余命宣告を受けた夫「ごめんな…」→妻「あっそ!それなら…」冷たく突き放したワケとは?
私の夫はとにかくお人好し。誰かが困っていると聞けば、手を貸さずにはいられない人です。つい最近も、補聴器を失くして困っているおばあちゃんと、川沿いを一緒に探したとかで、泥だらけになって帰ってきました。夫から日々そんなエピソードを聞くのも、私の楽しみの1つです。
しかし、ある日夫が突然倒れてしまいました。診察の結果告げられたのは「余命1年のガン」。夫はまだ30歳……これまでたくさん苦労をしてきた分、しあわせにならなくてはいけない人です。それなのに、どうしてーー。
余命1年…
夫の病気を治すには、たくさんのお金が必要です。しかし夫は困った人を助けるのはもちろん、人が喜んでくれることをするのが大好き! すぐに人のためにお金を使ってしまうので、私たちに貯金はありませんでした。
そんなわが家の事情をどこからともなく聞きつけてきたのが、夫の同僚のタナカさんでした。私はタナカさんのことが少し苦手。結婚当初からずっと私に言い寄り、断っても断っても諦めてくれません。
タナカさんは大地主の息子で、本当なら働かなくてもいいくらいの資産を持っているそう。会社員をしているのは“社会見学”なのだと言っていました。
夫の病気を治すために私ができること
号泣する私にタナカさんは、最先端の治療が受けられる海外の病院を紹介すると言いました。もちろん高額な費用がかかるけれど、夫と離婚して自分のところに来てくれれば全額負担すると言われ、私の心も揺れます。
返事を出すまでに与えられたのは3日間。ギリギリまで悩んで覚悟を決めた私は、タナカさんに返事をして夫の病室を訪ねました。
「俺、余命1年だって。……ごめんな」夫は私に心配かけまいと、笑顔で言います。私は涙をグッと堪え「あっそ。それなら離婚して」と言い、離婚届を差し出しました。
夫は驚いていたものの「俺が死んだらひとりぼっちになるもんな……」と素直にサインしてくれました。「幸せになってね、絶対に」と夫。これ以上涙を我慢できなかった私はそそくさと病室を出ていきました。
これで夫は治療が受けられるはず。きっと治ると信じて、私は夫と離婚し、タナカさんと暮らし始めました。
夫との再会
それから数年。タナカさんとの生活に不便はないけれど、幸せな気持ちになることもありませんでした。