東京大学は10月3日、メタボリックシンドロームのブレーキとして働くことが知られているタンパク質「AIM」に、肝臓に生じたがん細胞を選択的に除去する働きがあることがわかったと発表した。同成果は同大学大学院医学系研究科の宮崎徹 教授らの研究グループによるもので、10月9日付け(現地時間)の米科学誌「Cell Reports」に掲載される予定。AIMは同研究グループが発見した、血液中に存在するタンパク質で、通常は脂肪細胞や肝臓の細胞(肝細胞)に取り込まれ、細胞中での中性脂肪の蓄積を阻害することによって肥満や脂肪肝の進行を抑制するメタボのブレーキとして知られている。今回の研究では、肝細胞ががん化すると、AIMは肝細胞に取り込まれず、細胞の表面に留まるようになることを確認した。さらに、表面に蓄積したAIMを目印とし、免疫システムがん化した肝細胞を攻撃するようになることがわかったという。近年、メタボリックシンドロームの流行と共に、脂肪肝が進む結果、肝細胞ががん化し肝臓がんが発症するケースが注目されている。今回の発見は血液中のAIM値は肝臓がん発症のリスクを予測するマーカとなり得ることを示唆しているだけでなく、AIM投与による新しい治療法の開発につながる可能性があるという。現在、肝臓がんには有効な抗がん剤がないためその期待は大きく、ヒト由来のAIMを用いた治療剤であれば安全性は高いと考えられている。
2014年10月06日滋賀医科大学は、アルツハイマー病(AD)の発症を抑制するタンパク質「ILEI」を同定したと発表した。同成果は、同大分子神経科学研究センターの西村正樹 准教授、遠山育夫 教授らと、東京都健康長寿医療センターの村山繁雄 部長らによるもの。詳細は「Nature Communications」に掲載された。アルツハイマー病の分子病態は、脳内のアミロイドβ(Aβ)蓄積により惹起されることまでは分かっているものの、Aβ蓄積の一次的原因の多くは未だに不明であり、分子病態の是正による治療法の確立には到っていないのが現状だ。今回の研究では、Aβペプチド産生の原因物質である前駆体タンパク質(amyloid-β precursor protein:APP)のC末端断片(APP-C99)のAβ非産生経路による分解を促進することで、Aβ産生経路を抑制し、Aβ産生レベルを減少させるタンパク質「ILEI」を発見したという。具体的にはILEIは、培養細胞を用いた解析から、その強制発現により細胞から分泌されるAβレベルを約30%程度減少させ、ILEI発現抑制を50%程度増加させることが確認されたほか、無細胞系の反応では、γセクレターゼがAPPを切断する活性を阻害しないことが確認されたという。また、Aβ産生の直前の基質(直接の前駆体)であるAPP-C99を不安定化し細胞内レベルを減少させることでAβの産生を抑制できること、ならびにILEIは本来、脳において正常な神経細胞が発現し分泌している物質であること、そして認知症のない症例の脳やアルツハイマー病以外の神経疾患症例の脳に比較して、AD例の脳ではILEIのレベルが減少していることを確認。さらに、トランスジェニックマウスを用いた解析から、ILEIを脳に高レベルで発現させるとアルツハイマー病モデルマウスにみられる脳Aβ蓄積と記憶障害を改善できることが確認されたという。今回の結果を受けて研究グループでは、ILEIないしILEI様活性が新たな治療法開発のターゲットになる可能性が示されたとコメントしている。
