ダイエットではカロリーや糖質に注目されがちですが、引き締まった美しい体になるには、タンパク質が必須です。中でも植物性タンパク質は太りづらく腹持ちも良いので、ダイエットの強い味方になります。今回は植物性タンパク質についてご紹介します。ダイエットにおいて食事制限は基本です。特にカロリー制限は誰もがやっていることでしょう。しかしカロリーを気にするあまりに、体作りで必要な「タンパク質」まで不足してしまっている人も多いようです。今回は、植物性タンパク質とダイエットの関係をご紹介します。タンパク質を摂っていますか?出典:byBirth食事制限をしていると、カロリーや糖質ばかりに注目しがちです。もちろんそれは大切なことなのですが、引き締まった綺麗な体を目指すなら「タンパク質」を多く摂取しましょう。タンパク質は筋肉の回復や維持に必要な栄養素です。女性が筋肉を維持増加すると、「代謝の向上や体の引き締め、バストアップやヒップアップ」といった効果が期待できます。逆に筋肉が不足すると、痩せても「髪や肌のハリツヤがなくなり、リバウンドしやすい体質」になってしまうかもしれません。タンパク質を摂取したからといって筋肉が増えるわけではありませんが、運動や日常動作中の「筋肉の分解を抑制」することはできます。筋トレのようなトレーニングをしている人は、その効果を高めることができます。タンパク質の種類出典:byBirthタンパク質は大きく分けて2種類あります。肉や牛乳から摂れる「動物性タンパク質」と、白米や豆乳から摂れる「植物性タンパク質」の2種類です。それぞれの特徴をご紹介します。1. 動物性タンパク質動物性タンパク質は、肉や魚、卵など動物から摂れます。植物性タンパク質と比べてアミノ酸が豊富で、吸収速度が早いのが特徴です。バストアップやヒップアップなど「筋肉を大きくしたい」ときに摂取するといいでしょう。2. 植物性タンパク質大豆や穀物から摂れるのが「植物性タンパク質」です。吸収速度がゆっくりなため、長時間に渡ってタンパク質を供給し続けることができ、「筋肉を維持しやすい」のが特徴です。ダイエットと美容の強い味方になるでしょう。植物性タンパク質のメリット出典:byBirth植物性タンパク質は、ダイエットをする女性にとって嬉しいメリットがたくさんあります。綺麗に痩せるためにも、ぜひ摂取してみてくださいね!植物性タンパク質を摂取するメリットをご紹介します。1. 筋肉維持長時間体にタンパク質を供給し続けることができます。これにより、活動による「筋肉の分解が抑制」されるそうです。筋肉増量には不向きですが、筋肉維持には適しています。引き締まった体を目指す女性におすすめです。2. 美容健康食品にもよりますが、大豆製品の場合は女性ホルモンに近い働きをする大豆イソフラボン。炭水化物の場合は、整腸作用が期待できる食物繊維が同時に摂取できます。タンパク質は筋肉だけではなく「肌や髪、内臓のメンテナンス」にも使われるそうです3. 体の引き締め動物性タンパク質が筋肉増量に向いているのに対して、植物性タンパク質は「体を引き締める」のに向いています。これは吸収速度の違いによるものです。4. 腹持ちが良い一般的に大豆製品は低GI食品です。低GI食品は食後の血糖値の上昇下降がゆっくりなので、長時間にわたって「満腹感」が得られます。また「脂肪になりづらい」といった特徴もあるようです。ただし白米は脂肪になりやすいので摂取量に注意しましょう。5. 低脂質、低カロリー大豆製品のほとんどが「低脂質低カロリー」です。脂肪になりづらく腹持ちもいいので、ダイエット中でもたくさん食べることができます。6. 体臭改善動物性タンパク質を腸内で悪玉菌が分解します。分解された物質が血中に入ると、体臭が強くなるそうです。逆に植物性タンパク質は悪玉菌の餌になりづらいので、「体臭が抑えられる」といわれています。植物性タンパク質が豊富な食材出典:byBirth植物性タンパク質が豊富な食材をご紹介します。穀物類と大豆類がありますが、ダイエットでは主に「大豆類」を摂取してみましょう。えだまめ(1カップ)18g豆腐(85g)8~15g黒豆(1/2カップ)7.6gアーモンド(1/4カップ)6gオートミール(1/4カップ)5gじゃがいも(中1個)4gほうれん草(1/2カップ)3gブロッコリー(1/2カップ)2g玄米(100g)7gパスタ(100g)13g納豆(100g)17g動物性タンパク質と違い、一つ一つの食材に含まれているタンパク質量は少なめです。一度でたくさん摂ろうとせずに、三食にわけて摂取しましょう。植物性タンパク質の摂取タイミング出典:byBirth基本的にはいつ食べてもいいのですが、長時間タンパク質を体内で保持できる特性を活かしてみましょう。1. 朝食朝はタンパク質が不足していますので、朝食を抜くと昼までの間に筋肉が分解されてしまいます。腹持ちもいいので朝は食べるようにしましょう。2. 間食ナッツ類を間食として食べてみてください。ナッツ類は噛みごたえがあり、少量でも満腹感があるのでおすすめです。ただしカロリーは高いので、1日25gまでにしましょう。3. 夕食大豆製品はリラックス効果があるので、良質な睡眠がとれるようになります。また、就寝中の筋肉分解抑制や整腸作用も期待できるでしょう。植物性タンパク質でダイエット!出典:byBirth植物性タンパク質とダイエットの関係についてご紹介しました。ダイエットの基本は、筋肉を減らさずに脂肪を落とすことです。カロリー制限だけでは筋肉が減ってしまいます。タンパク質を摂取して筋肉を維持するようにしましょう。ご紹介した植物性タンパク質は、脂肪になりづらく腹持ちが良いので、ダイエットの強い味方になるはずです!これを機会に意識して摂取してみてくださいね!
2019年05月22日ダイエット中にありがちな「タンパク質不足」。不足すると、例え痩せてもリバウンドしやすい体質になってしまうかもしれません。今回はタンパク質の役割やメリットをご紹介します。ダイエット中にありがちなのが栄養不足です。食事制限をするのでいつもより栄養が不足するのは仕方がないのですが、もしかしたらそれが原因でダイエット効果が薄くなっているかもしれません。栄養素の中でも、今回はタンパク質についてご紹介します。タンパク質の役割出典:byBirthタンパク質と聞くと筋肉のイメージが強いので、女性は摂りたがらない人が多いようですが、タンパク質は、筋肉や内臓、皮膚や血液など身体を構成するのに必要な栄養素です。糖質や脂質と同じ三大栄養素の一つなので、絶対に不足してはいけません。摂るメリットはあっても摂らないメリットはないので、意識して摂取するようにしましょう!タンパク質が不足すると出典:byBirth欧米の女性と比べて、日本の女性のタンパク質摂取量はかなり少ないそうです。特に食事制限ダイエットをしている人は注意しましょう。タンパク質が不足するとどのようなことが起きるのかご紹介します。1. 筋肉が小さくなる筋肉は日々、分解と合成を繰り返しています。タンパク質が不足すると合成することができず、分解ばかりになってしまうので筋肉量が減少してしまうのです。筋肉量が減ると代謝量が減ったり、リバウンドしやすい体質になるかもしれません。2. 脳の回転が悪くなるタンパク質が不足するとアミノ酸が減ります。そうすると脳の神経伝達物質が不足するので、脳の働きが悪くなってしまうのです。集中力がない、頭がぼーっとする人はタンパク質が不足しているのかもしれませんね。3. 肌質や髪質が悪くなるタンパク質は筋肉だけではなく、肌や髪にも使われている栄養素です。不足するとハリツヤがなくなったり、荒れたりするかもしれません。4. 疲れが取れない寝ても疲れが取れない人は、タンパク質が不足しているかもしれません。筋肉や内臓、血液はタンパク質でできているので、不足すると働きが鈍くなります。そうすると疲労した細胞が回復ができなくなるので、疲れやすくなってしまうそうです。タンパク質を摂取するメリット出典:byBirthタンパク質を摂取するとどのようなメリットがあるのでしょうか?ご紹介します。1. トレーニング効果がアップ運動をしていると筋肉が疲労します。タンパク質を多く摂取することで回復を早め、さらに筋肉の合成を促進することができるのです。特に筋トレをしている人は、タンパク質が不足するとまったく意味がなくなるで、いつもより多く摂取するようにしましょう。2. リバウンド予防につながる筋肉の減少を抑えられるので、基礎代謝が高いまま痩せることができます。代謝が高いということはリバウンドの予防にもなるのです。3. 肌や髪が綺麗になる髪や肌もタンパク質でできています。タンパク質を摂取すれば本来の状態に戻るでしょう。4. 疲れがとれる脳や筋肉の回復にタンパク質が使われます。じゅうぶんな量を摂取すれば、今までよりも疲労が残りづらくなるでしょう。タンパク質が多い食材出典:byBirthそれではここでタンパク質が多い食材をご紹介します。積極的に摂取してくださいね!1. 牛もも肉100g20.7g2. 鶏むね肉100g24.4g3. 卵1個6g4. 豆腐1丁6.6g5. オートミール100g13.7g6. きなこ100g35.5g7. 鯖100g20.7g8. カマンベールチーズ100g19.1g9. 枝豆100g11.5g10. 豆乳100ml3.6gタンパク質を摂取するタイミング出典:byBirth一日のトータル摂取量が大切なので、基本的にはいつでもかまいません。ただこれだけは外せないというタイミングをご紹介します。1. 起床後就寝中にタンパク質を使い切っているので、筋肉が分解されやすい状態になっています。起床後なるべく早いタイミングでタンパク質を摂取しましょう。2. 運動前運動中は筋肉が分解されやすくなっています。かるくタンパク質を摂取して分解を抑制しましょう。3. 運動後もっともおすすめのタイミングです。疲労回復や筋肉の合成を促進してくれるので、たくさん摂取してくださいね。4. 寝る前就寝中にタンパク質が不足しないようにします。ただし寝る直前だと胃が休まらないので、2~3時間前までにしましょう。摂取量の目安出典:byBirthタンパク質の摂取量の目安をご紹介します。運動をしない人は「体重/g×1」、運動する人は「体重/g×2」を目標に摂取しましょう。体重50kgの人ならタンパク質50gという感じです。またヒップアップやバストアップなど筋肉を育てたい場合は、肉類や卵など動物性タンパク質を多く摂取すると効果的です。逆に筋肉を維持するのを目的にしている人は、大豆や豆乳など植物性タンパク質を摂取するといいかもしれません。綺麗に痩せるにはタンパク質が必須出典:byBirthタンパク質がいかに大切な栄養素なのかをご説明しました。トレーニングしている人もしていない人も、タンパク質を摂らずに綺麗にやせることはできません。タンパク質をたくさん摂取しても太りやすくなるという事はありませんので、積極的にお肉や乳製品を食べるようにしてください。もしそれで太るならタンパク質を減らすのではなく、筋トレをしたり糖質量を減らすなどするといいかと思います。ダイエットは体作りです!タンパク質を摂取して美ボディになりましょう!
