「クローズド・ノート」「検察側の罪人」と映像化作品が相次ぐ雫井脩介が執筆時、最も悩み苦しみ抜いたという渾身のサスペンス小説を日本を代表する名優・堤真一、石田ゆり子、岡田健史、清原果耶らで映画化した『望み』。この度、本作で初共演を果たした主演の堤さんと石田さんの姿をとらえた新場面写真が解禁、原作の雫井氏からコメントも到着した。成功した建築家である石川一登を演じた堤さんは、本作では思春期の息子を持つ父親という難しい役柄に挑戦。堤幸彦監督は、そんな堤さんの演技を「実力派ならではの大胆な演技と神経質な演技の両方を兼ね揃え、まるで役を生きているようだった」と絶賛している。一方、石田さんは、在宅で校正の仕事をする優しい母・貴代美を繊細に演じる。息子の規士(岡田健史)が同級生の殺人事件への関与を疑われ、世間から憶測と中傷が飛び交う中、ひたすらに息子が生きて帰ってくることを願い、殺人犯の母として生きる覚悟を決める強さを兼ね備えた母親を見事に演じた。そんな石田さんの演じる貴代美に対し、「もらい泣きしたところが何度もあった。石田さんの品の良さが100%発揮された」と堤監督も語る。刻一刻と感情が揺れ動く複雑な家族関係を表現できる理想的なキャスティングが揃った本作。そんな実力派俳優たちが全身全霊を込めて臨んだ演技によって完成された作品を観た原作者の雫井氏は、「自分の作品の原作映画でこんなに何度も泣かされるなんて!」と絶賛のコメントを贈っている。『望み』は10月9日(金)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:望み 2020年10月9日より全国にて公開© 2020「望み」製作委員会
2020年09月03日日本とフランスの架け橋的存在として、多方面で活躍中のドラ・トーザンさん。彼女が2011年に書いた『ママより女』を加筆修正した『フランス人は「ママより女」』が、2015年12月に小学館から出版されました。ドラさんは2011年の東日本大震災後、日本人は「自分にとっていちばん大切なものはなにか」を見つめなおし、家庭やプライベートの充実を目指す方向に向かうだろうと予測していたそうです。ところが日本では5年経っても相変わらず、出産後、働きたくても働けない女性がいます。子どもが生まれても、上司がいると定時に退社できない男性がいます。そんななか、日本を愛するドラさんが「本当に日本はこのままでいいのですか?」と再び世に問うた一冊です。フランスでは90年代に1.66だった出生率が、2000年代に入って2.02まで復活しました。フランス以外のヨーロッパで、ここまでの回復を達成できた国は他にありません。同時に経済面でも高いGDPを維持しています。フランスの事情を知るだけでなく、私たち日本人が変わるヒントをいただけないか、直接ご本人にお話をうかがってきました。■フランスには「2人目の壁」は存在しない本書を読むと、制度の違いもさることながら、フランスと日本とでは国民性がいかに異なるかがわかります。たとえば日本にあって、フランスにない言葉や概念がいくつもあるのです。ドラさんによると、フランスでは「主婦」はほぼ死語ですし、人生は楽しむためにあると考えるフランス人には「ワークライフバランス」という概念は不要。未婚のまま妊娠、出産しても、国の保障が厚いので慌てて結婚する必要はありません。つまり「できちゃった婚」はないということです。女性が安心して子どもを産み、育てられる基盤に支えられ、かつ自由を愛し、美しく生きることをモットーとする国民性があって、決して出生率の高くないヨーロッパでの出生率2.00超えは達成できたのだといえるでしょう。一方、日本では、1人目の出産後、「2人目の壁」に直面する人がかなりいます。「2人目の壁」とは、必要となる生活費や教育費に関連した家計の見通しや、仕事等の環境、年齢等を考慮し、第二子以後の出産をためらうこと。一般財団法人1morebaby応援団の意識調査によると、2015年の時点で、「2人目の壁」を感じている人は75.0%もいるというのです。ただし、同時に2人目がほしいと思っている人は79.6%。つまり、最初の子どもが生まれた後の多くの日本人が、「産みたいけど産めない」というジレンマを抱えていることになります。「フランスには2人目の壁はないですね。あったとしても3人目で、産みたい人は産むし、産みたくない人は産まないだけなので、壁というほどのものではありません」とドラさん。調査によると、フルタイムで働く日本のママが2人目を持つことを躊躇する理由の2大トップは「経済的理由」と「仕事上の理由」。