2014年06月05日東北大学は3月6日、これまで不可能だった、メラニン色素を合成・貯蔵する小胞「メラノソーム」上に人為的なタンパク質分子を送り届けることができる技術の開発に成功したと発表した。成果は、東北大大学院 生命科学研究科 修士大学院生の石田森衛氏、同・荒井沙希氏、同・福田光則教授らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、2月28日付けで米科学誌「Journal of Biological Chemistry」電子版に掲載された。ヒトの肌や髪の毛に含まれる黒いメラニン色素は、有害な紫外線から体を守るために重要な役割を担う。しかし、その一方でメラニン色素は蓄積してしまうとしみやそばかすの原因になるし、逆に部分的な脱落してしまうと「白斑」の原因になってしまう。メラニン色素は、「メラノサイト(メラニン色素産生細胞)」に存在する「メラノソーム」と呼ばれる袋(小胞)の中で合成・貯蔵されている。そしてメラノソームは成熟すると、メラノサイトの細胞内を細胞骨格に沿って輸送され、肌や髪の毛を作る細胞に受け渡されて初めて肌や髪の毛の暗色化が起こる仕組みだ。画像1は、そうした特定の細胞小器官(オルガネラ)へのタンパク質分子の輸送も描かれた、メラノサイトの内側を表した模式図だ。メラノサイトに限らずすべての真核細胞の細胞内は、膜で包まれたさまざまな細胞小器官(袋)で満たされているが、この図では簡略化されており、核、小胞体、ミトコンドリア、メラノソームのみが示されている。それぞれの細胞小器官は独自の役割を担っており、その機能を果たすために独自のタンパク質分子を持っており、メラノソームもメラニン合成酵素などの特殊なタンパク質分子を多数含む。これらのタンパク質分子にはそれぞれが働くべき細胞小器官にのみ輸送される必要があるため、それぞれの分子に輸送シグナル(配列)が備わっていると考えられている。それを表したのが画像1左下の拡大図で、これまでの研究により、核、ミトコンドリア、小胞体などへの輸送シグナルが同定されており、任意のタンパク質分子を特定の細胞小器官に輸送する技術も開発済みだ。しかしこれまで、メラノソームにタンパク質分子を輸送するツールは開発されていなかった。そこで研究チームは今回、まずメラノソームに局在することが知られているタンパク質の中で、メラノソーム上の荷札として機能する形で、その輸送(細胞辺縁部から中心方向へと微小管を伝って行う「逆行輸送」)に関わる「メラノレギュリン(Mreg)」分子に着目。まず、この分子のメラノソームへの局在化に必要なアミノ末端側の領域を決定し、これらの領域を用いて「メラノソームターゲティングタグ(MST tag:melanosome-targeting tag)」が新規に開発された(画像2~4)。次に、得られたMSTタグを本来メラノソームに局在しないタンパク質分子に融合させ、得られた融合タンパク質のメラノソームへの局在化やメラノソームの分布に対する影響が検討されたのである(画像5~11)。その結果、以下のことが明らかにされた。まず1つ目は、Mreg分子のアミノ末端領域(アミノ酸番号1~139:画像2)はメラノソームへの局在化に必要不可欠な領域であるということ。Mreg分子はメラノソームの「微小管逆行性輸送」(画像1)に関与し、Mreg分子はアミノ末端側でメラノソームに局在し、カルボシキル末端側で「RILP」や「ダイニン・ダイナクチン複合体」と結合する。なお、アミノ末端領域のみを発現してもメラノソームの形成や分布には影響を与えないという(画像3・4)。また今回はMSTを融合させたタンパク質を可視化するため、カルボシキル末端側には「赤色蛍光タンパク質(mStr)」が融合されている。例えば、画像5の「Rab5A」や画像6~7の「Rab27A(Q78L)」など、任意のタンパク質をMSTとmStrの間に挟んでメラノサイトに発現させると、メラノソーム上に局在する仕組みである。画像3は、MSTタグのメラノソーム局在化の顕微鏡写真だ。mStrのみをメラノサイトに発現させても、メラノソーム上には局在しないが(上段)、Mreg分子とmStrを融合させた「Mreg-mStr」はメラノソーム上に局在し、微小管逆行性輸送を促進することによりメラノソームの核周辺での凝集を引き起こす(中段)。