレエを披露する場面の楽曲など、美しい旋律が全編で展開されるサウンドトラックは、岩井俊二自身が制作している。本作では、岩井監督自身が参加する音楽ユニット「ヘクとパスカル」が監督と同じく音楽担当としてクレジットされ、前作との制作過程の違いについて伺うと、音楽家としての顔も持つ岩井監督の妥協なきこだわりが明かされた。「前回はオールコンピュータで、ひとりでパソコンに向かい合いながらずっと音楽制作をやっていたんです。打ち込みでどこまでやれるかっていう、音を聞いてデジタルだって思われないところまでどうやってもっていくのかということに、ただひとりひたすらこだわっていました。繰り返し繰り返しエンニオ・モリコーネのサントラを一日中聞き込んで、それに近いバイオリン音源を数か月かけて探したんですけど、ほとんど駄目でしたね。その中でかろうじて使えるのが出てきたんですけど、それはもう感動でしたけどね。今回はそのスコアをベースに、『ヘクとパスカル』の桑原さんにアレンジをお願いしました。桑原さんはプロとして活動をしているので、アレンジしたらスタジオに入って演奏して終わり。基本的にはピアノは桑原さんが弾いて、弦とかは他のミュージシャンに頼んで演奏してもらいました」。『スワロウテイル』『リリイ・シュシュのすべて』をはじめ、完成された世界観と語られるストーリーの力が強く印象を残す岩井作品の中では、自然なタッチが特徴の『花とアリス』は、他の作品とは少し趣が異なるように思える。岩井監督が明かしたように、自然発生的なエピソードの数々が描かれ、自然体の岩井俊二が堪能できる本作を、自身は“エッセーのようだ”と語っている。「『花とアリス』はあの仕上がりになりつつも、なんだか食い足りなくて、エピソードゼロとして続編を考えて書いたのが今回の作品ですね。そういう意味ではゆるく長い付き合いだったと思います。考えてみると、自分の日常的な人生観とか、そういうのが意外と出やすかったというか、ちょっとエッセーに近い作品だったと思うんですよね。主人公があるできごとに出会いながら、ストーリーを解決して終わるっていうのがスタンダードとしてあると思うんですけど、ほっとけばどこまでも行ってしまうような話って、意外にありそうで少なくて、今回が初めてだった気がしますね」。最後に、今後のアニメ制作への意欲について尋ねると、少し意外にも思えるアイデアを語ってくれた。「予定はまだありませんけど、またやりたい気持ちはありますね。やっている間中おもしろかったですね。だいぶ作り方がわかったので次はもうちょっと安定的に作れたらなあと思います(笑)。ロトスコープは実は時代劇に向いてるなって思ってるんです。3D CGでも着物の表現って難しいと思うんですよね。そのときに、ロトスコープならほぼ正確に表現できるんで、時代劇はあってるんだよなっていう。ぼくがいきなり時代劇やるのって違和感あると思いますが」。インタビューの中で何より印象的だったのは、さまざまなジャンルを越境する才人としての岩井俊二の姿ではなく、実直に、ひとつひとつの創作を妥協なく繰り返してきた時間の積み重ねが、岩井俊二という存在を確かに形作っているということだった。自身を“不器用”だと語る監督の、表現を探求するものとしての真摯な姿勢、さらには、作家性の高い作品を数多く残しながらも、常に表現としてのバランスへの目配りを忘れない姿から、等身大でありながら自身の才能を発揮している岩井俊二という存在を少し垣間見ることができたように思う。アニメという新たな表現に向かいながらも、自分自身であることを貫き続ける岩井俊二。新作も控えているとのことで、これからもどんな映画を見せてくれるのか、大いに期待したい。(text:cinemacafe.net)■関連作品:花とアリス殺人事件 2015年2月20日より全国にて公開(C) 花とアリス殺人事件製作委員会