2019年04月18日『inバープロテイン ベイクドビター』が新登場2019年3月19日(火)、森永製菓株式会社から、タンパク質を手軽に補うことができる『inバープロテイン ベイクドビター』が発売される。『inバープロテイン』シリーズで最も人気のある『inバープロテイン ベイクドチョコ』の糖質を40%カット。糖質控えめでありながら、1本(標準35g)当たり10gのタンパク質と、タンパク質の働きに必要なビタミンB群7種類などを補うことができる。甘さを抑えた焼きチョコタイプのバーにアーモンドをプラスし、満足感の高いおいしさを実現している。1本当たりのカロリーは155kcal。参考小売価格は162円(税込み)。全国のコンビニエンスストア、駅売店、スーパー、スポーツ店で購入することができる。健康な体づくりをサポートする『inバープロテイン』シリーズ『inバープロテイン』シリーズは、筋肉増強や疲れにくい体づくりなどをサポート。忙しい日の朝食や、ヘルシーな間食としてもオススメだ。一番人気の『inバープロテイン ベイクドチョコ』の他、『inバープロテイン グラノーラ』、『inバープロテイン バニラ』、『inバープロテイン ナッツ』などのラインナップがある。(画像はプレスリリースより)【参考】※森永製菓株式会社
2019年03月07日美しく痩せるために欠かせない栄養素として注目されている「タンパク質」。体づくりに欠かせないタンパク質は、そもそもどんな働きをしているの? おすすめの食材や、効率よく摂取するポイントは?管理栄養士の篠原絵里佳さんにお聞きしました。――「タンパク質」と聞くと、筋肉をつくるイメージがありますが、ほかにどんな働きがありますか?篠原さん:まず、目で見えている部分はすべてタンパク質でできていると思ってください。筋肉、肌、髪、爪。そして、体内にある臓器や、ホルモン、体づくりに必要なエネルギーのもとになるのも、タンパク質です。――タンパク質なくして、体は成り立たないのですね。篠原さん:そのとおりです。摂取したタンパク質はアミノ酸に分解・吸収され、一度肝臓に貯蔵されます。そこから必要となる場所へ送られて、材料となるので、不足すると、さまざまな不調につながりやすい。肌荒れや薄毛、二枚爪。女性に多い貧血もタンパク質不足が原因ということも。タンパク質は血管をつくる材料でもあるので、血管がもろくなったり、筋肉量が低下して血流がダウン。むくみといった症状にもつながります。――不調のオンパレード…。篠原さん:免疫物質をつくる働きもあるので、不足すると風邪をひきやすくなったり、疲れやすくなったりすることもあります。すぐに症状に現れないものが多いので、「タンパク質不足かも?」と気づきにくいんですよね。――たしかに、タンパク質が足りないなんて考えたこともなかった!1日に必要な摂取量は?篠原さん:体重1kgにつき0.8~1gといわれるので女性だとだいたい50~60g。もっと摂ってもいいくらいです。――普段の食事では足りない?篠原さん:外食などで炭水化物に偏ると、どうしても不足しがち。ご飯やパスタなどの主食に、肉・魚・卵・鶏肉などの主菜を手のひらにのるくらい、そして大豆製品をプラスした食事を、三食きちんと食べていれば足りると思います。忙しくて食事をちゃんと摂れなかった日は、豆乳ドリンクなどで補うといいですね。――主菜をきちんと食べることがポイントになりそうですね。上手な選び方はありますか。篠原さん:ビタミンB6が含まれていると、タンパク質の分解・吸収を助けてくれます。鶏肉や緑黄色野菜、カツオ、マグロなんかがおすすめです。――美しく痩せるためにも、タンパク質が注目されていますね。篠原さん:ダイエット中に陥りやすい栄養不足による肌荒れなどを防いでくれるのです。ただし、糖質(エネルギー)が不足するとタンパク質はエネルギー源に使われてしまいます。バランスよく食べて、タンパク質は体づくりのほうに使ってほしいですね。肉、卵、魚、大豆製品など、バランスよく摂りたいタンパク質。毎食コツコツ摂って、1日の摂取量をクリアしよう。続いて、オススメレシピをご紹介!焼き鳥(ねぎま)摂取できるタンパク質の量:15.4g(もも肉〈皮なし〉2本分70g)鶏肉はタンパク質が豊富。焼き鳥で手軽に補給を。手に入りやすいもも肉の焼き鳥なら、手軽にタンパク質を補給できる。ムネ肉・ササミがあれば、脂質が少ない分ベター。高野豆腐煮摂取できるタンパク質の量:10.1g(高野豆腐〈乾燥〉20g)タンパク質がパワーUP、アミノ酸も豊富な一品。高野豆腐のタンパク質は、食物繊維に似た働きをして、血中の悪玉コレステロール値を減少させるほか、中性脂肪の上昇を抑制する。たらちり摂取できるタンパク質の量:15.8g(まだら90g)クセのない白身魚はたっぷりの野菜と合う。白身魚にはタンパク質が豊富に含まれている。クセがないので野菜と組み合わせて鍋にすればビタミンB6も摂ることができる。しのはら・えりか管理栄養士。野菜ソムリエ、睡眠改善インストラクターの資格も持つ。今回は栄養素別おすすめ料理の監修にも参加。※『anan』2018年10月31日号より。写真・小川朋央イラスト・藤田 翔料理作製、監修・篠原絵里佳取材、文・神武春菜(by anan編集部)
2018年10月30日タンパク質を摂ってやせる! 健康になる!6月20日、筋肉をつけることで効率的にやせて健康になるためのタンパク質の摂取法やレシピを解説した「タンパク質データBOOK」が発売された。立命館大学スポーツ健康科学部教授で、「骨格筋タンパク質の代謝応答」などについて研究している藤田聡氏が監修を務めている。新刊の価格は1,296円(税込)で朝日新聞出版より刊行。同書は2014年に刊行された「糖質制限VSカロリー制限データBOOK」の姉妹版となっている。良質なタンパク質を多く含む食材とは現在、ブームとなっている糖質オフダイエット。しかし、糖質オフのみにこだわるあまり、食事制限によって筋肉量が落ちてしまい、基礎代謝が低下、やせにくく太りやすい体になってしまうことがある。また、筋肉量の低下は転倒の原因となり、生活習慣病になりやすくなるため、筋肉は健康面でも重要視されている。良質なタンパク質は筋肉を増やす上で欠かせない要素で、運動と組み合わせることで、効果的に筋肉量をアップさせることができる。新刊は筋肉量維持、または増加を効果的に実現させるためのガイドブックとなっている。食材選びでは動物性と植物性のタンパク質が多いベスト30などを掲載。レシピでは作りおきできて必須脂肪酸も摂取できる「手づくりツナ」などを掲載。さらに筋トレにも触れている。(画像はAmazon.co.jpより)【参考】※タンパク質データBOOK
2018年07月06日国立遺伝学研究所(遺伝研)は3月25日、ヒト培養細胞で特定のタンパク質を素早く分解除去する方法を開発したと発表した。同成果は、同研究所 新分野創造センター 分子機能研究室 鐘巻将人准教授らの研究グループによるもので、3月24日付けの米科学誌「Cell Reports」オンライン版に掲載された。タンパク質の機能を理解するためには、特定のタンパク質が消失した際の影響を観察することが有効であり、従来は短鎖干渉RNA(siRNA)を利用しタンパク質の発現を抑制することが多かった。しかし同手法では、タンパク質の消失に数日の時間を要するという問題がある。また、近年開発されたCRISPR/Casを利用した遺伝子ノックアウト細胞も使われるようになってきたが、細胞の中には約10%ほどノックアウトできない「必須遺伝子」が存在するため、現在の技術では機能の解明が難しいタンパク質が数多くあるといえる。そこで同研究グループは2009年に、植物細胞が持つオーキシン依存的タンパク質分解の仕組みをヒト培養細胞に移して、任意のタンパク質をオーキシン添加時に消失させる「オーキシンデグロン(AID)法」を開発している。AID法は、目的とするタンパク質を1時間程度で消失できることに加え、可逆的にタンパク質の「ある」「なし」を制御できることが特徴だが、同方法を行うためには、標的タンパク質の情報を持つ遺伝子を人為的に改変し、目印となる"分解タグ"の情報を持つDNA配列を導入する必要があった。そこで今回、同研究グループは、ゲノム編集技術であるCRISPR/Cas法を応用して分解タグを簡便に導入する技術の開発に成功し、これらの技術を組み合わせることにより、任意のタンパク質の「ある」「なし」を自在に制御できる技術「AID変異細胞の作成法」を完成させた。またこのタグを導入する技術を利用して、蛍光タンパクタグなども任意の遺伝子に導入することが可能になった。これにより、マウスなどのモデル生物でしかできなかった精緻な遺伝学研究が、ヒト細胞でも行うことができるようになる。同研究グループは、同技術により今後、がん細胞を含めたヒト細胞におけるさまざまな仕組みが解明されることが期待できるとしており、またマウスES細胞への技術応用も進めているという。
