経済キャスターの鈴木ともみです。今回は、連載コラム「経済キャスター・鈴木ともみが惚れた珠玉の一冊」夏の特別企画・スペシャル対談の第ニ弾/前編です。対談のゲストは『世界恐慌への序章 最後のバブルがやってくる~それでも日本が生き残る理由~』の著者・大阪経済大学経営学部客員教授の岩本沙弓さんです。同書は多くの読者の共感を得ており、すでに4刷のベストセラーとなっています。公式データを基にしたファンダメンタルズ分析やテクニカル分析に加え、第三の分析・裏取り&裏読みを駆使した岩本さんならではの鋭い洞察。その奥深い分析力にあふれた内容は、私たちの知識欲を満たしてくれると同時に、心をも動かしてくれます。今回は、同書の”隠れテーマ”も探りつつ、できる限り真実を浮かび上がらせる対談を目指しました。鈴木 : お互いのコラムを読み合う仲ではありますが(笑)、対談は久しぶりですね。岩本 : そうですね。半年ぶりでしょうか。鈴木 : その間に、ベストセラーを出されまして…。すでに4刷、すばらしいですね。岩本 : 本当にありがたいことです。鈴木 : この『最後のバブルがやってくる』は、何度でも読み返したくなる経済書です。内容もかなり”ガチ”ですよね!「ガチ・ガセ=本物・偽物」で言う所の「ガチ」、そして本気の「ガチ」という両方の意味(笑)。岩本 : ありがとうございます。鈴木さんにそう言っていただけると嬉しいです(笑)。鈴木 : 「ガチ」だからこそ、浮かび上がってくる真実が、全編に渡って表現されています。そうしたなか、見えてくるのが「隠れテーマ」でして。岩本 : 「隠れテーマ」ですか…?鈴木 : はい。「ベストセラーの経済書に騙されるな!」というテーマです。岩本 : なるほど。そのように読み解いてくださるとは。鈴木 : と、言いつつも、こちらの本も堂々のベストセラーなんですけど(笑)。岩本 : …複雑です(笑)。鈴木 : 「ベストセラーの経済書に騙されるな!」の観点から読み進めていきますと、まずは、増税論議が騒がしいなか、日本の財政問題の矛盾点がみつかってきます。それは公式データを精査していけばわかることだったりしますね。岩本 : 私は、青山学院大学の大学院で、もともと経済企画庁におられた小峰隆夫教授の「経済白書を読む」という講義を受講していた時期があるのですが、小峰先生の授業は、データを基に経済的な真実は何かというアプローチが徹底されていて、とても興味深いものでした。「一般に信じられている説、ベストセラーの経済書にある説が正しいとは限らない」ということや、「データの中にこそ真の答えがある」ということを教えていただいたのです。鈴木 : どうしても、日本の債務対GDP比が220%近いとか、借金時計が1000兆円を超えたなどという情報が入ってくると、不安と焦りが募ってきますね。岩本 : もちろん、無駄な借金はすべきでないですし、中長期的な収入と支出のバランスを取ることは必要です。意味のない為替介入により、負債を増やすこともよしとすべきではないでしょう。ただ、経済学的に不適当な数字を基に、すぐに日本破綻論を掲げるのはとてもナンセンスなことだと思うのです。そもそも、基本中の基本の考え方として、「海外からの借金で成立している国」と、「自国内で収支を賄えている国」とでは、話は180度変わってきます。債務国でなければデフォルトは起きないのです。鈴木 : 岩本さんは、外為ディーラー業務の第一線にいらして、まさに現場の感覚を知ってらっしゃいます。マスメディアを通して私たちに伝わる情報に、やはり違和感を覚えるものですか?岩本 : 今は現場から離れているわけですが、いざ離れてみると、現場にいる頃には当たり前とされていたことが、市場取引の世界では全く別の解釈をされていることに驚きます。『円高悪玉論』もそのうちのひとつです。実際、日本が輸出大国なのかどうかを調べていけば、正しい結果が導き出されるはずなのです。鈴木 : 数で言えば少数の大手輸出企業=国際優良企業ですが、「円高に困っている」という声は大きく伝わってきます。例えば新聞などでよく目にする「1円円高が進むと、数百億円、あるいは数千億円の損失が出る」といった試算です。岩本 : 円高になると必ず登場する話題ですね。これも正確な数字と事実を知る必要があります。鈴木 : 『円高悪玉論』については否定できるデータが次々と出てきますね。なのに、当たり前のごとく根づいていている。まるで『円高=悪』という公式を浸透させたい勢力が存在するかのようですが…。岩本 : 実際、大手輸出企業のなかには円高を理由に下請けの中・小企業に対して支払うべき額から消費税を免除してもらうケースも出てきているようです。つまり、中・小企業側は消費税分の損失を被ることになります。一方、親会社である大手輸出企業側は海外の取引先に対してもともと消費税を払う必要はないわけですから、下請けの中・小企業に払う消費税分だけ得することになる。鈴木 : なんだか『円高悪玉論』はあらゆるご都合主義の言い訳にされている感じですね。さらにまだまだありそうな…。岩本 : そうなんです。もっと大きなスケールで『円高=悪』のプロパガンダが存在していると言えます。詳しくご紹介しましょう。(後編に続く)【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年08月02日経済キャスターの鈴木ともみです。今回は、連載コラム『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた珠玉の一冊』夏の特別企画・スペシャル対談の第一弾の後編です。対談のゲストは『カリスマ出口汪の人生を変える! 最強の「話し方」塾』の著者・予備校講師の出口汪さんです。仕事ができる人、魅力のある人は、やはりそれなりの「話し方」が身についているものです。話し方一つで人の印象は大きく変わります。人を説得する、人を引きつける、人から好印象を持たれる「ワンランク上の話し方」とは…? 今回も前編に続きビジネスパーソンの皆さんに向けて「話術の極意」をお伝えしたいと思います。鈴木 : 上手な話し方の第一歩は、他者意識を持つこと、そして論理的に話すこと。読者の皆さんもだいぶ整理できたかと思います。では、逆に他者意識を持たない「迷惑な話し方」というのは具体的にどのような話し方を指すのでしょうか?出口 : 例えば、前置きが長い話し方などです。本人にしてみれば、丁寧な話し方をしているつもりかもしれませんが、聞いている人にとっては、これほど迷惑な話し方はありません。もし、それが会議の場であるならば、長々と前置きしている人は、そこに出席している人全員の時間の合計を無駄にしていることになります。前置きは短くするべきです。また、頭に浮かぶ順序で話す人も迷惑な話し方の典型です。聞いている人は、話し手が何を話すのか、全く見当がつかなくなります。しかも、言葉は発せられたらすぐに、次々と消えていきます。相手(聞き手)が他者であるという意識を持って論理の順序で組み立てて話すことを心がけるべきです。鈴木 : 「出だしが重要」というのはとてもよく理解できます。私も日本FP(ファイナンシャルプランナー)協会の認定講座『FP会話塾』で、「出だし=頭サビ」の重要性について解説しています。話し方においては『結・起・承・転』の順序が大切だと。文章の世界では、『起承転結』が基本とされていますが、話し言葉で伝える際には『結』をまず最初に持ってくることが肝心なのだと思います。そして『結』の後に『起承転』、場合によっては『結・起承転・結』。こう解説すると、受講生の皆さんも納得して下さいます。出口 : それはわかりやすい表現ですね。確かに『結』を出だしに持ってくるというのは大切ですね。話の順序や組み立て方が上手になれば、自然と伝わりやすい話し方になっていくはずです。そこがクリア―できたならば、次は話のネタや内容です。私が予備校講師として数多くの講義を成立させることができたのは、さまざまな話(ネタ)のストックをためることができたからです。ストックが自分の中で蓄積されると、このストックを話せば上手くいくという自信も出て、堂々と落ち着いて話をすることができます。ぜひ、ストックノ―トを一冊持つことをおすすめします。そして、話のネタ=ストックは、三回話すと良いと思います。鈴木 : 数多くのストックを持つことで自信にもつながり、人前で話すときもあがらないようになってくるのでしょう。出口先生はめったにあがることなんてないのでしょうね。出口 : 今となっては、人前で話すことであがることはなくなりましたが、もともとは私自身もあがり性だったのです。人前に出るとしどろもどろになりました。鈴木 : それは意外です。どのようにして克服されたのですか?出口 : やはり経験値を上げることが大切です。プロの話し手でない限り、人前で話すときに緊張しない人なんてなかなかいません。あがるのは、(1)自信がない、(2)経験不足、のどちらかが原因です。鈴木 : 私も自分の講義の中で、あがる原因は三つあると説明しています。(1)結果に対するあがり(準備不足のため自信がない)、(2)状況に対するあがり(人前で話すことの経験が少なくて不安)、そして(3)は、(1)(2)が混在するあがり。やはり経験を積むことが大切ですよね。出口 : なるべく人前で発言したり話したりする機会を増やすこと。経験の量が満たせない場合は、質を高めることが必要です。だからこそ、打ち合せや会議の場では積極的に発言するように努めましょう。鈴木 : お話をうかがっていると、「話し方のプロ」である出口先生も、もともとはあがり性で、他者意識に欠けた「迷惑な話し方」をされていたのだなぁと、ある意味ホッとします(笑)。そうしたなかで「論理」が後天的に身につくものなのだということも、出口先生ご自身が実感されてきたわけですよね。出口 : そうなのです。「論理」というのは言葉の使い方の技術であり、「論理的な話し方」というのは、もともとの頭の良さとは関係なく、後から習得できる技術なのです。だからこそ、あらゆる人が身につけることができる武器になるわけです。ぜひ、その努力を惜しまないでほしいと思います。鈴木 : 努力という点では、出口先生もかなり一心不乱に邁進された時期があったのですか?出口 : 私の場合は、予備校講師になって2、3年目の頃だったと思います。まさに死に物狂いの時期でした。鈴木 : 他者を意識した「論理的な話し方」を身につける訓練というのは、今から始めても遅くないわけですよね。出口 : はい。後天的な技術なのですから。ですので、ビジネスパーソン(特に若い方々)にはその訓練を積んでもらいたいと思います。私たちは死ぬまで生涯会話をし続けます。無自覚なうちにしているかもしれない「迷惑な話し方」を少し見直してみてはいかがでしょうか?ちょっとした工夫、ほんの少し会話に論理という技術を持ち込むだけで、仕事の進み方も、人生の方向性もきっと大きく変貌するはすです。鈴木 : 感情語ではなく、互いに論理語で話すようになれば、会話のキャッチボールもスムーズになり、有意義な会話の時間が増えるのだと思います。と同時に、表層的な会話が減り、互いの理解度が高まって、真の人間関係が築きやすくなるのかもしれませんね。