連載記事:『みんなの学校』流 親子関係のつくり方
トラブル発生、親としてわが子にどう向き合うか【『みんなの学校』流 親子関係のつくり方 第1回】
突然だが、
ドキュメンタリー映画『みんなの学校』をご存じだろうか?
映画館での上映は1年以上前に終わっているのに、全国のママたちが今でも自主上映会を開催しているという異色の映画だ。それはつまり、ママたちが「私も、この映画のために何かしたい!」という気持ちになる、ママたちを「突き動かしている映画」ともいえる。
右:『大人がいつも子どもに寄り添い、子どもに学ぶ!「みんなの学校」流 自ら学ぶ子の育て方』』(小学館)
今、映画を中心とした輪は子を持つ親や教育関係者だけでなく、さまざまな分野の人にまで広がっている。たとえば、IT企業の社長。一見、子どもの教育とは何の関係もなさそうだが、経営者という立場からすると「人が育つ、人を育てるとは、どういうことなのか?」という点が気になり、無関心ではいられないそうだ。
■広がる「みんなの学校」の輪
『みんなの学校』の舞台は、大阪市立大空小学校。
そう、公立の小学校だ。その地域に住む子どもなら誰でも通える。
一般的な学校と少し違うところがあるとすれば、特別な支援が必要な子が全校児童220人中30人を超える(映画撮影時)こと。それでも、特別支援教室はつくらず、みんなが同じ教室で学んでいる。
ただし、それだけなら、ほかにも同様の学校はあるだろう。大空小学校のすごいところ、それはこれだけ「賑やかな学校」なのに
「不登校児が0人」なことだ。それぞれの子に、それぞれの居場所があるということに感動する。
そんな「みんなの学校」の劇中で輪の中心にいるのが、大阪市立大空小学校 初代校長の木村泰子さん。
大阪市立大空小学校の校長を9年間勤め、「大空小学校の空気」を作り上げた。そして2015年春、45年間の教職歴をもって退職。
現在は全国各地で講演活動に多忙な日々を送っている。そんな多忙な木村先生に、今回運良くお話を伺うことができた。
■その子がその子らしく育つ以外に学校の目的はない
「木村先生の話を、どこから始めよう?」
今回、記事を書くにあたり悩んだポイントがそこだった。なぜなら、私自身が受けてきた「教育」(ごく一般的な日本の教育だ)と、木村先生の世界観は、かなりかけ離れているからだ。「今まで、自分が教育だと思っていたこと」を一旦、手放すくらいの気持ちがないと、木村先生の世界観は、すんなり入ってこない。
「私が教育だと思っていたこと」と「木村先生の世界観」は、何が違うのか? それは、スタート地点だ。
ひと言で言えば、木村先生は「子どもありき」の人。「
その子が、その子らしく育つ以外に学校の目的ってないじゃないですか。視点は、そこにしかありません」(木村先生)
親に言い換えれば、「我が子が、我が子らしく育つ以外に家庭の目的はない」ということになる。そんなこと、なかなか言えないし、思えない……。
結論として、今回の原稿は「取材テープを文章にし、それを微調整したもの」に留めた。取材前、記事の構成を練って作った企画書も、木村先生の言葉の前には何の意味もなかった。
さて、まずは「わが子がトラブルを起こしたとき」のことから、話を始めてみよう。