2015年08月11日岩井俊二監督が手がけた長編アニメーション『花とアリス殺人事件』のブルーレイ&DVD化を記念して、8日に池袋の新文芸坐でオールナイトイベントが開催され、上映前に岩井監督と新海誠監督がトークショーを行った。その他の写真鈴木杏&蒼井優主演の『花とアリス』(2004年)の前日譚となる本作は、後に親友になるふたりの出逢いと、友情を深めていく様がミステリータッチで描かれる。岩井監督がアニメを手がけると知って「すごくびっくりした」という新海監督は「初めてフッテージを観た時にアニメーションではなかなかやらないスローモーションが入っていて、もっとびっくりしました(笑)。アニメーションでスローモーションは、成立しにくいんですよね。その絵だけ観て、これはどうなんだろうかと想像が渦巻いてしまって。実際、完成した作品を観た時は、衝撃を受けて、素晴しくて、心配した自分を恥じましたね(笑)」と作品を絶賛。さらに「今回は、広角寄りの画が多いですよね。僕は実写の岩井監督の映画を観て、望遠で描く人物がとても美しいと思って、その望遠の使い方を参考に、岩井監督のDVD作品を再生しながら絵コンテを書いたこともあります(笑)。でも今回は、望遠がほとんどなくて、なぜ望遠を使わなかったのでしょうか?」と質問を投げかけると岩井監督は「実写の場合は引きすぎると感情移入しにくいけれど、アニメーションだと、それくらいで気持ちが入ってくるような気がする。それ以上寄ると生々しい気がして、自分にとってのアニメーションとして気持ちいいところを見つけた感じです」と説明した。最後に岩井監督は「実写のほうが、いろいろあきらめちゃう、と思いました。『秒速5センチメートル』(2007年)で人工衛星が打ち上がるシーンがありますが、実写では難しい。だから無理だなって引き下がって考えることがあるんですけど、アニメーションだと、もっとやっていいみたいなことが次々に起こって、そこが面白いなって気がするんです。いまは実写を撮っていますが、次は、ああしたい、こうしたいみたいなことは、ありますね」といい、『花とアリス』と続けて観ることで「見事なまでに物語がつながっていることがよくわかると思います。まるで突然実写になるような感覚にもなると思います」と集まった観客に語りかけた。『花とアリス殺人事件』8月12日(水)ブルーレイ&DVDリリース※レンタル同時リリースDVD(2枚組):4700円+税ブルーレイ(2枚組):5800円+税販売元・発売元:ポニーキャニオン(C)「花とアリス殺人事件」製作委員会
2015年08月11日長編アニメ『花とアリス殺人事件』のブルーレイ&DVD記念トークイベントが8月8日(土)、東京・池袋の新文芸坐で行われ、メガホンをとった岩井俊二監督と、岩井監督を敬愛する新海誠監督(『秒速5センチメートル』『言の葉の庭』)が対談した。2004年に公開された実写映画『花とアリス』の前日譚を長編アニメーション化。石ノ森学園中学校へ転校してきた中学3年生の有栖川徹子(通称:アリス)が、花屋敷と呼ばれる隣家に暮らす不登校のクラスメイト・荒井花(通称:ハナ)とともに、1年前に起こった「ユダが、4人のユダに殺された」奇妙な事件の真相を追う。実写映画に引き続き、蒼井優がアリスを、鈴木杏がハナを演じ、大きな話題を集めた。本作が初の長編アニメ制作だった岩井監督は、「実写にはない苦労が多く、試行錯誤の連続だった。最後の2週間は誰も寝られないし」とふり返り、「納期を目前にひどい高熱を出してしまって。絶望的でした(笑)」と完成までの苦闘を告白。これには新海監督も「作品を見て、軽やかで自由に作っている印象を受けていた。現場は大変だったんですね」と知られざる舞台裏に驚きの表情だった。その新海監督は「カメラアングルや望遠の使い方など、過去の岩井さんの作品を参考にしていた」と言い、憧れの存在を前に恐縮した様子。それだけに、岩井監督が「またいつか、アニメを作ってみたい」と意欲を見せると、「楽しみです!」と期待を寄せていた。『花とアリス殺人事件』ブルーレイ&DVDは8月12日(水)発売。(text:cinemacafe.net)■関連作品:花とアリス殺人事件 2015年2月20日より全国にて公開(C) 花とアリス殺人事件製作委員会
2015年08月09日「SMAP」の中居正広とTBSアナウンサー・安住伸一郎が司会を務める「音楽の日」。この度、36年ぶりに郷ひろみ&樹木希林による一夜限りのデュエットが復活することが判明した。今回、郷さんと樹木さんはTBSドラマから誕生した「お化けのロック」と「林檎殺人事件」を披露する。1977年に放送されたドラマ「ムー」、そして1978年から翌年にかけて放送された「ムー一族」の挿入歌として誕生した「お化けのロック」と「林檎殺人事件」。放送当時21歳だった郷さんと、34歳だった樹木さん。ドラマで何度も郷さん&樹木さんのデュエットで披露された「お化けのロック」は、人気絶頂の男性アイドルと実力波女優の組合せの妙、そして緩やかなダンス、分かりやすい衣装も話題になり、当時のオリコンシングルランキングでも2位を記録する大ヒット。