2016年03月25日産業技術総合研究所(産総研)は3月16日、アルツハイマー病の原因因子のひとつ「アミロイドβタンパク質(Aβ)」の動態を、生きた神経細胞内や生体内で可視化する技術の開発に成功したと発表した。同成果は、産総研 バイオメディカル研究部門 脳遺伝子研究グループ 落石知世 主任研究員、北海道大学大学院 先端生命科学研究院 北村朗 助教、順天堂大学 医学部 脳神経内科 志村秀樹 准教授らの研究グループによるもので、3月16日付けの英国科学誌「Scientific Reports」電子版に掲載された。アルツハイマー病発症のメカニズムとして近年、少数のAβ分子が重合したAβオリゴマーが細胞に対する強い毒性を有し、これが細胞内に蓄積されることが病気の発症に強く関与するという説が有力になりつつある。しかし従来の方法では、細胞や脳組織の標本を用いた解析しかできなかったため、生きた細胞内でAβのオリゴマー化の状態を直接可視化して毒性との因果関係を詳細に解析する方法の開発が求められていた。これまでにAβと蛍光タンパク質GFPを繋ぐリンカーとして12個以下のアミノ酸から構成されたものが報告されていたが、これらはAβが重合するとGFPの蛍光が消失するため、Aβオリゴマーの観察はできない。今回、同研究グループは、AβとGFPを繋ぐリンカーとして14個のアミノ酸を用いて、Aβ分子の重合体が形成されても蛍光を観察できるAβ-GFP融合タンパク質(Aβ-GFP)を開発した。このAβ-GFPを核磁気共鳴装置や電子顕微鏡、免疫組織化学法、蛍光相関分光法で解析したところ、GFPを融合させたことでAβの重合が一定以上進まず、生体内でも生体外でも2量体から4量体を中心としたオリゴマーの状態で存在することがわかった。これらの特徴を活かすことで、生きた細胞内でAβのダイナミックな動きや、初代培養神経細胞内での蓄積状態などの解析が可能となる。また、重合が進んで繊維状となったAβよりも、オリゴマーのほうがより強い毒性を有することから、Aβオリゴマーの重合の度合いと細胞への毒性との関係などの解析を行うことができる。また、AβとGFPを繋ぐリンカーが短いと、重合の影響を受けてGFPの蛍光は観察されなくなる。そこで同研究グループは、今回発見した現象を利用して重合の状態が検出できるシステムを考案。GFPの蛍光強度の変化を測定することで、Aβの重合を抑える創薬候補物質のスクリーニングに利用できることを実証した。同研究グループは今後、培養神経細胞を用いて、Aβ-GFPの蛍光強度を利用したアルツハイマー病の治療薬や予防薬の候補となる物質をより簡便にスクリーニングできる方法の開発に着手する。また、Aβ-GFPを発現させたトランスジェニックマウスを用いて、アルツハイマー病発症のごく初期に起こる神経細胞内部での微細な変化にAβオリゴマーが与える影響についてより詳細な解析を行い、アルツハイマー病発症のメカニズムの解明や予防に関する研究を進めていくとしている。
2016年03月17日理化学研究所(理研)、大阪大学、北海道大学は3月9日、細胞内にタンパク質が詰め込まれた分子混雑状態により色が変わる蛍光タンパク質「GimRET」の開発に成功したと発表した。同成果は、理研 生命システム研究センター先端バイオイメージング研究チームの大学院生リサーチ・アソシエイト 森川高光氏 (研究当時は大阪大学大学院生命機能研究科)、渡邉朋信 チームリーダー、大阪大学大学院理学研究科 今田勝巳 教授、同産業科学研究所 永井健治 教授、北海道大学大学院 先端生命科学研究院 金城政孝 教授らの研究グループによるもので、3月9日付けの英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。近年、試験管中と細胞中ではタンパク質の折り畳まれ方が異なることが発見されており、また分子混雑がタンパク質の機能にも影響を与える可能性が示唆されている。分子混雑を評価する指標としては、これまで流動性(分子の動き)が使われてきたが、混雑状態と流動性は必ずしも一致せず、その両面から評価する必要があった。同研究グループは、分子混雑が溶液の疎水性と直接関与していることに注目し、溶液全体の疎水性は、分子混雑のうち最も大きなファクターであるタンパク質濃度と見なせると考えた。そこで今回、計測技術の基盤として、生きた細胞中での計測が可能になる蛍光タンパク質を選んだ。蛍光タンパク質は円柱型で、蛍光を発する発光団はその円柱構造の内部にある。同円柱構造は、発光団を水分子との相互作用から守っているため、発光団の蛍光は溶液中の疎水性には依存しない。つまり、蛍光が失われない程度に発光団と水分子を相互作用させることができれば、溶液中の疎水性によって発光の量が変わる蛍光タンパク質になる。蛍光タンパク質の遺伝子改変には通常、アミノ酸を置換する方法が用いられるが、今回、あえて余計なアミノ酸を挿入することで、円柱構造の一部が少しだけ壊れ、数個の水分子だけが発光団に相互作用するような構造を生成。グリシンをひとつだけ蛍光タンパク質に挿入したところ、溶液の疎水性によって蛍光強度が変わる蛍光タンパク質になることがわかった。さらに、蛍光共鳴エネルギー移動法を適応することで、分子混雑が上昇すると、黄色から青色に色が変わる蛍光タンパク質「GimRET(Glycine inserted mutant fRET sensor)」を得た。GimRETから発せられる蛍光の色を解析することで、分子の混雑状態が評価できると同時に、光学顕微鏡を用いることでGimRETの細胞内での拡散速度が計測可能となる。同研究グループはGimRETについて、基礎的な生命科学分野のみならずアミロイド―シスなどの分子混雑が関連する病気の原因解明など、医学分野においても役立つことが期待できると説明している。
2016年03月10日こんにちは、ママライターのfurahaです。炭水化物、脂質に並んで三大栄養素の一つとされているタンパク質。筋肉、臓器、血液、骨、皮膚、髪など人間の体を作っている主成分がタンパク質であるため、非常に重要な栄養素だとされています。このタンパク質、1日にどれくらい取る必要があるか皆さんご存じですか?ご自分、そしてお子様の摂取量が足りているか、チェックしてみましょう。●減少している日本人のタンパク質摂取量戦後、高度経済成長に伴い食生活が豊かになった日本。どちらかといえばエネルギーを取り過ぎなイメージもあるくらいですが、実は、1960年代から1970年代をピークに、国民1人あたりのエネルギー摂取量は少しずつ減少しています 。特に近年は、肥満やメタボ対策、ダイエットなどの影響が強いと考えられます。そして、それに伴い、必要栄養素であるタンパク質摂取量も減少傾向にあります。厚生労働省の『平成23年国民健康・栄養調査』によるとエネルギーとタンパク質の1人1日当たりの摂取量はそれぞれ以下の通りです。**********エネルギー/タンパク質1975年(昭和50年) ……2,188kcal/80.0g1980年(昭和55年)……2,084kcal/77.9g1985年(昭和60年)…… 2,088kcal/79.0g1990年(平成2年)…… 2,026kcal/78.7g1995年(平成7年)……2,042kcal/81.5g2000年(平成12年)…… 1,948kcal/77.7g2005年(平成17年)……1,904kcal/ 71.1g2010年(平成22年)……1,849kcal/67.3g**********●タンパク質が不足するとどうなるのか!?では、タンパク質摂取量が減ると、健康にどのような影響が出るのでしょうか!?まずタンパク質が不足することで筋肉量が減り、基礎代謝が低下するので、脂肪が燃焼されにくくなります 。したがって、ダイエットやメタボ対策をする場合も、タンパク質摂取量を減らしすぎると逆効果であることがわかります。成長過程にある子どもの場合は、タンパク質不足で筋肉量が減ることは運動能力の低下にもつながるので、特に注意が必要です。さらにタンパク質は筋肉だけでなく私たちの髪や肌を作る際の主成分でもあるため、不足すると抜け毛や肌荒れの原因になります 。基礎代謝低下もそうですが、美容のためにダイエットをしたはずなのに、栄養バランスをないがしろにしたせいで、痩せたもののお肌や髪がボロボロ、という事態は避けたいものです。あまり知られていませんが、タンパク質は免疫グロブリン という抗体の原料で、この抗体には体に入ってきた細菌やウィルスを排除する働きがあります。そのため、タンパク質不足になることで、免疫力が低下し、感染症などの病気にもかかりやすくなるのです。この他にも、タンパク質不足は、思考力や集中力の低下、体に必要な酵素やホルモンの不足、体力不足、貧血などを招き、健康に悪影響があることがわかっています。●タンパク質摂取量の目安それでは、実際に1日あたりどれくらいのタンパク質を取ればいいのでしょうか!?タンパク質の必要量は体重によって違い、成人の場合は、体重1kgに対して約1gのタンパク質が必要 とされています。成長期の子どもの場合は、体重あたりに必要なタンパク質の量が大人よりも多くなります。以下は厚生労働省の『日本人の食事摂取基準(2015年版)』による年齢別タンパク質必要量です(日本人の各年齢の標準体重を基準に算出された数値です)。