私も、日常から「論理的な話し方」を意識して過ごしたいと思います。出口 : ただ、時には親しい人との間での「感情語」や「愛撫語」も必要だと思いますよ!鈴木 : そうですね(笑)。上手にオン、オフと、言葉をコントロールしていければ会話そのものを楽しめるようになりますね。出口先生、今回は実践的なお話をありがとうございました!出口 : ありがとうございました。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年07月19日経済キャスターの鈴木ともみです。今回は、連載コラム『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた珠玉の一冊』夏の特別企画・スペシャル対談の第一弾(前編)です。対談のゲストは『カリスマ出口汪の人生を変える! 最強の「話し方」塾』の著者で、予備校講師の出口汪さんです。仕事のできる人、魅力あふれる人は、やはり好印象の「話し方」が身についているものです。話し方一つで人の印象は大きく変わります。人を説得する、人を引きつける、人から好印象を持たれる「ワンランク上の話し方」とは…? 今回はビジネスパーソンの皆さんに向けて「話し方のプロ」が伝授する”話術の極意”をご紹介したいと思います。鈴木 : 出口先生、お久しぶりです。12年ぶりの再会ですね。出口 : お久しぶりです。私がラジオ講座を担当していた頃以来ですね。私の(現代文)ラジオ講座の番組プロデューサーだったのが鈴木さんでした。当時は本当に多忙でしたし、毎日喋り続けていました。予備校の650人教室はすべて満杯、90分の講義を一日四回、六時間以上も喋り続け、その合間をぬって、ラジオ講座の収録に臨んでましたね。鈴木 : 一日に6時間以上も喋り続ける職業なんて、なかなかないですよね。出口 : そうですね。でも、それを続けてきたからこそ、私はあることを自覚するようになったのです。それは、私は『話し方のプロ』であるということです。鈴木 : 私が出口先生と出会った時には、すでに「話し方のプロ」という印象でした。昔から話すことがお得意だったのですか?出口 : いいえ、もともとは話をするのが苦手でした。私はどちらかと言うと、感覚的な人間でして、今でも家族や親しい人からは、何が言いたいのか分からない! と文句を言われます(笑)。きっと、私の頭の中にスイッチがあって、オンになれば論理的で伝わりやすい話し方となり、オフになれば感覚的でラフな話し方になるのだと思います。鈴木 : 私が出口先生と会話をするときは、常に明快かつ論理的でわかりやすいというイメージです。きっと、スイッチがオンになってらっしゃるのでしょうね。出口 : そうなのだと思います。本来、感覚人間である私が、「話し方のプロ」として一応生業を立てることができたのは、スイッチをオンにし、『論理』という武器で伝達する方法を持ったからなのだと思います。この方法は、訓練によって後天的に習得できるのです。鈴木 : 後天的…という事は、論理的な話術は誰にでも習得可能ということになりますよね。ズバリ、「論理的に話す」「論理語で話す」ために必要なこととは何ですか?出口 : まずは、”他者意識”をしっかり持つことです。それが上手な話し方の第一歩となります。出口 : 実際、他者意識を持つことができずに話している人は、私たちの周りにもたくさんいるのです。何を言ってるのかわからない、意味不明な話し方をしている人や、一方的に喋り続ける人、会話のキャッチボールが成立しない人etc…私はこういった話し方をする人のことを「迷惑な話し方」をする人と表現しています。鈴木 : 「迷惑な話し方」…なかなか本人は気づくことができないのでしょうね。実は、私も日本FP(ファイナンシャルプランナー)協会の認定講座「FP会話塾」で「好感度アップの話し方」について講義しているのですが、そこで最初に受講生の皆さんに教えているのがこの「他者意識」についてです。まず、「人の話を聞くことは疲れる」ことなのだと伝えています。聞き手は目(視覚)を使い、耳(聴覚)を使い、頭(理解力)を使いながら、話を聞く。これはとても疲れる作業です。話し手は、聞き手の状態を理解し、聞いてもらうための努力と意識を持つことが大切です。さらに、「コンテクスト=文脈」についても触れています。コンテクスト能力とは、聞き手側が、話し手の話す内容の文脈や背景を類推しながら理解する力のことを指します。日本人はこのコンテクスト能力が最も高いとされていますよね。その順番はアジア人>アラブ人>欧米人なのだそうです。つまり、日本人は聞き手としての能力が高いということです。それにより、話し手が「迷惑な話し方」をしていても、聞き手の能力によって、なんとなく会話が成立してしまう…。日本人が論理的に話すことが苦手な背景には、一方で、聞き手としての能力が高いという側面もあるのだと思います。出口 : よくわかります。思いやりは日本人の特性ですから、相手がいかに「迷惑な話し方」をしていても、それを理解してあげようとする姿勢が常にありますよね。どんなに話し手の話が抽象的で、他者意識に欠けた感覚的な話し方であっても、それほど不穏な空気にならない。ただ、そうは言っても、結局、話し手として、「感覚的な話し方=感情語での話し方か」ら抜け出せないままでは、話術はいっこうに上達しないのです。鈴木 : 出口先生が説く「論理」の基本はとてもわかりやすいですよね。同書では、「話し方」に必要な三つの論理が記されています。『イコールの関係』『対立関係』『因果関係』の三つです。これらの言葉の規則を知れば、「迷惑な話し方」から論理的な話し方へと変わっていくことでしょう。ぜひ読者の皆さんには、第一章「「3つの論理」を意識するだけで話し方はガラリと変わるー「伝わる話し方」に必要な論理の基本」をじっくりお読みいただき、最強の話し方を習得してほしいですね。(次回、後編へ続く)【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年07月12日経済キャスターの鈴木ともみです。連載『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊』では、私が読んで”これは”と思った書籍を、著者の方へのインタビューを交えながら紹介しています。第18回の今回は、山口義正さんの『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』(講談社)を紹介します。「これは真実である。情報提供者を秘匿するため、登場人物のうち「深町」だけを仮名とし、一部の人物・固有名詞については名を伏せたが、すべて実在の人物、企業等である。日時や場所についても特段の事情がない限り、発表資料や電子メールのやり取りの記録などから可能な限り正確を期した」。今回ご紹介する『サムライと愚か者暗闘オリンパス事件』は上記のような「ことわり書き」から始まります。今やオリンパス事件と言えば、日米欧の捜査当局が大規模な動きを見せた一大経済事件として、誰もが知っている事実です。であるにもかかわらず、敢えて「ノンフィクションの書」であるという「ことわり書き」を記していることに、私は最初、疑問を抱きました。しかし、同書を読み進めるうちに、その疑問は解かれ、確かに「ノンフィクションの書である」という「ことわり書き」が必要なのだ、という思いを抱くようになっていきます。登場人物たちの個性豊かなキャラクター、事件の発端となる情報提供から次第に明かされていく東証一部上場企業・オリンパスの重大な秘密、「個人の力」が玉突き状態で結びついていき、大企業の経営者を追及していくストーリー…。それはまるで、筋書きのある小説を読んでいるかのようで、もしかして大部分が脚色なのでは? と思わずにはいられないほど起伏に富み、緊迫感に満ちているからです。実際、著者である山口義正さんご自身も、取材した際にこんなふうに語って下さっています。「わざわざ『これは真実である』と書いておかなければ、そうとは信じてもらえないと思ったんです。話の展開があまりにもジェットコースター的だからです」。ちなみに「これは真実である」という始まり方は、映画『大脱走』の冒頭部分へのオマージュという意味も込められているのだそうです。映画にも詳しい山口さん曰く、話の展開は『大脱走』というよりもむしろ『スティング』に近いとのことですが… よって、同書は紛れもなく「ノンフィクションの書」です。それを意味する「ことわり書き」を頭に入れ、そこを改めて意識しながら本書を読み進めていくと、「個人の力」を信じるようになり、心の中に「勇気の翼」が生えてきます。と同時に、私たち一人ひとりの日本人が形成する「日本社会の弱さ」も浮かび上がってきます。まずは同書のタイトル解説も記されている『あとがき』からご紹介しましょう。「正義」を心の中心の近くに置く個人の情報提供によるスクープ記事に別の個人が共鳴し、さらなる個人の連鎖によって世界を揺るがす経済事件が明るみになる。個人がつながりながら、重大な秘密を解き明かしていく様子は、まるで推理小説を読んでいるかのようです。しかも、個人一人ひとりの個性が鮮明です。まずは、その登場人物の一人である「深町」氏についてご紹介しましょう。彼は「オリンパス事件」における最初の情報提供者であり、著者である山口さんの友人(カメラ仲間)です。上記・プロローグに記されている深町氏による旅先での告白。この告白を機に、「オリンパス事件」の全貌が明かされていくことになります。深町氏からの情報提供はさらに続き、ついに、山口さんはオリンパスの取締役会資料を始めとする内部資料を手にし、巨額の損失処理について追及し始めます。その様子は、『第一章「潜行取材」のしかかる秘密の重さ』に詳細に記されていますので、ぜひ、じっくりお読みください。企業会計について、今一度整理できる内容にもなっています。さて、ストーリーの最初の登場人物である深町氏は、まさに「暗闘オリンパス事件」の出発点となる重要人物です。このような重要キャラクターは他にも次々に登場します。例えば、月刊誌『FACTA』編集主幹の阿部重夫氏。阿部氏のジャ―ナリスト魂がこのストーリーを盛りたて、厚みを増させていきます。山口さん(当時は匿名)の執筆による「FACTA」2011年8月号における「オリンパス事件」スクープ記事の掲載。ここから玉突きのような連鎖が始まります。そしてこの連鎖は、あのマイケル・ウッドフォード元社長が登場人物として加わることにより、ギアチェンジし、さらに加速化していくのです。こうしてストーリーも佳境に入ってきます。続きの話もかなりの見せ場。ウッドフォード元社長と、菊川元会長が直接対峙する場面です。舞台はランチミーティング。よくぞここまで再現できたものだと感心せずにはいられない、迫力あるシーンとなっています。まさに「サムライが挑む一騎打ち」のシーンとでも言いましょうか。私は何度も読み返しました。ぜひとも、読んでその様子をイメージしていただきたいシーンのひとつです。そして、そのやりとりから約2カ月後、ウッドフォード氏は社長職から解任されることになります。