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顔にできるニキビの中でも、赤く化膿しやすく治っても
跡に残りやすいのが、
あごを中心としたUゾーンのニキビ。
思春期に悩むニキビは、おでこや鼻の周りにできる場合が多いですが、あごニキビは20代以降に多くなる傾向があるようです。
ニキビはできる箇所によって原因やスキンケアが違うようです。今回は、
大人になってからできやすい「あごニキビ」の原因と正しいケア方法をご紹介しましょう。
【監修】
イシハラクリニック副院長 石原新菜 先生
小学校は2年生までスイスで過ごし、その後、高校卒業まで静岡県伊東市で育つ。2000年4月帝京大学医学部に入学。2006年3月卒業、同大学病院で2年間の研修医を経て、現在父、石原結實のクリニックで主に漢方医学、自然療法、食事療法により、種々の病気の治療にあたっている。クリニックでの診察の他、わかりやすい医学解説と、親しみやすい人柄で、講演、テレビ、ラジオ、執筆活動と幅広く活躍中。
著書に、13万部を超えるベストセラーとなった『病気にならない蒸し生姜健康法』(アスコム健康BOOKS)をはじめ、『「体を温める」と子どもは病気にならない』(PHP研究所)等30冊を数える。
■あごニキビの原因
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あごニキビの原因1:
皮脂が多い
皮脂は皮脂腺から分泌されますが、顔の中でもあごには多くの皮脂腺が集中しています。おでこや鼻といったTゾーンほど目立ちませんが、実は、ふだんから皮脂が多く出ているのです。
そのため、何らかの理由で肌の正常な状態が一旦崩れてしまうと、皮脂で毛穴がつまりやすくなり、ニキビに発展するのでしょう。
あごニキビの原因2:
食生活の乱れ
仕事や家事育児が忙しすぎると、自分のことがついつい後回しになり、食生活も乱れがちになりますよね。それは、あごニキビという形で顔に出てしまうものです。
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特に、皮脂の分泌を抑えるビタミンB2が不足すると、ニキビは増えてしまう傾向にあるようです。
あごニキビの原因3:
ストレス
あごニキビの原因の一つに、身体的・精神的なストレスが考えられます。
肌は本来、定期的なターンオーバー(=肌の角層の細胞が入れ替わること)を繰り返すことで、健やかかつ潤った状態をキープできます。
しかし、過度なストレスがかかることでターンオーバーの周期が狂い、ニキビの原因となるのです。あごニキビの原因4:
油分多めのスキンケアアイテム
前述した通り、あごは皮脂分泌が多い部分です。そのため、あご部分をケアする基礎化粧品の成分にも気をつかう必要があるでしょう。
例えば、油分を多く含む基礎化粧品などを使うと、肌表面をおおう油分が多くなりすぎて、毛穴がつまりやすくなります。そのため、ニキビの外部的要因となることが多いといえます。
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同様に、油分の多いクリームタイプのファンデーションも、カバー力があるのでニキビは目立たなくなりますが、より悪化を招く原因にもなります。
あごニキビの原因5:
乾燥
あごは、皮脂腺が多い反面、汗腺が少ない場所です。暑い時や運動をした時、おでこや鼻の頭は汗をかいても、あごは汗をかいていないのはそのためです。
汗腺が少ないということは肌が乾燥しやすく、それを補おうとより多くの皮脂を肌は分泌しようとします。すると、さらに毛穴はつまり、ニキビの悪化という悪循環となってしまうのです。あごニキビの原因6:
睡眠不足
女性は、生理周期によって体内のホルモンバランスが変化します。
生理前、生理中、生理後といった体の変化に合わせ、適切なホルモンが分泌されています。
しかし、夜更かしをしたり十分な睡眠がとれていないと、必要なホルモンがうまく分泌されなかったり、逆に多く出てしまうことも。そのため、体内のホルモンバランスが崩れ、肌荒れの原因となります。
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また、ホルモンバランスの狂いによって、肌のターンオーバー周期も乱れ、ニキビができやすくなるのです。
あごニキビの原因7:
摩擦
あごはフェイスラインでもあり、口に近い部分でもあるため、何かと刺激を受けやすい場所です。
例えば、頬杖をつく、食事時に紙ナプキンでふく、マスクでおおう、首に巻いたマフラーが当たるなど、普通に生活していても1日に何度も摩擦を受けます。
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そのため、初期ニキビでもそれらの刺激によって傷つき、化膿・炎症を起こして赤ニキビに発展してしまうことも。
あごニキビの原因8:
ホルモンバランスの乱れ
ホルモンバランスの乱れは、ニキビや肌荒れの原因となります。前述した通り、睡眠不足やストレスはホルモンバランスの崩れを招き、あごにぷくっと化膿した赤ニキビができたりします。
また、男性とは違い、女性には生理があります。ホルモンバランスが不安定になる生理前の時期もニキビができやすいといわれています。
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この時期は、皮脂分泌を活発化させるプロゲステロン(黄体ホルモン)の影響が強くなり、過剰な皮脂によって毛穴がつまりがちになるのです。
参考サイト:
資生堂 医肌研究所「顎(あご)にニキビができやすいのはなぜ?原因と予防対策」
資生堂 医肌研究所「気になる大人のニキビ!発生のしくみと原因を知って対策を」
クラシエ おとなのにきび研「治りづらい顎"にきび"を何とかしたい!」
日本痤瘡研究会「ニキビQ&A」
日本新薬「生理のしくみ」
■あごニキビは大人の方がなりやすい?
