連載記事:榊原先生、教えて! 子どもの体の不思議
「虫歯になるのはどうして?」子どもの虫歯、口臭、よだれの不思議【榊原先生、教えて! 子どもの体の不思議 第6回】
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よく「親に虫歯があると、子どもにうつる。だから同じスプーンやフォークを使ってはいけない」という話を耳にしますが、これって本当なのでしょうか。
何を隠そう、虫歯の多い私。虫歯のせいで奥歯まわりがほとんど銀歯なので、大きく口を開けて笑うのが恥ずかしかったリします。
大人になってからメンテナンスにいくようになりましたが、こんな苦労や恥ずかしい思いを子どもにさせたくないもの…。
私と同じように感じているママやパパも少なくないのではないでしょうか?
小児科医であり、お茶の水女子大学名誉教授の榊原先生に、今回は「子どもの口まわり」にまつわる不思議について教えてもらいました!
お話をうかがったのは…
医師・お茶の水女子大学名誉教授
榊原洋一先生
お茶の水女子大学人間発達教育研究センター教授。東京大学医学部卒業。専門は小児科学、小児神経学、発達神経学など。小児科医として発達障害児の治療にかかわる。著書は『大人が知らない子どもの体の不思議』(講談社)など多数。
■親が虫歯…子どもにも感染するって本当?
――先生、今日は子どもの「口まわり」の疑問について教えてください。私は自分のスプーンを子どもの口に「あ~ん」したり、熱い料理を冷ますためにふ~ふ~してあげたりしていました。でも「親に虫歯があると、子どもにうつる」と聞いて反省…。でもこれって本当なんでしょうか?
榊原洋一先生(以下、榊原先生):正確にいうと「虫歯になる」のではなく、虫歯の元になるミュータンス菌という細菌が子どもに移動してしまう、ということになりますね。
――ミュータンス菌…?
榊原先生:はい。口の中には普段から数多くの細菌が存在しています。数百種類はいますね。その細菌のひとつがミュータンス菌です。
虫歯の元になる菌といわれていますが、口の中が健康であれば“悪さ”をすることはありません。口の中の環境が悪化することで、病原菌となって虫歯を発生させるんです。
――うわあ…、そうなんですね…。もし自分が虫歯じゃないとしても、虫歯の元になる菌は移動させたくないですね…。あれ、でもミュータンス菌はそもそもどこからきてるんでしょう? 大人になると自然と発生する菌なんでしょうか?
榊原先生:ミュータンス菌は自然発生するものではありません。人を介してうつるものです。
――え…! じゃあ今、私の口の中にいるであろうミュータンス菌も親や誰かの口からうつった菌だということですか?
榊原先生:そうなります。同じ食器を使うだけではなく、同じ歯ブラシで歯を磨いてもうつります。お母さんのつばが赤ちゃんに飛んだり、口元をふれた手で赤ちゃんの口元をさわったりすることでもうつりますよ。
――そんなささいなことでもうつるんですか…!
榊原先生:はい。だから、どんなに気をつけても「いつかはうつってしまうもの」といえるでしょう。
でもなるべく菌がうつる時期を遅らせること。それが子どもを虫歯にさせないためには大事です。
――同じ食器を使わない、同じ歯ブラシを使わないといったこと以外にできることはありますか?
榊原先生:子どもの歯をきちんと磨いてあげることですね。もちろん自分でできるようになっても、しっかり磨かせることです。
それから当たり前ですが、接する人が虫歯にならないようにしましょう。うつした人がすでに虫歯の状態だと、病原菌がそのまま子どもの口にうつってしまうからです。
――で、ですね…。私もこれ以上、虫歯を増やさないために気をつけなければ…!
榊原先生:それから子どもと接するときにはできるだけ手洗いをする、というのも効果的です。
できることはたくさんあるので、意識していきましょう。