一方、MSTタグのみを融合させたMST-mStrはメラノソーム上に局在してもメラノソームの凝集を誘導しない。挿入図は四角の部分の拡大図を示し、右列の重ね合わせの図ではメラノソームが緑色の疑似カラーで示されている。点線はメラノソームの凝集を起こした細胞の縁の部分を示したものだ。そして画像4が、Mreg-mStrおよびMST-mStrを発現するメラノサイトにおけるメラノソームの凝集率を示したグラフ。Mreg-mStrを発現する細胞では頻繁にメラノソームの核周辺での凝集が観察されたが、MST-mStrではメラノソームの分布にはまったく影響が認められなかったという。2つ目は、MSTを融合したタンパク質分子がメラノソームに局在化することを確認したこと。例えば、別の細胞内小器官「初期エンドソーム」に局在するRab5Aという分子にMSTタグを融合すると、MST-Rab5Aはメラノソーム上に局在するという具合だ(画像5)。画像5は、MSTタグを融合したRab5Aのメラノソームへの局在化をとらえた顕微鏡画像。Rab5Aは初期エンドソームに局在する分子だが(中段)、この分子の脂質化修飾部位を外しMSTタグを画像2のように融合させると、メラノソーム上に局在化することが可能だ(下段)。挿入図は四角の部分の拡大図で、右列の重ね合わせの図ではメラノソームが緑色の疑似カラーで示されている。初期エンドソームとメラノソームは別個の細胞小器官のため、Rab5A(赤)とメラノソーム(緑)のシグナルはまったく重ならない(中段)。一方、MST-Rab5A(赤)はメラノソーム(緑)上に局在するのが確認可能だ。3つ目は、「Q78L」のアミノ酸変異を持つ低分子量Gタンパク質「Rab27A」分子はメラノソームに局在化することができず、メラノソームの輸送障害を引き起こす(色素異常の症状を示す「グリセリ症候群」の特徴)。この変異体Rab27AにMSTタグを融合させるとメラノソームに局在し、メラノソーム輸送が回復するのである(画像6・7)。なおRab27Aは、メラノソームの「アクチン線維」上の輸送を行う際(画像1)の、メラノソーム上の荷札として機能するタンパク質だ。「GTP(グアノシン三リン酸)」を結合した活性化型のRab27A分子はメラノソーム上に局在し、ここに運転手役の「Slac2-a」(「メラノフィリン」ともいう)と運送トラック役の「ミオシンVa」が結合することにより、アクチン線維に沿った細胞膜直下までのメラノソーム輸送を促進する画像(画像8・9)。Rab27Aの機能が損なわれているグリセリ症候群患者のメラノサイトでは、メラノソームがアクチン線維に上手く受け渡されず、微小管逆行性輸送によりメラノソームが核周辺へと押し戻され、メラノソーム凝集の症状を示してしまう。今回の研究で用いられたRab27A(Q78L)変異体は78番目の「グルタミン」が「ロイシン」に置換されており、GTPアーゼの活性がないことが知られている。画像6は、MSTタグを融合したRab27A(Q78L)のメラノソームへの局在化とメラノソーム分布の回復を示した顕微鏡画像。RNA干渉法によりRab27Aを欠損させた細胞では、メラノソームのアクチン輸送が起こらず、メラノソームが核周辺で凝集する(最上段)。siRNAに抵抗性(SR:siRNA-resistant)のRab27AをRab27A欠損細胞に戻すとメラノソーム上に局在し、メラノソームの分布が回復する(2段目)。Q78Lの変異を持つRab27A分子はメラノソームに局在できないため、メラノソームの分布は回復しない(3段目)。一方、MSTを融合させたRab27A(Q78L)はメラノソーム上に局在し、メラノソームの分布も回復するが(5段目)、MSTタグのみでは回復効果は認められない(4段目)。挿入図および点線は画像3の説明と同じだ。なお画像7は、画像6に示されているメラノサイトにおけるメラノソームの凝集率を示したグラフだ。