意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「『保守』と『リベラル』」です。政策で見ると両者は矛盾だらけ。二分はできない。衆議院選挙は自由民主党の圧勝に終わりました。選挙のニュースなどでもよく使われた「保守」と「リベラル」ですが、実は「保守」の対義語は「リベラル」ではなく「革新」なんです。そもそも保守派とは、受け継がれてきた慣習や伝統、地域のルール、家族を重んじ、慎重に歩みを進める姿勢を指します。対して、革新派は、古いものを打破して新しいものを作り上げていく姿勢。1970年代の学生運動のころは、まさに革命を求める人たちが革新派と呼ばれてきました。時代とともに、いつの間にか「革新」は「リベラル」と言い換えられるようになりましたが、「リベラル」は、個人の自由を尊重するという主義ですから、意味合いが少し違うんですね。政党でいうと、自由民主党が保守の政党とされています。伝統を守り、昔ながらの家父長制度、家族観を大事に守ります。農家や企業を守り、地域地盤を固めることに腐心します。それに対して、家族や企業、地域を優先するのではなく、あくまで個人の幸福追求を基本にして成り立つ社会を目指すのが「リベラル」。共産党や社民党、立憲民主党はリベラルといわれていますが、ひとつひとつの政策を比べてみるとまた、矛盾が生じてしまうんです。たとえば原発。原子力発電というエネルギー自体は、石油をベースにするエネルギーからすれば革新的なものです。自民党は賛成しており、その他の政党は反対しています。TPPを自民党は推進していますが、TPPを進めれば、海外の安いものがたくさん日本に入ってきて、従来の日本の農林水産業は脅かされる恐れもある。地域産業を尊重する自民党のスタンスとは真逆になりますよね。つまり、「保守」や「リベラル」は、政党をわかりやすく色分けするためにメディアが使っている言葉。実際には明確に分けることはできません。自民党員に聞くと「党内には保守の人もリベラルの人もいる」と話しています。わかりにくいと思われるかもしれませんが、最も大事なのは政党ではなく政策。自分が賛同できる政策をうたっているのは誰なのか、有権者はそれを見極める必要があるんですね。堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2017年11月15日号より。写真・中島慶子題字&イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2017年11月10日2006年版「この恋愛小説がすごい」1位に輝いた島本理生の恋愛小説を原作に、「嵐」松本潤・主演、有村架純がヒロインを務める『ナラタージュ』。この度、10月より公開となる本作をいち早く鑑賞したスタジオジブリの鈴木敏夫、女優・石田ゆり子、映画監督・岩井俊二ほか著名人からコメントが到着した。高校教師と生徒として出会った葉山貴司(松本さん)と工藤泉(有村さん)が、時が経ち再会した後、決して許されはしない、けれど、一生に一度しか巡り会えない究極の恋に落ちていく物語を描いた本作。女優・石田ゆり子は「この映画の中に流れる粒子は、しっとりと重たくて、まるで紫陽花の花のよう。静かな映像の中に、美しい狂気を感じる。ただひたすらにまっすぐ愛するヒロインのすべての表情に、わたしは圧倒された」とコメントし、タレントの篠原ともえも「はじめての感情に何度も触れることが出来た、あまりに美しい純文学的な愛の作品。シーンの一瞬を思い出すだけで、心がぎゅぅぅってなるんです」と感想を語る。また普段映画を撮る側の監督たちからも絶賛のコメントが。『GANTZ』『図書館戦争』シリーズの佐藤信介監督は、「台詞の生々しい音は、まるで初めて台詞の音声というものに出会ったかのような瑞々しさがあり、顔の寄り画の表情の力には、まるで初めて映像で顔というものを見つめたような新鮮さがあった。フォーカスアウトした映像の奥や、フレームの外に、想像を掻き立てられ、これが映画が本来もたらすべき力だなと思った」と監督らしい視点で語り、犬童一心監督(『ゼロの焦点』)は「久しぶりに胸を押しつぶされるヘビー級の恋愛映画。出会えてとても幸せでした」、岩井俊二監督(『リップヴァンウィンクルの花嫁』)は「曖昧でいて透明な、この世のようなあの世のような、幽霊のような化石のような、でも確かに見事に21世紀の若者たちのラブストーリーなのです」とコメント。そのほか、「ナラタージュ、それは回想。若い男は私を束縛したし、年上の男は優し過ぎた。大人のための恋愛映画、楽しませて貰いました」(スタジオジブリ鈴木敏夫)、「腑に落ちた。恋愛とは何か、なぜ恋愛でこんなに苦しまなければならないのか、ずっと謎に思いながら生きてきて、この映画を観て、決して答えは出ないのだけれど、『人間なのだから、こういう状態に陥ることは誰にでもあるんだ』ということが、腹にストーンと落ちてきた。恋を、納得してしまう。原作も大好きで、映画も大好きになった」(エッセイスト・小説家山崎ナオコーラ)などなど、恋愛の痛みとそれに勝る幸せを余すことなく描いた本作に、感嘆の声が続々とあがっている。また、コメントの一部を掲載したコメントフライヤーが、全国の『ナラタージュ』上映劇場にて明日9月23日(土)より設置される。『ナラタージュ』は10月7日(土)より全国にて公開。(cinemacafe.net)
2017年09月22日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「自殺予防週間」です。日本は自殺大国。9 月はとくに注意月間なんです。9月10日は世界自殺予防デー。それにちなんで、日本では9月10日~16日を自殺予防週間に定めています。期や年度の替わる3月と9月は、自殺する人が多いのですが、18歳以下に限ると9月1日が突出して自殺者が多いんです。1972年~2013年に自殺した18歳以下の子どもの数は1万8048人。平均すると1日約50人ですが、9月1日に自殺した数は131人で平均の2.6倍にものぼります。また、9月2日は4番目、8月31日は5番目に多く、夏休み明けのプレッシャーが精神を不安定にさせるようです。いじめ問題もありますが、学校に行かせようとする親の期待に応えられないことから、自分を責め、存在意義を見失い、自殺に至るケースも少なくありません。自殺者数が把握できる世界90か国で、人口10万人あたりの自殺者数を比べてみると、日本はワースト6位。女性に限ればワースト3位に入っています。それほど、日本は自殺大国なんですね。厚生労働省の自殺対策白書によれば、平成10年以降、14年間連続で3万人を超えていた自殺者の数が、平成24年には2万人台にとどまり、日本全体で見れば、減少方向にはあります。しかし、問題は10代後半~30代の若年層の自殺者が増えていること。平成27年の15歳~39歳の死因のトップは「自殺」だったんですね。自殺の原因はいくつもの要因が複雑に絡んでおり、特定はできませんが、遺書などから推測すると、「うつ病などを含む健康不安」「経済、生活面の不安」「家庭問題」「勤務問題」などが上位に挙がっています。政府はこの現状を重く受け止め、平成18年に「自殺対策基本法」を制定し、国を挙げて自殺防止に取り組もうとしています。NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」では、借金やいじめ、人間関係など、トラブル別の電話相談窓口を紹介しています。いつなんどき、あなたやお友達が崖っぷちに追い込まれるかわかりません。ぜひ元気なうちにウェブサイトを覗いてみてください。学校でも会社でも、命を落としてまで、通わなければいけない場所はどこにもありません。無理をせずに逃げてほしいと思います。ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2017年9月13日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2017年09月08日人気アイドルグループ・嵐の松本潤(33)が17日放送のフジテレビ系『VS嵐』で、ジャニー喜多川社長の天然エピソードを明かした。 この日はゲストに山下智久(32)を迎え、サンドウィッチマン、永野ら芸能事務所グレープカンパニー所属のお笑い芸人らと対決。番組内で山下は、KAT-TUNの亀梨和也(31)とユニット「亀と山P」で音楽番組に出演した際、衣装が真っ黒のスーツだったため、ジャニー社長が「YOUたち黒くて見えないよ」と、その場でバラの造花を用意してくれたという秘話を告白した。山下は「愛だな、と思った。そういうのがJr.時代から変わらずあってほっこりしました」と振り返った。 つづいて松本も、ジャニー社長の印象的だったエピソードを公開。嵐のリハーサル現場の隣でジャニーズJr.も練習をしていたため、見に来ていたジャニー社長と久しぶりに会ったという。 そこで「最近引っ越して、僕の家すごいんだよ。YOUたち今から見においでよ」と誘われ、ジャニー社長の自宅へ移動中、突然「ヤバイ、僕らつけられているよ。後ろに車がたくさんいるよ」とジャニー社長が慌てだしたというのだ。 実は、嵐とジャニー社長を尾行していた車は、全て嵐の移動車。しかし、ジャニー社長は気づかない様子で「絶対あれ(週刊誌の)記者だよ、ヤバイ」と困り顔だったという。 ジャニー社長の知られざる天然な一面に「かわいい」とスタジオは大きな笑いに包まれた。