厳密にいうと、女性の場合は妊娠中や授乳中は必要量が異なり、乳児の場合は月齢によって異なるので、詳しくは『日本人の食事摂取基準(2015年版)』の報告書をご覧ください。**********【年齢別1日当たりに必要なタンパク質量】(男性/女性)・1〜2歳……20g/20g・3〜5歳……25g/25g・6〜7歳……35g/ 30g・8〜9歳……40g/40g・10〜11歳……50g/50g・12〜14歳……60g/ 55g・15〜17歳……65g/55g・18歳以上……60g/ 50g**********上記は目安量であるため、スポーツをしている場合などはより多くのタンパク質が必要になります。●良質なタンパク質をバランス良く取ることが重要!ここまでタンパク質の必要性を紹介してきましたが、注意したいのは、良質なタンパク質を摂取しないといけないということ。タンパク質は20種類のアミノ酸からできており、そのうち9種類は体内で作ることができないため、私たちは食物から取る必要があります 。そして、これら必須アミノ酸がバランス良く含まれている食品が良質なタンパク質なのです。また、タンパク質には、肉・魚・卵・乳製品などに含まれる動物性タンパク質 と、穀物類・豆類・野菜などに含まれる植物性タンパク質 の2種類があります。動物性タンパク質は脂肪分が多くはなりますが、バランス良く必須アミノ酸が含まれているという特長があります。一方で、植物性タンパク質は、余分なエネルギーや脂質をカットしてタンパク質を取ることができます。その分必須アミノ酸が少ない食品が多いのですが、大豆は魚や肉に匹敵するアミノ酸量を含んでいます。したがって、動物性タンパク質と植物性タンパク質の両方を取ることが大切 です。タンパク質を取ろうとして、エネルギーや脂質を取り過ぎないようにしましょう。食事のメニューを考える際に、脂肪分の多そうな肉ばかり食べないようにしたり、調理方法でエネルギーを抑える工夫をするのもおすすめです。特にお子様がいる方にとっては、タンパク質は子どもの体を作る原料になるもの!正しい知識を身に付けて、良質なタンパク質を取らせる食生活を意識したいですね。【参考リンク】・平成 23年国民健康・栄養調査報告 | 厚生労働省(PDF)()・日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要 | 厚生労働省(PDF)()●ライター/furaha(ベビーマッサージ講師)
2016年03月03日ペプチドリームと宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月24日、国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟を利用した高品質タンパク質結晶生成実験を包括的に実施する受託契約を締結したと発表した。契約の実施期間は、2016年2月から2017年8月までを予定している。ペプチドリームは、20種類の天然アミノ酸と非天然の特殊アミノ酸を結合させて創成した「特殊ペプチド」を利用することで創薬に貢献している企業。同社独自の創薬開発プラットフォームシステムを用いて、広範囲にわたる特殊ペプチドを多数合成し、迅速な評価を可能にすることで、創薬において重要なヒット化合物の創製、リード化合物の選択、および創薬標的タンパク質と医薬品候補化合物の相互作用様式の理解を、簡便かつ効率的に行うことが可能となっている。同契約は、ペプチドリームが保有する、感染症、がん、生活習慣病などの疾患につながる複数の創薬ターゲットとなるタンパク質を対象に、最大取扱試料数のみを規定し、候補タンパク質が決定した段階で、作業に速やかに着手できるような形態になっている。また、地上実験および宇宙実験・回折実験フェーズからなっていた従来の有償利用定型サービスに加え、今回新たにコンサルティングフェーズおよび構造解析フェーズが設定されている。JAXA 有人宇宙技術部門長・理事 浜崎敬氏は「民間企業のスピードについていくのが大きな課題だったが、今回さまざまなプロセスを改善することで迅速・柔軟に対応できるようにした」と説明している。今回のような包括的連携は初めてだというが、ほかの利用者に対しても要望に応じて提供する予定だという。同契約を決定した理由について、ペプチドリームは「宇宙でタンパク質の結晶化を行うと、得られるX線回折構造データの分解能を数倍程度上げることができるため、特殊ペプチドによって固定された部分の詳細なデータを得ることができる。またトライアルユースとして地上実験を行った際に、JAXAの技術力・人材が高いレベルにあると判断した」ためであると説明。浜崎氏は「有償利用の場合、企業の知財を守るという観点から成果を非公表とすること多いが、今回は成果が得られ次第、発表する予定。宇宙実験の成果を創薬という形で発表できる日が来ることを楽しみにしている」とコメントしている。
2016年02月25日東京工科大学は2月17日、副作用の少ない医薬品の開発へ応用可能なヒトラクトフェリンFc融合タンパク質の特許を取得したと発表した。同成果は同大応用生物学部の佐藤淳 教授らの研究チームと、バイオベンチャー企業のNRLファーマの共同研究によるもの。乳などに含まれるラクトフェリン(LF)は、抗腫瘍、抗炎症、抗酸化などさまざまなな生理活性を示すタンパク質として知られており、すでにウシ由来のLFは健康食品として使用されている。今回の研究では、LFの医薬品化を目指した。一般にタンパク質医薬品は、体内での安定性が低く、十分な薬効が得られないという課題がある。この問題を解決する手法として、タンパク質医薬品を抗体の一部であるIgG Fcと融合させる技術がすでに知られている。しかしこの技術では、免疫において外敵を排除する機能を持つ抗体の一部を使用することから、免疫細胞の活性化を介して副作用をもたらすという問題があった。これに対し同研究グループは、副作用をもたらす可能性のある免疫細胞の活性化を消失させるために、ヒト抗体の一部の配列を欠失させたIgG Fcを作製。これを用いたヒトLFとの融合タンパク質の作製に成功した。この融合タンパク質は、血中での安定性が大幅に向上し、副作用となる免疫細胞の活性化を示さないことが確認された。今回の特許は、この技術を使って作製したヒトラクトフェリンFc融合タンパク質が認められたもので、これにより、体内での安定性を向上させて増強した薬効と、副作用の少ない優れた安全性を持つ医薬品開発が期待される。
2016年02月18日横浜市立大学(横市大)は1月20日、細胞質のタンパク質合成を制限することにより細胞老化を抑制するメカニズムを発見したと発表した。同成果は、横浜市立大学大学院 生命ナノシステム科学研究科 博士後期課程3年 高氏裕貴氏、藤井道彦 准教授、鮎澤大 名誉教授らの研究グループによるもので、1月5日付けの英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。動物細胞においては、種々の老化ストレスにさらされると肥大化・扁平化をともないつつ細胞増殖を停止し、最終的に分裂能力を失う「細胞老化」と呼ばれる現象がある。近年、細胞老化は生物個体の老化の原因のひとつであることが明らかになりつつあり、たとえば、老化したマウスには老化した細胞が多く存在するが、老化細胞を選択的に除去することで、マウスの老化が遅くなることが報告されている。今回、同研究グループは、細胞老化の共通の特徴であるDNA複製の遅滞と細胞の肥大化・扁平化に着目し、「細胞老化の不均衡増殖モデル」を細胞老化の普遍的モデルとして提唱した。細胞はさまざまな障害を受けるとDNA複製を停止させるが、同モデルでは、この状態が長く続くと、タンパク質の過度な蓄積が起こり、細胞膨張と核膨張が起こる。次いで核膜とヘテロクロマチン複合体の崩壊が起こり、分裂能力の喪失や老化特異的遺伝子の発現が誘導される。同研究グループは、ヒト正常およびがん細胞を用いた解析から、細胞質タンパク質合成の制限が細胞の種類に関係なく不均衡増殖を解消し、細胞老化を抑制することを見出した。この制限はヒト正常細胞の分裂寿命を顕著に延長しただけではなく、細胞老化により分裂を停止した細胞の増殖を再開させることができたという。さらに、タンパク質合成の制限が個体の老化に及ぼす影響を、モデル生物である線虫C.elegansを用いて調べたところ、タンパク質合成の制限は、線虫の平均寿命および最大寿命を延長させ、個体レベルでの老化防止にも有効である可能性が示された。今後の課題は、細胞質タンパク質合成の制限により、ヒトなどの高等動物の老化防止を実現できるかどうかであり、そのためには細胞質タンパク質合成をターゲットとした老化抑制剤の探索や開発を進める必要があると同研究グループは説明している。
