『La Mere 母』『Le Fils 息子』製作発表会が東京・東京芸術劇場で行われ、若村麻由美、岡本圭人、岡本健一、ラディスラス・ショラー(演出)が登場した。同公演では、フランス演劇界を牽引する稀代の劇作家フロリアン・ゼレールが手掛けた『La Mere 母』『Le Pere 父』『Le Fils 息子』の"家族三部作"から『Le Fils 息子』『La Mere 母』の2作を同時上演。キャストの3名は、全く異なる2作品を同じ役名(母×息子×父)で演じることとなる。○■『La Mere 母』『Le Fils 息子』製作発表会にキャストが登場三部作の中では2018年に3人が出演する『Le Fils 息子』、そして2019年に若村が主演した『Le Pere 父』が上演され、『La Mere 母』は初上演となる。圭人は「前回の『Le Fils 息子』初演が自分にとって本当に特別な舞台でもあって、初めての舞台、俳優となっての第1本目の舞台、そして憧れだった父親と初めての親子共演で、印象に残っていることがいっぱいある」と振り返った。さらに「1番思い出に残ってるのが、初日の15分前ぐらいの緊張の中、父親が自分の楽屋まで来てですごくいい言葉をかけてくれて。『これからお前の新しい人生、新しい道が広がっていく。だから自分を信じてこれからもやっていってほしい』と。今じゃないでしょう?」と苦笑。「これから不安定なニコラという役を演じる のに、その時、満たされそうになっちゃって。『やばいやばい、これどうしよう』と思って、涙が出そうになっちゃって、印象的に残ってますね。『いや、今じゃないでしょ』っていう。でも父親は悪くないです」とエピソードを披露した。演出のショラーは3人に信頼を置いている様子。それぞれの印象を「麻由美さんは役をコツコツと構築していくタイプの役者さんだと思います。ミルフィーユの生地のように、多層的に役を重ねていく。少しずつ役が前進していき、構築して行く。たくさんお稽古をなさって、素晴らしい役を作っていくタイプの方だと思います」「健一さんはすごく勘がいい人だと思います。動物的な勘があって、理解が早い。私は健一さんと仕事をしていると、ライオンの調教師になったような気分です」「圭人さんは、3年前に『息子』で彼の舞台デビューの仕事を一緒にするという名誉があり、最初は私からいろいろなことを教えたりした記憶があるんですけれども、最終的に私の期待を超えたところまで到達していて、本当に驚かされた記憶があります。またご一緒できることが嬉しいですし、演出家にとっては役者さんがどれだけ進歩したかを見るのが、いつも感動する経験なので、そういった感動ができることと期待しています」と表した。親子の会話について話題が及ぶと、圭人は「父親の舞台を観に行ったり、ライブを観に行ったりとかして、その時の感想とかを話したりするぐらいだと思うんだけれども、何か言ってくれたっけ?」と尋ねる。健一は「今ちょうど舞台の公演中で、それに来て終わった後に話をして、それ以来2、3週間ぶりぐらいに久しぶりに会ったら、プレゼントもらいました。タンブラー。なんかちょっと嬉しかったですね。『プレゼントをくれるんだ』と思って」と照れた笑顔に。圭人は「ちょっとなんだ」と笑っていた。一方で、圭人は「最近だと若村真由美さんとは本当に何度も共演をさせていただいてて……」「真由美さんの方が、父親より会ってます」ともコメント。若村は圭人について「本当に刺激的な存在です。おそらく圭人くんが言ってた通りに、岡本健一さんより私の方が親じゃないかと錯覚するくらい。と言っても子に育てられる親という感じがするんですけど、彼は会うたびに成長していて、きっとラッドは驚くと思います」と太鼓判を押す。若村は「初舞台の時の圭人くん、翌年に『ハムレット』で(自分が)ガートルード、レアティーズで会った時の圭人くん、『ラブレター』で幼なじみの役をやった時の圭人くん。私は彼に『ひまわりのようだね』と言ったんですけど、会うたびに大きくなって大きな花が開いていってる。恐ろしいです。今回の『Le Fils 息子』再演がどんなに前回と違うかというのを多分目の当たりにして、ラッドは『若村、何やってたんだよ』と思うに違いない。そんなふうに思うくらいに彼の成長は著しくて、観客の皆様も絶対に感じているはずです」と絶賛していた。『La Mere 母』は東京芸術劇場シアターイーストにて4月5日〜29日、『Le Fils 息子』は東京芸術劇場シアターウエストにて4月9日~30日。
