連載記事:新米ママ歴14年 紫原明子の家族日記
「子育てしんどい」はパパだって言っていい【新米ママ歴14年 紫原明子の家族日記 第29話】
よその家庭の育児って見えるようで見えないし、見えない分、てっきり自分以外はみんな完璧な育児をやってると根拠なく思ったりしてしまう。でも、ついぽろっと自分のダメ親エピソードを披露して「そんなのうちもあるある」なんて言われると驚いて、それだけで安心する。
きっとみんなそうなのだろう、それを皮切りに、ダメ親っぷりを競うように、よりパンチの効いたエピソードが次々と引き出されたりすることもある。「朝、おにぎりを作りかけたんだけど時間がなくなって、ボウルから米を直接、娘の口に放り込んできた」とか、「うちの朝ごはんはウィダーインゼリーだったよ、ママチャリの後ろの席で」とか。
こういう話しをする中で、いいとき、ダメなとき、あっていいんだな、と自分の育児を寛容に捉えられるようになるし、ともすればママ友同士、戦友のような気持ちが芽生えて、もうどうしても無理ってときに助け合える仲になったりする。
だからふと思ったのだ。朝見かけたあのお父さんには、育児について気軽に話せる友達がいるんだろうか、と。もしかすると、ママ達に比べてパパ達には、まだまだそういう話のできる場所が少ないのかもしれない。
またあったとしても、すごくオープンマインドな一部のパパだけが入っていける、間口の狭いコミュニティだったりするのかもしれない。
世の中ではまだまだ、社会に出て経済活動を営む、もともとは男の仕事とされていたようなことがとにかく偉くて、家事や子育ては取るに足らない些事、というような暗黙の認識がある。だからこそ、育児のストレスって、もしかしたら仕事のストレス以上に、パパ達は口に出しづらいことかもしれない。
でも、レジャーやレクリエーションなどで部分的に育児に「協力」するのではなくて、育児を、生活として当たり前に「営む」パパが増えてくれば、やっぱりちょっとしたストレスを感じたり、疲れたり、うまくいかなくて落ち込んだり、なんてことは当然ある。
仕事で1億の損失を出す、とかいうようなことに比べると「子どもが泣き止まない」なんて一見地味に見えるかもしれないけど、1年365日、プライベートな空間で休みなく続くことだからこそ、うまく取り合っていかないと、じわじわ積もり積もって自分を蝕む。
育児がつらい、こんな風にうまくいかなかった、こんなことに困ってる。パパ達も、そういうことを気軽に言い合えるといいなと思う。決して些細な悩みじゃない。
何しろその営みには、子どもの命がかかっているのだ。うまくガス抜きをしながら、長距離走の育児をみんなで支え合って完走できるといいなと思う。
イラスト:片岡泉
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