2016年01月21日京都大学と和歌山県立医科大学による共同研究グループはこのほど、神経難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因タンパク質の異常構造を、特異的に認識して分解する仕組みを発見したと明らかにした。ALS病態の解明と治療法開発へつながる可能性があるという。同研究は、京都大学大学院 医学研究科の漆谷真准教授らのグループが実施したもので、英国科学誌「Scientific Reports」誌に掲載された。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、随意運動を司る神経がほぼ選択的に死滅し、全身の筋肉の萎縮と筋力低下を進行性にきたす神経難病。重篤な神経難病の一つであるが病態は不明で、根治的な治療法も存在しない。ただ、以前からALSの病巣に異常凝集物が蓄積する現象は知られており、近年 「TDP-43」というタンパク質が主な成分と判明したことから、治療標的として注目を浴びている。研究チームは今回、がん関連タンパク質「von Hippel Lindau(VHL: がん抑制遺伝子の一つ)」と「Cullin2(CUL2)」からなるユビキチンリガーゼ複合体が、ALSで出現する病的なTDP-43と結合し、ユビキチン化とプロテアソームでの分解を促進することを発見した。標識した TDP-43タンパク質を「ユビキチン・プロテアソーム系」(ユビキチンという小さなタンパク質を標識に用いて、標的となるタンパク質を特異的に分解するタンパク質分解機構)に必要な分子を含む細胞破砕液と混ぜてユビキチン化反応を起こし、ReCLIP法という方法でユビキチン化の過程でTDP-43と架橋剤で結合させられたタンパク質を回収。結合を解離させた後に質量解析を行い、アミノ酸配列を同定した。さらに、同定された分子が病的なTDP-43のユビキチン化や分解、さらにALSの病態とどのように関連するかを調べるべく、培養細胞の遺伝子導入実験や独自の抗体を用いたALS患者組織の組織化学解析を行った。質量解析の結果、VHLとCUL2からなるユビキチンリガーゼ複合体が、ALSで出現する病的なTDP-43と結合し、ユビキチン化とプロテアソームでの分解を促進することを発見した。また、TDP-43分子の中で異常構造の目印となる配列(246番グルタミン)を特定。一方で、培養細胞ではVHLタンパク質のみが過剰になると、むしろTDP-43は異常に蓄積し、病的な凝集および封入体形成を促進するというALS病態の悪化を再現した。さらにTDP-43 の機能が低下すると、VHLタンパク量が増加することが確認されたという。ALS患者脊髄の観察により、VHLは「オリゴデンドロサイト」というグリア細胞(神経細胞の周囲にあり、形態維持や栄養補給を行う細胞)内の細胞質に存在し、「グリア細胞質封入体(GCI)」と呼ばれる病的な封入体で異常なTDP-43と共存しており、VHL/CUL2の機能不全が同細胞の凝集体形成の背景にあることが示唆された。以上の結果より、正常人が持つTDP-43タンパク質がALS発症に関係する異常構造体に転換した際に、それを認識し排除する仕組みが存在し、その一つがVHL/CUL2 複合体であることが示されたという。
2016年01月15日東京大学や科学技術振興機構などは1月5日、血液中のタンパク質・AIMが急性腎不全の治癒に役立つ可能性を示唆した研究成果が得られたことを明らかにした。腎臓は血液中の老廃物をろ過し、尿として排せつする役割を持つ。その機能が低下すると血液中に老廃物がたまり、身体のさまざまな臓器の働きに支障をきたす。一方で、出血による腎臓の虚血や細菌感染、薬剤などの原因により、急速に腎機能が低下する状況を急性腎不全と呼ぶ。急性腎不全は自然に改善する場合もあるが、致死率も高く、これまでに確実な治療法が確立されていなかった。東京大学大学院医学系研究科の宮崎徹教授らの研究グループは今回、血液中のタンパク質・AIMが直接腎臓に働きかけ、急性腎不全を治癒させることを明らかにした。急性腎不全が生じると、腎臓の中の尿細管に細胞の死骸が詰まり、この詰まりが腎機能の低下を招く引き金となる。通常、AIMは血液中に存在するが、腎臓の機能が低下すると尿中に移行し細胞の死骸に付着。この付着したAIMが"目印"となって、周囲の細胞が一斉に細胞の死骸を掃除することで、迅速に詰まりが解消され、結果的に腎機能が速やかに改善される仕組みとのこと。研究グループは、マウスでの比較実験を実施。AIMを持たないマウスが急性腎不全になると、細胞の死骸が掃除されずに死んでしまったことや、AIMを正常に持っているマウスでも、重度の急性腎不全が起きた場合は、腎臓内の詰まりが解消されないまま、その多くが死んでしまうことも発見した。ただ、いずれの場合でも、AIMを静脈注射することで、尿細管の詰まりは劇的に解消され、腎機能が速やかに改善。致死率が著しく低下することを見いだしたという。腎機能低下時の血中AIMの尿中への移行および細胞の死骸への付着は、ヒト急性腎不全患者でも同様に観察される。そのため、研究グループは「マウスだけでなくヒト急性腎不全患者においても、AIMによる治療は有効であると考えられる」としている。なお、同研究成果は、「Nature Medicine」オンライン版にて公開されている。
2016年01月06日名古屋大学は12月8日、肺がんにおいてはCERS6というタンパク質が高発現し、それががん転移に必須の役割を果たしていることを発見したと発表した。同成果は、同大学大学院 医学系研究科 分子腫瘍学分野 鈴木元 講師、高橋隆 教授らの研究グループによるもので、12月7日付けの米科学誌「Journal of Clinical Investigation」に掲載された。CERS6はセラミド合成酵素の一種。肺がんにおいて過剰発現したCERS6は、C16セラミドと呼ばれる生理活性脂質を合成し、これが細胞内のプロテインキナーゼζ・RAC1複合体を活性化する。これにより、細胞表面にラメリポディアと呼ばれる細胞の遊走に必須となる形態形成が起こり、がん細胞が転移することが今回明らかになった。C16セラミドは、今回発見されたがん転移促進を推進する一方で、アポトーシスと呼ばれる細胞死を誘発する物質として知られている。このため、同研究グループは、CERS6を分子標的として利用。C16セラミドの代謝上流物質であるL-α-DMPCを投与したところ、CERS6依存的にC16セラミドに代謝され、細胞死を誘導できた。細胞死はさらにC16セラミドの下流への代謝を抑制する低分子化合物D-PDMPにより増強された。なお、C16セラミド発現の低い正常細胞に細胞死は誘導されなかった。この結果は、CERS6を分子標的とする新たな治療法が可能であることを示すものであり、その実現は極めて予後の悪い肺がんの革新的な治療法の実現に結びつくものと期待される。
2015年12月10日岡山大学は11月25日、脂肪肝や肝の線維化を抑制するタンパク質を同定したと発表した。同成果は同大大学院医歯薬学総合研究科(医)腎・免疫・内分泌代謝内科学分野の和田淳 教授、片山晶博氏らの研究グループによるもので、11月19日に英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。同研究グループは、肥満ラットの内臓脂肪組織に増加するタンパク質「Gpnmb」を発見。同タンパク質を内臓脂肪細胞、マクロファージに過剰発現させたマウスを高脂肪高蔗糖食で飼育し、野生型マウスと比較した結果、脂肪肝や肝の線維化が抑制されることがわかった。さらに解析を進めた結果、過剰発現させたGpnmbは肝臓内のマクロファージや星細胞に存在し、カルネキシンという物質と結合することで酸化ストレス、脂肪沈着、線維化を抑制することも明らかにした。また、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者の中でも特に非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に進行した患者で血清Gpnmb値が高値であることも見い出した。近年、NAFLDが進行したNASHでは確定診断のために侵襲的な肝生検が必要となるが、今回の研究で同定したGpnmbがNASHの新たなバイオマーカーとして診断を容易にする可能性がある。
2015年11月26日信州大学は9月14日、独自の人工タンパク質を用いた「タンパク質ナノブロック(PN-Block)」を開発し、複数種類の超分子ナノ構造複合体を創り出すことに成功したと発表した。同成果は同大学大学院総合工学系研究科博士課程3年の小林直也氏、同大学学術研究院繊維学系の新井亮一 助教、横浜市立大学大学院生命医科学研究科の雲財悟 助教らの共同研究グループによるもので、米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」の9月9日発行号に掲載された。同研究グループは、独自の二量体人工タンパク質と三量体ファージタンパク質を融合することで「PN-Block」を開発し、樽型(ラグビーボール型)や正四面体(テトラポッド型)などの超分子ナノ構造複合体を自己組織化により同時に創出することに成功した。同技術は将来的に次世代半導体のための有機無機ハイブリッドナノ材料開発、次世代医薬品のためのドラッグデリバリーシステムや人工ワクチン開発などへの応用が期待されるという。