しかしフランス政府は、子どもが1人しかいない家庭には「家族手当」を支給しません。この時点でフランスでは、2人目を持つハードルが低いですよね。また、フランスでは産後3年間は職場の地位を保障する制度がありますから、職場復帰を案じる女性も日本とくらべてぐっと少ないであろうことが容易に想像できます。■大人と子どもの世界を区別するフランス人さらに、日本で「2人目の壁」を感じる人のなかには、「第一子の子育てで手一杯」という人も少なくありません。いわゆる産後ノイローゼや、育児ストレスという言葉は、日本の子育て環境ではよく聞かれます。また少子化が進み、社会のなかでのびのびと子育てできないと感じる人も多いと思います。「フランスは子どもや子どもを持つ人に優しい社会なのでしょうか?」とお聞きしたところ、「子どもに優しい面ももちろんありますが、その反面、フランスには子連れでは入れないレストランがあったりします。それは、子どもなしで夫婦が食事をしたり、二人の時間を持ったりすることが大事だという考えがあるからです。大人がそのような時間を持つために、赤ちゃんのうちからベビーシッターに預けたりすることは、フランスでは一般的なことです」とのこと。それは子どもをないがしろにするという意味ではなく、大人の世界と子どもの世界をきっぱりと区別するということなのですね。子どもにとっても、大人の都合につきあわされるより、信頼できる人のもとで時間を過ごす方が結果的にいいように感じます。日本でときどき目にする、通勤電車でのベビーカーのことを思い出しました。「もっと赤ちゃんのうちから預けてもいいのでは?」とドラさんはいいます。日本社会には、仕事のためならともかく、親が純粋に楽しむために子どもを預けることに関しては、まだまだ寛容とはいい難い現実があります。しかし、数時間、大人の時間を持つことでストレスが解消でき、さらに夫婦間のコミュニケーションを保てるのであれば、子育てにも大いにプラスになるはずです。■制度よりも自分らしく生きることが大事!本書を読んで、フランスの制度がいかに社会の変化を反映しているかに驚かされました。同性婚や事実婚など、さまざまな婚姻形態の人への保障制度や、もう15年も続いている「週35時間労働法」、3歳からの義務教育「マテルネル」などなど、数え切れないほどです。「日本は社会が変わってきているのに、法律が変わらないですね。フランスでは、人々は黙っていません。毎日なにかしらのデモや署名をやっています」政府がそういうことに耳を傾けてくれるとは、うらやましいかぎり。日本では、政府は女性が輝ける社会を提唱しながらも、女性からの要望に耳を傾けていないようなニュースが後を断ちません。それは、社会的地位の高い女性の少なさと大いに関係があるでしょう。しかしフランスも70年代までは、女性の地位は低く、女性の人格を認めないような法律もあったといいます。現在の状況になるまでには、フランス人の気質、歴史、労働環境、教育、さまざまな要因がからみあってきたのだろうと思いますが、では、私たち日本人が学べることはなんなのでしょうか?「いちばん大事なのは、自分らしく生きることです。いろいろな考え方や生き方の選択肢がある社会は、豊かな社会です。たとえばフランスでは子どもができても結婚したくない人も多くいますし、実際に事実婚もかなり多いのです。日本では世間体や親からの圧力で結婚する人もまだ多いのではないでしょうか」*自分らしく生きるためには、あまり人の意見を聞かないことも大事よ、とドラさんはニッコリしながらいわれました。自分の人生は自分で切り拓く。そんな女性が輝かないわけがないですよね。ドラさんも本書に書かれているとおり、「女性が働くのは、国の経済力のためではなく、自分の幸せのため、自由のため」なのですから。(文/石渡紀美) 【取材協力】※ドラ・トーザン(Dora Tauzin)・・・エッセイスト。国際ジャーナリスト。フランス・パリ生まれの生粋のパリジェンヌ。ソルボンヌ大学、パリ政治学院卒業。現在、日本とフランスの架け橋として、新聞、雑誌への執筆や講演、テレビ・ラジオのコメンテーターなど多方面で活躍中。『フランス人は年をとるほど美しい』(大和書房)など著書多数。2015年レジオン・ドヌール勲章を受章。 【参考】※ドラ・トーザン(2015)『フランス人は「ママより女」』小学館※夫婦の出産意識調査 2015-一般財団法人1morebaby応援団※日本とフランスの架け橋 ドラ・トーザン.net 【写真】※竹見脩吾
2016年04月10日