近年、チームとしての成績だけでなく、選手育成でも目覚ましい実績を残すのが奈良県にある「YF NARATESORO」。以前はサッカーノートを書いていましたが、最近は止めていたそうです。ですが、この秋からサッカーノートを再開。その理由と、現在導入しているノートで子どもたちのサッカーがどう変わったのか、コーチと選手たち自身にお話を伺いました。(取材・文・写真:森田将義)YF NARATESOROの練習風景写真:森田将義サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■選手自らが考えて行動する選手になるため、サッカーノートを活用以前は選手にサッカーノートを書いて、提出するようにしていたYFNARATESOROですが、繰り返すうちに書くことがマンネリ化し、ここ数年は書いてもらうのを止めていたそうです。しかし、今年に入ってからは考える習慣を身に付けさせるため、3、4年生の選手でサッカーノートの活用を再開しました。その理由について、大西晃平コーチはこう話します。「ここ2、3年で感じることなのですが、今までの子たちと違って、自分で考えて行動している子が少なく、自分のプレーを振り返ることができない。今の子はサッカーの練習が終われば、ゲームをするのが凄く気になっていた部分でした。解決するために何かできないかと思い、週1回月曜日だけでも、サッカーノートを書いて提出するようお願いしました」。■この秋出会ったサッカーノートを始めたら、子どもたちの練習に取り組む姿勢が変わった当初は市販のノートに練習や試合であったことを書いて貰っていましたが、書く内容は様々。提出して貰ったノートに目を通すと、自分でちゃんと考えてノートを書いている子がいれば、お父さんかお母さんに書きなさいと言われて何となく「今日はシュートが入った」とあったことを適当に書いているだけの子もいたと言います。また、多くの選手が白紙のノートには何を書いて良いか分からないのが、悩みでもありました。そうした時に出会ったのが、サカイクサッカーノートです。練習前は「前回の学びや発見は何かありましたか?」、「(練習・試合が)終わったときに、どうなっていたら最高ですか?」、練習後は「上手くいったことは何ですか?」といった質問に答えて、振り返りができるのが特徴です。大西コーチは、「書き続けることによって、子どもたちの練習に取り組む姿勢が変わった。練習を見ると『この子はこういうことを意識しているな』と感じるようになりました。ノートを書く時に今日はどうだったかなと振り返って考える時間が増えたことで、サッカーだけでなく、家の中で何をしなければいけないか気付けるようになった」と選手たちの変化を口にします。サッカーが上手くなる仕掛けがあるサッカーノートの秘密とは■しつもん形式だから書きやすい。振り返りによって、今の課題を見つけられる。サカイクサッカーノートは選手からも好評です。「項目が分かりやすいから書きやすい。振り返りをすることによって、チャレンジの回数が増えました。今日の練習では、後ろから前にボールを運ぶことをチャレンジしようと思います」と話すのは、川村凪くん(4年生)。「ノートを書くようになってから、考える時間が増えました。今は前回のプレーを練習前に確認しています。最近は相手を抜くためにどうすれば良いか意識しています」。そう続けるのは、滝川優馬くん(4年生)です。他にも、こんな声が挙がっていました。「前のサッカーノートより、今のサッカーになってからの方が詳しく書けている。今までは良かったこと、良くなかったことだけを書いていたけど、最近は試合や練習で相手に引っ掛かるので、なんで引っ掛かっているのか理由を書きました」(冬木碧くん、3年生)。「サカイクサッカーノートは質問になっているので、書きやすい。自分ができなかったことを読み返して、課題を見つけています。練習が始まる前に見直して、プレーでするようにしています」(長岡遥己くん、3年生)。■選手の考えが深く知れるから、指導者の声掛けが変わるコーチたちも選手の考えが分かり、声掛けが変わったそう写真:森田将義これまでは選手によって書く量や内容がバラバラでしたが、サカイクサッカーノートを活用し始めてから全員がしっかり一日の取り組みを振り返り、一面にたくさん書いています。中には書き切れなかった内容を元々使っていたサッカーノートに書く選手もいるほどです。「今までのサッカーノートはシュートが入った、入らなかった。ドリブルを仕掛けて相手に引っ掛かって獲られてしまったといった現象を書くだけで終わっていた。でも、今はどうすれば良いか、明日どんなことにチャレンジしようかという所まで明確になり、成長スピードが上がったと感じました」(大西コーチ)。