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▼思春期ニキビと大人ニキビ
10代の頃にできる「思春期ニキビ」と20代以降にできる「大人ニキビ」は、同じニキビでも原因が異なります。
思春期ニキビの原因は、「男性ホルモン」の影響が一番大きいといわれています。男性ホルモンは12歳〜18歳くらいまで活発に分泌され、女性も卵巣や副腎から代謝される男性ホルモンの影響を受けます。
その期間は、ちょうど生理が始まるなど女性の体が大きく変わる時期とも重なり、皮脂の分泌量が増えてニキビができやすくなるのです。
一方、20代以降にできる大人ニキビは、主に次の3つの原因が考えられます。
・肌のバリア機能の低下
・肌のターンオーバーの乱れ
・生理周期による過度な皮脂分泌
思春期ニキビは体の成長による内的な原因であるのに対し、大人ニキビは乾燥や紫外線、摩擦による肌バリアの低下や、生活習慣や食習慣、ストレスによるターンオーバーの乱れなど、外的要因が大きいようです。
▼Uゾーンのニキビは大人ニキビの定番?
先に解説したように、あご、フェイスラインといったUゾーンは、皮脂腺が多い反面、汗腺が少ないため乾燥しやすい箇所です。
さらに、Uゾーンは帽子や洋服で太陽光を防ぐのが難しく、地面からの照り返しもあることから、紫外線にさらされやすい場所です。
しっかり日焼け予防をしていたのに、首やデコルテが日焼けしてしまったという経験はありませんか? 同じようにUゾーンも紫外線に刺激にさらされているのです。
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乾燥や紫外線といった外界からの刺激によって、肌を守るバリア機能が弱まってしまうため、大人ニキビはUゾーンにできやすいといわれています。
「そういえば、若い頃はTゾーンにニキビができていたのに、大人になってからのニキビは別のところにできるようになった」と感じている人も多いでしょう。その代表格があごニキビなのです。
▼あごニキビができるまで
原因は異なりますが、あごニキビができるまでの過程は、ほかのニキビと同じです。
1.何らかの理由によって毛穴がつまる。
2.毛穴に皮脂がたまり、アクネ菌(ニキビの原因菌)が増殖。
3.毛穴に炎症が起こる。
最初は白ニキビや黒ニキビなどの初期ニキビですが、さらに炎症が強くなると赤ニキビ、それが黄色くうんでしまう黄ニキビに発展していきます。
参考サイト:
NHK 健康ch「【思春期のニキビ】特徴・原因・スキンケア・治療法を徹底解説」
資生堂 医肌研究所「気になる大人のニキビ!発生のしくみと原因を知って対策を」
日本痤瘡研究会「ニキビQ&A」
■あごニキビなどUゾーンのニキビケア方法
ケア方法1:
ゴシゴシNG! でもUゾーンもしっかり洗顔
ニキビのケアで大切なのは、清潔に保つこと。洗顔によって皮脂や汚れを取り除き、まずは毛穴がつまらないようにすることが大切です。
ただし、きれいにしようとするあまり強くゴシゴシこすって洗うと、その摩擦で肌が傷ついてしまったり、潤いがなくなってさらに乾燥してしまうことも。
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洗顔は、よく泡立てた洗顔料をクッション代わりにして、やさしく包むように洗い上げましょう。Uゾーンは洗顔料が残りやすい箇所なので、ぬるめのお湯でていねいにすすぎます。タオルで水分を拭き取る際も極力こすらず、上から抑えるようにします。
ニキビができている時は何度も洗いたくなるものですが、洗いすぎによる刺激や乾燥は逆にニキビを悪化させてしまうので、1日2回程度を目安に洗顔しましょう。
ケア方法2:
Uゾーンも保湿をしよう
Tゾーンの保湿はていねいにするけれど、あごやフェイスラインは手を抜きがちという人は少なくないでしょう。しかし、Uゾーンは乾燥しやすい箇所なので、一層保湿は重要です。
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洗顔後や入浴後は、すぐに保湿をするのがベストです。その際の基礎化粧品は「ノンコメドジェニック」もしくは「コメドジェニック試験済み」など表記があるものを選ぶといいでしょう。これらは、ニキビができにくいかどうか調べるテストを実施して開発された商品です。
