連載記事:榊原先生、教えて! 子どもの体の不思議
好き嫌いが多く食べない「これって、わがまま?」誤解の多い子どもの味覚【榊原先生、教えて! 子どもの体の不思議 第4回】
■赤ちゃんはいつから味覚を感じている?
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――素朴な質問ですが、赤ちゃんはいつから味覚を感じているのでしょうか?
榊原先生:お母さんのおなかの中にいるときから味覚を感じていますよ。
――本当ですか…! おなかの赤ちゃんが味覚を感じていることは、どうやって分かるんでしょうか?
榊原先生:たまたま妊娠中のお母さんに、ある薬品を注射する必要がありました。体には無害な薬品です。
この物質は血管の中をめぐり、舌の中の血管を流れるときに苦みとして感じられます。だからお母さんは当然、苦みを感じますよね。
そしてこの物質は胎盤を通じて、おなかにいる赤ちゃんの舌の中の血管にも流れます。そのとき「苦そうな表情」をした赤ちゃんの様子がエコーで観察できたんです。
――興味深いですね…! それで赤ちゃんは味覚を感じていることが分かったんですね…!
榊原先生:そうです。
先ほどお話ししたように、赤ちゃんの好きな味は最初は刺激のないもの、薄味ですが、甘い味も好むようになります。
これはどうして分かるかというと、さまざまな味の液体をほ乳びんに入れ、乳首を吸う時間を比較してみたんです。その結果、甘い味を含む乳首を吸う時間が長かった。反対に苦い味、酸っぱい味は苦手であることも分かりました。
――なるほど…。じゃあ、塩味はどうでしょう? 味覚の中には先生のおっしゃったように甘み、酸味、苦みなどがありますが、塩味もありますよね。塩味はどのように感じているのでしょうか。
榊原先生:おもしろいことに「好きでも嫌いでもない」ようなんです。
――え、好きでも嫌いでもない…?
榊原先生:正確にいうと、塩味の薄い、濃いの微妙な違いは区別できず、どんな塩味でもニュートラル。つまり反応がないんです。
――塩味を受け入れはする。でも、薄い・濃いなどの塩の割合について「好き・嫌い」とは感じていないということですか?
榊原先生:そうです。
――味によって、違う感じ方をしている…。子どもの味覚っておもしろいですね!
今回は、子どもの好き嫌い、そして味覚にまつわる不思議について、お話をうかがいました。
子どもの好き嫌いは、ママの大きなお悩みの一つとしてあげられますが、実は好き嫌いは当たり前のこと、自然なことという先生の言葉に胸をなでおろしたママも多いのではないでしょうか。
嫌いなものを減らしてほしい、少しでもいろいろな食材を食べてほしい…。
今まではそう思ってがんばっていましたが、お皿に盛りつけた瞬間に子どもから嫌な顔をされて、食事の時間が楽しめないときもありました。子どもにプレッシャーをかけていたことも…。
気にする必要はない、自然な反応ならそこまで気を張らなくてもいいんだ、との先生の言葉にホッとしました。
次回は「子どもの手足の不思議」についてお話をうかがいます。お楽しみに!
参考図書:
『大人が知らない子どもの体の不思議』(講談社)
榊原洋一著
子どもと大人はどう違うのか。それは単に大きさだけの違いではありません。どうして夜泣きをするの? どうして寝相が悪いの? どうして落ち着きがないの? 子育て中に親が抱く「答えが見つかりにくい質問」にエビデンスの精神で解答することを試みました。子どもの心と体の不思議を理解する、手助けとなる一冊。