2017年08月17日俳優の坂口健太郎が、松本潤主演の映画『ナラタージュ』(10月公開)に出演することが20日、わかった。同作は、作家・島本理生による同名の恋愛小説を実写化。高校の時の演劇部顧問教師・葉山(松本)に想いをよせる泉(有村架純)は、卒業以来1年ぶりの再会に想いをつのらせ、葉山の方もまた泉に複雑な感情を抱える。坂口は泉に想いを寄せ、一度は恋人になる大学生・小野玲二を演じる。葉山を忘れられない泉の姿に苦悩し、嫉妬する役どころとなる。坂口は「初めて本を読ませていただいた時、小野君は繊細な男の子で、どこか壊れてしまいそうな、少しづつ歪んでいく感情を表現する事が難しそうな役だと感じました」と役の印象について語った。さらに坂口は「切なく、悲しい気持ちに感情移入してみてくださる方もいるかと思います」と観客の心境を慮り、「楽しみにしていてください」とメッセージを贈った。メガホンをとった行定勲監督は、長年にわたり同作の映画化を熱望してきた。坂口について「普段はポーカーフェイスの彼が突然、笑み破顔する顔は誰もが心を奪われ小野の役にぴったりだと思った」と、キャスティングの経緯を説明。「ある意味、敵役のような存在ながら恋に苦悩する彼の表情に切なさが何度もこみ上げる瞬間がありました」と撮影時の様子を振り返り、「未来が楽しみな俳優に出会えました」と称賛した。
2017年01月20日人気アイドルグループ『嵐』のメンバー・松本潤さん(33)との交際が『週刊文春』によって報じられた、セクシー女優の葵つかささん(26)。交際報道後、サイン会を中止するなど活動を休止。Twitterの更新もお休みしていましたが、1月16日に投稿を再開。『今日から活動スタートします!昨年は色々と心配掛けてごめんなさい。でも、こんな私を応援してくれて、本当に本当にありがとう。今年もよろしくお願いします!』と活動を再開することをツイートしました。その後も変わらぬ様子でTwitterを更新。心配していたファンを喜ばせています。しかし、嵐ファンはさすがにこれを良く思っていないようで、ネット上では葵さんに対して批判の声が多数あがっています。●「面の皮の厚さにびっくり」「松潤にも引く」とネットは再び炎上活動を再開した葵さんに対しネット上では、『面の皮の厚さにびっくりした』『「こんな私を応援してくれて、本当に本当にありがとう」って、大スターにでもなったつもり?』『売名おつかれさまです』『どうせまた炎上するだけなんだからずっと休んでればいいのに』『売名成功?よかったね』『活動再開したってわざわざツイートしなくてもいいんだけど…』『売名成功でこれからも露出していくつもりみたいだね』『ジャニヲタ敵に回しても平然としていられるなんてすごい』『このたくましさはすごいと思う』など、批判的なコメントが多く、またもや炎上しているようです。一方、葵さんの活動再開で再び松本さんへの批判の声も高まっています。『松潤のゲスさも暴露された感じ』『松潤の株はかなり下がった』『テレビでは一切報じられてないけど、松潤のイメージダウンは免れない』『本当にこんなのと付き合ってたの?松潤にも引くわー』『こんな女を選んだ松潤にはほんとガッカリ』『人様のお通夜でナンパしたっって、松潤のほうが悪いと思うけど…』『松潤のバカさがバレちゃったね。ファンかわいそう』など、松本さんに落胆する人も少なくないようです。二人の交際が真剣なものだったのか、それとも遊びだったのか真相は謎ですが、嵐ファンにとっては衝撃的すぎる報道だったことに間違いはありません。葵さんとの交際報道によって大きくイメージダウンした感のある松本さん。今後、そのイメージを回復していくことはできるのでしょうか。●文/ぶるーす(芸能ライター)
2017年01月18日寒さによる冷えや乾燥が気になる季節になり、咳をしている方も多いですね。乾燥による不調を感じたら、蜂蜜で潤おしましよう。蜂蜜の優しい甘味と豊かな風味、蜂蜜の穏やかな作用は、心身を癒し、活力を与えてくれます。蜂蜜に含まれるオリゴ糖は腸の善玉菌を増やし、便秘や下痢を改善し、免疫力を向上させます。蜂蜜の糖分は、花の蜜。これを蜂が濃縮して果糖やブドウ糖になったものです。採れた場所や花によって風味や味が異なるので、違いを楽しみながら使うのも面白いですよ。そのまま舐めても◎ さらに喉に良い食材を加えて効果UP!・クルミ滋養強壮、咳止め、便秘解消に役立ちます。咳が出る時は、クルミと生姜を細かく刻んだものを蜂蜜と加えて食べると良いでしょう。痰が切れない時は、クルミをすり潰したものを蜂蜜に混ぜ、口の中で溶かす様に摂取すると良いでしょう。・タイム気管支を拡張して浄化し、痰を取り除く事から、気管支炎やぜんそくの症状を緩和します。タイムを蜂蜜に混ぜてなめると喉の痛みがやわらぎます。抗菌作用が高い!生姜や果物の蜂蜜漬けを常備【免疫力を高めたい時は…】・生姜の蜂蜜漬け生の生姜に含まれるジンゲロールは、免疫力を高めます。皮付のまますりおろして蜂蜜に漬けておくと、飲み物やお料理にも活用できます。ジンジャービールもおススメです。【喉の不調に】・大根の蜂蜜漬け咳やのどの痛みには、スライスした大根を蜂蜜で一晩漬けた大根の蜂蜜漬け飲むと良いとされています。・花梨の蜂蜜漬け花梨は、喉を潤おすだけでなく、咳止め、胃の機能を回復、むかつき、嘔吐、抗酸化作用があります。なにより生の花梨の甘い香りは、幸せな気分にしてくれます。花梨が手に入ったら、香りを充分楽しみ皮が黄色なったら、熱湯で洗い、皮ごとピューラーで剥くか、スライスし、種はお茶パックに入れます。消毒した瓶に果皮と種を入れ、それらが浸るぐらいの蜂蜜を注ぎ入れます。1週間ぐらい毎日かき混ぜ、2か月漬け、ザルで濾したものが花梨シロップになります。皮の部分は、乾燥させてお湯を注げば、風味豊かな花梨茶が楽しめます。蜂蜜のデトックス効果解毒作用があるのでデトックスしたい時は、ティースプーン1、2杯の蜂蜜を40度以下の白湯に加え、さらにレモンを2、3滴しぼった生蜂蜜レモンジュースを摂取します。出来るだけ空腹時に行い、さらに1回の食事の量を抑え、間食を控えると効果的です。蜂蜜の保湿効果蜂蜜は、保湿作用があるので乾燥してカサカサの唇にも活用できます。蜂蜜を唇に塗ってラップでパックし、数分おくと落ち着きます。◎咳などは症状が酷くなる前に、早めに病院で受診しましょう。◎蜂蜜は、混ざりもののない、純粋で非加熱のものを選びましょう。抗菌作用を高めたい時は、マヌカハニーがおススメです。◎蜂蜜は、沸騰させると味が変化し、ビタミンCも半分程度失われ、酵素が分解されてしまいます。栄養素や風味、作用を落とさず摂取するには、加熱をし過ぎないようにすると良いでしょう。食べ過ぎると胃腸に負担がかかるので、適量を心がけ、乳児ボツリヌス症の感染源になるので1歳未満の子には与えないようにしましょう。また、そばの蜂蜜は、アレルギーの方は注意しましょう。
2016年11月18日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「経済波及効果」です。***「広島東洋カープ優勝による経済波及効果が331億円」だとか、映画『君の名は。』のヒットで聖地に多くの人が訪れ「モデルとなった飛騨市への経済波及効果が100億円を超える予想」など、経済波及効果という言葉をよく耳にしますね。これは、何かものごとが起きることにより商品が売れ、生産者や直接の関係者の所得が増える。周辺の関連業界への好影響、さらにその人たちの消費が伸びることで、無関係の産業でも利益を生む、二次的波及までを含めた予測を指します。総務省のホームページには、経済波及効果を算出する「産業連関表」が掲載されています。この産業連関表は1936年、アメリカの経済学者のレオンチェフ博士が最初に発表。第二次世界大戦後のアメリカの経済を予測し、高い精度を示したことから、活用されるようになりました。日本の産業連関表は1951年に、当時の通商産業省によって作成されました。経済波及効果があったと報じられれば、人々の投資意欲や消費意欲を高めますよね。そうやって景気を良い方に向かわせるのはよいことなのですが、国が経済波及効果という言葉を持ち出したときには、少し懐疑的になったほうがよいかもしれません。なぜなら、推し進めたい政策を通すための説得材料として、都合のいい情報だけを流している場合もあるからです。