4つ目は、Rab27Aはメラノソーム上の荷札役として機能し、運転手役Slac2-aおよび運送トラック役のミオシンVaをメラノソーム上に呼び込んで輸送を促進することは前述した通りだが、Slac2-a分子の「SHD(Slp homology domain)領域」を欠損させると荷札であるRab27Aを認識できなくなり、メラノソーム上には局在できなくなる(画像10)。よって、Rab27Aを欠損するメラノサイトでは、荷札がないためSlac2-a、ミオシンVaがメラノソームにアクセスできず、メラノソームの輸送障害を引き起こしてしまうのである。ただしRab27Aに結合できない「Slac2-aΔSHD」にMSTタグを付加した「MST-Slac2-aΔSHD」をRab27A欠損細胞に発現すると、MST-Slac2-a分子はメラノソーム上に局在するため、ミオシンVaによってメラノソームの輸送が回復する仕組みだ(画像11)。画像10は、Slac2-a分子およびMSTタグを融合したSlac2-aΔSHD変異体の模式図。Slac2-a分子はアミノ末端側にメラノソーム上のRab27A(荷札役)を結合するSHD領域を、中央部分にモータタンパク質であるミオシンVa(運送トラック役)を結合するMBD(myosin Va binding domain)領域を持つ。MST-Slac2-aΔSHDはRab27Aを認識するSHD領域を除き、代わりにMSTを融合したものである。画像5では融合タンパク質分子の検出のため、mStrの代わりにFLAGタグを使用している。画像11は、メラノソーム凝集を示すRab27A欠損細胞におけるMST-Slac2-aΔSHDの発現を撮影した顕微鏡画像。RNA干渉法によりRab27A(最上段)を欠損させられた細胞では、メラノソームが核周辺で凝集してしまう(上段)。この細胞にSlac2-aやSlac2-aΔSHDを発現させても、荷札役のRab27Aがないため、メラノソームを認識できず、メラノソームの分布は回復しない(中央2および3段目)。しかし、MST-Slac2-aΔSHDは荷札のRab27Aに関係なくメラノソームに局在化でき、ミオシンVaとも結合できるため、メラノソームの分布が回復する(下段)。挿入図は四角の部分の拡大図を示し、右列の重ね合わせの図ではメラノソームが赤色の疑似カラーで示されている。点線はメラノソームの凝集を起こした細胞の縁の部分を示したものだ。以上の結果から、MSTタグは成熟メラノソーム上に人為的にタンパク質分子を局在化させる初めてのツールとして利用できることが明らかになったというわけだ。また、MSTタグを融合させても、融合させた分子の機能を損なうことはなかったことから(例えば、Slac2-a分子のミオシンVa結合能など:画像10・11)、タンパク質分子の機能を保持したままメラノソーム上に局在化させることが可能となったのである。今回の成果により、MSTタグを用いて成熟メラノソーム上にタンパク質分子を送り届ける新技術が確立された形だ。2013年度のノーベル生理学・医学賞の対象となった小胞(膜)輸送の研究分野では、特定の膜でできた細胞小器官への輸送シグナルが解明されたことにより、その細胞小器官の機能解明が飛躍的に向上してきた。今回のMSTタグの開発により、メラノソーム上に任意のタンパク質分子、あるいはその断片を局在化させることが可能となり、メラノソームの形成や輸送の詳細な分子機構の解明、ひいてはそれらの人為的な制御に応用されることが期待されるとしている。