2024年02月20日新ドラマ「この素晴らしき世界」において、主演・鈴木京香の体調不良による降板が発表されていたが、この度、若村麻由美が主人公を演じることが決定した。平凡な生活を送る主婦が、ひょんなことから芸能界で活躍する大女優になりすまし、二重生活を強いられてしまう完全オリジナルのなりすましコメディ。若村さんが演じるのは、平凡な主婦と悪魔のような性格の大女優、浜岡妙子と若菜絹代の二役。主演交代による役名の変更はない。「科捜研の女」の風丘早月役でお馴染みの若村さんは、「夜桜お染」以来、約20年ぶりの地上波連続ドラマ主演となる。また、すでに出演が決まっている木村佳乃、沢村一樹、マキタスポーツとは初共演だ。「この素晴らしき世界」は7月、毎週木曜日22時~フジテレビにて放送予定。(cinemacafe.net)
2023年05月18日アンソニー・ホプキンスのアカデミー賞主演男優賞でも話題になった『ファーザー』(フロリアン・ゼレール監督・脚本)が、元は舞台で、日本でも橋爪功と若村麻由美主演で上演され大評判になったことを、映画を見てから知った人も多いはず。ゼレール監督は、ただいまハリウッド進出第2弾となる『サン(息子)』を撮影中だが、これもまた自身作の名舞台の映画化だ。映画の前に舞台版を見ておくと、双方のおもしろさが格段にアップすることを、舞台『Le Père 父』に続き『Le Fils息子』にも出演する若村さん自身が、証言してくれている。──橋爪功さんの父アンドレと若村さんの娘アンヌで2年前に上演され評判になった『Le Père 父』が、作者のフロリアン・ゼレール自身の監督・脚本で『ファーザー』という映画になり、アンソニー・ホプキンスとオリヴィア・コールマンの名演が話題になりましたね。拝見しました。いやもう、すごいの一言です。父も娘も、あそこまで演じていることを感じさせない境地に達せるものなのかと。ほんとに素晴らしかったです。ゼレールさんは脚色も手がけていますが、もともと演劇として書かれた作品なので、映画を見て、演劇版のおもしろさを再確認できました。ラッド(『Le Père 父』『Le Fils息子』演出のラディスラス・ショラー)演出の舞台では、父親の記憶が不安定になるのに応じて、場面転換ごとにフラッシュが入り、同じ部屋でも家具が少しずつ減っていったり、演劇エリアも前方のみから、だんだん奥行きが広がっていって、最後は何もない真っ白い空間になるんです。まるで父の脳内を表すような美術と演出で想像力をかき立てられてとても面白かったです。映画だからこそ見せられる怖さとリアルさも素晴らしかったし、映画によって舞台を反芻することもできて、貴重な経験でした。──そのゼレール作品の『Le Fils息子』を読んでみた印象はいかがですか。ゼレールらしい人間関係の描き方と思いました。すごく濃密で、家族の想いがどんどん交差していく。自分自身のことさえ思い通りにならない状態が、リアルですね。それからシーンが次々と変わっていく映像的なところも、共通していると思いました。『Le Père 父』は、父の認知症が進行するたびに、フラッシュすることで場面転換していくのがアートのように美しく、ゼレールの戯曲とラッドの演出の融合がとても素晴らしかったです。今回どんな演出になるのかは、まだわかりませんが、17場もあるのでどんな場面転換になるのかも楽しみです。──認知症の父を持つ娘のアンヌから、すでに別居している元夫ピエールとの間の17歳の息子ニコラを扱いあぐねる、シングルマザーのアンヌへと、複雑になりましたね。同名のアンヌですが別人です。前回は娘。今回は(前)妻であり、母であるという点では、女性として成長した感じがあります。仕事もあって、子供への愛情も強いけど、なかなかうまく向き合えないうえに、別れた夫との問題もある。働くママたちは、たくさんのものを抱えていますよね。