2015年09月14日「美容=ビタミン」というイメージが強いかもしれませんが、タンパク質も、健康的な食生活をしていないと不足しがちな栄養素。摂りすぎれば太ってしまいますが、足りないと髪や肌をつくれないため、美容や健康に影響してしまうのです。平均的な女性は、1日に約46gのタンパク質を摂取する必要があります。『STACK』を参考に、タンパク質が豊富に含まれている10種の食べものを、1食分のタンパク質摂取量と併せてご紹介します。■1:ピーナッツバター・・・1食に8g朝食のとき食パンに塗って手軽に食べられるピーナッツバター。スプーンたったの2杯分で8gもタンパク質が含まれています。■2:グリンピース・・・1食に8g苦手な人も多いグリンピースですが、不人気なのによく出されるのは、高タンパク食品だからなのかもしれません。グリンピースはさまざまな料理に使えてとても便利。1食分の1カップで8gのタンパク質と、1日に必要なビタミンCの96%が摂取できます。■3:スイカの種・・・1食に11gスイカの種の栄養は隠れた栄養食品。タンパク質や鉄分、マグネシウムが豊富に含まれているのです。発芽させ、皮をとり、乾燥させてからいただきましょう。■4:スイスチーズ・・・1スライスで8gたった1スライスで8gのタンパク質と、1日に必要な22%のカルシウムを摂ることができます。スイスチーズとナッツか全粒クラッカーを組み合わせたら完璧!■5:全粒パン・・・1スライスで4~5g全粒パンには、栄養素が豊富に含まれている種類のものがあります。たとえばエゼキエル亜麻発芽全粒パンは、1スライスに繊維の4g、1日に必要なリンの8%とタンパク質5gが含まれています。■6:キヌア・・・1食で8gアンデス山脈原産の擬穀物キヌアは、穀物の代用品として人気が出てきました。キヌアには銅、繊維、マグネシウム、鉄が豊富に含まれていますが、タンパク質の含有量は圧巻!1カップの調理したキヌアに含まれているのは、体内でつくれない9つの必須アミノ酸がすべて入った「完全タンパク質」なのです。■7:豆類・・・1食で15g調理も簡単で栄養豊富な豆類は、タンパク質の他にカリウム、鉄、ビタミンB6、ビタミンCが豊富。黒豆、ライマメ、白インゲン、ひよこ豆など、ほとんどの豆類には1回に食べる1カップほどの量に、15gのビタミンが含まれています。■8:無脂肪モッツァレラチーズ・・・1食で9g無脂肪モッツァレラチーズには、タンパク質の他にもカルシウムが豊富に含まれています。ピザやカプレーゼサラダなど、いろんな料理に使えるので、上手に食事に取り入れたいですね。■9:ドライトマト・・・1食で8g日干しにしたトマトは水分の大半がなくなりますが、多くの栄養素はそのままです。1食分のドライトマトには、毎日必要なカリウムの50%、ビタミンCの35%、繊維の7gとタンパク質の8gが含まれています。調理にも取り入れやすく、スープ、サラダ、サンドイッチ、パスタなどに使えます。■10:枝豆・・・1食で17g日本の夏はやっぱりコレ。お手軽なおつまみの枝豆は、1回に食べる1カップほどの量に17gのタンパク質が含まれています。✳︎なかには、タンパク質が豊富というイメージがない食べものも多くありましたね。特にダイエットをしている人は、タンパク質が含まれた食べものを抜いてしまいがち。普段の食生活にこれらの食品を取り入れて、お肌や髪が栄養不足にならないようにしましょう!(文/スケルトンワークス)【参考】※9 Foods You Didn’t Know Have as Much Protein as Peanut Butter-STACK
2015年08月20日年齢を重ねると、からだの組織が老化し、基礎代謝、筋肉量が低下するため、太りやすくなる…。自分自身、まさに年々、実感していることですが、これはアラフォー世代共通の悩みともいえるのではないでしょうか。ではこの問題、どうしたら解決できるのでしょう?代謝アップに欠かせない、タンパク質(プロテイン)の基礎知識「食事制限をしても痩せない、すぐにリバウンドしてしまう、これは筋肉の元となるタンパク質不足が原因です」と語るのは、『プロテイン ダイエット レシピ』の著者であり、日本初のプロテイン料理教室を主宰している山崎志保さん。さっそく山崎先生の著書も参考にしながら、基礎代謝&筋肉量アップ、ダイエットにも効果的な、タンパク質を上手に取り入れる方法について学んでいきましょう。タンパク質不足で起きる不調の数々とは?そもそもタンパク質とは、脂質、糖質と並び、私たちの健康維持に必要な三大栄養素のひとつ。筋肉や皮膚、髪の毛、臓器など、からだの大部分を作りだしているものなのです。だからこそ、タンパク質が不足すると、体力や免疫機能が低下し、肌荒れ、抜け毛、疲れがとれにくい、といった不調が現れるわけです。改めて、タンパク質の重要性を感じますね。また山崎先生によると、基礎代謝量と筋肉量は比例するので、筋肉が多いほど、消費カロリーが多く、からだが燃えやすくなるそう。運動するにしても、ある程度の筋肉量がないと、なかなか良い効果が得られないというのも頷けます。積極的に取り入れたい、高タンパク質の食材一日のタンパク質摂取量の目安は、体重1kgあたり1g、つまり体重50kgの人は50gとなります。とはいえ、単純に肉50gに含まれるタンパク質が50gというわけではありません。たとえば肉類でいうと、高タンパクで知られる鶏ささみ100gのタンパク質含有量は約25g程度。魚類では、マグロの赤身100gで26g程度、大豆系で納豆は100gで16g程度です。豆腐や納豆などの大豆製品、赤身肉、魚介類、卵、そして牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品と、タンパク質を多く含む食材はいろいろあるので、動物性、植物性タンパク質を含む食材をバランスよく、量を調整しながら取り入れるのが理想的といえそうですね。プロテインパウダーを、食事と併用するのもおすすめ高タンパク質の食材を取り入れるのは重要ですが、含有量を計算するのが面倒、忙しくて時間がない、という人には山崎先生が提案している「プロテインパウダー」を取り入れてみるのも良さそうです。プロテインパウダーというと、アスリートのイメージが強く、筋肉ムキムキになりそう…と不安になる方もいるかもしれませんが、女性はホルモンの関係もあり、その心配はないとか。プロテインパウダーには主に、ホエイ(乳)プロテインと大豆プロテインがあり、水や牛乳に溶かして飲むだけでなく、フレーバーにあわせて食事やスイーツの材料として手軽に利用できるといったメリットも。山崎先生の著書には、カレーや、しゅうまいといった食事系や、ヨーグルトボウルやラムレーズンボールなどのおやつ系にプロテインパウダーをプラスするレシピの数々が。これならふだんの食事とあわせて楽しめそうです。さらに詳しく知りたい方は、様々なレシピが掲載されている書籍『プロテイン ダイエットレシピ』を参考にしてみてはいかがでしょうか。ダイエットはもちろん、からだの様々な不調を改善する働きをしてくれるタンパク質。これからもっと上手に、ふだんの食生活にも取り入れていくことを心がけていきたいですね。参考書籍:『基礎代謝UPで燃えるカラダをつくる プロテイン ダイエットレシピ』山崎志保 著 河出書房新社山崎志保 プロフィールプロテインレシピ研究家。1969年生まれ。日本ボディビル&フィットネス連盟公認指導員1級。NESTA認定パーソナルトレーナー。証券会社、健康産業新聞社を経て、2007年より日本ボディビル連盟主催コンテストにエントリー。2009年にJBBFミス21健康美 全国大会優勝ほか、実績多数。記者の経験から得た機能性素材・機能性食品の知識と、もともと趣味であったお菓子・パン作りの技術、パーソナルトレーナーとしての知識を合わせ、オリジナルレシピ『フィットネスブレッド」「プロテインスイーツ」を考案。現在、東京都台東区にてフィットネスブレッド&プロテインスイーツ手作り教室『Aries~アリエス』を主宰している。書籍関連Photo : ©安田裕『プロテインダイエットレシピ』(河出書房新社)