ケア方法3:
生活習慣を見直す
大人ニキビには、食事や睡眠など生活習慣の見直しも大切です。
食事は、肌の元となるたんぱく質、肌の新陳代謝や皮脂の分泌を促すビタミンB2やビタミンB6、肌の血行を促進し肌荒れを改善するといわれるビタミンE、腸環境を整える食物繊維などを積極的にとりましょう。
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また、ビタミンAやビタミンB1、ビタミンCなど、肌のターンオーバーを促し、バリア機能を整えるビタミン類の摂取もおすすめです。
一般的に油っこい物、甘い物を食べるとニキビができるといわれていますが、これは誤解です。特定の食べ物がニキビの原因になるというはっきりとした根拠はありません。その逆もしかりで、これを食べればニキビが治るということもありません。
偏りのないバランスの良い食事を心がけ、1日3食、間食は控えめにといった食生活を心がけましょう。
食事と同様に大切なのが、睡眠。質の高い深い眠りは、肌の細胞を生まれ変わらせ、ニキビや肌荒れを改善する効果があります。
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特に大切なのは、眠りに落ちてからの最初の3時間。この間は「ノンレム睡眠」といわれる深い眠りで、成長ホルモンが分泌される「眠りのゴールデンタイム」と呼ばれています。
午後10時〜午前2時を眠りのゴールデンタイムとする場合がありますが、これは一般的な日本人の就寝時間からノンレム睡眠時間を割り出しただけなので、最近は当てはまらないといわれています。質の高い眠りは、就寝時刻ではなく、就寝からの時間なのです。
このノンレム睡眠時間帯に質の良い睡眠を取るために、ベッドに入る1〜2時間前にお風呂に入って体温を上げる、眠りを阻害するブルーライトを発する機器(テレビやスマホなど)は使わないなど、睡眠環境を整えましょう。
ケア方法4:
適度に薬も取り入れて
清潔と保湿を心がけ、生活習慣を整えてもニキビが改善しないようであれば、皮ふ科の受診やニキビ薬を取り入れるのも一つの手です。
白ニキビや黒ニキビなど、炎症がそれほどひどくない初期ニキビなら、ドラッグストアなどで購入できる市販のOTC医薬品(処方せんが必要ない要指導医薬品もしくは一般医薬品)でも改善が期待できます。
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もし、赤ニキビや黄ニキビなど炎症がひどい場合、かゆみや痛みがある場合、OTC医薬品で良くならなかった場合は、皮ふ科の受診がおすすめです。病院で処方された薬を使用することで、ニキビの状態に合った治療ができ、より早く改善できるでしょう。
また、ニキビと間違えやすい皮ふ疾患、例えば毛包炎、ニキビダニ症、脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)などの場合、受診によってわかるメリットもあります。
参考サイト:
資生堂 医肌研究所「顎(あご)にニキビができやすいのはなぜ?原因と予防対策」
日本痤瘡研究会「ニキビQ&A」
資生堂 医肌研究所「ニキビをセルフケアで治すには?食事や睡眠、お手入れの注意点」
NHK 健康ch「【思春期のニキビ】特徴・原因・スキンケア・治療法を徹底解説」
第一三共ヘルスケア くすりと健康の情報局「ニキビ・吹き出物ができたらどうする?」
大人ニキビの代表格といわれる、あごニキビ。あごという部位ならではのケアをすることで、手強い大人ニキビの改善・予防ができます。
あごニキビを治すポイントは3つ。
清潔、保湿、生活習慣の改善の3つを心がけて、あごニキビとさよならしましょう。
参考資料:
・資生堂 医肌研究所
・クラシエ おとなのにきび研
・日本痤瘡研究会
・日本新薬
・NHK 健康ch
・第一三共ヘルスケア くすりと健康の情報局
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