アンヌは元夫ピエールへの未練もあるし、息子ニコラへの愛もあるのに、すべてがうまくいかない。そしてうまくいかないのは自分のせいではないかと、自分を責め続けているんです。ラッドも言っていましたが、ピエールとアンヌはともに弁護士なので、ロースクール時代からの長い付き合いを経て、結婚したのかもしれません。ニコラが9歳のときに親子3人でアフリカ旅行をした話が出てくるんですが、アンヌにとっては、そのころが最高に幸せだったんですね。現在はあまりにもつらく、現実逃避したくなるほどで、昔の幸せだったころの思い出にしがみついている状態です。でも、もうニコラは17歳。悩みをたくさん抱えていて、母親への態度も変わってしまった。アンヌには、最愛の息子がまったく得体の知れないものになってしまったように見えるんです。でも、どうすることもできない。悩んだ末に、元夫のところに助けを求めに行く……という場面から始まるんですが、ほんとうにつらく大変な物語です。濃密な父子を演じる岡本親子は、演じている時の方が親子にみえる──登場人物たちの抱える問題が、みなあまりにもリアルで、誰の立場になってもつらい展開。今回は岡本圭人さんと岡本健一さんという、実の父子が父子役ですが。最初に聞いたときは、驚きました。かなり濃密な父と子の話ですから、おふたりとも覚悟と勇気をもって臨んでいらっしゃるのだと思います。不思議なんですけど、ニコラとピエールを演じているおふたりは親子に見えるんですが、ふだんの健一さんと圭人さんは、親子に見えなくて(笑)。たぶんおふたりとも意識せず、ふつうにしていらっしゃるんだと思うんですけど、健一さんは自由でオープンマインド、圭人さんは礼儀正しくひたむき。とても誠実でピュアなところが、ニコラらしいです。役の方が親子っぽく見えるなんて、役者として素晴らしいことだと思います。──『Le Père 父』に続いて『Le Fils息子』もゼレールの監督による映画化が決まりましたね。そうなると、まず演劇版を観ておくといいですよ!(笑)演劇版と映画版を見比べると、同じテーマを、舞台と映画という異なる手法でそれぞれどう描くのかを見比べることができて、すごくおもしろいと思います。私が『Le Père 父』(舞台)と『ファーザー』(映画)を比べることで得たおもしろい体験を、ぜひ『Le Fils息子』で味わっていただきたいです。取材・文:伊達なつめ撮影:藤田亜弓ヘアメイク:長縄真弓スタイリスト:岡 のぞみ衣装:ブラウス(ottod’Ame/ストックマン)、パンツ(TANDEM/ストックマン)、イヤリング、リング(ABISTE)、シューズ(FREE LANCE/ストックマン)『Le Fils(ル・フィス) 息子』2021年8月30日(月)~2021年9月12日(日)会場:東京芸術劇場 プレイハウスほか、北九州、高知、能登、新潟、宮崎、松本、兵庫に巡演予定
2021年08月21日大地震により津波と原発事故が起きた町を舞台に、夫婦であるヘイゼルとロビン、そして夫婦の元同僚のローズが織りなすドラマ『チルドレン』。ロンドンはウエストエンドで注目を集めた本作の日本初演を前に、ヘイゼル役の高畑淳子とロビン役の鶴見辰吾に話を聞いた。【チケット情報はこちら】ふたりが口をそろえるのは、気鋭の劇作家ルーシー・カークウッドの戯曲の魅力だ。「登場する3人は皆、変な人達(笑)。ロビンは女好きだし、ヘイゼルは異常に几帳面だし、ローズはローズでかなり、おかしな人で。そうした俗物たちの日常が巧みに描かれると同時に、ふとした瞬間には詩的だったりハッとさせられたりするのが、素晴らしいんです」と言う高畑に、鶴見も「僕は劇の途中で登場するので、しばらく高畑さんのヘイゼルと若村(麻由美)さんのローズの会話を聞く時間があるのですが、本当に面白い。その後の僕ら夫婦のやりとりもリアルですよね。しかも、ただその場その場を楽しく盛り上げるだけでなく全てに意味があり、何かしらの伏線になり得るんです」とうなずく。高畑、鶴見ともに、栗山民也の演出は既に経験済み。信頼を寄せる演出家だ。「”栗山マジック”があるんですよ。