この取締役会にて解任されたウッドフォード氏は、すぐさま英国に帰国すると、フィナンシャル・タイムズやウォールストリート・ジャーナルなどの経済誌へオリンパスが抱える問題について語り、英国SFO(重大不正捜査局)へも通報。オリンパス問題は、一気に海外で急展開を見せ始め「オリンパス不正疑惑事件」へと重大化していきます。世界中の注目が集まるなか、本事件のスクープを放った山口さんのもとに、新たな人物が現れます。この人物がとても興味深い。米国人ながら肩書は僧侶。その僧侶「ミラー・和空」氏は、第四章のタイトルにおいて「怪僧」と評されているほど、個性豊かな人物です。先程触れたウッドフォード元社長と、菊川元会長が直接対峙するランチミーティングの場面を克明に再現できたのも、このミラー・和空氏からの情報提供によるものでした。「果たしてミラー・和空氏とはいったい何者なのか?」「ウッドフォード氏とはどのような関係にあるのか?」「山口さんとはどのようにして知り合ったのか?」そのあたりについては『第四章「怪僧登場」 暗闘の記録』に書かれています。とても魅力的な重要人物です。ミラー・和空氏から提供されたまさに「暗闘の記録」をもとに、紆余曲折の激闘の日々の中、山口さんの取材も、事件の追及も進んでいくことになります。そして、同書に記されている一連のストーリーには、この記事において紹介しきれない「個人」たちがまだまだ登場します。一人ひとりの「個人」が次々に連鎖していく過程、まさに「点」が「線」となり、連なっていく物語が描かれていくのです。2011年10月26日。菊川会長兼社長は退陣します。その頃、オリンパスを巡る騒ぎは一段と激しさを増し、野田佳彦首相も英フィナンシャル・タイムズでのインタビュー記事で「今回の騒動はルールに従う市場経済国として日本の評価を貶める恐れがある」と懸念を表明、海外に次いで日本政府も重大事件として認知するようになってきました。さらに、金融面でも、外資系証券会社はオリンパスの投資判断レポートの作成を停止し、金融取引を見合わせ始めます。オリンパスの格付けも引き下げられます。そして11月8日。ついにオリンパスが膝を屈する日がやってきます…。年が明けて2012年2月16日。東京地検特捜部と警視庁は、菊川元会長兼社長を始め7人を金融商品取引法違反(有価証券報告 書の虚偽記載)の容疑で逮捕します。逮捕者のなかには、野村証券OBの横尾宣政(現・被告)も含まれていました。横尾被告はオリンパス社外の人物です。詳しくは、同書の第六章『野村証券OBたち』に書かれています。ビジネス・経済・マーケット関連の書籍では、なかなか明かされない事実が記されています。個人的には、金融関係の方々にこそ、お読みいただきたい章と言えます。さて、このように「オリンパス事件」は、会社を私物化する経営者、そこに群がる闇の人物たちによってもたらされた許されざる経済事件です。と、同時に『「個人」の力こそが全うな価値の源泉なのだ』ということを教えてくれた事件だったようにも思います。その点について、スクープした記者であり同書の著者でもある山口さんに直接うかがいました。「私は、この事件を通して『個人』の力はバカにできないという認識を新たにしています。この本に登場する人物、つまり私に情報提供してくれたり、協力してくれたりした個人たちは、今でもお互いに全く面識のない人たちです。そんな個人の力が連鎖して、事件の全貌をほぼ明らかにすることができました。個人の力は世の中、社会を突き動かす原動力であり、価値の源泉なのです。日本社会では、どうしても『無事是名馬』、事なかれ主義の『和』を重んじ、自分がおとなしくしていればうまくまとまるという価値観が根づいている面があります」。「実際、オリンパスの社員も、皆おとなしく親切で、いい人の集団という社風なのだそうです。でも、組織が暴走しているなか、皆が事なかれ主義で『和』を乱すことを恐れていたら、誰も暴走を止めることはできない。私の好きな言葉に『アマは和して勝つ、プロは勝って和す』という名言がありますが、まさに、個人一人ひとりが立ち上がり、力を発揮した先に、健全で高尚な『和』が生まれるのだと思います」。健全で高尚な「和」の源泉は全うな個人の力にある。確かに山口さんのおっしゃる通り、全ての価値を形成する上での基本はそこにある気がします。さらに源泉という意味では、人の心のなかに存在する「正義」も挙げられるのではないでしょうか。その点についても伺いました。「実は、この本の本文には『正義』という言葉は全く出てこない。『あとがき』でやっと使った言葉です。正義というと、どうしても青臭く気恥ずかしく…この言葉を使うことによって、事実や主張が安っぽい伝わり方をしてしまう気もします。さらに『正義』という言葉を禁じ手としたのは、『正義』は『真理』よりも一段低いところにあると思うからです。ですので、記事や本文では敢えて使っていません。ただ、ジャーナリズムの出発点は、やはりこの『正義』からスタートしなくてはいけないのだと思います。それはジャーナリズムの世界に限らず、世の中、社会全てに言えることかもしれない」。「この本の『あとがき』で、私は夏目漱石の小説『坊ちゃん』のワンシーンを引用しています。主人公の坊ちゃんが生徒から悪戯されたとき、生徒をどう処分するかを決める職員会議で、坊ちゃんの盟友である山嵐が弁じたてるシーンです。『教育の精神は学問を授けるばかりではない、高尚な正直な、武士的な元気を鼓吹すると同時に、野卑な、暴満な悪風を掃蕩するにあると思います』。この台詞には、『サムライ』の根本、基礎要件が託されています。『サムライ的なるものは何か』をはっきりと描いた言葉であり、今の日本人に足りないものを過不足なく表現しているのだと思うのです。つまり、ウッドフォード元社長が私に手向けた言葉『サムライ』とは『高尚で正直で元気な者』を指す言葉だということです」。そもそもこの「サムライ」という言葉は、日本人ではない英国人のウッドフォ―ド氏から発せられた言葉です。今回の「オリンパス事件の解明」は、たまたま英国人のナイトが経営陣の一員であったことが、大きく影響していますが、問題が生じたらすぐに隠し、それを事なかれ主義のまま、予定調和な結末に導こうとする日本人のみの集団であったとしたら、いったいどのような結末を迎えていたのでしょうか? その点についても山口さんの見解を伺いました。「英国人であるウッドフォード元社長が経営陣にいなかったら、今回の問題は、事なかれ主義のもとに、大きな事件にもならず、うやむやにされていたかもしれません。日本人と欧米人との差は、問題があるとわかった時に、どう対応するか、その問題を隠し続けるのかどうかに表れます。実は、この本のタイトルの元になったウッドフォード元社長の問いかけ『日本人はなぜサムライとイディオットが極端に分かれてしまうのか』について、最初は私も『単純な二元論で片付けられる問題なのだろうか』と違和感を持ちました。でも、今回の『オリンパス事件』からもわかる通り、日本人はこうした二元論を避けることで、『誰に責任があるのか』『本来、どういう解決策が求められるべきだったのか』をうやむやにしてしまいがちで、そこに問題の根源があるのだとわかりました」。「結局、日本社会においては、不正を働いた旧経営陣と不正を明らかにしようとしたウッドフォード元社長が喧嘩両成敗という結果になってしまった…。私たちは、そのことに対してもっと違和感を覚えるべきだと思います。欧米であれば違った判断や処分が下されたことでしょう。この点における日本(日本人)と欧米(欧米人)との違いは決定的です。ただ、『個人』ということをベースに考えれば、私たち日本人一人ひとりの心のなかにも『サムライ』は住んでいるのだと思います。今もなお、オリンパスの不正を正したいという個人からの情報が寄せられ続けていることからも、それは確かです。一方で、密告社会化することを危惧する声もありますが、限りなく黒に近いグレーを発見した時に、グレーゾーンとして見てみないフリをするのか、膿を出し切ることで健全な成長、発展へとつなげていくために立ち上がるのかは、『サムライ』としての個人の正義感に委ねられるのだと思います。私もジャーナリストとして『サムライ』でありたいと思っています」。私自身、「サムライ」という言葉は、好きな言葉です。本書を読み、いざという時には「サムライ」として振る舞いたい、そんな勇気の翼を与えてもらえた気がしています。ただ、山口さんご自身のなかでは、もっと別の感覚をお持ちのようです。「この本は、勧善懲悪の話ではありません。『読者の皆さんも、すっきりとした読後感を感じていないのでは?』という気がしています。というのも、真実をできる限り追及しながら、あいまいな形で事件が幕引きとなってしまった…。『オリンパス事件』は日本社会・日本人を象徴する事件だと言えますが、それを完全に打ち崩すことはできなかった。その意味では、私は『敗者』かもしれません」。勧善懲悪にはならなかった…その点では「敗者」。ジャーナリスト魂は、そういう感覚と心得を持った人に根付くものなのでしょう。日本を象徴する事件「オリンパス事件」は、決して終わった事件ではなく、まだまだ続いている事件であると言えます。今回の事件では、たまたま英国人のナイト(騎士)が経営陣の一員であったことが、大きく影響していますが、問題が生じたらすぐに隠すことに注力しようとする日本人・日本社会の体質が変わらない限り、似たような事件はいくつも浮上してくることでしょう。すでに日本社会のあちらこちらに潜在している事なのかもしれません。経済事件に関心のない方でも、「個人の力とは?」「日本人とは?」「日本社会とは?」など、根本的な命題を改めて見つめ直すことのできる一冊です。映画を観ている、小説を読んでるかのごとく、共感せずにはいられないノンフィクションストーリー。まさに珠玉の一冊です。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年05月10日経済キャスターの鈴木ともみです。連載『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊』では、私が読んで”これは”と思った書籍を、著者の方へのインタビューを交えながら紹介しています。第17回の今回は、阿部祐二さんの『「恐妻家」が成功する22の法則』(講談社)を紹介します。「たゆまぬ努力」「謙虚さ」そして「偉大なるメンター(指導者)との出会い」。これらは、この連載を通して出会った多くの賢人たちに共通する3つのキーワードです。世界を舞台に累計5,000億円を運用してきたカリスマファンドマネージャーさん、一部上場企業の女性取締役となり、喜寿を迎えられた今、さらにニューヨークへの進出を計画中の美容家さん、時価総額世界トップ群の米国企業の会計、コンサルタントを手掛けてきた国際公認会計士さん。各業界で、日本を代表する実績とキャリアを積んでこられた方々には、これら3つの共通項が存在します。成功者となった今となっては、これらを実践してきた、続けてきた、という表現の方が正しいのかもしれません。「たゆまぬ努力」「謙虚さ」「偉大なるメンター(指導者)との出会い」。現役プレーヤーとして仕事人生を歩んでいる限り、この3つキーワードを意識しながら進んでいけば、きっと望む道は拓けてくるのだと思います。