2014年03月07日(画像はプレスリリースより)医療の機関にも販売される、低タンパク質のおいしい「食パン」テルモ株式会社は「そらまる(R)食パン」を2月4日から発売する。発売はテルモのウェブサイトの「テルモネット通販」での販売となる。またこの商品は、医療機関も対象としている。テルモは、タンパク質の調整食品「そらまる」シリーズを扱っている。今回の商品は、2013年に発売された「そらまるおかゆ」に続く3弾目の商品だ。パッケージの愛らしいロゴ文字と、ふっくらとした、2つの食パンのプリントは、消費者に食べたいと思わせ、全体的に親しみやすいデザインとなっている。低タンパク質の食パンの特徴この食パンは1箱20袋入り(1袋2枚)で、一般の食パンと比較して、タンパク質が25分の1にカットされている。またカロリーは(1袋2枚) 267カロリーで、タンパク質は0.37gに設定されている。そしてタンパク質の調整とともに、ナチュラルな、おいしい食パンに仕上げる「植物性乳酸菌発酵」の米粉が用いられている。また、そらまる食パンの焼き上がりについて中身は、モチモチな舌触りで、表面はサックリとおいしく味わうことができる。タンパク質を気にする方や、健康に気をつける方は、この商品を試してみては。【参考リンク】▼テルモ株式会社 プレスリリース
2014年02月07日京都大学は1月29日、サントリー生命科学財団、セルフリーサイエンス、横浜市立大学との共同研究により、抗エイズウイルス活性を有するヒトのタンパク質「APOBEC3G(A3G)」の酵素反応を、「NMR(核磁気共鳴)法」によってリアルタイムで追跡し、定量的に解析することに成功し、A3Gタンパク質がエイズウイルスの遺伝子を効率的に破壊する仕組みを明らかにしたと発表した。成果は、京大 エネルギー理工学研究所の片平正人教授、同・古川亜矢子 日本学術振興会特別研究員らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、1月29日付けで独科学誌「Angewandte Chemie International Edition」オンライン版に掲載された。A3Gタンパク質は、エイズウイルスの遺伝子の「シトシン」塩基を脱アミノ化して「ウラシル」塩基に変換することでウイルスの遺伝情報を破壊し、抗エイズウイルス活性を示す(画像1)。A3GはまずウイルスDNAに非特異的に結合し、その後DNA上をスライディングして標的となるシトシンに到達し、酵素反応を引き起こす。また酵素反応は、ウイルスDNA上の複数の標的シトシンにおいて同時に並行して進行する。「ミカエリス-メンテン法」などの従来の酵素反応の解析手法ではこのような複雑な系を解析することができず、A3Gタンパク質が働く仕組みは謎に包まれていた。そこで研究チームは今回、まずウイルスのモデルDNAとA3Gタンパク質を試料管に入れ、これをNMR装置にセット。そしてDNA上の複数のシトシンで同時並行に進行する塩基変換反応を、各シトシンに由来するNMRシグナルを別個に観測することで、リアルタイムでモニタリングすることに成功した(画像2)。次に、研究チームはA3GのDNAへの非特異的な結合と結合後のDNA上でのスライディングを考慮した反応モデルを構築。そして、画像2で得られた実験結果が定量的に解析された。この結果、A3Gは上流方向にスライディングしながら標的シトシンに到達した際には、下流方向にスライディングしながら到達した際より、脱アミノ化反応の酵素活性が高いことが判明したのである(画像3)。上流に近い標的シトシンほど脱アミノ化されやすいことはこれまでの観測事実として知られていたが、酵素活性がスライディングの方向に依存するという新たな知見により、このことを合理的に説明することが初めてできるようになったというわけだ。また脱アミノ化による遺伝情報の破壊がすでになされた直近の部位には、A3Gはもはやあまり作用しないことも確認された。これは、エイズウイルスのDNA上の広い範囲で効率的に遺伝情報の破壊を行うのに適した性質だと考えられるという。このようにNMRシグナルを用いたリアルタイムモニタリングによって、これまで不明であったA3Gタンパク質の動作機構が解明された形だ。