日本銀行の算出によると、2020年までの東京五輪開催の経済効果は、訪日観光者数が約3300万人に達し、1人当たりの消費額も増加、建設投資総額は10兆円に。実質GDP成長率も'18年まで毎年0.2~0.3ポイント押し上げると予想されています。しかし、あくまで試算ですから、そこまで楽観視してよいかはわかりません。TPPに関しても、政府は日本が参加すれば、貿易が盛んになり生産性が上がり、賃金も雇用も増え、貯蓄や投資にお金が回り…と、良い循環が生まれると言っています。しかし、良い面だけでなく、農林水産省のホームページでは、農林水産物の生産減少額が1300億~2100億円と予想されています。このマイナスの経済効果の報道は、あまり聞こえてこないんですね。◇堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年11月9日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年11月06日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「アフリカ開発会議」です。***8月に第6回アフリカ開発会議(TICAD)がケニアで開かれました。アフリカの開発支援のために、日本が世界に呼びかけて1993年に始まった会議で、5年に一度開催され、今年初めてアフリカで行われました。アフリカは人類発祥の地といわれ、ナイル文明など、豊かな文化や歴史があります。ところが19世紀に欧州諸国が肥沃な土地を奪い合うようになり、アフリカを勝手に分割統治、植民地にしてしまいました。その後、アフリカ諸国は独立しはじめますが、欧州各国によって決められた国境は、先住民族の文化や生活を無視した線引き。その問題は現在の内戦や民族紛争にもつながっています。また、アフリカはほかにも、食糧不足や干ばつ、感染症、教育を受けられない子どもたちなど、多くの問題を抱えていますね。近年のボコ・ハラムやアルカイダなど、テロ組織の暗躍も、根底にあるのは貧困や教育問題。経済を好転させることで解消される問題は多い。今年のTICADではテロとの戦いと国際協調が訴えられ、安倍総理は日本から3兆円の支援をすることを約束しました。これに対して、中国は「国連の常任理事国入りをしたい日本が、アフリカ諸国を味方につけようとTICADを政治利用している」と批判しました。近年、中国は、アフリカに携帯電話を普及させ、携帯電話による送金システムを輸出するなど、ものすごい勢いでアフリカに進出してきているんですね。水道も電気も通ってない地域で、携帯電話だけは使われているという異様な光景も。ほかにも道路や港を作る支援をし、代わりにレア・メタルの採掘権を得ようとしています。発展途上のアフリカには、たくさんのビジネスチャンスが眠っています。日本も開発支援だけでなく、民間企業がもっとアフリカと密接につながるといいのですが、距離的な問題もあり少々及び腰です。それでも、日本で消費されるバニラビーンズやカカオ豆、蚊取り線香に使われる除虫菊はアフリカ産がほとんどなんですよ。今後、アフリカと日本は、ますます結びつきが深くなっていくことでしょう。◇堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年11月2日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年10月30日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「消費者物価指数」です***「消費者物価指数(CPI)」とは、全国の消費者が購入する商品やサービスの価格の変動を時系列で測るもので、5年に一度、基準年を定めて、それと比較して算出します。毎月、総務省統計局が発表しており、景気が良いかどうかの判断基準になるので、「経済の体温計」ともいわれています。消費者物価指数を見て、政府は経済政策や年金の改定などを行うのです。日本経済の最大課題は、デフレからの脱却ですよね。デフレとは、物の値段(物価)が下がると、企業の収益も下がることになるので、企業は賃金を上げられない。なので、懐の冷えた消費者は物を買うのを控えるという状態。物が売れないので企業はさらに商品を安くする…という連鎖が起きます。これがデフレスパイラルです。改善策として、政府は金融緩和を行います。日本銀行が市場にお金を多く流して、相対的に円の価値が下がる状態に誘導するのです。市場に円があふれれば、自然と円安になります。希少価値のものは値段が高くなるけれど、世の中にたくさんあるものは安くなる、というのと同じ原理ですね。日本の主要産業は輸出産業なので、円安になれば企業は儲かります。トヨタなどの輸出企業は利益を増やし、「景気は良くなった」「アベノミクスは成功した」ともいわれますが、多くの一般市民にはあまり良くなった実感がありません。そこで実態を知るのに有効なのが「消費者物価指数」です。消費者物価指数が下がっているということは、市民が前よりも物を買わなくなった(買えなくなった)ということ。2015年の基準年に対して、今年は総合的に消費者物価指数が毎月下がり続けています。これは、一部の企業が好調でも利益が社員に還元されていない(賃金が上がっていない)ということ。非正規雇用者にはもっと回ってきていませんね。政府はこの状態を認識しており、企業に対して賃金を上げるように働きかけ、消費税増税も先送りにしました。消費者物価指数が上がれば、本当に景気が良くなっているという証拠です。毎月ニュースで発表される消費者物価指数を見ながら、自分の体感景気とぜひ比べてみてください。◇ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年10月19日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年10月18日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ドーピング」です。***リオ五輪の開催前、ロシアの国家ぐるみのドーピング隠蔽行為が発覚し、問題になりました。世界にドーピングの衝撃が走ったのは、1988年のソウルオリンピック。100m走で、ベン・ジョンソンがカール・ルイスに勝ち、人類初9・8秒台を切るタイムを叩き出しました。ところが、ドーピング検査で陽性になり、ジョンソン選手の金メダルは剥奪されてしまいました。ほかにも陽性の選手が後を絶たず、これをきっかけに1991年にジョンソンの祖国、カナダでアンチ・ドーピングの機関が誕生。1999年には世界アンチ・ドーピング機構(WADA)が設立されたのです。ドーピングは必ずしも、選手が故意にしているとは限りません。たまたま飲んだ薬の中に禁止成分が入っていて、引っかかるケースも。テニスのマリア・シャラポワ選手が2年間の出場停止処分になりましたが「禁止薬物とは知らなかった」と提訴しています。禁止成分は随時更新されますから、ドーピングを避けるには、選手だけでなく、チームやコーチ、医師や薬剤師も正しい知識が必要。WADAやJADA(日本アンチ・ドーピング機構)はそれぞれの立場での注意を促しています。ドーピングは、製薬会社のビジネスとも密接な関わりがあると指摘する声もあります。合法的に運動能力が上がる薬となれば、ビッグビジネスになりますよね。最近はWADAと大手製薬会社が情報を共有してドーピングを未然に防ごうとしていますが、これも諸刃の剣。規制をすり抜ける新薬が開発され、後にその成分が規制されるというイタチごっこにもなってしまいます。今回のリオ五輪で、IOC(国際オリンピック委員会)が、ロシアの参加を全面禁止にしなかったことに対して、処分が甘いという意見もありました。しかし、五輪は平和の祭典。開催期間は休戦し、人種や国境を超えて皆が参加すること、五輪を続けることに意義があります。大国ロシアが抜けてしまったら、その秩序が崩れてしまう可能性も。そもそも、スポーツとは何を競い合うものなのか?原点に立ち戻り、清い戦いを見せてほしいですね。フェアな戦いこそが感動を与えてくれます。◇堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年9月21日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年09月21日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「東京都知事」です。***新しい東京都知事が、初の女性知事・小池百合子さんに決まりましたね。東京がどれほどの大都市なのか、数字の面から見てみましょう。2016年度の東京都の年間予算は、13兆6560億円。