ヨーグルトを食べてもすっきりしないのは、「大腸の奥」が乱れているから?
―小腸も大腸も
「腸内環境」とひとくくりにしていましたが、じつは
大腸の奥のケアが大切なのですね。
これまでの食事ではなかなか大腸の奥まで水溶性食物繊維を届けるのは難しかった、ということは、本当の意味で腸が健康な人は、少ないといえますか?
(松井教授)そうですね。多くの人は、
大腸の奥は悪玉菌が優位、つまり腸内フローラのバランスがととのっていないといえるでしょう。
たとえば、ヨーグルトなど腸によいとされる食品を積極的に食べているのに、いまいち効果が感じられない方もいらっしゃると思います。
それは、そもそも大腸の腸内フローラがアンバランスだったため、どんなに腸によい栄養や善玉菌を摂っても定着しなかったのが原因のひとつに考えられます。
耕す前の荒れた土地に、いきなり種をまいても食物はよく育ちませんよね。腸もそれと同じで、まずは大腸の腸内フローラをととのえて土壌をつくり、そのうえで菌のエサとなる栄養を入れてあげることが、大切なのです。
「腸活」の新定番の兆し。大腸の奥まで届く、スーパーフードとは
―なるほど。とはいえ、水溶性食物繊維のほとんどは腸の入り口で食べられてしまうとの話でした。大腸の奥まで水溶性食物繊維が届く食材はあるのですか?
(松井教授)食物繊維が豊富に含まれる食品のひとつに「大麦」があります。そのなかでも、品種改良を重ね、食物繊維が通常の大麦のおよそ2倍、さらに
「レジスタントスターチ」が4倍含まれた「スーパー大麦」に着目しています。
一般の大麦に比べて2倍の食物繊維、4倍のレジスタントスターチ(難消化性でんぷん)を含むスーパー大麦
―
「レジスタントスターチ」は一般的にはあまりなじみのない成分かもしれません。これは食物繊維の仲間のデンプンだと考えてよいですか?
(松井教授)おっしゃるとおりです。
レジスタントスターチは第3の食物繊維とも呼ばれていて、
大腸の奥にいる善玉菌のエサになる成分です。
スーパー大麦はレジスタントスターチの含有量の多さが大きな特徴で、またそれ以外の食物繊維と複雑に絡み合った構造をしているため、腸の入り口で発酵されにくく、大腸の奥のほうまで届く性質を持っています。
―エサが大腸の奥まで届くと、具体的にどんな変化が起こるのでしょう。
(松井教授)先ほどもお話したように、多くの人が、
大腸の奥は悪玉菌が優位な状態です。そこに水溶性食物繊維やレジスタントスターチを届けると、善玉菌はそれらを食べて「短鎖脂肪酸」と呼ばれる成分をつくります。すると、腸内環境はアルカリ性から弱酸性に傾きます。
その弱酸性の腸内環境こそ、善玉菌がすみやすい環境でもあります。つまり、
大腸の奥までエサが届けば、善玉菌が元気になり、さらに自らすみやすい環境をつくり、腸内フローラのバランスがととのうのです。
―
スーパー大麦は、健やかな腸へと導くまさにスーパーなフードといえそうですね。実際に、松井教授も召しあがったそうですが、なにか変化はありましたか?
(松井教授)スーパー大麦を食べ始めてしばらくは、なんとなくおなかがはるような感じがありました。そのうち、排便にかかる時間が短くなり、すっきり、スムーズにでるようになりました(笑)。
もしかすると、スーパー大麦を食べ始めたことで、おなかがゆるくなったり、便秘になったりなど、多少体の変化を感じる人もでてくるでしょう。
心配になるもしれませんが、これはごく普通の体の反応ですので、ご安心ください。これまでは大腸の奥まで到達しなかった成分が届いている証拠です。
―効果を実感できるまでに、時間はかかるものなのでしょうか。
(松井教授)腸内細菌叢は、がっちりとスクラムを組んでいるので、そのスクラムを解くのに2週間くらいかかります。4週間を過ぎると腸内フローラがバランスの良い状態になります。
―では、スーパー大麦を食べ始めてからだいたい1ヵ月くらいはおなかの調子が変化する可能性があることを、頭に入れておきます。ちなみに、調子がよくなったらやめてもよいのでしょうか。
(松井教授)残念ながら、もとの食生活に戻すと、1ヵ月くらいで腸内環境も元通りになってしまいます。できれば毎日、継続的に摂取するのが好ましいですね。