今回は、まさにその道を真っ直ぐに進んでいる方が書かれた書籍をご紹介したいと思います。タイトルは『「恐妻家」が成功する22の法則』。著者はリポーターの阿部祐二さんです。阿部さんは『行列のできる法律相談所』(日本テレビ)「第7回気の毒な夫No.1決定戦」でチャンピオンに選出されたこともあり、読者のなかには「恐妻家=気の毒な夫」というイメージを持ってらっしゃる方も少なくないかもしれません。ですが、この本を読めば、阿部さんが単に、妻に操られる気の毒な夫ではないことがおわかりいただけるはずです。阿部さんにとって奥様は「偉大なるメンター(指導者)」であり、奥様との関係は、コーチと選手、師匠と弟子、上司と部下etc…。「恐妻家だからこそ、うまくいく仕事と人生」の成功法則がこの本には数多く詰まっています。まずはその具体例からご紹介しましょう。このエピソード、まさに夫婦のハートウォ-ミングストーリーです。阿部さんの奥様はきっと、どのようなタイミングで、どのような促しをすれば、一番阿部さんの心に響き、奮起させることができるのかを心得ていたのだと思います。これぞ良きメンター(指導者)。さらに、このエピソードを通してわかるのは、阿部さんご自身が、メンターからの叱咤激励を「謙虚」に受け止め、その後、家庭教師センターの事業で必死に「努力」するようなタイプだということです。奥様はその点もしっかりと見抜いていらっしゃいます。実にお見事!その「謙虚さ」と「努力」、これらのキーワードについて、阿部さんはどのようにお考えなのでしょうか?直接うかがいました。「妻は僕に対して、『謙虚でいなさい』とよく言います。僕自身もそうでありたいと思っているのですが、時々、その姿勢を忘れてしまうと、妻から鋭い指摘を受けるのです。その度に、『謙虚であること』を忘れてはいけないなと実感します。また、もともと一度凝り始めると、集中し没頭するタイプなので、端から見れば、僕は相当な努力家に見えるようです。学生時代も、極めようと思ったスポーツはとことん練習に励み、結果を出してきましたし、勉強も没頭しすぎて、親から『お願いだから、体のことも考えて勉強しないでくれ』と言われてしまうほど勉強しました。今も日々の仕事に明け暮れるなか、毎朝のランニングを続けてますし、時間が許せば読書もします。『努力』することが苦にならない性格、体質なのかもしれません。ただ、そんなふうに、ともすると没頭しすぎてバランスを欠いてしまう恐れのある僕のことを、コントロールしてくれているのは、やはり妻なんです」これぞまさに理想的なパートナーシップ! その関係性を裏付けるエピソードはさらに続きます。ご紹介しましょう。この連載でも何度も登場している「チャンス」という言葉。阿部さんも「チャンスの神様の前髪」をつかまえようと、必死になっていた時期があったようです。当時、「チャンスの神様」は阿部さんのところではなく、奥様のところに降りてきた…。果たして今も同じなのでしょうか?うかがいました。「今であれば、『チャンスの神様』が僕のところにも降りてきてくれると思います。ですので、リポーター業と併せて、役者の仕事をさせていただくことになっても、相乗効果というか、何かしら納得のいく役目を果たせるような気がするのです。もちろん、リポーター業は、僕にとって欠かせない仕事ですし、天職だとも感じています。ただ、型にはまることなく、常に自分を追い込み、自分を試し、チャレンジしていきたいという意気込みがあります。その意気込みやパワーを発揮するのと同時に、謙虚さを持ち続けていれば、これからもやりたいと思った仕事でチャンスをもらい、充実した日々を妻(家族)と一緒に送っていけるだろうと感じています」これからもまだまだ続く夫婦の物語。最後にその愛情あふれるシーンをご紹介しましょう。その場面は「あとがき」に記されていました。一時期は大ケガを負い、休養を余儀なくされていた阿部さんですが、今ではすっかりお元気! インタビューに応じてくださった際にも”正のエネルギー”を静かに放っていらっしゃいました。「キング・オブ・リポーター」の道を極めるべく、引き続きのご活躍を心よりお祈りしたいと思います。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年04月26日経済キャスターの鈴木ともみです。今回は、連載コラム『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた珠玉の一冊』春の特別企画・スペシャル鼎談の後編です。日頃、支えて下さっている多くの読者の皆さまに対して、その恩返しができれば、という思いから生まれた企画です。出会った賢人の方々の中でも、特に心に浸透する栄養を与えて下さった方二人をゲストにお迎えし、お話をうかがっています。鼎談のゲストは美容家・メイクアップアーティストの小林照子さんと、公認会計士の平林亮子さんです。お二人の歩んできた時代背景や育った家庭環境は異なりますが、小林さんの著書『人を美しくする魔法』(マキノ出版)、平林さんの著書『競わない生き方』(ワニブックス新書)には、共通する人生成功術、若い社会人の皆さんやビジネスパーソンの方々の心に響くメッセージが数多く詰まっています。戦前に生まれ、戦中・戦後、生きることに必死だった10代を過ごしたのち、高度経済成長期に社会人となり、右肩上がりの仕事人生を歩んでこられた小林さん。一方、安定成長期に生まれ、バブル経済期を含め豊かな時代に幼少期&思春期を過ごすなか、学歴主義の優等生として生きる苦しみから、時には自殺願望をも抱いていたという平林さん。仕事人として、女性として、颯爽と美しく輝く今のお二人の姿には、各々に葛藤のなかで生きた10代、そしてそこで確立した『芯』の「強さ」と「自信」が表れています。10年後、20年後、30年後、40年後、50年後…。あなたが「好きと言える自分」「人として豊か」でいられるためには…。美と人生の達人たちがあなたに贈る珠玉のエールの数々。まさに、あなたの人生を応援するスペシャル鼎談です! 「前編」はこちら→『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊 第11回 小林照子氏著『人を美しくする魔法』』『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊 第1回 平林亮子氏著『お金が貯まる5つの習慣』』鈴木 : お二人とも、さまざまな人との出会いに日頃から感謝するという心がけをお持ちです。そうなると、やはり率先して出会いの場を求めにいく努力をされてるのですか?小林 : 一つひとつの出会いを大切にしてるのは確かですが、私はパーティみたいに一気に多くの人と顔を合わせる出会いの場がとても苦手なの。平林 : えー意外です! 小林さんほどの方であれば、数多くの招待状が届くでしょうし、参加する機会も多いのでは?小林 : たくさん招待いただくけれど、必要なご挨拶をさせていただいたら、すぐに会場を出てしまうことが多いんです。だって、必死に名刺交換をしている人を見かけるけど、名刺をもらったというだけで、貴重な関係につながるわけではないし、偉い人の名刺を集めたところで、何の前進にもならないでしょう。平林 : 心強いお言葉!実は私もパーティが苦手なんです。鈴木さんとは、パーティ会場で出会ったのですが、皆さんが名刺交換に励むなか、パーティ苦手組の私たちは端っこで二人だけで食事をしてました(笑)。鈴木 : そうなんです。平林さんもそうだと思いますが、私も職業柄、ありがたいことにパーティに招待していただくことは多いのですが、お世話になってる方々にご挨拶をさせていただいたらすぐに会場を後にします(笑)。会場内に漂う、なんとか一斉に知り合いを増やそうとするフワフワっとした雰囲気が苦手でして、平林さんと出会った日は、私と同じように「苦手ですオーラ」を出してる人を発見でき、ホッとしました(笑)。小林 : それでいいんですよ。そうやって波長の合う人同士でないとビジネスも人間関係もうまくいかないはずですから。平林 : 出会いを増やそうとか、友達を多く持とうとか、そんなふうに数を意識する必要はないのでしょうね。本当に必要で、つながっていたい関係であれば、無理をしなくても続いていくし、同じ想いや目標を持った人同士は互いに引き寄せ合うのだと思います。そして何より身近な人を大切にするところから始まっていきますよね。小林 : パーティのような一過性の出会いの場で、偉い人に自分の名刺を渡したところで、その方は秘書さんにその名刺を手渡して終わりというケースがほとんどですから。もっと身近にいる仕事仲間や、自分の想いや夢を共有し、応援してくれる方々との出会いや関係を大切にするべきなんですよね。鈴木 : 若い頃からそういうことを心がけていると、その先の(仕事)人生に必ず活きてくるのでしょうね。お二人とも「人」と「仕事」と真摯に向き合う姿勢が感じられますが、人が生きていく上で、「人」「仕事」の間に必ず介在するもの、それが「お金」です。お金に対する考え方もお聞かせいただけますか?小林 : 私は「お金を残す」ということに、今も昔も全く興味がないの。今だって自分の通帳に支払い分の預金があるのかどうかふと心配になるくらい(笑)。お金は気持ちよく受け取り、気持ちよく手放して循環させる、というのが私のお金に対する考え方なんです。平林 : 私は公認会計士という職業柄、これまで100人を超える成功者(お金持ち)と出会ってきましたが、皆さん気持ちよくお金を手放す方々ばかりです。お金は持っているだけでは役に立たないですから。ただ、中には、お金を増やすこと自体が楽しみという方もいますが、「お金は便利な道具」であるという共通の理解はありますね。また、お金にたいする過剰な期待もありません。お金持ちの方々は一人では生きていけないということをよく知っていて、お金はそのための大切な道具だと考えているのです。小林 : お金を儲けるというのは、決して悪いことではないのよね。お金を儲けてたくさん税金を払うのも一つの社会貢献になるわけですから。実は、私も55歳の時に「巨万の富を作ります! インドの貧しい人々を救えるくらいの富を得ます!」って宣言したことがあるの。周りの人たちはびっくりしてたわ(笑)。鈴木 : 本の内容やお話をうかがっていると、小林さんは特別なエネルギーを持ったスーパーレディという感じです。全てにおいて、力を尽くすというタイプなのでしょうか?小林 : そんなことはないですよ。家事は力を抜きながらやってきました。平林 : これまた心強い!私も家事は手抜きの兼業主婦なんです(笑)!小林 : 私も家族が「死なないこと」が基準(笑)!というスタイルでずっとやってきました。どうしてもやらなければいけないこと、どうしてもやりたいことがあるなかで、何を外せるかを基準に考えやりくりしてきました。鈴木 : スーパーレディのイメージのある小林さんも平林さんも家事は手抜き!私自身も勇気づけられました(笑)。お二人とも社会における自分の立場というか、使命みたいなものを感じていて、それを実行するためには、主婦業も何もかもに全力投球とはいかないものなのでしょうね。