サカイクサッカーノートの恩恵を得ているのは、選手だけではありません。コーチも、選手が何を考え、何を意識しているのか明確になったため、ミスをしても課題に取り組んでいると分かれば評価し、前向きな声掛けができるようになったと言います。そうした適切な声掛けができれば、選手のやる気が高まりますし、サッカーがより楽しくなるでしょう。また、目標を記入する欄があるのも特徴で、大西コーチは「選手が書きやすくなったおかげで、子どもたちの考えが色々と知れて良かった」と口にします。サカイクサッカーノートを活用し始めて。まだ1か月ほどですが、「意図したプレーが増えたり、何を考えているのかが分かるプレーが増えてきた」と大西コーチは話します。自主性が少なく、コーチに言われたことだけをやっていた選手のメンタル面にも変化が生まれてきました。今まではグラウンドに着くと携帯電話でゲームをしている選手が多く見られましたが、今は着くなりピッチに出てボールを触る選手が増えました。また、練習で使う道具が準備できておらず、コーチが声掛けをしてから、動き出す選手が目立ちましたが、今は自分たちが「今日はこれ必要だ」と気付いたり、「何がいりますか?」と聞いてくると言います。サカイクサッカーノートを上手く活用できれば、考える力が身に付き、プレー以外でも大きく成長できます。みなさんもこれを機に活用してはいかがでしょうか?サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは
2022年11月29日8月下旬に行われた、U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2022。決勝トーナメント1回戦(ラウンド16)で実現したのが、西宮サッカースクール対YF NARATESOROの関西対決です。試合は西宮が先制するも、後半同点に追いつき、PKを制したYF NARATESOROが勝利しました。子どもたちが伸び伸びプレーする姿が印象的だったYF NARATESORO。試合後、杉野航監督(以下、杉野)と選手たちに話をうかがいました。(取材・文:鈴木智之、写真:新井賢一)PK戦で勝ち上がりを決め喜ぶ選手たち(C)新井賢一<<関連記事:バルサのPKを3連続ストップで勝ち上がったヴィッセル神戸を制し、malvaスクール選抜が優勝■止める、蹴る、運ぶのベースを向上させながら、中学以降で活かせる指導をしている――PK戦の末に勝利しました。試合の感想をお願いします。杉野相手に有利に進められた中で、粘って1点返すことができたのが良かったです。先制された後にベンチも含めて、もう一回パワーを出して追いつこうという姿勢が出せたのは、成長したところかなと思います。――選手たちのプレーから、技術や判断を大切に指導されている様子が伝わってきました。どのような考えのもとで指導しているのでしょうか?杉野ボールを止める、蹴る、運ぶを大事にしています。それらのベースを上げながら、選手個々の武器や特徴を大切にし、中学、高校と次のカテゴリーで活かせるような指導をしているつもりです。ベースのところも含めて足りないところはありますが、この大会を通して少しずつ成長してもらえればと思っています。■ワーチャレは普段の大会にはない良さがある――この大会に臨むにあたって、選手たちにはどのような話をしたのでしょうか?杉野今回、久しぶりに海外からチームが参加して、本来のワールドチャレンジが戻ってきましたよね。バルセロナなど海外のクラブが来ることで、プレーを見るのもそうですし、それを見に来たお客さんの近くでプレーできるのも普段の大会にはない良さであり、規模的にも特別な大会だと思います。サカイク公式LINEアカウントでイベントや最新情報などをお届け!■自分が得た知見を選手にも還元できれば、との思いから選手との対話を大事にしている――選手たちに杉野監督のイメージを聞いたところ「芸術家」という声があがっていました。杉野そうですか(笑)。僕はサッカーを教えるのが仕事なのですが、サッカーコーチっぽいコーチじゃなくてもいいのかなと思っていますし、僕がいろんなことを見たり、知っていたりすることで、選手に還元できることもあると思います。そういう対話の中で、選手もアンテナを張ってくれれば、人間性も豊かなると思うので、そのあたりは大事にしています。■子ども本来の姿を大事に、一生懸命だけでなく「どれだけ楽しめるか」を大事にしている締めるところは締めつつ、子ども本来の姿とサッカーを楽しむことを大事にしていると語ってくれた杉野監督(C)新井賢一――先程、選手たちにもインタビューしましたが、みんな元気で明るかったです。