日本の国家予算総額が96兆7218億円ですから、比較しても相当な額というのがわかります。また、この東京の予算額は、スウェーデンの国家予算に匹敵する(!)規模です。GDP(国内総生産)では、東京都は2015年度見込みで92兆9000億円=約1兆1326億ドルです。世界のGDP順位を見ると、1位はアメリカ約18兆ドル。2位中国、3位日本が4兆ドル台。数字上では東京は12位に匹敵し、スペインやメキシコのGDPより勝っているのです。都市別に見ると、2014年の1位は東京。2位NY、3位ロサンゼルスと続きます。東京は経済的には、国レベルといってもいい大きさなんですね。日本の総理大臣は議会が選びますが、都知事は直接民主制によって、私たちが直接選べます。つまり、東京都知事は東京という一つの国の大統領のようなもの。また、東京には、日本の全人口の約1割が集中。大企業の本社や外国企業の5割は東京にあり、日本の税収のうちの約4割は東京から集められています。これだけの人とお金が動いている少なくないんです。たとえば、石原慎太郎さんが都知事だったとき、東京の空気の浄化のために、ディーゼル車の走行を規制しました。これにより、自動車メーカーは、世界一基準の厳しい排気ガス規制に対応できるクリーンな自動車を開発。日本の技術力を上げるきっかけになりました。石原都知事はほかにも、日本史を都立高校の必須科目にしたり、横田基地の返還要請をし、航空管制の一部を返してもらうなど独自の政策を実行していきました。近年は任期が短くて、実績を残す機会は減っていますが、都知事は日本全体にも少なからぬ影響を与える存在ということに変わりはありません。予算が膨らむ東京五輪問題や土壌汚染を抱える築地市場移転問題など、小池流改革手腕でバッサリ切り込んでいってほしいなと期待しています。◇堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年9月7日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年09月06日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「イギリスのEU離脱」です。***6月にイギリスは、EU離脱の是非を問う国民投票を行い、離脱派が勝利。残留派のリーダーだったキャメロン首相は辞任し、テリーザ・メイが首相になりました。投票結果は残留派48%、離脱派52%の僅差。EU離脱の選択は、世界に衝撃を与えましたが、実はイギリス国内でも「まさか本当に離脱になるとは!」と驚きの結果だったのです。離脱に傾いた大きな理由は、難民問題。離脱派の元ロンドン市長ボリス・ジョンソンは、「難民が流れ込んだせいで国内の失業率が上がり、テロの脅威にさらされている。EUを離脱し、イギリスは主権を取り戻すべきだ」と主張しました。EU(欧州連合)とは一つの大きな国のようなものです。第一次、第二次世界大戦で大きな犠牲を払ったヨーロッパは、資源争いによる敵対をやめ、まとまる必要に迫られました。EUを立ち上げ、資源を分かち合い、関税を取り払って、人・もの・お金が自由に行き来できるようにしました。ヨーロッパ全体で協力し合うことで、安全保障と大きな経済成長を得たのです。しかし、EU加盟の恩恵は国ごとに差があります。イギリスやフランスは借金の多い国々を助ける役回りになり、経済的負担は少なくありません。また、EU内には法律があるので、国内で勝手に物事を決められない不自由さも出てきました。ジョンソンが「主権を取り戻す」と言ったのはそういう理由です。ジョンソンは有力な次期首相候補でしたが、離脱が決まると立候補を取り下げてしまいました。他にも、国民投票後に現場を退いた離脱派の政治家もいました。つまり、覇権争いのために、離脱の主張をしていた議員が少なからずいたということ。それだけ、国民の不満は募っており、支持を得るには格好のテーマだったのです。首相のなり手はなかなか見つからず、残留派だったメイが名乗りをあげます。メイ首相は22人の閣僚のうち7人に、ジョンソンを含む離脱派の閣僚を据えました。離脱のニュースの後、ポンドは下落、円高ドル高の流れに。世界経済にも影響を及ぼしています。イギリスがEUを離れ、どんな政策で問題解決していくのか世界が注目しています。◇堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年8月31日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年08月30日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「核なき社会」です。***みなさんは、8月6日、9日が何の日かわかりますか?71年前のこの日、世界で初めて、原子爆弾が投下されました。8月6日は広島に、9日は長崎に。一瞬にして街は焼け焦げ、その年の12月までに広島では約14万人、長崎では約7万人の方が亡くなりました。数年後に白血病やガンを発症したり、子供に原爆症が出るケースもあり、総被害は数知れません。日本は原爆の恐ろしさを知る、唯一の被爆国なんです。現在、核保有国はアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、インド、パキスタン、北朝鮮、イスラエルの9か国。これほど恐ろしい兵器を、なぜ皆持ちたがるのか?悲しいことですが、核を保有することで、敵対する国同士の抑止力になっている、というのも現実なんです。とはいえ、核兵器がこのまま増え続けたら、地球規模の危機に晒されます。2009年、オバマ大統領はプラハで、核保有国として初めて「核なき社会を目指そう」と国際社会に訴えかけました。その後、アメリカ・ロシア間では核軍縮の合意が取れ、処分後もテロリストに核兵器が渡らないよう、注意を払っています。一昨年、国連総会で「核兵器使用禁止条約」がオーストリアから提案されました。化学兵器や生物兵器は国際条約で、使用したら戦争犯罪として裁かれることになっています。それに核兵器も加えようという提案。賛成125か国、反対50か国、棄権7か国で可決されましたが、実は日本はこのとき棄権しました。日本は自国では核兵器を持ちませんが、同盟を結ぶアメリカに、中国や北朝鮮の脅威から守ってもらっている立場。その手前、賛成することができなかったと言われています。今年5月、アメリカの現職の大統領としては初めて、オバマ大統領が被爆地の広島を訪れ、平和を訴えましたね。これが実現したのも、毎年、原爆記念日に世界に向けて平和のメッセージを発信し、核保有国の首脳に手紙を送り続けた広島市の不断の努力の賜物です。原爆の惨劇を伝えられるのは、世界で日本だけです。戦争体験者が次々いなくなる今後、二度と悲劇が起こらないよう、8月6日、9日のことを私たちは忘れてはいけないと思います。◇堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年8月10日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年08月05日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ふるさと納税」です。***ふるさと納税とは、好きな自治体に寄付をする制度です。寄付をすると、その額から2000円を引いた額が、所得税と住民税から控除されます。日本は東京が中心となり、大都市ばかりに人もお金も集まってしまっています。地方にお金が回るようにと、ふるさと納税制度は2008年に公布されました。寄付した人には地方の特産品などのお礼の品が送られます。理念は素晴らしいのですが、年々、自治体ごとの寄付金獲得競争が加速、返礼品がエスカレートして豪華になってきてしまいました。自治体の方でも返礼品が重荷になったり、返礼で受け取った金券を転売する寄付者が出てくるなど、本末転倒な事例も。公布から8年たち、そろそろ制度の見直しが必要なのかもしれません。また、ふるさと納税を使って、高額所得者が高額の寄付をし、寄付額がほとんど還付される、節税対策に使われていることを問題視する人もいます。いわば、日本のタックスヘイブンです。ただ、都市と地方の格差は広がる一方。地方は財源を得るのが本当に大変です。ですから、たとえタックスヘイブンになったとしても、地方にお金が回るのは良いことなんじゃないかと思います。最近では被災地にふるさと納税する人も増えていますね。熊本への寄付金も増えて、復興に役立っています。問題は、寄付をする側の姿勢ですね。ただの節税対策や、返礼品目当てのショッピングモールになってしまうのは残念。集まった寄付金の使い道は各自治体で公開していますので、寄付をしたら、ぜひチェックしてください。また、一度その土地に足を運んで、実際に見てきてほしいですね。都市部はどうしても消費が中心。