【医師監修】 肥満女性の妊娠、赤ちゃんへの影響や気を付けることは?
肥満は糖尿病や妊娠糖尿病と関連が深く、日本人約14万人の統計データによると、妊娠前のBMIが18.5未満、25未満、25以上の場合別で糖代謝異常の割合は、それぞれ1.0%、1.8%、10.4%です。
妊娠糖尿病を持っている人には巨大児(赤ちゃんの出生体重が4,000g以上)の出産が増えたり、また陣痛が微弱になることが多く、難産にともなう吸引・鉗子分娩の増加、帝王切開率の増加が認められています。産後の子宮収縮も悪くなり、分娩前後での出血量が有意に増加し出血多量となり、輸血をしなければ命が助からない状態になるリスクも増加します。
また一方で、妊娠中に胎児死亡を起こすリスクも肥満や糖尿病、妊娠糖尿病で増加することが知られています。胎児期の神経の形成に異常(神経管閉鎖障害)をきたすリスクも糖代謝異常がなくても肥満の妊婦で上昇します。糖尿病や妊娠糖尿病など糖代謝異常の母体から生まれた子は将来、肥満、糖尿病、脂質代謝異常、高血圧になるリスクが高いことも近年明らかになってきました。
肥満女性が妊娠したときは何に注意したらいいの?
・食事について
厚生労働省が策定した日本人の食事摂取基準(2015年版)によると、妊娠前のBMIが18.5以上25未満の妊婦の場合、妊娠40週で3kgの赤ちゃんを出産するのに必要な体重増加量は11kgです。標準体重(BMI25まで)の人では、妊娠中の体重増加は7~12㎏が理想とされていますが、ここで取り上げる肥満の妊婦については「個別対応」となっています。
妊娠中は体重は増えることはあっても減らすことはほぼ不可能ですから、肥満の人が妊娠した場合はこれ以上増やさないよう努めるより他ありません。
妊娠中は赤ちゃんのために必要な栄養をしっかり摂ることは大事です。肥満の方は食事のカロリーが多いケースもあるので、まず自分の食生活を見直して、一日の摂取カロリーを見直しましょう。あまり食事の栄養を気にしない人で肥満になっている人ほど、糖質過多の食事になっていることがあります。カロリーは控えながら、胎児の正常な発育に欠かせないたんぱく質、脂質、ビタミン類を適量摂ることが望ましいです。
厚生労働省が2006年に策定した「妊産婦のための食事バランスガイド」で示されているようにビタミンやミネラルが不足しがちなため、副菜でしっかりと緑黄色野菜を食べることが大事です。