杉野うちのクラブはある意味、放牧状態なので、子どもたちは何かをもらえそうなら集まってきますし、どこかに行きたいときは、行ってしまいます(笑)。それも含めて、子ども本来の姿が出るように心がけているので、それでいいのかなと思っています。その分、締めるところを締めるのは大変ですが、それも自分たちの楽しみや自由に繋がるので、日頃からスタッフ一同、サッカーを一生懸命真面目にやるだけではなく、どれだけ楽しめるかも大事にしています。――プレー面で大事にしていることはなんでしょうか?杉野止める蹴る運ぶ、見て考える。それが全てです。うちのクラブには身体的に優れた選手はいないので、走り合いや体のぶつけあいになると分が悪いです。その中でどうやって優位に立つかを考えています。それには見て考えることや、あらかじめ情報をとっておくことが重要になるので、選手の頭の中と僕たちコーチの考えをシンクロさせて、すり合わせることの積み重ねでしかないと思っています。サッカーは急には上手くなりませんからね。■小学生年代の結果はジュニアユースでは関係ない。結果ではなく取り組みや努力の姿勢が大事――子どもたちは来年からジュニアユースに上がりますが、この年代で大事にしていることは、どのようなことでしょうか?杉野正直、小学生の時に全国大会に出たり、選抜に入ったといったことは、ジュニアユースに行ったら何も関係ありません。ただ、そこへ行くまでの過程でどのような努力をしてきたのか。どういう取り組みをしてきたから成功したのかといった、成功体験があることは大切だと思います。当然、ジュニア年代で壁にぶつかったりと挫折することもあると思いますが、早いうちに挫折を経験した選手は立ち上がるのも早いと思います。ジュニアユースに行って頭打ちになったとしても、そこでめげない選手になってもらいたいです。それは進路選びも同じで、Jクラブの育成組織に行っても思うように結果が出ない選手もいますし、反対にJクラブに行けなくても中学時代に頑張って、高校になるときに、Jクラブに行った子以上の評価を受ける子もいます。それはユース年代でも同じことなので、サッカーに向き合って努力する姿勢は大事にしてほしいなと思います。■選手たちは大会が進むにつれ声が出せるようになった選手のみなさんにも、試合の感想をうかがいました。後半のプレーが良かったと振り返った竹添大祐くん(中央)(C)新井賢一背番号5番DF・竹添大祐(たけぞえだいち)――試合を振り返って、感想をお願いします。竹添最初に1点決められてしまって、ピンチだったんですけど、後半にクロスからシュートを決めて取り返したので良かったです。――自身のプレーはどうでしたか?竹添後半のクロスは良かったけど、前半はそこまで上がれませんでした。後半のプレーは良かったと思います。個人としての成長だけでなく、チームとしての成長も教えてくれた大田琉維くん(C)新井賢一背番号9番FW・大田琉維(おおたるい)――この大会で成長したなと思えるところは?大田チームで成長したのは、失点しても取り返せるようになったこと。個人では、点が取れるようになったことです。今大会は5点取りました。得意な形はクロスから、ワンタッチ、ツータッチで決めることです。――好きな選手は?大田ハーランドです。ゴリゴリのところが好きです。大会を通じてチームとして声が出るようになったことが成長と語ってくれた金子卓豊くん(C)新井賢一背番号3番DF・金子卓豊(かねこたくと)――今大会で成長したところは?金子大会が始まるまでは、チームとしても自分としても声があまりなかったけど、大会が始まってからは声が出るようになったので、成長したと思います。――チームの良いところは?金子個性豊かな人たちがいて、明るいところです。仲嶋大翔くんはチームの良さを教えてくれました(C)新井賢一背番号14番FW・仲嶋大翔(なかじまはると)――今日の自身のプレーはどうでしたか?仲嶋前半はあまりプレーが良くなくて切り替えも遅かったけど、後半になると抜け出しとかが早くなりました。――チームの良いところは?仲嶋みんなが明るいことです。小柄ながら俊敏な動きでチームを救った川瀬瑛大くんは、バク転も披露してくれました(C)新井賢一背番号12番GK・川瀬瑛大(かわせえいた)――PKを止めましたが、PKのときの気持ちは?川瀬最初はとても緊張したけど、気合を入れて声を出したら止められると思いました。止めた瞬間の気持ちは、とてもうれしかったです。――身長はチームでも小さい方ですが、GKをする上で工夫しているところは?川瀬背が小さいのをジャンプ力でカバーできるように、ジャンプ力を鍛えています。体操をやっていたので、バク転もできます。ワールドチャレンジ2022決勝戦の動画はこちら>>サッカーにおける認知・判断を高める賢いサッカー選手を育てるトレーニング
2022年09月05日