地方が生産を支えています。農業、林業、水産業の「生産者を守る」という意識で地方を応援していきたいですね。実際に生産の現場の大変さを知ると、無駄な消費をしなくなります。日本はレストランでもコンビニでもたくさん食品を捨てていて、食品ロスが多いんです。過剰な消費から生まれる社会問題は少なくありません。生産と消費、都市と地方のいいバランスを目指していきたいですね。◇堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年7月20日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年07月17日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「参議院選挙」です。***皆さんは「三権分立」を覚えていますか?法律は立法権を持つ国会で作られ、法律に基づいて政治を行う内閣は行政権を、法律に基づいて裁判する司法権は裁判所にあります。これらは暴走しないように互いに監視し合う、ということになっていますが、実際は行政府と立法府が一本化しているよう。内閣が望む法案が、成熟した討議のなされないまま、数の論理で決まることが多い印象があります。国会答弁の数は与党が1割、野党が9割と割合が決まっていますから、これには反論する野党側の責任も少なくありません。大統領と上院下院が対等に、緊張感を持って存在し、常に意見を戦い合わせているアメリカとは大きく違いますね。日本の場合、総理大臣や各大臣は、立法府(国会)で議席を多く取った党内から選ばれます。また、「党議拘束」といって、党員は政党の方針に従わねばならないという規則があります。自分が所属する政党と違う意見に票を入れると、体制に逆らったと罰せられたり、党の公認を得られなくなったり、除名処分になることも。そのため、全体が数の多い与党の意見に流れることが構造的に起きてしまうんですね。国会には衆議院と参議院があって、衆議院で可決された法案を、参議院で再討議します。参議院は衆議院のように途中で解散することなく、任期は6年。半期ごとに半分の議員が選挙で選ばれます。衆議院とは別の角度からじっくり法案に取り組むことが求められています。しかし、党議拘束は参議院にもかかりますから、残念ながら、衆議院との役割の違いがあまり見えてきません。選挙前には国民が喜ぶような聞こえの良い法案が掲げられたり、結局、「選挙に勝つための政治になっていないか?」という疑問も拭えず、国民の政治離れが進んでしまいました。7月10日は参議院議員通常選挙の投票日です。代表演説やマニフェストをチェックして、ぜひ政策の中身で政治家を選んでください。日本は、お上の決定に民が従う歴史が長かったものですから、政治を政治家にまかせる慣習が染みついています。でも今、当事者意識を持って、政治家に働きかける積極性が求められているんです。◇堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年7月13日号より。
2016年07月11日フォトグラファーの鈴木むらさきによる初のふたご写真展「ふ」が、6月24日から29日まで表参道ヒルズ同潤館3階の表参道ロケット(ROCKET)で開催される。鈴木むらさきは、フリーマガジン『elaelaopa!』の活動を経て、08年よりフリーランスのフォトグラファーとして活動を開始。13年発売の書籍『ふたごと教育 : 双生児研究から見える個性』と出会ったことで、人生を通して変化していく“ふたご”の関係性に興味を持ち、以降ライフワークとしてふたごをテーマにした写真を撮り続けている。同展では、鈴木むらさきが昨春から約1年間に渡り撮り続けた、幼少期のふたご36組の写真を展示。美しい日常風景の中に映し出されるふたごたちの写真から、その可愛らしさはもちろん、子どもたちのありのままの姿を見ることができる心温まる写真展となっている。【イベント情報】鈴木むらさき ふたご写真展「ふ」会場:表参道 ROCKET住所:東京都渋谷区神宮前4-12-10 表参道ヒルズ同潤館3階会期:6月24日~29日時間:11:00~21:00(6月26日は20:00まで、29日は18:00まで)入場無料会期中無休
2016年06月23日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「待機児童」です。***条件を満たし、入所申請をしているにもかかわらず、保育所に入れない「待機児童」の数は2015年4月の段階で約4万5000人。キャンセル待ちの多さに諦めて、最初から申請していない家庭もあるので、潜在的な待機児童数を含めるとその数はもっと多くなるでしょう。待機児童問題は、保育所の数を増やすだけでは解決にはなりません。というのも、保育士さんの数が足りないんですね。保育士の資格を持ちながら現場を離れた「潜在保育士」の数は全国で約80万人。離職した大きな理由は、賃金の低さと言われています。保育士の賃金は、35歳平均で月額21.9万円。全産業の平均は33.3万円ですから、かなり下回っています。安倍総理は4月に一億総活躍社会の一環として、保育士の賃金を2%、月額約6000円アップを宣言。潜在保育士をなんとか呼び戻そうと対策を立てています。保育所が足りないのは、近隣の反対により建てられないというケースもあります。「子供の声がうるさい」といったクレームも聞きますが、それだけではなく、道が狭くて、子供の送り迎えの車や自転車が来ると住民の移動ができないという切実な理由も。街づくりやインフラ面から抜本的に変えなければいけません。また、保育所開設の規制緩和も必要でしょうね。企業内に保育施設がもっと開設できれば助かりますよね。待機児童問題は、すぐには解決しないでしょう。これから就職や転職を考えている方は、育児休業のあるなしだけでなく、バリエーションをチェックしてみてください。1年フルに休めなくても、時短で働ける時期を長く取れる方がありがたい場合もあります。今から約100年前に母性保護論争が起きました。女性解放運動家の平塚らいてうは「子供を産み育てることは国のためでもあるから、国が保護するべき」と主張。対して歌人の与謝野晶子は「女性は男性にも国にもよりかかるべきじゃない。自立して稼ぎなさい」と意見しました。子育てのお金は、国か個人、どちらが出すべきなのか。子供は誰のものなのか?100年前の論争の答えはまだ出ていないんです。◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年6月22日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年06月19日19日に最終回を迎えるTBS系ドラマ『99.9-刑事専門弁護士-』(毎週日曜21:00~)の公式ツイッターで、主演を務める嵐・松本潤の人柄が伝わるエピソードが明かされ、話題を呼んでいる。公式ツイッターでは、「今日の潤様」と題して、頻繁に松本の撮影現場での様子を紹介。この日は、「明日撮影するクライマックスシーンの台詞について、どうするのがベストか、この1週間ずっとやり取りを重ねているのですが、先ほど『はい、これ』と一枚の紙を渡された。これまでやり取りして、手書きでたくさん書き込んだ台本を、PCで全部打ち直して台本形式にしたものだった」というエピソードを明かした。続けて、「『いろいろ考えて書き直したんだけど、手書きのものを見せるのも失礼かなと思って』とのこと」と説明。「誰よりも忙しく、誰よりも寝ていないのに、スタッフに対してさえこの気遣いをしてしまう、気遣いができるところが、松本潤である所以なんだなと、改めて思いました」とつづり、「うちの座長は素敵な人です」とたたえた。この投稿に、「さすが潤様」「やっぱり潤様ステキすぎ!!」「潤くんの人柄がにじみ出る素敵なエピソード」「涙が止まりません」「感動で涙が溢れます」「座長素敵すぎます…涙出てきた…」とファンは感動。また、「座長とスタッフさんがたくさん考えて作った最終回、すっごい楽しみです!!」「そんな考え抜いた最終回は正座してみないと!!」「どんなラストになるかワクワクしてます」と最終回への期待の声や、「ぜひセカンドシーズンを!」という声も寄せられている。(C)TBS