小林 : 私の場合、美容で人を癒し、美しくし、幸せにするために生きてるのだという使命感を持ってこれまで生きてきたと感じます。また学校を開校してからは、若い人を育てる教育という使命も加わりました。さらに京都での展開が始まった今は、日本発のビューティーを世界に伝えるという新たな使命も課せらた気がしています。使命を自覚し、夢を持って生きることが私は大切だと思うのです。喜寿を迎えた今でも、まだこれからの夢があります。自分の使命を自覚し、その実現のために生きていけることは、本当に幸せなことです。平林 : 私は正直なところ、自分の使命というものをはっきりとは自覚できていません。今はその使命を見定めている最中かと…。でも、これまでを振り返ると自分の想いはかなってきてますし、きっとこれからもかなっていくのだろうと思います。そして、こうして小林さんとお話しながら思ったのですが、きっとこの先、自分の使命も見えてくる!そう感じました。鈴木 : それが5年後なのか10年後なのか20年後なのか…。小林 : 私が独立したのは50代半ば。青山ビューティ学校高等部の校長になったのは76歳のとき。そして今年、京都にサロンをオープン、来年には京都で学校を開校。その次は世界進出に向けてニューヨークへ! という計画をしてるのよ。平林さんもこれからよ!鈴木 : そのお言葉を聞いて、平林さん、いかがですか?またこの鼎談の感想は?平林 : 本当にいいお話をうかがうことができました。10代の頃の私は、どうしても自分を好きになれなかったのですが、新たな出会いや凝り固まった価値観を崩して解除していくなかで、自分を好きになることができました。公認会計士試験に合格したことも大きかったですね。努力してそれが資格という形になったことで、自信を持てるようになったのだと思います。私もまだまだこれからですが、私よりも若い世代の人たちにお伝えしたいことがあるとすれば、ぜひ、カッコいい大人と出会ってほしいということです。昨年は大学の講師のお仕事もさせていただきましたが、大学生と色々話していると、彼らが出会う大人は二種類のタイプに分けられるようなのです。一つは「世の中は甘くない!」とお説教をしたがるタイプ、もう一つは「人と出会い、生きてることって素晴らしい!」と教えてくれるタイプ。なるべく後者のタイプを見つけ、見つけたら、「この人は何でこんな考え方をするのだろう?」と、変に警戒したり構えたりすることなく、まずは飛び込んでほしい。若いうちは自分の理解の範囲を超えた人たちともたくさん出会えるはずです。いろいろな栄養を吸収して、大切な人間関係を築いていってほしいと思います。決して偉い人や有名な人と出会うことが人脈ではありませんし、もっと身近なところにいる大切な人たちのことを考えながら過ごしていくと、いつのまにか豊かな人生を送っている自分に気づけるはずです。鈴木 : 小林さんにとって、今回の鼎談はいかがだったでしょうか?小林 : 平林さんとは、とても共鳴するところがあって、私もいい時間を過ごすことができました。子供の頃の平林さんは辛い思いをされたでしょうけれど、本当は、自分が嫌いな人なんて、いないはずなんです。自分が好きだから「本当の自分はこんなんじゃない!」と反発心が芽生え、自分を嫌いだと錯覚してしまうのだと思います。私の友人に音楽評論家の湯川れい子さんがいるのですが、彼女が言うには、人間が一番落ち着く音は「自分の出す音」なのだそうです。自分が呼吸してる音やリズムが、人間にとって一番居心地が良い。誰もが自分の出す音に安心する。だから、自分が嫌いなんてことは本当はあり得ないのです。若い人たちには、まず、自己愛を満たしてほしいと思います。それから、「ラン二ングハイ」という言葉があるけれど、希望の仕事ではなくても、やり続け、極めていくうちに、いつのまにか楽しくて夢中になっているということもあります。目の前にあることに向き合って極めていこうと努力すれば、きっと将来が拓けてきます。努力を続けていれば、「チャンス」は必ずやってくる。但し、その「チャンスの神様」に後髪はなく、前髪しかない。前髪をつかまえることができなければ、タイミングを逃してしまいます。だから「チャンスの神様の前髪」をしっかりとつかんでほしいのです。鈴木 : 私たちもその「チャンスの神様の前髪」をつかみ、チャンスをものにして、ステージアップしていきたいと思います。そしてその先には、ニューヨークで、この鼎談の第二弾!という夢を実現させましょう!平林 : いいですね!なんだか本当に近いうちに実現できそうな気がしてきました。小林 : その気持ちが大切ですよね。そこに向けてまずは近場で「女子会」から始めましょうか。「パーティ脱出三人組」の「女子会」!!一同 : いいですね(笑)。鈴木 : 今回はお忙しい中、ありがとうございました!小林・平林 : ありがとうございました!偉い人との出会いを求める前に、身近にいる人たちとの縁を大切にするお金は互いに助け合う道具。気持ちよく受け取り気持ちよく手放すお金儲けは悪いことではない。社会貢献につながるお金の使い方を家事は手抜きするなど、何を外せるかを考える。スーパーマン、スーパーウーマンを目指す必要はない自分の使命を自覚するチャンスの神様の前髪をつかむ【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年04月19日経済キャスターの鈴木ともみです。連載コラム『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた珠玉の一冊』をお読みいただき、ありがとうございます。この連載を始めてから、多くの良書と出合い、その著者の方々へのインタビューを通して、さまざまな刺激をいただき、心が豊かになっていく自分を実感するようになりました。本当に光栄です。そして、いつの日からか、支えて下さっている多くの読者の皆さまに対して、その恩返しができれば、と考えるようにもなりました。そこで、私が出会った著者の方々の中でも、特に心にしみる言葉を与えて下さったお二人をゲストにお迎えし、2回に渡り、春の特別企画として鼎談形式でお送りしたいと思います。鼎談のゲストは美容家・メイクアップアーティストの小林照子さんと公認会計士の平林亮子さんです。お二人の歩んできた時代背景や育った家庭環境はバラバラですが、小林さんの著書『人を美しくする魔法』(マキノ出版)、平林さんの著書『競わない生き方』(ワニブックス新書)には、共通する人生成功術、若い社会人の皆さんやビジネスパーソンの方々の心に響くメッセージが数多く詰まっています。戦前に生まれ、戦中・戦後、生きることに必死だった10代を過ごしたのち、高度経済成長期に社会人となり、右肩上がりの仕事人生を歩んでこられた小林さん。一方、安定成長期に生まれ、バブル経済期を含め豊かな時代に幼少期&思春期を過ごすなか、学歴主義の優等生として生きる苦しみから、時には自殺願望をも抱いていたという平林さん。仕事人として、女性として、颯爽(さっそう)と美しく輝く今のお二人の姿には、各々に葛藤のなかで生きた10代、そしてそこで確立した『芯』の”強さ”と”自信”が表れています。10年後、20年後、30年後、40年後、50年後…。あなたが「好きと言える自分」「人として豊か」でいられるためには…。美と人生の達人たちがあなたに贈る珠玉のエールの数々。皆さんの人生を応援する鼎談となっていると思います。『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊 第11回 小林照子氏著『人を美しくする魔法』』『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊 第1回 平林亮子氏著『お金が貯まる5つの習慣』』鈴木 : 小林さん、平林さんどうぞよろしくお願いいたします。お二人は初対面なんですよね。実は、私はお二人とそろってお会いできる日を大変楽しみにしておりました。と言うのも、お二人には数々の共通点があると思っていたからです。表面的には、ご職業にも接点はなく、年齢差も40歳あり、歩んできた時代背景や育ってきた家庭環境も対照的ですので、普通であればなかなかお二人の間に接点や共通点は見つかりにくいはずですが、お二人の著書には共通する人生訓やメッセージが数多く託されています。小林 : それは不思議だし興味深いですね。平林 : 私と小林さんとの間に共通点があるなんて、恐れ多いです!(笑)。鈴木 : その共通点をご紹介する前に、おもしろい発見があったので、ひとつご紹介しましょう。実は、小林さんの人生の年表をたどっていきますと、戦争を境にした日本経済史の年表そのものになるのです。まずはその年表をご覧ください。小林 : まぁおもしろい。(戦争を境に記した)日本経済の歴史は私の人生の歴史とぴったり重なるのね。鈴木 : そうなんです。さらに、その年表にお二人それぞれの人生を重ねてみますと…。平林 : おもしろいしわかりやすいですね。鈴木 : 照らし合わせていくと、お二人が歩んできた時代背景は対照的です。小林さんはまさに戦争に翻弄される子供時代を過ごしてこられました。戦後の貧しい時代、ご両親の失業やご病気、東京から山形への疎開…。壮絶なご経験だと感じます。小林 : 私がいつも基準としているのは、やはり幼少期、思春期(10代)の頃の経験や価値観で築き上げられたものなのです。その頃に、自分の『芯』がつくられました。ですので大人になってからも、常にその『芯』に聞いて行動していますね。鈴木 : 一方、恵まれた時代、恵まれた家庭環境のもと文武両道の優等生だった平林さんも特異な10代を過ごしてきたと言えそうですね。平林 : とにかく家でも学校でも優等生でいなくてはいけないことが辛かったです。東大出身の父から言わせれば「東大は普通に勉強したら受かる大学」なのだそうです。そういう親のもとで、私も高校までは、成績も良く、陸上部では県内でも有数の選手と、まさに絵に描いたような優等生でした。鈴木 : ストレートでお茶の水女子大学に合格。優等生人生まっしぐらですね。平林 : それでも、私は自分で勝手に限界ラインを引いてスネてました。「東大に行けなかった私は落ちこぼれ」。大学に合格したときも、そんな思いを抱きました。もちろん、表面上は明るくさわやかな優等生を演じてましたが、中身は常に自分を肯定できずにスネる毎日。10代の頃は呼吸するのも辛かったんです。小林 : それは本当に辛かったでしょうね。私はメイクアップアーティストとして多くの方々のお顔に触れているからわかるのですが、平林さんの場合は、お顔を含め、とても上品で優美な外見をされてるから周りは完璧を求めてしまうのよね。人は第一印象でその人の性格や内面を決めてしまいがちだから。学校も家族も皆が期待してしまう。そして平林さん本人は、それに応えようとすればするほど、辛く苦しくなってくる…。葛藤の日々だったでしょうね。平林 : わかっていただけて、本当に嬉しいです。10代の頃は、なかなかわかってくださる方とも出会えず、はけ口もみつからずに、とにかく苦しかったです。鈴木 : 平林さんがその葛藤の日々から抜け出せたのはいつですか?