■授乳や排せつの回数・量「大切なのは“記録より五感”」
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──育児アプリなどについてはどのように考えていらっしゃいますか?
大坪先生:育児アプリ使用されている方が増えていますね。授乳の度に記録をずっとつけていらっしゃるかたもありますね。
──授乳の回数や量、排せつなどの記録はつけた方がいいですか?
大坪先生:お子さんが病気の場合や、医師や医療従事者から「しばらく情報共有したいので」と依頼されていたらその期間は必要です。
そうではない場合は、記録よりはお母さんの感覚もとても大切だと思います。授乳の回数、時間よりは、母乳ならお母さんの飲み取られている感覚、ウンチのいつもの様子とかですね。回数や時間にとらわれていると、その事柄自体がよく見えていないことってありますよね。「どんなウンチでした?」と聞かれると答えられないとか…。
──確かに、オムツなどよく見ないでさっさと交換していました。
大坪先生:「紙オムツにしているおしっこ、どんな感じでした?」と聞くとみなさん「え?」って答えますよ。「おしっこは出ているようだけど、おむつは乾いていました」など、回数よりもぬれ心地とか、赤ちゃんの表情が大事な情報なんですね。だから、五感で感じてください、とよくお母さんにお話しています。
──目で見る以外にどうすればいいのでしょうか?
大坪先生:目でみるだけではなく、肌で感じてください。においも感じてください。赤ちゃんを五感で感じてくださいね。時々、「目の情報が多すぎるなと思ったら目を閉じてください」とお話しています。目を閉じて赤ちゃんのおなかに触れてみる、汚れたおむつのぬれ具合を触ってみるなどをしてみると、感覚がぐっと上がってきます。
──手で触れる感覚が大事だと考えて、先生はベビーマッサージをすすめられているのですか?
大坪先生:手の感覚は大事ですね。お母さんが体で感じることが大事だと思います。抱っこも縦抱きや横抱きしなければいけないわけではなく、赤ちゃんが穏やかで気持ちよさそうににこにこっとしてくれればいいのです。そういった赤ちゃんが心地いい抱き方って、お母さんが緊張をゆるめて手で感じないとなかなかできないですよね。
──初めての育児だと、なにが正解かまるで分からない状態ですが、やはり自分の五感で培っていくしかないということですね? そうすると、情報としてはどんな情報を得ていけばいいのでしょうか?
大坪先生:お母さん自身が穏やかでいれば、必要な情報が見えてきて、聞こえてくるのではないでしょうか? 極端な情報ばかり追いかけることもなくなるかと思います。
──母親が穏やかな気持ちでいることが大事なんですね。
大坪先生:自分の心と相談する。ゆっくり深呼吸してみてもいいかもしれません。
そのために、誰かに気持ちを聞いてもらい、相談する。そして、自分が情報にとらわれ過ぎて赤ちゃんの表情が読めなくなったら、しばらくスマホやパソコンから離れてみるのも必要かもしれませんね。
■「ハイハイしないけど大丈夫?」赤ちゃん自身の成長する力を信じる
──それでもついつい「より良い発達・発育」を求めて情報検索をしてしまいがちです。
大坪先生:赤ちゃんには「成長しよう」という欲求があります。今、NHKの番組『みんなで筋肉体操』が流行っているそうですが、そこで紹介されている体操は赤ちゃんの動きにそっくりなものも多いんです。
スクワットが良い例ですね。つかまり立ちを始めた赤ちゃんってずっとスクワットみたいな動作をしていることがあるでしょう? 赤ちゃんの自然な欲求として、次の発達に結びつく動作を自発的にするんです。
──赤ちゃん自身が自分になにが必要かを知っているということですか?
大坪先生:ハイハイをしないお子さんもいるので、「ハイハイしないといけないですか?」と聞かれることもあります。
でも、ハイハイしないで立てるようになり、歩く方法を自分で身につけていくお子さんもいます。子どもの発達は自分のやりやすいところからやるので、それを無理に妨げる必要はないと思います。
──「ハイハイしなければいけない」などと情報に振り回され過ぎず、まずはわが子を穏やかに気持ちで見守るといいのですね。今日はありがとうございました。
大坪先生が頻繁に使われている「腑(ふ)に落ちる」という言葉を辞書で調べると、腑とは、「1.はらわた。内臓。胃 2.心。心根。
性根」をさし、腑に落ちるとは、「納得がいく、合点がいく」(
小学館 デジタル大辞泉より)という意味を持っています。
先生がこの言葉を使われているのは、頭だけではなく、肝の部分から自分で納得していくことが、忙しく情報の多い現代社会の子育てで大切なことと伝えるためだと感じました。
最終回は、忙しいママでもできる1日5分のセルフケアについておうかがいします。
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