2016年06月15日意外と知らない社会的なテーマについて、ジャーナリストの堀潤さんが解説する、雑誌『anan』で連載中の「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「タックスヘイブン」についてです。***タックスヘイブンとは日本語で「租税回避地」。税金を免除、またはとても低い税率にして、海外資本を獲得している国や地域のことを指します。ヨーロッパの小国、モナコ公国やサンマリノ共和国、カリブ海の英領ヴァージン諸島やケイマン諸島などが有名です。それらの国や地域が税率を下げるのは、もともと産業や鉱物資源がなく、税金をとる先がないからなんですね。海外企業を誘致できれば、雇用が生まれ、富裕層が集まれば消費が活発になり、その地域の利益につながります。企業にとってみれば、世界に展開するのに、本拠地をタックスヘイブンに登記し、収益を集約できれば、国によって税率が異なることを気にせず、円滑に取引が進められます。必ずしも誰しもが税金逃れのために使っているわけではないんです。ただ、麻薬や人身売買、テロ、政治家の汚職などのマネーロンダリング(資金洗浄。口座を転々とさせて、資金の出所を不明確にする)の温床になりやすいのも事実。北朝鮮やロシアなど、欧米諸国から経済制裁を受けている国のお金のやり取りに使われているともいわれています。4月に「パナマ文書」がニュースになりました。パナマの法律事務所から、タックスヘイブンを利用する企業の、過去40年分の膨大なデータが流出。それによると、約21万の企業の関係者リストのなかに、プーチンや習近平、アイスランドの首相など、国の要人も含まれていました。文書はドイツの新聞社と国際調査報道ジャーナリスト連合に送られ、現在詳しく調べている最中ですが、リストのデータベースは誰でも見られるよう5月にネット上で公開されました。タックスヘイブンに集められた企業の税逃れ額は、約500兆円あるとか。それらが国税として支払われれば、社会保障に使えますよね。日本では早い時期からタックスヘイブン対策税制を設け、法人税率20%以下の国に登記している会社は、国税庁に届け出ることになっており、国内の子会社から、相応の税がとられています。世界の格差問題につながるテーマ。今後、各国がどう対策をとるのか、要注目です。◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年6月15日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年06月14日意外と知らない社会的なテーマについて、ジャーナリストの堀潤さんが解説する、雑誌『anan』で連載中の「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「一億総活躍社会」についてです。***去年の10月に第3次安倍改造内閣が発足したときに内閣は「一億総活躍社会」というプランを掲げました。安倍政権の経済目標の一番大きい規模のものって、何だかわかりますか?それは2020年までに日本のGDPを600兆円に引き上げるというものです。現在、日本のGDPは500兆円前後。‘80年代の後半に400兆円の大台を突破し、約15年かけてやっと500兆円になりました。バブル期を含んだ成長ですから、今から4年で約100兆円を上げるというのは、簡単ではない数字なんですね。GDPを上げるには方法は2つ。移民に積極的に働いてもらうか、国内に眠っている労働力を掘り起こすか。安倍さんは保守派ですから、移民の受け入れにはあまり積極的ではありません。そこで、女性やお年寄り、障害のある方、難病の方などでも、働ける人を総動員して、国の経済成長を促したいと考えているんです。バブル崩壊後、リーマンショックの起きた2008年頃までは、働きたくても働き口がない、という状況でした。けれども今、日本は人手不足です。サービス産業、製造業、介護や医療の現場で働き手を求めています。「一億総活躍社会」は言い換えてみれば「一億総労働社会」。少子高齢化で、働く年代の人口が減っているのに歯止めをかけたいんですね。今後は定年も延び、年金の受給開始年齢も引き上げられるでしょう。ただ、見方を変えれば悪いことばかりではありません。家庭、地域、職場で個性を生かした多様な働き方を社会全体で支援する。男性女性、障害のあるなし、年齢に関係なく、皆がいきいきと働ける社会を目指すということ。これから日本の労働環境が大きく変わるのかもしれませんね。政府は緊急政策として、「希望出生率を1.8」「介護離職ゼロ」を掲げ、保育や介護のサービスの拡大を目指しています。今、日本では、働いても生活が楽にならないという貧困の問題がありますね。一億総動員はするものの、市場原理にのまれて、ただ安い賃金で働かされ、ちっとも暮らしが豊かにならない、というふうにならないことを祈りたいですね。◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年5月18日より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年05月15日意外と知らない社会的なテーマについて、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会の時間」。今回のテーマは「ブラック企業」。***ブラック企業とは、労働基準法に明らかに違反している会社のことを言います。残業の未払いや過重労働の末、不当に解雇されるとか、労災隠しなどなど。ただ実際には、たとえサービス残業が多くても、その分ボーナスの上乗せや、休日の優遇などのフォローがあったり、将来のキャリアアップにつながる場合は、働き手はブラック企業とは考えませんよね。問題なのは、そういうフォローが何もなく、働き手の未来を潰してしまうような企業です。最近はSNSなどの発達で、ブラック企業問題が明るみに出るようになりました。牛丼チェーンの『すき家』のように、それをきっかけに労働環境が改善されたケースもあります。『すき家』では、深夜に「ワンオペ(ワンオペレーション)」という、たった一人で仕入れから調理、接客までを行うシステムを導入し、24時間営業の店舗を広く展開しました。しかし、長時間トイレにも行けず、明らかな過重労働。深夜には強盗に入られるトラブルも多発。従業員のSNSでの悲鳴が世に広まり、株主らの忠告を受け、『すき家』はいくつかの店舗を閉め、深夜営業も制限しました。もしもあなたが、不当に過重労働を強いられている、労働基準法に大きく反していると思われたら、一人で抱え込まずに誰かに相談してください。会社内部の通報窓口も企業側にたっていて、あてにならない場合もないとは言い切れないので、第三者機関に相談することをお勧めします。会社に労働組合がない人のためのユニオンや、「派遣ユニオン」など正社員でない人のためのユニオンもあります。今は「ブラック企業大賞」が毎年発表されていますし、厚生労働省も長時間労働など、年に3回以上勧告をした大企業の名前は公表すると発表しました。企業もいきすぎると自分の首を絞めかねません。とはいえ、人件費を抑えて利益をあげようとするのが企業の常…。もしも、割に合わないと思うならば、心身を壊してしまう前に他を探したほうがよいでしょう。自分の将来につながるかどうか考えてみてください。幸い、今は人手不足。今いるところが全てではないはずです。◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年3月23日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年03月21日連続ドラマ史上初の刑事専門弁護士の巻き起こす痛快逆転劇を描くドラマ「99.9-刑事専門弁護士-」。本作で、自身初の日曜劇場主演を務める「嵐」の松本潤の代表作「花より男子」が、この度、「春休み!!特別編集版」として放送決定!毎放送後には、「99.9-刑事専門弁護士-」の特別映像に加え、キャスト陣に直撃する現場レポートが放送されるという。探偵役や料理人役、御曹司役など様々な役どころを演じてきた松本さんが、自らが納得するまでとことん追及する超型破りな若手弁護士・深山大翔役を演じる本作。共演者には、深山とひょんなことからチームを組むことになる弁護士・佐田篤弘役の香川照之と、佐田同様に深山とチームを組むことになる立花彩乃役の榮倉奈々、そのほか「相棒」シリーズの岸部一徳、「龍馬伝」「平清盛」の青木崇高、多方面で活躍する奥田瑛二、片桐仁、マギー、渡辺真起子ら豪華俳優陣が名を連ねる。この度、初弁護士役に挑戦することで注目を集める松本さんの代表作ドラマのひとつ「花より男子」&「花より男子2(リターンズ)」が、「春休み!!特別編集版」として放送されることが決定。「花より男子」は、少女漫画誌「マーガレット」(講談社)にて連載された神尾葉子氏による人気コミック。超お金持ち名門高校に通う主人公の貧乏少女が、学園を牛耳る御曹司4人組「F4」とぶつかり合い、様々なトラブルに巻き込まれながらも、持ち前の明るさと雑草魂でたくましく生きていく姿が描かれた痛快青春ラブストーリーだ。2005年、松本さんをはじめ、いまや大河ドラマ「花燃ゆ」で主演を務め上げる井上真央や小栗旬、松田翔太、阿部力ら若手俳優たちを迎えて実写化ドラマ化。シーズン2、劇場版まで制作され人気を博した。今回の特別編集版では、2005年10月期放送「花より男子」を、3月12日(土)14時~、13日(日)15時~、19日(土)15時~、20日(日)15時~の4回に渡り放送。2007年1月期放送「花より男子2(リターンズ)」を、4月2日(土)16時~、3日(日)16時~、9日(土)14時~、16日(土)16時~、17日(日)14時~の5回に渡り放送される。また、放送の最後には、4月17日(日)21時からスタートする日曜劇場「99.9-刑事専門弁護士-」の特別映像や、主演・松本さんが共演者たちに直撃する現場レポートを、放送日ごとに異なるバリエーションで放送することも決定。名作ドラマと、期待度MAXの最新ドラマの特別映像を一気に堪能できることになりそうだ。日曜劇場「99.9-刑事専門弁護士-」は4月17日(日)21時よりTBS系にて放送。「『花より男子』春休み!!特別編集版」は3月12日(土)から4月17日(日)まで、土・日曜の午後帯にて放送。(text:cinemacafe.net)