平林 : 大学に入ってからです。学歴主義の価値観を壊してくれる出会いに恵まれました。小林 : そうやって、いろいろな人と出会い、自分とは違う考え方や価値観を持ってる人たちと接することは大事よね。時にはぶつかることも必要。エネルギーを持って反対してくる人は、一度共感してくれれば一気に強力な味方になってくれたりするから。平林 : 落ちこぼれて入ったと思っていた大学や専門学校の仲間たちとの新たな出会いのなかで、私はそれまで持っていた価値観にとらわれない生き方を見つけられたように思います。鈴木 : またその後、公認会計士試験に合格、しかも大学在学中に、という事実が改めて自信にもなったでしょうし、さらなる目標へとつながっていくのでしょうね。小林 : 基本はそこですよね。目標や夢を持って前に進むこと。夢に向かっていく気持ちがないと、やはり心は折れやすい。私が、疎開先の山形から東京に出てきた理由は、演劇のメイクアップ・アーティストになりたいという夢を抱いたからでした。ただ、なかなかそう簡単になれる職業ではない。そこで、夢への第一歩としてまずは化粧品会社コーセーに就職したんです。平林 : 私も同じようなことを感じます。私の場合は、「大きく立派な夢を掲げてスタート!」というタイプではないのですが、「一見、夢とは遠いように感じる仕事も一生懸命にやって、夢や目標を手放さなければ、いつしか想いはかなう」ということを実感しています。小林 : そういうものですよね。どんな仕事でも、一つひとつの仕事を一生懸命にすると、また新しい話がやってくる。やればやるほど、どんどん大きな仕事、幅広い仕事ができるようになってきます。すると、また新しい依頼がやってくる。そのうちに自分のしたかった仕事に出会える。私もその連続で今日まで仕事を続けてきたし、さらにこれからももっと大きな夢を実現させたいなと思っています。実はこの春から、京都で新しいサロンを開きますし、来春には青山ビューティ学院の高等部京都校を開校する予定です。日本の美しさの象徴はやはり京都にあると考えていたから、その京都でサロンと学校を築けるのは本当に嬉しいことです。私は常々、世界に向けて日本の美を発信していきたいという夢を持っていて、それを口にしているものだから、それを知った方が、今回の京都のお話を持ってきてくださったの。やっぱり夢や想いは言葉に出すべきなのよね。平林 : 私もそう思います。なるべくブログなどにも自分の夢や想いを書くようにしてるんです。小林 : だから私、ここでも言葉にしておくわ。「近いうちにニューヨークに出店します!」日本の良さを世界中に伝えるために!平林 : すごい!ニューヨークですか?鈴木 : なぜ、ニューヨークなんですか?小林 : ニューヨークを選んだのは、世界に向けたエンタメとビューティの発信地だからなの。もし、数年後にその発信地がニューヨークではなく、他に移っていたらそこを目指すけれど。今はやっぱりニューヨークね!平林 : なんだか本当に実現できそう。私も楽しみになってきました。小林 : 実現したらニューヨークに遊びにきてね(笑)。一同 : いいですね!(笑)。(※鼎談の続きは「後編」に続きます)「様々な人との出会いによって価値観は形成される。ひとつ一つの出会いに感謝する」「どんな仕事でも目の前にある仕事に全力を尽くせば、夢も引き寄せられる」「夢や想いを声や文字にすれば、いつか実現する」【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年04月12日リクルートが発行する結婚情報誌「ゼクシィ」。毎号さまざまな特集を行っている同誌だが、現在発売中の5月号では「夫婦1年生のための、家族の記念日と行事では何をする?」と題して、家族の記念日と行事について新婚の妻にアンケートを実施している。まずは誕生日に関して、「彼のお母さんに誕生日プレゼント渡してる?」という問いに対して「Yes」は58.1%。「彼のお父さんに誕生日プレゼント渡してる?」では「Yes」が47.6%と、10ポイントほど差がついた。「彼の親の結婚記念日を祝ってる?」では、「Yes」は10.5%とやや低調な数字に。25年目の銀婚や30年目の真珠婚など、節目のタイミングでお祝いするというケースが比較的多いようだ。「彼のお母さんに母の日のプレゼントを渡してる?」については、「YES」が90.3%と大多数がプレゼントを贈っている。一方、「父の日」にプレゼントを贈るのは73.4%で、ここでもお父さんの存在感がやや薄い。「お盆はみんな何してる?」との問いに対しては、「両方の家族と過ごす」と「ふたりで過ごす」が共に26.7%で同率首位に。以下、「彼の家族と過ごす」(15.3%)、「どちらかの家族と過ごす」(13.7%)と続く。「家族にクリスマスプレゼントを渡してる?」は、75.8%が「渡している」と回答した。「年末年始はどう過ごす?」との問いに対しては、「両方の家族と過ごす」が58.97%と最も多く、2位以下の「どちらかの家族と過ごす」(17.3%)、「彼の家族と過ごす」(7.5%)、「自分の家族と過ごす」(6.9%)、「ふたりで過ごす」(6.2%)を大きく引き離している。まずは貯蓄と管理に関して、月々の貯蓄の内訳は「子どものため」が2万円、「マイホームのため」に5万円、「老後のため」が1.5万円という結果となった。今ある貯蓄総額は、夫婦で261.5万円(夫157.5万円、妻78.7万円)、妻のへそくりが44.5万円となっている。「お金管理は誰がしている?」との問いには、「彼管理派」が9.9%に対して、「彼女管理派」が54.2%と、妻が財布をしっかり握っている実態がうかがえる。続いて保険に関しては、「自分が入っている保険について理解してる?」との問いに、「Yes」が15.3%に対して「No」が82.5%と、かなり心もとない結果に。「結婚を機に保険に加入、もしくは見直しをした?」については、「Yes」が67.3%、「No」が10.3%と意識の高さは見えるものの、「わからない」と答えた人も22.4%に上った。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年03月24日経済キャスターの鈴木ともみです。連載『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊』では、私が読んで”これは”と思った書籍を、著者の方へのインタビューを交えながら紹介しています。第14回の今回は、藤原敬之さんの『日本人はなぜ株で損するのか?~5000億円ファンド・マネージャーの京大講義~』(文春新書)を紹介します。「話を聞いているだけで鳥肌がたった」(京都大学経済学部3年)、「『情報処理』ということの大切さが分かりました」(京都大学大学院2年)、「ものすごい量の知識、見識、分析力に圧倒された」(京都大学経済学部3年)、「教科書にのっていない、非常に価値ある時間」(京都大学 経済学部3年)、「『このような考え方もあったのか』と思うことの連続」(京都大学3年)、「実体がなく実感の薄い株というものに対して『生命』を吹き込むような思考に感激」(京都大学 大学院1年)。上記は2011年5月に京都大学経済学部で開催された公開講座に対する受講生(1年生から院生まで)たちの感想です。講師はファンド・マネージャーの藤原敬之さん。講義テーマは「株式運用。アクティブ・ファンドマネージャーとは何か」。今回ご紹介する『日本人はなぜ株で損するのか?~5000億円ファンドマネージャーの京大講義~』は、その講義内容を余すことなく再現した書籍になっています。これからの日本を担うであろう若き英知が集まる京都大学で、その内容に、多くの学生が刺激を受け、心を震わせ、感動したと言う講義です。いったいどんな講師の方がどのような講義をしたのでしょうか?まずは、その答えの本質が垣間見える最終章「第六章「日本人とは何か?」最後に伝えるべきこと」からご紹介しましょう。上記のメッセージは、京大生たちの心に深く強く響いています。きっと、社会に出る前の心構えと覚悟を認識したのだと思います。この本を読んだ私自身も実感し納得し痛感しました。直接、自分の心に響かせたいという思いもあり、このメッセージの意味について、藤原さんご本人にうかがいました。「このメッセージに託した不条理への対処の仕方については、学生さんたちよりも(若い)社会人の皆さんの方が理解しやすいかもしれません。ビジネス・組織の世界においては、必ずと言って良いほど、不条理が存在する。ちょうど今、まさにその不条理を目の当たりにしているという方もいると思います。上司だから同僚だから分かってくれる…というのは甘えで、そういう考え方は捨てたほうが良い。ある意味それは自分を捨てることでもあります。常に相手をどう満足させるかを考える。人間は常に自分のことばかり考えていますから、それくらいの意識を持ってちょうどよいのです。他者を認識するうちに、社会のなかでの自分の進み方や生き方も次第に見えてきます。まずは、(相手を、物事を、社会を、世界を)「知ろう」という気持ちを持って「閉じる」ことなく「開く」ことを意識して毎日を過ごしてもらいたいと思います」実際にお話を伺うと、重みあるメッセージの一つひとつがじわじわと心の奥底に浸透してきます。これほどまでに人の心を動かすことのできる言葉と知識が詰まった藤原さんは、カリスマ・ファンド・マネージャーとして、いったいどのような足跡を歩み、どのようなことを体得してこられたのでしょうか?その点については、第一章「ファンド・マネージャーとは何か?」を読めばわかります。このように、藤原さんは日本を代表する成功者として人生を歩んでこられました。外資系金融機関のMDになり、多くの外国人を部下に従え、数字の上でもしっかりと実績を残してきました。言わば、世間が羨望する「グローバルエリート」として生きてきたわけです。真の勝ち組・成功者になれた理由はどこにあったのでしょうか?実際に藤原さんに伺いました。「実は、私は就職する時もグローバルに活躍したいとか、金融の世界で成功しようなどとは全く思っていませんでした。一時は映画監督やテレビのディレクターを夢見たこともあり、できれば早く帰れて趣味の映画を観る時間が確保でき、楽で給料の良い働き先はないかと探した結果、農林中金にたどり着いたわけです。でも、現実は悲惨な残業の連続でした(笑)。ただ、農中で働くなかで、経済のファンダメンタルズをしっかり勉強する機会に恵まれましたし、本物の天才と言える上司との出会いもありました。『プロの情報のやり取りとは互いの切り口の交換なのだ』という極めて重要なことを彼から教わり、その言葉を実践することで私は四半世紀も相場の世界で生き抜くことができました。」「自分で考え、自分のオリジナルな意見を持つ。それがプロの務めであるということを若い時代に習得できたことは幸運でした。確かにファンド・マネージャーは天職だったと思いますが、私の場合、成功者になりたいという野心や計画から始まったわけではなく、多くの価値ある出会いのなかで、目の前にある命題を自分のオリジナルな思考でクリアーしてきた先に、今のような結果がついてきた、という感じです。