A3Gタンパク質の抗エイズウイルス活性の根幹である脱アミノ化反応の動作機構が解明されたことで、A3Gを活用した抗エイズウイルス薬の創製の活性化が期待されるという。また今回開発されたNMRシグナルを用いた反応のリアルタイムモニタリングと定量解析の手法は、同時並行的に進行するほかの複雑な酵素反応や生体内カスケード反応の解析にも応用可能とした。またNMRシグナルを用いたリアルタイムモニタリング法は、バイオマスを微生物によって分解することでエネルギーや化成品などの有用物質を獲得する際にも、時々刻々変わる物質群の動態を一網打尽に解析することができ、役立つと考えられるとする。研究チームは2009年に、A3Gの立体構造の決定にも成功しており、それをA3Gの動的な側面に関する今回の知見と合わせることで、A3Gを活用した新規の抗エイズウイルス薬創製の基盤を確立していきたいと考えているという。またNMRシグナルを用いたリアルタイムモニタリング法を、バイオマスから有用物質を獲得するのに活用することへの利用も開始しており、この進展を目指すとしている。
2014年01月31日東京大学は1月22日、活性酸素によって誘導される細胞死や免疫応答を促進する細胞内の「シグナル伝達分子」であるタンパク質「ASK1」の分解を促進させる新たなユビキチン化酵素タンパク質「Roquin-2」を発見したと発表した。成果は、東大大学院 薬学系研究科 薬科学専攻細胞情報学教室の一條秀憲 教授、同・松沢厚特任准教授、同・丸山剛 特任研究員(当時)らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、日本時間1月22日付けで「Science Signaling」オンライン版に掲載された。活性酸素とは、「スーパーオキシド」、「ヒドロキシラジカル」、「過酸化水素」、「一重項酸素」など、酸素に由来する反応性の高い分子の総称のことをいう。ミトコンドリアでのエネルギー産生や細胞膜での酵素反応などによって生体内では常に生成されている。そして生体内で活性酸素が過剰に産生されてしまうと、生体を構成するタンパク質やDNA、細胞膜などが損傷を受ける可能性があり、活性酸素によって修復できないほど細胞が障害を受けると、細胞死が誘導される仕組みだ。このような活性酸素によって誘導される細胞死は、心筋梗塞や脳梗塞といった虚血性疾患や神経変性疾患、糖尿病、がんなどさまざまなヒトの疾患に関与することが知られていた。また過剰な免疫応答は、強いアレルギー反応や炎症を引き起こし、ぜんそくや皮膚炎、リウマチなどの自己免疫疾患につながってしまう。しかし、このような細胞死や免疫応答が、どのような仕組みによって調節されているかについては、不明な点が残されていたのである。研究チームはこれまで、ASK1が活性酸素誘導性の細胞死や免疫応答を促進すること、ASK1が活性化されるとそれに伴ってASK1が「ユビキチン化」され、分解されることも見出していた。ただし、ASK1のユビキチン化に関与する分子やユビキチン化の仕組みについてはまだ明らかになっていなかった。そこで、研究チームは今回の研究でも引き続きASK1に注目。そして、その分解を促進させる新たなタンパク質を同定し、細胞死や免疫応答を適切に調節する仕組みを見出したというわけだ。なお、ASK1などのシグナル伝達分子とは、細胞内外のさまざまな環境の変化を感知し、その情報を核や細胞内の小器官へと伝達する一連の分子群のことをいう。また、ユビキチンとは76個のアミノ酸からなる小さめのタンパク質で、ほかのタンパク質の修飾に用いられるという特徴を持つ。タンパク質の分解やDNA修復、小胞膜輸送、シグナル伝達など多様な生理機能に関わっている。特にユビキチンが共有結合によって鎖状に連なった「ポリユビキチン」は、タンパク質分解酵素複合体である「プロテアソーム」によって認識され、分解されるべきタンパク質の目印となることがわかっている。