2016年03月10日意外と知らない社会的なテーマについて、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは、「人工知能(AI)」です。***人間の知能的な働き、学習、推測、判断などをコンピューターが行う人工知能。身近なところでは、googleやFacebook、iOSのSiriなどで、次の行動を予測し、興味のありそうな情報をあげて提案するというのは、AIの技術によるものです。コンピューターが大容量を計算できるようになったため、過去のデータを蓄積し、それを瞬時に計算・分析。データ量が多いほど、より正確な予測が可能になります。私たちがGoogleやFBを無料で使えるのも、代わりに、検索結果や写真などの大量の情報をAIに与えて、より賢くなるよう、トレーニングし続けているからなんですね。株取引でも、プロの投資家が儲け続けられるのは、株の値動きをAIが判断して、的確な売り買いをしているからなんですよ。人工知能の発達は予想以上に早く、「人工知能が人を追い抜いて、支配する世界が来るかもしれない」とスティーブン・ホーキング博士は警鐘を鳴らしています。ビル・ゲイツさんも昨年取材した時に「医療、医薬品の開発には極めて有効に働くだろう。でも、労働部門では多くの仕事が失われることになるので、対策をしないと取り返しがつかなくなる」と話していました。オックスフォード大学でAIを研究するマイケル・A・オズボーン准教授は、702の業種について将来どれだけ自動化されるかを調べたんです。すると10~20年の間に、アメリカの総雇用者の47%が自動化されるリスクがあると、衝撃的な発表をしました。今後、電話オペレーターや保険の審査、レジ、ホテルの受付、薬を処方するなどの簡単な医療サービスはとって代わられるでしょう。介護の現場でも、感情に左右される人間よりも、献身的に働くAI搭載のロボットの方がよいという説があります。また、過去の判例を分析すれば弁護士や検事もAI化が可能に。軍事ロボットも開発されていますし、今後はAIを使う側の倫理観が問われますね。将来、機械に仕事を奪われる不安に怯えるのではなく、じゃあ、人にしかできないことは何だろう?と考えることが、新しい価値を生むチャンスになるかもしれません。◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年3月9日号より。写真・中島慶子題字&イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子
2016年03月02日意外と知らない社会的なテーマについて、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは、「GDP」です。* **この連載でも頻繁に出てくるGDP。正式名称は「Gross Domestic Product」で、国内総生産と訳されます。国内で、一定期間内に新たに生み出された商品やサービスの付加価値の合計を指し、経済成長を測る指標になります。りんご農園にたとえると、初年度の収穫が50個だった。翌年、ビニールハウスを作り100個に増やした。するとGDPは2倍ということ。収穫の半分をジャムにして、りんごのまま売るより利益をさらに上げたら、その分GDPに反映されます。何の工夫もせずに同じ個数しか収穫できなかった場合は、経済成長ゼロとなるのです。GDPには名目GDPと実質GDPがあり、物価の変動を反映させたものが実質GDP。GDPが2期連続して下がると、景気後退と判定されます。現在、世界のGDP1位はアメリカ。2位が中国、日本は3位。日本はずっとベスト3に入る経済大国でした。ただし、これは国全体の話。日本の1人当たりの名目GDPは、3万6000ドルで前年比6%減少。1996年には主要国中3位でしたが、2000年代から下がり続けて現在20位。上位にはルクセンブルクやノルウェー、スイスが入っています。資源を持っていたり、金融サービスに長けていると上位に入りやすい。ちなみにアメリカは7位。シェールガスを持っていますし、莫大な利益を生む新しい金融商品も開発しています。政府が規制緩和をして、新しい産業が生まれやすくしていることも功を奏していますね。対して日本は、開発できる資源には限りがあり、広い意味でのサービス業が中心です。デフレだと、サービス業全体が安価競争になり、懸命に働いても得られる利益が少ない。また、GDPはドル計算なので、円安も不利になっています。国の経済成長を促すには、個々の変革も大切です。あなたは前年に比べ、新しい付加価値を生む何かをしましたか?収入の一部を使って英会話学校に行くことが、転職時に役立って高いお給料をもらえようになるかもしれません。投資信託を始めるでも何でもいいんです。未来のための自己投資が、経済の成長につながるかもしれません。◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年3月2日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年02月27日販売開始!福岡市に本社を置く株式会社エバーライフは、2015年12月10日(木)より初の機能性表示食品である「栄潤(えいじゅん)」の販売を開始している。「栄潤(えいじゅん)」は、「非変性2型コラーゲン」を配合しており、ひざの関節の可動性や柔軟性を助けることを目的とした商品だ。初の機能性表示食品「栄潤」はエバーライフにとって初の機能性表示食品。栄潤に含まれているコラーゲンは、「非変性2型コラーゲン」であり、アメリカのハーバード大学や、ヒューストン大学、インターヘルス社らと共同開発をおこない、天然に近い形での原料化を実現している。ひざ関節の成分といえば、「コンドロイチン」や「グルコサミン」などの印象が強いが、実はこれらが全体に占める割合は、3~5%程度。しかしながら、「非変性2型コラーゲン」は全体の15%~20%をも占めるという。「120日間応援定期コース」同社では、実験で「非変性2型コラーゲン」を120日間継続飲用した結果、ひざの可動域が改善したとの結果がでていることから、「120日間応援定期コース」を用意。120日間連続での連続飲用をサポートする。(画像はプレスリリースより)【参考】・「健康食品皇潤」でおなじみのエバーライフより非変性2型コラーゲンの働きで、ひざ関節の柔軟性、可動性をサポートする機能性表示食品「栄潤(えいじゅん)」を新発売
2015年12月29日意外と知らない社会的なテーマについて、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは、「日米同盟」です。* **日米同盟とは、日本とアメリカの同盟関係のこと。日米安全保障条約が基本になっています。日米同盟の歴史は、第二次世界大戦にまで遡ります。日本は戦争に負けたあと連合国軍のGHQに占領されました。そして1951年にサンフランシスコ平和条約が結ばれ、民主主義国家として主権を回復します。そのとき、日本軍を再編するかどうかが問題になったのですが、GHQのマッカーサーが許可しませんでした。日本が軍隊を作らないかわりにアメリカ軍が日本を守ることになり、他国の軍隊は撤退。このとき、「日米安全保障条約」が結ばれました。ところがそれは、米軍が日本を治めるという不平等な内容だったんですね。その後、本来の主権を取り戻そうと、’60年に改定。「日米地位協定」が結ばれました。集団的自衛権を使って、引き続きアメリカ軍は日本を守る。そのかわり日本は米軍に土地を無料で提供する。しかも、基地内の事件を日本の司法は裁くことができません。これも不公平と、反米、反戦運動がさかんになりました。学生のデモ隊と警官が衝突する「安保闘争」のニュース映像はみなさんもご覧になったことがあるでしょう。その後アメリカは何度か軍の撤退を匂わせたんですが、実は撤退してほしくない事情が日本にはあった。