2015年07月22日理化学研究所(理研)は6月11日、エリンギに「眠り病」と呼ばれる感染症の病原体に特異的に結合するタンパク質が存在することを発見したと発表した。同成果は、理研小林脂質生物学研究室の石塚玲子 専任研究員、小林俊秀 主任研究員らの共同研究グループによるもので、6月9日付け(現地時間)の米科学誌「The FASEB Journal」に掲載された。「眠り病」は吸血バエが媒介する寄生原虫「トリパノソーマ」が引き起こす感染症で、病状が進行すると患者は昏睡して死に至ることが名前の由来となっている。病原体であるトリパノソーマに対する特効薬は開発されておらず、ワクチンや抗体療法による予防や治療が考えられている。しかし、トリパノソーマは抗原変異を繰り返すため、今のところ成功していない。トリパノソーマは血流中に存在するとき「セラミドホスホエタノールアミン(CPE)」という脂質を細胞表面に発現することが報告されている。脂質は遺伝子変異の影響を受けないため、抗原変異が起こりにくいため、CPEは眠り病の診断や治療薬のターゲットとして有用であると考えられる。今回の研究では、エリンギ由来の「プロロトリシンA2」「エリリシンA」、ヒラタケ由来の「オステリオリシン」という3つのタンパク質がCPEとコレステロールの複合体と非常に強く結合することを発見した。このうち、「プロロトリシンA2」と「オステリオリシン」はトリパノソーマだけでなくヒトの細胞にも結合したが、「エリリシンA」はヒトの細胞に結合せず、血流型のトリパノソーマに特異的に結合した。「エリリシンA」とトリパノソーマの結合は数分で発生するため、今回の結果は同タンパク質がトリパノソーマ感染の1次診断に利用できる可能性を示すものとなった。また、「エリリシンA」は「エリリシンB」の存在下では、細胞膜に孔をあける毒素として作用するため、この性質を使ってトリパノソーマ感染の治療に応用できる可能性がある。
2015年06月11日岡山大学は5月29日、光化学系Iというタンパク質複合体の構造を解明したと発表した。同成果は同大大学院自然科学研究科(理)の沈建仁 教授(同大光合成研究センター長)、菅倫寛 助教と中国科学院植物学研究所の共同研究グループによるもので、5月29日付け(現地時間)の米科学誌「Science」に掲載される。光化学系Iタンパク質複合体は、酸素発生型光合成において、太陽光を生物が利用可能な化学エネルギーに変換する役割を担い、水からの電子と光エネルギーを利用して、二酸化炭素を糖に変換するために必要な還元力を作り出している。高等植物の光化学系I複合体は14個のタンパク質と90個以上のクロロフィル(葉緑素)、22個のカロテノイドなどで構成されており、外側に光エネルギーを集める集光性アンテナタンパク質が4つ結合し光化学系I-集光性アンテナタンパク質複合体が形成されている。光化学系I-集光性アンテナタンパク質複合体における光エネルギーの高効率吸収・伝達の機構を明らかにするためには、同複合体の立体構造を解明する必要がある。同研究グループは、エンドウ豆の葉から精製・結晶化した光化学系I複合体を、大型放射光施設SPring-8を利用することで2.8 Å分解能で立体構造を解析。その結果、155個のクロロフィル分子を同定し、これまで分かっていなかった多くのカロテノイド、脂質分子などの配置を解明した。さらに、詳細な構造が分かっていなかった多くのタンパク質サブユニットの構造を明らかにし、光エネルギーを吸収し、反応中心へ伝達する経路を同定することに成功した。同研究グループは今回の研究成果について、光合成の機構解明や人工光合成での光エネルギー利用効率の向上だけでなく、他の巨大膜タンパク質の結晶構造解析にも重要な知見を提供することになるとしている。
2015年05月29日タンパク質摂取不足タンパク質摂取不足は皮膚機能の老化現象を招き、肌水分量の低下やコラーゲン合成が減少することが知られている。日本人はタンパク質の摂取量が不足しており、高齢者においては健康維持に最低限必要とされる量も摂取できていない人がたくさんいることが指摘されている。研究の背景牡蠣(かき)は「海のミルク」と呼ばれるようにタンパク質、グリコーゲン、ビタミン、タウリンや亜鉛などを豊富に含んでいることから滋養強壮効果があることが知られている。牡蠣の美容効果に対してはあまり注目されていなかったが、近年同様に滋養強壮効果の高いスッポンの美容効果が注目され、スッポンエキスを含む健康食品が美容のために売り出されている。東洋新薬は広島県産牡蠣エキス「まるごと濃縮かきエキス」を販売している。牡蠣のむき身を酵素分解により、濃縮エキスとしたもの。滋養強壮成分を豊富に含み、亜鉛の含有量が高いのが特徴。亜鉛の吸収促進作用も有している。研究成果マウスを使った動物実験において、タンパク質摂取不足による、皮膚の老化機能、肌水分量の低下、コラーゲン合成低下をまるごと濃縮かきエキスが抑えることを明らかにした。研究内容は日本薬学会第135年会(2015年3月25日~28日:神戸)で発表がおこなわれた。【参考】・東洋新薬プレスリリース
2015年04月01日愛知県・名古屋港水族館では、2月末より「オワンクラゲ」の展示を開始している。飼育が難しいため、見学希望者は早めの来館を促している。○緑色蛍光タンパク質を持つクラゲオワンクラゲは緑色蛍光タンパク質を持つクラゲ。同物質は生物学者の下村脩氏により1960年代に発見された。オワンクラゲの持つ緑色蛍光タンパク質を発見した生物学者の下村脩氏は、2008年に同研究においてノーベル化学賞を受賞している。同館住所は愛知県名古屋市港区港町1番3号。営業時間は通常9:30~17:30。休館日は毎週月曜日。春休み期間は無休。入館料は大人・高校生が2,000円、小・中学生が1,000円、幼児(4歳以上)が500円。詳細は公式サイトを参照のこと。
2015年03月07日岡山大学はこのほど、マラリア原虫の薬剤耐性タンパク質の働きを解明したと発表した。同成果は同大学大学院医歯薬学総合研究科(薬)の森山芳則 教授、表弘志 准教授、自然生命科学研究支援センターの樹下成信 助教らの研究グループによるもので、3月2日付け(現地時間)の「米科学アカデミー紀要」電子版に掲載された。3大感染症の1つとされるマラリアは現在でも世界で年間2億人が感染し、60万人以上が死亡している。近年、抗マラリア薬に耐性を持つマラリア原虫が出現し、対策が困難となってきている。マラリア原虫の抗マラリア薬に対する耐性の原因としてPfCRTタンパク質の遺伝子変異が知られているが、マラリア原虫の遺伝子が特殊であることや、膜タンパク質の生産が難しいことからタンパク質レベルでの解析ができず、PfCRTの働きについてはわかっていなかった。今回の研究では、PfCRTの遺伝子を合成し、岡山大学が開発した膜タンパク質の生産システムに導入。PfCRTを大腸菌に大量に作らせ、精製し、その機能を測定することに成功した。その結果、PfCRTは薬物を輸送するだけでなく、アミノ酸やポリアミンなどの栄養物質を輸送するトランスポーターであることがわかった。アミノ酸はマラリア原虫が生きていくために必須な栄養素で、抗マラリア薬はこの働きを阻害することで効果を発揮していたことが示唆された。今回、PfCRTが運ぶ物質が特定されたことで、同タンパク質を標的とした新しい抗マラリア薬の開発につながることが期待される。
2015年03月03日東京農工大学(農工大)は1月28日、タンパク質の保持・放出を制御することができる医療用シートを開発したと発表した。同成果は同大学大学院工学研究院応用化学部門の村上義彦 准教授と同大学院博士後期課程在籍の安齋亮介 氏らの研究グループによるもの。1月25日に国際専門誌「Colloids and Surfaces B: Biointerfaces」電子版に掲載された。狙った時間と場所に薬物を送り込むドラッグデリバリーシステム(DDS)では、内部に薬物を保持して、その薬物を少しずつ放出するための材料を適切に選択することが重要となる。現状では、ゲル、粒子、シートなどさまざまな形態の材料の開発が検討されている。これまで、ポリ乳酸など生体適合性が高い疎水性高分子を素材としたシートは報告されていたがタンパク質の保持・放出の制御が困難、細胞増殖効果や創傷治癒効果が高い親水性の薬物(タンパク質)を内部に保持することができない、シート内部における薬物の分散状態を評価することが難しく、材料の性能評価が困難であるといった課題があった。今回開発されたシートは、内部に性質が異なる高分子ブロックが連結した高分子で形成する高分子ミセルを組み込むことによって上記の課題を解決することに成功。高分子ミセルの組成を選択することによって、タンパク質の保持・放出を制御することが可能となった。また、高分子ミセルを内部に分散させることによって「疎水性シートの内部に親水性の空間を作り出すこと」を実現した。同研究グループはさらに、タンパク質の分散状態を評価する手法として、「拡張フラクタル解析」という解析法を考案した。シートは取り扱いが容易で、保存安定性が高いため、今回の成果は「外科手術の際に患部に、事前に準備したシートを貼り付けて、薬物を患部だけに放出することによって治療効果を高める」といった新しい外科手術の実現につながる可能性がある。また、同研究で提案された発展的フラクタル解析は医療用シートだけでなく、ゲル・粒子など他の形態の材料の内部状態評価に適用することができ、幅広い研究領域での活用が期待される。