『アドルフに告ぐ』(2015年)でご一緒した時には、”ある公演の稽古に来なくなったダンサーがいて、どうしたのかと思ったら、舞台に合わせて何日もご飯を食べないとどうなるのかを試すうちに倒れてしまい、保護された”という話をなさって我々を追い込んだ(笑)。栗山さんらしいなあと思いました」と鶴見。「ロジカルに攻めるかと思えば、意外とシンプルに”そこでエビ反りしてみようか”みたいなこともおっしゃるしね。実際にエビ反ってみるとそこがすんなり流れたりするんです。それでうまくいくなら、幾らでもエビ反りますよ!お客さんに届けるためならできることは全てしたいですから」と高畑。経験豊かなふたりにとっても、本作は大きな挑戦の場だという。「僕は60歳過ぎで孫もいる役は初めて。実年齢よりずっと上なので大丈夫だろうかと最初は不安だったんです。でも本を読んでみて、そうしたことはすっ飛ばして演じられると確信しました。本を読み直すたび、お稽古をするたび、発見が出てくるでしょうし、その発見のどこを淘汰するかという作業も必要になる。大変ではありますが、右往左往した時間が多ければ多いほど、豊かな芝居になると思うので、そこを楽しみにしたいですね」(鶴見)「私は普段、共演者の声も聞かないうちに台詞を覚えるのは、邪道だと思っているのですが、今回はそうもいかない!と早めに準備しました。読んでぱっとわかる芝居ではないから、どうなるんだろうという不安は正直あります。でも、大人3人がガチで日常を演じながら、作品の抱えているものをぶつけ合えたら、観たことのない芝居になる予感がする。そのためにも稽古場では、色々なことを探して試したいと思います」(高畑)公演は9月8日(土)埼玉・彩の国さいたま芸術劇場大ホールより。その後、 全国を周る。取材・文:高橋彩子
2018年09月04日幅広い活躍を見せる若村麻由美と元宝塚トップスターの久世星佳によるふたり芝居で、ロンドンで人気を呼んだデイヴィッド・ヘアの話題作の日本初上演となる「ブレス・オブ・ライフ ~女の肖像~」。初日を直前に控えた10月初旬、稽古場に足を運んだ。新国立劇場演劇『ブレス・オブ・ライフ~女の肖像~』チケット情報新国立劇場が贈る気鋭の演出家による「二人芝居 -対話する力-」シリーズの第1弾で、劇団「モダンスイマーズ」の作・演出の蓬莱竜太が演出を担当。人気女流作家のフランシス(久世)は英国のワイト島に暮らす、夫の長年の不倫相手だったマデリン(若村)の元を訪れる。ふたりは時に反発し、共感を覚えながら、夜を徹して愛したひとりの男との時間を語り合うが…。ロンドン上演ではマデリンをマギー・スミス、フランシスをジュディ・デンチという名女優が演じた。フランシスがマデリンの家に足を踏み入れてから翌日、出ていくまでを描き、全てはマデリン宅のリビングのワンシチュエーションで展開。昼、夜、深夜、そして翌日の朝と時間の変化が微妙な照明で表現される。時折、波音と海鳥の鳴く声が響くほかはBGMもなく、ただ女たちの会話によってドラマが紡がれていく。妻と愛人。立場も人生観も全く異なるふたりだが、ひとつハッキリしているのは、ふたりが愛した男は、もう彼女たちの元には戻ってこないということ。マーティンという名の彼は既に若い女が出来て、シアトルへと去っており、ここで何を話そうとどうしようもない。虚しさと諦観を漂わせながらも静かに、しかし不思議な“熱”を帯びつつ女たちの会話は弾む。見どころはこの会話と共に変化していくふたりの距離感。最初はコートを脱ぎもせずに、立ったままのフランシスと彼女への敵意を隠さないマデリンだが、少しずつ話をするうちに茶を飲み、ビールを飲み、食事を摂り、タバコを吸い、パジャマを借りてソファに足を投げ出すようになる。だが確実に距離を縮め、互いを以前よりも理解し、冗談まで言うものの、ふたりはベタベタと馴れ合うこともない。通し稽古を見て、ふたりがごく近い距離で肩を並べて話したり、並んで腰掛けるシーンが決して多くないことに気付かされる。互いを理解しつつも保たれる微妙な距離と緊張――やはり、ふたりは戦っているのだ。どこに行き着くこともないはずの女の戦いは最後に何をもたらすのか?いまを生きる日本の女性に響く作品になりそうだ。新国立劇場小劇場にて10月8日(水)より上演。取材・文:黒豆直樹
2014年10月06日