今回の研究では、具体的に、特定のタンパク質を消失させる「RNA干渉法」を用いた「スクリーニング」によって、ユビキチン化に関わる約1500の遺伝子の中から、このASK1のユビキチン化分解を促進するタンパク質の探索が行われた。RNA干渉法とは、標的とする遺伝子と塩基配列が同じ2本鎖RNAを細胞内に導入すると、標的とする遺伝子のmRNAが分解され、その遺伝子の発現が抑制できる技術のことをいう。またスクリーニングとは、目的とする遺伝子やタンパク質などを、多くの群の中からさまざまな手法を用いて選別・特定する作業のことである。スクリーニングの結果に発見されたのRoquin-2だ。解析の結果、Roquin-2は、実際にヒトの細胞において、活性酸素の刺激によって活性化したASK1をユビキチン化して分解を促進すること、また活性酸素によって誘導される細胞死を抑制することが確認されたのである。さらに、実験に広く用いられている原始的なモデル生物である「線虫」において、Roquin-2がASK1を分解することによって、細菌に対する免疫応答が調節されていることも見出された。これらの結果は、Roquin-2がASK1のユビキチン化分解を介して、活性酸素による細胞死や免疫応答を調節するタンパク質であること、またこのRoquin-2によるASK1の分解は、原始的生物である線虫からヒトまで進化的に保存された重要な仕組みであることを示しているという。以前に研究チームは、Roquin-2とは逆の働きをする、ASK1からユビキチンを外すタンパク質として「USP9X」を同定しており、USP9XがASK1の分解を抑制してその活性を持続させ、活性酸素誘導性の細胞死を促進することを見出していた。その結果も合わせると、生体内で起こるASK1を介した活性酸素誘導性の細胞死や免疫応答は、USP9Xや今回同定されたRoquin-2のバランスによって適切に調節されていることが示唆されたという。Roquin-2は、過剰な細胞死や免疫応答を原因とする虚血性疾患や神経変性疾患、炎症や自己免疫疾患など、さまざまなヒトの疾患に対する新たな治療標的となることが期待されるとしている。
2014年01月23日いつまでもずっとキレイでいたい! 美意識の高い女性であれば、みんなそう思っていますよね? その「キレイ」を左右するのは、タンパク質だということを知っていましたか?タンパク質は、皮膚・毛髪・爪などのハリやツヤのもとになっているのだそう。髪や肌にハリ・ツヤがあるだけでも、女性の印象は大きく変わりますよね。5歳位は簡単に若く見えてしまいます。さらにタンパク質は、酵素、ホルモン、免疫システムや神経伝達物質の材料として、また生きていくためのエネルギーとしても使われているのだとか。タンパク質(Protein)の語源はギリシャ語の「プロティオス」(一番大切なもの)。このことからもわかるように、タンパク質はわたしたちの体にとって重要な要素なのだそう。しかし、このタンパク質は、熱や圧力、湿度の変化などによって簡単にゆがんでしまうという特徴があるそうです。髪のダメージの原因は、タンパク質のゆがみにあるということが明らかになっています。■髪ダメージの根本原因は、タンパク質のゆがみ毛髪の約95パーセントはタンパク質で構成されています。健康な髪では外側にあるキューティクルがタンパク質をダメージから保護していますが、キューティクルがめくれあがったり剥がれてしまったりすると、中のタンパク質がダメージを受けてゆがみ、流出してしまいます。髪に強度を与えているタンパク質が流出してしまった髪は細くなり、切れやすくなるため、コシやハリがなくなり、枝毛や切れ毛になってしまうそう。髪のダメージは、タンパク質の立体構造がゆがむことで生じているそうです。■傷んでいる髪は髪の「限界温度」が低い!さらに、痛んでしまった髪は、熱にも弱いことが明らかに。髪の限界温度とは、髪のタンパク質が形を保持できなくなってゆがんでしまう温度のこと。