その成功を受け、「ムー一族」の劇中歌として「林檎殺人事件」が発売。放送が始まるや否や音楽番組「ザ・ベストテン」でも12週連続ランクイン&4週連続1位を獲得するなど、国民的な大ヒットとなった。その後、郷さんは歌手としての活動が中心になり、今年5月には100枚目のシングル「100の願い」を発売するなど、芸能活動43年を数えても、トップスターの位置をキープ。また樹木さんも役者として活躍し、今年のカンヌ国際映画祭で上演された主演作『あん』などに出演。日本の映画界には必要不可欠の名女優だ。今回のデュエット決定にあたり、郷さんは「まさか、樹木さんが(出演を)快諾していただけるとは思っていませんでした。『お化けのロック』も『林檎殺人事件』も樹木さんがいないと成立しませんから」と樹木さんとの共演を心待ちにしている様子。樹木さんも「36年ぶりにこの衣装を着て、郷さんの隣に立ったら、急にあの頃に戻った気がしました。不思議なものですね。でも、声はあの時とは同じように出ないと思いますよ。なんとか当時の状態に近づきたいと思いますが、ダメでもともとの気持ちでやらせていただきます」と意気込みを語るとともに、「でもね、自分で自分に期待はしてないの。テレビを観ている方が、『昔と違うよ』って言ってもいいじゃない。それもお楽しみの一つかもしれません」と樹木さんらしいコメントを付け加えた。二人は、1996年に放送された単発ドラマ「坊ちゃんちゃん」での共演&TV番組での再会しトークしたことはあったが、実際にTVでデュエットを曲を披露するのは約36年ぶり。郷さん、樹木さんは「お化けのロック」をリリースしTVで披露したお揃いのオーバーオールを用意するなど気合十分の様子。果たしてどんなパフォーマンスを披露してくれるのか、楽しみに放送を待ちたい。「音楽の日」はTBSにて6月27日(土)14:00より放送。(text:cinemacafe.net)
2015年06月27日宮藤官九郎が監督・脚本を手がけ、長瀬智也が主演を務める新作映画『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』が来年公開されることが発表され、監督と長瀬、共演者の神木隆之介がコメントを寄せた。長瀬が映画主演を務めるのは7年ぶりとなる。『TOO YOUNG TO DIE!…』は、宮藤監督が手がける完全オリジナル作品で、“地獄”を舞台に、若くしてこの世を去った少年が、クラスメイトに告白したい一心で、赤鬼と一緒に地獄からの生還を目指して大奮闘する異色青春劇だ。長瀬が演じるのは、地獄農業高校の軽音楽部顧問で、地獄専属のロックバンド・地獄図(ヘルズ)のボーカル&ギター担当の“赤鬼”キラーK。神木は、修学旅行で事故に遭い、弱冠17歳で命を落としてしまう大助を演じる。宮藤監督は「高齢化社会だし、自分もいつか死ぬし“死ぬのが怖くなくなる映画”を作りたいと思ったのが発端です」といい、「意気込みは特にございません。4作目ですからはしゃがず、気取らず、意気込まず、長瀬くん、神木くん、みなさんの魅力を撮りこぼさないよう細心の注意をはらうのみです。すいません。忙しいのでこのへんで」とコメント。長瀬は「“ロック”には怖いイメージがあるけれど、本当は笑えるところもある。地獄や鬼という設定はトリッキーでも、実はそこに深いメッセージが隠されている。ロックの素晴らしいところが凝縮された作品にしたいと思いますし、このような作品に出会わせてくださった宮藤監督とスタッフの皆さんに本当に感謝しています!」と話し、役について「赤鬼・キラーKの扮装は、パッと見るだけでは、僕だとわからないんじゃないかな。衣装も音楽もとてもカッコいいので、期待してください」と明かしている。神木は「大助を演じるにあたっては、一生懸命まじめに、ダサくなりたいと思います。ギターは中学・高校の時、時々弾いていたのですが、今回本格的に練習しました。プレッシャーを感じますが、頑張ります」とコメントを寄せており、劇中では、ロックバンド・地獄図(ヘルズ)の一員として、ギターと歌声を披露する。本作は、5月中旬から都内で撮影が開始されており、夏にクランクアップし、年内に完成する予定。『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』2016年2月全国ロードショー
2015年05月28日