2015年01月29日東京大学は12月9日、ヒト白血球抗原(HLA)の安定性を解析し、1型糖尿病のかかりやすさに関連するHLA遺伝子型が、安定性が顕著に低いHLAタンパク質を作ることを見出したと発表した。同成果は同大学大学院医学系研究科の宮寺浩子 助教(研究当時)、徳永勝士 教授らの研究グループによるもので、12月8日付(現地時間)の「The Journal of Clinical Investigation」オンライン版に掲載された。1型糖尿病は主に免疫系の細胞が、インスリンを生産する脾臓のβ細胞に対して免疫応答を起こすことによって発症し、特定のHLA遺伝子型を持つと1型糖尿病の発症率が高くなることが報告されている。同研究グループは、HLAのタンパク質の安定性が自己免疫疾患のかかりやすさに関わる可能性に着目し、HLAタンパク質の安定性を推定するための測定手法を構築した。その手法を用いて約100種類の主要なHLA遺伝子型の安定性を測定したところ、1型糖尿病のかかりやすさに関連するHLA遺伝子型が、安定性が顕著に低いHLAタンパク質を作ることを発見した。さらに、HLAタンパク質の安定性制御に関わるアミノ酸残基を変える遺伝子多型を同定し、その遺伝子多型が1型糖尿病のかかりやすさに強く関連することを明らかにした。同研究グループは「HLAのタンパク質安定性という、これまで着目されてこなかった特性も自己免疫疾患の発症率に大きく影響を与える可能性が示されたことは、従来の定説とは異なる発症機序が自己免疫疾患に関わる可能性を示唆します」とコメントしている。
2014年12月09日生理学研究所(生理研)などの研究グループは12月9日、遺伝性てんかんのひとつである常染色体優性外側側頭葉てんかん(ADLTE)の原因がタンパク質の構造異常に基づくことを見出し、薬剤で異常タンパク質を修復することによりてんかんが軽減することを明らかにしたと発表した。同成果は同研究所の深田正紀 教授、同 深田優子 准教授、同 横井紀彦 特任教授、北海道大学医学部の渡辺雅彦 教授、蘭Erasmus大学のDies Meijer 教授、東京大学先端科学技術研究センターの浜窪隆雄 教授らの共同研究によるもの。12月9日付け(現地時間)の米科学誌「Nature Medicine」に掲載される。同研究グループは、遺伝性側頭葉てんかんの原因遺伝子LGI1に注目し、ヒトの側頭葉てんかん患者で見られる22種類のLGI1変異を体系的に解析し、「分泌型」と「分泌不全型」の2種類に分類した。その後、「分泌型変異」あるいは「分泌不全型変異」を有する変異マウスを作成し、LGI1の変異がどのようにしててんかんを引き起こすのかを調べた。その結果、分泌型変異マウスでは、LGI1は細胞外に分泌されるが、受容体との結合が阻害されることを見出した。一方、分泌不全型変異マウスでは、LGI1がタンパク質の構造異常のため細胞内で分解されてしまい、脳の中で正常に働くLGI1が減少してしまっていることがわかった。これらの結果により、いずれの場合も、LGI1が本来の作用点である受容体と結合することができないことが、同てんかんの分子病態であると考えられるという。さらに、同研究グループは、たんぱく質の構造を修復しうる低分子化合物が分泌不全型LGI1の構造異常を改善し、分泌を促進することを突き止め、てんかん感受性が改善することを発見した。今回の成果は、タンパク質の構造異常に基づくてんかん治療に広く応用されることが期待される。
2014年12月09日東京大学と科学技術振興機構(JST)は11月21日、インフルエンザウイルスの増殖に関わる約300個の宿主タンパク質の同定し、それぞれのウイルス増殖サイクルにおける作用を決定することに成功したと発表した。同成果は同大学医科学研究所の河岡義裕 教授と渡邉登喜子 特任准教授らによるもので、11月20日付け(現地時間)の米科学雑誌「Cell Host and Microbe」オンライン版に掲載された。現在、インフルエンザの治療薬としてタミフルなどの抗ウイルス薬が使われているが、それらの薬剤は特定のウイルスタンパク質の働きを抑えるため、遺伝子の変異によって薬が効きにくくなる耐性ウイルスが発生してしまう危険性がある。そのため、ウイルスのタンパク質に作用せずにウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬の開発が求められている。ウイルスは宿主細胞内のたんぱく質の働きを利用して増殖するため、宿主細胞のタンパク質とウイルスの相互作用を抑える薬剤があれば、有効なインフルエンザ治療薬となる可能性がある。同研究グループは、インフルエンザウイルスタンパク質と結合するヒトタンパク質(宿主因子)を網羅的に探索。その結果、11種類のインフルエンザウイルスタンパク質と相互作用する1292個の宿主因子を同定した。次に、それらの宿主因子がインフルエンザウイルスの増殖とどのように関係しているのかを調べたところ、ウイルスの増殖効率に影響を与える323個の宿主因子を同定した。また、それらの宿主因子の機能を阻害する薬剤が抗ウイルス薬として有効であるかどうかを検討した結果、いくつかの薬剤に抗ウイルス効果があることが確認された。今回得られた成果は、インフルエンザウイルスの増殖や感染のメカニズムを明らかにするために有用であるとともに、インフルエンザ治療薬開発の重要なターゲットになると期待される。
2014年11月21日岡山大学は10月28日、ストレスタンパク質であるHSP90αが、哺乳類の生殖細胞におけるレトロトランスポゾン(利己的に転移する因子)の再活性化抑制機構に関与し、ゲノムの恒常性維持にも重要であることを遺伝的に証明したと発表した。この成果は、同大学医歯薬学総合研究科(医学系)免疫学分野の鵜殿平一郎 教授、一柳朋子 助教らの研究グループによるもので、9月27日付け(現地時間)の「Nucleic Acid Research 電子版」で公開された。哺乳類の生殖細胞の形成過程では、胎生期に一度レトロトランスポゾンが活性化する。その後、DNAメチル化酵素などの核内タンパク質によって再抑制されるが、この抑制機構が破綻すると精子形成不全になることが知られている。一方、細胞質ではpiRNAと呼ばれる小さなRNAが産生されおり、piRNAは細胞質でのレトロトランスポゾンmRNAの切断を誘導すると共に、核内でレトロトランスポゾン配列のDNAメチル化を誘導する働きもある。このpiRNA生合成系の破綻も精子形成不全を引き起こすことがわかっている。今回、HSP90αを欠損した胎生期のマウスの精巣を詳細に解析したところ、生殖細胞の発生過程で産生されるべきpiRNAの生成異常およびレトロトランスポゾンの抑制異常があることが明らかとなった。特に、piRNA結合タンパク質が細胞質から核内へ移行できないことから、HSP90αが細胞質の情報と核内の活動を繋ぐ重要なタンパク質である可能性が示唆された。HSP90αは昆虫や植物でもpiRNAやmiRNAなどの小分子RNAの生成に関わっているので、この機構は進化的にかなり保存されていると推察されるとのこと。同研究チームは今回の研究成果について、「ストレスタンパク質の機能の新たな一面を明らかにしただけでなく、不妊症の原因究明として今後応用できる可能性がある」とコメントしている。
2014年10月29日(画像はイメージです)中性脂肪蓄積を抑制するタンパク質AIMが肝臓においてがん細胞を選択的に除去2014年10月3日、東京大学はメタボリックシンドロームのブレーキとして働くタンパク質AIMが、肝臓に生じたがん細胞を選択的に除去することを明らかにしました。AIM(apoptosis inhibitor of macrophage)はCD36などの受容体を介したエンドサイトーシス(細胞外から細胞内への取り込み)によって脂肪細胞や肝細胞に取り込まれ、細胞内で脂肪酸合成酵素(Fatty Acid Synthase; FASN)の活性を阻害することにより、細胞内での中性脂肪の蓄積を抑制します。このAIMの作用は肥満や脂肪肝の進行を抑制します。AIMが欠損したマウスは、高脂肪食を与えた場合に同じ高脂肪食を与えたマウスよりも、肥満や脂肪肝が高度に進行するとの報告があります。AIMの血中濃度は個人差があり、年齢、性別によって変動します。またいくつかの疾患によって変動することも報告があります。したがって、メタボリックシンドロームの中核になる内臓肥満のなりやすさの指標になる可能性を秘めています。今回の研究成果細胞が癌化するとAIMは細胞内に取り込まれなくなります。その結果、がん細胞の表面にAIM蓄積します。細胞表面上に蓄積したAIMは体の免疫作用の標的となり、結果としてがん細胞が死亡することになります。AIM欠損マウスでは高脂肪食で脂肪肝を誘導するとほぼ全例が肝細胞がんを発症したのに、正常マウスでは脂肪肝の状態でとどまることで実際に発癌抑制に働くことが分かりました。さらにAIM欠損マウスが脂肪肝を発症してから、AIMを定期的に投与すると肝細胞がんの発症を予防できました。AIMの今後に関して日本人の肝細胞がんは、C型慢性肝炎から肝硬変を経過して、発症する場合がほとんどです。今回のAIMが外から与えても効果があることが、マウスで示されたことにより、AIMが肝細胞がんの発癌を抑制する可能性があります。AIMは生体内にあるタンパク質ですから、安全性も高いことが予想されるとのことです。【参考】・東京大学プレスリリース
2014年10月10日