ですので、実は私自身が、この本の第五章で紹介しているような典型的な日本人と言えるのかもしれません。2年前にファンド・マネージャーを引退して、今年から作家で生きていこうとしているのも計画などではなく、幸運と出会いに恵まれたからだと思っています。」意外や意外…。「世界を舞台に名を馳せたファンド・マネージャー」というと、もっと『俺ってすごい、俺って一番、俺って最高!』的な”オレ祭り”体質の方かと思っていたのですが、お会いした瞬間からとても謙虚でいらっしゃいました。その自らを「典型的な日本人である」と認める謙虚さがあったからこそ、同書の本題でもある「日本人はなぜ投資が下手か?」の理由を探究し続け、その意味と対策を生みだすことができたのでしょう。その結果、藤原流のオリジナル思考が確立し、カリスマ・ファンド・マネージャーになれたのだと思います。ではその同書の本題とも言える第五章ついてご紹介しましょう。とても興味深い内容です。なるほど。投資とは「将来」を前提とした長期的な行動であり、その鍵となるのは「情報の収集」である。わかっているつもりでも、なかなか実践できないのが、この「情報の収集と整理」です。この点については第三章「情報をどう処理すべきか?」にて「情報整理のコツは細分化と集中化」「日経の切り抜きを149の項目に分ける」「SBL(スクエア・ブロック・ルーズリーフ)への書き写し(9マスノ―トを使った情報整理術)」「情報を『次元認識』した上で、『三元次情報』を創る」など、そのノウハウがわかりやすく解説されています。第三章については、前後にある第二章「株式運用の基本とは?そして独自の運用とは?」と第四章「株価とは何か?」とを照らし合わせながら、しっかり理解しつつ読み込んでいくことをおすすめします。特に第四章「株価とは何か?」の締めの部分「株価に適正価格は存在しない」には、投資家のみならず、多くのビジネスパーソンにとって、ビジネスの判断基準を見誤らずに済む実践的メソッドが記されています。このように、人生の多くのシーンで使えるメソッドが数多く詰まった珠玉の一冊。結果が全ての世界で生きてきた藤原さんが語る、その過程で得た手法や処方術だからこそ、言葉の一つひとつが説得力を持って心に飛び込んでくるのだと思います。一冊読破することで、(1)「世界を舞台に活躍したファンド・マネージャーの成功物語」、(2)「個人投資家にも役立つ実践的投資術」、(3)「明日を担う若者たちへのメッセージ集」と、少なくとも三冊分の良書を読み終えた気分、充実感を味わうことができます!【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年03月22日経済キャスターの鈴木ともみです。連載『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊』では、私が読んで”これは”と思った書籍を、著者の方へのインタビューを交えながら紹介しています。第13回の今回は、大寄昭生さんの『「保険」は比べて買いなさい!』(角川マガジンズ)を紹介します。先日、保険のセールスレディの方々にお会いした際、こんなことを言っていただきました。「いつも『東京マーケットワイド』を見てますよ。株式の動きを勉強してます!」と。実は、これまで個人投資家や、証券・銀行関係者の方々からそのようなお声がけをいただくことはありましたが、保険業界の方からは初めてのことでした。それもそのはず、今や「資産運用型の生命保険」も登場し、保険業界の方々もマーケット情報を得て、投資知識を高める時代。マーケット情報番組をチェックしているのは何の不思議もありません。逆に、マーケットに関わる人たちこそ、保険の世界についてほとんど何も知らない場合が多いのではと感じます。「保険」について無関心のままで、保険に入っていても、最初に出会ったセールスの方に全てお任せという状態。実はそうした状況は、契約者側にとっては、とても不利なことなのではないでしょうか? その答えが今回ご紹介する『「保険」は比べて買いなさい!』で解説されています。ただ「保険を比べる」と言っても、素人の私たちには困難な技です。そこで、著者の大寄昭生さんは、「保険を比べて買える場所=保険ショップ」の展開を広めているのだそうです。大寄さんに具体的に伺いました。「私は大学を卒業後、アパレル業界に入りました。その後、友人からの誘いで外資系保険会社での営業を経験し、専属代理店での営業、コンサルティング会社でJA共済や大手生命保険・損害保険会社へのコンサルティングや営業指導などを行い、現在は、複数の保険会社の商品を取り扱う「保険ショップ」のフランチャイズチェーン本部を運営しています。20年近く保険業界を見てきましたが、他の業界と比べて、まだまだ閉鎖的であるというのが実情です。そもそも保険は入るものではなく、「買う」ものです。例えば、私たちは電化製品を家電量販店で買うわけですが、様々なメーカーの製品の中から、どれが一番安くて優れているのか、自分たちで選択することができます。ですので、電化製品でも食料品でも、メーカーは消費者に選ばれるために、コスト削減など必死の努力を重ねてきています」「しかし、保険の場合、一社の保険会社の営業担当者が勧めてきた商品を言われるがままに、入ってしまうケースがほとんど…。それは「保険」に入るという、まるでスポーツジムにでも入会するかのような気軽な気持ちがあるからです。保険料の支払い合計額は、人生最大の買い物と言われる「マイホーム」に次ぐ大きな買い物です。それなのに、比べることなく、トータルの保険料も計算せずに安易に保険に加入してしまうことに抵抗を感じないのは、やはり問題だと思います。「保険ショップ」はその問題を解決し、皆さんが「保険を比べて選ぶ」そのサポートをしていく場所なのです」実は、私自身、ファィナンシャルプランナーでありながら、保険に関する知識はほとんどありません。相談料が無料であるという「保険ショップ」の存在についても、初めて知りました。薬を選ぶ際に、薬剤師が必要なように、専門知識が必要な「保険」についても専門的なコンサルタントの力を借りたいもの…。それを実現してくれる「保険ショップ」については、第3章に詳しく紹介されています。私もぜひ一度「保険ショップ」に足を運んでみようと思います!このように著者である大寄さんは、売り手市場であった「保険業界」を、まさに買い手市場へと導く先駆者的な存在です。同書では、その大寄さんが私たちにわかりやすい保険の知識をまとめてくれています。上記の「第1章保険の種類はたったの3つ」、それに続く「第2章保険を「比べる」力をつける」を読めば、保険に関する基本的な知識を得ることができます。また、個人的に関心を持ったのが「第2章 保険を「比べる」力をつける~商品別比べるポイント【学資保険編】」です。20代~40代を中心とする現役世代にとっては、役立つ知識と言えそうです。やはり、「保険」は細かく比べてみないとわからないものだなぁと、つくづく感じます。その「比べる力」の効力について、最後に大寄さんに伺いました。「インターネットが普及し、保険会社の競争が激しくなったことで、だんだんと自分に合った保険を選べる時代になってきました。皆さんが徐々に「比べる力」を身につけてきた結果と言えます。ただ、まだまだ「保険」業界については、商品も複雑でよくわからないし、セールス営業がしつこいなど、ネガティブなイメージが払拭されていません。これでは、業界が淘汰されることなく、変わることもないでしょう。現在、日本では、民間の生命保険、損害保険、各種共済などへ、年間約50兆円もの保険料が支払われています。日本の税収は約42兆円ですから、それよりも大きな金額を私たちは保険市場に投入しているのです。しかも自分の意思で支払っている。もし誰もが「比べる力」をつけ、自分の意思で保険商品を選ぶようになれば、保険料を5%は引き下げることができるでしょう。それは、2兆円以上ものお金を別の消費に回せるということです。そう考えると、「比べる力」は日本経済に大きな影響を及ぼす原動力になり得るわけです」なるほど。私たち一人ひとりの「比べてみよう!」という意識改革が、巡り巡って日本経済の底上げにもつながっていくのかもしれません。同書を読み終え、そのようなところまで思いを馳せることができました。まさに、自身の人生、ライフプランの計画&見直しをする上で、欠かすことのできない必須の一冊!です。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年03月08日経済キャスターの鈴木ともみです。連載『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊』では、私が読んで”これは”と思った書籍を、著者の方へのインタビューを交えながら紹介しています。第12回の今回は、広木隆さんの『ストラテジストにさよならを~21世紀の株式投資論』(ゲーテビジネス新書)を紹介します。この連載もスタートから半年が過ぎました。多くの方々にお読みいただき、また感想なども届くようになり、嬉しい限りです。私自身もこの連載のおかげで、本屋さんへ通う回数も増え、怠けがちな性分に喝を入れてもらっています。その本屋さんで感じるのは、マネーや投資をテーマにした本棚にズラリと並んだタイトルが、ほぼ似たりよったりであるということです。そもそも株式やFXなど投資の世界で、常に勝ち続けることができる確実なハウツーなどが存在するものなのか? これは、私が日々、東京証券取引所から株式マーケットの実況中継を担当しているなかで、抱き続けてる疑問でもあります。そうしたなか、その答えのヒントをくれ、また他とは明らかに異なる斬新なタイトルの本を見つけました。それが今回ご紹介する『ストラテジストにさよならを』です。著者はマネックス証券 チーフ・ストラジストの広木隆さん。ストラテジストの方が「ストラテジストにさよならしなさい」とはどういうことなのでしょうか? まずはそこから探っていきましょう。負けない投資手法の提唱。ストラテジストである著者の広木さんはまず、「個人投資家がなぜこれまで儲からなかったのか」について第I部の第1章「20年続く下り坂の経済と株式相場」、第2章「「長期投資」の誤解」第3章「個人投資家が陥りがちな「塩づけ」の罠」において、わかりやすい具体例を用いながら解説しています。上記で引用されているゲーリー・ベルスキー氏とトーマス・ギロヴィッチ氏の共著「賢いはずのあなたが、なぜお金で失敗するのか」を始め、同書にはチャールズ・エリス氏著「敗者のゲーム」、ナシーム・ニコラス・タレブ氏著「ブラックスワン」「まぐれ」、バートン・マルキール氏著「ウォール街のランダム・ウォーク」など、数多くの海外の著者による文献の一節が紹介されています。その点も理解を深める上でのスパイスとなり、効いてきます。(ちなみに、個人投資家の皆さんから好評を得ているマネックス証券『Strategy Report』でも、広木さんは海外の文献から特筆すべきメッセージを紹介しています。株式相場と真剣に向き合いたいと考える投資家の皆さんにとっては、要チェック! のレポートです)。