出産の2週間前に突然の他界…「返事ができなかった手紙」【体験談】
私の祖母が他界したのは、息子が生まれる2週間前のことでした。いつもやさしくしてくれた祖母に、ひ孫の顔を見せてあげられなかったことの他に、もう一つ私には心残りなことがありました。
大好きな祖母は筆まめな人でした
「元気にしていますか」祖母からの手紙の書き出しには、いつもこう書いてありました。祖母は周囲への気配りがじょうずで、私のことを気づかいながらもこちらからの返信を求めるようなことはなく、「おばあちゃんのボケ防止だから、お返事はいいのよ」と言ってくれました。
私はその言葉に甘えて、電話したり遊びに行ったりはするものの、手紙を出すことはほとんどなく、妊娠してつわりが出始めてからは一度も書きませんでした。
元気だったのに…祖母との突然の別れ
出産間近となり、私たち夫婦は子育てしやすい環境へ引っ越しをすることになりました。そのことを伝えると祖母は荷解きの手伝いを買って出てくれ、昼食まで用意してくれたのですが、まさかこのときの「きんぴら」が、最後の祖母の手料理になるとは……。
引っ越しから一週間ほどたち、祖母と同居する叔父から「祖母の具合が急に悪くなった」と知らされ、病院に運ばれたときにはすでに昏睡状態。祖母は二度と目を覚ますことはありませんでした。
祖母への最後の手紙
すでに臨月を迎えていた私は、葬儀への参列は家族に止められてしまいました。せめて手紙だけでもと、たくさんの想いを込めて手紙を書きました。このときに感じた後悔は今でも忘れることができません。
それからというもの、私は手紙をたくさん書くようになりました。
身近な人へのちょっとしたお礼のメールから、大好きな作家さんへのファンレターまで。手紙を書くうちに、祖母の気持ちがだんだんとわかるようになりました。大切な人にいつでも感謝を伝えられると思いがちですが、実際はそうではなく、相手と疎遠になったり、祖母のように突然亡くなることもあります。おそらく、祖母は自身が高齢なことを感じて、伝えられるうちにと私に手紙を書いてくれていたのだと思います。
育児で忙しいと友人と疎遠になることがあったのですが、祖母の手紙で得た教訓から、少し手があいたときになんてことのないメールを送ったりしています。