タンパク質は熱に弱い性質を持っているため、ドライヤーやヘアアイロンで熱を加えただけでもゆがんでしまうそう。健康な髪は154度の熱まで耐えられると言われていますが、傷んだ髪は低い温度にも耐えることができず、すぐにタンパク質がゆがんでしまいます。その場合、限界温度より低い温度で髪を扱わなければならなくなってきます。■髪のダメージを防ぐ最新美容法は「タンパク質美容」それでは、どうすればタンパク質のゆがみを防止することができるのでしょうか? それが、今注目を集めている「タンパク質美容」です。タンパク質に着目したケアをすることで、根本から美しくなることを目指す美容法です。ほとんどがタンパク質で構成された髪は特に、髪本来の美しさを保持するためには必要不可欠です。 では具体的に、美しい髪を手に入れるためにはどうしたらいい?1.トレハロース配合のヘアケア商品で髪タンパク質の変性を防止美しい髪に必要な成分として注目されているのが「トレハロース」です。高い保湿力を持ったトレハロースは、ダメージで歪んでしまった髪タンパク質の結合に働きかけ、髪構造を改善すると考えられています。最近では、傷んだ髪のタンパク質を補うだけでなく、トレハロースを配合することで残っているタンパク質の変性自体を防ぐシャンプーも開発されています。まだ残っているタンパク質に作用し、変性しにくくすることで、髪を内側から健康な状態にしてくれるそうです。2.CMC配合トリートメント剤でキューティクルを保護また、キューティクルがめくれあがったり剥がれると、髪ダメージにつながってしまいます。毛髪には水分子を含むタンパク質層と脂質成分(主にセラミド・コレステロール・脂肪酸)からなるCMC(細胞膜複合体)と言われる水分保持機能を持つ組織があり、このCMCがキューティクルの細胞同士を接着する役割を果たしています。CMCがダメージによって壊れてしまうと、キューティクルに浮きやはがれがおこり、タンパク質が流出しやすくなってしまいます。パーマやカラーをしたらCMC配合トリートメント剤でCMCを補うことが重要なのだそう。3.良質なタンパク質を食事から摂取髪の材料となるタンパク質は食事でしっかり摂ることが大切。なぜなら、人間の 体は20種類のアミノ酸で構成されていますが、必須アミノ酸と呼ばれる9つのアミノ酸 は体内ではつくりだせないため、食事から摂取する必要があるそのです。4.良質な睡眠をとる食事から摂ったタンパク質はアミノ酸に分解され、体内に吸収されます。吸収されたアミノ酸からしっかりタンパク質を合成するためには、良い睡眠が必要不可欠です。夜10時から深夜2時までが美容にとってのゴールデンタイムと言われています。この時間に睡眠をとると、成長ホルモンが分泌され、新陳代謝を活発にし、疲労を回復させ、肉体を再生させます。日中に食事から摂ったタンパク質もこの時間に合成され、傷んだ細胞が修復されるそうです。 ■「タンパク質美容」におすすめの商品傷んだ髪におすすめなのは、トレハロースを配合しているヘアケア商品。ユニリーバ・ジャパンの「ラックス バイオフュージョン」シリーズが挙げられます。 乾燥した砂漠でも枯死することがない奇跡の植物ローズ・オブ・ジェリコの再生メカニズムに着目し、その抽出成分トレハロースを配合しているそうです。タンパク質に働きかけて、失われた結合を補うことで、 タンパク質の立体構造をより適切な状態に導くのだそう。タンパク質のゆがみを防ぐことで、傷んだ髪に生命感を呼び覚ますヘアケア商品です (詳細はこちらから) 。年を重ねるうちに目に見えて衰えていくのが髪や肌のハリ・ツヤです。逆に言うと、これを改善すればぐっと若く、美しく見えるのだから、まっさきに取り組みたいですよね。タンパク質に着目した最新の美容法「タンパク質美容」を、みなさんもはじめてみてはいかがでしょうか。・タンパク質美容推進委員会 公式サイト
2013年04月04日