さらに、広木さんは「個人投資家がなぜこれまで儲からなかったのか」その理由の一つに「プロとの圧倒的な情報格差」を挙げています。同書のタイトル『ストラテジストにさよならを』と直結する第4章「頼るものがない」を読み終えた私は、胸のすくような感覚を覚えました。ご紹介しましょう。この歯に衣着せぬシャープな記述については、その真意を直接伺わないわけにいきません。広木さんに伺いました。「この仕事をしていると、個人投資家の方から批判的なコメントを寄せられたりもします。例えば「自分は一流のプロの言うことは聞く」ということを言ってくる方もいました。それで、その一流のプロとは例えば誰か? と伺えば、なんてことはない、朝の経済情報番組などに出演している方々の名前を挙げるのです。確かに彼らは視聴者・投資家の皆さんにとっては、有名人かもしれません。でも、『有名人=一流のプロ』かと言えば、そうではない。個人投資家の方から、スタッツ・インベストメントやエピック・パートナーズ、ホライゾン・アセット・インターナショナルのような、日本で実際に稼ぎ続けているヘッジファンドや、それらのファンドを運用するマネジャーの名前が出てくることはありません。なぜなら、彼らは金融危機後の今もしっかりとしたパフォーマンスを見せているプロ中のプロですが、メディアに登場することはありませんから」なるほど。目から鱗(うろこ)…。現実を直視した見解です。では、専門家とされるストラテジストやエコノミストの意見を話半分に聞くというのであれば、個人投資家の皆さんは何を頼りに投資を行えば良いのでしょうか?その点についても伺いました。「どんなものでも基本が大切です。それは投資も同じ。まずは投資の基礎、投資理論を学ぶこと。難しい理論や学術的なことではなく、基本的な理論を表層的になぞるのではなく、徹底的に、深く、根本的に理解できるまで学ぶことが大切です。こうした『サイエンス』の部分を押さえた上で、相場観やチャートなど『アート』の部分を押さえてください。私自身は、チャート分析のみでは、将来の株価を予測できないと考えています。チャートは過去の推移を検証し、他の市場や銘柄と比較するためのもので、その比較のなかで、現在の位置を確認、把握するために使います。どれだけ分析を重ねても、結局、相場は運や偶然に左右されるところが大きいのも事実です。ただ、この運や偶然は、不思議と日頃から投資理論を把握し、テクニカル分析も怠らない、そういった基礎固めを着実にしている投資家の元に降りてくるものなのです」上記の話は、詳しく同書の「第II部どうすれば儲かるのか?」第6章「投資の理論を知る」第7章「(ROE・PER・PBR)株式投資の評価尺度を学ぶ」、第8章「大局観を持つ」、第9章「正しい長期投資は『売る』ことである、第10章「分散投資とリスク・コントロール」で詳しく解説されていますので、ぜひ何度も読み返し頭に入れておくことをおすすめします。同書を読み終え、広木さんのお話を伺ううちに医師である知人の、ある言葉を思い出しました。メディアに関わる一人として、深く反省するに至った言葉でした。プロ・専門家が必要とされる世界では、どの分野においても、フェイクが存在するのかもしれません。気持ちや行動を揺さぶられずに生きるためにも、私たち一人ひとりがその本質をとらえ、本物を見極める目利きになることが不可欠な時代なのでしょう。投資術とともに、そんな人生の教訓を学ぶこともできる一冊です!【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年02月23日経済キャスターの鈴木ともみです。連載『経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊』では、私が読んで”これは”と思った書籍を、著者の方へのインタビューを交えながら紹介しています。第11回の今回は、小林照子さんの『人を美しくする魔法』(マキノ出版)を紹介します。読者の皆さまもご存知の通り、この連載は、「私が惚れた!」をテーマに良書をご紹介するコラムです。しかしながら、この「惚れた!」は、なかなかわきおこる感情ではありません。昔から私が”惚れる”基準は、「答えをくれた!」ということに在りました。男女を問わず「答えをくれる人に”惚れてしまう”」体質はずっと変わっておらず、さらに正確に言えば、「答えのヒントをくれる人」に惚れてしまうのです。なぜなら、いつ、どこで、どんなときでも、答えを出すのは自分自身であるからです。今回ご紹介する『人を美しくする魔法』は、まさに私がほしかった答えのヒントを与えてくれる一冊となりました。著者の小林照子さんと言えば、女性の方であれば「あのTV通販・ショップチャンネルで”カリスマゲスト”として登場する、上品で賢明で若々しい美容家の先生」というイメージを抱くかもしれません。一方、男性であれば「あの大手化粧品会社コーセーで初の女性取締役になった人」とか、小売・サービス業界で働いてる方であれば、「確か1時間番組で7,200万円を売り上げた人」といったイメージでしょうか。それらは確かに、どれも小林照子さんそのものです。ですが、今回の『人を美しくする魔法』を読み進めると、被写体として存在する日頃の印象とは程遠い、小林さんの本質が見えてきます。「なぜあんなにも、たおやかでしなやか、それでいて凛とした美しさを保つことができるのだろう?」。普段から思っていた疑問の答えは、小林さんの特別で貴重な経験が詰まった、人生を刻んだ同書の中にありました。まずは、34のエピソードのうち、生い立ちが記された(1)と(2)についてご紹介しましょう。小林さんは、上記の章で、こんなメッセージも託しています。また、3人の母、2人の父、合計5人の個性的で価値観の異なる親のもとで育った環境から次の2つの土台が形成されたのだそうです。一つは、「人と比べる生き方をしない」、二つ目は「自分の信念に従って生きる」。小林さんは、「信じるものは、自分の中にある」とし、おなかの中に、信じるものが『芯』のようにピンッと立っているのだそうです。その『芯』は10代後半ですでに固まっていたといいます。複雑で特別な幼少時代、その当時の経験が、小林さんの一生の礎(いしずえ)となり、その後の人生に大きな影響を及ぼしてきたのです。ただ、今の時代、小林さんのような厳しい体験をする人は、少ないかもしれません。では、乏しくも安寧な人生経験のもとに育ってきた自分たちは、夢を実現し人生を楽しむための基礎を、どうやって固めていけばいいのでしょうか? その答えは17番目のエピソードに記されていました。とても胸に響く文章でした。教師でも反面教師でも、出会う人すべてが教師である! そう思えば、毎日が学びの場になります。さらに、同書には、反面教師にまつわるエピソードも記されています。あまりに衝撃的なエピソードです。その後、小林さんは盗まれた出張旅費を2年かけてお給料のなかから天引きされ、会社に返済したそうです。普通であればこのAさんに対して、恨み、少なくとも嫌悪感は抱くはずです。しかし、小林さんはAさんに対してさえも、感謝の気持ちがあると言います。その理由とは? 小林さんに伺いました。「Aさんとの一件は、私に人生のテーマを投げかけてくれました。当時、お金がなくなった後、私は口外せず、Aさんにも伝えていませんでした。ですが、Aさんの出張の報告書には、私について「あの子はぼんやりしているから心配だ」という不自然な表記があったのです。その後、私は教育部門に異動し、何の因果かAさんを含めたスタッフに研修する立場になりました。Aさんとも何度か顔を合わせることになりましたが、もちろん、こちらもあちらも、あの時の話は一切しません。そうした中、何年かして、Aさんが退職することになりました」「その時、彼女は私の手を強く握って、涙ぐみながら「さようなら」と言ったのです。あの時のAさんの悲しそうな表情は今でもよく覚えています。ずっと後ろめたい気持ちを抱えていたのでしょう。その時にやはり、彼女が犯人だったのだと確信しました。ただ、何十年も封印してきたこのAさんとのエピソードは、『自分がどんな人間として生きていくのか』というテーマを突きつけてくれたのです。反面教師との出会い、2年間かけて返済した出張旅費も、自分の人生のテーマと向き合うための授業料だったと思えば、決して無駄ではありません。むしろ、感謝の気持ちにつながるものなのです」すごい。人はここまで強く優しくなれるものなのでしょうか? 私はその答えを小林さんに直接求めました。「人は、ただダラダラと年をとれば、いい人になれるわけではありませんよね。良心に従えるかどうか。自分で決めて自分で責任を取れるかどうか。その積み重ねがこれからの人生を大きく変えていきます。自分の『芯』は必ず自分のことを見ているものです」「さらに成長してレベルを上げていくためには、ささやかなことでも良いので、「小さな夢」を実現させていくことが大切です。いきなり大きな野望を抱いても、それは遠すぎてなかなか達成するのは難しい。でも、目の前の小さな目標や夢をひとつひとつ達成していけば、『実現癖』というものが自然についてくるものなのです。成功体験が増えれば、いつのまにか大きな夢の実現も近づいてきます。若い方々には、ぜひともその『実現癖』を意識して過ごしてもらいたいと思います」『実現癖』。目標や夢に向かう上で、とても身近でわかりやすいコツだと思います。さらに、巻末には小林さんが実践してきた「夢をかなえるコツ」「人生を楽しむためのコツ」が『人を美しくする魔法34』として標語形式でまとめられています。ぜひ何度も読み返していただきたいフレーズ集です。まるで長編の大河ドラマを観たかのような充足感と爽快感を味わうことのできる小林照子さんの人生物語。老若男女問わず、多くの方々の心に響くであろうメッセージが詰まった珠玉の一冊です!【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年02月09日弁護士法人アディーレ法律事務所は、交通事故の被害に関する書籍『交通事故に遭った時、あなたを救うたった一冊の本~騙されやすい示談金の裏事情~』を出版した。同書は、作家・室井佑月氏も推薦しているとのこと。保険会社は、少しでも示談金の支払額を抑えたいと考えている交渉のプロで、決して被害者の味方ではないという。事故発生後の対応と示談金を勝ち取るノウハウを解説本書は、不幸にも交通事故に遭ってしまった時、被害者が必ず知りたいと思う「事故発生後の対応方法」と、「保険会社から適正な示談金を勝ち取っていくための知識」の2つのノウハウについて、交通事故に特化した弁護士がわかりやすく丁寧に解説したもの。また、示談金額が決まる「裏」事情が、たっぷりと書かれた興味深い本となっていて、特に最も争いになる休業損害や慰謝料の算定方法について具体例をあげながら詳しく解説している。この1冊さえあれば、万が一交通事故に遭った時にも、慌てることなく万全の姿勢で対処できるはずという。<書籍概要>名称:『交通事故に遭った時、あなたを救うたった一冊の本~騙されやすい示談金の裏事情~』著者:弁護士法人アディーレ法律事務所発行:丸善プラネット株式会社定価:1365円(税込)初版発売:2010/12/28版型:四六版
2010年12月31日