というのも米軍がいるおかげで、日本は防衛費をかけずに経済成長に集中できたんですね。また、米軍が日本にいるということでロシア(旧ソビエト)や中国、北朝鮮など周辺諸国に対して抑止力になっていました。’78年からは通称「思いやり予算」(在日米軍駐留経費負担)として、日本に駐留する米軍の経費の一部を日本が持つという気遣いもはじめました。戦後70年たってもアメリカの傘下にあり、強く言えない立場のままでいいのか、という意見もあります。でも、日米関係を本当にフェアにしようとしたら日本は軍隊を持ち、危険にさらされながら自分で身を守らなければいけなくなります。少ない財政のなかから、それだけの軍事費を何を削って捻出すればいいのか?日米同盟は、「日本を誰が守るか」という問題に直結する、いままさに転換期にきているんですね。◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2015年12月9日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2015年12月07日意外と知らない社会的なテーマについて、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは、「混合診療」です。* * *来年の春から、混合診療が解禁になります。混合診療とは、みなさんが通常病院で受けている「保険診療」と、保険外の自費でなされる「自由診療」を合わせた名称。今後、希望者は保険診療のほかに自由診療も受けられることになり、公式には「患者申出療養制度」と呼ばれています。これまで日本は、自由診療を禁じてきました。自由診療を認めてしまうと、お金持ちの人はいくらでも高い料金を払って医療を受けようとする。すると、病院側も儲かるほうにシフトして、お金のない人が十分な医療を受けられなくなってしまう。お金がないために助かる命が助からなくなる、そんな命の格差が生まれるのを避けようと、認めてこなかったのです。収入に関係なく、誰もが同じような医療サービスを受けられるようにしていました。唯一の例外は、歯科医療。歯医者さんで詰め物をするときに聞かれませんか?「保険なら◯○円ですが、保険外のインプラントなら◯万円です。どちらを選びますか?」と。自由診療では金額は基本、病院の言い値ですから、病院によっても値段は変わります。これまでは薬も、厚生労働省の厳しい基準をクリアしたものしか使えませんでした。ところが患者申出療養制度の導入によって、厚生労働省が承認していない薬も、今後は使えるようになります。難病の人やガン患者にとっては嬉しいニュース。混合診療に門戸が開かれるようになったのは、安倍政権の成長戦略の一環です。規制を緩和することによって、製薬メーカーは新しい薬を次々に売り出せるようになります。国立がんセンターの調べでは、来年に投入できる抗がん剤は42剤。大半は、1か月あたり100万円を超える薬剤費が自己負担になるだろうとのことです。従来の医療は国のお墨付きがありましたが、自由診療になれば患者は医師を信じるしかありません。万一、医師が製薬会社や医療機器会社と癒着して法外な医療費を請求しても、患者には判断できない。TPP協定が結ばれれば、海外の製薬会社の薬もさらに入ってくるでしょう。医療の選択肢は広がりますが、リスクも否めないんですね◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2015年12月2日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2015年12月01日意外と知らない社会的なテーマについて、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは、「憲法」です。***11月3日の文化の日は、70年前に日本国憲法が公布された日です。ところでみなさんは「憲法」と「法律」の違いはわかりますか?「憲法」とは国家をしばるもの、国民をしばるものが「法律」です。「国民の人権を尊重すること」「誰もが等しく教育を受けられる権利を与えること」など、国家権力が国民に対して何をするべきかを定めたものが憲法。一方、窃盗を禁じたり(刑法)、遺産の分配を決めたり(民法)など、国民が守らなければいけないルールが法律です。憲法は国家をしばるものですから、強大な力を持っています。憲法を変えるというのは大変なこと。改変の手続きは国によりますが、日本の場合、衆議院、参議院の3分の2以上による可決と、国民投票で過半数の賛成がないと、改憲できません。日本は制定以来一度も憲法を変えていません。たとえばドイツでは59回改憲が行われました。EUに参加したり、東西ドイツが統一したりと国に大きな変化があったので、対応する必要があった。時代に合わせてその都度改正をしてきましたが、骨格は変わっていません。自由民主党は結党以来60年間、改憲を訴えてきました。来年の参議院選挙の後には憲法改正にとりかかると安倍総理は公言しています。いま、戦争の放棄をうたう憲法9条の改憲問題に注目が集まっていますが、僕は12条も要注意だと思っています。12条には、国民の自由と権利が侵されないように国民は「不断の努力」をしなければならず、濫用してはいけないこと。また、「公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」と書かれています。「公共の福祉」とは、Aさんの自由をBさんも保障する義務がある。公の利益のために個人が犠牲になるのではなく、国民が互いに目を光らせて、個々の自由や権利が奪われないようにしましょうという意味です。自民党の改正案にこの言葉はなく、「公益及び公の秩序に反してはならない」となっています。主体が国になりますから、意味は大きく変わりますね。憲法は私たちにとってとても重要。次の参議院選は、今後の憲法を左右しますから、じっくり考えて投票しましょう。◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2015年11月11日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2015年11月04日意外と知らない社会的なテーマについて、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは、「中国経済」です。***中国のバブルがついに崩壊したのか、と騒がれています。バブルとは、過剰に資金が市場にあふれ、実際のモノの価値を上回り、お金がお金を呼ぶ状態をいいます。たとえば100円のペットボトルの水が、300円でも買う人が出てきて、やがて600円で転売されるというような、正当な価値を越え高額で取引されてしまうのです。中国のバブルはこの10年くらい。まず、不動産バブルが起き、過剰な土地開発がなされるようになりました。昨年春ごろから不動産の値崩れが始まり、やがてお金は不動産から株の投資に回されました。上海の株式市場は時価総額500兆~600兆円規模の取引、1071社が上場し、東京証券取引所を大きく上回る規模になっています。株は儲かる、という話は中国の農村部まで広がりました。中国では、借金をして株取引ができるので、自分の持つ以上のお金を投資に回す個人投資家が倍増。短期間に大きな利益を得ようと賭博のような投資が増え、株相場の動きが極度に激しくなりました。普通、為替レートは市場で決まり、故意にコントロールはできません。ただ、極度な円高や円安になると市場全体が不安定になるので、国際協調策として、国が介入し、自国の通貨を買い上げることがあります。ただその場合も自由勝手にできるわけではなく、主要関係国に事前に打診をしてから行います。国際通貨である円、ドル、ユーロ、ポンドはその手続きを踏みますが、中国は国際市場から切り離されているので、中国政府が勝手にレートを決めてしまうんです。ニュースで出てきた「人民元切り下げ」というのは、中国政府が操作をして元安にしたということ。元安になれば、中国の輸出産業が儲かります。中国は共産主義なので、国の操作も多く、実態は不透明。やがて中国経済に破綻が起き、リーマンショックのときのように、世界経済に波紋を及ぼすのでは、と投資家たちは疑心暗鬼になっています。でも、中国国内だけの問題にとどまるだろうという意見もあります。国際市場が不安定になると、安定している円を買う人が増えるので、自然と円高に。すると日本の輸出産業は損をしてしまうんですね。◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2015年11月4日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2015年11月02日